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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083596
(43)【公開日】2024-06-21
(54)【発明の名称】プログラム、出力装置及び出力方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/361 20210101AFI20240614BHJP
   A61B 5/352 20210101ALI20240614BHJP
【FI】
A61B5/361
A61B5/352
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024066375
(22)【出願日】2024-04-16
(62)【分割の表示】P 2024500597の分割
【原出願日】2023-09-20
(31)【優先権主張番号】P 2022183474
(32)【優先日】2022-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】519409257
【氏名又は名称】株式会社カルディオインテリジェンス
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 雄一
(72)【発明者】
【氏名】高田 智広
(72)【発明者】
【氏名】谷口 浩久
(57)【要約】
【課題】患者が心房細動であるか否かを医師が診断するために有用な心電図の波形を医師が把握できるようにする。
【解決手段】コンピュータに、心臓筋肉の電気的活動にともなう活動電位の時間変化を測定した全体心電図データのうち、細動波が含まれる複数の細動波心電図データを取得する取得ステップと、取得した複数の細動波心電図データのうち、細動波の振幅が所定範囲内であり、頻脈の症状を示しておらず、細動波の周波数範囲よりも高い周波数範囲で所定の振幅以上のノイズが重畳されていない明瞭心電図データを出力する出力ステップと、を実行させる。

【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
心臓筋肉の電気的活動にともなう活動電位の時間変化を測定した全体心電図データのうち、細動波が含まれる複数の細動波心電図データを取得する取得ステップと、
取得した前記複数の細動波心電図データのうち、前記細動波の振幅が所定範囲内であり、頻脈の症状を示しておらず、前記細動波の周波数範囲よりも高い周波数範囲で所定の振幅以上のノイズが重畳されていない明瞭心電図データを出力する出力ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【請求項2】
前記取得ステップでは、細動波が明瞭な心電図データと、細動波を含み且つ細動波が不明瞭な心電図データとを入力した場合に、前記細動波が明瞭な心電図データを出力し、前記細動波を含み且つ当該細動波が不明瞭な心電図データを出力しないように学習した機械学習モデルに対し、取得した一以上の前記細動波心電図データを入力し、入力した前記一以上の細動波心電図データのうち前記機械学習モデルから出力された前記明瞭心電図データを取得し、
前記出力ステップでは、前記機械学習モデルから出力された前記明瞭心電図データを出力する、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記機械学習モデルは、細動波が明瞭であると医療従事者が判定した前記心電図データと、細動波を含み且つ細動波が不明瞭であると前記医療従事者が判定した前記心電図データとを入力した場合に、前記細動波が明瞭な心電図データを出力し、前記細動波を含み且つ当該細動波が不明瞭な心電図データを出力しないように学習した機械学習モデルである、
請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記出力ステップでは、複数の前記明瞭心電図データのうち、それぞれの前記明瞭心電図データに含まれる心拍のうち細動波が明瞭な心拍の割合に基づいて選択した一以上の前記明瞭心電図データを出力する、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項5】
前記出力ステップでは、それぞれの前記明瞭心電図データに含まれる心拍のうち細動波が明瞭な心拍の割合が高い順に1又は所定数の細動波心電図データを特定し、特定した当該細動波心電図データを出力する、
請求項2又は3に記載のプログラム。
【請求項6】
前記取得ステップでは、前記全体心電図データが測定された日付及び時間帯ごとに当該全体心電図データを分割した複数の分割心電図データのうち、細動波が含まれる複数の前記分割心電図データを前記細動波心電図データとして取得し、
前記出力ステップでは、測定された前記日付又は前記時間帯が異なる複数の前記明瞭心電図データを表示装置に出力する、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項7】
前記出力ステップでは、複数の前記明瞭心電図データのうち、細動波の明瞭度に基づいて選択された複数の代表波形データを表示装置に出力し、
出力した前記複数の代表波形データのうち、ユーザにより選択された前記代表波形データを選択波形データとして出力する、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項8】
前記出力ステップでは、取得した前記明瞭心電図データに含まれる細動波の前記明瞭度が高い順に、前記明瞭心電図データを前記代表波形データとして出力する。
請求項7に記載のプログラム
【請求項9】
心臓筋肉の電気的活動にともなう活動電位の時間変化を測定した全体心電図データのうち、細動波が含まれる複数の細動波心電図データを取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記複数の細動波心電図データのうち、前記細動波の振幅が所定範囲内であり、頻脈の症状を示しておらず、前記細動波の周波数範囲よりも高い周波数範囲で所定の振幅以上のノイズが重畳されていない明瞭心電図データを出力する出力部と、
を備える出力装置。
【請求項10】
コンピュータが実行する、
