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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083666
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】ラッシュアジャスタ
(51)【国際特許分類】
   F01L 1/245 20060101AFI20240617BHJP
【FI】
F01L1/245 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197595
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000185488
【氏名又は名称】株式会社オティックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鵜野 貴司
【テーマコード(参考)】
3G016
【Fターム(参考)】
3G016BA18
3G016BB39
3G016CA05
3G016CA30
3G016GA03
(57)【要約】
【課題】給油路の作動油に含まれるエアがラッシュアジャスタ内に入り込むのを防止し、ラッシュアジャスタの機能を維持する。
【解決手段】ボディ11は、周壁14の外周面に全周に亘って凹設されるボディ周回溝15と、周壁14を貫通してボディ周回溝15の奥面33に開口するボディ孔16と、周壁14の外周面におけるボディ周回溝15よりも上方に配置される周面上部36と、を有している。ボディ11の周壁14の周面上部36には、ボディ周回溝15と連通する下端からシリンダヘッド90の表面上の大気と連通する上端にかけて延びるエア抜き溝38,38A,38Bが設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のボディと、前記ボディ内に嵌合されるプランジャと、を備え、
前記ボディは、底壁と、前記底壁から立ち上がる周壁と、前記周壁の外周面に全周に亘って凹設されるボディ周回溝と、前記周壁を貫通して前記ボディ周回溝の奥面に開口するボディ孔と、前記周壁の外周面における前記ボディ周回溝よりも上方に配置される周面上部と、を有し、
シリンダヘッドの表面に開口する取付凹部に前記ボディが内嵌されることで、前記取付凹部の内周面に前記周面上部が接触可能に対面し、且つ前記シリンダヘッドの給油路に前記ボディ周回溝が連通するように配置され、前記給油路から前記ボディ孔を通して内部に作動油が供給され、前記作動油の油圧によって、前記プランジャが前記ボディに対して往復摺動するラッシュアジャスタであって、
前記周壁の前記周面上部には、前記ボディ周回溝と連通する下端から前記シリンダヘッドの表面上の大気と連通する上端にかけて延びるエア抜き溝が設けられている、ラッシュアジャスタ。
【請求項2】
前記エア抜き溝は、前記周壁の前記周面上部に、周方向に螺旋状に延びるように形成されている、請求項1に記載のラッシュアジャスタ。
【請求項3】
前記エア抜き溝は、前記周壁の前記周面上部に、上方から見て右回りと左回りのいずれか一方向に延びるように形成されている、請求項2に記載のラッシュアジャスタ。
【請求項4】
前記エア抜き溝は、前記周壁の前記周面上部に、上方から見て右回りと左回りの両方向に延びるように形成されている、請求項2に記載のラッシュアジャスタ。
【請求項5】
前記右回りの前記エア抜き溝の下端と前記左回りの前記エア抜き溝の下端とが一致している、請求項4に記載のラッシュアジャスタ。
【請求項6】
前記周壁の前記ボディ孔は、前記ボディ孔の開口方向から見て前記エア抜き溝の下端を通る上下方向の仮想線と重なる位置に配置されている、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のラッシュアジャスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ラッシュアジャスタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、筒状のボディと、ボディ内に摺動可能に嵌合されるプランジャと、を備えたラッシュアジャスタを開示している。ボディは、シリンダヘッドの表面に開口する取付凹部に内嵌される。ボディの周壁には、ボディ孔が貫通して形成されている。