(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083654
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】ロボットシステム、操作感調整方法及び操作感調整プログラム
(51)【国際特許分類】
B25J 3/00 20060101AFI20240617BHJP
【FI】
B25J3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197573
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】原田 樹
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS12
3C707BS10
3C707DS01
3C707HS27
3C707JT05
3C707KS29
3C707KS34
3C707KS35
3C707KS36
3C707KT01
3C707KT06
3C707KT18
3C707KV01
3C707KW03
3C707KX07
(57)【要約】
【課題】バイラテラル制御を行うマスタースレーブ方式のロボットシステムにおいて、操作感を向上させる。
【解決手段】ロボットシステム1は、操作部23を有するマスターロボット2と、研磨工具41及びワークWの一方を保持するスレーブロボット3と、スレーブロボット3に掛かる力の情報を操作者Hにフィードバックさせる制御装置5と、を備える。制御装置5は、研磨工具41とワークWとの距離Dに基づいて、操作者Hに与える操作感を変更する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部を有するマスターロボットと、
加工工具及び被加工物の一方を保持するスレーブロボットと、
前記スレーブロボットに掛かる力の情報を操作者にフィードバックさせる制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記加工工具と前記被加工物との距離に基づいて、前記操作者に与える操作感を変更する、
ロボットシステム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記加工工具と前記被加工物との距離が近づくに連れて、前記操作部の操作抵抗が大きくなるように、前記操作感を与えるための操作反力を前記操作部に発生させる、
請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記操作感を与えるための操作反力として、前記加工工具と前記被加工物との相対速度に比例した力を前記操作部に発生させる、
請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記操作感を与えるための操作反力を、前記加工工具と前記被加工物との相対速度のうち前記加工工具と前記被加工物とが近接する方向に沿った速度成分に比例させる、
請求項3に記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記制御手段は、前記操作者の操作に基づいて、前記操作感を与えるための操作反力の大きさを調整可能に構成されている、
請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記操作感を与えるための操作反力を、前記距離に対して不連続に変化させる、
請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項7】
前記制御手段は、
前記加工工具と前記被加工物との距離が所定の閾値よりも小さい場合に、前記操作感を与えるための操作反力を前記操作部に発生させ、
前記被加工物の大きさに応じて前記所定の閾値を変更する、
請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項8】
操作部を有するマスターロボットと、加工工具及び被加工物の一方を保持するスレーブロボットと、前記スレーブロボットに掛かる力の情報を操作者にフィードバックさせる制御手段と、を備えるロボットシステムの操作感調整方法であって、
制御装置が、
前記加工工具と前記被加工物との距離を算出する工程と、
前記加工工具と前記被加工物との距離に基づいて、前記操作者に与える操作感を変更する工程と、
を実行する操作感調整方法。
【請求項9】
操作部を有するマスターロボットと、加工工具及び被加工物の一方を保持するスレーブロボットと、前記スレーブロボットに掛かる力の情報を操作者にフィードバックさせる制御手段と、を備えるロボットシステムの操作感調整プログラムであって、
コンピュータを、
前記加工工具と前記被加工物との距離を算出する手段、
前記加工工具と前記被加工物との距離に基づいて、前記操作者に与える操作感を変更する手段、
