(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083630
(43)【公開日】2024-06-21
(54)【発明の名称】基準画像生成方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/952 20060101AFI20240614BHJP
【FI】
G01N21/952
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024069100
(22)【出願日】2024-04-22
(62)【分割の表示】P 2020213990の分割
【原出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】井戸本 靖史
(72)【発明者】
【氏名】原田 和眞
(57)【要約】
【課題】受口に対する挿し口の挿入量の適否について容易に判定可能な判定用画像を生成することが可能な基準画像生成方法を実現する。
【解決手段】基準画像生成方法は、継手部分の3次元モデルを生成するモデル生成ステップ(S21)と、3次元モデルを所定の方向から撮影した場合におけるモデル画像を生成するモデル画像生成ステップ(S22)と、モデル画像に基づいて基準画像を生成する基準画像生成ステップ(S23)と、を含む。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の管の端部に形成された挿し口を、第2の管の受口に挿入することで構成される継手部分の接合状態を判定するための基準画像を生成する基準画像生成方法であって、
前記第1の管は、前記第2の管の受口に対する前記第1の管の挿し口の挿入量の適否を判定するための指標となる指標線を表面に有し、
前記第1の管の挿し口が、前記第2の管の受口に適切な度合いで挿入されている継手部分の3次元モデルを生成するモデル生成ステップと、
前記3次元モデルを所定の方向から撮影した場合における画像であるモデル画像を生成するモデル画像生成ステップと、
前記モデル画像における前記指標線の画像の位置に基づいて、前記受口に対する前記挿し口の挿入量が適切である場合に前記指標線の画像と重畳する画像である基準画像を生成する基準画像生成ステップと、を含む基準画像生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管の継手部分の接合状態を判定するための基準画像生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、管接合部を検査する管検査装置が開示されている。管検査装置は、管の周囲を囲むように環状に配置されるとともに一部が開放された開放端部を備える環状部材と、前記環状部材に取り付けられた検査機器と、を備える。検査機器は例えば撮像装置で構成され、管の外周全周を同時に撮像可能である。管接合部には、マーカー部材が設けられたシール部材が用いられている。マーカー部材は、シール部材の他の部分の色とは異なる着色部材で構成されている。撮像装置で撮影された画像に着色部材の色が認められると、接合状態が不適正であると判断できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の管検査装置は、管接合部におけるシール部材の状態を判定するものである。すなわち、当該管検査装置によっては、受口に対する挿し口の挿入量の適否について判定することはできない。
【0005】
本発明の一態様は、受口に対する挿し口の挿入量の適否について容易に判定可能な判定用画像を生成することが可能な基準画像生成方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る基準画像生成方法は、第1の管の端部に形成された挿し口を、第2の管の受口に挿入することで構成される継手部分の接合状態を判定するための基準画像を生成する基準画像生成方法であって、前記第1の管は、前記第2の管の受口に対する前記第1の管の挿し口の挿入量の適否を判定するための指標となる指標線を表面に有し、前記第1の管の挿し口が、前記第2の管の受口に適切な度合いで挿入されている継手部分