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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083706
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04L 7/00 20060101AFI20240617BHJP
【FI】
H04L7/00 930
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197664
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100171941
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 忠行
(72)【発明者】
【氏名】美麗 忠宗
【テーマコード(参考)】
5K047
【Fターム(参考)】
5K047DD01
5K047JJ02
(57)【要約】
【課題】それぞれの装置がクロック用の発振回路を備え、一方の装置から他方の装置へパケット送信を行う通信システムにおいて、簡易な構成で、クロックを同期させる。
【解決手段】無線機1において、アンテナ41付近に設けた高周波回路3から、室内などのコントローラ2へ音声信号のパケットデータを間欠送信するにあたって、高周波回路3は、相対的に高精度な発振回路30のクロック(f1)で生成したパケットを一定間隔で送信し、コントローラ2は、時間計測回路232を備え、該時間計測回路232は、相対的に低精度で周波数が可変である発振回路20のクロック(f2)によって受信した音声信号のパケットの間隔を計測し、その計測結果が前記一定間隔と同じになるようにして、発振回路20の発振周波数f2が発振回路30の発振周波数f1と一致するように調整する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロック用の発振回路をそれぞれ備え、該発振回路のクロック周波数によって、一方の装置から他方の装置へパケットの送信を行う通信システムにおいて、
前記パケットは、予め定める一定間隔のバースト状のデータであり、
前記一方の装置は、自身の前記発振回路のクロックを用いて、前記パケットを生成して前記他方の装置へ送信し、
前記他方の装置は、受信した前記パケットの間隔を自身の前記発振回路のクロックを用いて計測し、その計測結果が前記一定間隔となるように、自身の発振回路の周波数を調整する調整手段を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記一方の装置は前記クロックを共用する複数の送信回路を備え、対応して他方の装置も前記クロックを共有する複数の受信回路を備え、
前記一定間隔内に、前記複数の送受信回路間のパケットが時分割多元で嵌込まれ、前記調整手段は、1つの種類のパケットに対して、前記発振回路の周波数を調整することを特徴とする請求項1記載の通信システム。
【請求項3】
無線機を構成し、アンテナ近傍に設置される高周波回路と使用者側のコントローラとが、無線信号の受信時において前記一方の装置と他方の装置とを構成することを特徴とする請求項1記載の通信システム。
【請求項4】
前記一方の装置から他方の装置は、LANケーブルで接続されてイーサネット(登録商標)を構成しており、前記他方の装置は1または複数であることを特徴とする請求項1記載の通信システム。
【請求項5】
前記他方の装置はスピーカをさらに備え、
受信した前記パケットに音声データが含まれている場合は、逐次再生を行うことを特徴とする請求項1記載の通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線機、特にUHF帯やSHF帯のような高周波を扱うことができる無線機に好適であり、詳しくは、たとえばその高周波のために高周波回路をアンテナ近傍に設置し、使用者側に設置されるコントローラとの間の通信を実現するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一方の装置から他方の装置へパケット通信を行うにあたって、それぞれの装置がクロック用の発振回路を備える場合、パケットデータが、最終的に復元(再生)された際、逐次再生されるアナログ音声信号のように連続した信号であると、それらのクロックが同期している必要がある。すなわち、クロックがズレていると、パケットは届いたものの、たとえば他方の装置(受信側)のクロックが、遅いとデータが重複して音飛びが発生し、早いとデータが届かずに音切れ(抜け)が発生してしまう。
【0003】
そのようなクロックを同期させる典型的な手法は、たとえばPCI-eなどで使用されるPLLなどでクロックを捕捉する手法である。しかしながら、この手法では、高速データに対応できるものの、データは連続している必要があり、イーサネット(登録商標)などのパケットデータが散発的に発生するような環境では適用することができないという問題がある。
