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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083670
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】インキ補充装置
(51)【国際特許分類】
   B43K 11/00 20060101AFI20240617BHJP
【FI】
B43K11/00 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197600
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】390017891
【氏名又は名称】シヤチハタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】230117259
【弁護士】
【氏名又は名称】綿貫 敬典
(72)【発明者】
【氏名】大久保 史人
(72)【発明者】
【氏名】早坂 雄太
(72)【発明者】
【氏名】高林 駿
(72)【発明者】
【氏名】松田 絵莉
(72)【発明者】
【氏名】荻野 和彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友一
(72)【発明者】
【氏名】赤間 大輝
(72)【発明者】
【氏名】影山 伴廣
(72)【発明者】
【氏名】田島 聡之
(57)【要約】
【課題】インキの自動補充の利便性は確保しつつ、ノズルの差し込み不足を抑制可能なインキ補充装置を提供すること。
【解決手段】外部から筆記具を取付可能な筆記具取付部12を備えたケース11と、ケース11の上部に着脱自在に取り付けられたインキボトル20と、インキボトル20の下端に設けられた吐出ノズル30と、前記筆記具のカートリッジ内のインキ残量を検知可能な残量センサ122とを備え、インキボトル20は弾性体15によって上方の待機位置に向けて付勢されてケース11に取り付けられており、ケース11には、インキボトル20が弾性体15の付勢力に抗してインキ補充可能位置まで押し下げられたときに同位置でロックするロック機構と、残量センサ122により前記カートリッジ内に所定量以上のインキが補充されたことを検知したときに前記ロックを解除するロック解除機構とが設けられているインキ補充装置1とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から筆記具を取付可能な筆記具取付部を備えたケースと、
ケースの上部に着脱自在に取り付けられたインキボトルと、
前記インキボトルの下端に設けられ前記インキボトル内のインキを吐出可能な吐出ノズルと、
前記筆記具取付部に取り付けられた筆記具のカートリッジ内のインキ残量を検知可能な残量センサとを備えたインキ補充装置であって、
前記インキボトルは、弾性体によって上方の待機位置に向けて付勢されてケースに取り付けられており、
ケースには、前記インキボトル及び前記吐出ノズルが前記弾性体の付勢力に抗してインキ補充可能位置まで押し下げられたときに同位置でロックするロック機構と、
前記残量センサにより前記カートリッジ内に所定量以上のインキが補充されたことを検知したときに前記ロックを解除するロック解除機構とが設けられていることを特徴とするインキ補充装置。
【請求項2】
前記インキボトルは、手動操作力によって押し下げられることを特徴とする請求項1に記載のインキ補充装置。
【請求項3】
前記ロック機構及びロック解除機構は、
モータと、前記モータを駆動源として進退可能な規制部材と、制御部とを含み、
前記制御部は、前記規制部材を、前記吐出ノズルの移動を規制するロック位置と、前記吐出ノズルの移動を規制しないロック解除位置とに移動させる制御を行うことを特徴とする請求項2に記載のインキ補充装置。
【請求項4】
前記インキボトルが前記インキ補充可能位置まで押し下げられたことを検知可能なインキボトル検知スイッチをさらに備え、
前記ロック機構は、前記インキボトルがインキ補充可能位置まで押し下げられたことが前記インキボトル検知スイッチによって検知されると、前記モータを駆動させて前記規制部材を前記ロック位置に移動させる制御を行うことを特徴とする請求項3に記載のインキ補充装置。
【請求項5】
前記ロック解除機構は、
前記カートリッジ内にインキが所定量以上補充されたことが前記残量センサによって検知されると、前記モータを駆動させて前記規制部材を前記ロック位置から前記ロック解除位置へ移動させる制御を行うことを特徴とする請求項3に記載のインキ補充装置。
