(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083565
(43)【公開日】2024-06-21
(54)【発明の名称】流体制御装置の設置方法
(51)【国際特許分類】
F16L 55/00 20060101AFI20240614BHJP
【FI】
F16L55/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024064668
(22)【出願日】2024-04-12
(62)【分割の表示】P 2020541049の分割
【原出願日】2019-07-18
(31)【優先権主張番号】P 2018166359
(32)【優先日】2018-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000105556
【氏名又は名称】コスモ工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】金田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】玉田 聡
(57)【要約】
【課題】筐体内にて流体管に形成された孔部に挿入する弁体の位置精度を向上させ、管内流体の制御性を高めるとともに、制流弁の設置装置や作業弁装置等の施工用機材を小型化、軽量化、コストダウンをすることができる流体制御装置の設置方法を提供する。
【解決手段】流体管1を密封状で設置される筐体5と、筐体5内にて形成された流体管1の孔部1bの内面及び該流体管1の内周面にわたって密封可能な弁体11及び弁筐体12を備えた制流弁10とを少なくとも有する流体制御装置を不断流状態で設置する設置方法であって、流体管1を穿孔する穿孔手段によって孔部1bを形成した後に、筐体5の内部を開閉可能な作業弁装置3によって筐体5の内部を閉塞し、筐体5の内外を連通可能な連通部5cに、穿孔の際に生じた切り粉を排出するための排出手段8を接続し、排出手段8を構成する排出管85を介し、切り粉を管内流体とともに筐体5の外部に排出し、制流弁10を、弁体11が孔部1b及び流体管1内に挿入可能となるように設置する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体管に密封状態で設置される筐体と、前記筐体内にて形成された前記流体管の孔部の内面及び該流体管の内周面にわたって密封可能な弁体及び弁筐体を備えた制流弁とを少なくとも有する流体制御装置を不断流状態で設置する設置方法であって、
前記流体管を穿孔する穿孔手段によって前記孔部を形成した後に、前記筐体の内部を開閉可能な作業弁装置によって前記筐体の内部を閉塞し、
前記筐体の内外を連通可能な連通部に、穿孔の際に生じた切り粉を排出するための排出手段を接続し、前記排出手段を構成する排出管を介し、切り粉を管内流体とともに前記筐体の外部に排出し、
前記制流弁を、前記弁体が前記孔部及び前記流体管内に挿入可能となるように設置することを特徴とする流体制御装置の設置方法。
【請求項2】
前記排出手段は、前記排出管を開閉可能な開閉弁を備えることを特徴とする請求項1に記載の流体制御装置の設置方法。
【請求項3】
前記排出手段は、前記連通部に接続され、前記筐体内にて前記排出管を自在に傾斜可能な弾性部材からなるフレキシブル筒を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の流体制御装置の設置方法。
【請求項4】
前記作業弁装置は、前記筐体の首部に一体形成され側方に開口する開口部に取付可能となっており、前記制流弁を、前記弁筐体の先端が前記開口部を超えるように挿入して設置することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の流体制御装置の設置方法。
【請求項5】
前記弁筐体の先端部に密封部材が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の流体制御装置の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体管に密封状態で設置される筐体と、筐体内にて形成された流体管の孔部に弁体を挿入して管内流体を制御する制流弁とを少なくとも有する流体制御装置を不断流状態で設置する設置方法及び設置装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の流体制御装置の設置方法及び設置装置は、既設の流体管に分割構造の筐体(割T字管)を密封状に外嵌し、この筐体を構成する首部上端の開放端部に作業弁装置(作業用仕切弁)を接続して、筐体内を閉塞した作業弁装置に制流弁の設置装置(作業ケース、操作杆、ジャッキ機構)を用いて制流弁(弁ケース、仕切弁体)を挿入して筐体に接続し、この制流弁の弁体を流体管の孔部を介して管内に挿入して、流体管の内周面を弁座とすることで、管内流体を制御するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-38584号公報(第18頁、第33図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1にあっては、流体管に外嵌した筐体を構成する割T字管の首部の上端に形成された開放端部に、作業弁装置を接続したうえ、更に作業弁装置の上端に重畳して制流弁の設置装置を接続しており、この制流弁を筐体の首部上端の開放端部に密封状に接続していた。よって、制流弁の設置装置の伸長ストロークが長くなり、設計通りの位置に弁体挿入できずに位置ずれが生じてしまい、管内流体の制御性を高く維持できないという問題が生じていた。また、伸長ストロークが長くなることにより、制流弁の設置装置や作業弁装置等の施工用機材が大型化するため、機材費や施工費が高価になるばかりか、それらの重量が既設の流体管に過大な負荷をかける原因にもなっていた。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、筐体内にて流体管に形成された孔部に挿入する弁体の位置精度を向上させ、管内流体の制御性を高めるとともに、制流弁の設置装置や作業弁装置等の施工用機材を小型化、軽量化、コストダウンをすることができる流体制御装置の設置方法及び設置装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の流体制御装置の設置方法は、