プランジャの周壁には、プランジャ孔が貫通して形成されている。ボディが取付凹部に内嵌された状態で、シリンダヘッドの給油路にボディ孔が臨み、ボディ孔およびプランジャ孔を通して給油路を流れる作動油がラッシュアジャスタ内に供給される。プランジャは、作動油の油圧によってボディからの突出量を変化させる。プランジャによって支持されるロッカアームは、プランジャの変動に応じて揺動支点位置を変化させ、押圧する弁のバルブクリアランスを自動的に調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-222007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、給油路には作動油とともに気泡等のエアが滞留していることがある。仮に、給油路のエアがボディの高圧室内に入り込むと、高圧室内に充填された作動油の剛性が低下するため、ラッシュアジャスタによるバルブクリアランスの調整が適正に実行されないおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は、給油路のエアがラッシュアジャスタ内に入り込むのを防止し、ラッシュアジャスタの機能を維持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のラッシュアジャスタは、筒状のボディと、前記ボディ内に嵌合されるプランジャと、を備え、前記ボディは、底壁と、前記底壁から立ち上がる周壁と、前記周壁の外周面に全周に亘って凹設されるボディ周回溝と、前記周壁を貫通して前記ボディ周回溝の奥面に開口するボディ孔と、前記周壁の外周面における前記ボディ周回溝よりも上方に配置される周面上部と、を有し、シリンダヘッドの表面に開口する取付凹部に前記ボディが内嵌されることで、前記取付凹部の内周面に前記周面上部が接触可能に対面し、且つ前記シリンダヘッドの給油路に前記ボディ周回溝が連通するように配置され、前記給油路から前記ボディ孔を通して内部に作動油が供給され、前記作動油の油圧によって、前記プランジャが前記ボディに対して往復摺動するラッシュアジャスタであって、前記周壁の前記周面上部には、前記ボディ周回溝と連通する下端から前記シリンダヘッドの表面上の大気と連通する上端にかけて延びるエア抜き溝が設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、給油路のエアがラッシュアジャスタ内に入り込むのを防止し、ラッシュアジャスタの機能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の実施形態1のラッシュアジャスタを含む動弁装置の断面図である。
図2図2は、実施形態1のラッシュアジャスタの断面図である。
図3図3は、実施形態1のラッシュアジャスタのボディの正面図である。
図4図4は、実施形態1のラッシュアジャスタが取付凹部に内嵌され、エア抜き溝の延び方向と給油路を流れる作動油の流れ方向との関係を示す図である。
図5図5は、実施形態2のラッシュアジャスタのボディの正面図である。
図6図6は、実施形態2のラッシュアジャスタのボディの背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のラッシュアジャスタは、
(1)筒状のボディと、前記ボディ内に嵌合されるプランジャと、を備え、前記ボディは、底壁と、前記底壁から立ち上がる周壁と、前記周壁の外周面に全周に亘って凹設されるボディ周回溝と、前記周壁を貫通して前記ボディ周回溝の奥面に開口するボディ孔と、前記周壁の外周面における前記ボディ周回溝よりも上方に配置される周面上部と、を有し、シリンダヘッドの表面に開口する取付凹部に前記ボディが内嵌されることで、前記取付凹部の内周面に前記周面上部が接触可能に対面し、且つ前記シリンダヘッドの給油路に前記ボディ周回溝が連通するように配置され、前記給油路から前記ボディ孔を通して内部に作動油が供給され、前記作動油の油圧によって、前記プランジャが前記ボディに対して往復摺動するラッシュアジャスタであって、前記周壁の前記周面上部には、前記ボディ周回溝と連通する下端から前記シリンダヘッドの表面上の大気と連通する上端にかけて延びるエア抜き溝が設けられている。
【0010】