【請求項6】
インキが所定量以上補充され、前記規制部材が前記ロック解除位置に移動すると、前記弾性体の付勢力により前記インキボトルが上昇して前記吐出ノズルが前記待機位置に移動することを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載のインキ補充装置。
【請求項7】
前記規制部材は、前記吐出ノズルと干渉して前記吐出ノズルの下降を規制可能な下降規制部を備え、
前記筆記具取付部に前記筆記具が取り付けられていない待機状態では、前記下降規制部により前記吐出ノズルの下降が規制されていることを特徴とする請求項3に記載のインキ補充装置。
【請求項8】
前記筆記具が前記筆記具取付部に正常に取り付けられたことを検知可能な筆記具検知スイッチをさらに備え、
前記ロック解除機構は、
前記筆記具検知スイッチによって前記筆記具の取付完了が検知されるとともに、前記残量センサによって前記カートリッジ内のインキ残量が所定量以下であることが検知されると、前記モータを駆動させて前記規制部材をロック解除位置に移動させる制御を行うことを特徴とする請求項7に記載のインキ補充装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具にインキを補充するインキ補充装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
筆記具のカートリッジ内にインキを補充するインキ補充装置が知られている。インキの補充量を目視で確認しながら手動でインキを補充するインキ補充装置のほか、特許文献1に記載されているように、インキ補充が自動化された電動式のインキ補充装置が提案されている。特許文献1記載のインキ補充装置によれば、全自動でインキを補充することができ、利便性に優れている。
【0003】
特許文献1に記載されたインキ補充装置は、モータにより自動でノズルを下降させてインキを補充するものである。このとき、誤作動等によりモータの回転数が不足すると、ノズルの差し込みが不十分となりインキの充填ができない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第7106094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記した従来の問題点を解決し、インキの自動補充の利便性は確保しつつ、ノズルの差し込み不足を抑制可能なインキ補充装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、外部から筆記具を取付可能な筆記具取付部を備えたケースと、ケースの上部に着脱自在に取り付けられたインキボトルと、前記インキボトルの下端に設けられ前記インキボトル内のインキを吐出可能な吐出ノズルと、前記筆記具取付部に取り付けられた筆記具のカートリッジ内のインキ残量を検知可能な残量センサとを備えたインキ補充装置であって、前記インキボトルは、弾性体によって上方の待機位置に向けて付勢されてケースに取り付けられており、ケースには、前記インキボトル及び前記吐出ノズルが前記弾性体の付勢力に抗してインキ補充可能位置まで押し下げられたときに同位置でロックするロック機構と、前記残量センサにより前記カートリッジ内に所定量以上のインキが補充されたことを検知したときに前記ロックを解除するロック解除機構とが設けられていることを特徴とするインキ補充装置とする。
【0007】
また、前記インキボトルは、手動操作力によって押し下げられる構成とすることが好ましい。
【0008】
また、前記ロック機構及びロック解除機構は、モータと、前記モータを駆動源として進退可能な規制部材と、制御部とを含み、前記制御部は、前記規制部材を、前記吐出ノズルの移動を規制するロック位置と、前記吐出ノズルの移動を規制しないロック解除位置とに移動させる制御を行う構成とすることが好ましい。
【0009】
また、前記インキボトルが前記インキ補充可能位置まで押し下げられたことを検知可能なインキボトル検知スイッチをさらに備え、前記ロック機構は、前記インキボトルがインキ補充可能位置まで押し下げられたことが前記インキボトル検知スイッチによって検知されると、前記モータを駆動させて前記規制部材を前記ロック位置に移動させる制御を行う構成とすることが好ましい。
【0010】
また、前記ロック解除機構は、前記カートリッジ内にインキが所定量以上補充されたことが前記残量センサによって検知されると、前記モータを駆動させて前記規制部材を前記ロック位置から前記ロック解除位置へ移動させる制御を行う構成とすることが好ましい。
