(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083694
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】小動物捕獲用ホットメルト組成物
(51)【国際特許分類】
A01M 23/00 20060101AFI20240617BHJP
C09J 123/00 20060101ALI20240617BHJP
C09J 123/20 20060101ALI20240617BHJP
C08L 23/20 20060101ALI20240617BHJP
C08L 23/10 20060101ALI20240617BHJP
A01M 1/14 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
A01M23/00 A
C09J123/00
C09J123/20
C08L23/20
C08L23/10
A01M1/14 A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197639
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤野 達也
【テーマコード(参考)】
2B121
4J002
4J040
【Fターム(参考)】
2B121AA02
2B121BA01
2B121EA01
2B121FA20
4J002BB122
4J002BB142
4J002BB152
4J002BB171
4J002GJ01
4J040BA182
4J040JB01
4J040JB09
4J040KA28
4J040KA31
4J040LA01
4J040LA02
4J040LA11
4J040MA05
4J040MA10
4J040NA05
4J040NA12
(57)【要約】
【課題】 溶融粘度が適度であることから作業性が高く、引張特性やボールタック性が良好であることから小動物を捕獲し易く、短時間で固化しやすいため生産性が向上しており、耐熱性に優れていることから夏季における輸送にも対応している小動物捕獲用ホットメルト組成物を提供する。
【解決手段】 ポリブテン(A)と、結晶性オレフィン系エラストマー(B)と、を含有し、結晶性オレフィン系エラストマー(B)は、軟化点が100℃以上であり、ヤング率(ASTM D638)が100MPa以下であることを特徴とする小動物捕獲用ホットメルト組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブテン(A)と、結晶性オレフィン系エラストマー(B)と、を含有し、
結晶性オレフィン系エラストマー(B)は、軟化点が100℃以上であり、ヤング率(ASTM D638)が100MPa以下であることを特徴とする小動物捕獲用ホットメルト組成物。
【請求項2】
結晶性オレフィン系エラストマー(B)のメルトフローレート(ASTM D1238、230℃)が、0.01~50g/10minであることを特徴とする請求項1記載の小動物捕獲用ホットメルト組成物
【請求項3】
さらに、軟化点が90℃未満であるオレフィン系エラストマー(C)を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の小動物捕獲用ホットメルト組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小動物捕獲用ホットメルト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ホットメルト組成物は、無溶剤で環境に優しく、短時間で硬化可能で、非常に扱いやすい材料であることから、製造現場における作業環境を改善することが可能である。そのため、ホットメルト組成物は、自動車・電機などの精密分野のほか、建築分野など幅広く用いられている。
【0003】
過去に、出願人は、スチレン系ブロックコポリマー、熱変形温度若しくはガラス転移点が120℃以上のポリフェニレンエーテル樹脂または変性ポリフェニレンエーテル樹脂、非晶性ポリオレフィン、粘着付与樹脂並びに老化防止剤を少なくとも含有し、200℃での溶融粘度が30Pa・s以下であることを特徴とするホットメルト組成物を発明した(特許文献1)。この組成物は、ポリオレフィン系素材に対する密着性、接着性に優れるとともに、耐熱性、耐熱老化性が良好であり、しかも200℃付近での溶融粘度が低いことから、塗工性、吐出性が良好で作業性に優れるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【0005】
