(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008361
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】移動構造物
(51)【国際特許分類】
B60P 3/335 20060101AFI20240112BHJP
B60R 19/38 20060101ALI20240112BHJP
B60R 19/56 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
B60P3/335
B60R19/38 A
B60R19/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110170
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】菅野 泰史
(57)【要約】
【課題】 停留時における意匠性及び安全性を確保し、資源又は排出物の輸送路を状況に応じて適切に移動させることが可能な移動構造物を提供する。
【解決手段】 本発明のトレーラハウス10は、ハウス本体12と、ハウス本体12の下部に取り付けられた車輪14と、可動カバー20と、輸送路16とを有する。トレーラハウス10の停留時にはハウス本体12の内部空間にて人が行動可能であり、トレーラハウスを移動させる際には、車輪14が地面に接地した状態で動く。可動カバー20は、ハウス本体12と地面との間に形成された下方空間の開口端を覆う第1位置と、開口端を開放させる第2位置との間を移動可能である。輸送路16は、ハウス本体12の内部空間に供給される資源、又は内部空間から排出される排出物を輸送するために設けられており、可動カバー20の移動と一体的に移動可能である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能な移動構造物であって、
内部空間を備え、前記移動構造物の停留時に前記内部空間にて人が行動可能な本体部と、
前記本体部の下部に取り付けられ、前記移動構造物を移動させるために地面に接地した状態で動く移動機構と、
前記本体部と地面との間に形成された下方空間の開口端を覆う第1位置と、前記開口端を開放させる第2位置との間を移動可能な可動カバーと、
前記可動カバーの移動と一体的に移動可能であり、前記内部空間に供給される資源、又は前記内部空間から排出される排出物を輸送するための輸送路と、を備える、移動構造物。
【請求項2】
前記可動カバーが前記第1位置に向かって移動する場合、前記輸送路が、前記可動カバーと一体的に移動して、前記輸送路を前記資源の供給源又は前記排出物の排出先に接続させるための位置に至り、
前記可動カバーが前記第2位置に向かって移動する場合、前記輸送路が、前記可動カバーと一体的に移動して、前記輸送路を前記下方空間内にて収納するための位置に至る、請求項1に記載の移動構造物。
【請求項3】
前記可動カバーのうち、前記輸送路と対応する位置に配置された部分は、前記本体部に対して着脱可能な状態で、前記本体部の下部に取り付けられている、請求項1に記載の移動構造物。
【請求項4】
前記可動カバーのうち、前記輸送路と対応する位置に配置された部分は、前記本体部の下部に取り付けられた基部と、前記基部に対して着脱自在な状態で前記基部に取り付けられた着脱部と、を備え、
前記可動カバーが前記第1位置にある状態で前記着脱部が前記基部から取り外されることで、前記輸送路が、前記下方空間よりも外側の空間に対して露出する、請求項1に記載の移動構造物。
【請求項5】
前記移動機構は、1つ以上の車輪を有し、
前記可動カバーは、前記移動構造物の移動方向において前記車輪が存在する領域から外れた位置にて、前記本体部の下部に取り付けられており、
前記移動方向と交差する方向において前記車輪の外側で前記車輪と隣り合う位置にて、前記本体部の下部に取り付けられた非可動カバーをさらに備える、請求項1に記載の移動構造物。
【請求項6】
前記非可動カバーは、前記本体部に対して着脱可能な状態で、前記本体部の下部に取り付けられている、請求項5に記載の移動構造物。
【請求項7】
前記輸送路は、フレキシブルな管材又はケーブルによって構成されている、請求項1に記載の移動構造物。
【請求項8】
前記可動カバーは、板材によって構成されている、請求項1に記載の移動構造物。
【請求項9】
前記可動カバーは、回動軸を中心に回動することで前記第1位置と前記第2位置との間を移動する、請求項1に記載の移動構造物。
【請求項10】
前記可動カバーに固定された状態で前記輸送路に係合することにより、前記輸送路を前記可動カバーに連結する連結部が設けられ、
