(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083663
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】ロボットアーム及びロボットアームの製造方法
(51)【国際特許分類】
B25J 18/00 20060101AFI20240617BHJP
B29C 70/68 20060101ALI20240617BHJP
B29C 70/42 20060101ALI20240617BHJP
B29C 65/70 20060101ALI20240617BHJP
B29C 65/54 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
B25J18/00
B29C70/68
B29C70/42
B29C65/70
B29C65/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197592
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】391006083
【氏名又は名称】三光合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095740
【弁理士】
【氏名又は名称】開口 宗昭
(72)【発明者】
【氏名】安田 満雄
(72)【発明者】
【氏名】小西 勉
【テーマコード(参考)】
3C707
4F205
4F211
【Fターム(参考)】
3C707CU01
3C707CU08
4F205AA36
4F205AC05
4F205AD03
4F205AD12
4F205AD16
4F205AG03
4F205AG08
4F205HA02
4F205HA12
4F205HA14
4F205HA22
4F205HA33
4F205HA37
4F205HA45
4F205HB01
4F205HB11
4F205HC17
4F205HF05
4F205HK03
4F205HK04
4F205HK05
4F205HL02
4F205HT16
4F205HT22
4F205HT26
4F211AA39
4F211AD19
4F211AD24
4F211AH81
4F211TA03
4F211TA08
4F211TC07
4F211TD13
4F211TH17
4F211TN46
4F211TN58
4F211TN82
(57)【要約】
【課題】必要とされる高い捩り強度を確保しつつ、本体部分を熱硬化性FRP製円筒筒体としてなるロボットアームの本体部分に機能部分を装着して充分に軽量でしかも人間の間で、人間と共にあるいは人間を補助して動作するロボットアームとして安全性が高いロボットアームであり、特に取付部材の取付部の固定強度が強いロボットアームを提供する。
【解決手段】 ロボットアーム5は、熱硬化性FRP製円筒筒体6端部の内側面6bと取付部材9の嵌合領域に樹脂充填部10a,bを設けてこの樹脂充填部10a,bに熱硬化性樹脂と繊維を複合した複合樹脂層8bを加圧加熱成形し、熱硬化性FRP製円筒筒体6端部の外側面6aに熱硬化性樹脂と繊維を複合した複合樹脂層8aを加圧加熱成形してなる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性FRP製円筒筒体の端部内側に取付部材を篏合して組付けたロボットアームであって、前記熱硬化性FRP製円筒筒体端部の内側面と前記取付部材との嵌合部の前記熱硬化性FRP製円筒筒体端部の内側面と前記取付部材との境界領域に樹脂充填領域を設け、この樹脂充填領域に取付部材に形成した経路を介して樹脂を注入して成形してなることを特徴とするロボットアーム。
【請求項2】
前記熱硬化性FRP製円筒筒体端部の内側面と前記取付部材との嵌合部の前記熱硬化性FRP製円筒筒体端部の内側面と前記取付部材円周側面との境界面に前記樹脂充填領域である樹脂充填部を設けてなる請求項1記載のロボットアーム。
【請求項3】
前記樹脂充填領域に取付部材に形成した経路を介して注入される樹脂が硬化剤を加えたエポキシ樹脂である請求項1記載のロボットアーム。
【請求項4】
