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特開2024-83718合成樹脂類の製鉄原料化方法およびコークスの製造方法
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  • 特開-合成樹脂類の製鉄原料化方法およびコークスの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083718
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】合成樹脂類の製鉄原料化方法およびコークスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 57/04 20060101AFI20240617BHJP
【FI】
C10B57/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197689
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 純
(72)【発明者】
【氏名】小林 真穂子
(72)【発明者】
【氏名】杉原 広和
(72)【発明者】
【氏名】細原 聖司
【テーマコード(参考)】
4H012
【Fターム(参考)】
4H012MA01
4H012MA02
(57)【要約】
【課題】コークス強度の低下を抑制可能な合成樹脂類の製鉄原料化方法およびコークスの製造方法を提案する。
【解決手段】合成樹脂類を含む廃棄物を成形してから、所定量以上を石炭と混合しコークス炉に装入する際、装入原料質量あたりの前記合成樹脂類の成形物個数が所定数以下となるように制御する、合成樹脂類の製鉄原料化方法である。その合成樹脂類の製鉄原料化方法を用いて調製された合成樹脂類の成形物を装入原料質量あたりの個数が所定数以下となるように制御して、所定量以上を石炭とともにコークス炉に装入し、所定以上の強度を有するコークスを製造する、コークスの製造方法である。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂類を成形してから、所定量以上を石炭と混合しコークス炉に装入する際、装入原料質量あたりの前記合成樹脂類の成形物個数が所定数以下となるように制御する、合成樹脂類の製鉄原料化方法。
【請求項2】
前記合成樹脂類の成形物の直径が4.0cm以上となるように成形する、
請求項1に記載の合成樹脂類の製鉄原料化方法。
【請求項3】
前記合成樹脂類の成形物の見かけ密度が0.7g/cm以上となるように成形する、
請求項1に記載の合成樹脂類の製鉄原料化方法。
【請求項4】
前記合成樹脂類を、押出成形機において150℃以上180℃未満の温度に加熱した状態で押出成形して前記合成樹脂類の成形物を得るとともに、得られた合成樹脂類の成形物を常温の空冷で40℃以下まで冷却することで、体積が200cm以上、見かけ密度が0.9~1.1g/cmの成形物とする、請求項1に記載の合成樹脂類の製鉄原料化方法。
【請求項5】
押出成形で得られた前記合成樹脂類の成形物を常温の空冷で40℃以下まで冷却する際の平均冷却速度が10℃/分以下である、請求項4に記載の合成樹脂類の製鉄原料化方法。
【請求項6】
押出成形で得られた前記合成樹脂類を切断機で体積200~1000cmの大きさに切断して前記合成樹脂類の成形物とする、請求項4に記載の合成樹脂類の製鉄原料化方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の製鉄原料化方法を用いて調製された合成樹脂類の成形物を装入原料質量あたりの個数が所定数以下となるように制御して、所定量以上を石炭とともにコークス炉に装入し、所定以上の強度を有するコークスを製造する、コークスの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉において廃プラスチックに代表される合成樹脂類を製鉄原料としてリサイクルする方法に関する。以下の記載において、質量の単位である「t」は10kgを表す。本明細書中で、「合成樹脂類」には、廃プラスチックと呼称される一般廃棄物の使用済みプラスチックのほか、製造工程で発生する合成樹脂の端材や不良品、使用済みプラスチックなど産業廃棄物となるプラスチックも含まれる。
【背景技術】
【0002】