【0004】
一方、前記他方の装置のクロックを一方の装置のクロックに同期させる他の手法には、たとえばUART(RS-232C)などで使用されるように、データを高速で再(オーバー)サンプルして送信する手法もある。この手法は、動画をストリーミング配信する場合のように、データが連続せず、バースト状のデータで間欠送信される場合にも適用可能であるが、再サンプルには、装置の動作(送信すべきデータの)クロックの数倍から十数倍のクロック周波数が必要になり、高速データの送信には適さないという問題がある。
【0005】
また、前記UART(RS-232C)においては、たとえば特許文献1が提案されている。この従来技術は、再(オーバー)サンプルはしないものの、低精度な発振回路を有するスレーブ装置から高精度な発振回路を有するマスター装置にボーレート調整の要求をして、調整用のパルスを出してもらい、そのパルスを計数してボーレート(周波数)を調整している。したがって、パケットの間隔が開くと、都度、ボーレート(周波数)の調整が必要である。
【0006】
さらにまた、前記他方の装置のクロックと一方の装置のクロックとのズレを補償する手法として、たとえば受信側に大きなバッファを設け、逐次書込み/読出しを行うことで、クロックのズレを修正する手法もある。しかしながら、データにそのバッファ分の遅延が発生するとともに、書込みと読出しとの速度(周波数)が異なると、前述の音声データでの説明と同様に、読出しが、早くてデータが途切れたり、遅くてデータが重なったりするという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-175309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、一方の装置から他方の装置へバースト状のデータが間欠送信される通信システムにおいて、2つの装置のクロックを容易に同期させることができる通信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の通信システムは、クロック用の発振回路をそれぞれ備え、該発振回路のクロック周波数によって、一方の装置から他方の装置へパケットの送信を行う通信システムにおいて、前記パケットは、予め定める一定間隔のバースト状のデータであり、前記一方の装置は、自身の前記発振回路のクロックを用いて、前記パケットを生成して前記他方の装置へ送信し、前記他方の装置は、受信した前記パケットの間隔を自身の前記発振回路のクロックを用いて計測し、その計測結果が前記一定間隔となるように、自身の発振回路の周波数を調整する調整手段を備えることを特徴とする。
【0010】
上記の構成によれば、一方の装置から他方の装置へパケット送信を行う通信システムにおいて、それぞれの装置がクロック用の発振回路を備え、その発振回路のクロックを使用して前記パケット送信を行うにあたって、イーサネット(登録商標)のように、データが連続せず、バースト状のデータで間欠送信される場合に、本発明では、特にその間欠送信が、ストリーミング配信のように予め定める一定間隔で行われるようにし、前記他方の装置には、前記パケットの間隔を計測し、前記一定間隔となるように、該他方の装置内の発振回路の周波数を調整する調整手段を設ける。
【0011】
したがって、連続データを用いて受信側の他方の装置においてPLLなどでクロックを捕捉するようなことが困難な、間欠送信されるパケットデータであっても、前記一定間隔を規定しておくことで、前記調整手段によって、該他方の装置内のクロックを一方の装置内のクロックに同期させることができる。また、オーバーサンプルする場合のように、データ送信用のクロックをデータ処理用の装置内の動作クロックより不所望に高くする必要が無い。さらにまた、受信側に大きなバッファを設けたりする必要も無く、そのためデータの遅延も少なくすることができ、またパケットの抜けも無い。こうして、一方の装置から他方の装置へバースト状のパケットデータが間欠送信される通信システムにおいて、2つの装置のクロックを、一方の装置のクロックの精度で、容易に同期させることができる。
【0012】
また、本発明の通信システムでは、前記一方の装置は前記クロックを共用する複数の送信回路を備え、対応して他方の装置も前記クロックを共有する複数の受信回路を備え、前記一定間隔内に、前記複数の送受信回路間のパケットが時分割多元で嵌込まれ、前記調整手段は、1つの種類のパケットに対して、前記発振回路の周波数を調整することを特徴とする。
【0013】
上記の構成によれば、上述のように、送信側の一方の装置は1台であって、受信側の他方の装置が1または複数台あり、適宜、一方の装置からのパケットデータを受信するにあたって、送信側の一方の装置では、同じ発振回路のクロックを使用する送信回路を複数備え、それらからの複数の種類のパケットデータが同じ周期で時分割多元に送信される場合、受信側の他方の装置においても、複数の受信回路に同じ発振回路からのクロックを共用させ、いずれか1つの種類のパケットデータに対して、前記調整手段が発振回路の周波数を調整する。
