(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083747
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】インクジェット記録方法
(51)【国際特許分類】
D06P 5/26 20060101AFI20240617BHJP
D06P 5/00 20060101ALI20240617BHJP
D06P 3/60 20060101ALI20240617BHJP
D06P 1/20 20060101ALI20240617BHJP
D06P 1/16 20060101ALI20240617BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20240617BHJP
D06P 5/30 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
D06P5/26
D06P5/00 104
D06P3/60 C
D06P3/60 A
D06P1/20
D06P1/16 Z
B41M5/00 132
B41M5/00 100
B41M5/00 120
D06P5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197742
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 知妙
(72)【発明者】
【氏名】加賀田 尚義
【テーマコード(参考)】
2H186
4H157
【Fターム(参考)】
2H186AB13
2H186AB15
2H186AB17
2H186AB46
2H186AB50
2H186BA08
2H186DA17
2H186FA07
2H186FB07
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB53
2H186FB56
4H157AA02
4H157BA08
4H157BA12
4H157BA15
4H157BA23
4H157CA37
4H157CA38
4H157CB08
4H157CC01
4H157DA01
4H157DA24
4H157DA34
4H157EA01
4H157FA46
4H157FA47
4H157GA05
4H157GA06
4H157JA10
4H157JA14
4H157JB02
(57)【要約】
【課題】洗濯堅牢性を向上させるインクジェット記録方法を提供すること。
【解決手段】インクジェット記録方法は、処理液組成物をセルロース系繊維が含まれる布帛に付着させる工程と、インク組成物をインクジェットヘッドから吐出させて、中間転写媒体に画像を形成する工程と、中間転写媒体に形成された画像を、処理液組成物が付着された布帛に熱転写させる工程と、を有し、処理液組成物は、ポリエステル樹脂と、水と、を含み、インク組成物は、色材と、水と、を含み、中間転写媒体は、ガラス転移点が100℃以上200℃以下である樹脂を含む剥離層を備える。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液組成物をセルロース系繊維が含まれる布帛に付着させる工程と、
インク組成物をインクジェットヘッドから吐出させて、中間転写媒体に画像を形成する工程と、
前記中間転写媒体に形成された前記画像を、前記処理液組成物が付着された前記布帛に熱転写させる工程と、を有し、
前記処理液組成物は、ポリエステル樹脂と、水と、を含み、
前記インク組成物は、色材と、水と、を含み、
前記中間転写媒体は、ガラス転移点が100℃以上200℃以下である樹脂を含む剥離層を備えるインクジェット記録方法。
【請求項2】
前記色材は、分散染料または顔料である、請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項3】
前記分散染料は、青色分散染料と、赤色分散染料と、黄色分散染料と、を含む、請求項2に記載のインクジェット記録方法。
【請求項4】
前記処理液組成物は、架橋剤をさらに含む、請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項5】
前記架橋剤は、イソシアネート基を分子構造中に有する、請求項4に記載のインクジェット記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットヘッドからインク組成物を中間転写媒体に付着させ、さらに中間転写媒体から布帛へ転写して、布帛に画像などを形成するインクジェット記録方法が知られていた。例えば、特許文献1には、予めクリアインク組成物を付着させた布帛と、特定の樹脂を含んだ剥離層を有する中間転写媒体と、を用いる記録方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の記録方法では、布帛に形成された画像などの洗濯堅牢性を向上させることが難しいという課題があった。詳しくは、中間転写媒体を用いる布帛への染色では、主にポリエステル布帛が用いられる。ポリエステル布帛への昇華転写捺染では、ポリエステルの繊維に染料が定着して捺染が成される。そのため、ポリエステル以外の布帛、例えば綿布帛などを用いると、実用に足る洗濯堅牢性を確保することが難しくなる場合があった。すなわち、洗濯堅牢性を向上させるインクジェット記録方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
インクジェット記録方法は、処理液組成物をセルロース系繊維が含まれる布帛に付着させる工程と、インク組成物をインクジェットヘッドから吐出させて、中間転写媒体に画像を形成する工程と、前記中間転写媒体に形成された前記画像を、前記処理液組成物が付着された前記布帛に熱転写させる工程と、を有し、前記処理液組成物は、ポリエステル樹脂と、水と、を含み、前記インク組成物は、色材と、水と、を含み、前記中間転写媒体は、ガラス転移点が100℃以上200℃以下である樹脂を含む剥離層を備える。