心臓筋肉の電気的活動にともなう活動電位の時間変化を測定した全体心電図データのうち、細動波が含まれる複数の細動波心電図データを取得する取得ステップと、
取得した前記複数の細動波心電図データのうち、前記細動波の振幅が所定範囲内であり、頻脈の症状を示しておらず、前記細動波の周波数範囲よりも高い周波数範囲で所定の振幅以上のノイズが重畳されていない明瞭心電図データを出力する出力ステップと、
を備える出力方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心電図を解析するためのプログラム、出力装置及び出力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発作性心房細動等の心臓疾患の診断のために、長時間の心電図の検査が必要になることがある。心電図には、24時間で10万波形におよぶ波形が含まれるため、特に循環器の専門医ではない医師が心電図のデータを元に、このような心臓疾患の診断を下すのが難しい。特許文献1には、モニタリングされた心電図(ECG)サンプルにおいて異常拍動が検出された場合に、この心電図サンプルに専門医による応急精査を行うためのフラグを付けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2019-502426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術では、応急精査を行うためのフラグが付された心電図サンプルを精査のために循環器の専門医に伝達する。一方、心房細動が発生している状態の心電波形には、その特徴である細動波が明瞭である場合と細動波が不明瞭な場合とが存在する。従来は、心臓の非専門医が、細動波が不明瞭な心房細動波形を見た場合、心房細動であるか否かを診断することができなかった。
【0005】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、患者が心房細動であるか否かを医師が診断するために有用な心電図の波形を医師が把握できるようにすることができるプログラム、出力装置及び出力方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様のプログラムは、コンピュータに、心臓筋肉の電気的活動にともなう活動電位の時間変化を測定した全体心電図データのうち、細動波が含まれる複数の細動波心電図データを取得する取得ステップと、取得した前記複数の細動波心電図データのうち、前記細動波の振幅が所定範囲内であり、頻脈の症状を示しておらず、前記細動波の周波数範囲よりも高い周波数範囲で所定の振幅以上のノイズが重畳されていない明瞭心電図データを出力する出力ステップと、を実行させる。
【0007】
前記取得ステップでは、細動波が明瞭な心電図データと、細動波を含み且つ細動波が不明瞭な心電図データとを入力した場合に、前記細動波が明瞭な心電図データを出力し、前記細動波を含み且つ当該細動波が不明瞭な心電図データを出力しないように学習した機械学習モデルに対し、取得した一以上の前記細動波心電図データを入力し、入力した前記一以上の細動波心電図データのうち前記機械学習モデルから出力された前記明瞭心電図データを取得し、前記出力ステップでは、前記機械学習モデルから出力された前記明瞭心電図データを出力してもよい。
【0008】
前記機械学習モデルは、細動波が明瞭であると医療従事者が判定した前記心電図データと、細動波を含み且つ細動波が不明瞭であると前記医療従事者が判定した前記心電図データとを入力した場合に、前記細動波が明瞭な心電図データを出力し、前記細動波を含み且つ当該細動波が不明瞭な心電図データを出力しないように学習した機械学習モデルであってもよい。
【0009】
前記出力ステップでは、複数の前記明瞭心電図データのうち、それぞれの前記明瞭心電図データに含まれる心拍のうち細動波が明瞭な心拍の割合に基づいて選択した一以上の前記明瞭心電図データを出力してもよい。前記出力ステップでは、それぞれの前記明瞭心電図データに含まれる心拍のうち細動波が明瞭な心拍の割合が高い順に1又は所定数の細動波心電図データを特定し、特定した当該細動波心電図データを出力してもよい。前記取得ステップでは、前記全体心電図データが測定された日付及び時間帯ごとに当該全体心電図データを分割した複数の分割心電図データのうち、細動波が含まれる複数の前記分割心電図データを前記細動波心電図データとして取得し、前記出力ステップでは、測定された前記日付又は前記時間帯が異なる複数の前記明瞭心電図データを表示装置に出力してもよい。
【0010】
前記出力ステップでは、複数の前記明瞭心電図データのうち、細動波の明瞭度に基づいて選択された複数の代表波形データを表示装置に出力し、出力した前記複数の代表波形データのうち、ユーザにより選択された前記代表波形データを選択波形データとして出力してもよい。前記出力ステップでは、取得した前記明瞭心電図データに含まれる細動波の前記明瞭度が高い順に、前記明瞭心電図データを前記代表波形データとして出力してもよい。
【0011】
本発明の第2の態様の出力装置は、心臓筋肉の電気的活動にともなう活動電位の時間変化を測定した全体心電図データのうち、細動波が含まれる複数の細動波心電図データを取得する取得部と、前記取得部が取得した前記複数の細動波心電図データのうち、前記細動波の振幅が所定範囲内であり、頻脈の症状を示しておらず、前記細動波の周波数範囲よりも高い周波数範囲で所定の振幅以上のノイズが重畳されていない明瞭心電図データを出力する出力部と、を備える。
【0012】
本発明の第3の態様の出力方法は、コンピュータが実行する、心臓筋肉の電気的活動にともなう活動電位の時間変化を測定した全体心電図データのうち、細動波が含まれる複数の細動波心電図データを取得する取得ステップと、取得した前記複数の細動波心電図データのうち、前記細動波の振幅が所定範囲内であり、頻脈の症状を示しておらず、前記細動波の周波数範囲よりも高い周波数範囲で所定の振幅以上のノイズが重畳されていない明瞭心電図データを出力する出力ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、患者が心房細動であるか否かを医師が診断するために有用な心電図の波形を医師が把握できるようにするという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態の心電図出力システムSの概要を説明するための図である。