【0014】
これによって、受信側の他方の装置内の複数の受信回路を同期させることができるとともに、構成を簡略化することができる。
【0015】
さらにまた、本発明の通信システムは、無線機を構成し、アンテナ近傍に設置される高周波回路と使用者側のコントローラとが、無線信号の受信時において前記一方の装置と他方の装置とを構成することを特徴とする。
【0016】
上記の構成によれば、無線機の場合、アンテナと高周波回路との間は同軸ケーブルで接続する必要があるが、その距離は短いことが望ましい。そこで、高周波回路をコントラーラとは別体としてアンテナの近傍に設けることで、性能を上げることができる。
【0017】
また、本発明の通信システムでは、前記一方の装置から他方の装置は、LANケーブルで接続されてイーサネット(登録商標)を構成しており、前記他方の装置は1または複数であることを特徴とする。
【0018】
上記の構成によれば、イーサネット(登録商標)は、多数の装置で通信回線が共有されており、所定の規定に従いパケット通信が行われる。その場合において、1対1または1対多であれば、上記の本発明の手法で、送信側の一方の装置のクロックを基準として、受信側の1または複数の他方の装置はクロックを同期させることができ、好適である。さらに、LANケーブルは引回しが容易である。
【0019】
さらにまた、本発明の通信システムでは、前記他方の装置はスピーカをさらに備え、受信した前記パケットに音声データが含まれている場合は、逐次再生を行うことを特徴とする。
【0020】
上記の構成によれば、一方の装置から他方の装置へ送信されるパケットに、最終的にスピーカで再生されるアナログ音声のデータが含まれている場合は、適宜バッファなどを介在して、間欠送信されるパケットから、逐次再生が行われるアナログ音声信号に復元(再生)される。しかしながら、装置間のクロックがズレていると、音飛びや音切れのような比較的良く目立つノイズが発生してしまうので、本発明のクロック同期のシステムは、特に有効である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の通信システムは、以上のように、一方の装置から他方の装置へパケット通信を行う通信システムにおいて、それぞれの装置がクロック用の発振回路を備え、その発振回路のクロックを使用して前記パケット通信を行うにあたって、バースト状のデータで間欠送信される場合に、その間欠送信が予め定める一定間隔で行われるようにし、前記他方の装置には調整手段を設け、この調整手段が前記パケットの間隔を計測し、前記一定間隔となるように、該他方の装置内の発振回路の周波数を調整する。
【0022】
それゆえ、PLLなどでクロックを捕捉するようなことが困難な間欠送信されるパケットデータであっても、クロックを同期させることができ、またオーバーサンプルする場合のように、データ送信用のクロックを不所望に高くする必要が無く、さらにまた受信側に大きなバッファを設けたりする必要も無い。こうして、一方の装置から他方の装置へバースト状のパケットデータが間欠送信される通信システムにおいて、2つの装置のクロックを容易に同期させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施の一形態に係る通信システムを採用する無線機の外観を模式的に示す図である。
図2】前記無線機の電気的構成を示すブロック図である。
図3】前記無線機におけるデータ通信およびクロック同期の様子を模式的に示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の実施の一形態の通信システムを採用する無線機1の外観を模式的に示す図である。この無線機1は、UHF帯やSHF帯等の高周波帯で使用可能な無線機として特に好適に実施される。そして、その高周波帯域に対応するために、該無線機1は、使用者側の室内などに設置されるコントローラ2と、アンテナ41と、そのアンテナ41の近傍に設置される高周波回路3とを備えて構成される。図1では、コントローラ2は、正面図で示している。本実施形態では、高周波回路3には、無線通信用のアンテナ端子411を備え、前記アンテナ41が同軸ケーブル412を介して接続される。
【0025】