【発明を実施するための形態】
【0006】
まず、本実施形態のインクジェット記録方法に用いる処理液組成物、およびインク組成物について説明する。なお、本発明は以下の実施形態によって限定されるものではない。
【0007】
1.処理液組成物
処理液組成物は予め布帛に付着される。処理液組成物は、ポリエステル樹脂および水を含む。処理液組成物は、さらに架橋剤を含むことが好ましい。
【0008】
1.1.ポリエステル樹脂
処理液組成物がポリエステル樹脂を含むことから、処理液組成物が付着した布帛にポリエステル樹脂を含む層が形成される。後述する熱転写工程にて、中間転写媒体から布帛に転写される剥離層と、ポリエステル樹脂を含む層とが溶着される。そのため、色材が剥離層およびポリエステル樹脂を含む層に包含されて保護される。これにより、布帛に形成された画像などの洗濯堅牢性が向上する。また、発色性および退色性も向上する。
【0009】
特に、インク組成物の色材として昇華性染料を用いる場合には、布帛に転写された剥離層から昇華性染料がポリエステル樹脂を含む層へと昇華して移行する。そのため、布帛の材質によらず昇華転写捺染が容易となる。
【0010】
ポリエステル樹脂としては、例えば、多価カルボン酸由来の構成単位と、多価アルコール由来の構成単位と、を有する樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸と多価アルコールとの公知の縮合反応によって得られる。
【0011】
多価カルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、フタル酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2-カリウムスルホテレフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、コハク酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、無水コハク酸、およびp-ヒドロキシ安息香酸、並びにこれらの塩が挙げられる。塩としては、例えば、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、およびマグネシウム塩が挙げられる。
【0012】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、p-キシリレングリコール、ビスフェノールA-エチレングリコール付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレンオキシドグリコール、ジメチロールプロピオン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジメチロールエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロールエチルスルホン酸カリウム、およびジメチロールプロピオン酸カリウムが挙げられる。
【0013】
ポリエステル樹脂は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、およびスルホ基、並びにこれらのナトリウム塩を含むことが好ましい。これらの基は、ポリエステル樹脂中に、1種以上含まれてもよい。
【0014】
ポリエステル樹脂は、処理液組成物に対してエマルション形態として用いられてもよい。すなわち、ポリエステル樹脂は、分散剤などを用いた水分散体であってもよい。
【0015】
ポリエステル樹脂として市販品を用いてもよい。ポリエステル樹脂の市販品としては、例えば、ユニチカ社のエリーテル(登録商標) KA-5034、KA-5071S、KA-1449、KA-0134、KA-3556、KA-6137、KZA-6034、KT-8803、KT-8701、KT-9204、KT-8904、KT-0507、KT-9511(以上商品名)、互応化学工業社のプラスコート(登録商標) Z-221、Z-446、Z-561、Z-565、RZ-570、Z-592、Z-687、Z-690、Z-730、Z-760、RZ-105、RZ-570、RZ-760(以上商品名)、東洋紡社のバイロナール(登録商標) MD-1200、MD-1500、MD-2000(以上商品名)などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0016】
ポリエステル樹脂のガラス転移点は、40℃以上180℃以下であることが好ましく、50℃以上150℃以下であることがより好ましい。これによれば、布帛に形成された画像の発色性および退色性が向上する。ポリエステル樹脂のガラス転移点は、例えば、示差走査熱量計を用いて測定することが可能である。
【0017】
処理液組成物に含まれるポリエステル樹脂の含有量は、特に限定されないが、処理液組成物の全質量に対する固形分換算値で、0.5質量%以上12.5質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以上4.0質量%以下であることがより好ましい。これによれば、布帛に形成された画像などの洗濯堅牢性がさらに向上する。また、上記画像の発色性および退色性が向上する。
【0018】
1.2.水
水は処理液組成物の主溶媒である。水は、処理液組成物が布帛に付着された後に、乾燥によって蒸発する成分である。水としては、例えば、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水などの純水、および超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものが適用可能である。また、紫外線照射や過酸化水素の添加などによって滅菌した水を使用すると、処理液組成物を長期間保存する場合に、カビやバクテリアの発生が抑制される。