従来から、小動物を捕獲するために、ホットメルト組成物が好ましく用いられている。具体的には、繊維質素材やプラスチック素材からなる基材に、粘着性を有するホットメルト組成物を塗布して捕獲器を作製し、家具や建具の隙間など小動物の通路に設置する方法が挙げられる。
【0006】
現在、工業用として、各種のホットメルト組成物が提供されているが、例えば、特許文献1に記載されているような、スチレン系エラストマーを主成分とするホットメルト組成物の場合、一般的に、常温(23℃程度)において固体であり、粘着性が低いため、小動物捕獲用には適していないという問題点があった。また、捕獲器に塗布したホットメルト組成物の深部まで小動物の足が到達するような柔軟性と、容易に逃げられないようしっかりと小動物の足に絡みつくような凝集力や粘着性を両立する必要があった。さらに、夏季において、製造工場から小売店まで、車両や船舶などにより運搬する際に、長期間、高温環境下にさらされた場合でも、ホットメルト組成物が流れ出さないような耐熱性が要求されており、改善の余地があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、溶融粘度が適度であることから作業性が高く、引張特性やボールタック性が良好であることから小動物を捕獲し易く、短時間で固化しやすいため生産性が向上しており、耐熱性に優れていることから夏季における運搬にも対応している小動物捕獲用ホットメルト組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ポリブテン(A)と、結晶性オレフィン系エラストマー(B)と、を含有し、結晶性オレフィン系エラストマー(B)は、軟化点が100℃以上であり、ヤング率(ASTM D638)が100MPa以下であることを特徴とする小動物捕獲用ホットメルト組成物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかる小動物捕獲用ホットメルト組成物は、溶融粘度が適度であることから作業性が高く、引張特性やボールタック性が良好であることから小動物を捕獲し易く、短時間で固化しやすいため生産性が向上しており、耐熱性に優れていることから夏季における運搬にも対応しているという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<ポリブテン>
本発明では、ポリブテン(A)を用いる。当該(A)成分は、本発明にかかるホットメルト組成物の主成分である。当該(A)成分は、ナフサ分解により生成するイソブテンやノルマルブテンなどをカチオン重合することにより得ることができ、常温(23℃程度)において液状である、炭化水素系ポリマーである。
【0011】
当該(A)成分の数平均分子量(Mn)としては、比較的に低分子量のものを用いる必要があり、500~5,000であることが好ましく、650~4,000であることがさらに好ましく、800~3,000であることが特に好ましい。
【0012】
当該(A)成分の動粘度(100℃)としては、50~2,000mm2/sであることが好ましく、80~1,500mm2/sであることがさらに好ましく、100~1,000mm2/sであることが特に好ましい。
【0013】
当該(A)成分の具体例としては、日石ポリブテン HV-100(商品名、JXTG社製、Mn:980、動粘度(100℃):220mm2/s)、日石ポリブテン HV-300(商品名、JXTG社製、Mn:1,400、動粘度(100℃):590mm2/s)、)、Indopol H-100(商品名、INEOS社製、Mn:910、動粘度(100℃):200~235mm2/s)、Indopol H-300(商品名、INEOS社製、Mn:1,400、動粘度(100℃):605~655mm2/s)などが挙げられる。
【0014】
<結晶性オレフィン系エラストマー>
本発明では、結晶性オレフィン系エラストマー(B)を用いる。一般に、オレフィン系エラストマー(B)の種類としては、プロピレンのホモポリマーの他、プロピレンと、エチレン・1-ブテン・1-ヘキセンなどから選択されるモノマーとのコポリマー又はターポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、ホットメルト組成物の安定性が向上することから、結晶性ポリマーを用いることが好ましく、その化学構造としては、プロピレンホモポリマー、又はエチレン-プロピレンコポリマーを用いることが好ましい。
【0015】
当該(B)成分の軟化点としては、100℃以上である必要があり、100~180℃であることが好ましく、105~170℃であることがより好ましく、110~160℃であることがさらに好ましく、115~150℃であることが特に好ましい。