近年、廃プラスチックによる海洋汚染が世界的な問題となっており、海洋に流出する廃プラスチックの量は全世界でおよそ年間800万tに上ると言われている。海洋汚染の解決は2015年に国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)において目標の一つとして挙げられている。これに対応するため欧州では「EUプラスチック戦略」を掲げてプラスチックのリサイクルの強化と使い捨てプラスチックの削減に取り組んでいる。日本においては、1995年に容器包装リサイクル法が制定され、早くから廃プラスチックのリサイクルが進められてきた。さらなる廃プラスチック削減の気運の高まりを受け、2022年から「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が施行され、さらなる廃プラスチックのリサイクル強化が求められている。鉄鋼業においては、廃プラスチックをコークス炉において、原料として石炭に混合し装入することにより、製鉄原料としてリサイクルする技術が実用化されている。容器包装リサイクル法における廃プラスチックのケミカルリサイクル技術として実施されている。しかしながら、石炭に廃プラスチックを混合してコークスを製造するとコークス強度が低下することが知られており、コークス強度が低下しない廃プラスチックの混合率の限界は約1質量%が上限とされている(非特許文献1)。そこで、廃プラスチック混合によるコークス強度劣化を抑制するため、これまで様々な技術開発が行われてきた。
【0003】
たとえば、特許文献1においては、表面から内部に抜ける穴または亀裂を有しておらず、かつ見かけ密度が0.85~1.1g/cmで体積が6000~200000mm(6~200cm)であるプラスチック粒状物を用いてコークス炉で乾留する方法が開示されている。そのような粒状物を成形するために、熱可塑性樹脂を含む廃プラスチックをノズルから押し出す成形装置内で180~260℃の温度とし、ガスを吸引した状態からノズルで押し出し、水冷する手法が示されている。
【0004】
また特許文献2においては、コークス炉炭化室に原料を装入したのち、少なくても1時間経ってから炭化室の装入原料上部に廃プラスチックを装入し、熱分解リサイクルする方法が開示されている。コークス炉上部の空間を利用し、コークス強度に影響を与えず大量の廃プラスチックをリサイクルできるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-293032号公報
【特許文献2】特開2019-135281号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】野村誠治、加藤健次、中川朝之、古牧育男 日本エネルギー学会誌 第81巻第8号(2002) PP728-737
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術では、以下のような課題があった。
特許文献1に開示された技術では、表面から内部に抜ける穴もしくは亀裂を有していないプラスチック粒状物が特徴となっている。二軸押し出し成形機で合成樹脂類を成形する場合、一定の長さに揃えるためノズルから押し出した合成樹脂類成形物をカッターで切断する手法が取られ、亀裂や穴を有しないように切断することは実質的に困難である。また、加熱温度を180~260℃とするとしているが、装置内のどの部分の温度を示しているか、具体的に記載されていない。さらに、加熱温度を180℃以上とする場合、合成樹脂類の熱分解によりガスが発生し、溜まったガスが溶融した合成樹脂類内で空隙となるため、密度が低下するといった問題がある。また、見かけ密度が0.85~1.1g/cmの合成樹脂類の粒状物において、粒状物の容積が6000~200000mmであればコークス強度低下への影響は少ないとしている。ところが、従来用いられている二軸押し出し成形機による合成樹脂類の成形において得られる、合成樹脂類成形物の密度は0.65~0.75g/cm程度である。これらを用いた際にコークス強度低下を抑制可能な粒状物の体積については検討されていない。
【0008】
また、特許文献2に開示された技術では、石炭装入後に原料装入蓋を開けて合成樹脂類を装入しなければならないため、ガスの漏洩を防ぐためには、ガス発生量が吸引量を上回らないようにする必要がある。しかしながら石炭の品位の変動やその他の原因により炭化室で発生するガス量が増加した場合、発生ガスが外部に漏洩し異常燃焼を起こす危険性がある。また、石炭塔に原料を装入した後で合成樹脂類を装入するため、送炭車上部に廃プラスチック専用ホッパーを用意する必要があり、さらに原料装入の手順が増えるため、コークス炉の生産性が低下する要因となる。
