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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083721
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】圃場内作業車の自動制御装置
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20240617BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20240617BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
G05D1/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197696
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】織田 湧平
(72)【発明者】
【氏名】今井 征典
(72)【発明者】
【氏名】小山 浩二
(72)【発明者】
【氏名】池内 伸明
【テーマコード(参考)】
2B043
5H301
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB20
2B043BA02
2B043BA09
2B043BB01
2B043BB03
2B043DA04
2B043DA17
2B043DC03
2B043EA01
2B043EA13
2B043EA32
2B043EA35
2B043EA37
2B043EA40
2B043EB05
2B043EB12
2B043EB16
2B043EB17
2B043EB18
2B043EC14
2B043EC15
2B043EC16
2B043ED03
2B043EE01
2B043EE05
2B043EE06
5H301AA03
5H301BB01
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG08
5H301GG09
5H301LL01
5H301LL11
(57)【要約】
【課題】本発明は、機体管理者が圃場内に停止する作業車を安全に呼び寄せることが出来るようにすることを課題とする。
【解決手段】測位装置174を搭載し自動操縦可能な作業車1において、作業車1に周囲を監視する監視装置102を設け、該監視装置102で機体の周囲に居る機体管理者OPを識別し、この機体管理者OPの呼び寄せ合図を認識すると機体管理者OPに向う直線的な予定走行経路R1を辿って走行させることを特徴とする圃場内作業車の自動制御装置とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位装置(174)を搭載し自動操縦可能な作業車(1)において、作業車(1)に周囲を監視する監視装置(102)を設け、該監視装置(102)で機体の周囲に居る機体管理者(OP)を識別し、この機体管理者(OP)の呼び寄せ合図を認識すると機体管理者(OP)に向う直線的な予定走行経路(R1)を辿って走行させることを特徴とする圃場内作業車の自動制御装置。
【請求項2】
監視装置(102)が機体の前方に畦(AZ)を認識すると予定走行経路(R1)で畦(AZ)までの距離が所定の畦接近距離(H)に到達すると走行方向を畦(AZ)に向って直交方向として畦越えして再度機体管理者(OP)に向かう修正予定走行経路(R2)を走行することを特徴とする請求項1に記載の圃場内作業車の自動制御装置。
【請求項3】
監視装置(102)で畦(AZ)の高さを計測し、その畦高さで直進畦越えか後進畦越えで走行するか或いは畦越え不可を判断することを特徴とする請求項1に記載の圃場内作業車の自動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場内を自動で走行する圃場内作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
測位装置を備えて圃場内の自車位置を認識して自動操縦で走行しながら作業を行う圃場内作業車が開発され、この作業車は管理者が搭乗して操縦することも可能にしている。
【0003】
例えば、特開2020―179号公報の公報に記載された圃場内作業車は、トラクタがGPS衛星からの測位信号を受けて圃場地図における自車位置を認識して車両ECUで走行装置を制御しながら予定走行経路を自動操縦で走行して作業を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020―179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記自動操縦の圃場内作業車で作業者が搭乗して作業を行う場合は、作業者が圃場内に停止している作業車に近づいて搭乗することが必要であるが、圃場が湿田であると近づくのが困難な場合がある。