図2】出力装置の構成を示す図である。
図3】全体心電図データ及び分割心電図データの例を示す図である。
図4】細動波を含む心電図の例を示す図である。
図5】細動波が明瞭な心電図データの例を示す。
図6】細動波が不明瞭な心電図データの例を示す。
図7】細動波が不明瞭な心電図データの例を示す。
図8】出力部による明瞭心電図データの出力の例を示す図である。
図9】出力部が明瞭心電図データを医師端末へ出力する別の例を示す。
図10】出力部が明瞭心電図データを医師端末へ出力する別の例を示す。
図11】出力装置による表示用機械学習モデルの生成の処理手順を示すフローチャートである。
図12】出力装置による明瞭心電図データの出力の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[心電図出力システムSの概要]
図1は、本実施形態の心電図出力システムSの概要を説明するための図である。心電図出力システムSは、心房細動が生じている可能性がある患者Uの心電図を用いて医師が患者を診断しやすくするためのシステムである。心電図出力システムSは、心電計1と、医師端末2と、出力装置3とを備える。
【0016】
心電計1は、例えば、患者Uが装着するホルター心電計である。心電計1は、患者Uの心臓筋肉の電気的活動にともなう活動電位の時間変化を測定した全体心電図データを生成する。心電計1は、無線通信回線を含むネットワークNを介して、生成した全体心電図データを出力装置3に送信する。全体心電図データには、全体心電図データの測定時刻を示す時刻情報が関連付けられている。心電計1が生成した全体心電図データは、ネットワークNを介することなく、例えば記憶媒体を用いて出力装置3に届けられてもよい。
【0017】
医師端末2は、医師が使用する端末であり、例えば表示装置及びコンピュータを含む。医師端末2は、心電計1において生成された全体心電図データのうち、出力装置3から受信した一部の心電図データに基づく波形画像を表示装置に出力する。
【0018】
出力装置3は、例えばサーバである。出力装置3は、患者Uの心臓において心房細動が生じているか否かの医師の診断を支援する情報を出力する。出力装置3は、心電計1又は医師端末2から患者Uの全体心電図データを受信する。出力装置3は、受信した全体心電図データを分割した複数の分割心電図データを生成する。出力装置3は、複数の分割心電図データのうち、心房細動に特有の細動波が含まれている複数の細動波心電図データを取得する。
【0019】
出力装置3は、細動波心電図データを所定の時間単位ごとに分割した小分割細動波心電図データを生成する。所定の時間単位は、例えば、1拍に対応する時間である。出力装置3は、細動波を含む複数の心電図データを、細動波が明瞭な心電図データと細動波が不明瞭な心電図データとに分類するための学習済みの表示用機械学習モデル(第1機械学習モデルに相当)を記憶部から読み出す。機械学習モデルの内部構成は任意であるが、例えばCNN(Convolutional Neural Network、畳み込みニューラルネットワーク)により構成されている。
【0020】
出力装置3は、取得した複数の小分割細動波心電図データを学習済みの表示用機械学習モデルに入力し、細動波が明瞭な心電図データとして表示用機械学習モデルが出力した明瞭心電図データを取得する。本明細書の例では、表示用機械学習モデルは、取得した複数の細動波心電図データのうち、細動波の振幅が所定範囲内であり、頻脈の症状を示しておらず、かつ、所定のノイズが重畳されていない細動波心電図データを明瞭心電図データとして出力する。出力装置3は、取得した明瞭心電図データを医師端末2に出力する。このようにして、出力装置3は、患者Uの心臓において心房細動が生じていると医師が判断するための根拠を示す心電図の波形を医師が把握できるようにすることができる。
【0021】
また、出力装置3は、医師端末2と別のコンピュータである例に限定されない。例えば、出力装置3は、医師端末2と同じコンピュータであってもよい。以下、出力装置3の構成及び動作を詳細に説明する。
【0022】
[出力装置3の構成]
図2は、出力装置3の構成を示す図である。出力装置3は、通信部31と、判定用機械学習部32と、表示用機械学習部33と、記憶部34と、制御部35とを有する。制御部35は、第1取得部351と、第2取得部352と、判定部353と、出力部354と、受付部355と、生成部356と、を有する。
【0023】
通信部31は、ネットワークNを介して心電計1及び医師端末2との間でデータを送受信するための通信コントローラを有する。通信部31は、ネットワークNを介して受信したデータを制御部35に通知する。
【0024】
判定用機械学習部32は、教師データとして用いられる学習用心電図データに基づいて学習することにより、入力された複数の心電図データを、細動波が含まれる心電図データと細動波が含まれない心電図データとに分類することができる判定用機械学習モデル(第2機械学習モデルに相当)として機能する。判定用機械学習部32は、例えば、CNNを用いて各種の演算を実行するプロセッサと、CNNの係数を記憶するメモリと、を含んでいる。判定用機械学習部32は、入力された心電図データを、細動波が含まれる心電図データと細動波が含まれない心電図データとに分類してそれぞれ出力する。
【0025】
表示用機械学習部33は、細動波が明瞭な心電図データと、細動波を含み且つ細動波が不明瞭な心電図データとを入力した場合に、細動波が明瞭な心電図データを出力し、細動波を含み且つ細動波が不明瞭な心電図データを出力しないように学習した上述の表示用機械学習モデルとして機能する。表示用機械学習部33は、例えば、CNNを用いて各種の演算を実行するプロセッサと、CNNの係数を記憶するメモリと、を含んでいる。
【0026】
表示用機械学習部33は、入力された細動波を含む複数の心電図データを、細動波が明瞭な心電図データと、細動波を含むが細動波が不明瞭な心電図データとに分類してそれぞれ所定の時間単位ごとに出力する。所定の時間単位は、例えば、1拍に対応する時間である。表示用機械学習部33は、心電図データの分類結果に加えて、入力された心電図データに含まれる細動波が明瞭である度合いを数値等で示す明瞭度を出力してもよい。明瞭度の詳細については後述する。
