(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083728
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】扉機構
(51)【国際特許分類】
E05D 3/14 20060101AFI20240617BHJP
E06B 3/50 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
E05D3/14 Z
E06B3/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197704
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】593102448
【氏名又は名称】株式会社ユキテック
(74)【代理人】
【識別番号】100189865
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 正寛
(74)【代理人】
【識別番号】100094215
【弁理士】
【氏名又は名称】安倍 逸郎
(72)【発明者】
【氏名】徳永 明孝
【テーマコード(参考)】
2E014
【Fターム(参考)】
2E014AA02
2E014GA03
2E014GB02
(57)【要約】
【課題】密閉性が必要でありながら調整が難しい大型で重量のある扉に設置して施工時の調整を容易にし、設置後の微調整を最小限とする。
【解決手段】
上下に伸延する支点軸を軸通することで、筐体側固定部を支点軸が軸支する。筐体側固定部は、筐体側に固定する。支点軸に隣接して平行に配設した調整軸を軸通することで、扉側固定部を調整軸が軸支する。扉側固定部は、扉に固定する。筐体側固定部と扉側固定部を連結するリンク部を設け、リンク部は平行リンク構造とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に伸延する支点軸を軸通することでこの支点軸を軸支し筐体側に固定される筐体側固定部と、
前記支点軸に隣接して平行に配設した調整軸を軸通することでこの調整軸を軸支し、扉に固定される扉側固定部と、
前記筐体側固定部と前記扉側固定部を連結するリンク部と、を有し、
前記リンク部は、平行リンクで構成される扉機構。
【請求項2】
前記リンク部は、所定厚さを有するブロック状リンクと、
前記ブロック状リンクに近接するとともに、前記支点軸の中心と前記調整軸の中心とを結ぶ線と平行に設けられる棒状リンクと、
前記ブロック状リンクの両端と前記棒状リンクとを2本の連結リンクとにより、平行リンクを構成する請求項1に記載の扉機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉性が必要でありながら調整が難しい大型で重量のある扉に設置して施工時の調整を容易にし、設置後の微調整を最小限とする扉機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大雨による洪水や高潮、津波等の災害により、建物内外の開口部である出入口や通路が浸水した場合には、生活の基盤、生産・経済活動の基盤が少なくとも一時的に損なわれることになる。にもかかわらず、近年では気候変動による短時間での集中豪雨が地域を問わず多発する傾向にある。
このため、浸水対策として、たとえば、電気室や機械室等に設けられている設備等を搬入・搬出可能とする大型の扉において、水密性等の密閉性を考慮して二軸型のヒンジを用いて可能な限り扉を扉枠に均等圧で付勢できるよう検討されているが、
図4に示すように扉とパッキンが平行となるように扉を移動させることは困難な状況であった。
【0003】
このような状況において、例えば、特許文献1には、1本の支点軸と、この支点軸に隣接して平行に配列した1本の調整軸と、ヒンジとを有する扉機構であって、ヒンジには、支点軸と調整軸とが軸通される貫通穴が設けられた扉機構が開示されている等、各種提案がなされている。また、特許文献1には、扉を扉枠に均等圧で付勢できるように、リンク調整部が設けられ、リンク調整部を構成するボルトによる締結度合いによって、扉の調整を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非常に重い大型扉の場合、特許文献1に記載のリンク調整部による調整は、開閉のたびに、ボルトのゆるみまたは、緊結がすすむため、開閉回数が増えるごとに扉を扉枠に均等圧で付勢することができない(初期の状態を維持することができない)。このため、開閉のたびにボルトの締結度合いを調整する必要があり、扉の設置管理者は施工業者に調整の依頼をしなければならなかった。