流体管に密封状態で設置される筐体と、前記筐体内にて形成された前記流体管の孔部に挿入可能な弁体及び弁筐体を備えた制流弁とを少なくとも有する流体制御装置を不断流状態で設置する設置方法であって、
前記筐体の首部に形成された開口部に、該筐体の内部を開閉可能に仕切る作業弁体を備えた作業弁装置を取付け、
前記首部に形成された開放端部を密封可能に囲繞した状態で前記作業弁体を開放し、
前記開放端部の内部側と該開放端部を密封可能に囲繞した外部側とが同圧にされた状態で、前記筐体の内部に密封状態で連通する前記制流弁を、前記開放端部から、前記制流弁の前記弁筐体の先端が前記首部の前記開口部を超えた設置位置まで挿入することで、前記設置位置にて前記弁筐体の周面と前記首部の周面との間を環状の密封部材により密封することを特徴としている。
この特徴によれば、開放端部の内部側と該開放端部を密封可能に囲繞した外部側とが同圧にされた状態で、制流弁の弁筐体の先端が首部内の開口部を超えた設置位置にて、環状の密封部材により密封できるため、この密封状態で開口部及び開放端部を同時に遮断することができる。したがって、流体管が比較的大口径であっても、この制流弁を設置するために要する押圧力を低減して所期の位置に正確に設置でき、且つ制流弁の弁体が流体管の孔部に挿入する際の支点が確実になり、弁体の位置精度を向上させ、管内流体の制御性を高めることができ、また弁体の操作を要することなく、軽量・小型化した作業弁装置を容易に着脱できる。
【0007】
前記作業弁体により仕切られた前記筐体の内部を互いに連通させるとともに、前記筐体内の空気を外部に放出することを特徴としている。
この特徴によれば、作業弁体により仕切られた筐体内部を連通させる際に、筐体内の空気を排出することができるため、筐体内部を管内流体で満たすことができる。
【0008】
前記筐体は、前記流体管を密封状に外嵌する分割構造であり、前記流体管の前記孔部は穿孔機により穿孔されて形成されることを特徴としている。
この特徴によれば、既設の流体管に不断流状態で穿孔により孔部を形成し、弁体を挿入することができる。特に、筐体の首部に作業弁装置を着脱するための開口部を有して、作業弁装置の取付位置を流体管に近づけることができるため、穿孔ストロークが短くなり、穿孔の位置ずれを極小化でき、併せて、穿孔機や作業弁装置などの施工用機材の小型化、軽量化、コストダウンができる。
【0009】
前記筐体の移動を防止する移動防止手段を前記流体管に設置することを特徴としている。
この特徴によれば、制流弁を閉塞することで筐体に管内流体の圧力が作用しても、移動防止手段によって筐体の移動を防止できるため、流体の高い制御性を維持できる。また、移動防止手段を穿孔の際に設置することで、孔部の位置ずれを抑制できる。
【0010】
前記作業弁体により仕切られた前記筐体の内部を互いに連通させ同圧にした状態で、前記作業弁体を開放することを特徴としている。
この特徴によれば、作業弁体で仕切られた筐体の内部を互いに連通させ同圧にした状態で、制流弁の弁筐体の先端が首部内の開口部を超えた設置位置にて、環状の密封部材により密封できるため、この密封状態で開口部及び開放端部を同時に遮断することができる。したがって、この制流弁を設置するために要する押圧力を低減して所期の位置に正確に設置できる。
【0011】
前記作業弁体により仕切られた前記筐体の内部を互いに連通させるための連通開口部が、前記首部に設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、首部を利用することで、連通開口部の形成箇所を設計する自由度が高く、作業弁体により仕切られた筐体の内部を連通させる作業を容易に行うことができる。
【0012】
前記作業弁体により仕切られた前記筐体の内部を互いに連通させるための連通開口部が、前記作業弁装置の作業弁筐体に設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、筐体内を仕切る作業弁体に近い作業弁筐体に、連通開口部が設けられていることで、連通路を短く構成できる。
【0013】
前記首部の開口部に、前記筐体に設置された前記制流体を保持する保持部材を密封状に取り付けることを特徴としている。
この特徴によれば、首部内に連通する開口部を利用して、筐体に設置された制流体を保持する保持部材を容易に取り付けできるばかりか、この保持部材によって、開口部を密封することができる。
【0014】
本発明の流体制御装置の設置装置は、
流体管に密封状態で設置される筐体と、前記筐体内にて形成された前記流体管の孔部に挿入可能な弁体及び弁筐体を備えた制流弁とを少なくとも有する流体制御装置を不断流状態で設置する設置装置であって、
前記筐体の首部に形成された開口部に取り付けられ、該筐体の内部を開閉可能に仕切る作業弁体を備えた作業弁装置を有し、
前記首部に形成された開放端部を密封可能に囲繞した状態で前記作業弁体を開放し、
前記開放端部の内部側と該開放端部を密封可能に囲繞した外部側とが同圧にされた状態で、前記筐体の内部に密封状態で連通する前記制流弁を、前記開放端部から、前記制流弁の前記弁筐体の先端が前記首部の前記開口部を超えた設置位置まで挿入することで、前記設置位置にて前記弁筐体の周面と前記首部の周面との間を密封する環状の密封部材を有することを特徴としている。
