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特開2024-83678硬化性樹脂組成物、偏光フィルム、積層光学フィルムおよび画像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083678
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、偏光フィルム、積層光学フィルムおよび画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 53/02 20060101AFI20240617BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20240617BHJP
   H10K 50/84 20230101ALI20240617BHJP
   H10K 50/86 20230101ALI20240617BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20240617BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240617BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240617BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240617BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20240617BHJP
   C09J 125/08 20060101ALI20240617BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
C08L53/02
G02B5/30
H10K50/84
H10K50/86
H10K59/10
B32B27/00 D
B32B27/30 B
B32B7/023
C09J7/35
C09J125/08
C09J4/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197610
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅野 亮
(72)【発明者】
【氏名】松原 情菜
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 由紀
【テーマコード(参考)】
2H149
3K107
4F100
4J002
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
2H149AA13
2H149AA18
2H149AB16
2H149BA02
2H149BA13
2H149CA02
2H149EA12
2H149EA22
2H149EA29
2H149FA02X
2H149FA03W
2H149FA08X
2H149FA66
2H149FD25
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC32
3K107CC41
3K107EE26
3K107EE55
3K107EE61
3K107FF14
4F100AA05B
4F100AK12A
4F100AK12C
4F100AK21B
4F100AK25A
4F100AK25C
4F100AK29A
4F100AK42B
4F100AK49C
4F100AK51
4F100AT00C
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA07C
4F100CB00A
4F100EH17C
4F100EH46A
4F100EJ37B
4F100EJ37C
4F100GB07
4F100GB41
4F100JB12A
4F100JD04C
4F100JN10B
4J002BP011
4J002BP031
4J002EH106
4J002FD140
4J002FD146
4J002GF00
4J002GP00
4J004AA01
4J004AA06
4J004AB06
4J004FA08
4J040DB041
4J040FA131
4J040JB07
4J040NA17
(57)【要約】
【課題】偏光特性の加湿信頼性に優れた偏光フィルムの原料となる硬化性樹脂組成物、および偏光特性の加湿信頼性に優れた偏光フィルムを提供すること。
【解決手段】炭素数5以上であって、かつ酸素原子を含まない基本単位を繰り返し単位として少なくとも有する重合体である(A)成分を含有する硬化性樹脂組成物。さらに、(メタ)アクリレートモノマーからなる(B)成分を含有することが好ましい。偏光子の少なくとも一方の面に接着剤層を介して光学フィルムが積層された偏光フィルムであって、該接着剤層が上記硬化性樹脂組成物の硬化物層である偏光フィルム。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数5以上であって、かつ酸素原子を含まない基本単位を繰り返し単位として少なくとも有する重合体である(A)成分を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記基本単位が、環構造を含むものである請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記基本単位が、芳香環構造を含むものである請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記基本単位が、スチレン構造またはスチレン誘導体構造を含むものである請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、(メタ)アクリレートモノマーからなる(B)成分を含有する請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(B)成分として、オクタノール/水分配係数を表すlogPowが3以上である(メタ)アクリレートモノマー(B-1)を含有し、組成物の全量を100質量%としたとき、前記(メタ)アクリレートモノマー(B-1)の含有量が1~80質量%である請求項5に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
組成物の全量を100質量%としたとき、前記(A)成分の含有量が1~80質量%である請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
偏光子の少なくとも一方の面に接着剤層を介して光学フィルムが積層された偏光フィルムであって、前記接着剤層が請求項1に記載の硬化性樹脂組成物の硬化物層であることを特徴とする偏光フィルム。
【請求項9】
前記硬化性樹脂組成物は、さらに、(メタ)アクリレートモノマーからなる(B)成分を含有するものである請求項8に記載の偏光フィルム。
【請求項10】
前記硬化性樹脂組成物は、前記(B)成分として、オクタノール/水分配係数を表すlogPowが3以上である(メタ)アクリレートモノマー(B-1)を含有し、組成物の全量を100質量%としたとき、前記(メタ)アクリレートモノマー(B-1)の含有量が1~80質量%である請求項9に記載の偏光フィルム。
【請求項11】
前記硬化性樹脂組成物は、組成物の全量を100質量%としたとき、前記(A)成分の含有量が1~80質量%である請求項8に記載の偏光フィルム。
【請求項12】
請求項8に記載の偏光フィルムが、少なくとも1枚積層されていることを特徴とする積層光学フィルム。
【請求項13】
請求項8に記載の偏光フィルム、または請求項12に記載の積層光学フィルムが用いられていることを特徴とする画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光子の少なくとも一方の面に接着剤層を介して光学フィルムが積層された偏光フィルムの接着剤層の原料となる硬化性樹脂組成物および偏光フィルムに関する。当該偏光フィルムはこれ単独で、またはこれを積層した積層光学フィルムとして液晶表示装置(LCD)、有機EL表示装置、CRT、PDPなどの画像表示装置を形成し得る。
【背景技術】
【0002】
時計、携帯電話、PDA、ノートパソコン、パソコン用モニタ、DVDプレーヤー、TVなどでは液晶表示装置が急激に市場展開している。液晶表示装置は、液晶のスイッチングによる偏光状態を可視化させたものであり、その表示原理から、偏光子が用いられる。特に、TVなどの用途では、ますます高輝度、高コントラスト、広い視野角が求められ、偏光フィルムにおいてもますます高透過率、高偏光度、高い色再現性などが求められている。
【0003】
偏光子としては、高透過率、高偏光度を有することから、例えばポリビニルアルコール(以下、単に「PVA」ともいう)にヨウ素を吸着させ、延伸した構造のヨウ素系偏光子が最も一般的に広く使用されている。一般的に偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系の材料を水に溶かしたいわゆる水系接着剤によって、偏光子の両面に透明保護フィルムを貼り合わせたものが用いられている(下記特許文献1)。透明保護フィルムとしては、透湿度の高いトリアセチルセルロースなどが用いられる。前記水系接着剤を用いた場合(いわゆるウェットラミネーション)には、偏光子と透明保護フィルムとを貼り合わせた後に、乾燥工程が必要となる。
【0004】
一方、前記水系接着剤の代わりに、活性エネルギー線硬化性接着剤が提案されている。活性エネルギー線硬化性接着剤を用いて偏光フィルムを製造する場合には、乾燥工程を必要としないため、偏光フィルムの生産性を向上させることができる。例えば、本発明者らにより、N-置換アミド系モノマーを硬化性成分として使用した、ラジカル重合型の活性エネルギー線硬化性接着剤が提案されている(下記特許文献2)。
【0005】
ところで、下記特許文献3では、偏光子、接着剤層および熱可塑性樹脂フィルムをこの順に含む偏光板であって、接着剤層は、無水マレイン酸変性化合物(A)、(メタ)アクリレート化合物(B)および光重合開始剤(C)を含む硬化性接着剤組成物の硬化物層である偏光板が記載されている。また、下記特許文献4では、無水マレイン酸変性化合物(A)、未変性ポリブタジエン(B)、(メタ)アクリレート化合物(C)および光重合開始剤(D)を含む硬化性接着剤組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-296427号公報
【特許文献2】特開2012-052000号公報
【特許文献3】特開特開2021-157164号公報
【特許文献4】特開2022-104564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載の活性エネルギー線硬化性接着剤を用いて形成された接着剤層は、例えば60℃温水に6時間浸漬後の色抜け、ハガレの有無を評価する耐水性試験に関しては、十分クリア可能である。しかしながら近年では、耐水性試験がより過酷な条件に代わってきていることに加え、偏光フィルムの偏光特性の加湿信頼性を維持向上することが要求されてきている。したがって、特許文献2に記載の活性エネルギー線硬化性接着剤も含めて、現在まで報告されている偏光フィルム用接着剤については、特に偏光特性の加湿信頼性の点でさらなる改良の余地があるのが実情であった。
【0008】
なお、特許文献3および4に記載の技術は、偏光子と熱可塑性樹脂フィルムとの密着性向上を目的とするものであり、偏光フィルムの偏光特性の加湿信頼性を向上し得るものではない。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みて開発されたものであり、偏光特性の加湿信頼性に優れた偏光フィルムの原料となる硬化性樹脂組成物、および偏光特性の加湿信頼性に優れた偏光フィルムを提供することを目的とする。
【0010】
さらには、前記偏光フィルムを用いた積層光学フィルムを提供すること、前記偏光フィルムまたは光学フィルムを用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は下記構成により解決することができる。即ち、本発明は、炭素数5以上であって、かつ酸素原子を含まない基本単位を繰り返し単位として少なくとも有する重合体である(A)成分を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物(1)に関する。
【0012】