前記輸送路は、前記連結部によって前記可動カバーに連結された状態にあるときに前記可動カバーと一体的に移動する、請求項1に記載の移動構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動可能な移動構造物に係り、特に、停留時に本体部の内部空間内で人が行動可能な移動構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
トレーラハウスやキャンピングカーのような移動構造物は、家屋部や建屋部に相当する本体部と、本体部の下部に配置された車輪等からなる移動機構を備える。移動構造物は、移動機構が地面に接地した状態で動くことで地面上を移動し、停留場所まで移動した後、その場所にて停留する。移動構造物の停留中、本体部の内部空間では人が行動することができ、例えば、本体部内で生活したり、あるいは所定のサービスや事業等を営んだりすることができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
移動構造物は、停留場所では常時移動できる状態で停留している必要がある。また、停留場所にて移動構造物を利用する間、本体部の下部と地面との間の空間(下方空間)が見えてしまうと、見た目(意匠性)が劣り、また、下方空間に人が不必要に入ってしまう虞がある。その対策として、下方空間を覆うために比較的大きなパネルを設置した場合には、その後に移動構造物を移動させる際に、大掛かりな撤収作業が発生し得るため、移動構造物の移動に手間を要する虞がある。
【0005】
一方、移動構造物は、給電用のケーブルや給排水の配管のような輸送路が本体部から本体部の外に向かって延びた構造になっていることがある。その場合には、移動構造物の停留時及び移動時のそれぞれにおいて、輸送路を適切な位置に配置する必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、移動構造物の使い易さを向上させることであり、具体的には、停留時における移動構造物の意匠性及び安全性を確保し、資源又は排出物の輸送路を状況に応じて適切に移動させることが可能な移動構造物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は、本発明の移動構造物によれば、移動可能な移動構造物であって、内部空間を備え、移動構造物の停留時に内部空間にて人が行動可能な本体部と、本体部の下部に取り付けられ、移動構造物を移動させるために地面に接地した状態で動く移動機構と、本体部と地面との間に形成された下方空間の開口端を覆う第1位置と、開口端を開放させる第2位置との間を移動可能な可動カバーと、可動カバーの移動と一体的に移動可能であり、内部空間に供給される資源、又は内部空間から排出される排出物を輸送するための輸送路と、を備えることにより解決される。
【0008】
上記のように構成された本発明の移動構造物では、本体部と地面との間に形成された下方空間の開口端を可動カバーによって覆うことができるため、停留時における移動構造物の意匠性及び安全性を確保することができる。また、可動カバーが下方空間の開口端を覆う第1位置と、開口端を開放させる第2位置との間を移動すると、資源又は排出物の輸送路が可動カバーと一体的に移動するので、輸送路を状況に応じて適切に移動することができる。
【0009】
また、上記の移動構造物において、可動カバーが第1位置に向かって移動する場合、輸送路が、可動カバーと一体的に移動して、輸送路を資源の供給源又は排出物の排出先に接続させるための位置に至ってもよい。また、可動カバーが第2位置に向かって移動する場合、輸送路が、可動カバーと一体的に移動して、輸送路を下方空間内にて収納するための位置に至ってもよい。
上記の構成であれば、輸送路は、可動カバーと一体的に移動することで、資源の供給源又は排出物の排出先に接続させるための位置、及び、下方空間内に輸送路を収納させるための位置のそれぞれに配置することができる。これにより、移動構造物を停留させるか移動させるかに応じて、輸送路を適切な場所に移動させることができる。
【0010】
また、上記の移動構造物において、可動カバーのうち、輸送路と対応する位置に配置された部分は、本体部に対して着脱可能な状態で、本体部の下部に取り付けられていてもよい。
上記の構成であれば、可動カバーのうち、輸送路と対応する位置に配置された部分が取り外し可能であれば、輸送路にアクセスしやすくなり(輸送路を掴みやすくなり)、輸送路の取り扱いが容易になる。
【0011】
また、上記の移動構造物において、可動カバーのうち、輸送路と対応する位置に配置された部分は、本体部の下部に取り付けられた基部と、基部に対して着脱自在な状態で基部に取り付けられた着脱部と、を備えてもよい。この場合、可動カバーが第1位置にある状態で着脱部が基部から取り外されることで、輸送路が、下方空間よりも外側の空間に対して露出すると、好適である。