前記取付部材に形成した経路が前記取付部材の金属製機能部に注入口を有する充填流路である請求項1記載のロボットアーム。
【請求項5】
前記熱硬化性FRP製円筒筒体は、CFRP製、あるいはGFRP製である請求項1記載のロボットアーム。
【請求項6】
前記取付部材は、嵌合部に繊維成形原反材を 巻き付けて加圧加熱成形してなる請求項1記載のロボットアーム。。
【請求項7】
前記取付部材は、金属製である請求項1記載のロボットアーム。。
【請求項8】
熱硬化性FRP製円筒筒体内側に前記取付部材を挿入し嵌合して前記熱硬化性FRP製円筒筒体先端と前記取付部材側面との間の前記取付部材円周側面と前記熱硬化性FRP製円筒筒体先端部外周面に繊維成形原反材を巻き付けて加圧加熱成形してなる請求項1記載のロボットアーム。。
【請求項9】
熱硬化性FRP製円筒筒体内側に前記取付部材を挿入し嵌合して前記熱硬化性FRP製円筒筒体先端と前記取付部材側面との間に形成される凹所に繊維成形原反材を巻き付けて加圧加熱成形してなる請求項1記載のロボットアーム。。
【請求項10】
取付部材外側面に複数形成された凹所に炭素繊維にエポキシ樹脂を含浸させた繊維成形原反材を配置して取付部材外側面に対する複合樹脂層の形成を行う内側積層工程と、前記凹所に配置された前記繊維成形原反材を加圧加熱して成形して、第一の複合樹脂層を形成する第一の成形工程と、前記第一の複合樹脂層を切削して樹脂充填部を形成するための空間を形成するための切削作業を行う充填空間切削工程と、前記第一の複合樹脂層に予め前記取付部材に形成された充填流路に連通する充填流路を形成する充填流路加工工程と、前記熱硬化性FRP製円筒筒体の端部内側に、前記第一の複合樹脂層が形成された取付部材を圧入して篏合する圧入工程と、前記熱硬化性FRP製円筒筒体外側面に繊維成形原反材を巻回する外側積層工程と、前記熱硬化性FRP製円筒筒体外側面に巻回された前記繊維成形原反材を加圧加熱して前記繊維成形原反材のエポキシ樹脂を硬化させて第二の複合樹脂層を形成する第二の成形工程と、予め前記取付部材に形成された前記充填流路及び前記第一の複合樹脂層に形成された前記充填流路を介してエポキシ樹脂を注入して樹脂充填部を形成するエポキシ注入工程と、とよりなることを特徴とするロボットアームの製造方法。
【請求項11】
前記外側積層工程で前記熱硬化性FRP製円筒筒体内側に前記取付部材を挿入した状態で、前記熱硬化性FRP製円筒筒体先端面と、その先端面と対向する前記取付部材の内側面(一の側面)及び前記先端面と交差する前記取付部材の外側面(他の一の側面)とによって形成される凹所に繊維成形原反材を巻き付けて配置する請求項10に記載のロボットアームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性FRP製円筒筒体の外側面及び内側面に硬化剤を加えたエポキシ樹脂を注入して成形してなるロボットアームに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に例えばレーザー加工等に用いる工業用ロボットは1/100mm程度の先端精度が必要であり、そのためには高い剛性が必要であった。これに対して近年、少子高齢化の進展と共に人間の間で、人間と共にあるいは人間を補助して動作する工業用ロボットの必要性が高まって来ている。この様な工業用ロボットには従来の工業用ロボットの様な高い剛性は必要ではなくむしろ省エネルギーの観点や地球環境保全の観点等から、軽量化が強く望まれている。その一つの手段としてロボットアームの本体部分を熱硬化性FRP製円筒筒体に代替させることが検討されてきた。その際、使用する強化繊維にも種々あり、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等が検討されているが、この中で特に、比強度、比弾性率の面で優れた炭素繊維を強化繊維とするCFRP(炭素繊維強化プラスチックス)が有力とされている。
【0003】
この本体部分を熱硬化性FRP製円筒筒体としてなるロボットアームは本体部分に機能部分を装着して各種機能を果たすことが可能となるようにする必要がある。この熱硬化性FRP製円筒筒体からなる本体部分への機能部分の装着には、熱硬化性FRP製円筒筒体の捩り強度とバランスが採れた接合法が必要とされている。