【0027】
表示用機械学習部33は、細動波を含む複数の心電図データを、細動波が明瞭な心電図データと、細動波を含むがこの細動波が不明瞭な心電図データとに分類して出力する例に限定されない。表示用機械学習部33は、細動波を含む複数の心電図データを、細動波が明瞭な心拍を比較的高い割合で含む心電図データと、細動波が明瞭な心拍を比較的低い割合で含む心電図データとに分類して出力する表示用機械学習モデルとして機能してもよい。このような機械学習モデルは、例えば、細動波が明瞭な心拍を比較的高い割合で含むと医師が判定した心電図データと、細動波が明瞭な心拍を比較的低い割合で含むと医師が判定した心電図データとを教師データとして使用した機械学習により生成される。
【0028】
表示用機械学習部33は、細動波を含む複数の心電図データを、細動波が明瞭な心拍を比較的高い割合で含む心電図データと、細動波が明瞭な心拍を比較的低い割合で含む心電図データとに分類した分類結果を出力し、この分類結果とともに、それぞれの心電図データにおいて細動波が明瞭な心拍が含まれる割合を数値等で示す明瞭心拍指数を出力してもよい。
【0029】
表示用機械学習部33は、フーリエ変換等を用いて、細動波を含む複数の心電図データを、細動波が明瞭な心拍を比較的高い割合で含む心電図データと、細動波が明瞭な心拍を比較的低い割合で含む心電図データとに分類して出力してもよい。例えば、明瞭な細動波に対応する周波数成分を比較的高い割合で含む心電図データを、細動波が明瞭な心拍を比較的高い割合で含む心電図データに分類し、明瞭な細動波に対応する周波数成分を比較的低い割合で含む心電図データを、細動波が明瞭な心拍を比較的低い割合で含む心電図データに分類してもよい。
【0030】
記憶部34は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及びハードディスク等の記憶媒体を含む。記憶部34は、制御部35が実行するプログラムを記憶する。また、記憶部34は、制御部35が各種の演算を実行する際に必要な各種のデータを記憶する。
【0031】
制御部35は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。制御部35は、記憶部34に記憶されたプログラムを実行することにより、第1取得部351、第2取得部352、判定部353、出力部354、受付部355及び生成部356として機能する。
【0032】
第1取得部351は、通信部31を介して、心電計1及び医師端末2と通信する。第1取得部351は、医師端末2を医師が操作する操作情報を医師端末2から取得する。第1取得部351は、心臓筋肉の電気的活動にともなう活動電位の時間変化を測定した全体心電図データを心電計1から取得する。第1取得部351は、取得した全体心電図データに含まれる心電図データのうち、細動波が含まれる複数の細動波心電図データを取得する。また、第1取得部351は、取得した全体心電図データを複数の分割心電図データに分割する。例えば、第1取得部351は、取得した全体心電図データを30秒ごとに分割した複数の分割心電図データを生成する。
【0033】
図3は、全体心電図データ及び分割心電図データの例を示す図である。上側に全体心電図データに含まれる全体心電図を示し、下側に分割心電図データに含まれる分割心電図を示す。全体心電図は、患者Uの心臓の筋肉の活動電位の時間変化を所定の測定時間にわたって測定した測定結果を示す。測定時間は、一例としては24時間である。
【0034】
分割心電図データは、全体心電図データを分割したものである。一例としては、分割心電図データは、全体心電図データを30秒ごとに分割したものである。例えば、分割心電図データは、全体心電図データを日付及び時間帯ごとに分割したものである。図3の分割心電図中のRは、R波を示す。
【0035】
第1取得部351は、複数の分割心電図データのうち、細動波が含まれる一以上の細動波心電図データを取得する。図4(a)及び図4(b)は、細動波を含む心電図の例を示す図である。図4(a)は、正常な心電図を示す。図4(b)は、細動波を含む心電図の例を示す。図4(a)の縦軸は電位を示し、図4(a)の横軸は時間を示す。図4(a)中のP、Q、R、S、Tは、それぞれP波、Q波、R波、S波及びT波を示す。図4(a)に示すように、正常な心電図では、P波、Q波、R波、S波及びT波は、一定の周期でそれぞれ繰り返す。図4(a)に示す正常な心電図には、細動波は含まれていない。
【0036】
図4(b)中のfは、細動波を示す。図4(b)の例では、心電図に細動波が含まれているため、患者Uの心臓において心房細動が生じていることが分かる。図4(b)に示すように、心房細動を生じている状態の心電図では、P波の消失がみられ、R波等の周期が不規則になる。
【0037】
本明細書の例では、第1取得部351は、判定用機械学習モデル(第2機械学習モデルに相当)として機能する判定用機械学習部32に複数の分割心電図データを入力し、判定用機械学習部32から細動波が含まれる分割心電図データとして出力された一以上の細動波心電図データを取得する。第1取得部351は、取得した一以上の細動波心電図データを第2取得部352へ出力する。
【0038】
[細動波が明瞭な心電図データの取得]
第2取得部352は、第1取得部351が取得した一以上の細動波心電図データのうち、細動波が明瞭な明瞭心電図データを取得する。より詳しくは、第2取得部352は、細動波心電図データを所定の時間単位ごとに分割した小分割細動波心電図データを生成する。所定の時間単位は、例えば、1拍に対応する時間である。第2取得部352は、表示用機械学習モデルとして機能する表示用機械学習部33に対し、一以上の小分割細動波心電図データを入力し、表示用機械学習部33から細動波が明瞭な心電図データとして出力された明瞭心電図データを取得する。
【0039】
細動波が明瞭である心電図データとは、本明細書の例では、(1)細動波の振幅が所定範囲内であり、(2)頻脈の症状を示しておらず、(3)所定のノイズが重畳されていない細動波を含むものである。(1)の振幅の所定範囲とは、0.05mVより大きく、0.5mVより小さい範囲である。好ましくは、振幅の所定範囲は、0.05mVより大きく、0.25mV以下の範囲である。(2)の頻脈とは、R波とR波との間隔が400ミリ秒より小さい状態、又は、心拍数が150bpmを超える状態である。