【0011】
また、インキが所定量以上補充され、前記規制部材が前記ロック解除位置に移動すると、前記弾性体の付勢力により前記インキボトルが上昇して前記吐出ノズルが前記待機位置に移動する構成とすることが好ましい。
【0012】
また、前記規制部材は、前記吐出ノズルと干渉して前記吐出ノズルの下降を規制可能な下降規制部を備え、前記筆記具取付部に前記筆記具が取り付けられていない待機状態では、前記下降規制部により前記吐出ノズルの下降が規制されている構成とすることが好ましい。
【0013】
また、前記筆記具が前記筆記具取付部に正常に取り付けられたことを検知可能な筆記具検知スイッチをさらに備え、前記ロック解除機構は、前記筆記具検知スイッチによって前記筆記具の取付完了が検知されるとともに、前記残量センサによって前記カートリッジ内のインキ残量が所定量以下であることが検知されると、前記モータを駆動させて前記規制部材をロック解除位置に移動させる制御を行う構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、インキの自動補充の利便性は確保しつつ、ノズルの差し込み不足を抑制可能なインキ補充装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態のインキ補充装置に筆記具が取付けられたときの状態を示す正面図である。
図2】インキ補充装置の待機状態を示す断面図である。
図3図1のA-A断面図である。なお、ロック解除状態を示している。
図4図3の部分拡大図である。
図5】インキボトルが押し下げられ、未ロックである状態を示す断面図である。
図6図5の部分拡大図である。
図7】ロックされた状態を示す断面図である。
図8】実施形態の規制部材の斜視図である。
図9】実施形態のインキ補充装置によるインキ補充の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に発明を実施するための形態を示す。本明細書においては、図1に示す方向をインキ補充装置1の上下左右方向、図2に示す方向を前後方向とする。
【0017】
インキ補充装置1は、インキを消費する筆記具(例えばマーカーペン)に詰め替え用のインキを補充するための装置である。図1及び図2に示されるように、実施形態のインキ補充装置1は、全体が略直方体形状のケース11と、ケース11の上部に着脱自在に取り付けられたインキボトル20とを備えている。実施形態では、ケース11の上側は開口しており、この開口にインキボトル20が差し込まれて取り付けられる。なお、実施形態のケース11は樹脂製であるが、ケース11の材質はこれに限定されない。
【0018】
ケース11の上部に取り付けられるインキボトル20は、筆記具80への補充用インキを貯留している交換可能なボトルである。本実施形態のインキボトル20は、略直方体形状の樹脂製の中空容器であり、ケース11の上部に取り付けられたときに下側となる面に、インキボトル20内部の補充用インキを吐出可能な吐出ノズル30を備えている。実施形態のインキボトル20の側面には、内部の補充用インキの残量を視認することができる半透明の窓21が設けられている。なお、本明細書の図面においては、インキボトル20内の補充用インキの図示を省略する。
【0019】
ケース11の下部には、ケース11の外部から筆記具80を取付可能な筆記具取付部12が設けられている。実施形態の筆記具取付部12は、ケース11の正面側に形成された凹部であって、外部に露出しており、筆記具80の付け外しが可能となっている。実施形態の筆記具取付部12には、取り付けられた筆記具80の軸部を保持する筆記具保持部材121が設けられている。実施形態で用いられる筆記具80は、ペン先の反対側の位置にカートリッジ81を備えており、ペン先を下側に、カートリッジ81を上側にする向きで配置され、筆記具保持部材121によって保持される。
【0020】
筆記具取付部12には、カートリッジ81内のインキ残量を検知可能な残量センサ122が設けられている。実施形態の残量センサ122は光学式センサである。残量センサ122は、透明なカートリッジ81を透して内部のインキを検知可能な光学式センサであることが好ましい。この光学式の残量センサ122によれば、カートリッジ81のインキの残量が所定量以下の場合、カートリッジ81を光が透過し、残量センサ122の受光部がその透過光を検知することにより、インキエンプティ信号を後述する制御部に出力することができる。また残量センサ122は、カートリッジ81に補充されたインキのレベルが所定値に達し、カートリッジ81を透過する光が遮断された場合に、インキフル信号を出力するものであってもよい。
