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特開2024-83705高周波対応基板用フィルム及び高周波対応基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083705
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】高周波対応基板用フィルム及び高周波対応基板
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/34 20060101AFI20240617BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240617BHJP
   B32B 15/088 20060101ALI20240617BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
B32B27/34
B32B27/00 A
B32B15/088
H05K1/03 610H
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197661
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】591145335
【氏名又は名称】パナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135758
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高志
(74)【代理人】
【氏名又は名称】玉城 信一
(72)【発明者】
【氏名】山崎 健史
(72)【発明者】
【氏名】瀧 一晃
(72)【発明者】
【氏名】池田 剛
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AB17C
4F100AH06B
4F100AK02A
4F100AK49B
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100DD07B
4F100EH71
4F100EJ54
4F100EJ65B
4F100EJ67B
4F100GB43
4F100JB14
4F100JG05
4F100JK06B
4F100JK15B
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】金属層との間で良好な密着性を発揮し、27GHz以上の高周波においても低誘電特性を実現できる高周波対応基板用フィルムを提供する。
【解決手段】樹脂フィルムと、該樹脂フィルムの少なくとも一方の面にプライマー層を有する、27GHz以上の高周波通信に対応可能な高周波対応基板用フィルムであって、前記プライマー層が、特定の構造を含むビスマレイミド化合物を含む高周波対応基板用フィルムである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムと、該樹脂フィルムの少なくとも一方の面にプライマー層を有する、27GHz以上の高周波通信に対応可能な高周波対応基板用フィルムであって、
前記プライマー層が、
下記式(1)で表されるビスマレイミド化合物を含む高周波対応基板用フィルム。
【化1】

(上記式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に、炭素数10~50の飽和若しくは不飽和の2価の炭化水素基を示し、nは1~10の整数を示す。)
【請求項2】
前記プライマー層がシランカップリング剤を含む請求項1に記載の高周波対応基板用フィルム。
【請求項3】
前記プライマー層が、シランカップリング処理が施されたシランカップリング処理済みプライマー層である請求項1に記載の高周波対応基板用フィルム。
【請求項4】
前記プライマー層の厚みが、0.5~7μmである請求項1又は2に記載の高周波対応基板用フィルム。
【請求項5】
前記プライマー層表面の平均粗さRzが、0.5μm以下である請求項1又は2に記載の高周波対応基板用フィルム。
【請求項6】
前記樹脂フィルムが、シクロオレフィンポリマーである請求項1又は2に記載の高周波対応基板用フィルム。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の高周波対応基板用フィルムの前記プライマー層上に、金属層が形成されてなる高周波対応基板。
【請求項8】
前記金属層と前記高周波対応基板用フィルムの樹脂フィルムとの剥離強度が、5N/cm以上である請求項7に記載の高周波対応基板。
【請求項9】