上記の構成であれば、可動カバーのうち、輸送路と対応する位置に配置された部分から着脱部を取り外すことにより、輸送路を露出させれば、輸送路にアクセスしやすくなり(輸送路を掴みやすくなり)、輸送路の取り扱いがより容易になる。
【0012】
また、上記の移動構造物において、移動機構は、1つ以上の車輪を有し、可動カバーは、移動構造物の移動方向において車輪が存在する領域から外れた位置にて、本体部の下部に取り付けられてもよい。この場合、移動構造物は、移動方向と交差する方向において車輪の外側で車輪と隣り合う位置にて、本体部の下部に取り付けられた非可動カバーをさらに備えるとよい。
上記の構成であれば、移動構造物の停留中、可動カバーを設け難い車輪周辺の位置、詳しくは、車輪と隣り合う位置に非可動カバーを配置することで、車輪を非可動カバーによって覆うことができる。
【0013】
また、上記の移動構造物において、非可動カバーは、本体部に対して着脱可能な状態で、本体部の下部に取り付けられているとよい。
上記の構成であれば、非可動カバーにより車輪を覆う場合には、本体部の下部に非可動カバーを取り付けることができ、非可動カバーが不要な場合には、本体部から非可動カバーを取り外すことができる。
【0014】
また、上記の移動構造物において、輸送路は、フレキシブルな管材又はケーブルによって構成されてもよい。
上記の構成であれば、輸送路の設置位置についての自由度を高めることができ、輸送路を適切な位置に設置し易くなる。
【0015】
また、上記の移動構造物において、可動カバーは、板材によって構成されてもよい。
上記の構成であれば、可動カバーがシートや布等のようにばたつくのを抑えることができる。
【0016】
また、上記の移動構造物において、可動カバーは、回動軸を中心に回動することで第1位置と第2位置との間を移動してもよい。
上記の構成であれば、比較的簡単な構成により、可動カバーが第1位置と第2位置との間を移動することができる。
【0017】
また、上記の移動構造物において、可動カバーに固定された状態で輸送路に係合することにより、輸送路を可動カバーに連結する連結部が設けられてもよい。この場合、輸送路は、連結部によって可動カバーに連結された状態にあるときに可動カバーと一体的に移動するとよい。
上記の構成であれば、比較的簡単な構成により、可動カバーと輸送路とが一体的に移動することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の移動構造物によれば、停留時における移動構造物の意匠性及び安全性を確保し、資源又は排出物の輸送路を状況に応じて適切に移動させることが可能となる。これにより、使い易さが向上した移動構造物が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】停留時の移動構造物を模式的に示す斜視図である。
【
図2】停留時の移動構造物を模式的に示す側面図である。
【
図3】移動時の移動構造物を模式的に示す側面図である。
【
図4】可動カバー及び輸送路の移動経路を示す図である。
【
図5】可動カバーと輸送路とが連結部によって連結している箇所の拡大図である。
【
図6】可動カバーを構成する板材が取り外された状態を示す図である。
【
図7】可動カバーを構成する板材の一部が取り外された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<<本発明の一つの実施形態に係る移動構造物について>>
以下、本発明の一つの実施形態(以下、本実施形態)に係る移動構造物の構成について、添付の図面を参照しながら説明する。
なお、添付の図面では、説明を分かり易くするために、図中の各部材を幾分簡略化及び模式化して示している。また、図中に示す各部材のサイズ(寸法)、部材間のサイズの比率、及び部材間の間隔等についても、実際のものとは異なっている。
【0021】
また、本明細書において、「直交」、「垂直」、「平行」及び「水平」は、本発明の技術分野において一般的に許容される誤差の範囲を含み、厳密な直交、垂直、平行及び水平に対して数度(例えば2~3°)未満の範囲内でずれている状態も含むものとする。
【0022】
また、以下では、互いに直交する3つの方向をX、Y、Z方向とする。X方向は、移動構造物の移動方向(つまり、移動構造物の前後方向)に相当し、Y方向は、移動構造物の横幅方向(つまり、移動構造物の車幅方向)に相当し、Z方向は、鉛直方向に相当する。
【0023】
本実施形態に係る移動構造物は、移動可能な家屋又は建屋であり、具体的には、