【0021】
さらに、筆記具取付部12には、取り付けられた筆記具80を検知可能な筆記具検知スイッチ123が設けられていることが好ましい。実施形態の筆記具検知スイッチ123は、例えばマイクロスイッチからなり、筆記具80が筆記具用接触子124を押し下げ、筆記具用接触子124が所定量回動するとオンするよう構成されている。このような筆記具検知スイッチ123により、筆記具取付部12への筆記具80の取り付け状態を検知することができる。筆記具80が筆記具取付部12に正常に取り付けられると、筆記具検知スイッチ123から取付検知信号が後述する制御部に出力される。
【0022】
実施形態のケース11は、図2に示されるように、インキボトル20が配置される領域と筆記具80が配置される領域とを上下に区画する隔壁部13を備えている。隔壁部13より上側の領域には、インキボトル20を支持する昇降台14が設けられている。昇降台14は、コイルばね15によって上方に向けて付勢されており、ケース11の内部において、後述する上方の待機位置と下方のインキ補充可能位置との間を昇降自在に配置されている。
【0023】
図2に示される実施形態の昇降台14は、インキボトル20を支持可能な昇降台本体141を備え、昇降台本体141には、吐出ノズル30を挿通可能な孔部142が形成されている。昇降台本体141の形状は、インキボトル20を支持可能な構成であれば特に限定されない。
【0024】
さらに、実施形態の昇降台14は、昇降台本体141の下面から下方に延びる棒状部材143を備えている。実施形態の昇降台14には、図2の紙面奥側と手前側とに計2本の棒状部材143が設けられている。これらの棒状部材143の基端側にはコイルばね15が設けられ、棒状部材143の先端側は隔壁13に設けられた孔に挿通されて上下動可能に構成されている。コイルばね15は、隔壁13と昇降台本体141との間に設けられ、昇降台本体141を上方に向かって付勢している。
【0025】
このような構成により、インキボトル20は、昇降台14と一体的に、ケース11に対して上下方向に移動可能となっている。インキボトル20に上方からの力が付与されない状態では、インキボトル20はコイルばね15によって上方へ付勢され、昇降台14とともに上方の待機位置に配置される。インキボトル20に上方からの力が加わると、インキボトル20は昇降台14とともに下方のインキ補充可能位置まで下降する。さらに、上方からの押圧が解除されると、インキボトル20は昇降台14とともにコイルばね15の付勢力により元の待機位置に戻ることができる。なお、インキボトル20を上方に付勢する手段は昇降台14を用いたものに限定されず、他の構成であってもよい。また、インキボトル20は、昇降台14などの手段を介さず直接コイルばね15によって上方へ付勢されていてもよい。
【0026】
さらに、ケース11には、インキボトル20が所定の位置まで押し下げられたことを検知可能なインキボトル検知スイッチ16が設けられていることが好ましい。実施形態のインキボトル検知スイッチ16は、押し下げられたインキボトル20の下端と接触して所定量回動可能なインキボトル用接触子161を備え、この回動によってオンとなるよう構成されている。インキボトル20が所定の位置まで押し下げられると、インキボトル検知スイッチ16から後述する制御部にインキボトル検知信号が出力される。
【0027】
吐出ノズル30の構造について説明する。実施形態のインキボトル20に設けられた吐出ノズル30は、図3及び図4に示されるように、下端にインキ吐出口31を備えた中空の筒状であって、その内側にはノズル側弁室32が形成されている。ノズル側弁室32の内部には、ノズル弁33と、ノズル弁33をインキ吐出口31方向に付勢する弾性体であるノズルばね34とが配置されている。ノズル弁33の先端は補充用ノズル3のインキ吐出口31から外側へ突出している。
【0028】
吐出ノズル30の先端部近傍の内面には、ノズル弁33と当接してインキ吐出口31を閉塞するノズル側弁座35が形成されている。ノズルばね34の弾性力は、常時ノズル弁33をノズル側弁座35に押圧するように作用しており、インキ吐出口31はノズル弁33とノズル側弁座35とによって閉塞された状態にある。なお、吐出ノズル30の内壁に付着したインキがノズル外部に漏れることを抑制するために、ノズル側弁座35はインキ吐出口31に近い位置に設けることが好ましい。
【0029】
