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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083680
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】人形の関節構造
(51)【国際特許分類】
   A63H 3/46 20060101AFI20240617BHJP
【FI】
A63H3/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197612
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】391053917
【氏名又は名称】株式会社オビツ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100183357
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義美
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一裕
【テーマコード(参考)】
2C150
【Fターム(参考)】
2C150BC02
2C150CA01
2C150DA27
2C150DA28
2C150DC03
2C150EB41
2C150EH07
2C150EH08
2C150FB43
2C150FD08
(57)【要約】
【課題】可動領域を大きくすることを可能とした人形の関節構造を提供する。
【解決手段】上腕21の上端と、上腕の上端が対峙する胴部1の上腕対峙領域A1との間に、上腕を可動するように連結した肩関節部25を含む可動人形であって、肩関節部は、上腕側に一端部を連結する第一部材27と、胴部側に配されて、第一部材の他端部を連結する第二部材43とを含み、第二部材は、第一部材の他端部をスライド移動可能に挿通する摺動孔部45を備え、第一部材の他端部は、摺動孔部に挿通させて組み込んだ時に、摺動孔部の出口45b側から所定長さ突出する棒状に形成されており、第一部材の他端部は、摺動孔部の出口側から所定距離離れた位置に抜け止め部63を備えることにより、摺動孔部の出口側から前記抜け止め部までの間の移動許容領域A2を設けた。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上腕の上端と、前記上腕の上端が対峙する胴部の上腕対峙領域との間に、前記上腕を可動するように連結した肩関節部を含む可動人形であって、
前記肩関節部は、
前記上腕側に一端部を連結する第一部材と、
前記胴部側に配されて、前記第一部材の他端部を連結する第二部材とを含み、
前記第二部材は、前記第一部材の他端部をスライド移動可能に挿通する摺動孔部を備え、
前記第一部材の他端部は、前記摺動孔部に挿通させてスライド移動可能に組み込んだ時に、前記摺動孔部の出口側から所定長さ突出する棒状に形成されていることを特徴とする人形の関節構造。
【請求項2】
前記第二部材は、前記胴部側に対し、鉛直方向軸を中心にして水平方向に回動可能に配設された支持部と、
前記支持部により水平方向軸を介して回動自在に保持され、前記摺動孔部を備えた受け部とで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の人形の関節構造。
【請求項3】
前記支持部は、鉛直方向軸を有する底板部と、前記底面板の相対向する辺から連続して立ち上げられた二片の縦板部とを有し、
前記水平方向軸は、前記二片の縦板部にわたって架け渡されていることを特徴とする請求項2に記載の人形の関節構造。
【請求項4】
前記肩関節部は、前記上腕の上端と、前記上腕の上端が対峙する前記胴部の上腕対峙領域との間に配される肩カバー部によって外方から直視し得ないように覆われており、
前記肩カバー部は、前記肩関節部の動きに追随して可動するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の人形の関節構造。
【請求項5】
前記それぞれの縦板部の外側面部には、ガイド突起部が設けられており、
前記肩カバー部は、相対向する内面部に、前記突起部を摺動可能に挟持するスライド摺動部が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の人形の関節構造。
【請求項6】
前記第一部材の他端部は、前記摺動孔部の出口側から所定距離離れた位置に抜け止め部を備えることにより、前記摺動孔部の出口側から前記抜け止め部までの間の移動許容領域を設けたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の人形の関節構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肩関節など関節部分が可動する人形の関節構造に関する。
