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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083615
(43)【公開日】2024-06-21
(54)【発明の名称】キッチンタオルロール
(51)【国際特許分類】
   A47L 13/16 20060101AFI20240614BHJP
【FI】
A47L13/16 A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024067982
(22)【出願日】2024-04-19
(62)【分割の表示】P 2020189463の分割
【原出願日】2020-11-13
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大岡 康伸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光
(72)【発明者】
【氏名】藤田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】大篭 幸治
(57)【要約】
【課題】再利用が可能であり、吸水量が多く、かつ紙粉の少ない、一定以上の巻長を有するキッチンタオルロールを提供する。
【解決手段】合成繊維及びパルプ繊維を含有し、1プライのエンボス加工を施されたキッチンタオルシートが、ロール状に巻き取られたキッチンタオルロールであって、キッチンタオルシートの坪量が50g/m以上200g/m以下であり、エンボスの深さが0.1mm以上2mm以下であり、ロールの巻長が5m以上24m以下であることを特徴とする、キッチンタオルロールを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成繊維及びパルプ繊維を含有し、1プライのエンボス加工を施されたキッチンタオルシートが、ロール状に巻き取られたキッチンタオルロールであって、
前記キッチンタオルシートの坪量が50g/m以上200g/m以下であり、
前記エンボスの深さが0.1mm以上2mm以下であり、
前記ロールの巻長が5m以上24m以下であることを特徴とする、キッチンタオルロール。
【請求項2】
前記ロールのロール密度が0.06g/cm以上0.19g/cm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のキッチンタオルロール。
【請求項3】
前記キッチンタオルシートの1mにおける吸水量が270g以上600g以下であり、かつ、1gにおける吸水量が2.5g以上5.7g以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のキッチンタオルロール。
【請求項4】
前記キッチンタオルシートの乾燥時におけるCD方向の引張強度(DCDT)が4N/25mm以上80N/25mm以下であり、
前記キッチンタオルシートの乾燥時におけるCD方向の引張強度(DCDT)に対する、乾燥時におけるMD方向の引張強度(DMDT)の比率(DMDT/DCDT)が1.2以上4.5以下であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のキッチンタオルロール。
【請求項5】
前記キッチンタオルシートの乾燥時におけるMD方向の引張強度(DMDT)が15N/25mm以上115N/25mm以下であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のキッチンタオルロール。
【請求項6】
前記キッチンタオルシートにおける前記合成繊維の含有割合が5%以上45%以下であり、前記パルプ繊維の含有割合が55%以上95%以下であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載のキッチンタオルロール。
【請求項7】
前記キッチンタオルシートの乾燥時におけるMD方向の引張強度(DMDT)に対する、湿潤時におけるMD方向の引張強度(WMDT)の比率((WMDT/DMDT)×100(%))が50%以上95%以下であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載のキッチンタオルロール。
【請求項8】
前記キッチンタオルシートの乾燥時におけるCD方向の引張強度(DCDT)に対する、湿潤時におけるCD方向の引張強度(WCDT)の比率((WCDT/DCDT)×100(%))が43%以上89%以下であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載のキッチンタオルロール。
【請求項9】
前記キッチンタオルシートの紙厚が0.45mm以上1.8mm以下であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載のキッチンタオルロール。
【請求項10】
前記キッチンタオルシートのCD方向における破断伸びが50%以上100%以下であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載のキッチンタオルロール。
【請求項11】
前記キッチンタオルシートのMD方向における破断伸びが20%以上65%以下であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載のキッチンタオルロール。
【請求項12】
