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特開2024-83578新規ビフィドバクテリウム属細菌、および当該細菌を含む組成物、並びに当該細菌の増殖促進用の組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083578
(43)【公開日】2024-06-21
(54)【発明の名称】新規ビフィドバクテリウム属細菌、および当該細菌を含む組成物、並びに当該細菌の増殖促進用の組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20240614BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20240614BHJP
【FI】
C12N1/20 A
A23L33/135
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024065243
(22)【出願日】2024-04-15
(62)【分割の表示】P 2020007102の分割
【原出願日】2020-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】原 早紀子
(72)【発明者】
【氏名】小田巻 俊孝
(57)【要約】
【課題】少なくとも2種以上のHMOsの資化能を有する新規ビフィドバクテリウム属細菌を提供すること。
【解決手段】下記の(b)又は(c)から選択される細菌を提供する。
(b)ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-03058)
(c)ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-03067)
前記(b)又はc)から選択される細菌は、
2’-フコシルラクトース、および
3’-シアリルラクトース、または、ラクト-N-テトラオース
の資化能を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(b)又は(c)から選択される細菌。
(b)ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-03058)
(c)ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-03067)
【請求項2】
2’-フコシルラクトース、および
3’-シアリルラクトース、または、ラクト-N-テトラオース
の資化能を有する、請求項1に記載の細菌。
【請求項3】
請求項1または2に記載の細菌を含有する、組成物。
【請求項4】
前記組成物が、プロバイオティクス組成物である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、少なくとも、乳幼児用、大人用、高齢者用のいずれかに用いられる、請求項3または4に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、整腸用組成物、飲食品組成物、および栄養組成物からなる群より選択される1種または2種以上の組成物である、請求項3~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
2’-フコシルラクトースと、
3’-シアリルラクトース、または、ラクト-N-テトラオースと、
を更に含有する、請求項3~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
下記の(b)又は(c)から選択される細菌の増殖の促進に使用されるプレバイオティクス組成物であり、
前記組成物が、
2’-フコシルラクトースと、
3’-シアリルラクトース、または、ラクト-N-テトラオースと、を含有する、プレバイオティクス組成物。
(b)ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-03058)
(c)ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-03067)
【請求項9】
下記の工程Aおよび工程Bを含む、下記の(b)又は(c)から選択される細菌を含有する組成物の製造方法。
工程A:培地で下記の(b)又は(c)から選択される細菌を培養し、下記の(b)又は(c)から選択される細菌を含む培養物または生産物を得る工程
工程B:前記培養物または生産物を乾燥に供し、菌末または乾燥物を得る工程
(b)ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-03058)
(c)ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-03067)
【請求項10】
下記の工程Cまたは工程Dを含む、下記の(b)又は(c)から選択される細菌を含有する組成物の製造方法。
工程C:下記の(b)又は(c)から選択される細菌、およびプレバイオティクスを混合する工程
工程D:下記の(b)又は(c)から選択される細菌、および乳成分を混合する工程
(b)ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-03058)
(c)ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-03067)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ビフィドバクテリウム属細菌、および当該細菌を含む組成物、並びに当該細菌の増殖促進用の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、動物に良い影響を与える細菌(善玉菌)を積極的に摂取して腸内環境を整えることで、病気の発生抑制、健康増進等を目的とするプロバイオティクスおよび善玉菌の増殖を助ける成分等のプレバイオティクスの研究が盛んに行われるようになってきている。プロバイオティクスは、腸内で有益な働きをする細菌をいうのに対して、プレバイオティクスは、これらのプロバイオティクスの選択的な栄養源となり、それらの増殖を促進する物質をいう。プレバイオティクスにより、乳酸菌・ビフィドバクテリウム属細菌増殖促進作用、整腸作用、炎症性腸疾患への予防・改善作用等のヒトの健康に有益な効果があることが知られている。
【0003】
ヒトミルクオリゴ糖(以下、「HMOs」ともいう)は母乳中に10-20g/L含まれ、130種類以上のオリゴ糖の混合物と言われている。それらの構造は、13種類のコア構造にフコース、シアル酸が付加した構造をとる。ヒトミルクにおいては、フコシル化された中性糖の割合が高く、代表的なのは2’-フコシルラクトース、ラクト-N-フコペンタオースI、ラクト-N-ジフコヘキサオースIおよびラクト-N-テトラオースで、これら4種類だけで全ヒトミルクオリゴ糖の1/3~1/4を占めている。ラクト-N-ビオースを含むオリゴ糖をタイプI型、N-アセチルラクトサミン(LacNAc)を含むオリゴ糖をタイプII型というが、ヒトミルク中ではタイプI型のラクト-N-テトラオースやラクト-N-フコペンタオースIがタイプII型のラクト-N-ネオテトラオースやラクト-N-フコペンタオースIIIよりも含有量が高い。タイプI型とタイプII型の共存、ならびにタイプI型の優先性は、他種ミルクオリゴ糖とは異なるヒトミルクオリゴ糖の際だった特徴である(非特許文献1および2参照)。