【0009】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであって、コークス強度の低下を抑制可能な合成樹脂類の製鉄原料化方法およびコークスの製造方法を提案することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を有利に解決する本発明にかかる合成樹脂類の製鉄原料化方法は、合成樹脂類を成形してから、所定量以上を石炭と混合しコークス炉に装入する際、装入原料質量あたりの前記合成樹脂類の成形物個数が所定数以下となるように制御することを特徴とする。
【0011】
なお、本発明にかかる合成樹脂類の製鉄原料化方法は、
(a)前記合成樹脂類の成形物の直径が4.0cm以上となるように成形すること、
(b)前記合成樹脂類の成形物の見かけ密度が0.7g/cm以上となるように成形すること、
(c)前記合成樹脂類を、押出成形機において150℃以上180℃未満の温度に加熱した状態で押出成形して前記合成樹脂類の成形物を得るとともに、得られた合成樹脂類の成形物を常温の空冷で40℃以下まで冷却することで、体積が200cm以上、見かけ密度が0.9~1.1g/cmの成形物とすること、
(d)押出成形で得られた合成樹脂類の成形物を常温の空冷で40℃以下まで冷却する際の平均冷却速度が10℃/分以下であること、
(e)押出成形で得られた合成樹脂類を切断機で体積200~1000cmの大きさに切断して合成樹脂類の成形物とすること、
などがより好ましい解決手段になり得る。
【0012】
上記課題を有利に解決する本発明にかかるコークスの製造方法は、上記いずれかの合成樹脂類の製鉄原料化方法を用いて調製された合成樹脂類の成形物を装入原料質量あたりの個数が所定数以下となるように制御して、所定量以上を石炭とともにコークス炉に装入し、所定以上の強度を有するコークスを製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、合成樹脂類の成形物を添加することによるコークス強度の低下が、合成樹脂類の成形物の装入個数と相関があることから合成樹脂類の成形物の個数の上限を設定することでコークス強度低下への影響を抑制することとした。そのため、合成樹脂類の成形物の添加量(質量割合)が変化した際においてもコークス強度の低下を抑制可能な合成樹脂類の成形物性状を示すことができるようになった。
【0014】
加えて、合成樹脂類はそのほとんどが揮発分で構成されており、石炭と共に乾留した場合、揮発分がガスとして抜けるため、コークス内部に穴が発生すると考えられる。コークス内部の穴はコークスの亀裂の開始点となり、コークス強度を低下させる要因となる。このため、装入原料質量当たりの合成樹脂類の成形物の装入個数を制限することにより、コークス強度の低下を抑制することが可能となる。合成樹脂類の成形物の装入個数を制限しつつ、一定の合成樹脂類の装入量を確保するためには、合成樹脂類の成形物の大きさを大型化する、もしくは合成樹脂類の成形物の密度を高めることが有効である。合成樹脂類の粒子を大型化する場合、同時に装入する石炭との粒径の差が大きくなり、コークス炉装入時に合成樹脂類が偏析し集中しやすくなる。そのため、合成樹脂類が入らない部分のコークス強度の低下が抑制されるといった効果がある。また、合成樹脂類の密度を向上させる場合、合成樹脂類の装入により排除される原料炭の量が少なくなり、コークスの塊歩留まりが向上するといった効果もある。したがって、合成樹脂類を所定量以上装入しつつコークスの強度を維持したコークスを製造することができ、産業上有用である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明にかかる合成樹脂類の製鉄原料化方法を説明する、装入原料質量当たりの成形物個数とコークス強度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための設備や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0017】
本実施形態では、合成樹脂類を用いて、二軸押し出し成形機によって成形し、石炭と混合してコークス原料として供する際、乾留後のコークス強度の低下を抑制するため、装入原料1トン当たりの合成樹脂類の成形物の装入個数が一定数未満となるように調整するものである。
【0018】
発明者らは、開発にあたり、試験乾留炉にて様々な条件で、合成樹脂類の一例としての廃プラスチックを石炭に混合し、廃プラスチック成形物の添加がコークス強度に与える影響を調査した。廃プラスチックがコークスの強度低下に影響する因子として、廃プラスチック成形物の添加量、密度、大きさ等が挙げられる。これらの影響を内包する因子として、廃プラスチックの添加個数が多いほどコークス強度が低下することを見出した。廃プラスチック類が石炭中で乾留される場合、廃プラスチックは揮発分が多く、そのため揮発後に空隙が発生し、乾留後のコークス内部に空隙が発生することとなる。空隙はコークス内部において亀裂の起点となるため、空隙の数が増えるほど亀裂が多く発生し、コークス強度が劣化すると考えられる。