前記合成繊維の坪量が8g/m以上55g/m以下であり、前記パルプ繊維の坪量が38g/m以上160g/m以下であることを特徴とする、請求項1から11のいずれか1項に記載のキッチンタオルロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キッチンタオルロールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハンドタオルロール、キッチンタオルロール等の、厚手の紙をロール状に巻き取った製品が市販されている。
【0003】
紙製のキッチンタオルロールのシート(以下、キッチンタオルシートと称する)の問題点としては、繰り返し使うことができないことであり、一度水分や汚れを拭き取ってしまうと、そこから水分を絞ったり汚れを落としたりすることは耐久性の観点から難しく、その時点で捨ててしまうことになる。
一方で、合成繊維を含む不織布からなるキッチンタオルシートは、耐久性に優れることから、汚れを水で洗い流せば繰り返し使うことができるが、吸水量が少なく、多量の水分を拭き取ることはできない。
【0004】
これらの問題点に対して、合成繊維にパルプ繊維を水流交絡する技術が開発され、注目を集めている。
合成繊維にパルプ繊維を水流交絡する技術の先行技術文献としては、例えば、特許文献1にはパルプ繊維ウエブと合成繊維ウエブとを水流交絡処理して得られる不織布ワイパーであって、パルプ繊維ウエブに含まれるパルプ繊維の平均繊維長が1.0~5.0mmであり、当該不織布ワイパーの坪量が20~42g/mであり、構成比がパルプ繊維ウエブ70~50質量%、合成繊維ウエブ30~50質量%である、ことを特徴とする不織布ワイパーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-193634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような合成繊維にパルプ繊維を水流交絡して製造したキッチンタオルシートにおいて、特に吸水量を多くするには、パルプ繊維の量を増やして、坪量を大きく(高く)する必要がある。しかしながら、パルプ繊維の量を増やすと、パルプ繊維の全体を水流交絡することが難しくなり、絡まなかったパルプ繊維が紙粉になりやすい(なお、パルプ繊維100%のキッチンタオルシートは、パルプ繊維を合成繊維と水流交絡させていないことから、紙粉はより多くなる)。そのため、吸水量が多く、かつ紙粉の少ない、合成繊維及びパルプ繊維を含むキッチンタオルシート及びキッチンタオルロールを作ることは困難であった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、再利用が可能であり、吸水量が多く、かつ紙粉の少ない、一定以上の巻長を有するキッチンタオルロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討を行い、合成繊維及びパルプ繊維を含み、エンボス加工を施した1プライのキッチンタオルロールにおいて、キッチンタオルシートの坪量、エンボスの深さ及びロールの巻長を所定の数値範囲にすることで、再利用が可能であり、吸水量が多く、かつ紙粉の少ないキッチンタオルロールとすることができ、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0009】
(1)本発明の第1の態様は、合成繊維及びパルプ繊維を含有し、1プライのエンボス加工を施されたキッチンタオルシートが、ロール状に巻き取られたキッチンタオルロールであって、上記キッチンタオルシートの坪量が50g/m以上200g/m以下であり、上記エンボスの深さが0.1mm以上2mm以下であり、上記ロールの巻長が5m以上24m以下であることを特徴とする、キッチンタオルロールである。
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載のキッチンタオルロールであって、上記ロールのロール密度が0.06g/cm以上0.19g/cm以下であることを特徴とするものである。
(3)本発明の第3の態様は、(1)又は(2)に記載のキッチンタオルロールであって、上記キッチンタオルシートの1mにおける吸水量が270g以上600g以下であり、かつ、1gにおける吸水量が2.5g以上5.7g以下であることを特徴とするものである。
(4)本発明の第4の態様は、(1)から(3)のいずれかに記載のキッチンタオルロールであって、上記キッチンタオルシートの乾燥時におけるCD方向の引張強度(DCDT)が4N/25mm以上80N/25mm以下であり、上記キッチンタオルシートの乾燥時におけるCD方向の引張強度(DCDT)に対する、乾燥時におけるMD方向の引張強度(DMDT)の比率(DMDT/DCDT)が1.2以上4.5以下であることを特徴とするものである。
(5)本発明の第5の態様は、(1)から(4)のいずれかに記載のキッチンタオルロールであって、上記キッチンタオルシートの乾燥時におけるMD方向の引張強度(DMDT)が15N/25mm以上115N/25mm以下であることを特徴とするものである。
(6)本発明の第6の態様は、(1)から(5)のいずれかに記載のキッチンタオルロールであって、上記キッチンタオルシートにおける上記合成繊維の含有割合が5%以上45%以下であり、上記パルプ繊維の含有割合が55%以上95%以下であることを特徴とするものである。
(7)本発明の第7の態様は、(1)から(6)のいずれかに記載のキッチンタオルロールであって、上記キッチンタオルシートの乾燥時におけるMD方向の引張強度(DMDT)に対する、湿潤時におけるMD方向の引張強度(WMDT)の比率((WMDT/DMDT)×100(%))が50%以上95%以下であることを特徴とするものである。