【0004】
母乳に含まれるHMOsである2’-FLおよびLNTは、ビフィズス菌増殖活性を有し、ビフィズス菌に選択的に利用されることによりビフィズス菌の増殖因子として作用することが知られており、ビフィズス菌優勢な腸内フローラの形成に重要である。また、HMOsは合成が可能で、工業的に利用できる状況にある(特許文献1参照)。
【0005】
ビフィズス菌は一部のHMOsをビフィズス菌に特異的なGNB/LNB経路を利用して代謝している。この経路はヒト腸管に良くみられる多くの種が持っており、動物や昆虫の腸管でよく見られるビフィズス菌のほとんどは持っていない。HMOsを単独の炭素源として利用し、生育可能な菌種は乳児によく見られるビフィズス菌であるビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ビフィダムの4菌種などが代表例として挙げられるが、特にビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスとビフィドバクテリウム・ビフィダムの2菌種は様々なHMOsを利用することが報告されている(非特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2014/086373
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Japanese Journal of Lactic Acid Bacteria Vol. 22, No. 1, pp15-25 2011
【非特許文献2】Milk Science Vol. 56,No.4, pp155-176 2008
【非特許文献3】Milk Science Vol. 61,No.2, pp115-124 2012
【非特許文献4】THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY VOL. 286, NO. 40, pp 34583-34592 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
HMOsを代謝するに当たり、前述の通り、ビフィズス菌の中でも、HMOsの資化能がないまたは低い菌も存在する一方で、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスとビフィドバクテリウム・ビフィダムのように、HMOsに資化性を有する菌も存在する。
【0009】
そこで、本技術は、少なくとも2種以上のHMOsの資化能を有する新規ビフィドバクテリウム属細菌を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本技術では、まず、下記の(a)~(c)から選択される細菌を提供する。
(a)ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス(NITE BP-03068)
(b)ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-03058)
(c)ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-03067)
前記(a)~(c)から選択される細菌は、2’-フコシルラクトース、および
3’-シアリルラクトース、または、ラクト-N-テトラオース
の資化能を有する。
【0011】
本技術では、次に、前記(a)~(c)から選択される細菌を含有する、組成物を提供する。
本技術に係る組成物は、プロバイオティクス組成物とすることができる。
本技術に係る組成物は、少なくとも、乳幼児用、大人用、高齢者用のいずれかに用いることができる。
本技術に係る組成物は、整腸用組成物、飲食品組成物、および栄養組成物からなる群より選択される1種または2種以上の組成物とすることができる。
本技術に係る組成物には、2’-フコシルラクトースと、
3’-シアリルラクトース、または、ラクト-N-テトラオースと、
を更に含有させることができる。
【0012】
本技術では、また、下記の(a)~(c)から選択される細菌の増殖の促進に使用されるプレバイオティクス組成物であり、
前記組成物が、
2’-フコシルラクトースと、
3’-シアリルラクトース、または、ラクト-N-テトラオースと、を含有する、プレバイオティクス組成物を提供する。
(a)ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス(NITE BP-03068)
(b)ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-03058)
(c)ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-03067)
【0013】
本技術では、更に、下記の(a)~(c)から選択される細菌を含有する組成物の製造方法を提供する。
(a)ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス(NITE BP-03068)
(b)ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-03058)
(c)ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-03067)
【発明の効果】
【0014】
本技術に係る新規ビフィドバクテリウム属細菌は、少なくとも2種以上のHMOsに対し、資化能を発揮することができる。
なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本技術中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本技術を実施するための好適な実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本開示の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。なお、本明細書において、数値範囲を「下限~上限」で表現するものに関しては、上限は「以下」であっても「未満」であってもよく、下限は「以上」であっても「超」であってもよい。また、本明細書において百分率は特に断りのない限り質量による表示である。
【0016】
<新規なビフィドバクテリウム属細菌>
本技術に係る新規ビフィドバクテリウム属細菌は、前記(a)~(c)から選択される細菌であって、少なくとも2種以上のHMOsに対し、資化能を発揮することができる。具体的には、2’-フコシルラクトース(以下、「2’-FL」ともいう)、および、3’-シアリルラクトース(以下、「3’-SL」ともいう)、またはラクト-N-テトラオース(以下、「LNT」ともいう)の資化能を有する。このため、本技術に係る新規ビフィドバクテリウム属細菌は、2’-FL、および、3’-SLまたはLNTを使用することで、腸内でも容易に増殖することができる。
【0017】