前記金属層がパターニングされてなる請求項7に記載の高周波対応基板。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波対応基板用フィルム及び高周波対応基板に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話や情報機器端末等の通信用途で使用される信号の周波数は、現在6GHz以下(sub6帯)であるが、今後、27GHz以上の周波数が使用される。そこで、27GHz以上の高周波用途で使用される樹脂フィルムには、誘電率3.5以下、誘電正接0.004以下の低誘電特性が必要とされる。しかし、誘電率の低い材料(例えば、PFA、PTFE、COP等)は、従来から用いられているPET及びPIに比べると難接着性樹脂である。
【0003】
例えば、特許文献1では、めっき層とプライマーインク層の間のアンカー効果による密着強度を確保しつつ、プライマーインク層と非導電性基材との密着強度を確保できるめっき層を有する成形品の製造方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-157158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のようにベースとなる樹脂層と金属の密着性を得るために、ベースとなる樹脂層の表面に凹凸を作り、表面積を大きくする方法が知られている。しかし6GHz以上の周波数帯においては表皮効果が大きくなるため、伝送損失も大きくなってしまう。
【0006】
すなわち、信号の高速化及び高周波数化に伴い、高周波数領域での低誘電特性が求められる中、当該低誘電特性を達成しながら、密着性をも良好に維持することは非常に困難であった。
【0007】
以上から、本発明は上記に鑑みてなされたものであり、金属層との間で良好な密着性を発揮し、27GHz以上の高周波においても低誘電特性を実現できる高周波対応基板用フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、下記本発明により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。すなわち本発明は下記のとおりである。
【0009】
[1] 樹脂フィルムと、該樹脂フィルムの少なくとも一方の面にプライマー層を有する、27GHz以上の高周波通信に対応可能な高周波対応基板用フィルムであって、
前記プライマー層が、下記式(1)で表されるビスマレイミド化合物を含む高周波対応基板用フィルム。
【0010】
【化1】
【0011】
上記式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に、炭素数10~50の飽和若しくは不飽和の2価の炭化水素基を示し、nは1~10の整数を示す。
【0012】
[2] 前記プライマー層がシランカップリング剤を含む[1]に記載の高周波対応基板用フィルム。
[3] 前記プライマー層が、シランカップリング処理が施されたシランカップリング処理済みプライマー層である[1]に記載の高周波対応基板用フィルム。
[4] 前記プライマー層の厚みが、0.5~7μmである[1]~[3]のいずれか1つに記載の高周波対応基板用フィルム。
[5] 前記プライマー層表面の平均粗さRzが、0.5μm以下である[1~[4]のいずれか1つに記載の高周波対応基板用フィルム。
[6] 前記樹脂フィルムが、シクロオレフィンポリマーである[1]~[5]のいずれか1つに記載の高周波対応基板用フィルム。
[7] [1]~[6]のいずれか1つに記載の高周波対応基板用フィルムの前記プライマー層上に、金属層が形成されてなる高周波対応基板。
[8] 前記金属層と前記高周波対応基板用フィルムの樹脂フィルムとの剥離強度が、5N/cm以上である[7]に記載の高周波対応基板。
[9] 前記金属層がパターニングされてなる[7]又は[8]に記載の高周波対応基板。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、金属層との間で良好な密着性を発揮し、27GHz以上の高周波においても低誘電特性を実現できる高周波対応基板用フィルムを提供することができる。
なお、本明細書において、「低誘電特性」とは、27GHzでの誘電率が3.5以下であり、誘電正接が0.004以下であることをいう。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態(本実施形態)に係る高周波対応基板用フィルム及び高周波対応基板について説明する。
【0015】
[高周波対応基板用フィルム]
本実施形態に係る高周波対応基板用フィルムは、樹脂フィルムと、その樹脂フィルムの少なくとも一方の面にプライマー層を有する、27GHz以上の高周波通信に対応可能な高周波対応基板用フィルムである。そして、上記プライマー層が、下記式(1)で表されるビスマレイミド化合物を含む。
【0016】
【化2】
【0017】