【0006】
本発明は、機体管理者が圃場内に停止する作業車を安全に呼び寄せることが出来るようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
【0008】
請求項1の発明は、測位装置174を搭載し自動操縦可能な作業車1において、作業車1に周囲を監視する監視装置102を設け、該監視装置102で機体の周囲に居る機体管理者OPを識別し、この機体管理者OPの呼び寄せ合図を認識すると機体管理者OPに向う直線的な予定走行経路R1を辿って走行させることを特徴とする圃場内作業車の自動制御装置とする。
【0009】
請求項2の発明は、監視装置102が機体の前方に畦AZを認識すると予定走行経路R1で畦AZまでの距離が所定の畦接近距離Hに到達すると走行方向を畦AZに向って直交方向として畦越えして再度機体管理者OPに向かう修正予定走行経路R2を走行することを特徴とする請求項1に記載の圃場内作業車の自動制御装置とする。
【0010】
請求項3の発明は、監視装置102で畦AZの高さを計測し、その畦高さで直進畦越えか後進畦越えで走行するか或いは畦越え不可を判断することを特徴とする請求項1に記載の圃場内作業車の自動制御装置とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明で、作業車1は、測位装置174で自車の地図上位置を認識しながら圃場内を走行しながら作業を行うが、監視装置102が機体の周囲に居る機体管理者OPを識別し、この機体管理者OPの呼び寄せ合図を認識すると機体管理者OPに向う直線的な予定走行経路R1を辿って走行するので、機体管理者OPは移動する必要が無く、最短距離を走行して近づいた作業車1に搭乗して作業を行える。
【0012】
請求項2の発明で、監視装置102が進行方向に畦AZを発見すると畦AZまでの距離が畦接近距離Hに達すると走行方向を畦AZに向う直交方向として畦越えして再度機体管理者OPに向う修正予定走行経路R2を走行することで、畦AZを斜めに走行して転倒する危険性を排除して安全に機体管理者OPに近づくことが出来る。
【0013】
請求項3の発明で、監視装置102が確認する畦AZの高さを制御装置で分析し、その畦高さが作業車1が持っている畦越え可能高さと比較して前進或いは後進で走破可能かそれとも畦越えが不可能かを判断して安全に呼び寄せることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態にかかる圃場内作業車の自動制御装置を備えた圃場内作業車として示すトラクタの右側面図である。
図2】同上自動制御装置の自動制御のブロック図である。
図3】同上作業車の畦越え走行ルートを示す地形平面図である。
図4】同上作業車が畦の近くに居た場合の走行ルートを示す地形平面図である。
図5】同上作業車が後進で畦越えをする別実施例の走行ルートを示す地形平面図である。
図6】同上作業車が前進で畦近くまで移動し、その後に後進で畦越えして機体管理者に近づく走行ルートを示す地形平面図である。
図7】同上作業車のいる圃場が既に耕されていた場合に走行する走行ルートを示す地形平面図である。
図8】同上作業者が畦越えして走行することが不可能な場合の走行ルートを示す地形平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の作業車について、実施例を図面に基づき説明する。
【0016】
図1は、本発明でいう作業車の一例として示す走行車体100に作業機200を装着したトラクタ1の全体側面図で、トラクタ1の前部のボンネット13内に搭載したエンジン2の動力をミッションケース3で適宜に変速して前輪軸4と後輪軸5に伝動して前輪6と後輪7の両方或は後輪7のみを駆動し、機体上のキャビン26内に設ける運転席10に座った機体管理者OPつまり作業者が中央に立設するステアリングホイール8を操作して前輪6を操向しながら走行する。機体の後方へ突出するロワリンク9L、9Rには、ロータリ耕運機などの作業機200を装着し、ミッションケース3から後方へ向かって突出するPTO軸11で装着する作業機200を駆動する。
【0017】
作業機200の後部はリアカバー201で覆われており、このリアカバー201は車両左右方向のリアカバー回動軸201a回りに回動する。リアカバー201の下端部201bは耕耘中地面に接地して耕耘後の土を均すように構成されている。