ビフィドバクテリウム属細菌は、様々な生理機能が報告されており、その機能は腸内での増殖や産生する物質(例えば、酢酸等)によるものであると報告されている。従って、本技術のビフィドバクテリウム属細菌も、安全性が高く、かつ幅広い年齢層において、一般的に云われているビフィドバクテリウム属細菌による効能を期待することができる。このため、本技術のビフィドバクテリウム属細菌は、幅広い組成物(飲食品用、機能性食品用、医薬品用、飼料用等)に用いることが可能である。また、本技術のビフィドバクテリウム属細菌は、プロバイオティクス効果を期待することができるので、健康増進、食生活改善、腸内環境改善、腸内感染予防・治療等の目的に使用することも可能である。以下、各細菌について、詳細に説明する。
【0018】
(a)ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス(NITE BP-03068)
ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス(NITE BP-03068)は、後述する実施例で示す通り、2’-FL、3’-フコシルラクトース(以下、「3’-FL」ともいう)、LNT、およびラクト-N-ネオテトラオース(以下、「LNnT」ともいう)の資化能が、後述の<糖源の資化性の判定方法>において、それぞれOD0.3以上であり優れている。
【0019】
ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス(NITE BP-03068)は、新規なビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスであり、以下の菌学的性質および特性から新規菌株として、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)(住所:〒292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に、2019年11月20日に、Bifidobacterium infantis(受託番号:NITE BP-03068)株として国際寄託された。当該菌株は、上記保存機関より一般に入手可能である。なお、「ビフィドバクテリウム・インファンティス」は、「ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス」に再分類されており、同義のものである。
【0020】
(b)ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-03058)
ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-03058)は、後述する実施例で示す通り、2’-FL、3’-FL、3’-SL、6’-シアリルラクトース(以下、「6’-SL」ともいう)、LNT、およびLNnTの資化能が、後述の<糖源の資化性の判定方法>において、それぞれOD0.3以上であり優れている。
【0021】
ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-03058)は、新規なビフィドバクテリウム・ビフィダムであり、以下の菌学的性質および特性から新規菌株として、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)(住所:〒292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に、2019年11月8日に、Bifidobacterium bifidum(受託番号:NITE BP-03058)株として国際寄託された。当該菌株は、上記保存機関より一般に入手可能である。
【0022】
(c)ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-03067)
ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-03067)は、後述する実施例で示す通り、2’-FL、3’-FL、3’-SL、6’-SL、LNT、およびLNnTの資化能が、後述の<糖源の資化性の判定方法>において、それぞれOD0.3以上であり優れている。
【0023】
ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-03067)は、新規なビフィドバクテリウム・ビフィダムであり、以下の菌学的性質および特性から新規菌株として、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)(住所:〒292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に、2019年11月20日に、Bifidobacterium bifidum(受託番号:NITE BP-03067)株として国際寄託された。当該菌株は、上記保存機関より一般に入手可能である。
【0024】
本技術では、以上説明した各菌株と実質的に同質の菌株を用いることも可能である。本技術に係る各菌株と実質的に同質の菌株とは、例えば、同属の細菌であって、16SrRNA遺伝子の塩基配列が、これら各細菌の16SrRNA遺伝子の塩基配列と好ましくは99.9%以上、より好ましくは100%の相同性を有し、且つ、好ましくはこれら各細菌と同一の菌学的性質を有する菌株をいう。
【0025】
本技術では、本技術の目的を達成できる特性(例えば、2’-FL、および、3’-SLまたはLNTの資化能を持つ特性)を有する限り、上記ビフィドバクテリウム属細菌の変異株を用いることもできる。また、当該変異株は、上記ビフィドバクテリウム属細菌と同一の菌学的性質を有し、かつ、上記ビフィドバクテリウム属細菌と同等以上の2’-FL、および、3’-SLまたはLNTの資化能を有する細菌が好ましい。ある変異株が上記ビフィドバクテリウム属細菌と「同等以上の2’-FL、および、3’-SLまたはLNTの資化能」を有するか否かは、例えば、後述する実施例の方法により確認することができる。
【0026】
このような変異株は、上記ビフィドバクテリウム属細菌に非人為的に変異が導入されることで構築されてもよい。また、UV等の変異原を用いた処理により上記細菌に変異を導入して構築してもよく、種々の遺伝子操作法により上記株に変異を導入して構築してもよい。
【0027】
なお、上記例示した菌株名で特定される菌株には、当該菌株名で所定の機関に寄託や登録がなされている株そのもの(以下、説明の便宜上、「寄託菌株」ともいう)に限られず、それと実質的に同等な株(「派生株」または「誘導株」ともいう)も包含される(以下の菌株も同様)。菌株について、「上記寄託菌株と実質的に同等の株」とは、上記寄託菌株と同一の種に属し、本件寄託菌株と同等以上の本技術の特性が得られる株を意味する。上記寄託菌株と実質的に同等の株は、例えば、当該寄託菌株を親株とする派生株であってよい。派生株としては、寄託菌株から育種された株や寄託菌株から自然に生じた株が挙げられる。
【0028】
実質的に同一の菌株、派生株は下記のような株が挙げられる。
(1)Randomly Amplified Polymorphic DNA法、Pulsed-field gel electrophoresis法により同一の菌株と判定される菌株(Probiotics in food/Health and nutritional properties and guidelines for evaluation 85 Page43に記載)