【0004】
特許文献1には、必要とされる高い捩り強度を確保しつつ、本体部分を熱硬化性FRP製円筒筒体としてなるロボットアームの本体部分に機能部分を装着して充分に軽量でしかも人間の間で、人間と共にあるいは人間を補助して動作するロボットアームとして安全性が高いロボットアームであり、特に取付部材の取付部の固定強度が強いロボットアームを提供することを課題とし、熱硬化性FRP製円筒筒体端部の内側面と取付部材との嵌合部に閉鎖空間を設けてこの閉鎖空間に熱硬化性樹脂と繊維を複合した複合樹脂層を加圧加熱成形し、熱硬化性FRP製円筒筒体の端部内面に篏合して組付けた取付部材と熱硬化性FRP製円筒筒体相互をボルトで締め付けるとともに、熱硬化性FRP製円筒筒体端部の外側面に熱硬化性樹脂と繊維を複合した複合樹脂層を加圧加熱成形してなるロボットアームが開示された。
【0005】
特許文献2には、簡単な構成により、接着剤を接着剤充填空間内に均一に充填できる管状部材の接合方法及び管状部材の接合構造を得ることを課題とし、第1の環状部材と第2の環状部材との接合部に接着剤充填空間を設け、第2の管状部材の挿入端と第1の管状部材の内径側に設けた係止部との間に弾力性を有する多孔質部材を挟持し、第1の管状部材の端部と第2の管状部材の外周面との隙間をシール材によりシールしておき、接着剤充填空間と連通する接着剤注入口から接着剤を注入し接着剤充填空間内の空気を多孔質部材を通じて排出させて両管状部材を接合するようにした管状部材の接合方法及び管状部材の接合構造が開示された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-115161号公報
【特許文献2】特開2005-256349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし特許文献1に開示されたロボットアームではただ単に熱硬化性FRP製円筒筒体内側に取付部材を篏合し、熱硬化性樹脂と繊維を複合した樹脂を加圧加熱成形してなる接合体であるため、圧縮力が少なく、未だ接合強度は充分ではなかった。
またただ単に取付部材根本部分の熱硬化性FRP製円筒筒体外形面に形成された凹所に熱硬化性樹脂と繊維を複合した樹脂を配置し、加圧加熱成形してなる構造であるため、未だ接合強度は充分ではなかった。
その対策として、特許文献1に開示されたロボットアームでは熱硬化性FRP製円筒筒体端部内側に形成される取付部材嵌合部に取付部材を圧入後、熱硬化性FRP製円筒筒体端部外側から取付部材嵌合部にボルトを挿通させてボルト締めを行うようにしていた。しかし、それでは未だ接合強度は充分ではなかった。
その場合に例えば取付部材嵌合部に接着材を塗布した上で取付部材を圧入するいう対策を採用しても、接着材が流失するという問題が生じ、接合強度が不安定になるという問題が生じる。
また取付部材と、第一複合樹脂層および取付部材と第二の複合樹脂層の間には、第一および第二の成形における複合樹脂層と取付部(金属)の膨張率の差による隙間(0.1mm程度)が発生し、これが接合強度低下の原因となっていた。
【0008】
また特許文献2に開示された管状部材の接合方法及び管状部材の接合構造ではFRP円筒筒体を組付け後、FRP円筒筒体外側に加工された穴より接着剤を注入している。しかし係る構造では接着材の流出を止めるため、シール性を高く保つための製造装置(型等)が必要であることは容易に推定できる。したがって接着剤の漏れを抑えることは容易ではなく接着剤の充填圧力を高めることは困難で、接着剤充填部の隙間の隅々まで充填することは困難である。
【0009】
本発明は以上の従来技術における問題点に鑑み、必要とされる高い捩り強度を確保しつつ、本体部分を熱硬化性FRP製円筒筒体としてなるロボットアームの本体部分に機能部分を装着して充分に軽量でしかも人間の間で、人間と共にあるいは人間を補助して動作するロボットアームとして安全性が高いロボットアームであり、特に機能部分の取付部材の取付部の固定強度が強いロボットアームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明に係るロボットアームは、熱硬化性FRP製円筒筒体の端部内側に取付部材を篏合して組付けたロボットアームであって、前記熱硬化性FRP製円筒筒体端部の内側面と前記取付部材との嵌合部の前記熱硬化性FRP製円筒筒体端部の内側面と前記取付部材との境界領域に樹脂充填領域を設け、この樹脂充填領域に取付部材に形成した経路を介して樹脂を注入して成形してなることを特徴とする。