図1~3に示すトレーラハウス10であり、不図示の牽引車(ピラー)によって牽引されるものである。トレーラハウス10は、随時且つ任意に移動できるものであるため、建築基準法上、建築物ではなく車両として扱われる。なお、トレーラハウス10は、それ自体にエンジンが搭載されて自走可能なものであってもよい。
【0024】
トレーラハウス10は、一般的なトレーラハウスと略同様の構成であり、
図1~3に示すように本体部としてのハウス本体12と、移動機構としての複数の車輪14とを有する。ハウス本体12は、略箱型の機器であり、側壁と天井壁と床壁とに囲まれた内部空間を備える。トレーラハウス10の停留中には、トレーラハウス10の利用者(すなわち人)がハウス本体12の内部空間にて行動することができる。本明細書での「行動」は、トレーラハウス10の停留時に行うことができる行為であり、人がハウス本体12内で生活したり、所定のサービス又は事業等を営んだりすることを意味し、車両等の乗物の内部で当該乗物を運転する動作(運転操作)は、本明細書での「行動」には該当しない。
【0025】
車輪14は、
図3に示すようにハウス本体12の下部に取り付けられ、トレーラハウス10を移動させるために地面に接地した状態で動く(回転する)。トレーラハウス10において、車輪14は、1つ以上設けられており、例えば、Y方向に間隔を空けて並んだ2つの車輪14が組をなし、X方向において複数組の車輪14が配置されてもよい。
なお、トレーラハウス10を移動させる移動機構は、地面に接地しながら動くものであればよく、車輪14以外の機器、例えばキャタピラ等であってもよい。
【0026】
また、トレーラハウス10は、
図1~3に示すように、輸送路16、可動カバー20及び非可動カバー40をさらに有する。輸送路16は、ハウス本体12の内部空間に供給される資源の輸送路、及び、ハウス本体12の内部空間から排出される排出物を輸送するための輸送路のうち、少なくとも一方を含む。
【0027】
資源は、電気、換気用空気又は水等、ハウス本体12の内部空間での人の行動に伴って消費される財である。資源を輸送するための輸送路16は、給電用のケーブル、給水用のパイプ、又は給気用のダクト等からなり、その一端は、不図示である資源の供給源から延出した供給源側の輸送路に接続される。排出物は、例えば、ハウス本体12の内部空間の空気又は排水(し尿を含む)等である。排出物を輸送するための輸送路16は、排水用のパイプ、又は排気用のダクト等からなり、その一端は、不図示である排出部の排出先に向けて延出した排出先側の輸送路に接続される。
【0028】
本実施形態では、輸送路16の配置経路の自由度を高める理由から、輸送路16がフレキシブルな管材(ホースを含む)又はケーブルによって構成されている。また、本実施形態では、輸送路16の一部が、ハウス本体12の底壁を貫通してハウス本体12内に引き込まれている。ただし、これに限定されず、ハウス本体12の底壁からジョイント(継手)が突出しており、輸送路16の一端部が上記のジョイントに接続されてもよい。
【0029】
可動カバー20及び非可動カバー40は、
図1及び2に示すように、トレーラハウス10の停留時に下方空間の開口端を覆う目的で、ハウス本体12の下部に取り付けられている。下方空間は、ハウス本体12の下方に位置する空間、より詳しくは、ハウス本体12と地面との間に形成された空間である。本実施形態では、下方空間の高さが車輪14の外径と略同じ大きさである。下方空間の開口端は、下方空間の際(きわ)に位置する開口であり、より詳しくは、ハウス本体12の底壁の外縁の直下に位置し、下方空間とその外側の空間との境界をなす開口である。
【0030】
トレーラハウス10の停留時に可動カバー20及び非可動カバー40によって下方空間の開口端を覆うことで、下方空間内の機器等を隠すとともに、下方空間に人が不必要に侵入するのを抑制することができる。これにより、トレーラハウス10の意匠性及び安全性を向上させることができる。
【0031】
本実施形態では、
図1及び2に示すように、ハウス本体12の側端(Y方向における両端)及び後端(X方向における一端)に、それぞれ、可動カバー20及び非可動カバー40が設けられている。可動カバー20は、
図2及び3を見ると分かるように、移動可能な状態でハウス本体12の下部に取り付けられている。これに対し、非可動カバー40は、移動不能なカバーとしてハウス本体12の下部に取り付けられている。
【0032】
詳しく説明すると、ハウス本体12の側端では、可動カバー20が、X方向において車輪14が存在する領域から外れた位置にてハウス本体12の下部に取り付けられている。本実施形態では、