【0019】
処理液組成物における水の含有量は、特に限定されないが、処理液組成物の全質量に対して、5質量%以上が好ましく、7質量%以上99質量%以下がより好ましい。さらには、9質量%以上80質量%以下が好ましく、10質量%以上75質量%以下がさらに好ましく、15質量%以上70質量%以下がより好ましい。さらには、40質量%以上70質量%以下が好ましく、50質量%以上70質量%以下がより好ましい。これにより、布帛に付着された後の乾燥性が向上する。また、処理液組成物をインクジェットヘッドから吐出させて布帛に付着させる場合に、インクジェットヘッドからの吐出性が向上する。
【0020】
1.3.架橋剤
架橋剤は、布帛に形成される画像などにおいて、布帛の繊維に対するポリエステル樹脂および色材の密着性を向上させる。これにより、布帛に形成される画像などにおいて、洗濯堅牢性がさらに向上すると共に、発色性および退色性も向上する。
【0021】
架橋剤としては、公知の架橋剤が適用可能であり、20℃程度の室温下で架橋反応が進行するものであってもよく、加熱によって架橋反応が進行するものであってもよい。架橋剤としては、例えば、自己架橋性を有するもの、不飽和カルボン酸成分やヒドロキシ基と反応可能な官能基を有するもの、および多価の配位座を有する金属などが挙げられる。
【0022】
具体的には、架橋剤はイソシアネート基を分子構造中に有することが好ましい。これによれば、布帛の繊維がヒドロキシ基を有するセルロース系繊維などである場合に、イソシアネート基とヒドロキシ基との反応によってウレタン結合が形成される。そのため、布帛に形成された画像などの洗濯堅牢性をさらに向上させることができる。
【0023】
イソシアネート基を有する架橋剤としては、例えば、水分散型ポリイソシアネート、および水分散型ブロックポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0024】
水分散型ポリイソシアネートとしては、例えば、ポリエチレンオキシド鎖によって親水性が付与されたポリイソシアネートを、アニオン性分散剤またはノニオン性分散剤にて水分散させたものが挙げられる。
【0025】
ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネート、これらのジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ビューレット体、およびイソシアヌレート体などのポリイソシアネートの誘導体が挙げられる。上記ポリイソシアネートは、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0026】
水分散型ブロックポリイソシアネートは、水分散型ポリイソシアネートのイソシアネート基をブロック化剤でブロックさせたものである。ブロック化剤としては、例えば、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、ε-カプロラクタム、ブタノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、1,2,4-トリアゾール、ジメチル-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジメチルピラゾール、およびイミダゾールが挙げられる。これらのブロック化剤は、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0027】
イソシアネート基を分子構造中に有する架橋剤として、市販品を用いてもよい。上記市販品としては、例えば、村山化学研究所社のフィキサー #100ECO、#104EA、#220、70ECO、#70、#410、#400(以上商品名)、第一工業製薬社のエラストロン(登録商標) BN-11、BN-27、BN-69、BN-77(以上商品名)などが挙げられる。上述した架橋剤は、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0028】
処理液組成物における架橋剤の含有量は、洗濯堅牢性、発色性、および退色性の観点から、処理液組成物の全質量に対する固形分換算値で、0.1質量%以上10.0質量%以下が好ましく、5質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
【0029】
上記と同様な観点から、処理液組成物における架橋剤の含有量は、処理液組成物に含まれるポリエステル樹脂を1.00とした場合の質量比で、0.01以上1.20以下であることが好ましく、0.05以上0.70以下であることがより好ましい。なお、上記質量比は、架橋剤およびポリエステル樹脂共に固形分換算値である。
【0030】
1.4.その他の成分
処理液組成物は、その他の成分として、界面活性剤、溶解助剤、粘度調整剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、防かび剤、腐食防止剤、およびキレート化剤などの公知の添加剤を含んでもよい。これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0031】
処理液組成物における各添加剤の含有量は、処理液組成物の全質量に対して、例えば、各々0.01質量%以上5.00質量%以下とすることが好ましい。
【0032】
1.5.処理液組成物の調製方法