の3次元モデルを生成するモデル生成ステップと、前記3次元モデルを所定の方向から撮影した場合における画像であるモデル画像を生成するモデル画像生成ステップと、前記モデル画像における前記指標線の画像の位置に基づいて、前記受口に対する前記挿し口の挿入量が適切である場合に前記指標線の画像と重畳する画像である基準画像を生成する基準画像生成ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、継手部分の3次元モデルを用いて基準画像を生成することで、屈曲角および呼び径といった条件ごとの基準画像を容易に生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】実施形態1に係る挿入量判定用装置の要部の構成を示すブロック図である。
【
図3】輪郭抽出部による第1の管の輪郭の抽出について示す図である。
【
図4】輪郭抽出部による第2の管の輪郭の抽出について示す図である。
【
図5】第1の管が第2の管に対して紙面の手前側へ屈曲している状態を示す図である。
【
図6】第1の管が第2の管に対して紙面の奥側へ屈曲している状態を示す図である。
【
図7】挿入量が適切であると判定される判定用画像の例を示す図である。
【
図8】挿入量が適切でないと判定される判定用画像の一例を示す図である。
【
図9】挿入量が適切でないと判定される判定用画像の、別の例を示す図である。
【
図10】実施形態1に係る演算装置における処理を示すフローチャートである。
【
図11】実施形態2に係る挿入量判定用装置の要部の構成を示すブロック図である。
【
図12】基準画像の生成手順を示すフローチャートである。
【
図13】継手部分の3次元モデルについて説明するための図である。
【
図14】継手部分の3次元モデルにおける、屈曲角の変更について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0010】
図1は、管の継手部分の継手画像の例を示す図である。
図1には、第1の管P1と第2の管P2との継手部分の継手画像が示されている。当該継手部分は、第1の管P1の端部に形成された挿し口を、第2の管P2の端部に形成された受口に挿入することで構成される。第1の管P1および第2の管P2の材質については特に制限されず、金属であっても樹脂であってもよい。
【0011】
第1の管P1は、表面に指標線LP1を有する。指標線LP1は、第2の管P2の受口に対する第1の管P1の挿し口の挿入量および屈曲角の適否を判定するための指標となる。指標線LP1は、実線または破線である。指標線LP1は、破線である場合には、第1の管P1を周方向におけるどのような位置から撮像した場合であっても、第1の管P1の画像の径方向における両端の、少なくとも一方に指標線LP1を視認可能であるように引かれることが多いが、例外も存在する。以下の説明では、第2の管P2の受口に対する第1の管P1の挿し口の挿入量を指して、単に挿入量と称する場合がある。
【0012】
図2は、実施形態1に係る挿入量判定用装置1の要部の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、挿入量判定用装置1は、演算装置10、カメラ20、記憶装置30、および表示装置40を備える。
【0013】
演算装置10は、管の挿入量の適否を判定するための処理を実行する。演算装置10は、継手画像撮像部11、輪郭抽出部12、屈曲角算出部13、基準画像取得部14、判定用画像生成部15、指標線抽出部16、および挿入量判定部17を備える。
【0014】
継手画像撮像部11は、カメラ20により、第1の管P1の挿し口が、第2の管の受口P2に挿入されている継手部分の継手画像を撮像する。継手画像の一例は、
図1に示したとおりである。輪郭抽出部12は、継手画像撮像部11が撮像した画像における、第1の管P1および第2の管P2の輪郭を抽出する。
【0015】
図3は、輪郭抽出部12による第1の管P1の輪郭の抽出について示す図である。
