(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008373
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】ワーク搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65G 13/00 20060101AFI20240112BHJP
B65G 39/02 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
B65G13/00 B
B65G39/02 B
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110195
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】391025039
【氏名又は名称】株式会社フリーベアコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】古内 寛之
【テーマコード(参考)】
3F033
【Fターム(参考)】
3F033BA02
3F033BC01
3F033GB01
(57)【要約】
【課題】ワークを支持するボールをエアで浮上させるワーク搬送装置において、エア通路の開閉に必要な力を低減させ、軽量のワークでも使用できるワーク搬送装置を提供する。
【解決手段】本発明は、ケーシングと、ケーシングから一部が上方に突出しておりケーシングの内部で供給された圧縮エアが周囲を通過する状態でワークを下方から支持し回転することによりワークを搬送する支持ボールと、上向きの付勢力を受けて支持ボールを押し上げることができ支持ボールの上方にワークが位置した場合支持ボールに押されて下方に移動する支持ボールよりも小さい弁体と、付勢力を発生させる付勢手段と、を備え、ケーシングの内部には、支持ボール及び弁体にエアが触れるようにエア通路が形成されており、エア通路は、弁体が上方に位置する場合は弁体が塞ぐことにより閉鎖され、下方に位置する場合は開放されるよう構成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、
前記ケーシングから一部が上方に突出しており、前記ケーシングの内部で供給された圧縮エアが周囲を通過する状態でワークを下方から支持し、回転することにより前記ワークを搬送する支持ボールと、
前記支持ボールの下方に位置し、上向きの付勢力を受けて前記支持ボールを押し上げることができ、前記支持ボールの上方に前記ワークが位置した場合には、前記支持ボールに押されて下方に移動する、前記支持ボールよりも小さい弁体と、
前記上向きの付勢力を発生させる付勢手段と、を備え、
前記ケーシングの内部には、少なくとも前記支持ボール及び前記弁体にエアが触れるようにエア通路が形成されており、
前記エア通路は、前記弁体が上方に位置する場合は前記弁体が塞ぐことにより閉鎖され、下方に位置する場合は開放されるよう構成されている、ワーク搬送装置。
【請求項2】
前記弁体は、前記支持ボールよりも小径のボールである、請求項1に記載のワーク搬送装置。
【請求項3】
前記付勢手段は、前記エア通路に配置されたOリングである、請求項1または2に記載のワーク搬送装置。
【請求項4】
前記Oリングは、貫通穴が上下方向を向くように配置されており、
前記弁体は、前記Oリングの周方向の一部に支持されたことで、前記Oリングから前記上向きの付勢力を受けるものであって、
前記エア通路のうち、前記弁体の位置する部分の中心に対し、前記Oリングの位置する部分の中心が水平方向にずれている、請求項3に記載のワーク搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを支持するボールをエアで浮上させるタイプのワーク搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークをボールで支持するワーク搬送装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このワーク搬送装置は、
図8に示すように、ワークWを支持するボール103と、ボール103が配置される台102と、ボール103に対してエアを吹き出すエア通路122と、を備える。ボール103の上部は、台102から突出している。エア通路122は、台102に設けられており、ワークWを支持するボール103により開閉可能である。
【0003】