上記式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に、炭素数10~50の飽和若しくは不飽和の2価の炭化水素基を示し、nは1~10の整数を示す。
【0018】
上記飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれの構造であってもよい。R及びRはそれぞれ独立に飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基であることで、芳香族基の場合に比べて金属層との密着性をより向上させることができる。これは、マレイミド基の近傍等に芳香族骨格があるとこれが障害になって、めっきの触媒となるパラジウムが吸着しにくくなるためと推察される。
【0019】
上記飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基は、低誘電性の観点から、直鎖状であることが好ましく、炭素数は20~40であることが好ましい。また、RとRとは同一の構造であることが好ましい。
【0020】
本実施形態に係るビスマレイミド化合物の重量平均分子量(Mw)は、500~30000であることが好ましく、1000~30000であることがより好ましく、1500~30000であることがさらに好ましい。
【0021】
なお、ビスマレイミド化合物の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(溶離液:テトラヒドロフラン、測定温度:30℃)により測定することができる。
【0022】
本実施形態に係る高周波対応基板用フィルムにおいては、プライマー層がシランカップリング剤を含むシランカップリング剤含有プライマー層であるか、又は、プライマー層がシランカップリング剤によりシランカップリング処理の施されたシランカップリング処理済みプライマー層であることが好ましい。
【0023】
シランカップリング剤含有プライマー層である場合、シランカップリング剤の橋渡し効果により更にめっきとの密着性を向上させることができる。
【0024】
シランカップリング剤含有プライマー層に含有されるシランカップリング剤としては、末端に、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリル基、アクリル基、アミノ基、イソシアヌレート基、ウレイド基、メルカプト基、イソシアネート基、カルボキシル基、及びヒドロキシル基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基と、少なくとも1つのアルコキシシリル基を有するシランカップリング剤が挙げられ、なかでも、金属イオンとの配位しやすさ等の観点から、末端にアミノ基を有し、かつアルコキシシリル基を有するアミノシランカップリング剤が好ましく、末端にアミノ基を有し、かつアルコキシシリル基を有し、さらにトリアジン骨格を有するトリアジン系シランカップリング剤がより好ましい。
【0025】
なお、エポキシ基を有するエポキシ系シランカップリング剤を用いると、樹脂フィルムとの密着性を向上させることができるため、エポキシ系シランカップリング剤単独もしくはトリアジン系シランカップリング剤とともにエポキシ系シランカップリング剤を併用することが好ましい。
【0026】
上記トリアジン系シランカップリング剤としては、金属層との接着性をより向上させる観点から、下記式(2)で表されるものが好ましい。
【0027】
【化3】
【0028】
上記式(2)中、Rxは2価の飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基(好ましくは、炭素数1~20の飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基)であり、Ryはメチル基、エチル基、プロピル基のいずれかである。
【0029】
プライマー層がシランカップリング剤を含む場合、当該シランカップリング剤は、プライマー層中に0.1~3.5質量%含むことが好ましく、0.5~2質量%含むことがより好ましい。0.1~3.5質量%含むことで、無電解めっきの前処理工程Pd錯体との密着力が向上する。
【0030】
また、シランカップリング処理済みプライマー層である場合、シランカップリング処理の方法としては、シランカップリング剤を溶解した溶液にプライマー層を浸漬する方法等が挙げられ、なかでも、無電解めっきの前処理キャタリスト工程(Pd錯体付与)の前処理としてシランカップリング剤を溶解した液にプライマー層を浸漬することが好ましい。シランカップリング処理済みプライマー層であることで、Pd錯体との密着力を向上させることができる。
なお、シランカップリング剤としては、シランカップリング剤含有プライマー層で挙げられたものを使用することができる。
【0031】