本発明において人形とは、眼球や髪の毛を備えたドールと称される完成された人形、又は、眼球も髪の毛もないあるいは頭部も有していない裸体状態の素体人形などのいずれをも含むものとする。
【背景技術】
【0002】
関節が可動する人形、すなわち可動人形は、低年齢層の需要者のみではなく、年齢層の高い需要者にも人気を博しており、特に関節の可動域が大きく多様な動きに対応し得る人形が好まれている。
そこで、従来から関節部分の可動領域を大きくしてリアルな人の動きに近づけるよう鋭意研究を重ねている。
特許文献1は、胴部側と腕部側との間に連結部材を介在し、連結部材の胴部対峙側に突設した支持棒を胴部側に孔部に挿入すると共に、バネ部材によって連結部材を胴部側に常時付勢させるものであって、肩関節の上下方向の可動領域を拡大するための構造を提供している。
【0003】
しかし、特許文献1に開示の構造では、肩関節の可動領域を前方に向けて大きくする構造を提供し得るものではない。
すなわち、特許文献1に開示の肩関節構造では、肩関節を使って腕部分を水平方向に大きく動かすことはできず、例えば、肩を前方に丸めるような形態(寒さのあまり身体を丸めているような状態)や、両方の手で、それぞれ反対側の肩を掴むようなポージングなどを人形にとらせることができなかった。また、無理に可動させて水平方向に動かそうとしても、連結部材が常時胴部方向に圧接されるように付勢されているため、その姿勢をキープすることはできなかった。従って、人形に求め得るポージングに制限が掛かってしまい好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3922812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した従来技術の有する課題を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、可動領域を大きくすることを可能とした人形の関節構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために第1の本発明がなした技術的手段は、上腕の上端と、前記上腕の上端が対峙する胴部の上腕対峙領域との間に、前記上腕を可動するように連結した肩関節部を含む可動人形であって、
前記肩関節部は、
前記上腕側に一端部を連結する第一部材と、
前記胴部側に配されて、前記第一部材の他端部を連結する第二部材とを含み、
前記第二部材は、前記第一部材の他端部をスライド移動可能に挿通する摺動孔部を備え、
前記第一部材の他端部は、前記摺動孔部に挿通させてスライド移動可能に組み込んだ時に、前記摺動孔部の出口側から所定長さ突出する棒状に形成されていることを特徴とする人形の関節構造としたことである。
【0007】
第2の本発明は、第1の本発明において、前記第二部材は、前記胴部側に対し、鉛直方向軸を中心にして水平方向に回動可能に配設された支持部と、
前記支持部により水平方向軸を介して回動自在に保持され、前記摺動孔部を備えた受け部とで構成されていることを特徴とする人形の関節構造としたことである。
【0008】
第3の本発明は、第2の本発明において、前記支持部は、鉛直方向軸を有する底板部と、前記底面板の相対向する辺から連続して立ち上げられた二片の縦板部とを有し、
前記水平方向軸は、前記二片の縦板部にわたって架け渡されていることを特徴とする人形の関節構造としたことである。
【0009】
第4の本発明は、第3の本発明において、前記肩関節部は、前記上腕の上端と、前記上腕の上端が対峙する前記胴部の上腕対峙領域との間に配される肩カバー部によって外方から直視し得ないように覆われており、
前記肩カバー部は、前記肩関節部の動きに追随して可動するように構成されていることを特徴とする人形の関節構造としたことである。
【0010】
第5の本発明は、第4の本発明において、前記それぞれの縦板部の外側面部には、ガイド突起部が設けられており、
前記肩カバー部は、相対向する内面部に、前記突起部を摺動可能に挟持するスライド摺動部が設けられていることを特徴とする人形の関節構造としたことである。
【0011】
第6の本発明は、第1の本発明乃至第5の本発明のいずれかにおいて、前記第一部材の他端部は、前記摺動孔部の出口側から所定距離離れた位置に抜け止め部を備えることにより、前記摺動孔部の出口側から前記抜け止め部までの間の移動許容領域を設けたことを特徴とする人形の関節構造としたことである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、可動領域を大きくすることを可能とした人形の関節構造を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態を示す人形の外観形態を示す部分概略図である。
図2】胸部外皮と第一の腹部外皮を取り外し、右腕を前方水平方向に可動させた状態を示す部分概略図である。