(8)本発明の第8の態様は、(1)から(7)のいずれかに記載のキッチンタオルロールであって、上記キッチンタオルシートの乾燥時におけるCD方向の引張強度(DCDT)に対する、湿潤時におけるCD方向の引張強度(WCDT)の比率((WCDT/DCDT)×100(%))が43%以上89%以下であることを特徴とするものである。
(9)本発明の第9の態様は、(1)から(8)のいずれかに記載のキッチンタオルロールであって、上記キッチンタオルシートの紙厚が0.45mm以上1.8mm以下であることを特徴とするものである。
(10)本発明の第10の態様は、(1)から(9)のいずれかに記載のキッチンタオルロールであって、上記キッチンタオルシートのCD方向における破断伸びが50%以上100%以下であることを特徴とするものである。
(11)本発明の第11の態様は、(1)から(10)のいずれかに記載のキッチンタオルロールであって、上記キッチンタオルシートのMD方向における破断伸びが20%以上65%以下であることを特徴とするものである。
(12)本発明の第12の態様は、(1)から(11)のいずれかに記載のキッチンタオルロールであって、上記合成繊維の坪量が8g/m以上55g/m以下であり、上記パルプ繊維の坪量が38g/m以上160g/m以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、再利用が可能であり、吸水量が多く、かつ紙粉の少ない、一定以上の巻長を有するキッチンタオルロールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のキッチンタオルロールの全体を示す斜視図である。
図2】マイクロスコープによるX-Y平面上の高さプロファイルを濃淡で示す図である。
図3】マイクロスコープによるX-Y平面上の高さプロファイルをグラフで示す図である。
図4】本発明のキッチンタオルロールのエンボスについて、エンボスの深さの求め方を示す図である。
図5】本発明のキッチンタオルロールの吸水量の測定方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について、図面を参照しながら詳細に説明するが、これらは例示の目的で掲げたもので、これらにより本発明を限定するものではない。
【0013】
1.キッチンタオルロール
図1は、本発明のキッチンタオルロール1の外観を示す斜視図である。本発明のキッチンタオルロール1は、合成繊維及びパルプ繊維を含有し、1プライのエンボス加工を施されたキッチンタオルシート1xが、ロール状に巻き取られたキッチンタオルロール1である。なお、キッチンタオルシート1xは、流れ方向における等間隔において、幅方向にミシン目を施されていることが好ましい(図示しない)。
なお、本願発明におけるシート1xは、キッチンタオル以外にも様々なロール製品として用いることができ、ワイパー、ハンドタオル又はキッチンタオルの用途で使用することが好ましく、キッチンタオルの用途で使用することが最も好ましい。
【0014】
また、図1に示すように、キッチンタオルシート1xの表面のうち、ロール外側に指向した表面を表面1a(キッチンタオルシート1xの表面)と称し、ロール中心部に指向した表面を裏面1b(キッチンタオルシート1xの裏面)と称する。なお、後述する水流交絡によって、キッチンタオルシート1xに含まれる合成繊維の量においては、キッチンタオルシート1xの表面側(すなわち表面1a側)が多く、裏面1b側が少ないことが好ましい。
【0015】
(巻長及び巻直径)
キッチンタオルロール1の巻長は5m以上24m以下であり、7m以上20mであることが好ましく、8m以上16m以下であることがより好ましい。巻長が5m未満であると、通常のキッチンタオルロールに求められる巻長以上にならず、巻長が24mを超えると代わりに坪量を低くする必要があり、吸水量に劣る。
また、キッチンタオルロール1の巻直径DRは105mm以上155mm以下であることが好ましく、110mm以上140mm以下であることがより好ましく、115mm以上130mm以下であることが更に好ましい。巻直径DRが105mm未満であると通常のキッチンタオルロールに求められる巻長以上にならず、巻直径DRが155mmを超えるとロール状にした時に大きすぎて使用しにくくなり、また坪量が高くなることで結果として紙粉が多くなる。
【0016】
巻長は、キッチンタオルロール1のミシン目とミシン目の間のキッチンタオルシート1xについて、10シート分の長さを実測する。その後、キッチンタオルロール1のシート数を実測し、巻長は10シート分の長さとシート数から比例計算で求める。例えば、10シート分の長さが1.80m、シート数が150シートの場合、1.80m×(150/10)=27mとなる。なお、キッチンタオルロール1にミシン目がない場合は、実測して巻長を測定することができる。また、ロールの巻直径DRは、ムラテックKDS株式会社製ダイヤメータールールを用いて測定する。測定は、10個のキッチンタオルロール1を測定し、測定結果を平均する。
また、ミシン目とミシン目の間の長さ(流れ方向のシートの長さ)は、110mm以上360mm以下が好ましく、160mm以上310mm以下がより好ましく、210mm以上260mm以下が更に好ましい。この範囲にすることで、本願のような吸水量が多いキッチンタオルロール1を使用する際、使用する面積が適正になり、多くの水を吸収することができる。
【0017】
(ロール幅及びロール重量)
キッチンタオルロール1のロール幅は150mm以上380mm以下であることが好ましく、200mm以上350mm以下であることがより好ましく、250mm以上300mm以下であることが更に好ましい。この範囲にすることで、本願のような吸水量が多いキッチンタオルロール1を使用する際、使用する面積が適正になり、多くの水を吸収することができる。