しかも、このリンク調整部による調整の場合、調整には熟練の技術者でなければ非常に困難ともいわざるを得なかった。
【0006】
そこで、発明者は、二軸型のヒンジにおいて、開閉時における二軸の位置関係に着目し、リンク式ヒンジにおけるリンク部を平行リンクとすることにより、設置時に、開閉扉とパッキン面とが平行となるようにひとたび調整を行えば、設置以降に微調整なしに常に扉を扉枠に均等圧で付勢できることを知見し、本発明を完成させた。
【0007】
本発明は、密閉性が必要でありながら調整が難しい大型で重量のある扉に設置して施工時の調整を容易にし、設置後の微調整を最小限とする扉機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、上下に伸延する支点軸を軸通することでこの支点軸を軸支し筐体側に固定される筐体側固定部と、前記支点軸に隣接して平行に配設した調整軸を軸通することでこの調整軸を軸支し、扉に固定される扉側固定部と、前記筐体側固定部と前記扉側固定部を連結するリンク部と、を有し、前記リンク部は、平行リンクで構成される扉機構である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記リンク部は、所定厚さを有するブロック状リンクと、前記ブロック状リンクに近接するとともに、前記支点軸の中心と前記調整軸の中心とを結ぶ線と平行に設けられる棒状リンクと、前記ブロック状リンクの両端と前記棒状リンクとを2本の連結リンクとにより、平行リンクを構成する請求項1に記載の扉機構である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リンク式ヒンジを用いた扉機構において、リンクの形式を平行リンクとする。これにより、扉の設置時に筐体側固定部と扉側固定部との調整を行い、かつ、扉とパッキン(閉扉時に扉と接触する部分)が平行となるように調整を行うだけで、設置以降の微調整なしに扉を扉枠に均等圧で付勢することができる。
【0011】
特に、請求項2に記載の発明によれば、既存のリンク式ヒンジにおいて、棒状リンクと2本の連結リンクを取り付けることにより、いわゆる外付け方式にて、本発明の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(a)本実施形態に係る扉機構を示す正面図である。(b)本実施形態に係る扉機構を示す平面図である
【
図2】本実施形態に係る扉機構におけるヒンジ部分の拡大平面図である。
【
図3】(a)本実施形態に係る扉機構における筐体側固定部の正面図である。(b)本実施形態に係る扉機構における筐体側固定部の平面図である。
【
図4】従来技術に係る扉機構におけるヒンジ部分の拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る扉機構Dの一実施形態について図面を参照しながら説明する。また、本説明中において左右同一又は左右対称の構造や部品については、原則として同一の符号を付し、左右何れか一方のみを説明して、他方については説明を適宜省略する。
【0014】
本発明の実施形態に係る扉機構Dは、
図1~
図3に示すように、上下に伸延する支点軸bを軸支し筐体B側に固定される筐体側固定部10と、支点軸bに隣接して平行に配設した調整軸tを軸支し、扉Tに固定される扉側固定部20と、筐体側固定部10と扉側固定部20を連結するリンク部30と、から構成される。
【0015】
筐体側固定部10は、
図2~3に示すように、前面に筐体側軸受部11を突設し後面に設けられた筐体固定部材14で筐体Bに固定可能に構成される。この筐体側固定部10は筐体Bの扉側側面から突出する方向に突出するように、筐体Bに4か所固着されている。
筐体側軸受部11は、平面視して面取りされた略三角形形状である。この筐体側軸受部11の中央部に支点軸bを軸支する支点軸孔12が穿設されている。この支点軸孔12に後述する支点軸bを軸通することにより、筐体側固定部10が支点軸bに軸支される構造となっている。