このワーク搬送装置100にワークWが載置されて、ワークWによりボール103が押し下げられると、ボール103とボール103が突出している台102との間に隙間ができてエア通路122が開く。これにより、エア通路122からエアが吹き出し、ボール103が浮上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のワーク搬送装置100では、ボール103は、ワークWを支持できるとように、ある程度の大きさを有するものとされている。このため、台102とボール103との間の接触長さもボール103の大きさに対応した長さとなるので、エア通路122の開閉に必要な力が大きくなる。よって、軽量のワークWを台102に載置しても、ワークWがボール103を押し下げることができないことがあり、軽量のワークWがボール103を押し下げて、エア通路122の開閉を可能とするためには、エア圧力の調整が必要であった。
【0006】
そこで、本発明は、ワークを支持するボールをエアで浮上させるタイプのワーク搬送装置において、エア通路の開閉に必要な力を低減させ、軽量のワークでも使用できるワーク搬送装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のワーク搬送装置は、ケーシングと、前記ケーシングから一部が上方に突出しており、前記ケーシングの内部で供給された圧縮エアが周囲を通過する状態でワークを下方から支持し、回転することにより前記ワークを搬送する支持ボールと、前記支持ボールの下方に位置し、上向きの付勢力を受けて前記支持ボールを押し上げることができ、前記支持ボールの上方に前記ワークが位置した場合には、前記支持ボールに押されて下方に移動する、前記支持ボールよりも小さい弁体と、前記上向きの付勢力を発生させる付勢手段と、を備え、前記ケーシングの内部には、少なくとも前記支持ボール及び前記弁体にエアが触れるようにエア通路が形成されており、前記エア通路は、前記弁体が上方に位置する場合は前記弁体が塞ぐことにより閉鎖され、下方に位置する場合は開放されるよう構成されている。
【0008】
かかる構成によれば、支持ボールよりも小さい弁体がエア通路の開閉を行うため、支持ボール自体がエア通路の開閉を行う構成に比べ、エア通路の開閉に必要な力を小さくできることから、軽量のワークを搬送する際にも使用することができる。
【0009】
また、前記ワーク搬送装置では、前記弁体は、前記支持ボールよりも小径のボールであってもよい。
【0010】
かかる構成によれば、汎用材料であるボールを弁体として用いることができるため、ワーク搬送装置の製造コスト低減に貢献できる。
【0011】
また、前記ワーク搬送装置では、前記付勢手段は、前記エア通路に配置されたOリングであってもよい。
【0012】
かかる構成によれば、汎用材料であるOリングを付勢手段として用いることができるため、ワーク搬送装置の製造コスト低減に貢献できる。
【0013】
また、前記ワーク搬送装置では、前記Oリングは、貫通穴が上下方向を向くように配置されており、前記弁体は、前記Oリングの周方向の一部に支持されたことで、前記Oリングから前記上向きの付勢力を受けるものであって、前記エア通路のうち、前記弁体の位置する部分の中心に対し、前記Oリングの位置する部分の中心が水平方向にずれていてもよい。
【0014】
かかる構成によれば、汎用材料であるOリングを付勢手段として用いつつ、弁体を機能的に配置したエア通路を構成できる。
【発明の効果】
【0015】
以上より、ワークを支持するボールをエアで浮上させるタイプのワーク搬送装置において、エア通路の開閉に必要な力を低減させ、軽量のワークでも使用できるワーク搬送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るワーク搬送装置の模式的な斜視図である。
【
図2】
図2は、前記ワーク搬送装置の模式的な側面図である。
【
図3】
図3は、
図2のIII-III位置における断面図である。
【
図5】
図5は、前記ワーク搬送装置のワーク搬送時における模式的な側面図である。
【
図8】
図8は、従来例に係るワーク搬送装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、
図1~
図7を参照しつつ説明する。ワーク搬送装置1は、
図1、
図2、及び、
図5に示すように、ケーシング2と、ケーシング2から一部が上方に突出しており、ケーシング2の内部で供給された圧縮エアが周囲を通過する状態でワークWを下方から支持し、回転することによりワークWを搬送する支持ボール3と、を備える。また、ワーク搬送装置1は、
図3に示すように、支持ボール3の下方に位置し、上向きの付勢力を受けて支持ボール3を押し上げることができ、
図6に示すように、支持ボール3の上方にワークWが位置した場合には、ワークWの自重により下降した支持ボール3に押されて下方に移動する、支持ボール3よりも小さい弁体4を備える。さらに、ワーク搬送装置1は、前記上向きの付勢力を発生させる付勢手段5を備える。本実施形態のワーク搬送装置1は、少なくとも底面が平面とされたボックス状のワークWを搬送するが、プレート状等の他の形状のワークを搬送してもよい。