また、キッチンタオルロール1のロール重量は170g以上460g以下であることが好ましく、250g以上410g以下であることがより好ましく、280g以上360g以下であることが更に好ましい。ロール重量が170g未満であると、通常のキッチンタオルロールに求められる巻長以上にならず、ロール重量が460gを超えるとキッチンタオルシート1xの坪量が高くなり、紙粉が多くなる。
なお、ロール質量は、コア(紙管)を含まないロール幅275mmあたりの1ロールの質量とする。ロール幅が275mmでない場合は、比例計算により275mmあたりの質量に換算する。
【0018】
(コア外径)
また、本発明のキッチンタオルロール1の芯の外径である、コア外径DIは、30mm以上60mm以下であることが好ましく、34mm以上55mm以下であることがより好ましく、37mm以上50mm以下であることが更に好ましい。コア外径DIが30mm未満であるとロール状にした時に、コアが小さすぎて使用しにくくなり、コア外径DIが60mmを超えるとロール状にした時に、コアが大きすぎて使用しにくくなる。
コア外径DIは、ムラテックKDS株式会社製ダイヤメータールールを用いて測定する。測定は、10個のキッチンタオルロール1を測定し、測定結果を平均する。
【0019】
(ロール密度)
キッチンタオルロール1のロール密度は0.06g/cm以上0.19g/cm以下であることが好ましく、0.09g/cm以上0.17g/cm以下であることがより好ましく、0.11g/cm以上0.15g/cm以下であることが更に好ましい。キッチンタオルロール1のロール密度が0.06g/cm未満であると、エンボスの深さを確保するために柔らかく巻くことによって、結果的に巻長が短くなり、キッチンタオルロール1のロール密度が0.19g/cmを超えると、エンボスの深さが浅くなり、紙粉が増える。
【0020】
ロール密度は、(ロール質量)÷(ロールの体積)で表される。ロール質量は、ロール幅275mmあたりのキッチンタオルロール1の質量である。ロール体積は[{ロールの外径(巻直径DR)部分の断面積}-(コア外径部分の断面積)]×ロール幅(275mmあたりに換算する)で表される。例えば、ロール幅275mmあたりのロール質量(コアを除く)が337g、巻直径119mm、コアの外径が49mmの場合、ロール密度=0.13g/cmとなる。なお、キッチンタオルロール1にコアが無い場合は、中心孔の直径をコア外径DIとする。
【0021】
2.キッチンタオルシート
本発明のキッチンタオルシート1xは、上述したように合成繊維及びパルプ繊維を含有する。合成繊維としては、例えばナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等が挙げられるが、本願発明のような、高坪量で所定のエンボスを設けるキッチンタオルシート1xを得るには、ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。また、パルプ繊維としては、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)等、一般的なパルプ繊維を用いることができる。パルプ繊維におけるNBKPとLBKPの含有割合は、NBKP:LBKP=50:50~100:0が好ましく、NBKP:LBKP=70:30~100:0がより好ましく、NBKP:LBKP=90:10~100:0が更に好ましく、NBKP:LBKP=100:0が最も好ましい。NBKPとしては、例えばラジアータパイン、スラッシュパイン、サザンパイン、ロッジポールパイン、スプルース及びダグラスファーからなる繊維が好ましい。なお、NBKPの代わりにNUKP、LBKPの代わりにLUKPを用いることもできる。
このとき、キッチンタオルシート1xにおける合成繊維の含有割合が5%以上45%以下であることが好ましく、9%以上38%以下であることがより好ましく、12%以上28%以下であることが更に好ましい。合成繊維の含有割合が5%未満であると、パルプ繊維を後述する水流交絡させることが難しく、結果としてキッチンタオルシート1xの紙粉が多くなり、合成繊維の含有割合が45%を超えると、キッチンタオルシート1xの吸水量に劣る。
また、キッチンタオルシート1xにおけるパルプ繊維の含有割合が55%以上95%以下であることが好ましく、62%以上91%以下であることがより好ましく、72%以上88%以下であることが更に好ましい。パルプ繊維の含有割合が55%未満であると、キッチンタオルシート1xの吸水量に劣り、パルプ繊維の含有割合が95%を超えると、キッチンタオルシート1xの紙粉が多くなる。
【0022】
さらに、キッチンタオルシート1xには、一般的な湿潤紙力剤を含有することが好ましい。湿潤紙力剤(固形分(有効成分)換算)の含有率は、パルプ繊維(絶乾)に対して、0.05%以上1.0%以下が好ましく、0.10%以上0.50%以下がより好ましく、0.20%以上0.40%以下が更に好ましい。湿潤紙力剤の含有率を上記にすることで、本願のような、高坪量で所定のエンボスを設けるキッチンタオルロール1を得ることができる。
また、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、キッチンタオルシート1xに耐熱安定剤、滑剤等を配合することができる。耐熱安定剤としては、例えば、BHT(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール)等のフェノール系安定剤等があげられる。
【0023】
(坪量)