図2は、前記無線機1の電気的構成を示すブロック図である。本発明の通信システムは、クロック用の発振回路30,20をそれぞれ備え、該発振回路30,20のクロック周波数f1,f2によって、一方の装置(3)から他方の装置(2)へ、バースト状のデータのパケット通信を行う通信システムに関する。図2の例は、無線信号の受信のための構成を示し、前記一方の装置としては高周波回路3が、他方の装置としてはコントローラ2が該当し、送信時の構成などは省略している。そして、相対的に高精度な高周波回路3内の発振回路30のクロックに、相対的に低精度で、周波数が可変であるコントローラ2内の発振回路20のクロックを同期させ、f1=f2とするものである。無線信号の送信時においては、発振回路20,30の精度が逆とされてもよいが、高周波回路3側には、アナログ回路34内に、発振回路30のクロックを基準として、搬送波を発生する局部発振回路(不図示)があるので、常に該高周波回路3内の発振回路30のクロックを基準として、コントローラ2内の発振回路20のクロックを調整し、送信に用いることが好ましい。
【0026】
前記受信時において、前記アンテナ41からの受信信号は、前記アナログ回路34において、フィルタリングや中間周波への変換などが行われ、アナログ/デジタル変換回路39で受信デジタル信号に変換されて、信号処理回路33に入力される。信号処理回路33は、たとえばFPGAおよびDSPで構成され、前記発振回路30のクロックを用いて、デジタル演算処理によって、最終的に、無線通信の音声信号Aと、音声以外のデータS(たとえば、受信信号レベルや回路電圧、位置情報など)を作成するものである。そのため、受信デジタル信号は、混合器331において、局部発振回路332からの局部発振信号と混合されてダウンコンバートされ、ローパスフィルタ333を介して音声成分が抽出された後、検波回路334においてデジタルデータの音声信号Aが作成される。
【0027】
一方、前記受信デジタル信号は、データ解析部335において、状態(たとえば、受信信号レベル)が解析され、CPUなどで実現される演算処理回路32において、その他の情報(前記回路電圧や位置情報など)と合せられて、前記音声以外のデータSが作成される。
【0028】
前記の検波回路334からの音声信号Aは、イーサネット(登録商標)のルーター31において、バースト状のデータのパケットに纏められて、予め定める一定間隔T1で、LANケーブル5を介して、コントローラ2側のルーター21に送信される。一方、前記演算処理回路32からの音声以外のデータSは、前記音声信号Aと同様に、ルーター31において、バースト状のデータのパケットに纏められるが、前記音声信号Aの一定間隔T1では発生せず、後述のように、離散的に、かつ任意タイミングで発生し、前記音声信号Aの無い期間に、時分割多元で、ルーター21に送信される。
【0029】
ルーター21では、前記音声信号Aおよび音声以外のデータSに分割されて、音声信号Aは信号処理回路23に入力され、音声以外のデータSは演算処理回路22に入力される。演算処理回路22は、CPUなどで実現され、前記音声以外のデータSから、表示信号を作成し、タッチパネル付きの液晶表示装置などで実現される表示・操作部27に表示させる。
【0030】
一方、信号処理回路23は、たとえばFPGAおよびDSPで構成され、その音声処理回路231が、前記発振回路20のクロックを用いて、デジタル演算処理によって、前記パケットデータから、デジタルの音声信号Aを復調し、復調された音声信号Aはデジタル/アナログ変換回路24においてアナログ信号に復号され、低周波アンプ25で増幅された後、スピーカ26から音響化される。
【0031】
上述のように構成される無線機1において、注目すべきは、図2の例では、一方の装置である送信側の高周波回路3から、他方の装置である受信側のコントローラ2へ、音声信号Aのパケットを送信するにあたって、それぞれの装置(3,2)がクロック用の発振回路30,20を備え、高周波回路3からの音声信号Aのパケットデータの送信には発振回路30のクロック周波数f1を用い、コントローラ2での音声信号Aのパケットデータの受信には発振回路20のクロック周波数f2を用いることである。そのため、前記LANケーブル5を介するイーサネット(登録商標)回線のように、データが連続せず、バースト状のデータで間欠送信される際にも、その間欠送信を、一方の装置(3)は自身の発振回路30のクロックを用いて予め定める一定間隔T1で行うようにし、加えて、他方の装置(2)においては、受信した音声信号Aのパケットの間隔T2を自身の発振回路20のクロックを用いて計測し、計測結果が一方の装置(3)から送信された音声信号Aのパケットの前記一定間隔T1と同じとなるように、該他方の装置(2)内の前記発振回路20のクロック周波数f2を調整する調整手段としての時間計測回路232が設けられることである。
【0032】
前記時間計測回路232は、前記音声処理回路231と共に、前記FPGAおよびDSPで構成される信号処理回路23内に実装される。発振回路20は、相対的に精度の低い可変周波数の発振器であり、クロック周波数f2の発振信号は前記信号処理回路23のクロックとして使用される。一方、前記高周波回路3内の発振回路30は、相対的に精度の高い発振器であり、予め定める一定のクロック周波数f1、たとえば60MHzで発振する。その発振回路30の発振信号は、信号処理回路33のクロックとして使用されるとともに、前記のアナログ回路34内の局部発振回路の基準信号となり、逓倍されて、周波数変換のための混合器に入力される。