また、筐体側軸受部11には、後述する棒状リンク部材の一端に設けられた軸受用ピンが挿通される筐体側平行リンク軸受用孔13が形成されている。
なお、支点軸孔はストレート壁、すなわち、ねじ山などが形成されておらず、支点軸孔は上下に摺動可能に支点軸bが軸通可能とされている。
筐体側固定部10は、筐体Bにボルト・ねじ等で固定可能に構成される。具体的には、筐体側固定部10が正面視してL字状又は、横に突出した凸字形状で構成され、筐体側ベース部と直行する方向に突出した筐体固定部材14にボルト孔(またはネジ孔)15を形成し、ボルトまたはネジによって筐体Bに固定される。
【0016】
支点軸bは、筐体固定部を軸通する軸止用の棒材である。支点軸bは筐体側ベース部に形成した支点軸孔に軸通される。なお、支点軸bの表面にはネジ山などは形成されておらず、支点軸孔に支点軸bが挿入されることにより、支点軸bが筐体固定部に軸通される。
【0017】
扉側固定部20は、筐体側固定部10と同様に、前面に扉側軸受部を突設し後面に設けられた扉側固定部材で扉Tに固定可能に構成される。この扉側固定部20は扉Tの筐体側固定部10が設けられている方の側面から突出する方向に突出するように、扉Tに4か所固着されている。
扉側軸受部は、平面視して面取りされた略三角形形状である。この扉側軸受部の中央部に調整軸tを軸支する調整軸孔が穿設されている。この調整軸孔に後述する調整軸tを軸通することにより、扉側固定部20が調整軸tに軸支される構造となっている。
また、扉側軸受部には、後述する棒状リンク部材の他端に設けられた軸受用ピンが挿通される扉側平行リンク軸受用孔が形成されている。
なお、調整軸孔はストレート壁、すなわち、ねじ山などが形成されておらず、調整軸孔は上下に摺動可能に調整軸tが軸通可能とされている。
扉側固定部20は、扉Tにボルト・ねじ等で固定可能に構成される。具体的には、扉側固定部20が正面視してL字状又は、横に突出した凸字形状で構成され、扉側ベース部と直行する方向に突出した扉固定部材にボルト孔またはネジ孔を形成し、ボルトまたはネジによって扉Tに固定される。
【0018】
筐体側固定部10と扉側固定部20との位置関係が、扉Tの開閉の際における筐体側固定部10の高さ位置と同一位置に扉側固定部20が設けられるように、筐体側固定部10と扉側固定部20が取り付けられている。
【0019】
調整軸tは、扉側固定部20を軸通する軸止用の棒材である。調整軸tは扉側ベース部に形成した調整軸孔に軸通される。なお、調整軸tの表面にはネジ山などは形成されておらず、調整軸孔に調整軸tが挿入されることにより、調整軸tが扉側固定部20に軸通される。
【0020】
リンク部30は、支点軸bと調整軸tとを軸通し筐体側固定部10と扉側固定部20を連結するものである。図に示すように、ブロック状リンク31と棒状リンク32によって平行リンクとなるようにリンク部30が構成される。
ブロック状リンク31は、右端部側を縮径した横長の平面視略楕円状で正面視略長方形状に形成した所定厚のブロック体からなるリンクである。ブロック状リンク31は、左端部近傍に上下に貫通する支点軸挿通孔を穿設し、中央部からやや右寄りに上下に貫通する調整軸挿通孔を穿設している。このブロック状リンク31は、筐体側固定部10の上面及び扉側固定部20の上面と接するように取り付けられ、かつ、支点軸挿通孔に支点軸bが挿通され、調整軸挿通孔に調整軸tが挿通されている。
また、棒状リンク32は、ブロック状リンク31の長さと同じ長さを有し、棒状リンク32の一端には筐体側平行リンク軸受用孔に挿通される連結ピンが固着され、棒状リンクの他端には扉側平行リンク軸受用孔に挿通される連結ピンが固着され、それぞれの連結ピンが平行リンク軸受用孔に挿通されることにより、リンク部30全体として平行リンクを構成する。
【0021】
以上の通り構成した扉機構Dは、
図1(b)に示すように、扉Tを開閉する場合には、リンク部が平行リンクとしての機能を発揮し、扉Tの開閉回数にかかわらず常に、筐体Bに設けられたパッキン面に平行となるように保持することができる。
【符号の説明】
【0022】
B 筐体
b 支点軸
D 扉機構
T 扉
t 調整軸
10 筐体側固定部
20 扉側固定部
30 リンク部
31 ブロック状リンク
32 棒状リンク