上記構成によれば、給油路に滞留したエアがエア抜き溝を通して大気へ排出されることにより、ラッシュアジャスタ内にエアが入り込むのを未然に防止することができる。その結果、ラッシュアジャスタによるバルブクリアランスの調整機能が適正に維持される。
【0011】
(2)前記エア抜き溝は、前記周壁の前記周面上部に、周方向に螺旋状に延びるように形成されていることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、給油路を流れる作動油がエア抜き溝から大気側に漏れ出るのを効果的に抑えることができる。
【0013】
(3)前記エア抜き溝は、前記周壁の前記周面上部に、上方から見て右回りと左回りのいずれか一方向に延びるように形成されていると良い。
【0014】
上記構成によれば、給油路を流れる作動油の流れ方向に応じて、右回りと左回りのいずれか一方向に延びるエア抜き溝が形成されたラッシュアジャスタを適用することができ、給油路のエアをエア抜き溝から大気へ迅速に排出することができる。
【0015】
(4)前記エア抜き溝は、前記周壁の前記周面上部に、上方から見て右回りと左回りの両方向に延びるように形成されていても良い。
【0016】
上記構成によれば、給油路を流れる作動油の流れ方向が変更される等の仕様変更にも対応することができ、汎用性、拡張性を高めることができる。
【0017】
(5)前記右回りの前記エア抜き溝の下端と前記左回りの前記エア抜き溝の下端とが一致していると良い。
【0018】
上記構成によれば、右回りと左周りの両方向に延びるエア抜き溝が形成されていても、給油路のエアがエア抜き溝を通して滞りなく大気へ排出される。
【0019】
(6)前記周壁の前記ボディ孔は、前記ボディ孔の開口方向から見て前記エア抜き溝の下端を通る上下方向の仮想線と重なる位置に配置されていることが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、給油路のエアがエア抜き溝に滞りなく入り込み、エア抜き溝から大気へ効率よく排出される。
【0021】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0022】
<実施形態1>
本開示の実施形態1のラッシュアジャスタ10は、油圧式ラッシュアジャスタであって、内燃機関の動弁装置に設けられている。
【0023】
(動弁装置)
動弁装置は、図1に示すように、内燃機関と同期して回転するカムシャフト70に設けられたカム71と、バルブ本体80に設けられたバルブステム81と、カム71の回転に応じて揺動することでバルブステム81を押圧するロッカアーム60と、ロッカアーム60の一端部を揺動可能に支持するラッシュアジャスタ10とを備えている。
【0024】
バルブステム81は、シリンダヘッド90の吸気又は排気ポート91に連なる貫通孔92に挿入され、コイルスプリング82によってバルブ本体80を閉弁させる方向に付勢されている。カム71が回転すると、ロッカアーム60が揺動するとともに、バルブステム81が貫通孔92内を往復移動し、これによってバルブ本体80が吸気又は排気ポート91を開閉するようになっている。
【0025】
ロッカアーム60は、一端部がラッシュアジャスタ10に支持され、他端部がバルブステム81に当接させられ、一端部と他端部との間に設けられたローラ61にカム71が回転可能に接触して配置されている。
【0026】
(ラッシュアジャスタの構造)
ラッシュアジャスタ10は、シリンダヘッド90の上面に開口する取付凹部93に軸線を上下方向に向けて挿入される。取付凹部93は、シリンダヘッド90の給油路94(オイルギャラリー)に連通している。給油路94には、図1の紙面厚さ方向に作動油が流れる。
【0027】
図2に示すように、ラッシュアジャスタ10は、有底円筒状のボディ11と、ボディ11内に上下方向に往復摺動可能に収容される有底円筒状のプランジャ12とを備えている。
【0028】
プランジャ12は、円板状の底壁17と、底壁17の外周から立ち上がって上端部が略半球状に絞られた周壁18とからなる。プランジャ12の周壁18の上端部は支承部19とされ、支承部19の半球面状の外周面に、ロッカアーム60の一端部が支持されている(図1を参照)。支承部19の上端部には、頂孔21が上下方向に貫通して設けられている。
【0029】