として機能させる操作感調整プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットシステム、操作感調整方法及び操作感調整プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
マスターロボットの動作に応じてスレーブロボットを動作させるマスタースレーブ方式のロボットシステムにおいて、高度な操作性を得る目的で、スレーブロボットに掛かる力の情報を操作者にフィードバックさせるバイラテラル制御が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のバイラテラル制御では、マスターロボットの操作者はスレーブロボットのエンドエフェクタに対する接触反力を感知することはできるが、この接触が起きるまでの状態変化は感知することができない。そのため、例えば接触直前の位置の微調整等を好適に実行することが難しい。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、バイラテラル制御が行われるマスタースレーブ方式のロボットシステムにおいて、操作性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るロボットシステムは、
操作部を有するマスターロボットと、
加工工具及び被加工物の一方を保持するスレーブロボットと、
前記スレーブロボットに掛かる力の情報を操作者にフィードバックさせる制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記加工工具と前記被加工物との距離に基づいて、前記操作者に与える操作感を変更する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、バイラテラル制御が行われるマスタースレーブ方式のロボットシステムにおいて、操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るロボットシステムを模式的に示した図である。
【
図2】実施形態に係るロボットシステムの概略の制御構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る操作感調整処理の手順を示すフローチャートである。
【
図4】実施形態に係る疑似粘性力の粘性係数を示すグラフである。
【
図5】実施形態に係る操作感調整処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
[ロボットシステムの構成]
図1は、本実施形態に係るロボットシステム1を模式的に示した図である。
この図に示すように、ロボットシステム1は、マスター側のロボットアームであるマスターロボット2と、スレーブ側のロボットアームであるスレーブロボット3とを備えたマスタースレーブ方式の遠隔操作システムである。ロボットシステム1では、操作者(人間)Hが手元のマスターロボット2を操作することで、遠隔のスレーブロボット3がその動きに追従して動作して、所定の作業が行われる。本実施形態では、スレーブロボット3に保持させたワークWを研磨工具41に接触させて、ワークWの研磨加工が行われる。また、ロボットシステム1では、スレーブロボット3が動作したときに掛かる力の情報をマスターロボット2(操作者)にフィードバックさせるバイラテラル制御が行われる。
具体的に、ロボットシステム1は、マスターロボット2と、スレーブロボット3と、研磨工具41と、カメラ42と、制御装置5とを備えている。
【0011】
マスターロボット2は、特に限定はされないが、本実施形態では垂直多関節ロボットであり、複数のアーム22と、操作部23と、複数の関節部24とを有している。
複数のアーム22は、環境(例えば、工場の床等)に固定されたベース台21を基端部として、互いに直列に連結されている。
操作部23は、複数のアーム22の先端に連結されており、操作者Hの操作を受ける部分である。操作部23の具体形状は特に限定されず、例えばハンドル状、レバー状、ゲームコントローラ(ゲームパッド)状等であってもよい。
複数の関節部24は、ベース台21と、複数のアーム22と、操作部23とを、回動可能に連結している。各関節部24には、当該関節部24の先端側に連結されたアーム22(又は操作部23)を駆動するモータ241と、このモータ241の位置(速度)を検出して制御装置5に出力するエンコーダ242とが設けられている(
図2参照)。
【0012】
スレーブロボット3は、マスターロボット2に対応した構造を有する例えば垂直多関節ロボットである。具体的に、スレーブロボット3は、複数のアーム32と、エンドエフェクタ33と、複数の関節部34とを有している。
複数のアーム32は、環境(例えば、工場の床等)に固定されたベース台31を基端部として、互いに直列に連結されている。