【0040】
(3)の所定のノイズとは、細動波の周波数範囲(5Hzから10Hz)の上限値又は下限値よりも高い周波数であり、且つ、振幅が所定振幅以上のノイズである。所定振幅は、例えば、0.05mV以上であるが、0.25mV以上であってもよい。図5から図7は、細動波が明瞭であるか否かの判断基準の例を示す。図5は、細動波が明瞭な心電図データの例を示す。図6及び図7は、細動波が不明瞭な心電図データの例を示す。図5(a)から図5(c)の心電図データでは、図中のfで示す細動波がいずれも明瞭に示されている。
【0041】
図6(a)は、細動波が不明瞭な例を示す。図6(a)の心電図データでは、上述した所定範囲内の振幅を示す細動波が確認できない状態であり、不明瞭である。図6(b)に示す心電図データでは、心拍数が150bpmを超える頻脈の症状を示している。図6(b)に示すように、頻脈の症状を示す心電図データでは、T波(図6(b)中のT)とQRS波(図6(b)中のQRS)がほぼ連続しているので、T波とQRS波との間にある細動波を認識しやすい領域が少ない。このため、頻脈の症状を示す心電図データでは、細動波が不明瞭になる。図6(c)に示す心電図データでは、上述した所定のノイズが細動波に重畳しているため、細動波が不明瞭である。
【0042】
図7(a)及び図7(b)は、細動波が不明瞭な心電図データの別の例を示す。図7(a)及び図7(b)は、細動波が微弱な場合の心電図データの例を示す。図7(a)及び図7(b)に示すように、細動波の振幅が微弱な場合は、上述した所定範囲の振幅を有する細動波が確認できない状態となり、細動波が不明瞭になる。このとき、R波とR波との間隔が不規則になる。
【0043】
第2取得部352は、表示用機械学習部33が出力した明瞭心電図データを取得するときに、明瞭心電図データとともにこの明瞭心電図データの明瞭度を取得してもよい。例えば、明瞭度は、細動波の振幅が大きいほど大きな値になる。明瞭度は、R波とR波との間隔が大きいほど大きな値になる。明瞭度は、ノイズのレベルが小さいほど大きな値になる。第2取得部352は、判定用機械学習部32が出力した、細動波が含まれるか否かを判定するためのスコアを明瞭度として取得してもよい。
【0044】
また、第2取得部352は、明瞭度として、RR間隔(心拍)のばらつきに関する指標を取得してもよい。例えば、第2取得部352は、判定用機械学習部32に複数の分割心電図データを入力し、細動波が含まれる細動波心電図データとともに判定用機械学習部32が出力した、この細動波心電図データのRR間隔のばらつきに関する指標を明瞭度として取得してもよい。また、第2取得部352は、細動波が含まれか否かを判定するためのスコアと、RR間隔のばらつきに関する指標とを組み合わせる等、複数の指標を組み合わせた明瞭度を取得してもよい。第2取得部352は、小分割細動波心電図データを表示用機械学習部33に入力する代わりに、小分割細動波心電図データから細動波とは異なる波を除去した修正細動波心電図データを表示用機械学習部33に入力してもよい。例えば、第2取得部352は、P波、QRS波、T波(図4(a)及び図4(b)参照)の一つ以上を除去することにより修正細動波心電図データを生成する。第2取得部352は、生成した一以上の修正細動波心電図データを表示用機械学習部33に入力する。
【0045】
例えば、第2取得部352は、細動波が含まれる心電図の波形から基準値以上の電位を有する波を除去することにより、修正細動波心電図データを生成する。基準値は、例えば、細動波のピークの電位として想定される値よりも高い。また、第2取得部352は、Q波、R波、S波及びT波等が生じた時間領域を特定する。第2取得部352は、この時間領域において心電図の電位をゼロとすることにより、細動波以外の波を除去した修正細動波心電図データを生成してもよい。
【0046】
例えば、第2取得部352は、電位が閾値以上である時間領域をR波が生じた時間領域として特定する。Q波、S波及びT波が生じた時間領域は、直前および直後のR波が生じた時間領域から推定することが可能である。第2取得部352は、特定した複数のR波が生じた時間領域に基づいて、Q波、S波及びT波が生じた時間領域をそれぞれ特定する。第2取得部352は、特定したQ波、R波、S波及びT波等が生じた時間領域においてそれぞれ心電図の電位をゼロとすることにより、修正細動波心電図データを生成してもよい。
【0047】
第2取得部352は、細動波とは異なる波をそれぞれ除去した一以上の修正細動波心電図データを表示用機械学習部33に入力し、表示用機械学習部33から細動波が明瞭な心電図データとして出力された修正細動波心電図データを取得する。第2取得部352は、細動波が明瞭な心電図データとして出力された修正細動波心電図データに基づいて、この修正細動波心電図データにおいて細動波とは異なる波を除去する前の細動波心電図データを細動波が明瞭な明瞭心電図データとして取得してもよい。
【0048】
第2取得部352は、細動波が明瞭な心拍を比較的高い割合で含む心電図データと、細動波が明瞭な心拍を比較的低い割合で含む心電図データとに分類して出力する表示用機械学習モデルとして機能する表示用機械学習部33に対し、一以上の細動波心電図データを入力し、細動波が明瞭な心拍を比較的高い割合で含む心電図データとして出力された細動波心電図データを明瞭心電図データとして取得してもよい。第2取得部352は、この明瞭心電図データとともに、この明瞭心電図データにおいて細動波が明瞭な心拍が含まれる割合を示す明瞭心拍指数を取得してもよい。
【0049】
判定部353は、第2取得部352が取得した明瞭心電図データを周波数解析することにより、細動波に対応する周波数範囲の信号の有無を判定する。周波数解析は、例えばフーリエ解析又はウェーブレット解析である。判定部353は、細動波に対応する周波数範囲の信号の有無を判定した判定結果を出力部354に通知する。
【0050】
[心電図データの出力]
出力部354は、通信部31を介して、医師端末2と通信する。出力部354は、第2取得部352が取得した明瞭心電図データを出力する。例えば、出力部354は、医師端末2の表示装置に明瞭心電図データを出力する。出力部354は、第2取得部352が取得した明瞭心電図データにおける複数のR波の間の時間領域に、細動波が含まれることを示す画像データを重ねた状態で明瞭心電図データを出力する。出力部354は、RR間隔(心拍)が一定以上の大きさとなるように明瞭波心電図データを表示装置に出力する。出力部354は、RR間隔が一定以上の大きさとなるように明瞭波心電図データを出力することにより、RR間隔が不整であることを医師が目視で判断しやすくすることができる。