【0019】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態は、合成樹脂類を成形してから、所定量以上を石炭と混合しコークス炉に装入する際、装入原料質量あたりの前記合成樹脂類の成形物個数が所定数以下となるように制御するものである。合成樹脂類には、廃プラスチックと呼称される一般廃棄物の使用済みプラスチックのほか、製造工程で発生する合成樹脂の端材や不良品など産廃プラスチックも含まれる。合成樹脂類の成形物を単に成形物という。
【0020】
本実施形態で石炭と混合する合成樹脂類のコークス炉への添加量は、特に制限するものではないが、コークス炉への装入原料全体に対する割合で0.5質量%以上とすることが環境への配慮上好ましい。1.0質量%超えとすることがより好ましく、3.0質量%以上とすることがさらに好ましい。上限を特に制限するものではないが、5質量%超えの添加はコークス強度が低下するおそれがある。
【0021】
本実施形態で石炭と混合する成形物の個数は、コークス炉の大きさ、コークス炉への装入原料質量当たりの合成樹脂類の添加質量、必要とするコークスの強度などに応じて選択することができる。たとえば、1釜あたりの装炭量が30~40t、釜幅35~50cmであり、コークスの強度がJIS K2151:2004に示されたドラム回転強度における150回転後15mm篩上の指数(DI150/15指数)で84以上を示すコークス炉を用いる。そのコークス炉で合成樹脂類の成型物を石炭に混合する際、コークス炉への装入原料に対し400個/t超えではコークス強度の低下が顕著であるので400個/t以下とすることが好ましい。よりコークスの強度を高める場合には、300個/t以下とすることがより好ましく、200個/t以下とすることがさらに好ましい。この成形物の個数はコークス炉のサイズや操業条件によって変動するので個別に設定することが好ましい。
【0022】
本実施形態で石炭と混合する成形物の個数を制御するのに、同じ大きさ、密度の成形物を用いる場合には、コークス炉への装入原料全体に対する合成樹脂類の質量割合を低下することができる。ただし、環境への配慮上はその割合を低下させ過ぎることは好ましくない。そこで、コークス炉への装入原料全体に対する合成樹脂類の質量割合を維持しつつ、成形物の個数を低減するために、1個当たりの体積を増加させる、または、成形物の見かけ密度を増加させることが有効である。本実施形態で石炭と混合する成形物の個数の下限については、特に限定するものではない。ただし、装入原料質量当たりの合成樹脂類の添加割合を下げ過ぎるとリサイクル効果が小さくなるおそれがある。加えて、個々の成形物を大きくし過ぎると、コークス炉の装入口に詰まったり、乾留後にコークス内に空隙が大きくなりすぎて、逆に強度低下の原因になったりするおそれがある。
【0023】
(合成樹脂類の成形物の製造方法)
以下、合成樹脂類の成形物の製造方法について述べる。
本実施形態では、合成樹脂類を二軸押し出し成形機で成形するにあたり、合成樹脂類を破砕もしくは事前に造粒して供給する。この際、合成樹脂類の含有水分は5質量%以下となるように調整することが好ましい。合成樹脂類の含有水分を減少させることで、安定して合成樹脂類が成形できるようになり、成形物の密度が増加する。合成樹脂類の水分を蒸発させるためには、熱風気流式乾燥機をはじめ、様々なタイプの乾燥機を用いることができる。
【0024】
本実施形態で用いて好適な、合成樹脂類を成形可能な二軸押し出し成形機は任意であり、基本的な構造に差異はない。ケーシングに収められた二軸のスクリューによって供給原料を混錬し、加熱したプレートに設置されたノズルを通して合成樹脂類が押し出される。円筒状に押し出された合成樹脂類は回転式のカッターで切断され、一定の長さに調整される。この際、合成樹脂類1個当たりの体積を、ノズルの内径とカッター切断速度で調整する。通常ノズルは内径が2.0~3.0cmφのものが用いられることが多い。内径が4.0~6.0cmφの大径ノズルを用いて成形することにより、大形の成形物を製造することが可能となる。個数当たりの合成樹脂類の質量が増加し、同じ装入個数での装入可能量を増加することができる。
【0025】