本実施形態に係るプライマー層(シランカップリング剤含有プライマー層及びシランカップリング処理済みプライマー層)の厚みは、0.5~7μmであることが好ましく、0.7~5.5μmであることがより好ましい。0.5~7μmであることで、樹脂フィルム本来の外観を損なわずにめっきと良好に密着することができる。
【0032】
上記プライマー層の表面の平均粗さRzは、0.7μm以下であることが好ましく、0.015~0.5μmであることがより好ましく、0.01~0.45μmであることがさらに好ましい。表面の平均粗さが0.7μm以下であることで、表皮効果に起因する伝送損失をより少なくすることができる。
【0033】
プライマー層の表面の平均粗さRzを上記範囲とするには、固形分濃度を5~30%に調整した液をウェットコートが可能な装置を用いてコートすることが望ましい。コートにはグラビア技術を用いたコートやダイ技術を用いたコートが望ましい。なお、平均粗さRzは、後述の実施例に記載の方法により測定して求めることができる。
【0034】
既述の樹脂フィルムとしては、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、液晶ポリマー樹脂(LCP)、シンジオタクチックポリスチレン樹脂(SPS)等が挙げられ、なかでも、シクロオレフィンポリマー(COP)が好ましい。シクロオレフィンポリマーであることで、より低誘電性とすることができる。
【0035】
樹脂フィルムの厚みは、実用的な観点から、25~300μm程度であることが好ましい。
【0036】
本実施形態に係る高周波対応基板用フィルムは、まず、本実施形態に係るビスマレイミド樹脂を含む塗料に、溶媒を加え、固形分濃度を10~30質量%に調整してプライマー層形成用組成物を調製する。
シランカップリング剤含有プライマー層とする場合は、シランカップリング剤を所望の濃度となるように溶媒に溶解したシランカップリング剤溶液を、上記プライマー層形成用組成物に混合し、樹脂フィルム上に塗布、乾燥し硬化することで、高周波対応基板用フィルムをして作製する。乾燥後、紫外線照射装置を用いて紫外線を照射してプライマー層を硬化させると、より望ましい。
なお、プライマー層は、樹脂フィルムの片面だけに形成されていてもよく、両面に形成されていてもよい。
【0037】
また、シランカップリング処理済みプライマー層とする場合は、上記プライマー層形成用組成物を、樹脂フィルム上に塗布、乾燥し硬化することで、高周波対応基板用フィルムを作製する。乾燥後、紫外線照射装置を用いて紫外線を照射してプライマー層を硬化させるとより望ましい。
【0038】
その後、高周波対応基板とするための無電解めっきをする際に、シランカップリング剤を所望の濃度となるように溶解しためっき前処理液を用いる。このとき、シランカップリング剤としては、密着性と良好な外観を得る観点から、既述のトリアジン系シランカップリング剤を用いることが好ましい。
この前処理液を用いて無電解めっきの工程を行うことで、シランカップリング処理済みプライマー層が形成された高周波対応基板用フィルムを作製することができる。
【0039】
[高周波対応基板]
本実施形態に係る高周波対応基板は、既述の高周波対応基板用フィルムのプライマー層上に、金属層が形成されてなる。
【0040】
金属層としては、ニッケル、クロム、銅、及びこれらのいずれか1種以上を主成分とする合金等が挙げられる。金属層は、単層でも複数の層で構成されていてもよく、単層の場合は、銅もしくは銅を主成分(例えば、Cu:50質量%以上)とする銅合金で構成されていることが好ましい。
複数の層で構成されている場合は、ニッケル、クロム、及び、これらのいずれか1種以上を主成分(例えば、50質量%以上)とする合金で構成された第1の金属層と、第1の金属層上に形成された銅もしくは銅を主成分(例えば、Cu:50質量%以上)とする銅合金で構成された第2の金属層を含むことが好ましい。
【0041】
金属層が単層の場合、当該金属層はプライマー層にスパッタリング処理を行って形成することができる。この場合の金属層の厚みは、生産性や導電性の確保の観点から、0.01~4.0μmであることが好ましく、0.05~1.0μmであることがより好ましい。
【0042】
金属層が複数の層で構成されている場合、既述の第1の金属層は、プライマー層に無電解めっき等を行って形成されることが好ましい。この場合の第1の金属層の厚みは、生産性の観点から、0.01~1.0μmであることが好ましく、0.05~0.7μmであることがより好ましい。
【0043】
第1の金属層上に形成される第2の金属層は、第1の金属層に電解めっき等を行って形成されることが好ましい。この場合の第2の金属層の厚みは、生産性及び導電性の観点から、0.5~50μmであることが好ましく、1.0~38μmであることがより好ましい。
【0044】
金属層と高周波対応基板用フィルムの樹脂フィルムとの剥離強度は、5N/cm以上であることが好ましく、5.5~10N/cmであることが好ましい。剥離強度が5N/cmN/cmであることで、5~10μm幅のパターニングも可能にすることができる。