図1及び2に示すように、車輪14より前側の位置、及び車輪14より後側の位置に、それぞれ、可動カバー20が設けられている。車輪14より前側の位置に設けられた可動カバー20は、X方向において車輪14の直前位置からハウス本体12の前端に亘る範囲でハウス本体12の下部に取り付けられている。車輪14より後側の位置に設けられた可動カバー20は、X方向において車輪14の直後位置からハウス本体12の後端に亘る範囲でハウス本体12の下部に取り付けられている。
【0033】
また、ハウス本体12の側端では、X方向において車輪14が配置されている範囲に非可動カバー40が設けられている。非可動カバー40は、Y方向において車輪14の外側で車輪14と隣り合う位置にてハウス本体12の下部に取り付けられている。非可動カバー40の取付方式については、特に限定されないが、例えば、ハウス本体12の下部、及び非可動カバー40のそれぞれに面ファスナを固定し、非可動カバー40を、ハウス本体12に対して着脱可能な状態でハウス本体12の下部に取り付けてもよい。
【0034】
ハウス本体12の後端に設けられた可動カバー20は、
図1に示すように、Y方向においてハウス本体12の一端から他端に亘る範囲でハウス本体12の下部に取り付けられている。なお、ハウス本体12の後端には、可動カバー20の代わりに、非可動カバー40が設けられてもよい。
【0035】
可動カバー20は、剛性を有する部材、例えば化粧材のような板材によって構成され、ハウス本体12の下部から垂れ下がった状態で設けられている。本実施形態の可動カバー20は、
図2に示すように、X方向又はY方向に並んだ複数の板片22によって構成されている。可動カバー20を構成する各板片22は、矩形状の外形形状をなしている。また、隣り合う2つの板片22の間には、若干の隙間が設けられてもよい。また、隣り合う2つの板片22は、互いに締結されており、この結果、複数の板片22は、1ユニット(一枚のカバー)として一体化している。
【0036】
非可動カバー40は、可動カバー20のように複数の板片によって構成されてもよく、一枚のパネル材によって構成されてもよく、あるいはシート又は布材(幕)のような非剛体によって構成されてもよい。また、非可動カバー40は、車輪14を覆う(隠蔽する)上で好適な形状及びサイズに成形されていることが好ましい。
【0037】
本実施形態において、可動カバー20は、前述したように移動可能に構成されており、下方空間の開口端を覆う第1位置と、開口端を開放させる第2位置との間を移動することができる。本実施形態において、可動カバー20は、
図4に示すように、ハウス本体12より下方に位置した回動軸24を中心に回動することで第1位置と第2位置との間を移動する。
【0038】
より詳しく説明すると、ハウス本体12の側端に設けられた可動カバー20は、X方向に延出した回動軸24を中心に回動し、この回動軸24は、Y方向においてハウス本体12の側端より若干内側(下方空間の奥側)にオフセットした位置に配置されている。ハウス本体12の後端に設けられた可動カバー20は、Y方向に延出した回動軸24を中心に回動し、この回動軸24は、X方向においてハウス本体12の後端より若干内側(下方空間の奥側)にオフセットした位置に配置されている。
【0039】
可動カバー20を回動させるための機構(回動機構)は、特に限定されないが、例えば、
図4に示すようなピボットヒンジ機構を利用してもよい。
図4に示す回動機構では、ハウス本体12の底部から下方に延出した支持脚部18に回動軸24が固定され、回動軸24には、可動カバー20を構成する複数の板片22の各々の裏面から突出した舌状突起28が回動可能な状態で支持されている。詳しくは、回動軸24の延出方向において複数の板片22の舌状突起28が一定のピッチで並び、舌状突起28に形成された挿通孔に回転軸24が挿通されることにより、板片22が回動軸24の各部分に支持されている。
【0040】
上記の回動機構により、各板片22は、回動軸24を中心に回動することができる。また、本実施形態では、前述したように、複数の板片22が1ユニット(一枚のカバー)として一体化しているため、可動カバー20は、それ全体で移動(回動)することになる。ただし、これに限定されず、複数の板片22が一つ一つ個別に移動(回動)できる構成でもよい。
【0041】
可動カバー20が第1位置にある場合、
図4に示すように、可動カバー20を構成する複数の板片22が地面に対して垂直に立ち、すなわち、板片22の長辺方向がZ方向(鉛直方向)に沿った状態で配置される。なお、可動カバー20が第1位置にある状態では、
図4に示すように、複数の板片22の下端が地面よりも若干浮いた位置にある。
【0042】
他方、可動カバー20が第2位置にある場合、可動カバー20を構成する複数の板片22がハウス本体12の底壁の直下に位置し、板片22の長辺方向が水平方向に沿った状態で配置される。すなわち、可動カバー20は、