(2)当該寄託菌株由来の遺伝子のみ保有し、外来由来の遺伝子を持たず、DNAの同一性が95%以上(好適には98%以上)である菌株
(3)当該菌株から育種された株(遺伝子工学的改変、突然変異、自然突然変異を含む)、同一の形質を有する株
【0029】
<糖源の資化性の判定方法>
糖源を含むMRS(de Man-Rogosa-Sharpe)液体培地1mLに、菌株1v/v%ずつ接種し、嫌気条件下で37℃にて培養する。培養16時間後に濁度(OD660)を測定し、菌株を接種しなかった培地を同様に培養したコントロールの濁度を差し引いた値を以下の基準に照らし、資化性の有無および資化能の程度を判定する。コントロールとの差でOD660が、0.3以上を「良好な資化性あり」、0.4以上を「より良好な資化性あり」、0.5以上を「よりさらに良好な資化性あり」、0.6以上を「非常に良好な資化性あり」とする。
【0030】
本技術に係る各菌株は、例えば、同菌株を培養することにより増殖させることができる。
培養する方法は、本技術のビフィドバクテリウム属細菌が増殖できる限り特に限定されず、ビフィドバクテリウム属細菌の培養に通常用いられる方法を必要により適宜修正して用いることができる。例えば、培養温度は30~50℃でよく、35~45℃であることが好ましい。また培養は嫌気条件下で行うことが好ましく、例えば、炭酸ガス等の嫌気ガスを通気しながら培養することができる。また、液体静置培養等の微好気条件下で培養してもよい。
【0031】
本技術のビフィドバクテリウム属細菌を増殖させるために培養する培地としては、特に限定されず、ビフィドバクテリウム属細菌の培養に通常用いられる培地を必要により適宜修正して用いることができる。すなわち、各種HMOs以外の炭素源としては、例えば、ガラクトース、グルコース、フルクトース、マンノース、セロビオース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、デンプン加水分解物、廃糖蜜等の糖類を資化性に応じて使用できる。窒素源としては、例えば、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムなどのアンモニウム塩類や硝酸塩類を使用できる。また、無機塩類としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マンガン、硫酸第一鉄等を用いることができる。また、ペプトン、大豆粉、脱脂大豆粕、肉エキス、酵母エキス等の有機成分を用いてもよい。また、調製済みの培地としては、例えばMRS培地を好適に用いることができる。
【0032】
本技術のビフィドバクテリウム属細菌の好ましい資化成分としては、2’-FL、3’-SL、LNTが挙げられ、2’-FLを少なくとも含有することが好ましく、各菌株の資化能に応じて3’-SL、またはLNTを、さらに含有することが好ましい。加えて、各菌株の資化能に応じて3’-FL、6’-SL、およびLNnT等の各種HMOsを含有させることもできる。
【0033】
本技術に用いる2’-FLは、本技術のビフィドバクテリウム属細菌の増殖促進作用を有する。また、当該2’-FLと、各菌株の資化能に応じて3’-SLまたはLNTと、を組み合わせることで、より安定的に本技術のビフィドバクテリウム属細菌の増殖促進作用を発揮させることができる。さらに、各菌株の資化能に応じて3’-FL、6’-SL、およびLNnT等の各種HMOsを組み合わせることで、さらに安定的に本技術のビフィドバクテリウム属細菌の増殖促進作用を発揮させることができる。
【0034】
本技術の資化成分として使用する各種HMOsは、市販品を使用してもよいし、乳から調製してもよいし、公知の有機合成や酵素処理等にて得ても良い。また、各種HMOsを含む乳(例えば、母乳、粉ミルク、牛乳、乳製品)を使用してもよい。また、各種HMOsを乳(牛乳や粉ミルク、育乳用ミルク等)に配合した組成物(すなわち、HMOsを含む乳)を使用してもよい。
【0035】
本技術の資化成分として使用できるHMOsには、少なくとも2’-FLを少なくとも含有することが好ましく、各菌株の資化能に応じて3’-SL、またはLNTを、さらに含有することが好ましい。加えて、各菌株の資化能に応じて3’-FL、6’-SL、およびLNnTをさらに含有させることが好ましい。これらの各種HMOsの他に、一般的にHMOsとしては、例えば、3-ジフコシルラクトース、3-フコシル-3’-シアリルラクトース、ラクト-N-フコペンタオースI、ラクト-N-フコペンタオースII、ラクト-N-フコペンタオースIII、ラクト-N-フコペンタオースV、ラクト-N-ジフコシルヘキサオースI、ラクト-N-ジフコシルヘキサオースII、並びに、ラクト-N-シアリルペンタオース、LSTa、LSTbおよびLSTc等が挙げられる。当該HMOsの各オリゴ糖は公知の製造方法で得ることができる。本技術では、これらからなる群から選択される1種または2種以上のヒトミルクオリゴ糖も使用することができる。
【0036】
<本技術のビフィドバクテリウム属細菌の増殖促進用のプレバイオティクス>
前述した2’-FL、および、3’-SLまたはLNTは、前記(a)~(c)に示すビフィドバクテリウム属細菌に対して増殖促進作用を有し、プレバイオティクスとして使用できる。また、各菌株の資化能に応じて3’-FL、6’-SL、およびLNnT等の各種HMOsを、1種または2種以上組み合わせることも可能である。その他、各種用途に適合した任意成分を適宜用い、各用途に適合した公知の製造方法によって、製造することができる。
【0037】
本技術のプレバイオティクス組成物における、2’-FL、3’-SL、LNT、3’-FL、6’-SL、およびLNnT等の各種HMOsの使用量または含有量は、前記(a)~(c)に示す各ビフィドバクテリウム属細菌100質量部に対して、それぞれ、1~1,000,000質量部が好ましく、10~10,000質量部がより好ましい。
【0038】
当該プレバイオティクスの使用により、前記(a)~(c)に示す各ビフィドバクテリウム属細菌による、整腸作用、ミネラル吸収促進作用、炎症性腸疾患への予防・改善作用等といったヒトの健康に有益なプロバイオティクス効果も期待できる。
【0039】
<本技術のビフィドバクテリウム属細菌を含む組成物>
本技術の組成物は、プロバイオティクス組成物、飲食品組成物、医薬組成物等を含む意味である。また、本技術の組成物は、プロバイオティクス組成物が好適である。
【0040】
前記(a)~(c)に示す各ビフィドバクテリウム属細菌を含む組成物は、適用対象であるヒトまたは非ヒト動物(好適には哺乳類)に使用してもよく、ヒトおよびペットが好ましく、より好ましくはヒトである。さらに、本技術の適用対象者は、プロバイオティクス効果を望む者であれば特に限定されず、例えば、乳幼児、小児、大人、健常者、中高年、高齢者、および腸内環境の優れない者等が挙げられる。このうち、本技術は、乳幼児用、大人用、高齢者用に使用することが好ましい。
【0041】