処理液組成物は、上述した各成分を任意の順序で混合し、必要に応じてろ過などを実施して不純物や異物などを除去することで調製される。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラー、およびマグネティックスターラーなどの撹拌装置を備えた容器に、各成分を順次添加して撹拌、および混合する方法が用いられる。ろ過方法としては、遠心ろ過、およびフィルターろ過などが挙げられる。
【0033】
1.6.処理液組成物の物性
処理液組成物の物性は、布帛の種類や、布帛へ付着させる方法、すなわち、塗布方法などによって、適宜調節される。処理液組成物を布帛に付着させる方法については後述する。
【0034】
1.6.1.粘度
処理液組成物の20℃における粘度は、例えば、1.5mPa・s(ミリパスカル秒)以上100mPa・s以下であることが好ましい。処理液組成物の粘度を上記の範囲とすることにより、布帛に付着させた際に、布帛に対する処理液組成物の広がり易さなどの塗工性が向上する。
【0035】
処理液組成物の粘度は、例えば、Pysica社の粘弾性試験機MCR-300を用いて測定する。具体的には、処理液組成物の20℃の粘度は、処理液組成物の温度を20℃に調整して、Shear Rateを10から1000に上げ、Shear Rateが200[1/秒]のときの粘度を読み取ることで求められる。
【0036】
1.6.2.表面張力
処理液組成物の25℃における表面張力は、30mN/m以上50mN/m以下であることが好ましい。これにより、処理液組成物において、布帛に対する適度な濡れ性や浸透性が発現する。また、処理液組成物が布帛に均一に吸収され易くなるため、処理液組成物を布帛に付着させる際に生じる付着量の濃淡差、すなわち、塗布ムラの発生が抑えられる。
【0037】
処理液組成物の25℃における表面張力は、例えば、協和界面科学社の自動表面張力計 CBVP-Zを用いて測定することができる。具体的には、25℃の環境下にて、白金プレートを処理液組成物で濡らしたときの表面張力を読み取ることによって求められる。
【0038】
2.インク組成物
インク組成物は中間転写媒体に付着される。インク組成物は色材および水を含む。インク組成物は、異なる色を呈する複数種を組み合わせて、インクセットとして用いてもよい。
【0039】
2.1.色材
色材には分散染料または顔料を用いる。色材は、中間転写媒体を介して布帛に移行し、色材特有の色を呈する。異なる色を呈する複数の色材を用いて、カラーの画像、模様、テキストなどが形成される。
【0040】
布帛などの記録媒体において色材が呈する色、すなわち発色の濃さを発色性といい、発色が濃いほど発色性に優れる。
【0041】
2.1.1.分散染料
分散染料は、水不溶性の色材であって、分散剤によって水などの水系分散媒中に分散される。分散染料、および分散染料の分散剤には公知のものが適用可能である。分散染料の中でも、昇華性染料は昇華転写捺染に好適である。昇華性染料は加熱によって昇華する特性を有し、ポリエステル樹脂の繊維中や層中に浸透して定着する。
【0042】
昇華性染料としては、例えば、C.I.(Colour Index Generic Name)ディスパースイエロー 3、7、8、23、39、51、54、60、71、86、C.I.ディスパースオレンジ 1、1:1、5、20、25、25:1、33、56、76、C.I.ディスパースブラウン 2、C.I.ディスパースレッド 11、50、53、55、55:1、59、60、65、70、75、93、146、158、190、190:1、207、239、240、C.I. バットレッド41、C.I.ディスパースバイオレット 8、17、23、27、28、29、36、57、C.I.ディスパースブルー 14、19、26、26:1、35、55、56、58、64、64:1、72、72:1、81、81:1、91、95、108、131、141、145、359、C.I.ソルベントブルー 36、63、105、111などが挙げられる。
【0043】
分散染料は、青色分散染料、赤色分散染料、および黄色分散染料を含むことが好ましい。これによれば、布帛に形成される画像などの発色性を向上させることができる。特に、発色性の観点から、上述した昇華性染料のうち、青色分散染料としてC.I.ディスパースブルー359がより好ましく、赤色分散染料としてC.I.ディスパースレッド60がより好ましく、黄色分散染料としてC.I.ディスパースイエロー54がより好ましい。分散染料は、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0044】
2.1.2.顔料
顔料は、水不溶性の色材であって、分散剤または顔料粒子表面に付与された親水基などにより、水などの水系分散媒中に分散される。顔料の分散剤および親水基の付与方法には公知の技術が適用可能である。
【0045】
顔料には、公知の有機顔料および無機顔料が採用される。有機顔料としては、例えば、アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などのアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料などの多環式顔料、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキなどの染料レーキ顔料、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料などが挙げられる。無機顔料としては、例えば二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化クロムなどの金属酸化物顔料、カーボンブラックなどが挙げられる。また、顔料として、パール顔料やメタリック顔料などの光輝顔料を用いてもよい。
【0046】