図4に示すように、第2位置に至ることで下方空間内に配置される。
なお、回動軸24は、前述したように、ハウス本体12の端位置よりも内側にオフセットした位置に配置されている。そのため、可動カバー20は、第2位置にある場合には、
図4に示すようにハウス本体12の底壁から若干下がった位置に配置される。つまり、可動カバー20が下方空間内に配置された状態では、Z方向においてハウス本体12の底壁と可動カバー20との間にスペースが形成されている。
【0043】
以上のように可動カバー20が第1位置と第2位置との間を移動可能に構成されていることで、トレーラハウス10の停留時には、可動カバー20を第1位置に移動させて下方空間の開口端を容易に覆うことができる。また、トレーラハウス10を停留場所から移動させる際には、可動カバー20を第2位置に移動させることで、可動カバー20を下方空間内に容易に収めることができる。
【0044】
より詳しく説明すると、下方空間の開口端を覆う手段として、例えば、ラティス等のような木製フェンス材をハウス本体12の下部に立て掛けて開口端を塞ぐことが考えられる。しかしながら、この手法では、トレーラハウス10を移動させる際に上記フェンス材を撤去し、別の車両に積載する等の手間を要する。
これに対して、本実施形態では、ハウス本体12に移動可能な状態で取り付けられた可動カバー20によって下方空間の開口端を覆うことができるため、上記のように大掛かりな撤収作業を必要とせず、トレーラハウス10をスムーズに停留場所から移動させることができる。かかる効果は、トレーラハウス10が建築基準法上、車両として扱われ、停留中には随時且つ任意に移動できる状態を維持することが求められることを踏まえると、特に有意義である。
【0045】
可動カバー20の構成についてさらに説明すると、可動カバー20の裏面には、
図5に示すように連結部26が固定されている。連結部26は、クリップ又はクランプ等の締結用部品からなり、可動カバー20に固定された状態で輸送路16に係合する。これにより、連結部26を介して輸送路16が可動カバー20と連結する。
【0046】
図5に示す連結部26は、二つ割バンドのように二つの半円状バンド片がヒンジを介して繋がった構造であり、可動カバー20を構成する複数の板片22の一つにビス等で固定され、二つのバンド片の間に輸送路16を挟み込んで輸送路16と係合する。なお、係合の態様としては、特に限定されず、例えば、挟み込むこと、引っ掛かること、差し込まれること、嵌め込まれること、及び、接合すること等が挙げられる。
【0047】
そして、輸送路16が連結部26によって可動カバー20に連結された状態にあるときに可動カバー20が移動すると、それに追従する形で輸送路16が移動(詳しくは、回動軸24回りに回動)する。つまり、本実施形態において、輸送路16は、可動カバー20と一体的に移動することができる。
【0048】
より具体的に説明すると、可動カバー20が第1位置に向かって移動する場合、輸送路16は、可動カバー20と一体的に移動して、
図4に示すように、輸送路16を資源の供給源又は排出物の排出先に接続させるための位置(以下、接続位置)に至る。輸送路16が接続位置に至ると、
図4に示すように、輸送路16の一端部(ハウス本体12の内部空間に引き込まれる側とは反対側の端部)が地面付近まで下がり、且つ下方空間の開口端近傍に配置される。
【0049】
他方、可動カバー20が第2位置に向かって移動する場合、輸送路16は、可動カバー20と一体的に移動して、
図4に示すように、輸送路16を下方空間内にて収納するための位置(以下、収納位置)に至る。輸送路16が収納位置に至ると、
図4に示すように、輸送路16の一端部がハウス本体12の底壁付近まで引き上げられ、輸送路16のうち、ハウス本体12の底壁の直下に位置する部分が、底壁と可動カバー20との間のスペース内に収められる。
【0050】
以上のように、本実施形態では、輸送路16が可動カバー20と一体的に移動する。これにより、輸送路16を状況に応じて適切に移動することができる。具体的には、トレーラハウス10の停留時には、輸送路16を資源の供給源又は排出物の排出先に接続させ易くなるように、輸送路16を接続位置へ移動させることができる。この結果、人がハウス本体12の下方に潜り込むことなく、輸送路16をスムーズに資源の供給源又は排出物の排出先に接続することができる。また、トレーラハウス10を移動させる際には、輸送路16を接続位置から収納位置に移動させて、トレーラハウス10の移動に支障をきたさないように輸送路16を下方空間内に収納することができる。
【0051】