図3】肩関節部の動きを示す概略図で、(a)は右肩を前方水平方向で左肩方向に向けて旋回を開始した状態、(b)は(a)の状態からさらに左肩方向に旋回した状態を示す。
図4】肩関節部の動きを示す概略図で、(a)は右肩を前方水平方向に可動させた状態、(b)は(a)の状態から右肩を前方水平方向で左肩方向に向けて旋回を開始した状態、(c)は(b)の状態からさらに左肩方向に旋回した状態を示す。
図5】移動許容領域における第一部材のスライド移動状態を示し、(a)は通常状態、(b)は(a)の状態から図面上で右方向の肩方向に向けてスライド移動した状態を示す。
図6】肩関節部を示す部分拡大斜視図である。
図7】肩関節部の動きに追随して型カバー部が可動する状態を示す部分拡大斜視図である。
図8】胸部外皮と第一の腹部外皮を取り外し、胸骨格部と腹骨格部とが、鉛直方向と直交する水平方向に回動可能な抜脱防止機構を介して連結されていることを示す部分概略図である。概略図である。
図9図8の状態から腹骨格部を回動させた状態を示す部分概略図である。
図10】(a)は抜脱防止機構を示す部分縦断側面図、(b)は抜脱防止機構を示す部分横断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態に係る人形の関節構造について、添付図面に基づいて説明する。なお、本実施形態は本発明の一実施形態にすぎず、何等これに限定して解釈されるものではなく、本発明の範囲内で設計変更可能である。また、本発明では、人形と称される全てのものを想定しており、玩具や鑑賞用の人形の他、ディスプレイ人形やマネキン人形、又は、目や髪の毛などを有していない、あるいは頭部(ヘッド)そのものを有していない、いわゆる素体人形と称されるものなども対象であって、さらにそのサイズの大小も問わない。
【0015】
人形は、骨格部と骨格部を覆う外皮部とで構成され、骨格部を構成している各骨部同士を可動自在に連結する関節部を備えた可動人形である。
【0016】
本実施形態では、上腕21の上端と、上腕21の上端が対峙する胴部1の上腕対峙領域A1との間に、上腕を可動するように連結した肩関節部25を備えた点に特徴を有している。
また、胴部1内に配される胸骨格部7aと、胸骨格部7aと鉛直方向T1で下方に一体に配される腹骨格部5aとが抜脱防止機構73を介して回動可能に連結されている点にも特徴を有しており、可動領域を大きくすることを可能とする、という点において課題も共通している。
従って、本実施形態では、鉛直方向T1で腰部3よりも上方に位置する胴部1と腕部15のみ図示し、その他の構成については周知形態が採用可能であるため、腕部15や脚部9及び首部11等の詳細構成については図示省略している。また、頭部13についても特に周知形態を採用可能であるため省略している。
【0017】
以下、特徴的な構成である肩関節部25を中心に説明し、その他の構成部分については簡単に説明するにとどめる。
なお、本実施形態では、胴部1、腰部3、脚部9、腕部15の全ての人形構成部材に骨格部を有しているものではないが、全ての構成部材が骨格部を有しているものであってもよく本発明の範囲内である。また、外皮部は、軟質材(軟質塩化ビニル樹脂材等)あるいは硬質材(硬質塩化ビニル樹脂材やセラミック材等)などからなるものが想定されるが特にその材質は限定解釈されない。
【0018】
本実施形態では、腰部3よりも上方に位置する部位を胴部1と称する。胴部1は、腹部5と胸部7とで構成されている。
腹部5は、腰部3に配される図示しない腰部骨格3aと連結される腹部骨格5aと腹部骨格5aを覆う腹部外皮5bとで構成されている。
胸部7は、腹部骨格5aと連結される胸部骨格7aと胸部骨格7aを覆う胸部外皮7bとで構成されている(図1及び図2参照。)。
【0019】
腹部骨格5aは、下端を腰部骨格3aと連結する(不図示)と共に、上端には鉛直方向T1に立設された円柱状の連結部5cを備えて構成されている(図8及び図9参照。)。胸部骨格7aは、腹部骨格5aの連結部5cが挿入可能な挿入孔部7cを有する本体部7dと、本体部7dの上端にて水平方向に延設された水平板部7eと、水平板部7eの中央領域に連結される首部骨格連結部7fと、で構成されている(図8及び図9参照。)。
【0020】
腕部15は、上腕21及び下腕17と、下腕17に連結される手部23とで構成されている(図1及び図2参照。)。
上腕21と下腕17は、それぞれ中実に形成されるとともに、肘関節部19を介して折り曲げ可能で、かつ着脱可能に連結されている。
【0021】
上腕21は、上腕21の上端が対峙する胸部7(胴部1)の上腕対峙領域A1との間に、上腕21を可動するように連結した肩関節部25を含んで構成されている。
【0022】
肩関節部25は、上腕21側に一端側(下端側)を連結する第一部材27と、胸部7側に配されて、第一部材27の他端側(上端側)を連結する第二部材43とを含んで構成されている(図2乃至図7参照。)。