【0011】
前記熱硬化性FRP製円筒筒体端部の内側面と前記取付部材との嵌合部の前記熱硬化性FRP製円筒筒体端部の内側面と前記取付部材円周側面との境界面に前記樹脂充填領域である樹脂充填部を設けてなるようにすることができる。
【0012】
前記樹脂充填領域に取付部材に形成した経路を介して注入される樹脂が硬化剤を加えたエポキシ樹脂であるようにすることができる。
【0013】
前記取付部材に形成した経路が前記取付部材の金属製機能部に注入口を有する充填流路であるようにすることができる。
【0014】
前記熱硬化性FRP製円筒筒体は、CFRP製、あるいはGFRP製であるようにすることができる。
【0015】
さらに本発明のロボットアームの製造方法は、取付部材外側面に複数形成された凹所に炭素繊維にエポキシ樹脂を含浸させた繊維成形原反材を配置して取付部材外側面に対する複合樹脂層の形成を行う内側積層工程と、前記凹所に配置された前記繊維成形原反材を加圧加熱して成形して、第一の複合樹脂層を形成する第一の成形工程と、前記第一の複合樹脂層を切削して樹脂充填部を形成するための空間を形成するための切削作業を行う充填空間切削工程と、前記第一の複合樹脂層に予め前記取付部材に形成された充填流路に連通する充填流路を形成する充填流路加工工程と、前記熱硬化性FRP製円筒筒体の端部内側に、前記第一の複合樹脂層が形成された取付部材を圧入して篏合する圧入工程と、前記熱硬化性FRP製円筒筒体外側面に繊維成形原反材を巻回する外側積層工程と、前記熱硬化性FRP製円筒筒体外側面に巻回された前記繊維成形原反材を加圧加熱して前記繊維成形原反材のエポキシ樹脂を硬化させて第二の複合樹脂層を形成する第二の成形工程と、予め前記取付部材に形成された前記充填流路及び前記第一の複合樹脂層に形成された前記充填流路を介してエポキシ樹脂を注入して樹脂充填部を形成するエポキシ注入工程と、とよりなることを特徴とする。
【0016】
前記外側積層工程で前記熱硬化性FRP製円筒筒体内側に前記取付部材を挿入した状態で、前記熱硬化性FRP製円筒筒体先端面と、その先端面と対向する前記取付部材の内側面(一の側面)及び前記先端面と交差する前記取付部材の外側面(他の一の側面)とによって形成される凹所に繊維成形原反材を巻き付けて配置する様にするのが良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明のロボットアームによれば、必要とされる高い捩り強度を確保しつつ、充分に軽量でしかも人間の間で、人間と共にあるいは人間を補助して動作する機械装置として安全性が高いロボットアームとすることができ、特に取付部材の取付部の固定強度が強いロボットアームとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】(a)本発明の賦形成形方法で用いる繊維成形原反材の概念図である。(b)
図1(a)に示す繊維成形原反材を構成する織物基材の概念図である。
【
図2】本発明の一実施の形態のロボットアームの斜視図である。
【
図3】
図2のロボットアームの部分縦断面図である。
【
図4】
図2のロボットアームの部分横断面図である。
【
図5】本発明のロボットアームの製造方法の一実施の形態の他の説明図である。
【
図6】本発明のロボットアームの製造方法の一実施の形態の他の説明図である。
【
図7】本発明のロボットアームの製造方法の一実施の形態の他の説明図である。
【
図8】本発明のロボットアームの製造方法の一実施の形態の他の説明図である。
【
図9】本発明のロボットアームの製造方法の一実施の形態の他の説明図である。
【
図10】本発明のロボットアームの製造方法の一実施の形態の他の説明図である。
【
図11】本発明のロボットアームの製造方法の一実施の形態の他の説明図である。
【