上記硬化性樹脂組成物(1)において、前記基本単位が、環構造を含むものである硬化性樹脂組成物(2)が好ましい。
【0013】
上記硬化性樹脂組成物(1)または(2)において、前記基本単位が、芳香環構造を含むものである硬化性樹脂組成物(3)が好ましい。
【0014】
上記硬化性樹脂組成物(1)~(3)いずれかにおいて、前記基本単位が、スチレン構造またはスチレン誘導体構造を含むものである硬化性樹脂組成物(4)が好ましい。
【0015】
上記硬化性樹脂組成物(1)~(4)いずれかにおいて、さらに、(メタ)アクリレートモノマーからなる(B)成分を含有する硬化性樹脂組成物(5)が好ましい。
【0016】
上記硬化性樹脂組成物(5)において、前記(B)成分として、オクタノール/水分配係数を表すlogPowが3以上である(メタ)アクリレートモノマー(B-1)を含有し、組成物の全量を100質量%としたとき、前記(メタ)アクリレートモノマー(B-1)の含有量が1~80質量%である硬化性樹脂組成物(6)が好ましい。
【0017】
上記硬化性樹脂組成物(1)~(6)いずれかにおいて、組成物の全量を100質量%としたとき、前記(A)成分の含有量が1~80質量%である硬化性樹脂組成物(7)が好ましい。
【0018】
また本発明は、偏光子の少なくとも一方の面に接着剤層を介して光学フィルムが積層された偏光フィルムであって、前記接着剤層が請求項1に記載の硬化性樹脂組成物の硬化物層であることを特徴とする偏光フィルム(8)に関する。
【0019】
上記偏光フィルム(8)において、前記硬化性樹脂組成物は、さらに、(メタ)アクリレートモノマーからなる(B)成分を含有するものである偏光フィルム(9)が好ましい。
【0020】
上記偏光フィルム(8)または(9)において、前記硬化性樹脂組成物は、前記(B)成分として、オクタノール/水分配係数を表すlogPowが3以上である(メタ)アクリレートモノマー(B-1)を含有し、組成物の全量を100質量%としたとき、前記(メタ)アクリレートモノマー(B-1)の含有量が1~80質量%である偏光フィルム(10)が好ましい。
【0021】
上記偏光フィルム(8)~(10)いずれかにおいて、前記硬化性樹脂組成物は、組成物の全量を100質量%としたとき、前記(A)成分の含有量が1~80質量%である偏光フィルム(11)が好ましい。
【0022】
また本発明は、上記偏光フィルム(8)~(11)のいずれかが、少なくとも1枚積層されていることを特徴とする積層光学フィルム(12)に関する。さらに本発明は、上記偏光フィルム(8)~(11)のいずれか、または上記積層光学フィルム(12)が用いられていることを特徴とする画像表示装置(13)に関する。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、炭素数5以上であって、かつ酸素原子を含まない基本単位を繰り返し単位として少なくとも有する重合体である(A)成分を含有し、より好ましくは、さらに(メタ)アクリレートモノマーからなる(B)成分を含有する。かかる硬化性樹脂組成物の硬化物層を接着剤層として備える偏光フィルムは、偏光特性の加湿信頼性に優れる。このような効果が得られる理由は明らかではないが、以下のように推定可能である。
【0024】
偏光フィルムの偏光度を高めるためには、偏光子内のヨウ素濃度を高いレベルで維持する必要がある。しかしながら、高温高湿下において、偏光子内からヨウ素が抜ける現象(以下、「ヨウ素抜け」ともいう)が発生することで、偏光子内のヨウ素濃度が低下し、偏光特性が悪化する傾向があった。本発明に係る硬化性樹脂組成物が含有する(A)成分は、炭素数5以上であって、かつ酸素原子を含まない基本単位を繰り返し単位として少なくとも有する重合体であり、これ単独で接着剤層中に均一に分散する。特に本発明に係る硬化性樹脂組成物が(メタ)アクリレートモノマーからなる(B)成分も含有する場合は、(A)成分が(メタ)アクリレートモノマーからなる(B)成分に溶解し、(A)成分は接着剤層中により均一に分散する。(A)成分は疎水性が高いため、接着剤層全体としても疎水性が高まるが、接着剤層は厚みが薄いため、少なからず水分透過性を示す。しかしながら、本発明者らが鋭意検討した結果、(A)成分を含有する接着剤層は、ある程度の水分を透過しつつも、ヨウ素が接着剤層を透過することを抑制し、ヨウ素を偏光子内に留める効果を奏することが判明した。つまり、本発明に係る硬化性樹脂組成物により形成された接着剤層は、(A)成分が均一に分散した状態で接着剤層内に取り込まれることにより、偏光子内からのヨウ素抜けを抑制する効果を奏する結果、偏光特性の加湿信頼性を向上し得る。
【0025】
本発明に係る硬化性樹脂組成物が、炭素数5以上であって、酸素原子を含まず、かつ(i)環構造を含む基本単位、(ii)芳香環構造を含む基本単位、特には(iii)スチレン構造またはスチレン誘導体構造を含む基本単位を繰り返し単位として少なくとも有する重合体である(A)成分を含有する場合、かかる硬化性樹脂組成物の硬化物層を接着剤層として備える偏光フィルムは、偏光特性の加湿信頼性が特に優れる。これは、硬いポリマー骨格を形成し得る(i)~(iii)の基本単位を繰り返し単位として少なくとも有する重合体は、接着剤層内での凝集力の低下を抑えつつ、ヨウ素が接着剤層を透過することを抑制し、ヨウ素を偏光子内に留める効果をより高めることができることが原因の一つと考えられる。また、(i)~(iii)の基本単位は、いずれもπ電子同士の相互作用で、ヨウ素を偏光子内に留める効果をより高めることができることも原因の一つと考えられる。
【0026】
本発明に係る偏光フィルムにおいて、偏光特性の加湿信頼性に優れる効果を奏するのは、(A)成分として、炭素数5以上であって、かつ酸素原子を含まない基本単位を繰り返し単位として少なくとも有する重合体を含有することに起因する。炭素数4以下であって、かつ酸素原子を含まない基本単位を繰り返し単位として少なくとも有する重合体では、満足する効果が得られない。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、炭素数5以上であって、かつ酸素原子を含まない基本単位を繰り返し単位として少なくとも有する重合体である(A)成分と、好適にはさらに(メタ)アクリレートモノマーからなる(B)成分とを含有する。以下、各成分について説明する。
【0028】
<A成分>
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、炭素数5以上であって、かつ酸素原子を含まない基本単位を繰り返し単位として少なくとも有する重合体である(A)成分を含有する。
【0029】
本発明において、炭素数5以上であって、かつ酸素原子を含まない基本単位としては、例えばイソプレン単位やスチレン単位が挙げられ、(A)成分はこれらの基本単位のみを繰り返し単位として有する重合体であってもよく、これらの基本単位の両方を繰り返し単位として有する重合体であってもよい。特に本発明に係る硬化性樹脂組成物が、炭素数5以上であって、酸素原子を含まず、かつ(i)環構造を含む基本単位、(ii)芳香環構造を含む基本単位、特には(iii)スチレン構造またはスチレン誘導体構造を含む基本単位を繰り返し単位として少なくとも有する重合体である(A)成分を含有する場合、かかる硬化性樹脂組成物の硬化物層を接着剤層として備える偏光フィルムは、偏光子内からのヨウ素抜けを抑制し、偏光特性の加湿信頼性を向上し得る。
【0030】
(A)成分として使用可能な重合体としては、例えば下記式;
【化1】
で表される重合体(式中、l,mは0または1以上の整数であって、m,nが全て0である場合を除く)、
【0031】
下記式;
【化2】
で表される重合体(式中、l,m,nは0または1以上の整数であって、l,m,nが全て0である場合を除く)、
【0032】
下記式;
【化3】
で表される重合体(式中、mは1以上の整数、nは0以上の整数である)が好適に使用可能である。なお、(A)成分を構成する重合体が過度に高分子量となると硬化性樹脂組成物中での塗工性や他の成分との相溶性や溶解性が悪化する傾向があり、一方、(A)成分を構成する重合体が過度に低分子量となると偏光フィルムの偏光特性の加湿信頼性の向上があまり期待できなくなる。このため、(A)成分を構成する重合体の分子量は、1,000~500,000が好ましい。
【0033】
偏光フィルムの偏光特性の加湿信頼性向上の観点から、本発明に係る硬化性樹脂組成物は、組成物の全量を100質量%としたとき、(A)成分を1~80質量%含有することが好ましく、5~80質量%含有することがより好ましい。
【0034】
なお、(A)成分は一般的に粘度が高く、硬化性樹脂組成物中の含有量を多くすると、偏光子や光学フィルムへの塗工の際に塗工ムラなどの不具合が発生し、塗工が困難になる場合がある。このため、本発明に係る硬化性樹脂組成物は、(A)成分の含有量が多い場合は、溶媒としての水を加えてエマルション化してもよい。
【0035】
溶媒としての水は、アルコールなどの有機溶剤を含まないことが好ましく、仮に含むとしても、溶媒全体を100重量%としたとき、アルコールなどの有機溶剤の含有量は10重量%以下であることが好ましく、5重量%以下であることがより好ましく、1重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以下であることが特に好ましい。
【0036】
本発明に係る硬化性樹脂組成物をエマルション化する場合、溶媒としての水の配合量は、水以外の硬化性樹脂組成物の全量を100質量%としたとき、40~300質量%であることが好ましく、60~200質量%であることがより好ましい。
【0037】
本発明に係る硬化性樹脂組成物をエマルション化する場合、界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤およびノニオン界面活性剤が挙げられる。
【0038】
アニオン界面活性剤としては、ステアリン酸ナトリウム、N-ラウロイルサルコシンナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、N-ラウロイルサルコシン、N-デカノイルサルコシンナトリウム、N-オレオイルサルコシン、ミリスチン酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムなどのカルボン酸塩;リン酸モノドデシルナトリウムなどのリン酸エステル塩;5-スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム、1-ウンデカンスルホン酸ナトリウム、1-ペンタデカンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸ビス(2-エチルヘキシル)ナトリウム、1-オクタデカンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、1-デカンスルホン酸ナトリウム、1-ドデカンスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸塩;デシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ヘキサデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウムなどの硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンスチレン化メチルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル硫酸エステル塩、多環フェニルエーテルメタクリレート硫酸エステル塩などが挙げられる。
【0039】