成形された合成樹脂類はノズルの内径と同じ、もしくはノズルの内径より若干大きい直径の円筒状となり、その長さはカッターの回転速度で調整することができる。成形物の長さは成形ノズルの位置や状態により影響を受けるため、一定の長さに揃えることは困難である。短い成形物から長い成形物まで分布ができることになる。成形物の最大長さを長くすることで体積を増加できるが、成形物長さの分布の中で最大の長さが20cm以下とすることが好ましい。コークス炉の炭化室上部の装入口の直径は40~50cm程度であるため、最大長さをこれ以上長くすると詰まりが発生するおそれがあるからである。成形物の平均体積は90cm以上が好ましく、150cm以上がより好ましく、200cm以上がさらに好ましい。上限はコークス炉に装入する際の装入口の大きさにもよるが、1000cm以下とすることが好ましく、600cm以下とすることがさらに好ましい。
【0026】
本実施形態では、成形の際、成形機の面板の加熱温度(押出成形温度)は通常ノズル(2.0~3.0cmφ)の場合100~150℃とする。大径ノズル(4.0~6.0cmφ)の場合、合成樹脂類の内部により熱を伝導させるため、より高温の150℃以上180℃未満とすることが好ましい。この温度範囲で押出成形することで合成樹脂類が溶融状態または半溶融状態になり、これにより合成樹脂類を圧密化した状態で押出成形することが容易になる。加えて、合成樹脂類が一定の粘性を持つため、生産性も一定に保つことができる。加熱温度を100℃以上とするのは廃プラスチックに含有される熱可塑性樹脂の多くは100℃以上で軟化するためである。また、180℃未満とするのは180℃以上高温にすると合成樹脂類が熱分解しガスが発生し始めるからである。さらに、合成樹脂類の粘度が低くなって流動性が高くなりすぎるため、押出成形機からの押出速度を一定に保つことができず、生産性が不安定になる。加えて、合成樹脂類の流動性が高いため、押し出された成形物の形状を保つために、押出成形機から押出された成形物を急冷する必要がある。そして、急冷することにより成形物の見かけ密度が低下してしまう。
【0027】
発明者らは、合成樹脂類を種々の加熱温度で押出成形した後、その成形物を常温で40℃まで空冷(徐冷)した場合と水冷装置で水冷(急冷)し、成形物の見かけ密度への影響を調べた。その結果、合成樹脂類を成形温度150℃以上180℃未満で成形し、その成形物を急冷することなく、常温で空冷することにより、見かけ密度が0.9g/cm以上の成形物が得られることが判った。また、上述した合成樹脂類の押出成形では、減圧手段(ガス吸引手段)によって押出成形機内のガスを吸引して機内を大気圧未満に減圧しつつ、合成樹脂類を押出成形することが好ましい。これにより押出成形機内に生じる水蒸気や塩素ガスを除去することができ、成形物内への残存ガス混入を抑制できる。ここで、常温とは加熱せず、かつ、冷却しない空気の温度をいう。
【0028】
本実施形態では、押出成形で得られた合成樹脂類の成形物を常温の空冷で40℃以下まで冷却する際の平均冷却速度は10℃/分以下が好ましく、これにより、上述した作用を効果的に生じさせることができる。ここで、平均冷却速度とは、成形物の全断面温度平均での冷却速度である。押出成形機から押出される合成樹脂類の成形物は、通常、適当なサイズにカットされて、そのまま常温の空冷で40℃以下まで冷却されるが、具体的な冷却方法としては、たとえば、ピットや容器などに収容して大気中で放冷してもよいし、冷却速度をコントロールするために保温カバー付きのピットや容器内で徐冷してもよい。
【0029】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態は、上記で調整した合成樹脂類の成形物を装入原料質量あたりの個数が所定数以下となるように制御して、所定量以上を石炭とともにコークス炉に装入し、所定以上の強度を有するコークスを製造するものである。
【0030】
本実施形態で石炭と混合する合成樹脂類のコークス炉への添加量は、特に制限するものではないが、コークス炉への装入原料全体に対する割合で0.5質量%以上とすることが環境への配慮上好ましい。1.0質量%超えとすることがより好ましく、3.0質量%以上とすることがさらに好ましい。上限を特に制限するものではないが、5質量%超えの添加はコークス強度が低下するおそれがある。
【0031】