図3においては、継手画像の例が符号3100で示されている。継手画像をHSV(Hue Saturation Value)変換して得られた彩度(Saturation)画像においては、第1の管P1および第2の管P2の画像と、背景である土の画像とで、彩度に大きな差が生じる。輪郭抽出部12は、彩度が高い領域、すなわち第1の管P1および第2の管P2の画像の領域を彩度画像から除去することで、
図3において符号3200で示されている画像を生成する。
【0016】
さらに、輪郭抽出部12は、
図3において符号3300で示されている、第1の管P1の近傍の背景の画像のみを残して不要な背景を除去した画像を生成する。さらに、輪郭抽出部12は、
図3において符号3400で示されている、第1の管P1の領域R1のみを抽出した画像を生成する。輪郭抽出部12は、領域R1の輪郭を、第1の管P1の輪郭として抽出する。
【0017】
図4は、輪郭抽出部12による第2の管P2の輪郭の抽出について示す図である。輪郭抽出部12は、第1の管P1の輪郭の抽出と同様に、
図4において符号4100で示されている、彩度画像から第1の管P1および第2の管P2の画像の領域を除去した画像を生成する。続けて輪郭抽出部12は、
図4において符号4200で示されている、第2の管P2の近傍の背景の画像のみを残して不要な背景を除去した画像を生成する。さらに、輪郭抽出部12は、
図4において符号4300で示されている、第2の管P1の領域R2のみを抽出した画像を生成する。輪郭抽出部12は、領域R2の輪郭を、第2の管P2の輪郭として抽出する。
【0018】
屈曲角算出部13は、輪郭抽出部12が抽出した第1の管P1および第2の管P2の輪郭に基づいて、継手部分における第1の管P1および第2の管P2の間の、所定の方向における屈曲角を算出する。本実施形態では、屈曲角算出部13は、第2の管のP2の軸方向に垂直な方向(第1の方向)における、第1の管P1および第2の管P2の間の屈曲角を算出する。
【0019】
図5は、第1の管P1が第2の管P2に対して紙面の手前側へ屈曲している状態を示す図である。
図6は、第1の管P1が第2の管P2に対して紙面の奥側へ屈曲している状態を示す図である。
図5および
図6を参照して、屈曲角算出部13が第1の方向における第1の管P1および第2の管P2の間の屈曲角を算出する方法を説明する。以下の説明では、第1の方向は、紙面に垂直な方向に対応する。
【0020】
屈曲角算出部13は、輪郭抽出部12が抽出した第1の管P1および第2の管P2の輪郭に基づいて、第1の管P1および第2の管P2の中心線を導出する。次に、屈曲角算出部13は、第1の管P1および第2の管P2の中心線がなす角度θ0を算出する。また、第1の管P1の両側面のそれぞれと、第2の管P2の端面とがなす角度θ1およびθ2(θ1≦θ2)を算出する。また、屈曲角算出部13は、第1の管P1の中心線と、第1の管P1の両側面の輪郭線のそれぞれとがなす角度θ3およびθ4を算出する。さらに、屈曲角算出部13は、予め用意された、角度θ0~θ4と第1の方向における屈曲角との対応関係を示すテーブルを参照して、上述した屈曲角を算出する。
【0021】
基準画像取得部14は、屈曲角算出部13が算出した屈曲角に応じた挿入量の適否を判定するための、屈曲角に応じて用意された基準画像CI(
図7など参照)を取得する。本実施形態において、基準画像CIは、第2の管P2の軸に対して互いに軸対称な位置に配置され、挿入量が適切である場合における指標線LP1の画像の位置に対応する一対のマーカーである。基準画像CIは、継手部分における挿入量および屈曲角が適切である場合、指標線LP1の画像に重畳する。本実施形態において、基準画像CIは、継手画像における第1の管P1の、少なくとも一方の側面の輪郭部分に重畳する。
【0022】
本実施形態では、基準画像CIは、上述の第1の方向における、第1の管P1および第2の管P2の間の屈曲角に応じて複数用意されている。具体的には、基準画像CIは、上記屈曲角について、-4°~+4°の範囲で1°ごとに用意されている。ただし、挿入量判定用装置1において用意される基準画像CIはこれに限られず、-4°~+4°とは異なる範囲で、1°とは異なる屈曲角ごとに用意されていてもよい。
【0023】
また、基準画像CIは、上述した第1の方向と、第2の管P2の軸方向および第1の方向の両方に垂直な第2の方向と、のそれぞれにおける屈曲角に応じて複数用意されていることが好ましい。また、基準画像CIは、第1の管P1の呼び径に応じて複数用意されていることがより好ましい。