カチオン界面活性剤としては、n-オクチルトリメチルアンモニウムブロミド、トリメチルステアリルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、トリメチルステアリルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、トリメチルステアリルアンモニウムクロリド、n-オクチルアミン塩酸塩、オクタデシルアミン塩酸塩、n-オクチルアミン臭化水素酸塩、n-オクチルトリメチルアンモニウムクロリド、トリメチルテトラデシルアンモニウムクロリド、ヘプタデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ブチルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヘキサフルオロホスファート、過塩素酸ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、ジ-n-アルキルジメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、トリメチルノニルアンモニウムブロミド、ドデシルアミン塩酸塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムテトラフルオロボラート、ヘキシルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム硫酸水素塩、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルアミン臭化水素酸塩などの脂肪族アミン塩または脂肪族四級アンモニウム塩;1-ヘキサデシル-4-メチルピリジニウムクロリド水和物、ヘキサデシルピリジニウムクロリド一水和物、ヘキサデシルピリジニウムブロミド水和物、1-ドデシルピリジニウムクロリドなどの複素環四級アンモニウム塩;ベンジルドデシルジメチルアンモニウムブロミド、ベンゼトニウムクロリド、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロリド、ベンジルセチルジメチルアンモニウムクロリド、ベンジルドデシルジメチルアンモニウムクロリド二水和物、ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムクロリドなどの芳香族四級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0040】
両性界面活性剤としては、オクタデシルジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド分子内塩、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホナート、ドデシルジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド分子内塩などが挙げられる。
【0041】
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミタート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアラート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレアート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラートなどのエステルエーテル型;ポリエチレングリコールモノメチルエーテル1000、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノドデシルエーテル、ポリエチレングリコールモノオレイルエーテル(n≒約10)、ポリエチレングリコールモノオレイルエーテル(n≒約2)、ペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル、ポリエチレングリコールモノドデシルエーテル(n≒約25)、ポリエチレングリコール 1000、ポリエチレングリコールモノオレイルエーテル(n≒約7)、ポリエチレングリコール 11000、ポリエチレングリコールモノ-4-ノニルフェニルエーテル(n≒約15)、ポリエチレングリコールモノオレイルエーテル(n≒約50)、ポリエチレングリコールモノセチルエーテル(n≒約23)、トリエチレングリコールモノドデシルエーテル、ポリエチレングリコールモノ-4-ノニルフェニルエーテル(n≒約2)、ポリエチレングリコールモノ-4-オクチルフェニルエーテル(n≒約10)、ポリエチレングリコールモノオレイルエーテル(n≒約20)、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル400、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル4000、ポリエチレングリコールモノ-4-ノニルフェニルエーテル(n≒約20)、ジエチレングリコールモノドデシルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル550、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル2000、ポリエチレングリコールモノ-4-ノニルフェニルエーテル(n≒約18)、ポリエチレングリコール 20000などのエーテル型;ソルビタンモノオレアート、ソルビタントリオレアート、ソルビタンモノパルミタート、モノステアリン、モノパルミチン、ポリエチレングリコールモノラウラート(n≒約10)、ソルビタンモノステアラート、ソルビタンモノラウラート、ポリエチレングリコールモノステアラート(n≒約45)、ポリエチレングリコールモノステアラート(n≒約55)、ソルビタンセスキオレアート、ポリエチレングリコールモノステアラート(n≒約2)、モノミリスチン、ポリエチレングリコールモノステアラート(n≒約25)、ポリエチレングリコールモノステアラート(n≒約4)、ポリエチレングリコールモノステアラート(n≒約40)、ポリエチレングリコールモノステアラート(n≒約10)などのエステル型や、アセチレンアルコール系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤等のアセチレン結合を有するアセチレン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。
【0042】
本発明に係る硬化性樹脂組成物をエマルション化する場合、(A)成分の分散性および塗膜の外観性を両立するために、界面活性剤として、2種類以上の界面活性剤を含有することが好ましく、特にアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤およびノニオン界面活性剤からなる群より選択される少なくとも2種を含有することが好ましい。
【0043】
(A)成分の分散性および塗膜の外観性を両立するために、硬化性樹脂組成物中の界面活性剤の含有量は、溶媒としての水を除く全量を100重量%としたとき、0.1~20重量%であることが好ましく、1~15重量%であることがより好ましい。
【0044】
本発明に係る硬化性樹脂組成物をエマルション化する場合、(A)成分の分散性および塗膜の外観性を両立するために、さらには偏光フィルムの加湿信頼性向上のために、界面活性剤を乳化剤として使用した強制乳化型エマルションであることが好ましい。硬化性樹脂組成物中に含まれる重合性化合物または高分子化合物に親水基を導入した自己乳化型の場合、塗膜の外観性向上および偏光フィルムの加湿信頼性向上が図れない場合がある。硬化性樹脂組成物を強制乳化させる方法は、例えば、超音波ホモジナイザー、高速回転ホモジナイザー、その他のキャビテーション現象を用いる粉砕装置もしくは高圧で液同士を斜向衝突させる湿式微粒化装置など、ボールミル等のメディア粉砕を行う装置、攪拌羽根を用いた撹拌機等により行うことができる。本発明においては、これに限らず当業者に公知の方法が利用できる。
【0045】
<B成分>
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、好適には(メタ)アクリレートモノマーからなる(B)成分を含有する。(メタ)アクリレートモノマーは単官能(メタ)アクリレートモノマーであってもよく、多官能(メタ)アクリレートモノマーであってもよい。なお、本発明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート基および/またはメタアクリレート基を意味し、(メタ)アクリレートモノマーとは、アクリレート基および/またはメタアクリレート基を含有するモノマーを意味する。「(メタ)」は以下同様の意味である。
【0046】
組成物中での(A)成分の溶解性を確保し、偏光フィルムの偏光特性の加湿信頼性向上の観点から、本発明に係る硬化性樹脂組成物は、組成物の全量を100質量%としたとき、(B)成分を1~80質量%含有することが好ましく、5~80質量%含有することがより好ましい。
【0047】
単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド基を有する(メタ)アクリルアミド誘導体が挙げられる。(メタ)アクリルアミド誘導体は、偏光子や各種の透明保護フィルムとの接着性を確保するうえで、また、重合速度が速く生産性に優れる点で好ましい。(メタ)アクリルアミド誘導体の具体例としては、例えば、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド等のN-アルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール-N-プロパン(メタ)アクリルアミド等のN-ヒドロキシアルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;アミノメチル(メタ)アクリルアミド、アミノエチル(メタ)アクリルアミド等のN-アミノアルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;N-メトキシメチルアクリルアミド、N-エトキシメチルアクリルアミド等のN-アルコキシ基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;メルカプトメチル(メタ)アクリルアミド、メルカプトエチル(メタ)アクリルアミド等のN-メルカプトアルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;などが挙げられる。また、(メタ)アクリルアミド基の窒素原子が複素環を形成している複素環含有(メタ)アクリルアミド誘導体としては、例えば、N-アクリロイルモルホリン、N-アクリロイルピペリジン、N-メタクリロイルピペリジン、N-アクリロイルピロリジン等が挙げられる。前記(メタ)アクリルアミド誘導体のなかでも、偏光子や各種の透明保護フィルムとの接着性の点から、N-アクリロイルモルホリンが好ましい。
【0048】
また、単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリレート基を有する各種の(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-ニトロプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、t-ペンチル(メタ)アクリレート、3-ペンチル(メタ)アクリレート、2,2-ジメチルブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、4-メチル-2-プロピルペンチル(メタ)アクリレート、n-オクタデシル(メタ)アクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソステアリルアクリレートなどの(メタ)アクリル酸(炭素数1-20)アルキルエステル類が挙げられる。
【0049】
また、前記(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシルアクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート;2-イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ノルボルニルメチル(メタ)アクリレート、5-ノルボルネン-2-イル-メチル(メタ)アクリレート、3-メチル-2-ノルボルニルメチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレ-ト、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレ-ト、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレ-ト等の多環式(メタ)アクリレート;2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシメトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、アルキルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシ基またはフェノキシ基含有(メタ)アクリレート;等が挙げられる。