エンドエフェクタ33は、マスターロボット2における操作部23に対応する部分であり、複数のアーム32の先端に連結されている。本実施形態のエンドエフェクタ33は、例えばワークWを把持可能なグリッパー等であるが、ワークWを強固に保持可能であればその具体構成は特に限定されない。また、エンドエフェクタ33には図示しない力覚センサが設けられている。力覚センサは、ワークWを介してエンドエフェクタ33が受けた力(又はトルク)を検出し、制御装置5に出力する。
複数の関節部34は、ベース台31と、複数のアーム32と、エンドエフェクタ33とを、回動可能に連結している。各関節部34には、当該関節部34の先端側に連結されたアーム32(又はエンドエフェクタ33)を駆動するモータ341と、このモータ341の位置(速度)を検出して制御装置5に出力するエンコーダ342とが設けられている(
図2参照)。
【0013】
研磨工具41は、本発明に係る加工工具の一例であり、スレーブロボット3のベース台31に固定されている。本実施形態の研磨工具41は例えば砥石であり、制御装置5に回転制御される。研磨工具41は、回転している状態でワークWが押し付けられることにより当該ワークWを研磨する。
【0014】
研磨対象(被加工物)であるワークWは、本実施形態では金属製の板状体である。ワークWは、スレーブロボット3のエンドエフェクタ33によって所定の状態に把持され、加工面が研磨工具41に押し付けられる。
なお、ワークWの形状や材質等は、研磨工具41によって研磨加工が可能なものであれば、特に限定されない。
【0015】
カメラ42は、例えば研磨工具41の上方に配置され、研磨工具41とワークWが接触する様子を撮影する。撮影された映像は、制御装置5に出力されて(又は直接に)後述の表示部53に表示される。
【0016】
図2は、ロボットシステム1の概略の制御構成を示すブロック図である。
この図に示すように、制御装置5は、マスターロボット2、スレーブロボット3、研磨工具41及びカメラ42の動作を制御するコンピュータである。具体的に、制御装置5は、入力部52、表示部53、記憶部56、制御部57を備える。
【0017】
入力部52は、ユーザが制御装置5を動作させるための各種操作を行う操作手段であり、例えばマウス等のポインティングデバイスやキーボードを含む。
表示部53は、例えば液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイその他のディスプレイであり、マスターロボット2の操作部23を操作する操作者Hが作業中に視認しやすい位置に配置されている。表示部53は、制御部57からの表示信号に基づいて、カメラ42で撮影された映像や各種情報を表示する。なお、表示部53は、入力部52の一部を兼ねるタッチパネルであってもよいし、音声出力を行ってもよい。
【0018】
記憶部56は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等を備えて構成されるメモリであり、各種のプログラム及びデータを記憶するとともに、制御部57の作業領域としても機能する。本実施形態の記憶部56には、後述の操作感調整処理(
図3参照)を実行するための操作感調整プログラム561が予め記憶されている。
【0019】
制御部57は、例えばCPU(Central Processing Unit)等を備えて構成され、制御装置5各部の動作を制御する。具体的に、制御部57は、入力部52の操作内容に基づいて、表示部53に各種情報を表示させたり、記憶部56に予め記憶されているプログラムを展開し、展開されたプログラムと協働して各種処理を実行したりする。
【0020】
[操作感調整処理]
続いて、ロボットシステム1において操作部23の操作感を調整する操作感調整処理について説明する。
図3は、操作感調整処理の手順を示すフローチャートであり、
図4は、操作感調整処理で発生させる後述の疑似粘性力の粘性係数を示すグラフであり、
図5は、操作感調整処理を説明するための図である。
【0021】
操作感調整処理は、マスターロボット2及びスレーブロボット3のバイラテラル制御において、操作部23の操作感を調整(変更)する処理である。この操作感調整処理は、例えばユーザ操作に基づいて、制御装置5の制御部57が記憶部56から操作感調整プログラム561を読み出して展開することで実行される。なお、操作感調整処理は、バイラテラル制御の一部として組み込まれていてもよいし、バイラテラル制御とは別途実行できるように独立していてもよい。
【0022】
図3に示すように、操作感調整処理が実行されると、まず制御部57は、ロボットシステム1の制御を開始する(ステップS1)。