【0051】
図8は、出力部354による明瞭心電図データの出力の例を示す図である。図8に示す画像は、医師端末2の表示装置Dに出力される。図8中の心電図においてRは、R波を示す。出力部354は、複数のR波の間の時間領域に細動波が含まれることを示す画像データMを表示する。図8の例では、画像データMとして楕円の太枠を示す。
【0052】
心房細動が生じている状態では、R波の周期が不規則に増減する。このため、図8の例では、出力部354は、R波の周期に応じて、時間方向の大きさが異なる画像データMを表示する。例えば、出力部354は、R波の周期が所定値より小さい場合には、時間方向の大きさが第1サイズの画像データMを表示する。出力部354は、R波の周期が所定値以上である場合には時間方向の大きさが第2サイズの画像データMを表示する。第2サイズは、第1サイズより大きい。図8の例では、出力部354は、画像データMとともに、画像データMが細動波の位置に対応していることを示すメッセージ「f波が存在します。」を出力する。
【0053】
心房細動が生じている状態では、細動波は心電図のほぼどの時間帯領域にも存在する。しかしながら、QRSやT波等の他の波と重なっているタイミングでは、細動波は明瞭ではない。特に、R波は他の波と比べてピークの電位が大きいため、複数のR波の間の位置において細動波が明瞭になることが多い。このため、出力部354は、複数のR波の間の時間領域に、細動波が含まれることを示す画像データMを重ねた状態で出力する。一例としては、出力部354は、複数のR波の中間位置を含む時間領域に画像データMを重ねた状態で出力する。このようにして、出力部354は、明瞭な細動波が含まれる時間領域を医師が把握し易くすることができる。
【0054】
心房細動が生じている状態では、心電図においてP波の消失がみられる。T波とQRS波との間において、P波の消失により細動波が観測しやすくなる。このため、出力部354は、心房細動が生じていないとすればP波が生じるはずの時間領域を特定し、特定した時間領域に明瞭細動波が含まれることを示す画像データMを表示してもよい。P波は、Q波の前に発生するため、出力部354は、Q波が開始するタイミングの前の所定期間内の時間領域に画像データMを重ねた状態で出力してもよい。所定時間は、例えば、仮にP波が消失していないとすれば画像データMがP波の領域を含むように定められる。
【0055】
また、心房細動が生じていない正常な心電図データでは、P波は、T波が終了するタイミングからQ波が開始するタイミングまでの間に発生する(図4(a)参照)。このため、出力部354は、心電図データにおいてT波及びQ波の位置を特定し、T波が終了するタイミングからQ波が開始するタイミングまでの間に画像データMを重ねた状態で出力してもよい。
【0056】
また、出力部354は、第2取得部352が取得した明瞭心電図データのうち、細動波に対応する周波数範囲の信号が存在すると判定部353が判定した明瞭心電図データを出力してもよい。出力部354は、第2取得部352が取得した明瞭心電図データのうち、細動波に対応する周波数範囲の信号が存在しないと判定部353が判定した明瞭心電図データを出力しなくてもよい。このようにして、出力部354は、細動波が含まれていない明瞭心電図データを第2取得部352が誤って取得した場合に、この明瞭心電図データを出力しないようにすることができる。
【0057】
出力部354は、測定された日付又は時間帯が異なる複数の明瞭心電図データを医師端末2等の表示装置Dに出力する。このようにして、出力部354は、心房細動イベントが記録時間中に複数回発生しているかどうかを医師が評価できるようにする。
【0058】
出力部354は、複数の明瞭心電図データのうち、細動波の明瞭度に基づいて選択された複数の代表波形データを医師端末2等の表示装置Dに出力する。明瞭度は、上述したように、例えば、心電図データの細動波が明瞭である度合いを示す数値により表される。例えば、出力部354は、第2取得部352が明瞭心電図データとともに取得した、この明瞭心電図データに含まれる細動波の明瞭度が高い順に、明瞭心電図データを代表波形データとして出力する。
【0059】
図9及び図10は、出力部354が明瞭心電図データを医師端末2へ出力する別の例を示す。図9及び図10に示す画像は、医師端末2の表示装置Dに出力される。図9の左側には、識別番号「A123」に対応する複数の分割心電図データが示されている。出力部354は、代表波形タブTを医師が選択する操作情報を第1取得部351が医師端末2から取得すると、図9の右側に示すように、複数の代表波形データを出力する。
【0060】
出力部354は、表示装置Dに出力した複数の代表波形データのうち、医師等のユーザにより選択された代表波形データを選択波形データとして出力する。図9の例では、出力部354は、表示装置Dに出力されている複数の代表波形データのそれぞれに関連付けて、チェックボックスと文字列「レポート対象にする」とを出力する。出力部354は、複数のチェックボックスのいずれかを医師が選択する操作情報を第1取得部351が取得した場合に、選択されたチェックボックスに対応する代表波形データを選択波形データとしてレポートに出力する。レポートは、例えば、医師が患者に説明する際、他の医療機関の医師にコンサルテーションを依頼する際、又は、電子カルテに情報を連携する際に必要となる情報をまとめた電子データである。
【0061】
図10は、出力部354による代表波形データの出力の例を示す。出力部354は、図9中に表示された代表波形データの表示領域B1を医師が選択する操作情報を第1取得部351が医師端末2から取得したときに、図10の表示画像を表示装置Dに出力する。図10中の矩形の破線で示すように、出力部354は、選択された代表波形データを左側に大きなサイズで出力する。
【0062】