プランジャ12の周壁18の外周面には、プランジャ周回溝24が全周に亘って凹設されている。プランジャ12の周壁18には、この周壁18を厚み方向に貫通してプランジャ周回溝24の奥面に開口するプランジャ油孔25が設けられている。プランジャ12の底壁17の径方向中央部には、円形の弁孔26が上下方向に貫通して設けられている。
【0030】
ボディ11は、プランジャ12の底壁17よりも一回り大きい円板状の底壁13と、底壁13の外周から立ち上がる周壁14とからなる。ボディ11の周壁14の外周面には、ボディ周回溝15が全周に亘って凹設されている。ボディ周回溝15は、上下方向に沿った奥面33と、奥面33の上端および下端からそれぞれ径方向外側に拡開する上側側面34および下側側面35と、を有している。
【0031】
ボディ11の周壁14には、この周壁14を厚み方向に貫通してボディ周回溝15の奥面33に開口するボディ孔16が設けられている。
図3に示すように、ボディ11の周壁14の外周面には、ボディ周回溝15よりも上方に、周面上部36が全周に亘って設けられている。ボディ11の周面上部36は、ボディ周回溝15の奥面33よりも大径の周面部分であり、その下端部をボディ周回溝15の上側側面34に交差させている。また、ボディ11の周壁14の外周面には、周面上部36よりも上方である周壁14の上端部に、リテーナ装着溝37が全周に亘って凹設されている。リテーナ装着溝37には、プランジャ12の上方への抜け出しを規制するリテーナ50が取り付けられる(図2を参照)。
【0032】
ボディ11の周面上部36には、ボディ周回溝15と連通する下端からリテーナ装着溝37と連通する上端にかけて、周方向に螺旋状に延びるエア抜き溝38が凹設されている。エア抜き溝38は、V字またはU字の断面形状を呈し、切削加工等によって形成される。本実施形態1の場合、エア抜き溝38は、下端から上端にかけて周面上部36を全高に亘って略一周する形態で周面上部36に一つ形成されている。エア抜き溝38の下端は、ボディ周回溝15の上側側面34に開口している。エア抜き溝38の上端は、リテーナ装着溝37の下側側面39に開口している。
【0033】
ボディ11を上方から見た場合に、下端から上端にかけて延びるエア抜き溝38の延び方向L2(図4を参照)は、給油路94を流れる作動油の流れ方向L1と対応しており、図示する場合、左回り(反時計回り)に設定されている。このエア抜き溝38の延び方向L2は、給油路94の流れ方向L1によっては右回り(時計回り)に設定されることもある。
【0034】
エア抜き溝38の下端は、周方向に関してボディ孔16と重なるように、ボディ孔16の直上方に配置されている。エア抜き溝38の上端は、周方向に関してエア抜き溝38の下端と略同一位置に配置されている。図3に示すように、ボディ孔16の開口方向からボディ11を正面視したときに、ボディ孔16は、エア抜き溝38の下端を通る上下方向の仮想線VLと重なる位置に配置されている。
【0035】
図2に示すように、ボディ11内の下部には、プランジャ12の底壁17との間に、高圧室27が設けられている。プランジャ12内は、底壁17の上方に、低圧室22を区画している。
高圧室27には、上下方向に移動して弁孔26を開閉可能な球状の弁体28と、弁体28を保持するケージ29と、ケージ29内に収容されて弁体28を弁孔26に向けて付勢する圧縮コイルばねからなる第1スプリング31と、ケージ29の外周縁部とボディ11の底壁13との間に介設されてプランジャ12を上方に付勢する圧縮コイルばねからなる第2スプリング32と、が収容されている。弁体28は、第1スプリング31によって弁孔26を閉じる上方に付勢されている。
【0036】
(ラッシュアジャスタの組付構造および作用)
ラッシュアジャスタ10が取付凹部93に内嵌されると、プランジャ12の上端部がシリンダヘッド90の表面上に突出して配置される。エア抜き溝38の上端は、取付凹部に位置するものの、リテーナ50の径方向外側に形成された隙間Gを介してシリンダヘッド90の表面上の大気と連通する。エア抜き溝38の下端は、ボディ周回溝15とともに、シリンダヘッド90の給油路94と連通する。
【0037】
シリンダヘッド90の給油路94を流れる作動油は、ボディ周回溝15、ボディ孔16、プランジャ周回溝24及びプランジャ油孔25を経て低圧室22に供給される。また、弁体28が第1スプリング31の付勢力に抗して下降し、弁孔26が開いた状態で、低圧室22から弁孔26を通して高圧室27に作動油が充填される。
【0038】