剥離強度は後述の実施例の「めっき密着力の測定」に記載の方法で求めることができる。
【0045】
本実施形態に係る高周波対応基板のL表色系におけるbは、0.1~2.0であることが好ましく、0.1~1.5であることがより好ましい。bが、0.1~2.0であることで、良好な透明性を発揮することが可能となり、例えば、樹脂フィルムが透明(例えば、COP)であれば、その透明性を生かすことができる。特に、タッチセンサー等の用途に好適となる。
は、例えば、本実施形態に係るプライマー層の厚みを5.5μm以下の範囲で適宜調整することで、所望の範囲にすることができる。なお、bは、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0046】
本実施形態に係る高周波対応基板は、金属層がパターニングされていることが好ましい。例えば、回路パターンがパターニングされていることで、プリント配線板として供することができる。
【0047】
本実施形態に係る高周波対応基板は、上記のようなプリント配線板とするための積層板に適用することが好ましい。
【実施例0048】
以下、本発明を下記の実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
(実施例1)
(1)プライマー層形成用組成物の調製
ビスマレイミド樹脂を含む塗料(昭和電工マテリアル(株)製SFR-2300MR-T)に、トルエンとメチルエチルケトン(MEK)を1:1の質量比で混合した溶媒を加え、固形分濃度20質量%に調整してプライマー層形成用組成物を調製した。
【0050】
(2)プライマー層の形成
プライマー層形成用組成物をCOPからなる樹脂フィルム(日本ゼオン社製ゼオノアZF16、厚み100μm)上にワイヤーバーで塗布し、100℃で1分間乾燥した。次いで紫外線照射装置を用いて照度700mW/cm、積算光量100mJ/cmの紫外線を照射してプライマー層を硬化し、プライマー付きフィルム(高周波対応基板用フィルム)とした。
【0051】
(実施例2~4)
(1)プライマー層形成用組成物の調製
ビスマレイミド樹脂を含む塗料(昭和電工マテリアル社製SFR-2300MR-T)に、トルエンとメチルエチルケトン(MEK)を1:1の質量比で混合した溶媒を加え、固形分濃度20質量%に調整し、シランカップリング剤(四国化成工業社製VD-5)を1-メトキシ-2-プロパノールに2.5質量%で溶解したシランカップリング溶液を表3の配合Aの濃度となるように混合してプライマー層形成用組成物を調製した。
実施例4の場合は、シランカップリング剤を1-メトキシ-2-プロパノールに6質量%で溶解したシランカップリング剤溶液を用いてプライマー層形成用組成物を調製した。
【0052】
(2)プライマー層の形成
実施例1と同様にして、上記プライマー層形成用組成物を用いて、プライマー付きフィルム(高周波対応基板用フィルム)とした。
【0053】
(実施例5)
シランカップリング剤として、VD-5をKBM603(信越化学工業社製)とした以外は実施例3と同様にしてプライマー層形成用組成物を調製した。
【0054】
(2)プライマー層の形成
実施例1と同様にして、プライマー付きフィルム(高周波対応基板用フィルム)とした。
【0055】
(比較例1,2)
ビスマレイミド樹脂を含む塗料(日本化薬社製MIR-3000-70MT)に、トルエンとメチルエチルケトン(MEK)を1:1の質量比で混合した溶媒を加え、固形分濃度20質量%に調整し、HP4032D(DIC社製)、LA7054(DIC社製)、2E4MZ(四国化成工業社製)を1-メトキシ-2-プロパノールに2.5質量%で溶解したシランカップリング溶液を表3の配合Bの濃度となるように混合してプライマー層形成用組成物を調製した。
【0056】
(2)プライマー層の形成
実施例1と同様にして、プライマー付きフィルムとした。
【0057】
以下に、本例で用いた材料の詳細を示す。
・SFR-2300MR-T:式(1)におけるnが1~10の整数であり、R及びRは直鎖状の炭素数36のアルキレン基のビスマレイミド化合物
・VD-5:式(2)に示されるトリアジン系シランカップリング剤でRxは炭素数1~15の脂肪族鎖であり、Ryはエチル基である。
・KBM603:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン
・MIR-3000-70MT:ビフェニルアラルキル型マレイミド樹脂(日本化薬社製)
・HP4032D:ナフタレン型エポキシ樹脂
・LA7054:フェノールノボラック型硬化剤
・2EAMZ:イミダゾール系硬化触媒
【0058】
各例で作製したプライマー付きフィルムについて、無電解銅めっき及び電解銅めっきを行って、基板(実施例の場合は、高周波対応基板)を作製し、各種測定を行った。結果を表3に示す。