出力部354は、第2取得部352が1拍に対応する時間区間ごとに明瞭心電図データを取得した場合に、1心拍単位で分割される前の元の細動波心電図データに含まれている明瞭心電図データの割合が高い順に1又は所定数の細動波心電図データを特定する。細動波心電図データは、例えば、30秒の時間区間に対応するものである。所定数は、例えば、ユーザである医師が予め指定する。出力部354は、特定した細動波心電図データを代表波形データとして出力する。
【0063】
一例としては、出力部354は、患者Uについて測定した17時1分10.0秒から17時1分20.0秒までの時間区間に対応する細動波心電図データにおいて1秒ごとに細動波が明瞭であるか否かを判定した場合に、この時間区間の細動波心電図データに含まれている明瞭心電図データの割合が同じ全体心電図データに含まれる複数の細動波心電図データのうち上から2番目に高い割合であり、所定数は3であるものと仮定する。
【0064】
このとき、出力部354は、細動波心電図データに含まれている明瞭心電図データの割合が高い順に、17時1分10.0秒から17時1分20.0秒までの時間区間に対応する細動波心電図データを含む3個の代表波形データを出力する。このようにして、出力部354は、明瞭心電図データを含む割合が高い順に1又は所定数の細動波心電図データを出力するので、医師は、細動波が明瞭な複数の心拍を確認しながら患者の症状を診断することができる。
【0065】
出力部354は、細動波が明瞭な心拍を比較的高い割合で含む複数の細動波心電図データを明瞭心電図データとして第2取得部352がそれぞれ取得した場合に、取得した複数の明瞭心電図データのうち、それぞれの明瞭心電図データに含まれる細動波が明瞭な心拍の割合に基づいて選択した一以上の明瞭心電図データを代表波形データとして出力してもよい。例えば、出力部354は、細動波が明瞭な心拍を比較的高い割合で含む心電図データとして第2取得部352が取得した複数の明瞭心電図データのうち、明瞭心電図データとともに取得した明瞭心拍指数が示す細動波が明瞭な心拍が含まれる割合が閾値以上である明瞭心電図データを特定する。閾値は、例えば、心臓の専門医以外であっても細動波の存在に気付くことが想定される割合として設定された値である。出力部354は、特定した明瞭心電図データのうち、ランダムに選択した所定数の明瞭心電図データを代表波形データとして出力してもよい。所定数は、例えば、受付部355を介して医師端末2のユーザである医師により設定された値である。
【0066】
出力部354は、細動波が明瞭な心拍が含まれる割合が閾値以上であるものとして特定した複数の明瞭心電図データのうち、細動波が明瞭な心拍の割合が高い順に選択した所定数の結合心電図データを代表波形データとして出力してもよい。出力部354は、細動波が明瞭な心拍が含まれる割合が閾値以上である明瞭心電図データのうち、測定タイミングが早い順に選択した所定数の結合心電図データを代表波形データとして出力してもよい。
【0067】
[表示用機械学習モデルの生成時の処理]
図2の説明に戻る。以下、第2取得部352が明瞭心電図データを取得する前の処理として、表示用機械学習モデルを生成するための機械学習時の処理について説明する。第1取得部351は、細動波が含まれている複数の心電図データである複数の学習用心電図データを取得する。このとき、第1取得部351は、複数の患者Uにそれぞれ装着された心電計1から複数の全体心電図データを取得する。第1取得部351は、複数の心電図データを細動波が含まれている心電図データと細動波が含まれていない心電図データとに分類する判定用機械学習部32を利用することにより、取得した複数の全体心電図データのうち、細動波が含まれている複数の学習用心電図データを取得するものとする。
【0068】
具体的には、第1取得部351は、全体心電図データを判定用機械学習モデルに入力し、判定用機械学習モデルが出力した細動波が含まれる複数の心電図データを、複数の学習用心電図データとして取得する。第1取得部351は、取得した学習用心電図データを単位時間ごとに分割した学習用小分割心電図データを生成する。単位時間は、例えば、1拍に対応する時間である。
【0069】
受付部355は、通信部31を介して、医師端末2と通信する。受付部355は、複数の学習用小分割心電図データを、細動波が明瞭であると医師が判定した学習用明瞭心電図データと、細動波を含み且つ細動波が不明瞭であると医師が判定した学習用不明瞭心電図データとに分類する指示を受け付ける。
【0070】
より詳しくは、受付部355は、第1取得部351が取得した複数の学習用小分割心電図データを医師端末2の表示装置Dに順に出力する。受付部355は、順に出力した複数の学習用小分割心電図データのそれぞれに対して、細動波が明瞭であるか不明瞭であるかの医師の判断結果を医師端末2から受け付ける。例えば、受付部355は、1拍に対応する時間ごとに分割された学習用小分割心電図データ単位で細動波が明瞭であるか否かを判定した医師の判断結果を受け付ける。このとき、医師は、1拍分の波形ごとに細動波が明瞭であるか不明瞭であるかを判定すればよいので、2拍以上に対応する時間ごとに分割された学習用小分割心電図データにおいて細動波が明瞭であるか否かを判断する場合に比べて、細動波が明瞭である否かを判定するための判定要素の数を少なくすることができる。したがって、受付部355は、細動波が明瞭である否かを医師が判定し易くなるので、判定の誤りを減少させることができる。このため、受付部355は、受け付けた医師の判定結果に基づく機械学習の精度を向上させることができる。
【0071】
本明細書の例では、受付部355は、細動波の振幅が所定範囲内であり、頻脈の症状を示しておらず、且つ、細動波の周波数範囲よりも高い周波数で所定の振幅以上のノイズが重畳されていない心電図データに対して、当該心電図データが学習用明瞭心電図データであるという医師の判断結果を受ける。一方、受付部355は、細動波の振幅が所定範囲の下限値より小さい心電図データ、細動波の振幅が所定範囲の上限値より大きい心電図データ、頻脈の症状を示す心電図データ、又は、細動波の周波数範囲よりも高い周波数で所定の振幅以上のノイズが重畳されている心電図データに対して、当該心電図データが学習用不明瞭心電図データであるという医師の判断結果を受ける。
【0072】