【0050】
また、前記(メタ)アクリル酸誘導体としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートや、[4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル]メチルアクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート;2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のハロゲン含有(メタ)アクリレート;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;3-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3-メチルーオキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3-エチルーオキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3-ブチルーオキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3-ヘキシルーオキセタニルメチル(メタ)アクリレート等のオキセタン基含有(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブチロラクトン(メタ)アクリレート、などの複素環を有する(メタ)アクリレートや、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコール(メタ)アクリル酸付加物、p-フェニルフェノール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0051】
また、単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有モノマーが挙げられる。
【0052】
また、単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、活性メチレン基を有するラジカル重合性化合物を用いることができる。活性メチレン基を有するラジカル重合性化合物は、末端または分子中に(メタ)アクリル基などの活性二重結合基を有し、かつ活性メチレン基を有する化合物である。活性メチレン基としては、例えばアセトアセチル基、アルコキシマロニル基、またはシアノアセチル基などが挙げられる。前記活性メチレン基がアセトアセチル基であることが好ましい。活性メチレン基を有するラジカル重合性化合物の具体例としては、例えば2-アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、2-アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、2-アセトアセトキシ-1-メチルエチル(メタ)アクリレートなどのアセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレート;2-エトキシマロニルオキシエチル(メタ)アクリレート、2-シアノアセトキシエチル(メタ)アクリレート、N-(2-シアノアセトキシエチル)アクリルアミド、N-(2-プロピオニルアセトキシブチル)アクリルアミド、N-(4-アセトアセトキシメチルベンジル)アクリルアミド、N-(2-アセトアセチルアミノエチル)アクリルアミドなどが挙げられる。活性メチレン基を有するラジカル重合性化合物は、アセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0053】
また、重合性官能基を2以上有する多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、2-エチル-2-ブチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオぺンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリート、環状トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、EO変性ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化物、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンが挙げられる。具体例としては、アロニックスM-220(東亞合成社製)、ライトアクリレート1,9ND-A(共栄社化学社製)、ライトアクリレートDGE-4A(共栄社化学社製)、ライトアクリレートDCP-A(共栄社化学社製)、SR-531(Sartomer社製)、CD-536(Sartomer社製)等が挙げられる。また必要に応じて、各種のエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートや、各種の(メタ)アクリレート系モノマー等が挙げられる。
【0054】
なお、本発明に係る硬化性樹脂組成物は、(B)成分として、オクタノール/水分配係数を表すlogPowが3以上である(メタ)アクリレートモノマー(B-1)を含有し、組成物の全量を100質量%としたとき、(メタ)アクリレートモノマー(B-1)の含有量が1~80質量%である場合、最終的に偏光フィルムの偏光特性の加湿信頼性が特に向上するため好ましい。このような効果が得られる理由は明らかではないが、(メタ)アクリレートモノマー(B-1)が硬化性樹脂組成物中での前記(A)成分の溶解性を確保し、硬化物層(接着剤層)中での(A)成分の均一な分散を促進することにより、偏光子内からのヨウ素抜けを抑制する効果が高まることが原因と推察可能である。
【0055】
オクタノール/水分配係数(logPow)は、物質の親油性を表す指標であり、オクタノール/水の分配係数の対数値を意味する。logPowが高いということは親油性であることを意味し、即ち、吸水率が低いことを意味する。logPow値は測定することも可能(JIS-Z-7260記載のフラスコ浸とう法)だが、計算によって算出することもできる。本明細書では、ケンブリッジソフト社製Chem Draw Ultraで計算されたlogPow値を用いる。
【0056】
logPowが3以上である(メタ)アクリレートモノマー(B-1)としては例えば、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート(商品名「ライトアクリレートDCP-A」、共栄社化学社製、LogPow;3.05)、イソボルニルアクリレート(商品名「ライトアクリレートIB-XA」、共栄社化学社製、LogPow;3.27)、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールアクリル酸付加物(商品名「ライトアクリレートHPP-A」、共栄社化学社製、LogPow;3.35)、1,9-ノナンジオールジアクリレート(商品名「ライトアクリレート1,9ND-A」、共栄社化学社製、LogPow;3.68)、o-フェニルフェノールEO変性アクリレート(商品名「ファンクリルFA-301A」、日立化成社製、LogPow;3.98)、2-エチルヘキシルオキセタン(商品名「アロンオキセタンOXT-212」、東亞合成社製、LogPow;4.24)、ビスフェノール-A-ジグリシジルエーテル(商品名「JER828」、三菱化学社製、LogPow;4.76)、ビスフェノールA EO6モル変性ジアクリレート(商品名「FA-326A」、日立化成社製、LogPow;4.84)、ビスフェノールA EO4モル変性ジアクリレート(商品名「FA-324A」、日立化成社製、LogPow;5.15)、ビスフェノールA PO2モル変性ジアクリレート(商品名「FA-P320A」、日立化成社製、LogPow;6.10)、ビスフェノールA PO3モル変性ジアクリレート(商品名「FA-P323A」、日立化成社製、LogPow;6.26)、ビスフェノールA PO4モル変性ジアクリレート(商品名「FA-P324A」、日立化成社製、LogPow;6.43)、ラウリルアクリレート(商品名「ライトアクリレートL-A」、共栄社化学社製、LogPow;6)、イソステアリルアクリレート(商品名「ISTA」)、大阪有機化学工業社製;LogPow;7.46)などが挙げられる。
【0057】
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、(A)成分および(B)成分以外の成分を含有してもよい。例えば、下記一般式(1):
【化4】
で表される化合物(ただし、Xは反応性基であり、Yは分岐鎖を有してもよい炭素数1~12のアルキレン基、または置換基を有してもよいフェニレン基であり、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよい、脂肪族炭化水素基、アリール基、またはヘテロ環基を表す)を含有してもよい。前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~20の置換基を有してもよい直鎖または分岐のアルキル基、炭素数3~20の置換基を有してもよい環状アルキル基、炭素数2~20のアルケニル基が挙げられ、アリール基としては、炭素数6~20の置換基を有してもよいフェニル基、炭素数10~20の置換基を有してもよいナフチル基等が挙げられ、ヘテロ環基としては例えば、少なくとも一つのヘテロ原子を含む、置換基を有してもよい5員環または6員環の基が挙げられる。これらは互いに連結して環を形成してもよい。一般式(1)中、RおよびRとして好ましくは、水素原子、炭素数1~3の直鎖または分岐のアルキル基であり、最も好ましくは、水素原子である。
【0058】
一般式(1)で表される化合物が有するXは反応性基であって、(A)成分および(B)成分と反応し得る官能基であり、例えば、ヒドロキシル基、アミノ基、アルデヒド基、カルボキシル基、ビニル基、(メタ)アクリル基、スチリル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキセタン基、α,β-不飽和カルボニル基、メルカプト基、ハロゲン基などが挙げられる。本発明に係る硬化性樹脂組成物が活性エネルギー線硬化性である場合、反応性基Xは、ビニル基、(メタ)アクリル基、スチリル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキセタン基およびメルカプト基からなる群より選択される少なくとも1種の反応性基であることが好ましく、本発明に係る硬化性樹脂組成物がラジカル重合性である場合、反応性基Xは、(メタ)アクリル基、スチリル基および(メタ)アクリルアミド基からなる群より選択される少なくとも1種の反応性基であることが好ましく、一般式(1)で表される化合物が(メタ)アクリルアミド基を有する場合、反応性が高く、硬化物層、特には接着剤層中の硬化性成分との共重合率が高まるためより好ましい。また、(メタ)アクリルアミド基の極性が高く、接着性に優れるため本発明の効果を効率的に得られるという点からも好ましい。本発明に係る硬化性樹脂組成物がカチオン重合性である場合、反応性基Xは、ヒドロキシル基、アミノ基、アルデヒド、カルボキシル基、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキセタン基、メルカプト基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有することが好ましく、特にエポキシ基を有する場合、得られる硬化物層、特には接着剤層と被着体との密着性に優れるため好ましく、ビニルエーテル基を有する場合、硬化性樹脂組成物の硬化性が優れるため好ましい。
【0059】
一般式(1)で表される化合物の好ましい具体例としては、以下の化合物(1a)~(1d)が挙げられる。なお、一般式(1a)および(1b)中のRは水素原子またはメチル基である。
【化5】
【0060】
一般式(1)で表される化合物としては、前記例示した化合物以外にも、ヒドロキシエチルアクリルアミドとホウ酸のエステル、メチロールアクリルアミドとホウ酸のエステル、ヒドロキシエチルアクリレートとホウ酸のエステル、およびヒドロキシブチルアクリレートとホウ酸のエステルなど、(メタ)アクリレートとホウ酸とのエステルを例示可能である。
【0061】