【0018】
ケーシング2は、支持ボール3が配置される台である。また、ケーシング2は、例えば略ブロック状であり、具体的に、長尺のブロック状である(
図1参照)。なお、ケーシング2は、平面視で正方形状等の他の形状であってもよい。
【0019】
ケーシング2の上面20には穴21が形成されており、穴21には支持ボール3が上下動するように配置されている。ケーシング2の各穴21には、一つずつ支持ボール3が配置されている。
【0020】
ケーシング2には、複数(本実施形態では、12)の穴21が形成されている。具体的に、ケーシング2には、ケーシング2の長手方向に並んだ複数(本実施形態では、6)の穴21の列が、ケーシング2の短手方向に並んで複数列(本実施形態では、2列)配置されている。また、ケーシング2の短手方向に並んで配置された穴21に設けられた支持ボール3は、平面視で交互に配置されている、即ち、
図3の右側に配置された支持ボール3と左側に配置された支持ボール3とは対称に配置されている。このケーシング2では、支持ボール3が上位置にある場合に加えて、支持ボール3が下位置にある場合でも、ケーシング2から突出した状態となる(
図2及び
図5参照)。
【0021】
なお、ケーシング2に設けられる穴21は1つであってもよい。この場合、ケーシング2に配置される支持ボール3は1つである。このような構成は、例えばケーシング2を複数組み合わせて用いる場合に採用できる。
【0022】
ケーシング2の内部には、少なくとも支持ボール3及び弁体4にエアが触れるようにエア通路22が形成されている(
図3参照)。エア通路22は、
図4に示すように、弁体4が上方に位置する場合は弁体4が塞ぐことにより閉鎖され、
図7に示すように、弁体4が下方に位置する場合は弁体4の表面に対して隙間ができることで開放されるよう構成されている。エア通路22が開放されると、支持ボール3と穴21との間にエアが入り、軽い力で支持ボール3が回転するため、ワークWを容易に搬送することが可能となる。
【0023】
以上のワーク搬送装置1では、支持ボール3よりも小さい弁体4がエア通路22の開閉を行うため、支持ボール3自体がエア通路22の開閉を行う構成に比べ、開閉すべき断面積を小さくできるため、エア通路22の開閉に必要な力を小さくできる。そのため、軽量のワークWを搬送する際にも、ワーク搬送装置1を使用することができる。
【0024】
本実施形態では、エア通路22には、ケーシング2の外部より圧縮エアが供給される。このワーク搬送装置1では、必要なとき(ワークWがワーク搬送装置1に載置され、ワークWの自重で支持ボール3を押し下げたとき)のみエア通路22が開放されるため、常時エア通路22が開放されている構成と比べて、エアの消費量を削減することができる。
【0025】
本実施形態では、ケーシング2は、支持ボール3が配置されるボール配置ブロック23と、ボール配置ブロック23を囲む外枠24と、ボール配置ブロック23及び外枠24の上に載置される蓋部材25と、を備える(
図3参照)。また、ケーシング2は、外枠24と蓋部材25とを固定する固定部材26(例えば、螺子)を備える(
図1に現れている小穴は、固定部材26用の貫通穴の一部である)。ケーシング2を構成する各部材は、例えば、ステンレス等の金属製である。ケーシング2には、ボール配置ブロック23が少なくとも1つ(本実施形態では、複数、具体的には、12)配置され、外枠24及び蓋部材25が1つずつ配置されている。なお、ケーシング2は、ボール配置ブロック23、外枠24、及び、蓋部材25のうち少なくとも2つが1つの部材で構成されていてもよい。
【0026】
ボール配置ブロック23は、外枠24に嵌め込まれている。また、ボール配置ブロック23は、支持ボール3が配置される本体部230と、本体部230と外枠24との間に配置される台座部231と、を備える。
【0027】
本体部230は、略円柱状である。本体部230には、支持ボール3の下半分と対応する形状であり且つ下向きに凹んだ凹部である第一凹部232が設けられている。また、本体部230には、外周部の下端部に周方向に連続して形成され且つ本体部230の中心軸に向かって凹んだ凹部である第二凹部233が設けられている。第二凹部233には、ボール配置ブロック23と外枠24との間のエア漏れを防止するための防止部材234が配置されている。本実施形態では、防止部材234は、軟質樹脂(ゴム)製のOリングである。
【0028】
支持ボール3は、ボール配置ブロック23と蓋部材25との間に、上下移動可能、かつ、全方向で回転可能に配置される。支持ボール3の上下移動に関し、ワークWの搬送時は、ワークWの自重により下方に位置する。一方、ワークWが存在しない時は、弁体4を介した付勢手段5の付勢力により上方に位置する。