キッチンタオルシート1xの坪量は、50g/m以上200g/m以下であり、60g/m以上170g/m以下であることが好ましく、100g/m以上140g/m以下であることがより好ましい。キッチンタオルシート1xの坪量が50g/m未満であると、キッチンタオルシート1xの吸水量に劣り、キッチンタオルシート1xの坪量が200g/mを超えると、キッチンタオルシート1xの紙粉が多くなる。
【0024】
また、キッチンタオルシート1xに含まれる合成繊維の坪量は、8g/m以上55g/m以下であることが好ましく、12g/m以上45g/m以下であることがより好ましく、15g/m以上38g/m以下であることが更に好ましい。合成繊維の坪量が8g/m未満であると、パルプ繊維を後述する水流交絡させることが難しく、結果としてキッチンタオルシート1xの紙粉が多くなり、合成繊維の坪量が55g/mを超えると、キッチンタオルシート1xの吸水量に劣る。
さらに、キッチンタオルシート1xに含まれるパルプ繊維の坪量は、38g/m以上160g/m以下であることが好ましく、45g/m以上140g/m以下であることがより好ましく、60g/m以上120g/m以下であることが更に好ましい。
パルプ繊維の坪量が38g/m未満であると、キッチンタオルシート1xの吸水量に劣り、パルプ繊維の坪量が160g/mを超えると、キッチンタオルシート1xの紙粉が多くなる。
なお、キッチンタオルシート1xの坪量はJIS P 8124に基づいて測定するが、合成繊維及びパルプ繊維の坪量は、後述する水流交絡した後に個別に測定することが困難であるため、例えば、以下の方法で測定する。
【0025】
まず、0.1M酢酸水溶液と0.1M酢酸ナトリウム水溶液を調製する。約830gの0.1M酢酸水溶液と約160gの0.1M酢酸ナトリウム水溶液を混合してpHが4となるようにし、これを酢酸緩衝液とする。この酢酸緩衝液にセルラーゼオノズカp1500(ヤクルト薬品工業株式会社製)を添加量が1重量%となるように添加する。
セルラーゼオノズカp1500を添加した酢酸緩衝液50mlと、キッチンタオルシート1xを0.5gとをバイアル瓶に入れて、しっかりと蓋をする。次に、180rpm、40℃の条件で24時間振とうした後、バイアル瓶から合成繊維を採取し、合成繊維の質量を測定する。(合成繊維及びパルプ繊維を含む)キッチンタオルシート1xの質量(0.5g)と採取した合成繊維の質量から、下記式により、合成繊維及びパルプ繊維のそれぞれの坪量を算出する。
合成繊維の坪量=
キッチンタオルシート1xの坪量×(合成繊維の質量/キッチンタオルシート1xの質量)
パルプ繊維の坪量=
キッチンタオルシート1xの坪量×[(キッチンタオルシート1xの質量-合成繊維の質量)/キッチンタオルシート1xの質量]
【0026】
また、上記の方法で測定が困難な場合は、JIS P 8124に基づいて測定したキッチンタオルシート1xの坪量-用いた合成繊維の坪量=パルプ繊維の坪量として求めるが、水流交絡後の原反(原紙)とエンボスを設けたキッチンタオルシート1xの坪量は異なる(エンボス後は、坪量が低くなる)ので、下記のように補正することで、最終的な合成繊維及びパルプ繊維のそれぞれの坪量とする。
例えば、合成繊維の坪量が26g/mであり、水流交絡後の原紙の坪量が128g/m、エンボス加工後のキッチンタオルシート1xの坪量が125g/mである場合は、合成繊維の坪量は26×125/128=25g/m、パルプ繊維の坪量は125-25=100g/mとする。
【0027】
(紙厚及び比容積)
キッチンタオルシート1xの紙厚は0.45mm以上1.8mm以下であることが好ましく、0.55mm以上1.45mm枚以下であることがより好ましく、0.75mm以上1.2mm以下であることが更に好ましい。紙厚が0.45mm未満であると、キッチンタオルシート1xの吸水量に劣り、1.8mm枚を超えると、キッチンタオルシート1xの紙粉が多くなる。紙厚はシックネスゲージ(株式会社尾崎製作所製のダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK」)を用いて測定する。測定条件は、測定荷重3.7kPa、測定子直径30mmで、測定子と測定台の間に試料を置き、測定子を1秒間に1mm以下の速度で下ろしたときのゲージを読み取る。また、測定を10回繰り返して測定結果を平均する。なお、測定は3枚のキッチンタオルシート1xを重ねて測定し、値を1/3にして、紙厚の値とする。
また、キッチンタオルシート1xの比容積は5cm/g以上15cm/g以下であることが好ましく、6cm/g以上13cm/g以下であることがより好ましく、7cm/g以上11cm/g以下であることが更に好ましい。比容積が5cm/g未満であると、キッチンタオルシート1xの吸水量に劣り、15cm/gを超えると、キッチンタオルシート1xの紙粉が多くなる。比容積は、キッチンタオルシート1xの紙厚を坪量で割り、単位gあたりの容積cmで表す。
【0028】
(エンボス)
本発明のキッチンタオルロール1(キッチンタオルシート1x)は、エンボス加工が施されてなるものであり、ロールワインダにて施されることが好ましい。なお、エンボス単体の形状は、円形、楕円形、長方形、正方形、花柄、多角形、文字、線、ロゴ等、特に制限なく用いることができ、本願発明のような高坪量で所定のエンボスを設けるキッチンタオルシート1xを得るには、六角形状が好ましい。
また、エンボスの深さは0.1mm以上2mm以下であり、0.3mm以上1.5mm以下であることが好ましく、0.5mm以上1.0mm以下であることがより好ましい。エンボスの深さが0.1mm未満であると、エンボスの凹凸が小さくなることで、紙粉をエンボス部(凹部)でかき取ることができなくなったり、エンボスが浅い分、シートで物を拭いた時に接触面積が増えたりすることで、結果として紙粉が多くなる。深さが2mmを超えると、エンボスの深さを確保するためにロールを柔らかく巻くことになり、結果としてキッチンタオルロール1の巻長が短くなる。