図12】本発明のロボットアームの製造方法の一実施の形態の他の説明図である。
【
図13】本発明のロボットアームの製造方法の一実施の形態の他の説明図である。
【
図14】本発明のロボットアームの製造方法の一実施の形態の他の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態に係るロボットアームの製造に用いる繊維素材について説明する。
本発明の実施の形態に係るロボットアームは、
図1(a)に示す繊維成形原反材1を用いて製造する。
図1(a)に示すように、繊維成形原反材1は、複数本の強化繊維束2を含む織物基材3の少なくとも一方の表面に熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂材料4が付着してなる。
【0020】
織物基材3は、
図1(b)に示すように互いに平行となるよう一方向に引き揃えられた複数本の強化繊維束2を直交する二方向に織成してなる二方向性織物である。二方向性織物は、強化繊維束2間の相対位置の変化による変形がしやすく立体形状に変形しやすいこと、少ない枚数で力学的に擬似等方性を有する積層成形材を得やすい利点がある。
強化繊維束2は、炭素繊維束、黒鉛繊維束、ガラス繊維束、または、アラミド繊維束などを用いることができ、炭素繊維束であることが好ましい。炭素繊維束を用いることにより、最終製品である繊維強化樹脂成形品の力学特性を高いものとすることができる。
【0021】
織物基材3の表面に付着している樹脂材料4は、織物基材3の層間を接着する作用を得ることができる熱硬化性樹脂を主成分とする。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシを用いることができる。樹脂材料4が熱硬化性樹脂を主成分とするものとすることによって繊維成形原反材1を積層して、立体形状へと変形させた後に織物基材3の層間を接着させる場合の取り扱い性が向上し、生産性が向上する。なお、主成分とは樹脂材料4を構成する成分の中で、その割合が最も多い成分である。
【0022】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図2は、本発明の一実施の形態のロボットアーム5を示す。
ロボットアーム5は熱硬化性FRP製円筒筒体の一態様であるFRP製円筒体6を熱硬化性樹脂と繊維を複合した樹脂で加圧加熱成形して成り、金属製機能部7a、7bがFRP製円筒体6両端の外面側に取り付けられてなる。機能部7a、7bは例えば図示しない動作部、把持部、関節部等との継ぎ手として機能する。
【0023】
係る本実施の形態に係るロボットアーム5は、
図3、
図4に示す様に熱硬化性FRP製円筒筒体6端部の外側面6a及び内側面6bに熱硬化性樹脂と繊維とを複合した複合樹脂層8a、8bを加圧加熱成形してなる。
【0024】
さらに本実施の形態に係るロボットアーム5は、熱硬化性FRP製円筒筒体6の端部内側に取付部材9を組付けたロボットアーム5であって、熱硬化性FRP製円筒筒体6端部の内側面6bに熱硬化性樹脂と繊維を複合した複合樹脂層8bを加圧加熱成形して熱硬化性FRP製円筒筒体6端部の内側に嵌合する取付部である樹脂充填部10aを形成してなる。
【0025】
すなわち熱硬化性FRP製円筒筒体端部の内側面と取付部材の嵌合部に樹脂充填部10aを設ける。パイプである熱硬化性FRP製円筒筒体6は、CFRP製、あるいはGFRP製とする。フランジである取付部材9は、金属製とする。
バイブ6内側に、CFRPを外面嵌合部に巻き付けて成形したフランジ9を挿入し、嵌合部に隙間である樹脂充填部10aを設け,その樹脂充填部10aに硬化剤を加えたエポキシ樹脂を注入し、成形してバイブ6とフランジ9との接合体が得られる。
さらに、そのバイブ6内側にフランジ9を挿入し、バイブ6外面とフランジ9との嵌合部の付け根をCFRPで巻き付けて成形して、本実施の形態に係るロボットアーム5である接合体が得られる。
この樹脂充填部10aは、熱硬化性FRP製円筒筒体6端部の内側面と取付部材9との嵌合部の熱硬化性FRP製円筒筒体6端部の内側面と取付部材9との境界領域に設けられる樹脂充填領域となる。この樹脂充填領域に後述するように取付部材9に形成した経路を介して樹脂を注入して成形が行われる