また、本実施形態では、連結部26によって輸送路16と可動カバー20とが連結しているため、輸送路16が可動カバー20と一体的に移動することができる。ここで、連結部26は、輸送路16と容易に係合でき、且つ、輸送路16との係合状態を簡単に解除できる構成であることが好ましい。この場合には、輸送路16と可動カバー20とを必要に応じて連結し、また、輸送路16を可動カバー20から分離させて個別に移動させることができる。
【0052】
また、可動カバー20を構成する複数の板片22のうち、輸送路16と対応する位置(詳しくは、輸送路16と隣り合う位置)に配置された板片22は、ハウス本体12に対して着脱可能な状態でハウス本体12の下部に取り付けられてもよい。この場合、可動カバー20が第1位置にある状態において、
図6に示すように、上記の板片22をハウス本体12から取り外すことができる。これにより、輸送路16にアクセスしやすくなり(輸送路16を掴みやすくなり)、輸送路16の取り扱いがより容易になる。つまり、可動カバー20において、輸送路16と隣り合う位置にある板片22が取り外されることで形成された穴から、輸送路16を横引きすることができる。この結果、輸送路16をよりスムーズに資源の供給源又は排出物の排出先に接続することができる。
【0053】
なお、可動カバー20の一部の板片22を着脱可能な状態でハウス本体12に取り付ける構成については、特に限定されないが、例えば、一部の板片22がスナップフィット構造や凹凸嵌合構造等のような比較的簡易に取り外せる構造によってハウス本体12に取り付けられるとよい。
【0054】
また、
図7に示すように、輸送路16と対応する位置に配置された板片22(以下、対象板片22aと言う。)の一部のみが取り外し可能であってもよい。具体的に説明すると、対象板片22aは、
図7に示すように、ハウス本体12の下部に取り付けられた基部22bと、基部22bに対して着脱自在な状態で基部22bに取り付けられた着脱部22cとを備える。そして、可動カバー20が第1位置にある状態で着脱部22cが基部22bから取り外されることで、輸送路16が、下方空間よりも外側の空間に対して露出するようになる。これにより、輸送路16にアクセスしやすくなり(輸送路16を掴みやすくなり)、輸送路16の取り扱いがより容易になる。つまり、対象板片22aにおいて着脱部22cが外されることで形成された穴から輸送路16を横引きすることができ、この結果、輸送路16をよりスムーズに資源の供給源又は排出物の排出先に接続することができる。
【0055】
なお、着脱部22cを着脱可能な状態で基部22bに取り付ける構成については、特に限定されないが、基部22b及び着脱部22cのそれぞれに面ファスナを固定することで、着脱部22cを着脱可能な状態で基部22bに取り付けてもよい。
【0056】
また、輸送路16の取り扱いが容易になる構成については、一部の板片22又は対象板片22a中の着脱部22cが取り外し可能な構成に限定されない。例えば、
図8に示すように、輸送路16が可動カバー20(詳しくは、板片22)を貫通し、輸送路16の一端部が可動カバー20よりも外側に配置された構成であってもよい。かかる構成であれば、可動カバー20を第1位置に移動させて輸送路16を接続位置に至らせることで、板片22や着脱部22cを取り外すことなく、輸送路16の一端部を露出させることができる。これにより、より簡単に、輸送路16を資源の供給源又は排出物の排出先に接続することができる。
【0057】
<<その他の実施形態について>>
以上までに、本発明の移動構造物に関する一つの実施形態を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得る。また、本発明には、その等価物が含まれることは勿論である。
【0058】
上記の実施形態では、水平方向に延出した回動軸24を中心に回動可能な構成の可動カバー20について説明した。ただし、これに限定されず、可動カバー20は、下方空間の開口端を覆う第1位置と、開口端を開放させる第2位置との間を移動すればよく、例えば、上下移動(昇降)する構成でもよい。
【0059】
また、上記の実施形態では、移動構造物の一例としてトレーラハウス10を挙げたが、本発明は、トレーラハウス10以外の移動構造物、例えば、キャンピングカー、移動店舗用の車両、キッチンカー等の移動販売車、及び、ステージカー(トラックステージ)を含むトラック等の自走可能な移動構造物等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
10 トレーラハウス(移動構造物)
12 ハウス本体(本体部)
14 車輪(移動機構)
16 輸送路
18 支持脚部
20 可動カバー
22 板片
22a 対象板片
22b 基部
22c 着脱部
24 回動軸
26 連結部
28 舌状突起
40 非可動カバー