【0029】
エンボスの深さは、マイクロスコープを用いて測定する。マイクロスコープとしては、KEYENCE社製の製品名「ワンショット3D測定マクロスコープ VR-3100」を使用することができる。マイクロスコープの画像の観察・測定・画像解析ソフトウェアとしては、製品名「VR-H1A」を使用することができる。また、測定条件は、倍率12倍、視野面積24mm×18mmの条件で測定する。測定倍率と視野面積は、求めるエンボスの大きさによって、適宜変更してもよい。
【0030】
図2は、マイクロスコープによるX-Y平面上の高さプロファイルを示し、シート表面の高さが濃淡で表されている。図2の濃淡が周辺と異なる六角形状の部位が個々のエンボスを示している。エンボスの深さは、上記マイクロスコープを用いて上述のエンボスの高低差を測定して求める。なお、測定はキッチンタオルシート1xの表面1a側で行う。また、測定時に、キッチンタオルロール1からキッチンタオルシート1xを3周分取り除き、4周目のシートを用いて、シートの状態で測定する。また、ミシン目がある場合は、ミシン目を避けて測定する。
まず、図2のように線分ABを引き、図3の高さプロファイルを得る。なお、線分ABは、エンボスを横切るように引けばよい。また、線分ABは、キッチンタオルの幅方向になるように引くが、エンボスとエンボスの間隔が例えば2mm以上開いている場合は、線分を斜め方向に引いたり、流れ方向に引いたりしてもよい。高さプロファイルは、実際のシートの試料表面の凹凸を表す(測定)断面曲線Sであるが、ノイズ(シートの表面に繊維塊があったり、繊維がヒゲ状に伸びていたり、繊維のない部分に起因した急峻なピーク)をも含んでおり、凹凸の高低差の算出に当たっては、このようなノイズピークを除去する必要がある。
そこで、図3の(測定)断面曲線Sを重み平均ラジオボタンのフィルターのサイズを±12とし、スムージングした図4の断面曲線Wを得る。なお、重み平均ラジオボタンのフィルターを用いたスムージングは、上記の解析ソフトを使用すれば、自動で得られる。そして、図4に示すグラフにおいて、グラフの凸部H1と、H1に隣接する凸部H2の縦軸のそれぞれの最大値の平均値を算出し、H1とH2とに挟まれる凹部D1における縦軸の最小値を求める。このようにして求められた最大値の平均値から最小値を差し引いた数値を暫定的なエンボスの深さとする。そして、図4に示すように、断面曲線上において連続する計2カ所(D1と、H2と凸部H3に挟まれる凹部D2の連続する計2カ所)について同様の測定を行う(この時点で2つの測定結果が得られる)。その後、キッチンタオルシート1xの流れ方向に90度ずつ3回に分けて回転させた各位置において上記同様の測定を行い(流れ方向における測定位置は計4カ所となる)、合計8カ所(2×4)の平均値をエンボスの深さとして最終的に採用する。
【0031】
(吸水量)
本発明において、キッチンタオルシート1xの1mあたりの吸水量が270g以上600g以下であることが好ましく、310g以上560g以下であることがより好ましく、360g以上490g以下であることが更に好ましい。1mあたりの吸水量が270g未満であると、キッチンタオルシート1xの吸水量に劣り、600gを超えると、キッチンタオルシート1xの紙粉が多くなる。
また、キッチンタオルシート1xの1gあたりの吸水量が2.5g以上5.7g以下であることが好ましく、2.9g以上5.3g以下であることがより好ましく、3.3g以上4.8g以下であることが更に好ましい。1gあたりの吸水量が2.5g未満であると、キッチンタオルシート1xの1gあたりの吸水量に劣る。
なお、キッチンタオルシート1xの各吸水量は以下のように測定する。
【0032】
まず、キッチンタオルシート1xを採取し、一片が7.6cm(3インチ)の正方形の型版を用いてカットし、一辺7.6cmの矩形の試験片200を作製する。その後、吸水前の試験片200の質量を電子天秤で測定しておく。そして、試験片200をホルダー220(試験片200の3点を固定するジグで、ジグは水分を吸収しない金属からなる)にセットする。
次に、市販のバットに、蒸留水を深さ2cm入れ、ホルダー220にセットした試験片200を蒸留水中に2分間浸漬する。2分浸漬後に試験片200をホルダー220と共に蒸留水から取り出し、図5に示すように、試験片200の1つの隅部200dに帯210を貼り付ける。帯210は、測定するサンプルと同じキッチンタオルシート1xを幅2mm×長さ15mmの大きさに切り、試験片200の隅部200dから中心に向かって6mmの部分に貼り付ける。次に、ホルダー220と試験片200を、隅部200dに対向する隅部200aが上になるようにして空の水槽内に設置した棒にぶら下げ、水槽の蓋を閉めて10分間、放置する。その後、ホルダー220と試験片200を水槽から取り出し、帯210とホルダー220を外し、電子天秤で試験片200の質量を測定する。蒸留水に浸す前後での試験片200の質量変化から、試験片200の1mあたりの蒸留水の吸水量(g(水)/mシート))を計算する。さらに、1mあたりの吸水量(g(水)/mシート))を試験片200の坪量で割ることにより、1mあたりの吸水量(g(水)/mシート))/坪量(g(シート)/mシート))=1gあたりの吸水量(g(水)/g(シート))を算出する。測定は各サンプル5回ずつ行い、平均値を採用する。
なお、本測定は、JIS P 8111法に従い、温度23±1℃、湿度50±2%の状態で行う。また、蒸留水は23±1℃に保持する。