【0016】
また、当該(B)成分のヤング率(ASTM D638)としては、100MPa以下である必要があり、0.1~80MPaであることが好ましく、1~60MPaであることがより好ましく、3~45MPaであることがさらに好ましく、5~30MPaであることが特に好ましい。これらの範囲内であることにより、本発明にかかるホットメルト組成物について、凝集力や耐熱性を向上させることが可能となる。
【0017】
当該(B)成分のメルトフローレート(ASTM D1238、230℃)としては、0.01~50g/10minであることが好ましく、0.1~35g/10minであることがさらに好ましく、0.5~20g/10minであることが特に好ましい。
【0018】
当該(B)成分の配合割合としては、上記(A)成分100重量部に対して、0.01~30重量部配合することが好ましく、0.05~20重量部配合することが好ましく、0.1~15重量部配合することがより好ましく、0.5~10重量部配合することが特に好ましい。
【0019】
当該(B)成分の具体例としては、例えば、結晶性プロピレンホモポリマーとして、タフマー PN-2070(商品名、三井化学社製、軟化点:125℃、ヤング率:14MPa、メルトフローレート(ASTM D1238、230℃):7.0g/10min)、タフマー PN-3560(商品名、三井化学社製、軟化点:135℃、ヤング率:11MPa、メルトフローレート(ASTM D1238、230℃):6.0g/10min)、タフマー PN-2060(商品名、三井化学社製、軟化点:120℃、ヤング率:22MPa、メルトフローレート(ASTM D1238、230℃):6.0g/10min)などが挙げられる。
【0020】
そして、本発明にかかるホットメルト組成物においては、本発明の効果を損なわない範囲内で、その他の化学物質を配合することができる。
【0021】
本発明では、上記(B)成分とは異なるオレフィン系エラストマーを用いることができ、例えば、軟化点が90℃未満であるオレフィン系エラストマー(C)が挙げられる。当該(C)成分の軟化点としては、90℃未満であることが好ましく、85℃以下であることがさらに好ましく、80℃以下であることが特に好ましい。当該(C)成分を配合することにより、溶融粘度を調整することができるため、作業中の気温に応じて、塗布性を向上させることが可能となる。
【0022】
当該(C)成分の配合割合としては、上記(A)成分100重量部に対して、0.01~30重量部配合することが好ましく、0.1~25重量部配合することが好ましく、1~20重量部配合することが特に好ましい。
【0023】
当該(C)成分の具体例としては、例えば、エチレン-プロピレンコポリマーとして、Vistamaxx 3020FL(商品名、ExxonMobil社製、軟化点:67℃、エチレン含有割合:11重量%)、Vistamaxx 6102FL(商品名、ExxonMobil社製、軟化点:53.9℃、エチレン含有割合:16重量%)、Vistamaxx 6202FL(商品名、ExxonMobil社製、軟化点:45.2℃、エチレン含有割合:15重量%)などが挙げられる。
【0024】
また、本発明では、例えば、ワックスを用いることができる。当該成分を用いることにより、可塑性が向上する傾向がある。ワックスの種類としては、天然ワックスや合成ワックスがあり、天然ワックスとしてはパラフィンワックスやマイクロワックスなどが、合成ワックスとしてはポリエチレンワックスやポリプロピレンワックスなどが挙げられる。これらのワックスは変性されたものであっても構わない。
【0025】
当該成分の配合割合としては、上記(A)成分100重量部に対して、0.01~30重量部配合することが好ましく、0.1~20重量部配合することが好ましく、1~10重量部配合することが特に好ましい。
【0026】
当該成分の具体例としては、hiwax 200P(商品名、三井化学社製、ポリエチレンワックス)、ビスコール 660P(商品名、三洋化成工業社製、ポリプロピレンワックス)、ユーメックス 1010(商品名、三洋化成工業社製、無水マレイン酸変性ポリプロピレンワックス)などが挙げられる。
【0027】
本発明では、例えば、粘着付与剤を用いることができる。当該成分を用いることにより、被着体表面の濡れ性が高くなることから、層間の密着性を向上させることができる。当該成分の種類としては、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、ロジン系樹脂、及びその水添物又は変性物などが挙げられる。
【0028】