この特徴によれば、開放端部の内部側と該開放端部を密封可能に囲繞した外部側とが同圧にされた状態で、制流弁の弁筐体の先端が首部内の開口部を超えた設置位置にて、環状の密封部材により密封できるため、この密封状態で開口部及び開放端部を同時に遮断することができる。したがって、流体管が比較的大口径であっても、この制流弁を設置するために要する押圧力を低減して所期の位置に正確に設置でき、且つ制流弁の弁体が流体管の孔部に挿入する際の支点が確実になり、弁体の位置精度を向上させ、管内流体の制御性を高めることができ、また弁体の操作を要することなく、軽量・小型化した作業弁装置を容易に着脱できる。
【0015】
前記筐体の移動を防止する移動防止手段が前記流体管に設置されていることを特徴としている。
この特徴によれば、制流弁を閉塞することで筐体に管内流体の圧力が作用しても、移動防止手段によって筐体の移動を防止できるため、流体の高い制御性を維持できる。また、移動防止手段を穿孔の際に設置することで、孔部の位置ずれを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例1における流体制御装置を構成する筐体を示す斜視図である。
【
図2】(a)は流体管を外嵌した筐体を示す一部断面正面図であり、(b)は同じく側面断面図である。
【
図4】筐体に組付けた作業弁装置を示す一部断面正面図である。
【
図5】穿孔機により流体管を穿孔している状況を示す一部断面斜視図である。
【
図6】排出機により切り粉を排出している状況を示す一部断面斜視図である。
【
図7】作業弁体で仕切られた筐体内を連通している状況を示す一部断面斜視図である。
【
図8】(a)は挿入機により制流弁を挿入している状況を示す一部断面正面図であり、(b)は(a)のA-A断面図である。
【
図9】(a)は実施例1における密封部材の断面図であり、(b)は密封部材の変形例1を示す断面図であり、(c)は密封部材の変形例2を示す断面図である。
【
図10】挿入機により制流弁の設置が完了した状況を示す一部断面斜視図である。
【
図12】(a)~(c)は挿入機を制流弁から取り外す手順を示す、
図8(a)の点線囲い部拡大断面図である。
【
図13】制流弁を設置した筐体に閉塞リング等を取付ける状況を示す一部断面斜視図である。
【
図14】筐体に固定された制流弁を示す一部断面正面図である。
【
図16】(a)は筐体の開口部の閉塞蓋の変形例を示す一部断面正面図であり、(b)は(a)のB-B断面図である。
【
図17】実施例2における筐体の移動を防止する移動防止手段を示す図であり、(a)は移動防止手段の正面図、(b)は同じく側面図である。
【
図19】移動防止手段の変形例1を示す図であり、(a)は移動防止手段の正面図、(b)は同じく側面図である。
【
図21】移動防止手段の変形例2を示す正面図である。
【
図22】移動防止手段の変形例3を示す一部拡大断面図である。
【
図23】移動防止手段の変形例4を示す一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る流体制御装置の設置方法及び設置装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0018】
実施例1に係る流体制御装置の設置方法及び設置装置につき、
図1~9(a)、
図10~15を参照して説明する。
図14及び
図15に示されるように、本発明に係る流体制御装置は、流体管1を外嵌する筐体5と、この筐体5に設置され管内流体を制御する制流弁10と、から主として構成されている。本実施例においては、流体制御装置及びその設置方法として、不断流状態で、管路構成部材である既設の流体管1の所定箇所に筐体5内にて穿孔した後、筐体5内に制流弁10を設置するまでの一連の流れを説明する。尚、流体管1内の流体は、本実施例では上水であるが、例えば、工業用水、農業用水、下水等の他、水以外の液体でも良いし、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。
【0019】
本実施例の流体管1は、比較的大口径(例えば口径300mm以上)のダクタイル鋳鉄管であって、
図1,2に示されるように、断面視略円形状の直管に形成されている。本実施例では、流体管1の管路方向は略水平方向に配設されている。尚、本発明に係る流体管は、その他鋳鉄、鋼等の金属製、あるいはコンクリート製、塩化ビニール製、ポリエチレン製若しくはポリオレフィン製等であってもよい。さらに尚、流体管の内周面はエポキシ樹脂層、モルタル、めっき等により被覆されてもよく、若しくは適宜の材料を粉体塗装により流体管の内周面に被覆してもよい。
【0020】
ここで本発明の流体管とは、本実施例のように直管に限られず、例えば異形管で構成されてもよい。ここで異形管とは、例えば曲管部や、分岐部、十字部、異径部、継ぎ輪部、短管部、排水部等の様々な異形部を少なくとも一部に有する管を総称するものである。
【0021】
先ず、
図1及び
図2に示されるように、本発明に係る流体制御装置の取付箇所となる流体管1の外面を清掃した後、この流体管1の後述する穿孔部分を密封するためのシール部材4を介し、流体制御装置を構成する筐体5を密封状に外嵌する。筐体5は、複数の分割体からなる分割構造であり、本実施例では、上部側を構成する第1分割体51と、下部側を構成する第2分割体52とから主に構成されている。尚、筐体5の分割構造は、本実施例に限らず例えば、水平方向に分割されてもよいし、また、分割数も3分割以上の所定数に分割されてもよい。また、分割筐体同士は、本実施例では、ボルト・ナットからなる締結部材2により密封状態で接合されるものであるが、これに限らず例えば、溶接接合であっても構わない。
【0022】
図1~3に示されるように、筐体5の第1分割体51は、流体管1に沿って管路方向に延設される管路筐体部5aと、管路筐体部5aの略中央で上下方向に分岐して延設され、上方に開口する開放端部5c、及び側方に開口する開口部5bを有する筒状の首部5dとから構成され、正面視逆T字状に形成されている。
【0023】