【0026】
以下に以上の実施の形態に係るロボットアーム5の製造工程について説明する。
まず取付部材9外側面に対する複合樹脂層8bの形成を行う内側積層工程を行う。
図5に示すように取付部材9外側面に複数形成された凹所11(樹脂充填部10)に炭素繊維にエポキシ樹脂を含浸させた繊維成形原反材1を配置する。
【0027】
次に
図6に示すように成形工程を行う。この成形工程は凹所11(樹脂充填部10a)に配置された炭素繊維にエポキシ樹脂を含浸させた繊維成形原反材1を割り型12によって加圧し、80℃に2時間保持することによって行われる。これによって繊維成形原反材1のエポキシ樹脂が硬化する。これによって複合樹脂層8bが形成される。
その後、
図7に示すように充填空間切削工程を行う。充填空間切削工程では前工程で形成された複合樹脂層8bを切削して後の工程でエポキシ樹脂を充填して樹脂充填部10aを形成するための空間、隙間を形成するための切削作業が行われる。この工程では複合樹脂層8bの縁部8cを残し、その縁部8cの頂面縁部8dと、複合樹脂層8bの縁部8cよりも内側側の平面部8eとの間に0.15mmの段差が生じる様に切削作業が行われる。
次に
図8に示すように充填流路加工工程を行う。この充填流路加工工程では取付部材9外側面に形成された複合樹脂層8bに予め取付部材9に形成された充填流路13aに連通する充填流路13bが形成される。なお充填流路13bは取付部材9の機能部7a、7bに注入口を有する充填流路である。
次に
図9に示すように圧入工程を行う。圧入工程は熱硬化性FRP製円筒筒体6の端部内側に、外側面に複合樹脂層8bが形成された取付部材9を圧入して篏合する態様で行う。圧入工程における環境温度は20℃、加工物温度は-15℃程度に設定する。
【0028】
次に熱硬化性FRP製円筒筒体6の外側面に対する複合樹脂層8aの形成を行う外側積層工程を行う。この外側積層工程では以下の点が考慮される。
図9に示すように、熱硬化性FRP製円筒筒体6内側に取付部材9を挿入した状態で、熱硬化性FRP製円筒筒体6先端面と、その先端面と対向する取付部材9の内側面(一の側面)9a及び前記先端面と交差する取付部材9の外側面(他の一の側面)9bとによって凹所9cが形成される。従って外側積層工程では
図10に示すように先ずこの凹所9cに繊維成形原反材1aを巻き付けて配置する。繊維成形原反材1aは凹所9cに嵌合する大きさに調整されて用いられる。
さらにその状態で
図11に示すように繊維成形原反材1a及び熱硬化性FRP製円筒筒体6外側面に繊維成形原反材1を巻回する。この際、環境温度は20℃、加工物温度は30℃程度である。
この様に凹所9cに繊維成形原反材1aを巻き付けて配置することによって空隙を無くすることができ、最終製品の強度の向上が可能となる。
【0029】
さらに引き続き
図12に示すように成形工程を行う。この成形工程は熱硬化性FRP製円筒筒体6外側面に巻回された炭素繊維にエポキシ樹脂を含浸させた繊維成形原反材1を割り型12によって加圧し、環境温度80℃、加工物温度80℃に2時間保持することによって行われる。これによって繊維成形原反材1のエポキシ樹脂が硬化する。これによって複合樹脂層8aが形成される。
【0030】
その状態で
図13に示すようにエポキシ注入工程を行う。このエポキシ注入工程では予め取付部材9に形成された充填流路13a及び取付部材9外側面に形成された複合樹脂層8bに形成された充填流路13bを介してエポキシ樹脂の注入、および凹所11(樹脂充填部10a)の空気の排出が行われ、これによって樹脂充填部10aが形成される。その後
図14に示されるように第三の成形工程として室温で2時間程度保持することによって、注入された2液性エポキシ樹脂は硬化する。
なおこの様にエポキシ樹脂を注入することによって、金属製の取付部材9と複合樹脂層8a、8bとの間にその成形過程で膨張率の差に起因して生じる隙間(0.1mm程度)にも樹脂を染みこませ充填することができ、接合強度を向上することができる。
【符号の説明】
【0031】
5・・・ロボットアーム、6・・・熱硬化性FRP製円筒筒体、7a、7b・・・機能部、8・・・複合樹脂層。