また、実施形態の吐出ノズル30の側面には、後述する規制部材50に形成された規制手段である下降規制部55を受ける凸状の第1受け部36が形成されている。第1受け部36の上部には、下降規制部55とは別の規制手段である移動規制部56と係合可能な凹溝である第2受け部37が形成されている。これらの規制手段及び受け部については後段で詳述する。
【0030】
図3及び図4に示されるように、実施形態のインキ補充装置1では吐出ノズル30の真下に筆記具80が配置され、吐出ノズル30とカートリッジ81とが対向する。実施形態のカートリッジ81は、ペン先の反対側となる端部にインキ注入口82を備えている。インキ注入口82は、インキ吐出口31と同様に、弁機構によって開閉可能となっている。実施形態のインキ注入口82には、弁体83が設けられ、弁体83はばね84によってインキ注入口82方向に付勢されている。
【0031】
図5及び図6に示されるように、吐出ノズル30が下動してインキ注入口82に差し込まれ、ノズル弁33に押圧された弁体83がバネ84の付勢力に抗して押し下げられることにより、インキ注入口82の弁が開放される。また、弁体83によって押し返されたノズル弁33が上方に押し上げられてノズル側弁座35から離れ、吐出ノズル30側のインキ吐出口31の弁が開き、カートリッジ81へのインキの充填が開始される。インキの充填が完了しノズル弁33が上昇すると、ノズル弁33及び弁体83は各ばねの付勢力によって元の位置に戻り、インキ吐出口31及びインキ注入口82が閉状態となる。
【0032】
ところで、本発明のインキ補充装置1には、インキ補充可能位置でロックするロック機構と、残量センサ122によりカートリッジ81内に所定量以上のインキが補充されたことを検知したときに前記ロックを解除するロック解除機構とが設けられている。これにより、本発明では、インキ補充動作のうち吐出ノズル30を下降させる動作を手動で確実に行い、その後のインキ補充・インキ補充量の確認・吐出ノズル30の上昇を自動で行うことができる。よって、インキの自動補充の利便性は確保しつつ、カートリッジ81への吐出ノズル30の差し込み不足を抑制できるインキ補充装置1を提供することができる。
【0033】
実施形態のインキ補充装置1におけるロック機構及びロック解除機構の構成要素について説明する。
【0034】
図2に示されるように、実施形態のインキ補充装置1は、モータ40と、モータ40を駆動源として前後方向に進退可能な規制部材50と、これらを制御する図示しない制御部とを備えている。実施形態の規制部材50は、隔壁部13の上に載置されて前後方向に摺動可能に支持されている。また、規制部材50の先端はケース11の前面に設けられた開口に面しており、ケース11の前面から突出可能に配置されている。本実施形態では、規制部材50が前後に移動することによりロック及びロック解除がなされる。
【0035】
実施形態の規制部材50は、図8に示されるように、全体が平面視略矩形の板状に形成されている。本明細書において規制部材50の基端側及び先端側は、図8に記載の方向のとおりとする。また、インキ補充装置1に取り付けられたときに規制部材50が摺動する方向を摺動方向Dとする。
【0036】
実施形態の規制部材50は、基端側に、摺動方向Dと略直交する方向に延在する長孔51を備えている。後述するように、規制部材50は長孔51を介してモータ40に接続され、モータ40の駆動力が回転運動から直線的な往復運動に変換されることにより進退可能な部材である。規制部材50の先端側には、ケース11の前面から外部に突出可能な突出部52が設けられている。実施形態の突出部52は、規制部材50の板状部分より厚みを増して形成され、略直方体形状を呈している。また、規制部材50の左右両側面には、規制部材50の進退をガイドするガイドリブ53が設けられている。
【0037】
規制部材50の略中央部には、吐出ノズル30を挿通可能な大きさのノズル挿通孔54が形成されている。実施形態のノズル挿通孔54は全体が平面視略鍵穴形状に形成されており、先端側に円形部541を備え、基端側に円形部541より幅狭の方形部542を備えている。規制部材50は、方形部542を形成する板材が移動規制部56として働き、後述するように吐出ノズル30の移動をロックする役割を果たす。また、ノズル挿通孔54の基端側の近傍位置には、上方向に延びる壁形状の規制手段である下降規制部55が設けられている。
【0038】