更に首部5dの開放端部5cは、流体管1の管路方向に向けて一対に外径方向に突出したフランジ部5eと、このフランジ部5eの周方向に沿って形成された複数の貫通孔に挿通可能に構成された複数の押しボルト5f、5fとを有している。
【0024】
この首部5dは、その筒状の周側部に、外面が径方向に突出した管厚部5gを備え、この管厚部5gに、流体管1の管路方向の一方に向けて開口する開口部5bを有している。
図1に示されるように、開口部5bは側面視で横長の略長方形に開口しており、後述するように作業弁装置3の作業弁体31が挿通可能に形成されている。
【0025】
また
図1及び
図2に示されるように、筐体5の第1分割体51は、開口部5bの側面視略中央部と上方のフランジ部5eとに架けて、上下方向にリブ5sが延設されるとともに、開口部5bの側面視略中央部と下方の管路筐体部5aとに架けて、リブ5tが上下方向に延設されている。
【0026】
また
図2(a)に示されるように、首部5dの内周部は、平面視略円形の曲面に形成された内周面5hと、開口部5bと同じ高さ位置にて外径方向に凹設された凹設部5iと、この凹設部5iよりも下方に形成され、上方の内周面5hよりも若干小径に形成された内周面5jと、この内周面5jの下端に連なり内径方向に突出した段部5kとを備えている。
【0027】
また
図2(a)、(b)に示されるように、首部5dの下部には、この首部5dを内外に貫通した連通開口部17が形成され、常時はこの連通開口部17に開閉プラグ18が螺着されている。
【0028】
次に、
図4及び
図5に示されるように、この首部5dの開口部5bに対し作業弁装置3を密封状に接続する。作業弁装置3は、筐体5内を開閉可能にスライドする作業弁体31と、この作業弁体31を水平方向にスライド可能に収容する収容内部32a、及びその側方の一端が開放された開放部32bを有する作業弁筐体としての収容部材32とから主として構成される。
【0029】
収容部材32は、回転可能で且つ進退不能に枢支され、水平方向に延設された軸部材34を備え、この軸部材34に作業弁体31が螺合しており、この収容部材32の外方に突出した軸部材34の先端部34aに取り付けた操作部材35を回転操作することで、作業弁体31が収容部材32に対しスライド可能に構成されている。また収容部材32の上面及び下面には、格子状に形成されたリブ32dが上下方向に延設されている。
【0030】
また、作業弁体31の上下面の辺部に沿って、無端状のシール部材31aが被覆されており、このシール部材31aによって筐体5内を密封状に閉塞可能に構成される。
【0031】
作業弁装置3の取付手順について詳しくは、先ず収容部材32を、その開放部32bが首部5dの開口部5bに連通する位置にて首部5dの外面に配置する。
【0032】
次に、この収容部材32を首部5dに対し締結する。本実施例では、収容部材32の開放部32bを囲むように複数形成された貫通孔と、首部5dの開口部5bを囲むように複数形成された雌ネジ孔とに架けて取付ボルト37を螺合することで締結している。すなわち本実施例では取付ボルト37が締結部材を構成している。このように、締結部材を構成する取付ボルト37により収容部材32が首部5dに接続されているため、その開放部32bと首部5dの開口部5bとが連通した配置位置で位置決めされるとともに、締結作業を容易に行うことができる。なお、締結部材として、ボルト・ナットが構成されてもよい。
【0033】
また、収容部材32は開放部32bの周囲を囲むようにシール部材39が配設されており、上記した締結部材の締結によって、このシール部材39が開口部5bの周縁に密接することで、これら開口部5b及び開放部32bは密封されている。このように、作業弁装置3が、首部5dに設けられた開口部5bに設置されることで、後述する穿孔機7や挿入機60の取付位置を極力、流体管1に近づけることができるため、これら穿孔機7や挿入機60が流体管1にアプローチする伸長ストロークを短縮化できる結果、穿孔機7や挿入機60を小型化、軽量化、コストダウンすることができる(
図5、
図7参照)。
【0034】
次に、
図5に示されるように、首部5dの開放端部5cに対し穿孔機7を密封状に接続する。穿孔機7は、取付フランジ筒71と、流体管1を穿孔するためのカッタ72と、取付フランジ筒71内においてカッタ72を回転させるための駆動モータ74と、カッタ72を上下方向に進行・退避させるための進退機構73と、から主に構成されている。カッタ72は、流体管1よりも小径の有底筒状に形成され、その先端に周方向に沿って切断刃を備えたホールソー72aと、該ホールソー72aの回転軸と同軸に配設され切断刃よりも先方に突出したセンタードリル72bとから構成されている。尚、カッタ72は、筐体5の首部5dの開放端部5cと同心円状に配設され、開放端部5c側から筐体5の首部5d内に挿入され、少なくとも流体管1の管頂部の管壁を貫通する位置まで進行可能となっている。
【0035】
穿孔機7の取付手順について説明すると、取付フランジ筒71の先端に形成されたフランジ部75を、首部5dの開放端部5cのフランジ部5eに、周方向に複数の締結部材77によって締結する。
【0036】
また、首部5dのフランジ部5eの上端面と取付フランジ筒71のフランジ部75の下端面との間にはシール部材が設けられており、このシール部材が取付フランジ筒71のフランジ部75に密接することで、この締結状態で穿孔機7の取付フランジ筒71及び筐体5の首部5dは密封されている。
【0037】
なお、首部5dの開口部5bに対する作業弁装置3の接続作業と、首部5dの開放端部5cに対する穿孔機7の接続作業とは、必ずしも上記した順序に限られず、穿孔機7の接続作業を行った後に作業弁装置3の接続作業を行ってもよいし、又はこれらの接続作業を同時並行に行っても構わない。
【0038】
次に、