受付部355は、複数の学習用小分割心電図データのそれぞれに、細動波が明瞭であると医師が判定した学習用明瞭心電図データであるか、細動波を含み且つ細動波が不明瞭であると医師が判定した学習用不明瞭心電図データであるかの医師の分類結果をラベル付けして記憶部34に記憶させる。なお、本発明は、心電図データが明瞭であるか否かを医師が分類する指示を受付部355が受け付ける例に限定されない。例えば、心電図データが明瞭であるか否かを臨床検査技師等の医療従事者が分類する指示を受付部355が受け付けてもよい。
【0073】
判定部353は、第1取得部351が生成した複数の学習用小分割心電図データを周波数解析することにより、細動波に対応する周波数範囲の信号の有無を判定してもよい。判定部353は、細動波に対応する周波数範囲の信号が含まれていないと判定した学習用心電図データを記憶部34から消去してもよい。このようにして、判定部353は、細動波に対応する周波数範囲の信号が含まれていないと判定した学習用心電図データが生成部356による機械学習に利用されないようにすることができる。
【0074】
生成部356は、細動波が含まれる複数の心電図データを、細動波が明瞭な心電図データと細動波が不明瞭な心電図データとに分類する表示用機械学習モデルを生成する。生成部356は、学習用明瞭心電図データとしてラベル付けされた複数の学習用小分割心電図データと、学習用不明瞭心電図データとしてラベル付けされた複数の学習用小分割心電図データとを教師データとする機械学習により、表示用機械学習モデルを生成する。
【0075】
このようにして、生成部356は、上述した表示用機械学習モデルを生成することができる。心電図出力システムSは、表示用機械学習モデルを生成する際に、細動波が明瞭であるかどうかを確認する医師に対して、判定用機械学習モデルが出力した細動波が含まれる複数の心電図データを送信するので、医師が確認するべき心電図データの数を絞り込むことができる。したがって、心電図出力システムSは、表示用機械学習モデルを短時間で作成することが可能になる。
【0076】
[表示用機械学習モデルの生成の処理手順]
図11は、出力装置3による表示用機械学習モデルの生成の処理手順を示すフローチャートである。この処理手順は、例えば、受付部355が表示用機械学習モデルの生成の指示を医師端末2から受け付けたときに開始する。
【0077】
第1取得部351は、細動波が含まれている複数の心電図データである複数の学習用心電図データを取得する(S101)。第1取得部351は、取得した学習用心電図データを単位時間ごとに分割した学習用小分割心電図データを生成する。単位時間は、例えば、1拍に対応する時間である。受付部355は、複数の学習用小分割心電図データを、細動波が明瞭な学習用明瞭心電図データと、細動波が不明瞭な学習用不明瞭心電図データとに分類する指示を医師端末2から受け付ける(S102)。
【0078】
本明細書の例では、細動波の振幅が所定範囲内であり、頻脈の症状を示しておらず、所定のノイズが重畳されていない学習用小分割心電図データが学習用明瞭心電図データに分類される。一方、細動波の振幅が所定範囲の下限値より小さい心電図データ、細動波の振幅が所定範囲の上限値より大きい心電図データ、頻脈の症状を示す心電図データ、又は、所定のノイズが重畳されている学習用小分割心電図データが学習用不明瞭心電図データに分類される。
【0079】
受付部355は、複数の学習用小分割心電図データのそれぞれに、細動波が明瞭な学習用明瞭心電図データであるか、細動波が不明瞭な学習用不明瞭心電図データであるかを医師が分類した分類結果をラベル付けして記憶部34に記憶させる。生成部356は、学習用明瞭心電図データとしてラベル付けされた複数の学習用小分割心電図データと、学習用不明瞭心電図データとしてラベル付けされた複数の学習用小分割心電図データとを教師データとして機械学習させることにより、表示用機械学習モデルを生成し(S103)、処理を終了する。
【0080】
[明瞭心電図データの出力の処理手順]
図12は、出力装置3による明瞭心電図データの出力の処理手順を示すフローチャートである。この処理手順は、心臓筋肉の電気的活動にともなう活動電位の時間変化を測定した全体心電図データを心電計1から第1取得部351が取得したときに開始する。
【0081】
第1取得部351は、取得した全体心電図データに含まれる、細動波が含まれる一以上の細動波心電図データを取得する(S201)。第2取得部352は、細動波心電図データを所定の時間単位ごとに分割した小分割細動波心電図データを生成する。第2取得部352は、表示用機械学習モデルとして機能する表示用機械学習部33に対し、一以上の小分割細動波心電図データを入力し(S202)、表示用機械学習部33から細動波が明瞭な心電図データとして出力された複数の明瞭心電図データと、複数の明瞭心電図データのそれぞれに含まれる細動波が明瞭である度合いを示す明瞭度とを取得する(S203)。出力部354は、第2取得部352が取得した複数の明瞭心電図データのうち、明瞭度が高い順に所定数の明瞭心電図データを代表波形データとして医師端末2へ出力する(S204)。出力部354は、出力した複数の代表波形データのうち、医師により選択された代表波形データを含むレポートを出力し(S205)、処理を終了する。
【0082】
[本実施形態の出力装置による効果]
第2取得部352は、取得した複数の小分割細動波心電図データを学習済みの表示用機械学習モデルに入力し、細動波が明瞭な心電図データとして表示用機械学習モデルが出力した明瞭心電図データを取得する。このとき、第2取得部352は、複数の小分割細動波心電図データのうち、細動波の振幅が所定範囲内であり、頻脈の症状を示しておらず、所定のノイズが重畳されていない小分割細動波心電図データを明瞭心電図データとして出力する。出力部354は、取得した明瞭心電図データを医師端末2に出力する。このようにして、出力部354は、患者の心臓が心房細動を生じていると医師が判断するための根拠となる心電図の波形を医師が把握できるようにすることができる。
【0083】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0084】
1 心電計
2 医師端末
3 出力装置
31 通信部
32 判定用機械学習部
33 表示用機械学習部
34 記憶部
35 制御部
351 第1取得部
352 第2取得部
353 判定部
354 出力部
355 受付部
356 生成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12