また、本技術に用いられる前記(a)~(c)に示す各ビフィドバクテリウム属細菌は、ヒト由来であるため副作用が少なく安全性が高いので、継続して長期間摂取することも可能である。また、医薬品、飲食品等の幅広い用途の製品に使用できる。そして、本技術の組成物は、プロバイオティクスによって予防、改善または治療可能な症状または疾患に有効に使用することもできる。
【0042】
このように、前記(a)~(c)に示す各ビフィドバクテリウム属細菌は、有効成分としてプロバイオティクス組成物に含有させることもでき、また、前記(a)~(c)に示す各ビフィドバクテリウム属細菌は、これら各種製剤または各種組成物等の製造のために使用することもできる。さらに、前記(a)~(c)に示す各ビフィドバクテリウム属細菌は、プロバイオティクス用の細菌として使用することも可能である。
【0043】
本技術のビフィドバクテリウム属細菌は、そのまま用いることが可能であり、または生理的、医薬品的若しくは飲食品的に許容される通常の担体若しくは希釈剤等と共に混合して用いることもできる。
【0044】
前記(a)~(c)に示す各ビフィドバクテリウム属細菌の投与または摂取は、少なくとも1週間摂取することが好ましく、少なくとも4週間継続して摂取ことがより好ましく、毎日摂取することが望ましい。
【0045】
前記(a)~(c)に示す各ビフィドバクテリウム属細菌の使用量は、安全性が高いので特に制限されないが、例えば、1×10~1×1012CFU/kg体重/日が好ましく、1×10~1×1011CFU/kg体重/日がより好ましく、1×10~1×1010CFU/kg体重/日がさらに好ましい。または、1個体(Body weight)あたりの使用量(投与量)としては、10~1014CFU/日が好ましく、10~1013CFU/日がより好ましく、10~1012CFU/日がさらに好ましい。なお、本技術において、CFUとは、Colony forming unitの意味であり、コロニー形成単位を表す。前記細菌が死菌の場合、CFUは、個細胞(cells)と置き換えることができる。
【0046】
また、前記(a)~(c)に示す各ビフィドバクテリウム属細菌の使用量は、0.01~100mL/体重kg/日であることが好ましく、0.1~10mL/体重kg/日であることがより好ましい。
【0047】
<医薬組成物>
本技術の医薬組成物は、前記(a)~(c)に示す各ビフィドバクテリウム属細菌を含有する限り特に制限されない。当該医薬組成物は、前記(a)~(c)に示す各ビフィドバクテリウム属細菌を含有する、整腸用組成物等としても使用できる。
【0048】
本技術の医薬組成物としては、前記(a)~(c)に示す各ビフィドバクテリウム属細菌をそのまま使用してもよく、生理的に許容される液体または固体の製剤担体を配合し製剤化して使用してもよい。
【0049】
また、本技術の医薬組成物は、経口組成物成分としてヒト腸内より得ることができる前記(a)~(c)に示す各ビフィドバクテリウム属細菌を有効成分とするため、種々の疾患を罹患した患者に対しても安心して投与できる。また、ビフィドバクテリウム属細菌は、動物の腸内にも存在するため、本技術は、長期間、連続的に投与しても副作用が生じにくいことが期待される。また、ビフィドバクテリウム属細菌は、乳幼児や小児にも安全に投与することができる。したがって、本技術は、乳幼児や小児に対する疾患またはその症状の予防、改善および/または治療にも好適である。
【0050】
本技術は、治療目的使用であっても、非治療目的使用であってもよい。
「非治療目的」とは、医療行為、すなわち、治療による人体への処置行為を含まない概念である。例えば、健康増進、美容行為等が挙げられる。
「改善」とは、疾患、症状または状態の好転;疾患、症状または状態の悪化防止、遅延;疾患または症状の進行の逆転、防止または遅延をいう。
「予防」とは、適用対象における疾患若しくは症状の発症の防止や遅延、または適用対象の疾患若しくは症状の危険性の低下をいう。
【0051】
本技術の医薬組成物の剤形は特に制限されず、具体的には、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、坐剤、注射剤、軟膏剤、貼付剤、点眼剤、および点鼻剤等を例示できる。また、製剤化にあたっては、製剤担体として通常使用される賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤、界面活性剤、または注射剤用溶剤等の添加剤を使用することができる。
【0052】
また、製剤化に際しては、本技術に係る医薬組成物には、通常製剤化に用いられている賦形剤、pH調整剤、着色剤、矯味剤等の成分を用いることができる。また、本発明の効果を損なわない限り、本技術に係る医薬組成物には、公知のまたは将来的に見出される本技術に関連する疾患または症状に対する予防、改善および/または治療の効果を有する成分を使用することもできる。
加えて、製剤化は剤形に応じて適宜公知の方法により実施できる。製剤化に際しては、適宜、製剤担体を配合して製剤化してもよい。
【0053】
本技術の医薬組成物における前記(a)~(c)に示す各ビフィドバクテリウム属細菌の含有量は、剤形、用法、患者の年齢、性別、疾患の種類、疾患の程度、およびその他の条件等により適宜設定されるが、通常、1×10~1×1012cfu/gまたは1×10~1×1012cfu/mLの範囲内であることが好ましく、1×10~1×1011cfu/gまたは1×10~1×1011cfu/mLの範囲内であることがより好ましい。前記(a)~(c)に示す各ビフィドバクテリウム属細菌が死菌の場合、cfu/gまたはcfu/mLは、個細胞/gまたは個細胞/mLと置き換えることができる。
【0054】
本技術の医薬組成物の投与時期は特に限定されず、対象となる症状または疾患の治療方法に従って、適宜投与時期を選択することが可能である。また、予防的に投与してもよく、維持療法に用いてもよい。また、投与形態は製剤形態、患者の年齢、性別、その他の条件、患者の症状の程度等に応じて決定されることが好ましい。なお、本技術の医薬組成物は、いずれの場合も1日1回または複数回に分けて投与することができ、また、数日または数週間に1回の投与としてもよい。
【0055】
<飲食品組成物>
本技術の飲食品組成物は、前記(a)~(c)に示す各ビフィドバクテリウム属細菌を公知の飲食品に添加することによって製造してもよいし、前記(a)~(c)に示す各ビフィドバクテリウム属細菌を飲食品の原料中に混合して新たな飲食品組成物として製造することもできる。
【0056】
本技術の飲食品組成物は、前記(a)~(c)に示す各ビフィドバクテリウム属細菌を含有する限り特に制限されず、飲食品組成物としては、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果汁飲料、および乳酸菌飲料等の飲料(これらの飲料の濃縮原液および調製用粉末を含む);アイスクリーム、シャーベット、かき氷等の氷菓;飴、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、および焼き菓子等の菓子類;加工乳、乳飲料、発酵乳、ドリンクヨーグルト、およびバター等の乳製品;パン;経腸栄養食、おかゆ等の流動食、離乳食、育児用ミルク、スポーツ飲料;その他機能性食品等が例示される。また、飲食品は、サプリメントであってもよく、例えばタブレット状のサプリメントであってもよい。サプリメントである場合には、一日当りの食事量および摂取カロリーについて他の食品に影響されることなく、前記(a)~(c)に示す各ビフィドバクテリウム属細菌を摂取できる。