具体的に、ロボットシステム1では、操作者Hがマスターロボット2の操作部23を操作してマスターロボット2が動作すると、マスターロボット2の各モータ241の位置(速度)情報が各エンコーダ242により検出される。制御部57は、取得したマスターロボット2の各モータ241の位置情報に基づいて、対応するスレーブロボット3の各モータ341の駆動を制御し、スレーブロボット3にマスターロボット2と対応した動作を行わせる。
このとき、制御部57は、マスターロボット2及びスレーブロボット3をバイラテラル制御により制御する。より詳しくは、制御部57は、スレーブロボット3の各モータ341の位置情報を各エンコーダ342から取得し、これに基づいて各モータ341の出力を算出する。そして、制御部57は、算出した各モータ341の出力情報や、エンドエフェクタ33の力覚センサから取得した作業反力の情報に基づいて、マスターロボット2の各モータ241の駆動を制御する。このように、バイラテラル制御では、スレーブロボット3が動作したときの力の情報が、操作部23を通じて力感覚として操作者Hに伝えられる。
なお、力覚センサを用いずに、例えば外乱オブザーバ等を用い、マスターロボット2の各エンコーダからの情報とモータ電流等に基づいてワークWでの力反力及びトルクを推定してもよい。
【0023】
次に、制御部57は、研磨工具41とワークWとの距離Dを算出する(ステップS2)。
ここでは、制御部57は、予め入力された研磨工具41の位置情報と、スレーブロボット3の各エンコーダ342の情報とに基づいて、研磨工具41とワークWとの相対位置を求め、その間の距離Dを算出する。
なお、距離Dの算出手法は特に限定されず、例えば、カメラ42の撮影画像を処理して求めてもよいし、専用の距離センサ(モーションキャプチャ、レーザ変位計等)を設ける等してもよい。
【0024】
次に、制御部57は、ステップS2で算出した距離Dが所定の閾値Thよりも小さいか否かを判定し(ステップS3)、小さくないと判定した場合には(ステップS3;No)、上述のステップS2へ処理を移行する。
【0025】
一方、ステップS3において、距離Dが閾値Thよりも小さい、すなわち研磨工具41とワークWとが閾値Thよりも近づいたと判定した場合(ステップS3;Yes)、制御部57は、マスターロボット2の操作部23に、距離Dに応じた疑似粘性力Fvを操作反力(操作抵抗)として発生させる(ステップS4)。
このステップでは、制御部57は、以下の式(1)により疑似粘性力Fvを算出する。
Fv=Cx・Vx ・・・(1)
ここで、Cxは粘性係数であり、Vxは研磨工具41とワークWとの相対速度(本実施形態ではワークWの速度)のうちこれらの近接方向の速度成分である。ここで、研磨工具41とワークWとの「近接方向」とは、研磨工具41とワークWとのそれぞれの最近傍点(最も距離が短い点)を結ぶ線に沿った方向である。また、疑似粘性力Fvは速度Vxとは逆向きに作用させる。
【0026】
粘性係数Cxは、
図4に示すように、研磨工具41とワークWとの距離Dに比例し、距離Dが近づくに連れて大きくなる。これにより、研磨工具41とワークWとの距離Dが近づくに連れて、操作部23の操作抵抗が大きくなる(操作感が重くなる)ような操作反力が発生する。
この場合、距離Dに対する粘性係数Cxの変化のさせ方は特に限定されない。例えば
図4に実線で示すように、距離Dが閾値Thに至った後に、距離Dが小さくなるに連れて次第に大きくなるように、粘性係数Cxを変化させてもよい。あるいは
図4に破線で示すように、距離Dが閾値Thに至って所定値だけ上昇した後に距離Dに応じて次第に大きくなる、つまり距離Dに対して不連続に粘性係数Cxを変化させてもよい(ステップ状の変化等を含む)。また、操作反力の発生始点である閾値Thも適宜変更できる。この場合、閾値Thは、ワークWの大きさに応じて変更するのが好ましい。
なお、ワークWが研磨工具41に接触した(距離D=ゼロ)後は、粘性係数Cxをそのまま作用させてもよいし、ゼロに変化させてもよい。また、粘性係数Cxは、ユーザ(操作者H)が調整できるように構成されているのが好ましい。これにより、操作者Hは、操作反力(疑似粘性力Fv)の大きさを自分の好みや感覚に合わせて適宜調整できる。操作者Hに調整等された粘性係数Cxは、記憶部56に記憶される。
【0027】
そして、制御部57は、算出した疑似粘性力Fvを、操作者Hに操作感を与えるための操作反力として、操作部23に作用させる。「操作反力」とは、操作者Hが操作部23に加える操作入力に対する抵抗力であって、操作入力とは反対方向の力成分である。
具体的には、
図5に示すように、スレーブロボット3のエンドエフェクタ33(ワークW)への入力Finは、操作部23への操作者Hの操作入力Fhumanから疑似粘性力Fvを差し引いたものとなる。すなわち、以下の式(2)が成立する。
Fin =Fhuman-Fv ・・・(2)
なお、ステップS4では、研磨工具41とワークWとの距離Dに基づいて、操作者Hに与える操作感が変更されればよい。
【0028】