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であることが好ましい。活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、ラジカル重合硬化性樹脂組成物とカチオン重合硬化性樹脂組成物に区分出来る。活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、活性エネルギー線に電子線などを用いる場合には、当該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は光重合開始剤を含有することは必要ではないが、活性エネルギー線に紫外線または可視光線を用いる場合には、光重合開始剤を含有するのが好ましい。
【0062】
光重合開始剤は、活性エネルギー線によって適宜に選択される。紫外線または可視光線により硬化させる場合には紫外線または可視光線開裂の光重合開始剤が用いられる。前記光重合開始剤としては、例えば、ベンジル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物;4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、α-ヒドロキシ-α,α’-ジメチルアセトフェノン、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどの芳香族ケトン化合物;メトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフエノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパン-1などのアセトフェノン系化合物;べンゾインメチルエーテル、べンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、べンゾインブチルエーテル、アニソインメチルエーテルなどのベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタールなどの芳香族ケタール系化合物;2-ナフタレンスルホニルクロリドなどの芳香族スルホニルクロリド系化合物;1-フェノン-1,1-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシムなどの光活性オキシム系化合物;チオキサンソン、2-クロロチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2,4-ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4-ジクロロチオキサンソン、2,4-ジエチルチオキサンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン、ドデシルチオキサントンなどのチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナートなどが挙げられる。
【0063】
前記光重合開始剤の配合量は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の全量を100質量部としたとき、0.5~5質量部含有するものであることが好ましく、1~4質量部含有するものであることがより好ましい。
【0064】
また、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を可視光線硬化型で用いる場合には、特に380nm以上の光に対して高感度な光重合開始剤を用いることが好ましい。380nm以上の光に対して高感度な光重合開始剤については後述する。
【0065】
前記光重合開始剤としては、下記一般式(3)で表される化合物;
【化6】
(式中、RおよびRは-H、-CHCH、-iPrまたはClを示し、RおよびRは同一または異なっても良い)を単独で使用するか、あるいは一般式(3)で表される化合物と後述する380nm以上の光に対して高感度な光重合開始剤とを併用することが好ましい。一般式(3)で表される化合物を使用した場合、380nm以上の光に対して高感度な光重合開始剤を単独で使用した場合に比べて接着性に優れる。一般式(3)で表される化合物の中でも、RおよびRが-CHCHであるジエチルチオキサントンが特に好ましい。活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中の一般式(3)で表される化合物の配合量は、硬化性樹脂組成物の全量を100質量%としたとき、0.1~4質量%含有するものであることが好ましく、0.5~3質量%含有するものであることがより好ましい。
【0066】
また、必要に応じて重合開始助剤を添加することが好ましい。重合開始助剤としては、トリエチルアミン、ジエチルアミン、N-メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルなどが挙げられ、4-ジメチルアミノ安息香酸エチルが特に好ましい。重合開始助剤を使用する場合、その添加量は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の全量を100質量部としたとき、0.1~3質量部含有するものであることが好ましく、0.3~1質量部含有するものであることがより好ましい。
【0067】
また、必要に応じて公知の光重合開始剤を併用することができる。UV吸収能を有する光学機能層および基材フィルムは、380nm以下の光を透過しないため、光重合開始剤としては、380nm以上の光に対して高感度な光重合開始剤を使用することが好ましい。具体的には、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウムなどが挙げられる。
【0068】
本発明においては、硬化性樹脂組成物が(メタ)アクリルモノマーを重合してなるアクリル系オリゴマーを含有することが好ましい。硬化性樹脂組成物中にアクリル系オリゴマーを含有することで、該組成物に活性エネルギー線を照射・硬化させる際の硬化収縮を低減し、接着剤層と、光学機能層および基材フィルムなどの被着体との界面応力を低減することができる。その結果、接着剤層と被着体との密着性の低下を抑制することができる。
【0069】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、塗工時の作業性や均一性を考慮した場合、低粘度であることが好ましいため、(メタ)アクリルモノマーを重合してなるアクリル系オリゴマーも低粘度であることが好ましい。低粘度であって、かつ接着剤層の硬化収縮を防止できるアクリル系オリゴマーとしては、重量平均分子量(Mw)が15000以下のものが好ましく、10000以下のものがより好ましく、5000以下のものが特に好ましい。一方、硬化物層(接着剤層)の硬化収縮を十分に抑制するためには、アクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)が500以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましく、1500以上であることが特に好ましい。アクリル系オリゴマーを構成する(メタ)アクリルモノマーとしては、具体的には例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-ニトロプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、S-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、t-ペンチル(メタ)アクリレート、3-ペンチル(メタ)アクリレート、2,2-ジメチルブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、4-メチル-2-プロピルペンチル(メタ)アクリレート、N-オクタデシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸(炭素数1-20)アルキルエステル類、さらに、例えば、シクロアルキル(メタ)アクリレート(例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレートなど)、アラルキル(メタ)アクリレート(例えば、ベンジル(メタ)アクリレートなど)、多環式(メタ)アクリレート(例えば、2-イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ノルボルニルメチル(メタ)アクリレート、5-ノルボルネン-2-イル-メチル(メタ)アクリレート、3-メチル-2-ノルボルニルメチル(メタ)アクリレートなど)、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピルメチル-ブチル(メタ)メタクリレートなど)、アルコキシ基またはフェノキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類(2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシメトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなど)、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、グリシジル(メタ)アクリレートなど)、ハロゲン含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレートなど)、アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなど)などが挙げられる。これら(メタ)アクリレートは、単独使用または2種類以上併用することができる。アクリル系オリゴマー(E)の具体例としては、東亞合成社製「ARUFON」、綜研化学社製「アクトフロー」、BASFジャパン社製「JONCRYL」などが挙げられる。
【0070】
硬化性樹脂組成物中のアクリル系オリゴマーの配合量は、1~20質量%であることが好ましく、3~15質量%であることがより好ましい。
【0071】
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、シランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤の具体例としては、活性エネルギー線硬化性の化合物としてビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0072】
好ましくは、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランである。
【0073】
上記以外の活性エネルギー線硬化性ではないシランカップリング剤の具体例としては、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、イミダゾールシランなどが挙げられる。
【0074】