【0023】
第一部材27は、図示しない一端側(下端側)が上腕21の上端に対して回動可能に連結される本体部29と、本体部29に対して回動自在に軸支されて第二部材42と連結される連結部33とで構成されている(図2乃至図4参照。)。
【0024】
本体部29は、一端側(下端側)と相対向する他端側(上端側)を二股状に形成してなる軸支片部31,31を備えている(図1参照。)。
【0025】
連結部33は、所定厚みを有する円板部35と、円板部35の外周面から一体に突設された所定長さで棒状のスライド軸部37とで構成されている(図3及び図4参照。)。
円板部35は、本体部29の軸支片部31,31の間の隙間39に摺動可能に配設される厚みに形成されるとともに、軸支片部31,31の隙間39にて軸41により回動可能に連結されている。スライド軸部37は円柱棒状に形成されている。
【0026】
第二部材43は、円筒状に形成されるとともに、筒長さ方向L1の両端面にわたり貫通し、第一部材27のスライド軸部37を筒長さ方向L1にスライド移動可能に挿通する摺動孔部45を備えた受け部47と、水平方向軸49を介して受け部47を上下方向に回動可能に軸支するとともに、胸部骨格7a(胴部1)の水平板部7e上にて鉛直方向軸51を中心に水平方向H1にてR1で示す方向に回動可能に軸支された支持部53とで構成されている(図3乃至図7参照。)。摺動孔部45は、スライド軸部37を孔内にて回動可能に摺接させる。
【0027】
受け部47の摺動孔部45は、スライド軸部37を挿通させて組み込み、スライド軸部37の基端側(円板部35との境界)が孔部入口45a側に当接した時に、スライド軸部37の他端側(遊端側)領域が、孔部出口45b側から所定長さ突出する孔長さ(深さ)に設計されている(図3及び図5参照。)。水平方向軸49は、受け部47の外周の相対向する位置で水平方向に突設した短尺円筒状に構成されている(図3図6及び図7参照。)。
【0028】
支持部53は、底板部55と、底板部55の相対向する辺から連続して立ち上げられた二片の縦板部57,57とで断面視U字形状に構成されている(図3乃至図7参照。)。底板部55は鉛直方向軸51を一体に垂設しており、鉛直方向軸51は、胸部骨格7aの水平板部7eに対して回動可能に連結されている(図6及び図7参照。)。従って、支持部53は、水平板部7e上で水平方向H1にてR1で示す方向に回動可能に構成されている(図3及び図4参照。)。
それぞれの縦板部57,57の外側面部には、同軸水平状に円柱状のガイド突起部59,59が設けられている。また、ガイド突起部59の鉛直方向T1で上方の領域には受け部47の水平方向軸49を摺動可能に挿通する通孔61,61が形成されている。従って、受け部47は、水平方向軸49を軸中心として鉛直方向T1(上下方向)にてR2で示す方向に回動可能である(図6及び図7参照)。
【0029】
本実施形態においてスライド軸部37の他端側は、摺動孔部45の出口45b側から所定距離離れた位置に抜け止め部63を備えることにより、摺動孔部45の出口45b側から抜け止め部63までの間の移動許容領域A2を設けている(図3及び図5参照。)。
【0030】
抜け止め部63は、スライド軸部37の他端側の外周領域に設けた孔部37cに差し込まれた抜け止め軸65によって構成されている。
【0031】
抜け止め軸65は、細棒状に形成されると共に、スライド軸部37の外面から所定長さ突出するように構成されている(図2乃至図7参照。)。
【0032】
なお、抜け止め軸65の突出している部位(突出部)は、図示の通りスライド軸部37の外面から一つだけ突出しているが、抜け止め軸65をスライド軸部37の最大直径よりも長く形成してスライド軸部37の外面の相対向する位置からそれぞれ突出するように構成することであってもよく本発明の範囲内である。また、スライド軸部37の他端側の外周領域に周方向に連続した周溝を形成すると共に、周溝深さよりも径の大きいO型のリングを嵌め込み、そのリングの外周をスライド軸部37の外周より突出させる構成であってもよい。また、スライド軸部37の外周の一部または全部を一体に突出形成する構成であってもよく、本発明の範囲内で適宜設計変更である。
さらに、移動許容領域A1の広狭は、抜け止め軸65の配設位置をスライド軸部37の軸方向にずらすことによって適宜変更することも可能である。
【0033】
上述した構成を有することにより、次のような作用効果を発揮する。
【0034】
上腕21と一体に配設された第一部材27のスライド軸部37が、胴部1側(水平板部7e上)に一体に配設された第二部材43の受け部47の摺動孔部45内を筒部長さL1方向にスライド移動するように構成したため、腕部15(肩部)の可動範囲が広くなる。すなわち、胴部1(胸部7)から離れる方向に腕部15を移動させることができるため、上腕21の上端と胸部7の側面との間に隙間が形成されることとなる。従って、腕部15を胸部7の前方に向けて回動させて水平方向H1に動かそうとしたときに、上腕21の上端が胸部7の側面に当接し難くなるため水平方向H1の回動範囲が広くなる。