内燃機関の駆動時にカム71が回転し、ロッカアーム60がローラ61を介して上方から押圧されると、プランジャ12がロッカアーム60の一端部に押圧されてボディ11に対して下方に移動し、高圧室27の作動油が圧縮させられる。高圧室27の圧力が上昇するのに伴い、高圧室27の作動油がプランジャ12とボディ11の両周壁14,18間を通してプランジャ周回溝24側に流出する。このため、ラッシュアジャスタ10の全長が高圧室27からの作動油の流出分だけ短縮させられる。また、高圧室27の圧力上昇によって作動油(ボディ11およびプランジャ12)が剛体化し、ロッカアーム60に対するラッシュアジャスタ10の支持位置が規定される。
【0039】
さらにカム71が回転し、ロッカアーム60に作用するカム71からの押圧力が減退すると、高圧室27の圧力と第2スプリング32の付勢力とを受けたプランジャ12が上昇し、プランジャ12の上端部がボディ11から大きく突出する。高圧室27の圧力下降によって弁体28が弁孔26から離れて弁孔26を開き、低圧室22から高圧室27に作動油が流れ、ラッシュアジャスタ10の全長が伸長する。こうしてラッシュアジャスタ10がロッカアーム60を適正な位置で支持することにより、カム71とロッカアーム60とのバルブクリアランスが実質的にゼロとなるように調整される。
【0040】
さて、シリンダヘッド90の給油路94には作動油とともに気泡等のエアが滞留していることがある。仮に、エアが高圧室27に混入すると、上記ラッシュアジャスタ10の剛体化が適正に実現されず、ラッシュアジャスタ10によるバルブクリアランスの調整機能が損なわれる懸念がある。
【0041】
しかるに本実施形態1の場合、給油路94のエアは、エア抜き溝38に入り込み、エア抜き溝38から大気へと排出される(エアのイメージを図4に符号Aで示す)。特に、本実施形態1の場合、図4に示すように、下端から上端にかけて延びるエア抜き溝38の延び方向L2は、給油路94を流れる作動油の流れ方向L1に対して鈍角をなす方向を向いている。作動油の流れ方向L1は、取付凹部93内におけるボディ11の回転方向に相当する。このため、ボディ孔16の開口付近に滞留したエアは、エア抜き溝38の下端から上端へと円滑に上昇し、大気へ迅速に排出される。
【0042】
以上説明したように、本実施形態1によれば、給油路94に滞留したエアがエア抜き溝38を通して大気へ排出されることにより、ラッシュアジャスタ10内にエアが入り込むのを未然に防止することができる。その結果、ラッシュアジャスタ10によるバルブクリアランスの調整機能が適正に維持される。
【0043】
また、エア抜き溝38は、ボディ11の周壁14の周面上部36に、周方向に螺旋状に延びるように形成されている。このため、給油路94を流れる作動油がエア抜き溝38から大気側に漏れ出るのを効果的に抑えることができる。特に、エア抜き溝38の延び方向L2が作動油の流れ方向L1に対して鈍角をなす方向を向いているので、作動油がエア抜き溝38を伝って上昇し難く、ボディ孔16に入り込み易い構造となる。
【0044】
さらに、エア抜き溝38は、ボディ11の周壁14の周面上部36に、上方から見て右回りと左回りのいずれか一方向に延びるように形成されているので、給油路94のエアをエア抜き溝38から大気へ迅速に排出することができる。
【0045】
しかも、ボディ孔16がボディ11の正面視においてエア抜き溝38の下端を通る上下方向の仮想線VLと重なる位置に配置されているので、給油路94のエアがエア抜き溝38に滞りなく入り込み、エア抜き溝38から大気へより効率よく排出される。
【0046】
<実施形態2>
本開示の実施形態2は、図5および図6に示すように、ボディ11の周壁14に、互いに異なる方向に延びる2本のエア抜き溝38A,38Bを凹設させており、この点で、実施形態1とは異なる。その他は、実施形態1と同様であるため、実施形態1と同一または相当する構成には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