【0057】
また、本技術における飲食品組成物には、本発明の効果を損なわない限り、前述のプロバイオティクス効果を有する成分またはプロバイオティクス効果を補助する成分を使用することができる。例えば、本技術における飲食品組成物は、ホエイタンパク質、カゼインタンパク質、大豆タンパク質、若しくはエンドウ豆タンパク質(ピープロテイン)等の各種タンパク質若しくはその混合物、分解物;ロイシン、バリン、イソロイシン若しくはグルタミン等のアミノ酸;ビタミンB6若しくはビタミンC等のビタミン類;クレアチン;クエン酸;またはフィッシュオイル等の成分と、前記(a)~(c)に示す各ビフィドバクテリウム属細菌とを組合せて調製することができる。
【0058】
また、本技術で定義される飲食品組成物は、プロバイオティクス等の用途(保健用途を含む)が表示された飲食品として提供・販売されることが可能である。また、飲食品の摂取対象として、「ビフィドバクテリウム属細菌と暮らす生活を望む方」、「腸内環境を改善したい方」、「お腹の調子を整えたい方」、「良好な腸内環境を形成したい方」等と表示して提供・販売されることが可能である。
「表示」行為には、需要者に対して前記用途を知らしめるための全ての行為が含まれ、前記用途を想起・類推させうるような表現であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体等の如何に拘わらず、全て本発明の「表示」行為に該当する。
【0059】
また、「表示」は、需要者が上記用途を直接的に認識できるような表現により行われることが好ましい。具体的には、飲食品に係る商品または商品の包装に前記用途を記載したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、またはこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁気的(インターネット等)方法により提供する行為等が挙げられる。
【0060】
一方、表示内容としては、行政等によって認可された表示(例えば、行政が定める各種制度に基づいて認可を受け、そのような認可に基づいた態様で行う表示等)であることが好ましい。また、そのような表示内容を、包装、容器、カタログ、パンフレット、POP等の販売現場における宣伝材、その他の書類等へ付することが好ましい。
【0061】
また、「表示」には、健康食品、機能性食品、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、医薬用部外品等としての表示も挙げられる。この中でも特に、消費者庁によって認可される表示、例えば、特定保健用食品、栄養機能食品、若しくは機能性表示食品に係る制度、またはこれらに類似する制度にて認可される表示等が挙げられる。具体的には、特定保健用食品としての表示、条件付き特定保健用食品としての表示、身体の構造や機能に影響を与える旨の表示、疾病リスク減少表示、科学的根拠に基づいた機能性の表示等を挙げることができ、より具体的には、健康増進法に規定する特別用途表示の許可等に関する内閣府令(平成二十一年八月三十一日内閣府令第五十七号)に定められた特定保健用食品としての表示(特に保健の用途の表示)およびこれに類する表示が典型的な例である。
【0062】
本技術の飲食品組成物における前記(a)~(c)に示す各ビフィドバクテリウム属細菌の含有量は、飲食品組成物の態様によって適宜設定されるが、通常、飲食品中に、1×10~1×1012cfu/gまたは1×10~1×1012cfu/mLの範囲内であることが好ましく、1×10~1×1011cfu/gまたは1×10~1×1011cfu/mLの範囲内であることがより好ましい。
【0063】
本技術に係る飲食品組成物は、栄養組成物として用いることができる。本技術において、「栄養組成物」は、経口摂取される飲食品を指す。本技術で用いることができる栄養組成物の種類は特に限定されないが、好ましくは調製乳、流動食等であり、より好ましくは調製乳である。摂取対象は、乳児、幼児、小児、成人を問わないが、好ましくは乳児及び幼児である。
調製乳には、調製粉乳、調製液状乳が含まれる。
調製粉乳は、乳および乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)において、「生乳、牛乳、特別牛乳、またはこれらを原料として製造した食品を加工し、または主要原料とし、乳幼児に必要な栄養分を加え粉末状にしたもの」として定義される。
調製液状乳は、前記省令において、「生乳、牛乳、特別牛乳、またはこれらを原料として製造した食品を加工し、または主要原料とし、乳幼児に必要な栄養分を加え液状にしたもの」として定義される。
また、調製乳は、各種の蛋白質、油脂、炭水化物、ミネラル類、ビタミン類等の栄養成分が配合されたものであって、粉末状又は液状に加工されたものも含まれる。
また、調製乳にはさらに、健康増進法で規定される特別用途食品における「乳児用調製粉乳」、「乳児用調製液状乳」「妊産婦、授乳婦用粉乳」が含まれ、0~12か月の乳児を対象とする乳幼児用調製粉乳、6~9か月以降の乳児および年少幼児(3歳まで)を対象とするフォローアップミルク、出生時の体重が2500g未満の新生児(低出生体重児)を対象とする低出生体重児用調製粉乳、牛乳アレルギーや乳糖不耐症等の病的状態を有する乳幼児の治療に用いられる各種治療用ミルク、幼児向け調製粉乳、成人用栄養粉末、高齢者用栄養粉末等の態様も含まれる。
【0064】
また、本技術に係る飲食品組成物(栄養組成物を含む)は、保健機能食品や病者用食品に適用することができる。保健機能食品制度は、内外の動向、従来からの特定保健用食品制度との整合性を踏まえて、通常の食品のみならず錠剤、カプセル等の形状をした食品を対象として設けられたもので、特定保健用食品(個別許可型)と栄養機能食品(規格基準型)の2種類の類型からなる。
【0065】
<組成物の製造方法>
本技術の組成物の製造方法について、以下に説明する。本技術の組成物の製造方法において、前記(a)~(c)に示す各ビフィドバクテリウム属細菌の添加工程は、組成物の製造工程におけるいずれの段階で行ってもよい。
【0066】
組成物の製造方法の一例として、下記工程Aおよび工程Bを含む、組成物の製造方法が挙げられる。
工程A:培地で前記(a)~(c)に示す各ビフィドバクテリウム属細菌を培養し、前記(a)~(c)に示す各ビフィドバクテリウム属細菌を含む培養物または生産物を得る工程
工程B:前記培養物または生産物を乾燥に供し、菌末または乾燥物を得る工程
【0067】
前記(a)~(c)に示す各ビフィドバクテリウム属細菌またはこれを含む培養物の形態は、特に限定されず、液体または固体の何れでもよいが、当該形態は、乾燥形態(例えば、菌末状や培養乾燥物等)が、製造時や保管時の取扱が容易な観点から、好適である。また、当該培養物として、上述のように、培養液が分離された菌体自体、菌体を含む培養物、および、菌体が除去された培養物などが挙げられる。
【0068】
前記乾燥方法も、本技術の効果を損なわない限り特に限定されないが、噴霧乾燥法(スプレードライ法)、レトルト殺菌法、凍結乾燥法、UHT殺菌法、加圧殺菌法、高圧蒸気滅菌法、乾熱滅菌法、流通蒸気消毒法、電磁波殺菌法、電子線滅菌法、高周波滅菌法、放射線滅菌法、紫外線殺菌法、酸化エチレンガス滅菌法、過酸化水素ガスプラズマ滅菌法、化学的殺菌法(アルコール殺菌法、ホルマリン固定法、電解水処理法)等が挙げられる。本技術では、凍結乾燥または噴霧乾燥が好適である。