本発明では、例えば、老化防止剤を用いることができる。当該成分の種類としては、亜リン酸塩系、ナフチルアミン系、p-フェニレンジアミン系、キノリン系、ヒドロキノン系、ビス・トリス・ポリフェノール系、チオビスフェノール系、ヒンダードフェノール系などが挙げられ、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。当該成分の具体例としては、Sumilizer GP(商品名、住友化学社製)、Songnox 1010(製品名、Songwon社製)などが挙げられる。
【0029】
その他、本発明にかかるホットメルト組成物においては、炭酸カルシウム、タルク、クレーなどの充填材や、酸化防止剤、防腐剤、水分吸収剤などの各種添加剤が含まれていても良い。
【0030】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定されるものではない。
【実施例0031】
<実施例及び比較例>
表1に示す配合において、セパラブルフラスコにより、190℃にて十分に撹拌・混合し、実施例及び比較例のホットメルト組成物を得た。ここで、表1における数値は、重量部を表すものとする。以下に、使用した原材料を示す。
Indopol H-300(商品名、INEOS社製、Mn:1,400、動粘度(100℃):605~655mm2/s、ポリブテン)
タフマー PN-2070(商品名、三井化学社製、軟化点:125℃、ヤング率:14MPa、メルトフローレート(ASTM D1238、230℃):7.0g/10min、結晶性プロピレンホモポリマー)
Vistamaxx 6102FL(商品名、ExxonMobil社製、軟化点:53.9℃、エチレン含有割合:16重量%、エチレン-プロピレンコポリマー)
Aerafin 17(商品名、Eastman社製、軟化点:120~140℃、非晶性ポリアルファオレフィン)
ENGAGE 7256(商品名、DOW社製、軟化点:76℃以下、結晶性エチレン-ブテンコポリマー)
hiwax 200P(商品名、三井化学社製、ポリエチレンワックス)
Songnox 1010(商品名、Songwon社製、老化防止剤)
【0032】
【0033】
上記の実施例等にて得られたホットメルト組成物について、以下の物性評価を行なった。この結果を表2に示す。
【0034】
<溶融粘度>
ホットメルト組成物を150℃にて溶融させ、ブルックフィールド粘度計により、測定温度:150℃、スピンドルNo.21、回転数:20rpmにて、10分間静置させた後、回転を開始し、10分後の溶融粘度(mPa・s)を測定した。溶融粘度が350~1,000mPa・sであれば、作業性が良好である。
【0035】
<引張特性>
直径33mm、深さ10mmのプラスチック製容器に、150℃にて溶融させたホットメルト組成物を2.5g注ぎ、温度23℃・湿度50%にて24時間養生させ、試験片を作製した。次に、万能引張試験機に試験片をセットし、頭部直径5mmのステンレス製釘の頭部を試験片に接触させた。5秒経過後に引張速度800mm/minにて試験を開始し、破断時の最大応力(N)及びその伸び(mm)を測定した。最大応力が0.75N以上であれば凝集力に優れており、その伸びが200mm以上であれば柔軟性に優れているため好ましい。
【0036】
<ボールタック性>
ホットメルト組成物を150℃にて溶融させ、PETフィルムに対し、厚み1mmとなるよう塗工し、温度23℃・湿度50%にて2時間養生させた。その後、ガラス板の表面にPETフィルムを固定し、塗工面に1/2インチ剛球を載せ、20秒経過後に30°に傾け、5分経過後に剛球が転がった距離(mm)を測定した。当該測定値が、25mm以上80mm以下であれば、凝集力と粘着性のバランスに優れており好ましい。
【0037】
<固化時間>
ホットメルト組成物を160℃にて溶融させ、PETフィルムに対し、幅が2mmとなるように直線状にビード塗布した後、25秒間静置した。その後、PETフィルムを垂直にし、ホットメルト組成物の垂れについて目視にて観察し、ホットメルト組成物の垂れが発生しなかったものを〇、垂れが発生したものを×と評価した。垂れが発生しなければ、生産性に優れており好ましい。
【0038】
<耐熱性>
ホットメルト組成物を160℃にて溶融させ、PETフィルムに対し、塗布量125g/m2となるよう塗布し、温度23℃・湿度50%にて24時間養生させた。その後、25mm×25mm×10mmtのPP板を載置し、70℃に設定した恒温機において、このPET試験体を垂直に立て掛け、24時間静置した。その後、PP板のずれについて目視にて観察し、ずれが発生しなかったものを〇、ずれが発生したものを×と評価した。ずれが発生しなければ、耐熱性に優れており好ましい。
【0039】