図5に示されるように、穿孔機7による流体管1の穿孔工程を説明すると、先ず、作業弁装置3の作業弁体31を収容部材32の収容内部32aに配置させ筐体5内を開放した状態において、穿孔機7の駆動モータ74によりカッタ72を回転させるとともに、進退機構73によりカッタ72を下方に進行させ、流体管1の管頂部の管壁を不断流状態で穿孔する。
【0039】
このとき、例えば筐体5内部に連通する開口として、首部5dの側面に形成された連通開口部17に取り付けた図示しないボールバルブを開放することで、穿孔の際に発生する切り粉を流体とともに外部へ排出する。なお後述するように、この連通開口部17は、制流弁10の操作時の充水のためのバイパスとして用いられる。また上記したボールバルブは、穿孔後に不断流状態で取外し、
図15で示される開閉プラグ18で密封する。
【0040】
また、
図5に示されるように、カッタ72により流体管1が切断されると、流体管1から分断された管頂部の切片1aがホールソー72a内に保持された状態となる。そして、カッタ72を切片1aとともに取付フランジ筒71の内部に引き上げ、作業弁装置3の作業弁体31により筐体5内部を閉塞することで、流体管1の穿孔作業が完了する。この際、穿孔機7の取付位置が流体管1に近くなっているため、穿孔機7が筐体5に対して極力同芯で位置決めされ、穿孔機7本体の取付フランジと取付フランジ筒71の接続面の平行度のずれが生じても、穿孔部分への影響が極小化され穿孔ずれが抑制される。
【0041】
なお本実施例では、流体管1が比較的大径に形成されていることから、これに伴い筐体5内を閉塞する作業弁体31の面積も広く、当該作業弁体31に作用する管内流体の押圧力は大きいが、上記したように筐体5に設けられたリブ5s、5t、及び作業弁筐体である収容部材32に設けられたリブ32dによって、これら筐体5及び収容部材32の構造強度が高められているため、管内流体の押圧力による撓み等の変形が防止されている。
【0042】
次に、作業弁装置3の作業弁体31により筐体5内部を密封状に閉塞した状態で、穿孔機7の撤去作業を行い、この穿孔機7に替えて首部5dの開放端部5cに、穿孔の際に生じた切り粉を排出するための排出機8を接続する。
【0043】
図6に示されるように、排出機8は、首部5dの開放端部5cに固定に取り付けられる中央が開口した取付フランジ板81と、この取付フランジ板81の中央の開口部に接続された弾性部材からなるフレキシブル筒83と、このフレキシブル筒83の上端に接続された操作筒84と、これら取付フランジ板81,フレキシブル筒83及び操作筒84に密封状に挿通された排出管85と、から主として構成されている。排出管85の後端側は、操作筒84の外方に突出されるとともに、この排出管85内を開閉する図示しない開閉弁が接続されている。
【0044】
なお、排出機8の取付フランジ板81と首部5dの開放端部5cとは、上記した穿孔機7の取付フランジ筒71と首部5dの開放端部5cと同様に、周方向に複数の図示しない締結部材によって締結する。
【0045】
次に、排出機8による切り粉の排出工程を説明すると、排出管85の後端側に接続された開閉弁(図示略)を開状態とすることで、流体管1や筐体5内の切り粉を流体とともに排出することができる。このとき、排出管85を同軸に外嵌する操作筒84を把持して、フレキシブル筒83の弾性変形を利用し、取付フランジ板81に対し自在に傾斜することで、排出管85の先端の吸引口85aを筐体5内の所望の位置に移動させることができるため、筐体5内の隅々に切り粉が散在しても略全量を排出することができる。
【0046】
次に、作業弁装置3の作業弁体31により筐体5内部を閉塞した状態で、排出機8の撤去作業を行い、この排出機8に替えて首部5dの開放端部5cに、管内流体を制御するための制流弁10を接続する。
【0047】
この制流弁10の取付けに先立ち、
図7及び
図8に示されるように、首部5dの開放端部5cに、制流弁10を上下方向に移動可能に収容した収容筒16の下端に形成されたフランジ部16aを、周方向に複数の締結部材16dによって密封状に接続する。収容筒16は、その下端が開放されるとともに、その上部が中央に貫通孔を有する閉塞蓋16bにより閉塞された有底筒状に形成されている。また閉塞蓋16bには、収容筒16の内外を連通する連通開口部27が形成され、常時はこの連通開口部27にボールバルブが螺着されている。
【0048】
収容筒16の内部には、制流弁10を筐体5に挿入するための挿入手段として、制流弁10を収容筒16の外方から上下方向に移動操作可能で且つ着脱可能に組み付けた挿入機60が設けられている。挿入機60は、収容筒16の上部の中心を上下方向に貫くように延設されており、その中心側から順に、延設棒61、操作杆62、そして挿入筒63が主として構成されている。
【0049】
より詳しくは、
図12(a)に示されるように、延設棒61は、その下端が制流弁10の弁筐体12の上端に取付けた取付治具26に螺合するとともに、その上端が収容筒16よりも上方に延びている。この延設棒61を外嵌する操作杆62は、収容筒16を構成し閉塞蓋16bの貫通孔を被覆する上筒部16cに対し、回転可能且つ軸方向に移動不能に枢支され、その上端に回転操作用の把持部62aを備えている。更にこの操作杆62を外嵌する挿入筒63は、上筒部16cに対し回転不能且つ軸方向に移動可能に枢支され、その下端部63aが取付治具26と延設棒61の鍔部61aとで上下方向に挟持され、操作杆62の雄ネジ部62bに螺合する雌ネジ部63bを備えている。
【0050】
また
図8(b)に示されるように、この挿入筒63の下端部63aには、平面断面視で略方形状の貫通孔63cが形成されており、この貫通孔63cを補完するように平面視で略方形状に突設された取付治具26の突端部26aが貫通孔63cに内嵌している。このようにすることで、取付治具26を取付けた制流弁10が、挿入筒63に対し周方向に移動を規制される。なお、挿入筒63の貫通孔63c及びこれを補完する取付治具26の突端部26の平面視形状は、略方形状に限られず、長方形状や楕円形状、小判形状など、非円形状であればよい。