本実施形態で石炭と混合する成形物の個数は、コークス炉の大きさ、コークス炉への装入原料質量当たりの合成樹脂類の添加質量、必要とするコークスの強度などに応じて選択することができる。たとえば、1釜あたりの装炭量が30~40t、釜幅35~50cmであり、コークスの強度がJIS K2151:2004に示されたドラム回転強度における150回転後15mm篩上の指数(DI150/15指数)で84以上を示すコークス炉を用いる。そのコークス炉で合成樹脂類の成型物を石炭に混合する際、コークス炉への装入原料に対し400個/t超えではコークス強度の低下が顕著であるので400個/t以下とすることが好ましい。よりコークスの強度を高める場合には、300個/t以下とすることがより好ましく、200個/t以下とすることがさらに好ましい。この成形物の個数はコークス炉のサイズや操業条件によって変動するので個別に設定することが好ましい。
【0032】
(コークスの製造方法)
成形した合成樹脂類の成形物をホッパーに投入し、定量フィーダーにより一定速度で切り出し、コークス炉へ配合炭を供給するベルトコンベア上の石炭の上に切り出す。この際、合成樹脂類の成形物の添加個数を装入原料の質量で除した値が一定数以下となるように調節することにより、乾留後のコークス強度低下を抑制することが可能である。コークス強度の指標としてはJIS K2151:2004に示されたドラム回転強度を用いることができ、ドラム150回転後15mm篩上の指数(DI150/15指数)を用いる場合、DI150/15の低下が1ポイント未満となるようにすることが好ましい。DI150/15指数には0.5ポイント程度の測定誤差があることが知られており、1ポイント以上の強度低下があれば明らかにコークス強度が低下していると確認できるからである。コークス炉操業においても、コークス強度(DI150/15)低下1ポイント以上でコークス強度が低下していると認識され、原料炭品位向上などのアクションを取ることがある。
【0033】
合成樹脂類の成形物の添加個数は、合成樹脂類の成形物の添加後のベルトコンベア上部にカメラを設置して撮影し、画像解析を行うことで計測することが可能である。より簡易的には、合成樹脂類の成形物の1個あたり質量を複数測定し、統計的な平均質量を算出して、送入原料1tに対する合成樹脂類の成形物装入質量を平均質量で除することによって算出することが可能である。また、合成樹脂の成形物の直径、長さ、見かけ密度を測定し、平均直径、平均長さ、平均見かけ密度を算出して、さらに合成樹脂類の成形物の形状を円筒形や球形などの単純な形状であると仮定して平均体積を計算し、平均見かけ密度に平均体積1個当たりの質量を算出して平均質量とし、合成樹脂類の装入質量を平均質量で除することで個数を算出することができる。
【0034】
合成樹脂類の成形物の切り出し位置は、石炭乾燥設備(CMC)を通った後でベルトコンベアが低い場所が好ましい。CMCでは石炭が加熱乾燥されるため、CMCの前で合成樹脂類の成形物を添加した場合、合成樹脂類の成形物がCMC内で溶融する恐れがあるからである。合成樹脂類の成形物は配合炭と一緒に石炭塔、送炭車を通り、炭化室に供給される。合成樹脂類は炭化室内で熱分解し一部が炭として残るが、多くはガスやタールとしてリサイクルされる。
【実施例0035】
熱可塑性樹脂を主体とする廃プラスチックの混合物を破砕し、水分が5%以下であることを確認したのち、二軸押出成形機を用いて円筒状に成形した。この際の成形物の平均径D[cm]、平均長さL[cm]は表1に示す通りである。また、成形物が吸水しないよう真空パックを施した後、水中に沈め浮力を測定し、得られた体積から見かけ密度ρ[g/cm]を算出し表1に記載した。この方法は、アルキメデス法と呼ばれる。得られた成形物を表1に示す混合割合(添加量a[質量%])でコークス炉原料として用いられる配合炭約40kgに混合した。混合に際し、成形物が均一に分散するよう石炭を4分割し、それぞれに均一に廃プラスチックを添加した。この際、配合炭の含有水分が8%、装入密度が830kg/mとなるように調整した。700~1100℃で20時間乾留後、上部から水をかけて急冷した後、乾燥し、コークスを得た。得られたコークスについて、JIS K2151:2004のコークス類試験法に示されたドラム強度測定法に従い、ドラム試験機に装入して150回転させた後15mm目開きの篩で篩った篩上の質量割合をドラム強度指標DI150/15として測定した。コークスDI強度変化ΔDI150/15については、事前に配合炭のみを用いて上記の方法で乾留し、得られたコークスのDI150/15を測定した値との差分から算出した。装入原料質量当たりの成形物添加個数n[個/t]は表1に併記した。
【0036】
表1の装入原料質量当たりの成形物添加個数nとコークスDI強度変化ΔDI150/15との関係を図1にグラフで示す。装入原料質量当たりの成形物添加個数nが少ないほど、コークスDI強度変化ΔDI150/15は大きくなり、つまり、石炭のみで乾留したコークスに近づくことがわかる。
【0037】
【表1】

図1