【0069】
また、菌体は破砕されていてもよく、当該破砕物は、生菌を破砕した菌体でも死菌を破砕した菌体でもよく、破砕後に加熱や凍結乾燥等を施した菌体でもよい。
このうち、生菌率を高くする観点から、前記培養物を凍結乾燥に供するのが好適であり、また、生産効率を高くする観点から、前記培養物を噴霧乾燥に供するのが好適である。
【0070】
組成物の製造方法の一例として、工程C、または工程Dの少なくともいずれかを含む、組成物の製造方法が挙げられる。
工程C:前記(a)~(c)に示す各ビフィドバクテリウム属細菌、およびプレバイオティクスを混合する工程
工程D:前記(a)~(c)に示す各ビフィドバクテリウム属細菌、および乳成分を混合する工程
このとき前記(a)~(c)に示す各ビフィドバクテリウム属細菌として、前記(a)~(c)に示す各ビフィドバクテリウム属細菌を含む組成物を使用してもよい。さらに、当該組成物に、これ以外のビフィドバクテリウム属細菌や乳酸菌等のプロバイオティクスをさらに含んでもよい。
【0071】
当該プレバイオティクスを混合する場合、当該製造工程のいずれの工程であってもよい。
また、乳成分は粉体が好適であり、前記(a)~(c)に示す各ビフィドバクテリウム属細菌の菌末と混合することがより好適である。
【0072】
前記乳成分としては、本技術の効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば、牛乳、水牛乳、羊乳、山羊乳、馬乳、脱脂乳、脱脂濃縮乳、脱脂粉乳、濃縮乳、全脂粉乳、クリーム、バター、バターミルク、練乳および乳タンパク質等を挙げることができ、これらからなる群から選ばれる1種または2種以上を使用することができる。また、乳タンパク質として、特に限定されないが、例えば、ホエイ、カゼイン、およびこれらの加水分解物等が挙げられ、これらからなる群から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。乳成分のうち、牛乳由来の成分が好適である。
【0073】
前記加水分解物は、前記乳成分(好適には乳タンパク質)を加水分解することで、ホエイ加水分解物やカゼイン加水分解物等を製造することができる。当該加水分解として、例えば、酸・アルカリ加水分解、および酵素加水分解等が挙げられる。このうち、酵素加水分解が好適であり、当該酵素として、タンパク質分解酵素が好適である。前記タンパク質分解酵素として、例えば、プロテアーゼ、トリペプシン、キモトリプシン、プラスミン、ペプシン、パパイン、ペプチダーゼおよびアミノペプチダーゼ等が挙げられる。加水分解反応の際のpHは、使用する酵素の至適pHに適宜調整して、例えばpH2~6等で行うことができる。加水分解反応の際の温度は、特に限定されず、通常30~60℃の範囲で行うことが好適であり、また、反応時間は、2~10時間が好ましい。
【0074】
また、本発明の組成物として、サプリメントやタブレットを製造する場合、前記(a)~(c)に示す各ビフィドバクテリウム属細菌を含む培養物と賦形剤等を混合して混合物を得る工程、当該所定の形状に成形する工程を含むことができる。成形工程として、例えば、打錠等が挙げられ、打錠の一例としては、例えば、粉末や顆粒の混合物を圧縮成形してタブレットを得ること等が挙げられる。
【0075】
さらに、本技術の組成物の製造方法の一例として、前記(a)~(c)に示す各ビフィドバクテリウム属細菌を含む発酵飲食品(好適には発酵乳)の製造方法が挙げられる。
前述の製造法で得られた前記菌末を、発酵乳原料に添加し、前記(a)~(c)に示す各ビフィドバクテリウム属細菌を用いてこのビフィドバクテリウム属細菌を含む発酵乳を得る工程を行う。または、前記菌末と、発酵乳とを混合して前記(a)~(c)に示す各ビフィドバクテリウム属細菌を含む発酵乳を得る工程を行う。当該組成物中の本技術の細菌の菌体量は、所定の菌体量になるように発酵条件や配合量を調整する。これにより、前記(a)~(c)に示す各ビフィドバクテリウム属細菌を含む発酵飲食品(好適には発酵乳または発酵製品)を提供することができる。
【実施例0076】
以下、実施例に基づいて本技術を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本技術の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0077】
森永乳業株式会社所有のビフィドバクテリウム属細菌4株(以下、「候補菌株」とする)について、糖源を表1に記載の6種類のヒトミルクオリゴ糖(Jennewein Biotechnologie GmbH社製)に変更したMRS(de Man-Rogosa-Sharpe)液体培地(組成:表2)を作成し、16時間脱気した培地200μLに菌液を1v/v%ずつ接種し、嫌気条件下で37℃にて培養した。培養16時間後の濁度(OD660)を測定し、資化性の有無および資化能の程度を判定した。OD660が、0.3以上を「良好な資化性あり」、0.5以上を「より良好な資化性あり」、0.8以上を「非常に良好な資化性あり」、と判断した。
また、比較対象として、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(JCM 1192)およびビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス(ATCC 15697)を用いた。培養16時間後の濁度(OD660)の測定値の平均を表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
以上の結果より、4種の候補菌株はいずれも比較対象より2’-FLの資化性が高く、菌株によって、他のヒトミルクオリゴ糖も資化することが判明した。
【0081】
[製造例]
下記に本技術の組成物、医薬組成物、発酵乳、調製粉乳、および飲食品組成物の製造例を示すが、本技術の組成物は、これに限定されない。
【0082】
〔製造例1〕
ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス(NITE BP-03068)を、MRS液体培地3mLに添加し、37℃で16時間嫌気培養後、培養液を濃縮し、凍結乾燥を行い、細菌の凍結乾燥粉末(菌末)を得る。菌末と、ホエイタンパク質濃縮物(Whey protein concentrate;WPC)と、プレバイオティクス(2’-FL、およびLNT)を均一に混合して組成物を得る。当該組成物20gを200gの水に溶かし、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス(NITE BP-03068)を含む組成物を得る。
【0083】
〔製造例2〕
ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-03058)を、MRS液体培地3mLに添加し、37℃で16時間嫌気培養後、培養液を濃縮し、凍結乾燥を行い、細菌の凍結乾燥粉末(菌末)を得る。菌末と、乳タンパク質濃縮物の乾燥粉末(MPC480、フォンテラ社製、タンパク質含量80質量%、カゼインタンパク質:ホエイタンパク質=約8:2)と、プレバイオティクス(2’-FL、3’-SL、およびLNT)を均一に混合して、組成物を得る。当該組成物20gを200gの水に溶かし、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-03058)を含む組成物を得る。