【0035】
また、胸部骨格7aの水平板部7e上にて支持部53が水平方向H1にて、R1で示す方向に回動し得るため、上述したスライド軸部37のスライド移動とともに腕部15(肩部)の可動範囲を広くすることができる。
さらに、受け部47が鉛直方向T1(上下方向)にてR2で示す方向に回動可能に構成されているため、上述したスライド軸部37のスライド移動及び支持部53の水平方向回動(R1で示す方向に回動)とともに、腕部15(肩部)の可動範囲を広くすることができる。
【0036】
可動領域を大きくできたとしても、内部の骨格構造(関節構造)が外方から見えてしまうと外観的な美観を損ねてしまう虞もあり好ましくない。
そこで本実施形態では、肩関節部25は、上腕21の第一部材27の上端と、上腕21の第一部材27の上端が対向する第二部材43(胴部1の上腕対向領域A1)との間に配される肩カバー部67によって被覆されて外方から直視され難い構成を採用した(図1乃至図7参照。)。
【0037】
肩カバー部67は、肩関節部25の動きに追随して可動するように構成されている。その構成の一例を説明する。
肩カバー部67は、第一部材27の上端領域と胸部外皮7bとの間から視認可能な第二部材43を覆い隠すことができる略逆U字形状に構成されるとともに、相対向する内面部には、第二部材43の支持部53から突設されているガイド突起部59,59を摺動可能に挟持するスライド摺動部69,69が設けられている。スライド摺動部69は、ガイド突起部59,59が摺接可能な幅で所定長さに突設された平行な二つの板部71,71間に形成されている(図6及び図7参照。)。
【0038】
従って、肩カバー部67は、スライド摺動部69,69内に支持部53のガイド突起部59,59が摺動可能に位置しているため、支持部53の縦板部57の外側にて、縦板部57の面部に沿って水平方向H1にスライド移動可能である。
また、スライド摺動部69,69内にガイド突起部59,59が挟持されるように位置しているため、支持部53が鉛直方向軸51を回転中心として水平方向H1にてR1で示す方向に回動した場合、その動きに追随して肩カバー部67も連動する。
すなわち、腕部15を回動させると肩カバー部67も連動するように可動し、その内部骨格である肩関節部25を外方から直視し難くしている。
【0039】
本実施形態では、胸部骨格7aと腹部骨格5aとの間に特徴的な連結構造を有している。
胸部骨格7aと腹部骨格5aとは、鉛直方向T1と直交する水平方向H1に回動可能な抜脱防止機構73を介して連結されている。胸部骨格7aと腹部骨格5aとは、水平方向H1に回動可能に連結されることによって可動範囲を広くしている。しかし、胸部骨格7aと腹部骨格5aとが単に連結されているだけであると抜け脱れてしまう虞もある。また、抜け外れを防止するためにネジ止めしてしまうと回動作動を抑えてしまう。そこで、回動可能に連結しつつ抜け止めを阻止し得る構造が求められている。
【0040】
本実施形態の抜脱防止機構73は、腹部骨格5aの円柱状の連結部5cと、胸部骨格7aの本体部7dの挿入孔部7cとの連結構造に特徴を有している。具体的には、次のとおりである。
【0041】
連結部5cには、長さ方向中央領域に周方向に連続する凹周溝75が形成されている。
挿入孔部7cと相対向する本体部7dの外面には、挿入孔部7cに連通するねじ孔77が形成されている。ねじ孔77は、連結部5cを挿入孔部7c内に摺動自在に挿入完了した際に、凹周溝75と相対向する位置に形成されている。ねじ孔77には、本体部7dの外面側からねじ部79が螺合され、ねじ部79の先端は挿入孔部7c内に臨み、凹周溝75の溝内に位置している。ねじ部79の先端は、凹周溝75に摺接していても摺接していなくても本発明の範囲内である。
【0042】
本実施形態の腹部骨格5aと胸部骨格7aとは、ねじ部79の先端が、胸部骨格7aの挿入孔部7cに挿入された連結部5cの凹周溝75内に臨んでいるため連結部5cが挿入孔部7c内で水平方向H1に回動(R3で示す方向に回動)し、かつ鉛直方向T1の抜脱が阻止可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、種々の可動人形の関節構造に利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 胴部
3 腰部
5 腹部
7 胸部
15 腕部
17 下腕
21 上腕
25 肩関節部
27 第一部材
37 スライド軸
43 第二部材
45 摺動孔部
47 受け部
53 支持部
59 ガイド突起部
63 抜け止め部
67 肩カバー部
69 スライド摺動部
73 抜脱防止機構
A1 上腕対峙領域
A2 移動許容領域
H1 水平方向
L1 筒長さ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10