【0051】
図7に示されるように、制流弁10は、流体管1の穿孔された孔部1bを通過し管内を開閉可能に上下動する栓体11(弁体)と、この栓体11を上下方向に移動可能に収容し、且つ下端が開放された周側部13を有する弁筐体12とから主として構成される。弁筐体12は、回転可能で且つ進退不能に枢支された状態で上下方向に延設された軸部材14を備え、この軸部材14に栓体11が螺合しており、この弁筐体12の外方に突出した軸部材14の上端の操作部14aを回転操作することで、栓体11が弁筐体12に対し上下動可能に構成されている。
【0052】
より詳しくは栓体11は、
図15に示されるように、軸部材14に螺合した雌ネジを備えた雌ネジ片11aと、弾性材からなる栓体11bと、この雌ネジ片11aに係合して追従動作する金属片やプラスチックなどの剛体からなる栓胴体11cと、栓体11bに加硫などにより一体成型されたボルト・ナットから成り、栓体11bを栓胴体11cに連結する固着部材15とから主として構成されている。栓体11は、上記した軸部材14の回転により下方の流体管1の孔部1bを通じて管内に移動して、栓体11bが流体管1の孔部1bと内周面1cに全周に亘って密接することで、管内の流路を完全に遮断し、または栓胴体11cの移動量に応じて管内の流路を一部遮断して流量を制御可能に構成されている。なお、栓体11bは、孔部1bを止水する上部の周状部と流体管1の内周面1cを止水する下部のU字部で硬度が互いに異なるゴムから成り、固着部材15と接着あるいは加硫などで一体成型され、取り付けられることが望ましく、このようにすることで、流速によりU字部が流される虞を防止しつつ、栓体11bの挿入が容易となる。特に、周状部が軟らかく、U字部が硬く設計され、且つこれらが一体に形成されることが望ましい。また、雌ネジ片11aは、当初は栓体11b及び栓胴体11cと同時に下降するが、栓体11bが管内周底部に接触すると、雌ネジ片11aが栓体11b及び栓胴体11cに対して大きく下降移動して、その両側部の羽根部で栓体11bを外径方向に押し拡げ、止水を補助する。更に、固着部材15により、弾性体である栓体11bの中に芯部を構成し、流速によりU字部が流される虞を防止するようになっている。なお栓体11bは、栓胴体11cに加硫したり、加硫被覆して全体を覆うように構成されていてもよい。
【0053】
また制流弁10の弁筐体12は、周側部13の下端側の外周面に全周に亘る凹部13bが形成され、この凹部13bに密封部材21が設けられている。
【0054】
図9(a)に示されるように、本実施例の密封部材21は、環状に一体形成された弾性材からなる。密封部材21は、凹部13bの底面に形成された膨出部13cと凹部13bの内壁との間に保持される基端側の保持部21aと、この保持部21aに連なり弾性変形を許容する変形部21bとから構成されており、この密封部材21は、その弾性変形前の自然状態では、変形部21bの最外径が首部5dの内径よりも大径に形成されている。また本実施例の変形部21bは、内外の径方向及び先端方向に向け滑らかに膨出する略球根状の断面形状に形成されている。このようにすることで、変形部23bがその外面の略全面に流体の圧力を均等に受け、曲率半径の大きな緩やかな曲面状に弾性変形するため、首部の内周面との密封面を広く得ることができ、弁筐体の挿入がし易い。
【0055】
次に、制流弁10の設置工程について説明すると、先ず
図7に示されるように、上記したように内部に制流弁10を収容した収容筒16を筐体5の開放端部5cに密封状に接続した状態で、作業弁体31を開放するよりも前に、この作業弁体31よりも下方の筐体5の首部5dに設けられた連通開口部17と、作業弁体31よりも上方の収容筒16の閉塞蓋に設けられた連通開口部27とを接続ホース25によって連通させる。このようにすることで、流体管1内の流体がその流体圧力により、連通開口部17、接続ホース25そして連通開口部27を介し、収容筒16内に漸次導入される。
【0056】
このように、収容筒16内に流体管1内の流体を導入することで、作業弁体31を開放する前に、収容筒16内と流体管1内とを同じ圧力に調整することができる。また、収容筒16を筐体5の開放端部5cに密封状に接続し、閉塞蓋16bを開放して充水するか、収容筒16を密封状に接続した状態で連通開口部27を用いて充水してから接続ホース25で連通し、同じ圧力に調整してもよい。
【0057】
また連通開口部17の形成箇所として、筐体5の首部5dを利用することで、連通開口部17の形成箇所を設計する自由度が高く、作業弁体31により仕切られた筐体5の内部を連通させる作業を容易に行うことができる。
【0058】
なお、作業弁体31よりも下方の連通開口部17と作業弁体31よりも上方の連通開口部27のいずれか又は両方を、または併設して作業弁装置3の収容部材32に設けてもよく、このように筐体5内を仕切る作業弁体31により近い作業弁筐体に、連通開口部を設けることで、連通路を短く構成できる。
【0059】
またこのとき、収容筒16の閉塞蓋16bに開閉可能に設けられた空気抜き孔28を開放することで、収容筒16内に残留する空気を外部に放出する。このようにすることで、作業弁体31により仕切られた筐体5内部を連通させる際に、筐体5内の空気を排出することができるため、筐体5内部を管内流体で満たすことができる。
【0060】
次に、
図8に示されるように、作業弁体31を開放し収容筒16内の制流弁10を下方の筐体5に向け設置する。より詳しくは、上記した挿入機60の操作杆62の把持部62aを正転方向に回転操作することで、この操作杆62に螺合された挿入筒63が下方に向け移動する。この挿入筒63の下方への移動に伴い、取付治具26を介し制流弁10に下方に押圧力を付与し、この制流弁10を首部5d内にて漸次下方に移動させる。なお、取付治具26に螺合した延設棒61も制流弁10に追従して下方に移動する。
【0061】