2本のエア抜き溝は、ボディ11を上方から見た場合に、左回りに螺旋状に延びる第1エア抜き溝38Aと、右回りに螺旋状に延びる第2エア抜き溝38Bと、によって構成される。第1エア抜き溝38Aおよび第2エア抜き溝38Bは、いずれもボディ周回溝15の上側側面34に開口する下端からリテーナ装着溝37の下側側面39に開口する上端にかけて、周面上部36を全高に亘って略一周する形態で形成されている。図5に示すように、第1エア抜き溝38Aおよび第2エア抜き溝38Bのそれぞれの下端は、ボディ孔16の直上方において互いに連通して配置されている。第1エア抜き溝38Aおよび第2エア抜き溝38Bのそれぞれの上端は、第1エア抜き溝38Aおよび第2エア抜き溝38Bのそれぞれの下端を通る上下方向に沿った仮想線VLを挟んだ周方向両側に対称に配置されている。なお、本実施形態2の場合、仮想線VLは、ボディ孔16の中心を通る。図6に示すように、ボディ11をボディ孔16が開口する側とは反対側から見ると、周面上部36の高さ方向中央部において、第1エア抜き溝38Aおよび第2エア抜き溝38Bが互いにX字状に交差している。
【0047】
ラッシュアジャスタ10が取付凹部93に内嵌された状態では、第1エア抜き溝38Aおよび第2エア抜き溝38Bのそれぞれの上端がシリンダヘッド90の表面上の大気と連通し、第1エア抜き溝38Aおよび第2エア抜き溝38Bのそれぞれの下端がボディ周回溝15とともにシリンダヘッド90の給油路94と連通する(実施形態1ではあるが、図1を参照)。ここで、給油路94を流れる作動油の流れ方向L1がいずれの方向を向いていても、第1エア抜き溝38Aおよび第2エア抜き溝38Bのいずれか一方がその下端から上端にかけて延びる延び方向L2を、作動油の流れ方向L1と鈍角をなす方向に向けることができる。このため、ボディ孔16の開口付近に滞留したエアは、第1エア抜き溝38Aおよび第2エア抜き溝38Bのいずれか一方からシリンダヘッド90の表面上の大気へ効率よく迅速に排出される。
【0048】
実施形態2によれば、給油路94を流れる作動油の流れ方向L1を気に留めることなく、ラッシュアジャスタ10をシリンダヘッド90に組み付けることができる。よって、給油路94を流れる作動油の流れ方向L1が変更される等の仕様変更にも対応することができ、汎用性、拡張性を高めることができる。特に、第1エア抜き溝38Aおよび第2エア抜き溝38Bのそれぞれの下端が一致しているので、給油路94のエアを第1エア抜き溝38Aおよび第2エア抜き溝38Bのいずれか一方から大気へ滞りなく排出させることができる。
【0049】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された上記実施形態1および実施形態2はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
上記実施形態1および実施形態2の場合、エア抜き溝は、ボディの周壁の周面上部を略一周する長さで構成されていた。これに対し、他の実施形態の場合、エア抜き溝は、ボディの周壁の周面上部を略半周、略一周半および略二周のいずれかの長さで構成されていても良い。成形性やエア抜きの効率性の観点から、エア抜き溝は、ボディの周壁の周面上部を略半周から略一周する長さで構成されるのが好ましい。もっとも、エア抜き溝の長さは、上記長さに特に限定されるわけでもない。
上記実施形態1および実施形態2の場合、エア抜き溝の上端は、リテーナ装着溝と連通するように、周面上部の上端に達していた。これに対し、他の実施形態の場合、エア抜き溝の上端は、リテーナ装着溝とは連通せず、周面上部の上端に達していなくても良い。要は、エア抜き溝の上端は、シリンダヘッドの表面上の大気と連通するように周面上部に形成されていれば良い。
【符号の説明】
【0050】
10…ラッシュアジャスタ
11…ボディ
12…プランジャ
13…(ボディの)底壁
14…(ボディの)周壁
15…ボディ周回溝
16…ボディ孔
17…(プランジャの)底壁
18…(プランジャの)周壁
19…支承部
21…頂孔
22…低圧室
24…プランジャ周回溝
25…プランジャ油孔
26…弁孔
27…高圧室
28…弁体
29…ケージ
31…第1スプリング
32…第2スプリング
33…奥面
34…上側側面
35…(ボディ周回溝の)下側側面
36…周面上部
37…リテーナ装着溝
38,38A,38B…エア抜き溝
39…(リテーナ装着溝の)下側側面
50…リテーナ
60…ロッカアーム
61…ローラ
70…カムシャフト
71…カム
80…バルブ本体
81…バルブステム
82…コイルスプリング
90…シリンダヘッド
91…排気ポート
92…貫通孔
93…取付凹部
94…給油路
A…エアのイメージ
G…隙間
L1…流れ方向
L2…延び方向
VL…仮想線
図1
図2
図3
図4
図5
図6