【0024】
判定用画像生成部15は、基準画像取得部14が取得した基準画像CIを継手画像に重畳させることで、挿入量の適否を判定するための判定用画像を生成する。判定用画像においては、上記の挿入量が適切である場合、基準画像CIが指標線LP1の画像に重畳する。したがって、基準画像CIが指標線LP1の画像に重畳しているか否かにより、挿入量の適否を容易に判定できる。
【0025】
基準画像取得部14は、上記のとおり用意された複数の基準画像CIから、継手画像における第1の方向における屈曲角に応じた基準画像CIを選択して取得する。したがって、判定用画像生成部15は、屈曲角に応じた適切な基準画像CIを用いて判定用画像を生成できる。また、この場合には、挿入量が適切でない場合の他、屈曲角が適切な範囲外である場合にも、基準画像CIが指標線LP1の画像に重畳しなくなるため、屈曲角の適否についても判定できる。また、上述したように、第1の方向および第2の方向のそれぞれにおける屈曲角、および/または第1の管の呼び径に応じて基準画像CIが用意されている場合には、判定用画像生成部15は、より適切な基準画像CIを用いて判定用画像を生成できる。
【0026】
また、上述したとおり、基準画像CIは、継手画像における第1の管P1の、少なくとも一方の側面の輪郭部分に重畳する。このため、判定用画像生成部15は、第1の管P1の画像の、少なくとも一方の側面の輪郭部分において基準画像CIが指標線LP1の画像に重畳しているか否かに基づいて挿入量の適否を判定することが可能な判定用画像を生成できる。
【0027】
指標線抽出部16は、判定用画像から指標線LP1の画像を抽出する。指標線抽出部16は、例えば継手画像から指標線LP1の色の領域を抽出することで、指標線LP1の画像を抽出する。また、抽出した指標線LP1の画像が、例えば途中で途切れている箇所が存在するなど、不完全である場合には、当該画像を楕円近似することで完全な指標線LP1の画像を再現してもよい。挿入量判定部17は、挿入量の適否を判定する。挿入量判定部17は、指標線抽出部16が抽出した指標線LP1の画像に基準画像CIが重畳している場合に、挿入量が適切であると判定する。すなわち、挿入量判定部17は、指標線抽出部16が抽出した指標線LP1の画像と基準画像CIとにより、挿入量の適否について判定する。したがって、挿入量判定用装置1は、挿入量の適否を作業者の目視によらず自動的に判定できる。
【0028】
図7は、挿入量が適切であると判定される判定用画像の例を示す図である。
図7に示す例では、第1の管P1の輪郭部分において、指標線LP1の画像に基準画像CIが重畳している。このため、挿入量判定部17は、挿入量が適切であると判定する。
【0029】
図8は、挿入量が適切でないと判定される判定用画像の一例を示す図である。
図8に示す例では、第1の管P1の輪郭部分において、指標線LP1の画像に基準画像CIが重畳していない。このため、挿入量判定部17は、挿入量が適切でないと判定する。
【0030】
図9は、挿入量が適切でないと判定される判定用画像の、別の例を示す図である。
図9に示す例では、指標線LP1は実線ではなく破線である。このため、
図9に示す例では、指標線LP1が、第1の管P1の側面の一方にのみ表れている。
図9に示す例においても、指標線LP1の画像に基準画像CIが重畳していない。このため、挿入量判定部17は、挿入量が適切でないと判定する。
【0031】
また、判定用画像においては、挿入量が適切であっても、屈曲角が適切でない場合には、指標線LP1の画像に基準画像CIが重畳しない。したがって、挿入量判定用装置1によれば、挿入量だけでなく、屈曲角が不適切な場合についても、不適切であると判定することができる。すなわち、挿入量判定用装置1は、挿入量の適否に限られない、継手部分における接合状態についての適否の判定に用いることができる装置である。
【0032】