実施形態のインキ補充装置1では、図4に示されるように、規制部材50の基端側の下方にモータ40が配置される。実施形態のモータ40は、モータの中心軸に対して偏心する伝達ピン141を備えている。伝達ピン141は規制部材50の長孔51に挿通される。モータ40の回転に応じて伝達ピン141が長孔51内を移動することにより、規制部材50が前後方向に直線的に移動する。このように、本実施形態ではモータ40の回転運動を規制部材50の往復運動に変換する機構としてスコッチ・ヨーク機構が採用されているが、これに限定されず、その他の機構を採用してもよい。モータ40の駆動は、ケース11の内部に設けられた図示しない制御部によって制御される。
【0039】
次に、本実施形態のインキ補充装置1におけるインキ補充動作について、図2から図7、及び、図9のフローチャートを参照しながら説明する。
【0040】
(待機状態)
図2に示されるように、インキボトル20が昇降台14に取り付けられており、かつ、筆記具80がまだ筆記具取付部12に配置されていない状態をインキ補充装置1の待機状態とし、このときのインキボトル20及び吐出ノズル30のケース11に対する相対位置を待機位置とする。待機状態のインキ補充装置1においては、インキボトル20は、コイルばね15によって上方の待機位置に向けて常に付勢されている。
【0041】
インキ補充装置1のロック機構は、筆記具80が未配置である待機状態または筆記具80が正常に取り付けられていない状態において、インキボトル20が下方のインキ補充可能位置まで押し下げられてしまうことを抑制できる構造であることが好ましい。図2に示されるように、本実施形態のインキ補充装置1の待機状態において、規制部材50は、突出部52がケース11の前面から突出しているとともに、下降規制部55が吐出ノズル30の第1受け部36の真下となる位置にある。なお、このときの規制部材50のケース11に対する相対位置を規制部材50の待機位置とする。
【0042】
これにより、筆記具80が配置されていない待機状態で誤ってインキボトル20が押し下げられたとしても、第1受け部36が下降規制部55の上端に接触することにより、インキボトル20が下方のインキ補充可能位置まで下降することが規制される。また、筆記具80が傾いているなど取付状態が不適切である場合に、吐出ノズル30が筆記具80と干渉することを抑制することができる。
【0043】
(ロック解除)
次に、図3に示されるように、ユーザーによって、カートリッジ81を備えた筆記具80が筆記具取付部12に取り付けられる(ステップS1)。実施形態では、制御部は、筆記具検知スイッチ123からの検知信号に基づいて、筆記具80が筆記具取付部12に取り付けられているか否かを判断する(ステップS2)。筆記具80がインキ補充装置1に正常に取り付けられたと判断すると(ステップS2:YES)、制御部は、残量センサ122からの検知信号に基づいて、筆記具80のカートリッジ81内のインキの残量を検知する(ステップS3)。カートリッジ81の液面が残量センサ122と同レベルであって、インキ補充の必要がないと判断した場合には(ステップS3:NO)、インキ補充は行わずに処理が終了する。
【0044】
カートリッジ81の液面が残量センサ122の位置よりも低い場合、すなわちインキの残量が所定量以下の場合には(ステップS3:YES)、制御部は、モータ40を作動させて規制部材50を待機位置から後退させる。これにより、図3及び図4に示されるように、ノズル挿通孔54の円形部541が吐出ノズル30のほぼ真下に位置し、かつ、下降規制部55が第1受け部36より後ろ側(図中左側)の位置となり、規制部材50が吐出ノズル30の下降を妨げないロック解除状態となる(ステップS4)。このときの規制部材50のケース11に対する相対位置を規制部材50のロック解除位置とする。実施形態では、ロック解除状態の規制部材50はケース11の前面から突出せず面一の状態となっており、ユーザーが外部から見てロックが解除されたことを認識することができる。
【0045】
(インキ補充可能位置でのロック)
ロック解除状態であることを確認したユーザーは、図5及び図6に示されるように、インキボトル20を待機位置からインキ補充可能位置まで手で押し下げる(ステップS5)。下降した吐出ノズル30がカートリッジ81に差し込まれてインキ補充が可能となった状態をインキ補充装置1のインキ補充可能状態とし、このときのインキボトル20及び吐出ノズル30のケース11に対する相対位置をインキ補充可能位置とする。
【0046】
制御部は、インキボトル検知スイッチ16からの検知信号に基づいて、インキボトル20がインキ補充可能位置に到達しているか否かを判断する(ステップS6-1)。インキタンク20がインキ補充可能位置に到達していないと判断した場合には(ステップS6-1:NO)、ロック解除状態を継続する。
【0047】