【0033】
(DMDT及びDCDT)
キッチンタオルシート1xの、JIS P 8113に基づく乾燥時におけるMD方向の引張強度DMDT(Dry Machine Direction Tensile Strength)は15N/25mm以上115N/25mm以下であることが好ましく、20N/25mm以上100N/25mm以下であることがより好ましく、35N/25mm以上80N/25mm以下であることが更に好ましい。また、乾燥時におけるCD方向の引張強度DCDT(Dry Cross Direction Tensile Strength)は4N/25mm以上80N/25mm以下であることが好ましく、6N/25mm以上65N/25mm以下であることがより好ましく、10N/25mm以上50N/25mm以下であることが更に好ましい。DMDTが15N/25mm未満であるか、又はDCDTが4N/25mm未満であると、いずれもキッチンタオルシート1xの強度が不十分で破れやすくなり、再利用が難しくなる。DMDTが115N/25mmを超えるか、又はDCDTが80N/25mmを超えると、坪量が高くなって、いずれもキッチンタオルシート1xの紙粉が多くなる。
なお、この場合のMD方向及びCD方向とは、キッチンタオルシート1xの製造時における製造方向(流れ方向)がMD方向であり、CD方向はMD方向に直交する方向である。
【0034】
また、キッチンタオルシート1xの乾燥時におけるCD方向の引張強度(DCDT)に対する、乾燥時におけるMD方向の引張強度(DMDT)の比率(DMDT/DCDT)は1.2以上4.5以下であることが好ましく、1.4以上4.0以下であることがより好ましく、1.6以上3.5以下であることが更に好ましい。比率が1.2未満であると結果として合成繊維の割合が多くなり、吸水量に劣る。比率が4.5を超えるとDCDTが低くなってキッチンタオルシート1xが破れやすくなる場合があり、再利用が難しくなる。
【0035】
(WMDT及びWCDT)
キッチンタオルシート1xの、旧JIS S 3104に基づく湿潤時におけるMD方向の引張強さWMDT(Wet Machine Direction Tensile Strength)が13N/25mm以上100N/25mm以下であることが好ましく、18N/25mm以上85N/25mm以下であることがより好ましく、25N/25mm以上73N/25mm以下であることが更に好ましい。また、湿潤時におけるCD方向の引張強さWCDT(Wet Cross Direction Tensile Strength)が3N/25mm以上65N/25mm以下であることが好ましく、4N/25mm以上55N/25mm以下であることがより好ましく、9N/25mm以上45N/25mm以下であることが更に好ましい。WMDTが13N/25mm未満であるか、又はWCDTが3N/25mm未満であると、いずれもキッチンタオルシート1xが破れやすくなり、再利用が難しくなる。WMDTが100N/25mmを超えるか、又はWCDTが65N/25mmを超えると、いずれも坪量が高くなり、結果としてキッチンタオルシート1xの紙粉が多くなる。
【0036】
また、キッチンタオルシート1xの湿潤時におけるCD方向の引張強度(WCDT)に対する、湿潤時におけるMD方向の引張強度(WMDT)の比率(WMDT/WCDT)は1.3以上4.6以下であることが好ましく、1.5以上4.1以下であることがより好ましく、1.7以上3.6以下であることが更に好ましい。比率が1.3未満であると結果として合成繊維の割合が多くなり、吸水量に劣る。比率が4.6を超えるとキッチンタオルシート1xが破れやすくなり、再利用が難しくなる。
【0037】
さらに、キッチンタオルシート1xの乾燥時におけるMD方向の引張強度(DMDT)に対する、湿潤時におけるMD方向の引張強度(WMDT)の比率((WMDT/DMDT)×100(%))は50%以上95%以下であることが好ましく、65%以上93%以下であることがより好ましく、70%以上91%以下であることが更に好ましい。同様に、キッチンタオルシート1xの乾燥時におけるCD方向の引張強度(DCDT)に対する、湿潤時におけるCD方向の引張強度(WCDT)の比率((WCDT/DCDT)×100(%))は43%以上89%以下であることが好ましく、60%以上86%以下であることがより好ましく、65%以上83%以下であることが更に好ましい。(WMDT/DMDT)の比率が50%未満であるか、又は(WCDT/DCDT)の比率が43%未満であると、キッチンタオルシート1xが破れやすくなり、再利用が難しくなる。(WMDT/DMDT)の比率が95%を超えるか、又は(WCDT/DCDT)の比率が89%を超えると、結果として合成繊維の割合が多くなり、吸水量に劣る。
【0038】
(破断伸び)
キッチンタオルシート1xのMD方向の破断伸びは、20%以上65%以下であることが好ましく、28%以上53%以下であることがより好ましく、33%以上48%以下であることが更に好ましい。また、キッチンタオルシート1xのCD方向の破断伸びは、50%以上100%以下であることが好ましく、60%以上95%以下であることがより好ましく、70%以上90%以下であることが更に好ましい。キッチンタオルシート1xのMD方向又はCD方向の破断伸びを上記の範囲内にすることで、再利用が可能であり、吸水量が多く、かつ紙粉の少ないキッチンタオルロール1を得ることができる。なお、キッチンタオルシート1xの各方向の破断伸びは、JIS P 8113に基づいて測定する。
【0039】
3.キッチンタオルシート及びキッチンタオルロールの製造方法