なお、継手画像において、第1の管P1の両側面のいずれにも指標線LP1が表れていない場合には、上述したとおり、指標線LP1の画像を楕円近似することで完全な指標線LP1の画像を再現してもよい。この場合、挿入量判定部17は、再現した完全な指標線LP1の画像に基準画像CIが重畳している場合、挿入量が適切であると判定する。また、基準画像CIの位置は、第1の管P1の、側面の輪郭部分に重畳するものに限定されず、例えば第1の管P1の幅方向における中央部分に重畳するものであってもよい。
【0033】
カメラ20は、上述したとおり、継手画像撮像部11が継手部分の画像を撮像するための撮像装置である。記憶装置30は、演算装置10による処理に必要な情報を記憶する。例えば記憶装置30は、上述した複数の基準画像CIを記憶する。表示装置40は、演算装置10の制御により、作業者に情報を提示するための画像を表示する。例えば挿入量判定部17は、挿入量の適否についての判定結果を示す画像を表示装置40に表示させる。
【0034】
(演算装置10における処理)
図10は、演算装置10における処理を示すフローチャートである。演算装置10における処理は以下のとおりである。継手画像撮像部11は、継手画像を撮像する(S11、継手画像撮像ステップ)。輪郭抽出部12は、第1の管P1および第2の管P2の輪郭を継手画像から抽出する(S12、輪郭抽出ステップ)。屈曲角算出部13は、第1の管P1および第2の管P2の輪郭に基づいて、屈曲角を算出する(S13、屈曲角算出ステップ)。基準画像取得部14は、屈曲角に応じた基準画像CIを取得する(S14、基準画像取得ステップ)。判定用画像生成部15は、基準画像CIを継手画像に重畳させることで、判定用画像を生成する(S15、判定用画像生成ステップ)。
【0035】
さらに、指標線抽出部16は、判定用画像から指標線LP1の画像を抽出する(S16)。挿入量判定部17は、指標線LP1の画像に基準画像CIが重畳しているか否かを判定する(S17)。指標線LP1の画像に基準画像CIが重畳している場合(S17でYES)、挿入量判定部17は、挿入量は適切であると判定する(S18)。指標線LP1の画像に基準画像CIが重畳していない場合(S17でNO)、挿入量判定部17は、挿入量は適切でないと判定する(S19)。
【0036】
以上の処理により、挿入量判定用装置1は、判定用画像を生成する。さらに、挿入量判定用装置1は、判定用画像に基づいて、挿入量の適否を判定する。したがって、挿入量判定用装置1によれば、挿入量の適否について容易に判定できる。なお、ステップS19の後は、誤判定の可能性を考慮してステップS11から処理を再度実行してもよい。また、継手部分における第1の管P1と第2の管P2との接合をいったん解除し、接合させなおしてもよい。
【0037】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0038】
図11は、実施形態2に係る挿入量判定用装置1Aの要部の構成を示すブロック図である。
図11に示すように、挿入量判定用装置1Aは、演算装置10の代わりに演算装置10Aを備える点で挿入量判定用装置1と相違する。演算装置10Aは、指標線抽出部16および挿入量判定部17を備えず、判定用画像出力部18を備える点で演算装置10と相違する。
【0039】
判定用画像出力部18は、判定用画像生成部15が生成した判定用画像を表示装置40に出力する。このため、挿入量判定用装置1Aにおいては、表示装置40に表示された判定用画像に基づいて、挿入量の適否を作業者が目視で判定できる。
【0040】
演算装置10Aにおける処理は、演算装置10における処理(
図10参照)と、ステップS11~S15について同様である。ステップS15の後、演算装置10Aにおいては、判定用画像出力部18が判定用画像を表示装置40へ出力する。演算装置10AはステップS16~S19を実行しない。
【0041】
ただし、挿入量判定用装置1Aにおいて、演算装置10Aは、指標線抽出部16および挿入量判定部17を備えた上で、さらに判定用画像出力部18を備えていてもよい。この場合、挿入量判定用装置1Aにおいては、挿入量判定部17が挿入量の適否を判定するとともに、判定用画像出力部18が判定用画像を表示装置40に出力する。換言すれば、演算装置10Aは、ステップS16~S19を実行した上で、判定用画像を表示装置40へ出力する。このため、挿入量判定部17による判定の適否を作業者が確認できる。