【0018】
作業機200は左右のロワリンク9L、9Rとトップリンク213の3点で支持されており左のロワリンク9Lは左のリフトアーム210Lと傾斜シリンダ214で連結している。リフトアーム210はメインシリンダ212によって上下に回動するように構成されており、このリフトアーム210の上下回動によって作業機200が昇降される。リフトアーム210の回動角はリフトアームセンサ211により検出される。
【0019】
キャビン26の下方でミッションケース3の側方にはエンジンに燃料を供給する燃料タンク60が設けられている。燃料タンク60はミッションケース3の左右両側方に設けられており、左側に給油口、右側にエンジン供給口、燃料残量センサを備え、中央で連通されている。
【0020】
キャビンルーフ27の上面には測位装置174の一例としてのGPSアンテナ174が設けられており、このGPSアンテナ174が複数のGPS衛星30から送信される測位信号31を受信することにより自己位置を測定することができる。GPSアンテナ174は、主に丸棒の曲げ部材から成りキャビンルーフ27の左右にわたって設けられた桁部173aと主に鉄板の曲げ部材から成るアンテナ固定部173bとで構成されるGPSアンテナステー173によりキャビンルーフ27に取り付けられる。
【0021】
監視装置102の一部である前方カメラ102はキャビンルーフ27の前方中央部で上下を挟むように構成されたGPSアンテナステー173のアンテナ固定部173bの下面に取り付けられた前方カメラステー102aに上下回動自在に取り付けられてトラクタ1の前方を撮影する。後方カメラ103はキャビンルーフ27の後方中央部でキャビンルーフ27の下面に取り付けられた板状の後方カメラステー103aに上下回動自在に取り付けられてトラクタ1の後方を撮影する。なお、図1には図示を省略するがキャビン26の側部には側方を写す側方カメラ103’(図2)も備えている。
【0022】
前方カメラ102と後方カメラ103及び側方カメラ103’の映像を処理する映像処理部104はキャビン26内の運転席10の後方に取り付けられる。障害物センサ105はボンネット13の前部に設けられた穴部13aの中に設けられトラクタ1の前方の障害物の有無と、障害物までの距離を検出するため、前方に向けて電磁波または超音波などが照射されている。
【0023】
ステアリングホイール8の近傍には作業管理や車両の設定を行うタブレット端末などの情報端末106が設けられている。この情報端末106は自動運転の予定走行経路Pの設定時に各種パラメータや作業内容を入力する入力手段としても使用され、取り外して遠隔管理や遠隔操作を行うアプリを内蔵する。
【0024】
ステアリングホイール8の下方にはステアリングシャフト(図示せず)が通っており、その近傍にステアリングを電子的に制御するステアリングモータ101が設けられている。
【0025】
ボンネット5内部には制御部の一例としての自動運転ECU150が搭載されており、これが予定走行経路PとGPSアンテナ174で受信した測位信号31に基づき算出した自己位置とを比較しながら予定走行経路P上を走行するようにエンジン2やステアリングホイール8を制御する。
【0026】
図2はトラクタ1の制御ブロック図である。トラクタ1には車両の走行を制御する制御部としての車両ECU(ElectronicControlUnit)50とGPSアンテナ174で得た信号を基に位置情報を処理し、予定走行経路Pと自己位置を比較して車両ECU50に対する制御信号を送信する自動運転ECU150が搭載されている。
【0027】
車両ECUには走行車速を検出する車速センサ51からの信号と、前輪6の操向角度を検出するステリングセンサ52からの信号と、変速位置を検出する変速センサ53からの信号と、燃料タンク60内の燃料残量を検出する燃料残量センサ54からの信号が入力される。車両ECUからはエンジン2の出力を制御する信号と、ステアリングホイール8の操向角度を制御するステアリングモータ101の操作信号と、変速装置56の変速操作信号と、車両の走行を停止するブレーキを操作するブレーキシリンダ57へのブレーキ操作信号と、作業機200を昇降するメインシリンダ212への昇降操作信号とが出力される。
【0028】
自動運転ECU150と車両ECU50とは有線通信により情報を互いに送受信することができ、車両の位置に応じて各種制御を実行することも可能である。また、自動運転ECU150は作業機通信コネクタ249を介して作業機ECU250と接続しており、情報を相互に送受信する。作業機ECU250の記憶領域には作業機識別情報が記憶されており、作業機識別情報を得ることで自動運転ECU150は装着された作業機を認識する。車両ECU50は情報端末106とは無線通信により情報の送受信を行い、車両の状態や作業状況を情報端末106の画像表示部に表示することもできる。また、所有する複数の圃場の情報や車両の情報を一元的に管理する管理サーバ110ともインターネットを介して情報を送受信する。