次に、制御部57は、操作感調整処理を終了させるか否かを判定し(ステップS5)、終了させないと判定した場合には(ステップS5;No)、上述のステップS2へ処理を移行する。
そして、例えば作業完了等により、操作感調整処理を終了させると判定した場合には(ステップS5;Yes)、制御部57は、操作感調整処理を終了させる。
【0029】
[本実施形態の技術的効果]
以上のように、本実施形態によれば、研磨工具41とワークWとの距離Dに基づいて、操作者Hに与える操作感が変更される。
そのため、従来と異なり、研磨工具41とワークWとが接触する前であっても、操作者Hに研磨工具41とワークWとの距離Dの変化を感知させることができる。したがって、操作性を向上させることができる。
【0030】
また、本実施形態によれば、研磨工具41とワークWとの距離Dが近づくに連れて、操作部23の操作抵抗が大きくなるように、操作感を与えるための操作反力が操作部23に発生する。
そのため、操作者Hは研磨工具41とワークWとの接近を好適に感知することができる。これにより、操作者Hは、研磨工具41とワークWとの距離感を把握しやすくなり、例えば接触直前でのワークW位置の微調整等も好適に行うことができる。
【0031】
また、本実施形態によれば、研磨工具41とワークWとの相対速度に比例した力(疑似粘性力Fv)が、操作反力として操作部23に発生する。
つまり、研磨工具41とワークWが接触したとき(後)には、これらの相対速度は略ゼロとなるため、操作反力もほぼ消失する。そのため、操作反力が通常のバイラテラル制御による接触反力(接触剛性)の感じ方を邪魔することが無い。
例えば、操作反力を距離Dに比例する力とした場合、この操作反力は接触後も作用するため、接触反力に重畳して作用してしまい、操作者Hの感じ方が通常時と変わってしまう。そのため、接触後に操作反力をゼロにする処理が必要になる。この点、操作反力を速度に比例した力とすることで、特別な処理の必要なく、接触後に好適に操作反力を消失させることができる。
また、疑似粘性力Fvによりロボットの加速度が小さくなるため、微細送りのような効果が期待できる。
【0032】
また、本実施形態によれば、操作反力は、研磨工具41とワークWとの相対速度のうちこれら研磨工具41とワークWとが近接する方向に沿った速度成分に比例する。
つまり、操作反力は、当該近接方向に沿った速度成分に比例し、当該近接方向に直交する方向の速度成分の影響は受けない。このような操作反力を受けることにより、操作者Hは研磨工具41に対するワークWの向き等が分かりやすくなる。
【0033】
また、本実施形態によれば、操作者Hの操作に基づいて、操作反力(疑似粘性力Fv)の大きさを調整可能となっている。
これにより、操作者Hは、自分の好みや感覚に合わせて操作反力の大きさを適宜調整できる。
【0034】
また、本実施形態によれば、操作反力(疑似粘性力Fv)を距離Dに対して不連続に変化させることができる。
そのため、距離Dが所定値に到達したときに操作反力を不連続に変化させることで、研磨工具41とワークWがその距離Dまで近接したことを、より明確に操作者Hに感知させることができる。
【0035】
また、本実施形態によれば、操作反力として疑似粘性力Fvを発生させるときに距離Dと比較する閾値Thは、ワークWの大きさに応じて変更される。
閾値Thは操作反力の発生始点であるので、ワークWの大きさに応じた適切な距離から、ワークWの接近を感知させることができる。
【0036】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限られない。
例えば、上記実施形態では、操作部23に発生させる操作反力として、操作抵抗を大きくする力を発生させることとした。しかし、当該操作反力は、操作者Hに操作感を与えるためのものであれば特に限定されず、例えば操作部23を振動させたりしもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、スレーブロボット3のエンドエフェクタ33にワークWを保持させ、環境に固定した研磨工具41に接触させることとした。しかし、スレーブロボット3は研磨工具41及びワークWのいずれを保持してもよい。
【0038】
また、上記実施形態では、ロボットシステム1で行う機械加工(加工作業)として、研磨工具によりワークを研磨する「研磨(加工)」を例に挙げて説明した。しかし、当該加工は、ワークと加工工具を接触させてワークを削る(加工する)機械加工を広く含み、例えば「研削(加工)」等も含む。
その他、上記実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 ロボットシステム
2 マスターロボット
3 スレーブロボット
5 制御装置
23 操作部
33 エンドエフェクタ
41 研磨工具
57 制御部(制御手段)
561 操作感調整プログラム
Cx 粘性係数
D 距離
Fv 疑似粘性力
H 操作者
Th 閾値
W ワーク