【0042】
また、演算装置10Aが指標線抽出部16、挿入量判定部17および判定用画像出力部18を備える場合、判定用画像出力部18は、挿入量判定部17による判定の結果に応じて、判定用画像における基準画像CIの表示態様を異ならせてもよい。例えば、判定用画像出力部18は、挿入量判定部17による判定の結果に応じて、基準画像CIの色を変化させる。この場合、作業者は、基準画像CIの色により、挿入量判定部17による判定の結果を容易に認識できる。
【0043】
〔実施形態3〕
上述した実施形態における基準画像CIの生成方法について、以下に説明する。
【0044】
図12は、基準画像生成方法を示すフローチャートである。以下の説明では、便宜上、各手順を「基準画像生成装置」が実行するものとする。
図12に示すように、基準画像生成装置は、第1の管P1の挿し口が第2の管P2の受口に適切な度合いで挿入されている、継手部分の3次元モデルを生成する(S21、モデル生成ステップ)。基準画像生成装置は、例えばCAD(Computer-Aided Design)を用いて3次元モデルを作成する。基準画像生成装置は、当該3次元モデルを所定の方向から撮影した場合における画像であるモデル画像を生成する(S22、モデル画像生成ステップ)。基準画像生成装置は、モデル画像における指標線LP1の画像の位置に基づいて、第2の管P2の受口に対する第1の管P1の挿し口の挿入量が適切である場合に指標線LP1の画像と重畳する画像である基準画像を生成する(S23、基準画像生成ステップ)。
【0045】
図13は、継手部分の3次元モデルについて説明するための図である。
図13においては、挿入量が適切かつ最小の状態における継手部分のモデルの上面図が符号1301で示されており、当該モデルの側面図が、符号1302で示されている。また、挿入量が適切かつ最大の状態における継手部分のモデルの上面図が符号1303で示されており、当該モデルの側面図が符号1304で示されている。
【0046】
第1の管P1は、指標線LP1の他に、第2指標線LP2を表面に有する。第2指標線LP2は、第2の管P2の端面P21との位置関係により挿入量の適否を判定するための線である。
図13の符号1301および1302で示されているように、第2指標線LP2が1点においてのみ端面P21に接し、かつ第2指標線LP2の他の領域に第2の管P2が重畳しない状態が、挿入量が適切かつ最小の状態である。
図13の符号1303および1304に示されているように、第2指標線LP2が1点においてのみ端面P21に接し、かつ第2指標線LP2の他の領域に第2の管P2が重畳する状態が、挿入量が適切かつ最大の状態である。
【0047】
モデル生成ステップにおいては、基準画像生成装置は、上述した2種類の状態の継手部分の3次元モデルを生成する。モデル画像生成ステップでは、
図13の符号1302および1304に示した撮影位置POSから、符号1301および1303に示した撮像範囲RPICを撮像した場合の画像を生成する。撮影位置POSは、第2の管P2の軸方向において端面P21の位置と等しく、径方向において第2の管P2の中心軸から所定の距離だけ離隔した位置である。所定の距離は例えば200mmであるが、これに限られない。
【0048】
図14は、継手部分の3次元モデルにおける、屈曲角の変更について説明するための図である。上述したとおり、基準画像CIは、継手部分における屈曲角に応じて複数用意される。このため、モデル画像生成ステップでは、基準画像生成装置は、複数の基準画像を生成するために、3次元モデルの屈曲角を変更した複数のモデル画像を生成する必要がある。
【0049】
本実施形態においては、基準画像生成装置は、所定の回転中心P22の周りで第1の管P1を第2の管P2に対して回転させることで3次元モデルの屈曲角を変更する。回転中心P22は、第2の管P2の中心軸上に存在する。また、第2の管P22の軸方向における回転中心P22の位置は、第2の管P2の内側に配されるバルブ(不図示)の、軸方向における位置に等しい。バルブは、継手部分を密閉するためのシール部材である。継手部分において、第1の管P1および第2の管P2は、バルブを介して互いに当接する。