【0059】
(3)無電解銅めっき
プライマー付きフィルムをアルカリ洗浄し、カチオン界面活性剤による処理(カチオン界面活性剤付与)及びアニオン界面活性剤による処理(アニオン界面活性剤付与)を行った。その後、パラジウム錯体による処理(パラジウム錯体付与)及びパラジウム触媒活性化の処理を行い、無電解銅めっきの処理を行った。各処理は、表1の通り各工程の処理液にプライマー付きフィルムを浸漬して行い、無電解銅めっきフィルムを作製した。無電解銅めっき層の表面抵抗率は0.3Ω/□であった。また、無電解銅めっき層の厚みは、0.05μmであった。
なお、無電解銅めっき後のめっき外観について、目視により観察を行った。結果を下記の各表に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
(4)電解銅めっき
無電解銅めっきフィルムのめっき被膜を電極として、電解銅めっきを行ない、高周波対応基板用フィルムとした。銅めっき厚みは20μmとした。
なお、電解銅めっき液の配合は表2の通りとした。奥野製薬工業(株)のトップルチナSFの各種を光沢材として加えている。
【0062】
【表2】
【0063】
(5)めっき密着力の測定
上記高周波対応基板用フィルムをめっき密着力測定用フィルムとした。銅めっき層に5mm幅の切り込みを入れ、銅めっき側を剥離角度90度、剥離速度50mm/分で剥がしめっき密着力(金属層との密着性)を測定した。結果を下記の各表に示す。
規格はIPC-TM-650 2.4.9に準じ、ORIENTEC RTC-1250Aを用いて測定した。結果を下記の各表に示す。
【0064】
(6)bの測定
上記電解銅めっきを行った高周波対応基板用フィルムを塩化第二鉄のエッチング液で銅を溶かした後、bを多光源分光測色計MSC-P(スガ試験機株式会社製)を用いて測定した。結果を下記の各表に示す。
【0065】
(7)表面粗さ(Rz)の測定
高周波対応基板を40%塩化鉄溶液に浸漬し、めっき層を溶解して高周波対応基板用フィルムとした。露出したプライマー層の表面粗さを白色干渉計ZYGO New View7300(ZYGO Corporation製)にて測定した。結果を下記の各表に示す。
【0066】
(8)樹脂フィルムの誘電特性
樹脂フィルムの周波数28GHzにおける誘電率および誘電正接を、ベクトルネットワークアナライザ(品番N5247A、キーサイト・テクノロジー社製)とスプリットシリンダ共振器(品番CR728、EMラボ社製)を用いて測定した。なお、誘電率が3.5以下で、かつ、誘電正接が0.004以下の場合を合格とした。COPからなる樹脂フィルムの誘電特性は、誘電率2.3526、誘電正接0.00037であり合格であった。
【0067】
【表3】
【0068】
(実施例6~10)
プライマー層の厚みを表4のように変更した以外は、実施例3と同様にして、プライマー付きフィルム(高周波対応基板用フィルム)とした。
実施例1等と同様にして、無電解銅めっき及び電解銅めっきを行って、高周波対応基板を作製し、各種測定を行った。結果を表4に示す。
【0069】
【表4】
【0070】
(実施例11~14)
(1)プライマー層形成用組成物の調製及びプライマー層の形成
実施例1と同様にして、プライマー層形成用組成物を調製し、このプライマー層形成用組成物をCOPからなる樹脂フィルム(日本ゼオン社製ゼオノアZF16、厚み100μm)上に塗布し、乾燥し、紫外線を照射してプライマー層を硬化し、プライマー付きフィルム(高周波対応基板用フィルム)とした。
【0071】
(2)シランカップリング剤処理液の調製
VD-5(四国化成工業社製)は1-メトキシ-2-プロパノールと水を1:1の体積比率で混ぜた溶媒に所望の濃度で溶解したものを、KBM603(信越化学工業社製)は水に所望の濃度で溶解したものをそれぞれシランカップリング剤処理液とした。
(3)無電解銅めっき
プライマー付きフィルムをアルカリ洗浄し、カチオン界面活性剤による処理(カチオン界面活性剤付与)及びアニオン界面活性剤による処理(アニオン界面活性剤付与)を行なった。さらにシランカップリング剤処理液に25℃で2分浸漬した後、パラジウム錯体による処理(パラジウム錯体付与)及びパラジウム触媒活性化の処理を行い、無電解銅めっきの処理を行った。シランカップリング剤処理以外の工程については表3と同様に処理液にプライマー付きフィルムを浸漬して行い、無電解銅めっきフィルムを作製した。無電解銅めっき層の表面抵抗率は0.3Ω/□であった。また、無電解銅めっき層の厚みは、0.05μmであった。
これにより、無電解銅めっきが施され、シランカップリング処理が施されたシランカップリング処理済みプライマー層とした。
【0072】
その後、実施例1と同様にして、電解銅めっきを行って、基板(高周波対応基板)を作製し、各種測定を行った。結果を下記表に示す。
【0073】
【表5】