【0029】
また、支持ボール3は、例えば、ステンレス等の金属製のボール或いは、樹脂製等の金属以外の材料で形成されたボールである。さらに、支持ボール3は、中実のボールであるが、中空のボールであってもよい。
【0030】
弁体4は、例えば、支持ボール3よりも小径のボール(球状の部材)である。このワーク搬送装置1では、他の用途にも試用される汎用材料であるボールを弁体4として用いることができるため、ワーク搬送装置1のコスト低減に貢献できる。また、ボールを弁体4として用いることで、支持ボール3が回転する際に、弁体4として用いられるボールも回転するため、弁体4が球状の部材以外である構成に比べて、支持ボール3と弁体4との間の摩擦を低減することができる。
【0031】
本実施形態では、弁体4は、常時(支持ボール3が上位置及び下位置にある場合のいずれも)支持ボール3に接触している。また、本実施形態では、弁体4は、1つの支持ボール3に対して1つ設けられている。
【0032】
弁体4として用いられるボールは、例えば、ステンレス等の金属製のボール、或いは、樹脂製等の金属以外の材料で形成されたボールである。本実施形態では、弁体4は、中実のボールであるが、中空のボールであってもよい。なお、弁体4の形状は、例えば柱状、円錐状等の球状以外の形状でもよい。
【0033】
付勢手段5は、エア通路に配置されたOリング5である。このワーク搬送装置1では、汎用材料であるOリングを付勢手段5として用いることができるため、ワーク搬送装置1の製造コスト低減に貢献できる。また、Oリングを付勢手段5として用いることで、付勢手段5の高さを抑えつつ上向きの付勢力を確保できるため、ワーク搬送装置1の高さを抑えることができる。
【0034】
具体的に、Oリング5は、貫通穴が上下方向を向くように配置されている。より具体的に、Oリング5は軟質樹脂(ゴム)製のOリングである。
【0035】
本実施形態のワーク搬送装置1では、弁体4は、Oリング5の周方向の一部に支持されたことで、Oリング5から上向きの付勢力を受ける。また、エア通路22のうち、弁体4の位置する部分の中心C4に対し、Oリング5の位置する部分の中心C5が水平方向にずれている。エア通路22は、弁体4の位置する部分の中心C4とOリング5の位置する部分の中心C5との関係に応じて屈曲した形状(
図3参照)とされている。このワーク搬送装置1では、汎用材料であるOリングを付勢手段5として用いつつ、弁体4を機能的に配置したエア通路22を構成できる。また、本実施形態では、支持ボール3の中心と弁体4の中心とは、水平方向において一致している。
【0036】
なお、付勢手段5は、例えばゴムブロック(直方体状、柱状)、金属バネ、樹脂バネ等でもよい。ゴムブロック、金属バネ、樹脂バネ等を付勢手段5として用いる場合は、弁体4の位置する部分の中心C4と、付勢手段5の位置する部分の中心C5とが水平方向において一致していてもよい。
【0037】
なお、本発明のワーク搬送装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0038】
上記実施形態のワーク搬送装置1では、1つの支持ボール3に対して1つの弁体4が設けられていたが、1つの支持ボール3に対して複数の弁体4が設けられていてもよい。また、1つの支持ボール3に対して1つのエア通路22が設けられていたが、1つの支持ボール3に対して複数のエア通路22が設けられていてもよい。
【0039】
例えば、1つの支持ボール3に対して、同数且つ複数の弁体4及びエア通路22が設けられてもよい。ここの場合、1つの支持ボール3を支持ボール3よりも小径のボールで構成される複数の弁体4で押し上げ、各エア通路22を各弁体4で開閉する構成とする。この構成では、支持ボール3を押し上げる力が分散されるため、支持ボール3を安定して浮き上がらせることができる。
【0040】
また、1つの支持ボール3に対して、複数の小径のボール及び1つのエア通路22が設けられてもよい。この場合、1つの支持ボール3を支持ボール3よりも小径のボール複数で押し上げ、1つのエア通路22を1つの小径のボール(弁体4)で開閉し、残りの小径のボール(詳しくは、エア通路22を開閉する弁体4と同形状であるが、弁としての機能を有さない小径のボール)は支持ボール3の回転を補助する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1…ワーク搬送装置、2…ケーシング、3…支持ボール、4…弁体、5…付勢手段(Oリング)、20…上面、21…穴、22…エア通路、23…ボール配置ブロック、24…外枠、25…蓋部材、26…固定部材、100…ワーク搬送装置、102…台、103…ボール、122…エア通路、230…本体部、231…台座部、232…第一凹部、233…第二凹部、234…防止部材、C4、C5…中心、W…ワーク