【0050】
基準画像生成装置は、それぞれの屈曲角において、挿入量が適切かつ最小の状態、および、挿入量が適切かつ最大の状態の3次元モデルを生成する。基準画像生成装置は、挿入量が適切かつ最小の状態、および、挿入量が適切かつ最大の状態のいずれにおいても指標線LP1と重畳するように、基準画像CIを生成する。
【0051】
以上のとおり、基準画像生成装置は、継手部分の3次元モデルを生成し、当該3次元モデルを用いて基準画像CIを生成する。したがって、基準画像生成装置は、継手部分における屈曲角および第1の管P1の呼び径といった条件ごとの基準画像CIを容易に生成できる。
【0052】
〔ソフトウェアによる実現例〕
挿入量判定用装置1、1Aの制御ブロック(特に継手画像撮像部11、輪郭抽出部12、屈曲角算出部13、基準画像取得部14、判定用画像生成部15、指標線抽出部16、挿入量判定部17、および判定用画像出力部18)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0053】
後者の場合、挿入量判定用装置1、1Aは、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0054】
〔まとめ〕
本発明は、以下のようにも表現される。
【0055】
本発明の一態様に係る挿入量判定用装置は、第1の管の端部に形成された挿し口を、第2の管の端部に形成された受口に挿入することで構成される継手部分の接合状態を判定するための装置であって、前記第1の管は、前記第2の管の受口に対する前記第1の管の挿し口の挿入量の適否を判定するための指標となる指標線を表面に有し、前記第1の管の挿し口が、前記第2の管の受口に挿入されている継手部分の継手画像を撮像する継手画像撮像部と、前記第1の管および前記第2の管の輪郭を前記継手画像から抽出する輪郭抽出部と、前記輪郭に基づいて、前記継手部分における前記第1の管および前記第2の管の間の、所定の方向における屈曲角を算出する屈曲角算出部と、前記屈曲角に応じた、前記第2の管の受口に対する前記第1の管の挿し口の挿入量の適否を判定するための、屈曲角に応じて用意された基準画像を取得する基準画像取得部と、前記基準画像を前記継手画像に重畳させることで、前記第2の管の受口に対する前記第1の管の挿し口の挿入量の適否を判定するための判定用画像を生成する判定用画像生成部と、を備える。
【0056】
上記の構成によれば、判定用画像生成部は、第1の管と第2の管との継手部分の屈曲角に応じた基準画像が、継手画像に重畳している判定用画像を生成する。基準画像は、受口に対する挿し口の挿入量が適切である場合、第1の管が表面に有する指標線の画像と重畳する。したがって、挿入量判定用装置によれば、受口に対する挿し口の挿入量の適否について容易に判定可能な判定用画像を生成できる。
【0057】
また、本発明の一態様に係る挿入量判定用装置は、前記判定用画像から前記指標線の画像を抽出する指標線抽出部と、抽出した前記指標線の画像に前記基準画像が重畳している場合、前記挿入量が適切であると判定する挿入量判定部とをさらに備えてもよい。
【0058】
上記の構成によれば、挿入量判定部は、指標線抽出部が抽出した指標線の画像と基準画像とにより、受口に対する挿し口の挿入量の適否について判定する。したがって、挿入量の適否を作業者の目視によらず自動的に判定できる。
【0059】
また、本発明の一態様に係る挿入量判定用装置は、前記判定用画像を表示装置に出力する判定用画像出力部をさらに備えてもよい。
【0060】
上記の構成によれば、判定用画像出力部が表示装置に出力した判定用画像に基づいて、受口に対する挿し口の挿入量の適否を作業者が目視で判定できる。
【0061】
また、本発明の一態様に係る挿入量判定用装置において、前記基準画像は、前記第2の管の軸方向に垂直な第1の方向における前記屈曲角に応じて複数用意されており、前記基準画像取得部は、前記複数の前記基準画像から、前記継手画像における前記第1の方向における前記屈曲角に応じた前記基準画像を選択して取得することが好ましい。
【0062】