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、カチオン重合硬化性樹脂組成物であってもよい。カチオン重合硬化性樹脂組成物に使用されるカチオン重合性化合物としては、分子内にカチオン重合性官能基を1つ有する単官能カチオン重合性化合物と、分子内にカチオン重合性官能基を2つ以上有する多官能カチオン重合性化合物とに分類される。単官能カチオン重合性化合物は比較的液粘度が低いため、カチオン重合硬化性樹脂組成物に含有させることで液粘度を低下させることができる。また、単官能カチオン重合性化合物は各種機能を発現させる官能基を有している場合が多く、カチオン重合硬化性樹脂組成物に含有させることで、カチオン重合硬化性樹脂組成物及び/又はカチオン重合硬化性樹脂組成物の硬化物に各種機能を発現させることができる。多官能カチオン重合性化合物は、カチオン重合硬化性樹脂組成物の硬化物を3次元架橋させることができるため、カチオン重合硬化性樹脂組成物に含有させることが好ましい。単官能カチオン重合性化合物と多官能カチオン重合性化合物の比は、単官能カチオン重合性化合物100質量部に対して、多官能カチオン重合性化合物を10質量部から1000質量部の範囲で混合することが好ましい。カチオン重合性官能基としては、エポキシ基やオキセタニル基、ビニルエーテル基が挙げられる。エポキシ基を有する化合物としては、脂肪族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物が挙げられ、本発明のカチオン重合性樹脂組成物としては、硬化性や接着性に優れることから、脂環式エポキシ化合物を含有することが特に好ましい。脂環式エポキシ化合物としては、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートのカプロラクトン変性物やトリメチルカプロラクトン変性物やバレロラクトン変性物等が挙げられ、具体的には、セロキサイド2021、セロキサイド2021A、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085(以上、ダイセル化学工業(株製)、サイラキュアUVR-6105、サイラキュアUVR-6107、サイラキュア30、R-6110(以上、ダウ・ケミカル日本(株)製)等が挙げられる。オキセタニル基を有する化合物は、カチオン重合性樹脂組成物の硬化性を改善したり、該組成物の液粘度を低下させる効果があるため、含有させることが好ましい。オキセタニル基を有する化合物としては、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン、ジ[(3-エチル-3-オキセタニル)メチル]エーテル、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、フェノールノボラックオキセタンなどが挙げられ、アロンオキセタンOXT-101、アロンオキセタンOXT-121、アロンオキセタンOXT-211、アロンオキセタンOXT-221、アロンオキセタンOXT-212(以上、東亞合成社製)等が市販されている。ビニルエーテル基を有する化合物は、カチオン重合性樹脂組成物の硬化性を改善したり、該組成物の液粘度を低下させる効果があるため、含有させることが好ましい。ビニルエーテル基を有する化合物としては、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールものビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、トリシクロデカンビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ペンタエリスリトール型テトラビニルエーテル等が挙げられる。
【0075】
カチオン重合硬化性樹脂組成物は、硬化性成分として以上説明したエポキシ基を有する化合物、オキセタニル基を有する化合物、ビニルエーテル基を有する化合物から選ばれる少なくとも1つの化合物を含有し、これらはいずれもカチオン重合により硬化するものであることから、光カチオン重合開始剤が配合される。この光カチオン重合開始剤は、可視光線、紫外線、X線、電子線などの活性エネルギー線の照射によって、カチオン種又はルイス酸を発生し、エポキシ基やオキセタニル基の重合反応を開始する。光カチオン重合開始剤としては、後述の光酸発生剤が好適に使用される。またカチオン重合性樹脂組成物を可視光線硬化性で用いる場合には、特に380nm以上の光に対して高感度な光カチオン重合開始剤を用いることが好ましいが、光カチオン重合開始剤は一般に、300nm付近またはそれより短い波長域に極大吸収を示す化合物であるため、それより長い波長域、具体的には380nmより長い波長の光に極大吸収を示す光増感剤を配合することで、この付近の波長の光に感応し、光カチオン重合開始剤からのカチオン種または酸の発生を促進させることができる。光増感剤としては、例えば、アントラセン化合物、ピレン化合物、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾおよびジアゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素等が挙げられ、これらは、2種類以上を混合して使用してもよい。特にアントラセン化合物は、光増感効果に優れるため好ましく、具体的にはアントラキュアUVS-1331、アントラキュアUVS-1221(川崎化成社製)が挙げられる。光増感剤の含有量は、0.1質量%~5質量%であることが好ましく、0.5質量%~3質量%であることがより好ましい。
【0076】
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、光酸発生剤を含有してもよい。活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が光酸発生剤を含有する場合、光酸発生剤を含有しない場合に比べて、接着剤層の耐水性および耐久性を飛躍的に向上することができる。光酸発生剤は、下記一般式(3)で表すことができる。
【0077】
一般式(4)
【化7】
(ただし、Lは、任意のオニウムカチオンを表す。また、Xは、PF6 、SbF 、AsF 、SbCl 、BiCl 、SnCl 、ClO 、ジチオカルバメートアニオン、SCN-よりからなる群より選択されるカウンターアニオンを表す。)
【0078】
次に、一般式(4)中のカウンターアニオンXについて説明する。
【0079】
一般式(4)中のカウンターアニオンXは原理的に特に限定されるものではないが、非求核性アニオンが好ましい。カウンターアニオンXが非求核性アニオンの場合、分子内に共存するカチオンや併用される各種材料における求核反応が起こりにくいため、結果として一般式(4)で表記される光酸発生剤自身やそれを用いた組成物の経時安定性を向上させることが可能である。ここでいう非求核性アニオンとは、求核反応を起こす能力が低いアニオンを指す。このようなアニオンとしては、PF 、SbF 、AsF 、SbCl 、BiCl 、SnCl 、ClO 、B(C 、ジチオカルバメートアニオン、SCNなどが挙げられる。
【0080】
具体的には、「サイラキュアーUVI-6992」、「サイラキュアーUVI-6974」(以上、ダウ・ケミカル日本株式会社製)、「アデカオプトマーSP150」、「アデカオプトマーSP152」、「アデカオプトマーSP170」、「アデカオプトマーSP172」(以上、株式会社ADEKA製)、「Omnicat250」(IGM Resins B.V.社製)、「CI-5102」、「CI-2855」(以上、日本曹達社製)、「サンエイドSI-60L」、「サンエイドSI-80L」、「サンエイドSI-100L」、「サンエイドSI-110L」、「サンエイドSI-180L」(以上、三新化学社製)、「IK-1」、「CPI-100P」、「CPI-101A」、「CPI-110P」、「CPI-200K」、「CPI-210S」、「CPI-310B」、「CPI-410B」、「CPI-410S」(以上、サンアプロ株式会社製)、「WPI-069」、「WPI-113」、「WPI-116」、「WPI-041」、「WPI-044」、「WPI-054」、「WPI-055」、「WPAG-281」、「WPAG-567」、「WPAG-596」(以上、富士フイルム和光純薬社製)が本発明の光酸発生剤の好ましい具体例として挙げられる。
【0081】
本発明に係る偏光フィルムは、偏光子の少なくとも一方の面に接着剤層を介して光学フィルムが積層された偏光フィルムであって、接着剤層が前記硬化性樹脂組成物の硬化物層である。
【0082】
硬化物層(接着剤層)の厚みは、偏光フィルムの偏光特性の加湿信頼性向上の観点から、0.1μm以上、5μm以下であることが好ましく、0.2μm以上、3μm以下であることがより好ましい。
【0083】
本発明において、偏光子は特に制限されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムなどの親水性高分子フィルムに、ヨウ素を吸着させて一軸延伸したものなどが挙げられる。偏光子の厚みとしては例えば3~20μmが挙げられる。
【0084】
ただし、本発明においては高温高湿下の過酷な環境における加湿信頼性向上の観点から、偏光子として厚みが3μm以上、15μm以下の薄型偏光子を用いることが好ましい。特に12μm以下であるのが好ましく、さらには10μm以下、特には8μm以下であるのが好ましい。このような薄型偏光子は、厚みムラが少なく、視認性が優れており、また寸法変化が少ないため熱衝撃に対する耐久性に優れる。
【0085】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3~7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛などを含んでいても良いし、ヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液や水浴中でも延伸することができる。
【0086】
偏光子はホウ酸を含有していることが延伸安定性や加湿信頼性の点から好ましい。また、偏光子に含まれるホウ酸含有量は、貫通クラックの発生抑制の観点から、偏光子全量に対して22質量%以下であるのが好ましく、20質量%以下であるのがさらに好ましい。延伸安定性や加湿信頼性の観点から、偏光子全量に対するホウ酸含有量は10質量%以上であることが好ましく、さらには12質量%以上であることが好ましい。
【0087】
薄型の偏光子としては、代表的には、
特許第4751486号明細書、
特許第4751481号明細書、
特許第4815544号明細書、
特許第5048120号明細書、
国際公開第2014/077599号パンフレット、
国際公開第2014/077636号パンフレット、
などに記載されている薄型偏光子またはこれらに記載の製造方法から得られる薄型偏光子を挙げることができる。
【0088】
前記薄型偏光子としては、積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法の中でも、高倍率に延伸できて偏光性能を向上させることのできる点で、特許第4751486号明細書、特許第4751481号明細書、特許4815544号明細書に記載のあるようなホウ酸水溶液中で延伸する工程を含む製法で得られるものが好ましく、特に特許第4751481号明細書、特許4815544号明細書に記載のあるホウ酸水溶液中で延伸する前に補助的に空中延伸する工程を含む製法により得られるものが好ましい。これら薄型偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂ともいう)層と延伸用樹脂基材を積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法による得ることができる。この製法であれば、PVA系樹脂層が薄くても、延伸用樹脂基材に支持されていることにより延伸による破断などの不具合なく延伸することが可能となる。
【0089】
光学フィルムとしては、例えば透明保護フィルムが挙げられる。透明保護フィルムを構成する材料としては、例えば透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース系樹脂フィルムなどのセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、およびこれらの混合物が挙げられる。透明保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などが挙げられる。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50~100重量%、より好ましくは50~99重量%、さらに好ましくは60~98重量%、特に好ましくは70~97重量%である。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50重量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現できないおそれがある。
【0090】
また透明保護フィルムを形成する材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるものが好ましく、特に透湿度が150g/m/24h以下であるものがより好ましく、140g/m/24h以下のものが特に好ましく、120g/m/24h以下のものさらに好ましい。
【0091】
透明保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層、反射防止層、スティッキング防止層、拡散層ないしアンチグレア層などの機能層を設けることができる。なお、上記ハードコート層、反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層などの機能層は、透明保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途、透明保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0092】