【0029】
前方カメラ102と後方カメラ103と側方カメラ103’にて撮影された映像は映像処理部104に入力されて画像処理され、障害物を検知すると検知された障害物の情報が自動運転ECU150に入力される。障害物センサ105はレーザーを周囲に照射して反射した信号を受信して障害物を検出するユニットであり、障害物検出信号を自動運転ECU150に入力する。
【0030】
さらに、映像処理部104では、圃場の周囲を囲う畦AZまでの距離と高さを分析して、蓄えた畦データ108を参照して前進走行或いは後進走行で畦越えが可能かどうかを判定する。
【0031】
自動運転ECU150は情報端末106などから入力された作業情報D1、作業情報D1と予定走行経路R1から算出した燃料消費量情報D2を有している。さらに自動運転ECU150は圃場形状や圃場位置等の圃場情報D3とともに圃場内にある障害物の位置をあらかじめ記憶した障害物位置情報D4を有する。
【0032】
図3は、圃場H1に停止しているトラクタ1を圃場H2に居る機体管理者OPが呼び寄せる場合のトラクタ1の移動軌跡を示している。
【0033】
機体管理者OPがトラクタ1に向かって右手を上げると、トラクタ1の監視装置102が写す映像を映像処理部104で処理して機体管理者OPを識別し、呼び寄せる合図である右手上げを認識すると、地図上に直線の予定走行経路R1を描き、前進で走行を開始するが、予定走行経路R1上に畦AZがあるので、畦AZから所定の畦接近距離Hまでくると、畦AZに対して直角に向かう方向へ機体を方向変更して、直進或いは後進によって畦AZを乗り越え、少し圃場H2に入った位置で再び機体管理者OPに向かう修正予定走行経路R2を作成して前進する。なお、トラクタ1は、運転席10に作業者が居なく、停止中である条件で自動走行を開始する。
【0034】
なお、トラクタ1が前進か後進のどちらで畦AZを乗り越えるかは、畦AZの映像で高さを分析して畦データ108に記録する前進安全乗り越え可能高さ以下かそれ以上で後進安全乗り越え高さ以下かを判断して決定する。後進でも乗り越えられない場合は、一旦停止する。
【0035】
図4は、圃場H1の畦AZから所定の畦接近距離H内に停止しているトラクタ1を圃場H2に居る機体管理者OPが呼び寄せる場合のトラクタ1の移動軌跡を示している。
【0036】
機体管理者OPがトラクタ1を呼ぶ動作をすると、畦AZが乗り越え可能な高さであれば、予定走行経路R1を描くが一旦畦接近距離Hまで圃場H1内を遠ざかり移動して予定走行経路R1と畦AZの交差地点に向かって走行して畦AZを乗り越え、少し越えた位置で機体管理者OPに向かう修正予定走行経路R2を描いて走行する。
【0037】
図5は、圃場H1に居るトラクタ1が高い畦AZを乗り越えて機体管理者OPに向かう別の走行ルートで、まず畦AZに向かって前進して畦接近距離H内で前後反転して後進で畦越えを行い、畦AZの近くで修正予定走行経路R2を描き、機体管理者OPに向かって前進で走行する。
【0038】
図6は、圃場H1から機体管理者OPと畦接近距離Hの交点まで前進し、畦接近距離H内で前後反転して後進で畦越えを行い、そのままで機体管理者OPに向かって後進する。
【0039】
図7は、監視装置102で圃場H1を写し、耕耘済みを認識した場合の走行軌跡で、まず畦AZと並行に機体管理者OP側の畦際まで走行し、その畦際を圃場H1に向かって走行して畦AZを越えて機体管理者OPに向かう修正予定走行経路R2を描いて走行する。
【0040】
図8は、機体管理者OPとトラクタ1の間に在る畦AZが高く乗り越えられない場合やコンクリート畦或いは水路の場合で、圃場H1の出入り口H1Eから畦道SRを通って圃場H2の出入り口H2Eに向かう最短の予定走行経路R1を描き、さらに、圃場H2で出入り口H2Eから機体管理者OPに向かう直線的な修正予定走行経路R2を描いて走行する。
【0041】
なお、予定走行経路R1や修正予定走行経路R2に障害物を発見すると、周囲の畦までの距離により右迂回或いは左迂回で走行して機体管理者OPに向かうように走行すれば良い。
【符号の説明】
【0042】
AZ 畦
H 畦接近距離
OP 機体管理者
R1 予定走行経路
R2 修正予定走行経路
1 作業車
102 監視装置
174 測位装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8