【0033】
図3は、上述のような無線機1におけるデータ通信およびクロック同期の様子を模式的に示す波形図である。図2の例では、上述のように、一方の装置である高周波回路3(以下、送信側)と、他方の装置であるコントローラ2(以下、受信側)とが、LANケーブル5で接続されてイーサネット(登録商標)を構成する。高周波回路3側では、発振回路30のクロック周波数f1を用い、予め定める周期T1=a・(1/f1)(aは任意の整数で、たとえば十~数百)毎に、バースト状のデータで、検波回路334からは図3(a)で示すように、音声信号AのパケットA1,A2,・・・(以下、総称する際は、参照符号Aで示す)が送信され、演算処理回路32からは図3(b)で示すように、音声以外のデータSのパケットS1,S4,・・・(以下、総称する際は、参照符号Sで示す)が送信され、ルーター31によって、LANケーブル5へは、図3(c)で示すように時分割多元で送出される。したがって、共通のインターネット回線(5)を2ユーザが共有しているような状況に似ているが、一のユーザが、前記周期T1毎に必ず音声信号のパケットAを送信することになる。前記の通り、たとえばf1=60MHzと高い周波数であり、パケットAは、実際の音声データでは周期T1よりも充分短く、音声以外のデータのパケットSも、実際には短いが、理解し易くするために、時間幅を拡げて図示している。
【0034】
そして、通信開始当初や、通信途中であっても、温度変化や経年劣化などの原因により、発振回路20の周波数がズレ、f1=f2となるべきところ、f1≠f2となってしまうことがある。具体的には、送信側からは、図3のように、(a)の音声信号Aは、相対的に精度の高い発振回路30のクロックを用いて、(c)のように一定周期T1に送出されている。しかしながら、受信側では、相対的に精度の低い発振回路20のクロックを用いているので、時間計測回路232でカウント(計測)した周期T2が、=T1とならないことがある。図3(c)の区間1では、時間計測回路232は、発振回路20のクロック周波数f2’を用いて、受信側が受信したパケットA1の立上がり時点から次のパケットA2の立上がり時点までの時間(周期)をカウント(計測)し、その結果、周期T2が、T2’(=a・(1/f2’))=T1+Δ1となっている。すなわち、送信側で把握しているパケット周期T1と、受信側で計測したパケット周期T2’とにΔ1の差があり、カウント(計測)に用いた発振回路20のクロック周波数f2’と、基準となる発振回路30のクロック周波数f1とに、差があることを示している。そのため、時間計測回路232は、発振回路20のクロック周波数f2が、発振回路30のクロック周波数f1に一致するように、該発振回路20の周波数調整を行う。ここで、Δ1が正数の場合は、この区間1のカウント(計測)に用いたクロック周波数f2’がf1よりも高いため、発振回路20のクロック周波数f2を低くする調整を行い、Δ1が負数の場合は、この区間1のカウント(計測)に用いたクロック周波数f2’がf1よりも低いため、発振回路20のクロック周波数f2を高くする調整を行う。
【0035】
次に、区間2では、時間計測回路232は、区間1と同様に、パケットA2の立上がり時点から次のパケットA3の立上がり時点までの時間(周期)をカウント(計測)し、その結果、周期がT2”(=a・(1/f2”)) =T1+Δ2(|Δ2|<|Δ1| )となっている。すなわち、送信側で把握しているパケット周期T1と、受信側で計測したパケット周期T2”とにΔ2の差があり、カウント(計測)に用いた発振回路20のクロック周波数f2”と、基準となる発振回路30のクロック周波数f1とに、差(|f1-f2”|<|f1-f2’|)があることを示している。よって、区間1と同様に、時間計測回路232は、発振回路20のクロック周波数f2が、発振回路30のクロック周波数f1に一致するように、該発振回路20の周波数調整を行う。
【0036】
そして、区間3では、パケットA3の立上がり時点からパケットA4の立上がり時点までの時間(周期)をカウント(計測)し、その結果、T2'''(=a・(1/f2’ ’ ’)) =T1となっている。すなわち、送信側で把握しているパケット周期T1と、受信側で計測したパケット周期T2'''とに差がなく、f2’ ’ ’=f1に一致したことを表わしている。この場合、発振回路20の周波数調整は行わず、以後、時間計測回路232は、発振回路20を用いたパケット周期T2のカウント(計測)を行い続け、送信側のパケット周期T1と受信側の該パケット周期T2とが一致している、すなわちf1=f2が維持されている間は発振回路20の周波数調整は行わず、送信側のパケット周期T1と受信側のパケット周期T2とが一致しない、すなわちf1≠f2となった場合は、上記の手順で発振回路20の周波数調整を行う。
【0037】