透明保護フィルムの厚みは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性などの作業性、薄層性などの点より1~500μm程度であり、1~300μmが好ましく、5~200μmがより好ましい。さらには10~200μmが好ましく、20~80μmが好ましい。
【0093】
光学フィルムとして、正面位相差が40nm以上および/または、厚み方向位相差が80nm以上の位相差を有する位相差フィルムを用いることができる。正面位相差は、通常、40~200nmの範囲に、厚み方向位相差は、通常、80~300nmの範囲に制御される。透明保護フィルムとして位相差フィルムを用いる場合には、当該位相差フィルムが透明保護フィルムとしても機能するため、薄型化を図ることができる。
【0094】
位相差フィルムとしては、高分子素材を一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルム、液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどが挙げられる。位相差フィルムの厚さも特に制限されないが、20~150μm程度が一般的である。
【0095】
位相差フィルムとしては、下記式(1)ないし(3):
0.70<Re[450]/Re[550]<0.97・・・(1)
1.5×10-3<Δn<6×10-3・・・(2)
1.13<NZ<1.50・・・(3)
(式中、Re[450]およびRe[550]は、それぞれ、23℃における波長450nmおよび550nmの光で測定した位相差フィルムの面内の位相差値であり、Δnは位相差フィルムの遅相軸方向、進相軸方向の屈折率を、それぞれnx、nyとしたときのnx-nyである面内複屈折であり、NZはnzを位相差フィルムの厚み方向の屈折率としたときの、厚み方向複屈折であるnx-nzと面内複屈折であるnx-nyとの比である)を満足する逆波長分散型の位相差フィルムを用いてもよい。
【0096】
本発明に係る偏光フィルムにおいては位相差層が設けられてもよい。位相差層は単層であっても複数層であってもよく、位相差層が偏光子の保護層を兼ねてもよい。
【0097】
位相差層の形成には液晶性化合物が好ましく用いられ 該液晶性化合物を含む溶媒を、例えばワイヤーバー、ギャップコーター、コンマコーター、グラビアコーター、スロットダイなどを使用して塗布することができる。この際、塗布された液晶性溶液は、自然乾燥させてもよいし、加熱乾燥させてもよい。なお、液晶性溶液は、等方相-液晶相転移濃度よりも低い濃度、即ち、等方相状態で塗工することが好ましい。この場合、ラビング処理や光配向などの方法により安定的に配向させることができる。
【0098】
本発明に係る偏光フィルムは、例えば下記の製造方法により製造可能である。
【0099】
偏光子の少なくとも一方の面に接着剤層を介して光学フィルムが積層された偏光フィルムの製造方法であって、接着剤層は硬化性樹脂組成物の硬化物層であり、前記硬化性樹脂組成物は、炭素数5以上であって、かつ酸素原子を含まない基本単位を繰り返し単位として少なくとも有する重合体である(A)成分と、(メタ)アクリレートモノマーからなる(B)成分とを含有するものであり、偏光子の貼合面および透明保護フィルムの貼合面のいずれか一方または両方に前記硬化性樹脂組成物を塗工する塗工工程と、偏光子および光学フィルムを貼り合わせる貼合工程と、偏光子面側または光学フィルム面側から活性エネルギー線を照射して、硬化性樹脂組成物を硬化させることにより得られた接着剤層を介して、偏光子および光学フィルムを接着させる接着工程とを含む偏光フィルムの製造方法。以下、各工程などについて説明する。
【0100】
硬化性樹脂組成物を塗工する方法としては、組成物の粘度や目的とする厚みによって適宜選択され、例えば、リバースコーター、グラビアコーター(ダイレクト,リバースやオフセット)、バーリバースコーター、ロールコーター、ダイコーター、バーコーター、ロッドコーターなどが挙げられる。硬化性樹脂組成物の粘度は3~100mPa・sであることが好ましく、より好ましくは5~50mPa・sであり、最も好ましくは10~30mPa・sである。組成物の粘度が高い場合、塗工後の表面平滑性が乏しく外観不良が発生するため好ましくない。このため、各組成物を加熱または冷却して好ましい範囲の粘度に調整して塗布することができる。
【0101】
なお偏光子および/または光学フィルムは、塗工工程前に表面改質処理を行ってもよい。特に偏光子は表面改質処理を行うことが好ましい。表面改質処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、イトロ処理などの処理が挙げられ、特にコロナ処理であることが好ましい。コロナ処理を行うことで偏光子表面にカルボニル基やアミノ基などの反応性官能基が生成し、接着剤層との密着性が向上する。また、アッシング効果により表面の異物が除去されたり、表面の凹凸が軽減されたりして、外観特性に優れる偏光フィルムを作成することができる。
【0102】
上記のように塗工した硬化性樹脂組成物を介して、偏光子と光学フィルムとをロールラミネーターなどを使用して貼り合わせる(貼合工程)。
【0103】
偏光子および光学フィルムを貼り合わせた後に、活性エネルギー線(電子線、紫外線、可視光線など)を照射し、硬化性樹脂組成物を硬化して接着剤層を形成する。活性エネルギー線(電子線、紫外線、可視光線など)の照射方向は、任意の適切な方向から照射することができる。
【0104】
電子線を照射する場合の照射条件は、上記硬化性樹脂組成物を硬化し得る条件であれば、任意の適切な条件を採用できる。例えば、電子線照射は、加速電圧が好ましくは5kV~300kVであり、さらに好ましくは10kV~250kVである。加速電圧が5kV未満の場合、電子線が接着剤まで届かず硬化不足となるおそれがあり、加速電圧が300kVを超えると、試料を通る浸透力が強すぎて、偏光子および透明保護フィルムにダメージを与えるおそれがある。照射線量としては、5~100kGy、さらに好ましくは10~75kGyである。照射線量が5kGy未満の場合は、接着剤が硬化不足となり、100kGyを超えると、光学機能層および基材フィルムにダメージを与え、機械的強度の低下や黄変を生じ、所定の光学特性を得ることができない。
【0105】
電子線照射は、通常、不活性ガス中で照射を行うが、必要であれば大気中や酸素を少し導入した条件で行ってもよい。偏光子および透明保護フィルムの材料によるが、酸素を適宜導入することによって、最初に電子線があたる光学機能層および基材フィルム面にあえて酸素阻害を生じさせ、偏光子および透明保護フィルムへのダメージを防ぐことができ、接着剤にのみ効率的に電子線を照射させることができる。
【0106】
本発明に係る偏光フィルムを製造する場合、活性エネルギー線として、波長範囲380nm~450nmの可視光線を含むもの、特には波長範囲380nm~450nmの可視光線の照射量が最も多い活性エネルギー線を使用することが好ましい。紫外線、可視光線を使用する場合であって、紫外線吸収能を付与した透明保護フィルム(紫外線不透過型透明保護フィルム)を使用する場合、およそ380nmより短波長の光を吸収するため、380nmより短波長の光は硬化性樹脂組成物に到達せず、その重合反応に寄与しない。さらに、偏光子または透明保護フィルムによって吸収された380nmより短波長の光は熱に変換され、偏光子または透明保護フィルム自体が発熱し、偏光フィルムのカール・シワなど不良の原因となる。そのため、本発明において紫外線、可視光線を採用する場合、活性エネルギー線発生装置として380nmより短波長の光を発光しない装置を使用することが好ましく、より具体的には、波長範囲380~440nmの積算照度と波長範囲250~370nmの積算照度との比が100:0~100:50であることが好ましく、100:0~100:40であることがより好ましい。本発明に係る偏光フィルムを製造する場合、活性エネルギー線としては、ガリウム封入メタルハライドランプ、波長範囲380~440nmを発光するLED光源が好ましい。あるいは、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、白熱電球、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマレーザーまたは太陽光などの紫外線と可視光線を含む光源を使用することができ、バンドパスフィルターを用いて380nmより短波長の紫外線を遮断して用いることもできる。偏光子と透明保護フィルムとの間の接着剤層の接着性能を高めつつ、偏光フィルムのカールを防止するためには、ガリウム封入メタルハライドランプを使用し、かつ380nmより短波長の光を遮断可能なバンドパスフィルターを介して得られた活性エネルギー線、またはLED光源を使用して得られる波長405nmの活性エネルギー線を使用することが好ましい。
【0107】
本発明に係る偏光フィルムを連続ラインで製造する場合、ライン速度は、硬化性樹脂組成物の硬化時間によるが、好ましくは1~500m/min、より好ましくは5~300m/min、さらに好ましくは10~100m/minである。ライン速度が小さすぎる場合は、生産性が乏しい、あるいは光偏光子または透明保護フィルムへのダメージが大きすぎ、耐久性試験などに耐え得る偏光フィルムが作製できない。ライン速度が大きすぎる場合は、硬化性樹脂組成物の硬化が不十分となり、目的とする接着性が得られない場合がある。
【0108】
本発明に係る硬化性樹脂組成物をエマルション化する場合、本発明に係る偏光フィルムは、例えば下記の製造方法により製造可能である。
【0109】
偏光子の少なくとも一方の面に接着剤層を介して光学フィルムが積層された偏光フィルムの製造方法であって、炭素数5以上であって、かつ酸素原子を含まない基本単位を繰り返し単位として少なくとも有する重合体である(A)成分および(メタ)アクリレートモノマーからなる(B)成分を含有する硬化性樹脂組成物に、溶媒としての水を加えてエマルション化するエマルション化工程と、偏光子および光学フィルムの少なくとも一方の面にエマルション化した硬化性樹脂組成物を塗工する塗工工程と、硬化性樹脂組成物から溶媒としての水を乾燥除去することにより、偏光子および光学フィルムの少なくとも一方の面に樹脂層を形成する乾燥工程と、樹脂層を介して偏光子および光学フィルムを貼り合わせる貼合工程と、偏光子面側または光学フィルム面側から活性エネルギー線を照射して、樹脂層を硬化させることにより得られた接着剤層を介して、偏光子および光学フィルムを接着させる接着工程とを含む偏光フィルムの製造方法。前記エマルション化工程において、硬化性樹脂組成物に界面活性剤を含有させることが好ましい。また、前記エマルション化工程が、界面活性剤を乳化剤として使用した強制乳化エマルション工程であることが好ましい。
【0110】
前述した偏光フィルムや、偏光フィルムを少なくとも1層積層されている積層光学フィルムには、液晶セルなどの他部材と接着するための粘着層を設けることもできる。粘着層を形成する粘着剤は特に制限されないが、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤の如く光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく用いうる。
【0111】
粘着層は、異なる組成または種類などのものの重畳層として偏光フィルムや光学フィルムの片面または両面に設けることもできる。また両面に設ける場合に、偏光フィルムや光学フィルムの表裏において異なる組成や種類や厚みなどの粘着層とすることもできる。粘着層の厚みは、使用目的や接着力などに応じて適宜に決定でき、一般には1~500μmであり、1~200μmが好ましく、特に1~100μmが好ましい。
【0112】
粘着層の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止などを目的にセパレータが仮着されてカバーされる。これにより、通例の取扱状態で粘着層に接触することを防止できる。セパレータとしては、上記厚み条件を除き、例えばプラスチックフィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体などの適宜な薄葉体を、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデンなどの適宜な剥離剤でコート処理したものなどの、従来に準じた適宜なものを用いうる。