【0084】
〔製造例3〕
ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-03067)を、MRS液体培地3mLに添加し、37℃で16時間嫌気培養後、培養液を濃縮し、凍結乾燥を行い、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-03067)を含む細菌の凍結乾燥粉末(菌末)を得る。次に、プレバイオティクス(2’-FL、3’-SL、およびLNT)、結晶セルロースを撹拌造粒機に投入し混合する。その後、精製水を加え造粒、造粒物を乾燥し、細菌の発酵成分およびプレバイオティクスを含有し、賦形剤を含有してなる造粒物(医薬組成物)を得る。このようにして、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-03067)を含む造粒物を得ることができる。
【0085】
〔製造例4〕
フィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-03067)を添加した発酵乳の製造法を下記に示す。
まず、乳原料、および必要に応じた水、その他の成分等を混合し、好ましくは均質化処理を行い、加熱殺菌処理する。均質化処理および加熱殺菌処理は常法により行うことができる。加熱殺菌された殺菌調乳液に乳酸菌スターターを添加(接種)し、所定の発酵温度に保持して発酵させ、発酵物を得る。発酵によりカードが形成される。
乳酸菌スターターとしては、例えば、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)等のヨーグルト製造に通常用いられている乳酸菌を用いることができる。pHが目標の値に達したら、形成されたカードを撹拌により破砕し、10℃以下に冷却して発酵物を得る。10℃以下に冷却することにより、乳酸菌の活性を低下させて酸の生成を抑制することができる。
【0086】
次いで、発酵工程で得られた発酵物を加熱処理して加熱後発酵物(加熱処理後の発酵物)を得る。発酵物を適度に加熱することにより、加熱後発酵物中の乳酸菌による酸の生成を抑えることができる。これによって、その後の製造工程中および/またはビフィズス菌入り濃縮発酵乳の保存中のpHの低下を抑えることができ、その結果、ビフィズス菌の生残性を向上させることができる。
次いで、加熱処理工程で得られた加熱後発酵物に、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-03067)、およびプレバイオティクス(2’-FL、3’-SL、およびLNT)を添加する。ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-03067)の添加量は、加熱後発酵物に対して1×10~1×1011CFU/mLが好ましく、1×10~1×1010CFU/mLがより好ましい。ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-03067)が死菌の場合、CFU/mLは、個細胞/mLと置き換えることができる。
【0087】
加熱後発酵物に、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-03067)、およびプレバイオティクスを添加した後、濃縮を行う。濃縮工程は公知の濃縮方法を適宜用いて行うことができる。例えば遠心分離法または膜分離法を用いることができる。
遠心分離法では、被濃縮物(ビフィズス菌およびプレバイオティクスが添加された加熱後発酵物)中のホエイが除去されて、固形分濃度が高められたビフィズス菌およびプレバイオティクス入り濃縮発酵乳が得られる。
上述のようにして得られたビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-03067)を含む発酵乳を製造することができる。
【0088】
〔製造例5〕
ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス(NITE BP-03068)を添加した調製粉乳の製造法を下記に示す。
脱塩牛乳乳清蛋白質粉末(ミライ社製)10kg、牛乳カゼイン粉末(フォンテラ社製)6kg、乳糖(ミライ社製)48kg、ミネラル混合物(富田製薬社製)920g、およびビタミン混合物(田辺製薬社製)32g、ラクチュロース(森永乳業社製)500g、ラフィノース(日本甜菜製糖社製)500g、ガラクトオリゴ糖液糖(ヤクルト薬品工業社製)900gを温水300kgに溶解し、さらに90℃で10分間加熱溶解し、調製脂肪(太陽油脂社製)28kgを添加して均質化した。その後、殺菌、濃縮の工程を行って噴霧乾燥し、調製粉乳約95kgを調製した。これに、澱粉に倍散したビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス(NITE BP-03068)の菌体粉末(1.8×1011cfu/g、森永乳業株式会社製)100gを加えてビフィズス菌・オリゴ糖配合調製粉乳約95kgを調製する。得られた調製粉乳を水に溶解して、標準調乳濃度である総固形分濃度14%(w/V)の調乳液としたとき、調乳液中のビフィズス菌数は2.7×10cfu/100mLを得ることができる。
【0089】
上述のようにして得られたビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス(NITE BP-03068)を含む調製粉乳を摂取または投与することにより、ヒトの腸内環境を改善することができる。
【0090】
〔製造例6〕
ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-03058)を添加した腸内環境改善食の製造法を下記に示す。
ビフィドバクテリウム・ビフィダム(NITE BP-03058)を、MRS液体培地3mLに添加し、37℃で16時間嫌気培養後、培養液を濃縮し、凍結乾燥を行い、細菌の凍結乾燥粉末(菌末)を得、本技術の組成物を得る。セルロースが多く含有する食品(野菜、サラダ等)に本技術の菌末を加えて調理することもでき、これにより本技術の組成物を得ることもできる。
もしくは、菌末を、食事をする際に、食前、食中または食後に摂取する。規則正しい食事(主食、副菜、主菜のある食事)を行えば必然的に食物繊維を摂取するため、本技術の乾燥菌末製品を、食事の際に一緒に摂取することで、大人の腸内環境の改善効果が期待できる。
本技術の腸内環境改善食を、便秘や下痢等の腸に問題を感じる方が継続摂取することで、より腸内環境の改善効果が期待できる。
【0091】
以上のことから、2’-FL、および、3’-SL、またはLNTの資化能を有する本技術のビフィドバクテリウム属細菌、および当該ビフィドバクテリウム属細菌を含む組成物、当該ビフィドバクテリウム属細菌増殖促進用組成物は、腸内でのビフィドバクテリウム属細菌の増殖を手助けすることができ、また、良好な腸内フローラ形成、腸内環境の改善等に有効に使用することができる。