このように構成することで、間欠送信されて、PLLなどでクロックを捕捉するようなことが困難な、比較的長時間の無信号状態が続くパケットデータ(A)であっても、予め前記一定間隔T1を規定しておくことで、時間計測回路232で、受信側のコントローラ2内のクロック(f2)を、送信側の高周波回路3内のクロック(f1)に同期させ、これらの高周波回路3およびコントローラ2を単一の回路として扱うことができるようになる。また、オーバーサンプルする場合のように、データ送信用のクロック(f1)をデータ処理用の装置内の動作クロック(f2)より不所望に高くする必要が無い。さらにまた、また受信側に大きなバッファを設けたりする必要も無く、そのためデータの遅延も少なくすることができ、またパケットの抜けも無い。また、前記時間計測回路232は、パケット(A)の間隔(T2)を計測するだけであるので、簡単な構成で周波数の調整を行うことができる。こうして、送信側の高周波回路3から受信側のコントローラ2へバースト状のデータ(A)が間欠送信される通信システムにおいて、これらの高周波回路3およびコントローラ2のクロック(f1,f2)を容易に同期させることができる。なお、時間計測回路232による周期T2の区間のカウント(計測)は、毎区間行われなくてもよく、また調整も即座に行われなくてもよく、さらに発振回路20の周波数f2を調整する調整量は、初期と収束に近い状態とで、差を持たせてもよい。
【0038】
また、本実施形態の無線機1では、上述のように、送信側の高周波回路3と受信側のコントローラ2とは、LANケーブル5で接続されて、イーサネット(登録商標)を構成する。ここで、イーサネット(登録商標)は、多数の装置で通信回線が共有されており、所定の規定に従いパケット通信が行われるので、1対1だけでなく、前記LANケーブル5に適宜ハブなどが介在されることで、受信側のコントローラ2が複数台存在する1対多の通信であっても、クロック(f1,f2,f3,f4・・・)の同期が可能になる。なお、接続は、有線のLANケーブル5に限らず、無線等も使用可能である。
【0039】
ここで、無線機は、前記のUHF帯やSHF帯に限らず、電力損失や同軸ケーブルに対する費用の観点から、アンテナ41と高周波回路3との距離は、短いことが好ましい。しかしながら、電波の伝播効率の観点からは、アンテナ41の設置場所は高所が好ましい。一方、一般的な無線機では、本実施形態の無線機1における高周波回路3は、使用者の操作するコントローラ2に内蔵され、アンテナ41との距離を短くすることが困難であった。そこで、本実施形態のように高周波回路3をコントローラ2とは別体としてアンテナ41の近傍に設け、それらの間をLANケーブル5で接続して、イーサネット(登録商標)を構成することで、電力損失を抑えることができるとともに、結果的に、コストを抑え、またアンテナ41とコントローラ2とをより離すことができる。
【0040】
また、一方の装置から音声データ(A)が送信され、それを他方の装置で逐次再生する場合、装置(3,2)間のクロック(f1,f2)がズレていると、音飛びや音切れ(抜け)のような比較的良く目立つノイズが発生してしまうので、音声信号のパケット送信に、クロック(f1,f2)を同期させることは、特に有効である。上述の実施形態では、音声以外のデータのパケットSは、周期的に発生する音声信号のパケットAと衝突しない任意のタイミングで発生していたが、そのタイミング設定には、勿論、同期した前記クロック(f1,f2)が用いられる。前記音声以外のデータのパケットSも、周期的に発生してもよい。
【0041】
さらにまた、音声データ(A)のような連続するデータをパケットAで送受信し、逐次再生する場合であっても、一方の装置(3)に他方の装置(2)のクロック周波数を同期させることができれば、音声を再生する際の音飛び、音切れは発生しない。そのため、受信側の発振回路20の発振周波数f2が可変であれば、送信側の発振回路30は発振回路20よりも必ずしも精度が高い必要は無い。しかしながら、上述の例では、データ(A,S)を送信し、基準となる側のクロック(f1)を発生する一方の装置(3)側では、前記クロック(f1)はアナログ回路34における基準ともなるので、該一方の装置(3)側のクロック(f1)は、必然的に精度が高くなる。
【符号の説明】
【0042】
1 無線機
2 コントローラ
20 発振回路
21 ルーター
22 演算処理回路
23 信号処理回路
231 音声処理回路
232 時間計測回路
24 デジタル/アナログ変換回路
25 低周波アンプ
26 スピーカ
27 表示・操作部
3 高周波回路
30 発振回路
31 ルーター
32 演算処理回路
33 信号処理回路
331 混合器
332 局部発振回路
333 ローパスフィルタ
334 検波回路
335 データ解析部
34 アナログ回路
39 アナログ/デジタル変換回路
41 アンテナ
411 アンテナ端子
412 同軸ケーブル
5 LANケーブル
図1
図2
図3