【0113】
本発明の偏光フィルムや光学フィルムは液晶表示装置などの各種装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと偏光フィルムまたは光学フィルム、および必要に応じての照明システムなどの構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による偏光フィルムまたは光学フィルムを用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型などの任意なタイプのものを用いうる。
【0114】
液晶セルの片側または両側に光学積層体を配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による光学積層体は液晶セルの片側または両側に設置することができる。両側に光学積層体を設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層または2層以上配置することができる。
【実施例0115】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明の実施形態はこれらに限定されない。
【0116】
<偏光子>
非晶性PET基材に9μm厚のPVA層が製膜された積層体を延伸温度130℃の空中補助延伸によって延伸積層体を生成し、次に、延伸積層体を染色によって着色積層体を生成し、さらに着色積層体を延伸温度65度のホウ酸水中延伸によって総延伸倍率が5.94倍になるように非晶性PET基材と一体に延伸された5μm厚のPVA層を含む光学フィルム積層体を生成した。このような2段延伸によって非晶性PET基材に製膜されたPVA層のPVA分子が高次に配向され、染色によって吸着されたヨウ素がポリヨウ素イオン錯体として一方向に高次に配向された薄型偏光子を構成する、厚さ5.5μmのPVA層を含む光学フィルム積層体を得た。
【0117】
<光学フィルム(透明保護フィルム)>
まず、特開2010-284840号公報の製造例1に記載された方法によって、イミド化されたメタクリル酸メチル-スチレン共重合体から構成された樹脂(イミド化MS樹脂)を作製した。次に、2軸混練機を用いて、イミド化MS樹脂100重量部及びトリアジン系紫外線吸収剤(アデカ社製、商品名:T-712)0.62重量部を220℃で混合し、樹脂ペレットを作製した。得られた樹脂ペレットは、100.5kPa、100℃の環境下で12時間乾燥させた。次に、単軸の押出機を用いて、ダイス温度270℃でTダイから樹脂ペレットを押し出すことによって、厚さ160μmのフィルムを作製した。さらに、このフィルムについて、その搬送方向に150℃の雰囲気下で延伸し、厚さを80μmに調節した。次に、水性ウレタン樹脂を含む易接着剤をフィルムに塗布した後に、搬送方向と直交する方向に150℃の雰囲気下でフィルムを延伸することによって、厚さ40μmの透明保護フィルムを得た。この透明保護フィルムの透湿度は、58g/m/24hであった。
【0118】
<活性エネルギー線>
活性エネルギー線として、可視光線(ガリウム封入メタルハライドランプ) 照射装置:ヘレウス社製Light HAMMER10 Mark III、バルブ:Vバルブ ピーク照度:1600mW/cm、積算照射量1000/mJ/cm(波長380~440nm)を使用した。なお、可視光線の照度は、Power Puck 2 ( EIT社製、UVVの測定値)を使用して測定した。
【0119】
(硬化性樹脂組成物の調整)
表1の配合に従い、実施例1~8および比較例1~6の硬化性樹脂組成物を調製した。表中の数値は各組成物全量を100質量%としたときの重量%を示す。硬化性樹脂組成物を構成する各材料を以下に示す。
【0120】
((A)成分)
・炭素数5以上であって、かつ酸素原子を含まない基本単位を繰り返し単位として少なくとも有する重合体1(表1中では単に「重合体1」と示す。下記に基本単位の構造を示す。)
【化8】
商品名「セプトン1020」、スチレン単位の含有量36%、MFR(200℃、10kg);1.8(g/10min)、クラレ社製
・炭素数5以上であって、かつ酸素原子を含まない基本単位を繰り返し単位として少なくとも有する重合体2(表1中では単に「重合体2」と示す。下記に基本単位の構造を示す。)
【化9】
商品名「セプトン2063」、スチレン単位の含有量13%、MFR(230℃、2.16kg);7(g/10min)、MFR(200℃、10kg);22(g/10min)、クラレ社製
・炭素数5以上であって、かつ酸素原子を含まない基本単位を繰り返し単位として少なくとも有する重合体3(表1中では単に「重合体3」と示す。基本単位の構造は重合体2と同じ)商品名「セプトン2104」、スチレン単位の含有量65%、MFR(230℃、2.16kg);0.4(g/10min)、MFR(200℃、10kg);22(g/10min)、クラレ社製
・炭素数5以上であって、かつ酸素原子を含まない基本単位を繰り返し単位として少なくとも有する重合体4(表1中では単に「重合体4」と示す。商品名「UC-102M」、下記に基本単位の構造を示す。)
【化10】
(分子量約17,000)、クラレ社製
((B)成分)
・N-アクリロイルモルホリン:商品名「ACMO」、LogPow;-0.20KJケミカルズ社製
・4-ヒドロキシブチルアクリレート:商品名「4-HBA」、LogPow;0.68、大阪有機化学工業社製
・ラウリルアクリレート:商品名「ライトアクリレートL-A」、LogPow;6、共栄社化学社製
・1.9-ノナンジオールジアクリレート:商品名「ライトアクリレート1.9ND-A」、LogPow;3.68、共栄社化学社製
・ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート:商品名「ライトアクリレートDCP-A」、LogPow;3.05、共栄社化学社製
(その他の成分)
・液状ポリブタジエン1((メタ)アクリル未変性ポリブタジエン):商品名「LBR-305」(分子量約26,000)、クラレ社製
・液状ポリブタジエン2((メタ)アクリル未変性ポリブタジエン):商品名「LBR-307」(分子量約8,000)、クラレ社製
・カップリング剤:商品名「KBM303」、信越化学社製
・アクリル系オリゴマー((メタ)アクリルモノマーを重合してなるアクリル系オリゴマー):商品名「ARUFON UP-1190」、東亞合成社製
(開始剤)
・2-メチル-4’-メチルチオ-2-モルホリノプロピオフェノン:商品名「Omnirad 907」、IGM Resins B.V.社製
・ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド:商品名「Omnirad 819」、IGM Resins B.V.社製
・1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン:商品名「Omnirad 184」、IGM Resins B.V.社製
・ジエチルチオキサントン:商品名「KAYACURE DETX-S(表1中は「DETX-S」とする)」、日本化薬社製
【0121】
(偏光フィルムの製造)
実施例1~5および比較例1~6
MCDコーター(富士機械社製)(セル形状:ハニカム、グラビアロール線数:700本/inch、回転速度140%/対ライン速)を用いて、光学フィルム積層体の薄型偏光子面側に実施例1~5および比較例1~6の硬化性樹脂組成物を塗工した(塗工工程)。薄型偏光子の硬化性樹脂組成物の塗工面に光学フィルムをロール機で貼り合わせた(貼合工程)。その後、貼り合わせた光学フィルム側から、活性エネルギー線照射装置により上記可視光線を照射して、硬化性樹脂組成物を硬化させることにより得られた接着剤層を介して、薄型偏光子および前記光学保護フィルムを接着させた。得られた接着剤層の厚みは、前処理としてミクロトーム(Leica製、「EM UC7」)を用いて断面切削を行い切削面へ金属イオンスパッタを施したのち、SEM(日本電子株式会社製、「JSM-7100F」)を用いて膜厚の測定を行った。次に光学フィルム積層体の非晶性PET基材を剥離した。
【0122】
<偏光フィルムの偏光特性の加湿信頼性評価>
粘着剤層(厚み20μm)を介して、実施例1~8または比較例1~6で製造した偏光フィルムを厚さ0.7mmの無アルカリガラスの一方に貼り合わせた偏光フィルム(加湿耐久性試験評価用サンプル)を準備した。該サンプルを使用し、85℃-85%湿度の環境下にて、偏光特性の加湿信頼性試験を実施した。加湿信頼性試験の詳細を下記に示す。
【0123】
得られた偏光フィルムを85℃85%RHの環境下に72時間暴露し、投入前と投入後の偏光度を、積分球付き分光光度計(日本分光(株)製のV7100)を用いて測定し、偏光度の変化量ΔY(%)=|(投入前の偏光度(%))-(投入後の偏光度(%))|を求めた。偏光度の変化量ΔY(%)が小さいほど過酷な加湿環境下における偏光特性の加湿信頼性に優れると判断した。
【0124】
<接着剤層の破断強度評価>
以下の方法により、接着剤層の破断強度を評価した。破断強度が低いほど、湿熱環境下で接着剤層が脆く、剥がれやすいことを意味する。
【0125】
まず、ガラス板(松波硝子工業社製、アルカリガラス)の全面に、両面接着テープ (日東電工社製、No.5610)を用いて、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム(日本ゼオン製、ZF14、50μm)を貼り合わせたもの(以下、「フィルムモールド」という)を2枚用意した。つぎに、一方のフィルムモールドのCOPフィルム面側に両面接着テープ(日東電工社製、No.5610)を一定の間隔を空けて貼り付け、もう片方のフィルムモールドをCOPフィルム面側から貼合わせることにより、フィルムモールドに挟まれ、かつテープ分の厚みを有する空間を作成し、かかる空間に評価する接着剤組成物を流し込み、活性エネルギー線(ヘレウス社製Light HAMMER10 Mark III、バルブ:Vバルブ、ピーク照度:1600mW/cm、積算照射量1000/mJ/cm)を照射し、硬化を行い、厚さ100μmの接着剤層に相当するフィルムを作製した。なお、活性エネルギー線の照度と積算照射量は、Power Puck 2 ( EIT社製、UVVの測定値)を使用して測定した。製造した厚さ100μmの接着剤層に相当するフィルムを10mm幅に切断し、精密万能試験機(島津製作所社製AG-IS)を用いて、引張速度200mm/minで引張り試験を実施し、破断したときの応力(N)を測定した。
【0126】
【表1】
【0127】
表1の結果から、実施例1~5の硬化性樹脂組成物を使用して製造した偏光フィルムは、偏光特性の加湿信頼性に優れることがわかる。
【0128】
なお、比較例3および4の硬化性樹脂組成物を使用して製造した偏光フィルムは、偏光特性の加湿信頼性は幾分向上するが、(メタ)アクリレート未変性ポリブタジエンに起因して、接着剤層が脆くなることで、破断応力が低下した。さらに比較例5および6の硬化性樹脂組成物を使用して製造した偏光フィルムは、接着剤層の破断応力が著しく悪化することで、被着体である偏光子と光学フィルムとが、湿熱環境下で剥がれてしまい、偏光フィルムとして使用できなかった。
【0129】
(偏光フィルムの製造)
実施例6~8
MCDコーター(富士機械社製)(セル形状:ハニカム、グラビアロール線数:240本、回転速度140%/対ライン速)を用いて、光学フィルム積層体の薄型偏光子側(処理面側)に実施例6~8で使用する硬化性樹脂組成物(表2に記載の各成分および水を強制乳化エマルション化した組成物)を塗工し(塗工工程)、ブロアを使用して風乾させた(乾燥工程)。薄型偏光子の硬化性樹脂組成物の塗工面側と透明保護フィルムとを、ロール機で貼り合わせた(貼り合わせのライン速度は25m/min)。その後、保護フィルム側から、可視光線照射装置により照射して硬化性樹脂組成物を硬化し(硬化工程)、次いで光学フィルム積層体の非晶性PET基材を剥離除去することにより、実施例6~8の偏光フィルムを製造した。得られた偏光フィルムの接着剤層の膜厚および評価結果を表2に示す。表2中、「アニオン界面活性剤」はポリオキシエチレンスチレン化メチルフェニルエーテル硫酸ナトリウム塩(商品名「ニューコール 707-SN」、日本乳化剤社製)であり、「表面調整剤」は商品名「EXP.4200」、日信化学工業社製である。
【0130】
【表2】
【0131】
表2の結果から、実施例6~8の硬化性樹脂組成物を使用して製造した偏光フィルムは、接着剤層の破断応力が非常に高く、かつ偏光特性の加湿信頼性は極めて優れることがわかる。