このとき、上記したように、収容筒16内は流体管1内と同じ圧力に調整され、圧力差が存在しないため、制流弁10を小さな押圧力で押圧することができる。また例えば、連通開口部27に水圧ポンプを接続し、収容筒16内側(開放端部5cの外部側)を高圧にすることで、押圧を補助してもよい。
【0062】
図10及び
図11に示されるように、制流弁10は、密封部材21が開口部5bよりも下方に超えて首部5dの内周面5jに密接する設置位置まで押圧される。この設置位置にて、首部5dのフランジ部5eに設けられた仮固定用の押しボルト5fを内径方向に螺挿することで、その先端が弁筐体12の周側部13の外径側に張り出す張出部13dに形成された凹部に嵌合されるため、筐体5の首部5dに挿入された制流弁10は筐体5に対し上方向の抜け出し及び回動が規制される。
【0063】
上記したように制流弁10を設置した後、上記した挿入機60を操作してこの制流弁10に組付けていた収容筒16を取外す。より詳しくは、
図12(a)~(c)に示されるように、先ず取付治具26に螺合した延設棒61を、その上端に図示しない回動工具等を嵌合して回動することにより、取付治具26から取外す。次に操作杆62の把持部62aを逆転方向に回転操作し、この操作杆62に螺合された挿入筒63が上方に向け移動させることで、その下端部63aを平面視略方形状に嵌合していた取付治具26の突端部26aから取外す。
【0064】
上記したように挿入機60を操作し、制流弁10から切離した後、収容筒16内に導入した管内流体を図示しないドレン部により排出して、収容筒16を挿入機60とともに筐体5から取り外す。
【0065】
このように、制流弁10を筐体の設置位置まで挿入する挿入機60が、制流弁10に密封状態で着脱可能に取付けられているため、制流弁10を筐体5の設置位置まで挿入した後に、流体を漏洩させることなく挿入機60を取外すことができる。
【0066】
また、制流弁10の設置位置にて、弁筐体12の内外を貫通し、且つ常時は開閉プラグ等で閉塞された図示しない貫通孔を開状態とすることで、密封状態の制流弁10の弁筐体12内に残留する空気を外部に放出してもよい。ここで前記貫通孔は、弁筐体12の上端近傍に形成されていると好ましく、このようにすることで、弁筐体12内の空気を残さず略全量を外部に放出することができる。
【0067】
さらに筐体5の開口部5bに取り付けていた作業弁装置3を順次取外す。このとき、首部5dの開口部5bよりも下方の内周面5jを密封部材21が密封しているため、開口部5bを開放しても内部流体の漏洩は防止されている。そのため栓体11による密封を行うことなく作業弁装置3を取外すことができ、作業弁装置3の老朽化の虞もない。また、作業弁装置3は、その作業弁筐体に相当する一部が筐体5の首部5dに形成されるため、作業弁装置3自体を小型化、軽量化でき、容易に取外すことができる。
図13に示されるように、作業弁装置3を取外した後の開口部5bの周囲を密封状に閉塞する閉塞蓋9を着脱可能に取付けるとともに、首部5dの開放端部5cのフランジ部5eに、環状に形成された閉塞リング40を周方向に複数の締結部材41によって取付ける。
また、筐体5の第2分割体52は、流体管1に沿って管路方向に延設される管路筐体部5Aから構成されている。この管路筐体部5Aの管路方向の両端には、周方向に円弧状に延びると共に管路直交方向に平坦な端面5U、5Uが、第1分割体51の端面5u、5uと略面一に形成されている。
また、この筐体5の管路方向の両側の端面5u、5u、端面5U、5Uに当接若しくは近接する位置にて、本実施例の移動防止手段としての移動防止金具90を流体管1に外嵌する。移動防止金具90は、複数の分割具からなる分割構造であり、本実施例では、上部側を構成する第1分割具91と、下部側を構成する第2分割具92とから主に構成されている。また、第1分割具91と第2分割具92とは、ボルト・ナットからなる締結部材6により、互いの相対移動が防止される程度の締結力で締結されている。
このように、筐体5の管路方向の両側に当接若しくは近接する位置に、移動防止金具90,90が設けられていることで、筐体5に後述する負荷が生じた場合でも、管路方向に移動が防止されている。
これに対し、筐体5の管路方向の下流側に設けられた移動防止金具90が、当該筐体5の第1分割体51の端面5uに接することで、第1分割体51に下流側に作用する外力に対抗して、第1分割体51が元の位置に留まるように移動防止することができる。
また、筐体5の管路方向の上流側に設けられた移動防止金具90が、接続金具95を介し当該筐体5に接続されていることで、第1分割体51に下流側に作用する外力に対抗して、第1分割体51が元の位置に留まるように支持することができる。
このように、筐体5の管路方向の移動を防止する移動防止金具90が流体管1に設置されていることで、制流弁10を閉塞し筐体5に対し管内流体の圧力が作用しても、移動防止金具90によって筐体5の移動を防止できるため、流体の高い制御性を維持できる。
なお上記した制流弁10の閉塞状態から、栓体11を上方に移動させ、流体管1内を開放すると、閉塞時に下流側に押し付けられていた栓体11の負荷が解消されるとともに、栓体11を構成する弾性材の弾性復元力により、第1分割体51は元の上流側の位置に復帰する方向に作用する。
また、筐体5と移動防止金具100とは、接続手段としての接続金具105を介し互いに接続されている。より詳しくは、本変形例の接続金具105は、筐体5の第1分割体51,第2分割体52と、移動防止金具100の第1分割具101とを接続するとともに、筐体5の第1分割体51,第2分割体52と、移動防止金具100の第2分割具102とを接続するように、周方向に一対に設けられている。各接続金具105は、第1分割体51,第2分割体52と第1分割具101(第2分割具102)に固定に設けられたフランジ103とに管路方向に架け渡される架設ボルト106と、この架設ボルト106に螺合してフランジ103に係合する接続ナット107と、架設ボルト106の頭部に形成された係合部106aに係合し第1分割体51,第2分割体52のボルト孔に挿通されて締結される接続ボルト108と、から構成される。