キッチンタオルシート1x及びキッチンタオルロール1は、例えば(1)所定のスパンボンド不織布にパルプ繊維を積層して水流交絡、(2)エンボス処理、(3)ロール巻取り加工の順で製造することができる。
このとき、(1)水流交絡において、合成繊維にパルプ繊維を水流交絡することで、合成繊維及びパルプ繊維を含む不織布を得る。水流交絡の方法に関しては、例えば、特開2018-193634号公報に記載された方法で行うことが好ましい。また、(2)エンボス処理では、マッチドスチール(スチールマッチ)による熱エンボス処理をロールワインダにて実施することが好ましい。エンボスパターンとしては、六角形状であることが好ましい。
【0040】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態や実施例に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが、当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例0041】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0042】
(1)水流交絡(2)エンボス処理、(3)ロール巻取り加工の工程を経て、表2に記載された実施例1~15及び比較例1~7のキッチンタオルロールを作製した。また、市販品の2プライのキッチンタオルロールを用意した。以上の全ての実施例、比較例及び市販品のキッチンタオルロールに関して上述の各パラメーターを測定し、かつ、下記の各評価を行った。なお、下記の表2においては特にパラメーターとして記載していないが、カレンダー条件は統一したため、坪量の高いキッチンタオルシートは、比容積が低くなる傾向にある。
紙粉量:紙粉量の官能評価は30人で行った。キッチンタオルシート及びキッチンタオルロールを用いて食器を拭いた際に、手に付着したり拭き取った食器に付着したりした紙粉量の評価を次のように行った。特に優れる(顕著に少ない):5点、優れる(少ない):4点、良好(問題ない):3点、劣る(多い):2点、特に劣る(顕著に多い):1点
なお、30人の平均値を算出し、四捨五入して有効数値1桁にした。
【0043】
吸水量:上述の方法で実測し、各実測値より下記の表1の通り評価を行った。
【表1】
【0044】
巻長:巻長を実測して、下記の通り評価を行った。
4m未満:1点
4m以上5m未満:2点
5m以上7m未満:3点
7m以上8m未満:4点
8m以上:5点
【0045】
【表2】
【0046】
表2に示すように、実施例1~16のキッチンタオルロールはいずれも吸水量に優れ、巻長も十分なものであり、かつ、紙粉量も少なかった。一方で比較例1~7のキッチンタオルロールは吸水量が少ないか、巻長が短いか、又は紙粉量が多いものであった。
以上より、本発明のキッチンタオルロールは、再利用が可能であり、吸水量が多く、かつ紙粉の少ない、一定以上の巻長を有するキッチンタオルロールを提供することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 キッチンタオルロール
1a 表面
1b 裏面
1e キッチンタオルシートの最外巻の端縁
1x キッチンタオルシート
200 試験片
200a、200d 隅部
210 帯
220 ホルダー
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-04-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成繊維にパルプ繊維を水流交絡処理した不織布に、エンボス加工を施した1プライのキッチンタオルシートが、ロール状に巻き取られたキッチンタオルロールであって、
前記合成繊維の坪量が13g/m 以上45g/m 以下であり、前記パルプ繊維の坪量が48g/m 以上135g/m 以下であり、
前記キッチンタオルシートの坪量が61g/m 以上158g/m 以下であり、
前記キッチンタオルシートにおける前記合成繊維の含有割合が10%以上36%以下であり、前記パルプ繊維の含有割合が64%以上86%以下であり、
前記キッチンタオルシートの乾燥時におけるMD方向の引張強度(DMDT)が21.4N/25mm以上91.0N/25mm以下であり、
前記キッチンタオルシートの乾燥時におけるCD方向の引張強度(DCDT)が6.0N/25mm以上58.0N/25mm以下であり、
前記キッチンタオルシートのMD方向における破断伸びが29%以上52%以下であり、
前記キッチンタオルシートのCD方向における破断伸びが64%以上92%以下であり、
前記キッチンタオルシートの湿潤時におけるMD方向の引張強度(WMDT)が18.8N/25mm以上81.0N/25mm以下であり、
前記キッチンタオルシートの湿潤時におけるCD方向の引張強度(WCDT)が4.9N/25mm以上48.5N/25mm以下であり、
前記エンボス加工により形成されたエンボスの深さが0.33mm以上1.44mm以下であり、
前記キッチンタオルロールの巻長が7.3m以上19.8m以下であり、
前記キッチンタオルロールのロール密度が0.10g/cm 以上0.16g/cm 以下であることを特徴とする、キッチンタオルロール。
【請求項2】
前記キッチンタオルシートの1mにおける吸水量が270g以上600g以下であり、かつ、1gにおける吸水量が2.5g以上5.7g以下であることを特徴とする、請求項1に記載のキッチンタオルロール。
【請求項3】
前記キッチンタオルシートの紙厚が0.45mm以上1.8mm以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のキッチンタオルロール。