インキボトル20がインキ補充可能位置に到達していると判断すると(ステップS6-1:YES)、制御部は、モータ40を作動させて規制部材50をロック解除位置から前進させる。規制部材50が前進すると、図7に示されるように、挿通孔54に挿通されている吐出ノズル30に対する規制部材50の相対位置が変わり、円形部541内に位置していた吐出ノズル30が方形部541に位置する状態となる。実施形態の吐出ノズル30には、インキ補充可能位置において規制部材50と当接可能な位置に、凹溝である第2受け部37が設けられている。第2受け部37の上下方向の寸法は、方形部542を形成する板材の厚さよりわずかに大きい。この第2受け部37に対して、規制部材50の方形部542を形成する板材が係合する。前進した規制部材50は、方形部41を形成する三方の壁面のうち基端側の面が吐出ノズル30に当接することにより停止する。
【0048】
このとき、吐出ノズル30の第2受け部37の上下面と、規制部材50の方形部542を形成する板材の上下面とが干渉することにより、吐出ノズル30は上下方向への移動が規制されてインキ補充可能位置にてロックされる(ステップS7)。このときの規制部材50のケース11に対する相対位置を規制部材50のロック位置とする。
【0049】
インキ補充装置1がインキ補充可能状態でロックされたことを確認したユーザーは、インキボトル20を押し下げていた手を離すことができる(ステップS8)。本実施形態では、突出部52がケース11から前側に突出してきて停止したことをユーザーが視認することにより、インキ補充装置1がロック状態になったことが認識可能な構成となっている。なお、インキ補充装置1には、ロック状態であることを報知する点灯部や発音部などが設けられていてもよい。
【0050】
なお、本実施形態では、ユーザーがインキボトル20をインキ補充可能位置まで手で押し下げると、吐出ノズル30がカートリッジ81内に挿入され、弁体83が押し下げられてインキ注入口82の弁が開放される(ステップS6-2)。吐出ノズル30及びカートリッジ81の弁が開放されると、インキボトル20からカートリッジ81へインキが流下し始める(ステップS9)。本実施形態ではロック動作と弁開放がほぼ同時に平行して行われるが、この構成に限定されるものではない。
【0051】
(ロック解除)
インキボトル20から吐出ノズル30を介してカートリッジ81にインキが流下することにより、カートリッジ81にインキが補充される(ステップS10)。制御部は、残量センサ122からの検知信号に基づいて、筆記具80のカートリッジ81内のインキの残量を検知する(ステップS11)。カートリッジ81の液面が残量センサ122のレベルに達し、インキの補充量が所定量に達したことが検出されると(ステップS11:YES)、制御部がモータ40を作動させ、規制部材50をロック解除位置まで後退させる(ステップS12)。これにより、インキ補充装置1は図5に示すロック解除状態となる。
【0052】
ロックが解除されると、コイルばね15の付勢力によりインキボトル20及び吐出ノズル30が上昇し始め、吐出ノズル30がカートリッジ81から抜けて弁が閉鎖される(ステップS13)。
【0053】
制御部は、インキボトル検知スイッチ16からの検知信号に基づいて、インキボトル20がインキ補充可能位置から離れたか否かを判断する(ステップS14)。インキボトル20がインキ補充可能位置から離れたと判断すると(ステップS14:YES)、制御部は、モータ40を作動させて規制部材50を待機位置まで前進させる(ステップ15)。
【0054】
(インキ補充作業終了)
規制部材50が待機位置まで前進して停止したことを確認したユーザーは、インキの補充が完了した筆記具80を取り外すことができる(ステップS16)。筆記具80が取り外されたインキ補充装置1は、図2に示す待機状態に戻り、インキ補充作業が終了する。
【0055】
以上、実施形態を例に挙げて本発明について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 インキ補充装置
11 ケース
12 筆記具取付部
121 筆記具保持部材
122 残量センサ
123 筆記具検知スイッチ
13 隔壁
14 昇降台
15 コイルばね
16 インキボトル検知スイッチ
20 インキボトル
30 吐出ノズル
36 第1受け部
37 第2受け部
40 モータ
50 規制部材
51 カム孔
52 突出部
54 ノズル挿通孔
55 下降規制部
56 移動規制部
80 筆記具
81 カートリッジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9