上記の構成によれば、基準画像取得部は、第1の方向における、継手部分における屈曲角に応じた適切な基準画像を選択して取得する。このため、判定用画像生成部は、基準画像取得部が取得した適切な基準画像を用いて判定用画像を生成できる。また、屈曲角が適切な範囲外である場合にも、基準画像が指標線に重畳しなくなるため、屈曲角の適否についても判定できる。
【0063】
また、本発明の一態様に係る挿入量判定用装置において、前記基準画像は、前記第1の方向と、前記第2の管の軸方向および前記第1の方向の両方に垂直な第2の方向と、のそれぞれにおける前記屈曲角に応じて複数用意されていることが好ましい。
【0064】
上記の構成によれば、基準画像取得部は、第1の方向および第2の方向の両方における、継手部分における屈曲角に応じた、より適切な基準画像を選択して取得する。このため、判定用画像生成部は、基準画像取得部が取得した、より適切な基準画像を用いて判定用画像を生成できる。
【0065】
また、本発明の一態様に係る挿入量判定用装置において、前記基準画像は、前記第1の管の呼び径に応じて複数用意されており、前記基準画像取得部は、前記複数の前記基準画像から、前記継手画像における前記第1の管の呼び径に応じた前記基準画像を選択して取得することが好ましい。
【0066】
上記の構成によれば、基準画像取得部は、第1の管の呼び径、すなわち継手画像における第1の管の幅に応じた適切な基準画像を選択して取得する。このため、判定用画像生成部は、基準画像取得部が取得した適切な基準画像を用いて判定用画像を生成できる。
【0067】
また、本発明の一態様に係る挿入量判定用装置において、前記基準画像は、前記継手画像における前記第1の管の、少なくとも一方の側面の輪郭部分に重畳する画像であることが好ましい。
【0068】
上記の構成によれば、判定用画像生成部は、第1の管の画像の、少なくとも一方の側面の輪郭部分において基準画像が指標線の画像に重畳しているか否かに基づいて、挿入量が適切であるか否かを判定することが可能な判定用画像を生成できる。
【0069】
また、本発明の一態様に係る、接合状態を判定するための方法は、第1の管の端部に形成された挿し口を、第2の管の受口に挿入することで構成される継手部分の接合状態を判定するための方法であって、前記第1の管は、前記第2の管の受口に対する前記第1の管の挿し口の挿入量の適否を判定するための指標となる指標線を表面に有し、前記第1の管の挿し口が、前記第2の管の受口に挿入されている継手部分の継手画像を撮像する継手画像撮像ステップと、前記第1の管および前記第2の管の輪郭を前記継手画像から抽出する輪郭抽出ステップと、前記輪郭に基づいて、前記継手部分における前記第1の管および前記第2の管の間の、所定の方向における屈曲角を算出する屈曲角算出ステップと、前記屈曲角に応じた、前記第2の管の受口に対する前記第1の管の挿し口の挿入量の適否を判定するための、屈曲角に応じて用意された基準画像を取得する基準画像取得ステップと、前記基準画像を前記継手画像に重畳させることで、前記第2の管の受口に対する前記第1の管の挿し口の挿入量の適否を判定するための判定用画像を生成する判定用画像生成ステップと、を含む。
【0070】
上記の構成によれば、上述の挿入量判定用装置と同様の効果を奏する。
【0071】
本発明の各態様に係る挿入量判定用装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記挿入量判定用装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記挿入量判定用装置をコンピュータにて実現させる挿入量判定用装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【0072】
本発明の一態様によれば、受口に対する挿し口の挿入量の適否について容易に判定可能な判定用画像を生成することが可能な挿入量判定用装置を実現できる。
【0073】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
1、1A 挿入量判定用装置
11 継手画像撮像部
12 輪郭抽出部
13 屈曲角算出部
14 基準画像取得部
15 判定用画像生成部
16 指標線抽出部
17 挿入量判定部
18 判定用画像出力部