このような構成によれば、接続金具105を構成する架設ボルト106と接続ナット107との螺挿度合を適宜設定することで、筐体5と移動防止金具100との管路方向の密接、当接若しくは近接状態を無段階で調整することができる。
このような構成によれば、制流弁10内部の栓体11の移動に伴い、下流側に向かう管内圧力が第1分割体51に負荷されたとき、筐体5の管路方向の下流側に設けられた移動防止金具90が、第1分割体51に作用する外力に対抗するに加え、第1分割体51に形成された凹部111が第2分割体52の凸部112に係合することで、この凸部112が第1分割体51に作用する管路方向の外力に対抗して、第1分割体51を移動防止することができる。この場合では、移動防止金具90と接続金具95を省略して、第2分割体52を移動防止具として用いることもできる。この際、第2分割体52の内周面には、上述した移動防止金具90の内周面に設けたような単数条または複数条の係止突条が設けられても良い。また、凹部111、凸部112の係合の代わりとして、上述したスペーサ99を用いるようにして係合するようにしても良い。
このような構成によれば、制流弁10内部の栓体11の移動に伴い、下流側に向かう管内圧力が第1分割体51に負荷されたとき、筐体5の管路方向の上流側に設けられた移動防止金具120の係合凹部120aが、第1分割体51の膨出部5vを係止するとともに、係止突条120bが流体管1の外周面に食い込むことで、この移動防止金具120が第1分割体51に作用する管路方向の外力に対抗して、第1分割体51を移動防止することができる。
このような構成によれば、制流弁10内部の栓体11の移動に伴い、下流側に向かう管内圧力が第1分割体51に負荷されたとき、筐体5の管路方向の上流側に設けられた移動防止金具130の係合凹部130aが、第1分割体51の膨出部5vを係止するとともに、係止部材131が凹部130b内で図示時計回りに傾動するに伴い、その内径側に形成された先端爪131aが流体管1の外周面に食い込むことで(図示点線部参照)、この移動防止金具130が第1分割体51に作用する管路方向の外力に対抗して、第1分割体51を移動防止することができる。また、特に図示しないが、移動防止金具130に、係止部材131を押し込むための押しボルトを設けるようにしても良い。
以上説明したように、本発明に係る流体制御装置の設置方法及び設置装置によれば、開放端部5cの内部側と該開放端部5cを密封可能に囲繞した外部側とが同圧にされた状態で、制流弁10の弁筐体12の先端が首部5d内の開口部5bを超えた設置位置にて、環状の密封部材21により密封できるため、この密封状態で開口部5b及び開放端部5cを同時に遮断することができる。したがって、流体管1が比較的大口径であっても、この制流弁10を設置するために要する押圧力を低減して所期の位置に正確に設置でき、且つ制流弁10の弁体11が流体管1の孔部1bに挿入する際の支点が確実になり、弁体11の位置精度を向上させ、管内流体の制御性を高めることができ、また弁体11の操作を要することなく、軽量・小型化した作業弁装置3を容易に着脱できる。
また筐体5は、流体管1を密封状に外嵌する分割構造であり、流体管1の孔部1bは穿孔機7により穿孔されて形成されることで、既設の流体管1に不断流状態で穿孔し、弁体11を挿入することができる。特に、筐体5の首部5dに作業弁装置3を着脱するための開口部5bを有して、作業弁装置3の取付位置を流体管1に近づけることができるため、穿孔ストロークが短くなり、穿孔の位置ずれを極小化でき、併せて、穿孔機7や作業弁装置3などの施工用機材の小型化、軽量化、コストダウンができる。
また、作業弁体31により仕切られた筐体5の内部を互いに連通させ同圧にした状態で、作業弁体31を開放することで、制流弁10の弁筐体12の先端が首部5d内の開口部5bを超えた設置位置にて、環状の密封部材21により密封できるため、この密封状態で開口部5b及び開放端部5cを同時に遮断することができる。したがって、この制流弁10を設置するために要する押圧力を低減して所期の位置に正確に設置できる。
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
例えば、前記実施例では、筐体5内の流体管1に穿孔手段により孔部1bを穿孔し、この孔部1bに制流弁10の栓体11(弁体)を挿入するように構成されているが、本発明の流体管の孔部とはこれに限らず、例えば、流体管としてのT字管に予め形成された分岐孔等の孔部であってもよいし、流体管にフランジや受挿態様で接合される仕切弁などでもよい。
また弁筐体12の周側部13の凹状溝13eは、弁筐体12の全周に亘って無端状に凹設されてもよいが、本変形例のように、略半周に亘って凹設されることで、外嵌部47の先端部47aが凹状溝13eの周端部13fに当接することで、制流弁10を周方向に位置決めすることができる。
更に例えば、前記実施例では、制流弁10が、その弁体として、流体管1の孔部1bを通過し内周面1cに密接する栓体11を備えているが、これに限らず、管内流体を制御可能であれば如何なる形態の弁体も適用することができる。
また例えば、前記実施例では、流体管1よりも小径のホールソー72aで穿孔したが、これに限らず、流体管1よりも大径のホールソーあるいはバイト装置、ワイヤーソー装置等で筐体5内部の流体管の一部を切削し、切片を撤去して、筐体の内周面を弁座として密封するプラグや、弁体を内蔵した内弁箱を有する制流弁を不断流状態で設置するようにしてもよい。
更に例えば、前記実施例では、連通開口部17と連通開口部27とを接続ホース25で連通して同圧としたが、これに限らず、例えば弁筐体12に図示しない貫通孔を設けるとともに、該貫通孔にチェック弁を接続し、制流弁の挿入時に該チェック弁を開放し、挿入後は閉塞するようにして同圧を取り、同時に空気抜きをするようにしてもよい。