具体的には、例えば、黒色顔料としてC.I.ピグメントブラック 1、7、11が挙げられ、白色顔料として、C.I.ピグメントホワイト 6、18、21が挙げられる。また、白色顔料として、中空構造を有する粒子を用いてもよい。中空構造を有する粒子は、無機粒子よび有機粒子のいずれであってもよい。以下の説明では、中空構造を有する粒子を中空粒子ともいう。
【0047】
中空構造とは、少なくとも屈折率が異なる物質が内包される構造をいう。中空粒子とは、具体的には、コア・シェル構造のような空間がシェルに囲まれた構造を有する粒子を指す。中空粒子のコアの材質は、液体および気体のいずれであってもよい。
【0048】
中空構造を有する無機粒子のシェルの材質としては、シリコン、アルミニウム、チタン、ストロンチウム、ジルコニウムなどの金属酸化物、窒化物、酸化窒化物、および各種ガラス、シリカなどの無機化合物が挙げられる。中空構造を有する無機粒子の製造には、公知の方法が適用可能である。中空構造を有する無機粒子には、市販品を用いてもよい。中空構造を有する粒子のシェルの材質は、無機化合物と有機化合物とを組み合わせたものであってもよい。
【0049】
中空構造を有する有機粒子の材質としては、例えば、米国特許4880465号や特許第3562754号などに開示されている樹脂粒子が挙げられる。中空構造を有する有機粒子の製造には、公知の方法が適用可能である。
【0050】
イエロー色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー 1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、155、167、172、180が挙げられる。
【0051】
マゼンタ色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、またはC.I.ピグメントバイオレット 19、23、32、33、36、38、43、50が挙げられる。
【0052】
シアン色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:34、15:4、16、18、22、25、60、65、66、C.I.バットブルー 4、60が挙げられる。
【0053】
上記以外の色用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン 7、10、C.I.ピグメントブラウン 3、5、25、26、C.I.ピグメントオレンジ 1、2、5、7、13、14、15、16、24、34、36、38、40、43、63が挙げられる。
【0054】
インク組成物における色材の含有量は、インク組成物の全質量に対して、0.05質量%以上20.00質量%以下であることが好ましい。これによれば、布帛に形成される画像などの発色性が向上すると共に、インクジェットヘッドにおける目詰まりなどの発生が抑制される。
【0055】
2.2.水
水はインク組成物の主溶媒である。水は、インク組成物が中間転写媒体に付着された後に、乾燥によって蒸発する成分である。水には、上述した処理液組成物と同様なものが適用可能である。
【0056】
インク組成物における水の含有量は、特に限定されないが、インク組成物の全質量に対して、60質量%以上90質量%以下が好ましく、65質量%以上85質量%以下がより好ましく、70質量%以上80質量%以下がさらにより好ましい。これによれば、インク組成物における粘度などの物性が好適に調整されると共に、インクジェットヘッドにおける目詰まりなどの発生が抑制される。
【0057】
2.3.有機溶剤
インク組成物は有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤を含有することにより、粘度、表面張力などのインク組成物の物性や、中間転写媒体に付着させた際の乾燥、浸透などの挙動を制御することが容易となる。有機溶剤としては、例えば、2-ピロリドン類、1,2-アルカンジオール類、多価アルコール類、グリコールエーテル類などが挙げられる。有機溶剤として、これらのうちの1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0058】
2-ピロリドン類は、インク組成物の粘度の増大を抑えて、インクジェットヘッドにおけるインク組成物の吐出安定性を向上させる。2-ピロリドン類としては、2-ピロリドン骨格を有する化合物をいう。2-ピロリドン類としては、例えば、置換基を有しない2-ピロリドンの他に、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドンなどの置換基を有するものが挙げられる。2-ピロリドン骨格における置換基は、炭素数が1から5の、飽和または不飽和の炭化水素基などの有機基が好ましい。
【0059】
1,2-アルカンジオール類は、記録媒体に対して、インク組成物の中間転写媒体に対する濡れ性を高めて均一に濡らす作用に優れる。1,2-アルカンジオール類としては、例えば、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、および1,2-オクタンジオールなどが挙げられる。1,2-アルカンジオール類の中でも、炭素数5以上のアルカンの1,2-アルカンジオールが好ましい。
【0060】
多価アルコール類は、インクジェットヘッドのノズル内においてインク組成物の乾燥を抑える。そのため、ノズルの目詰まりやインク組成物の吐出不良などが低減される。多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、トリメチロールプロパン、およびグリセリンなどが挙げられる。多価アルコール類の中でも、炭素数4以下のアルカンの多価アルコールや、炭素数4以下のアルカンの多価アルコールが分子間で水酸基同士が縮合した縮合物、が好ましい。
【0061】
グリコールエーテル類は、中間転写媒体に対するインク組成物の濡れ性や浸透速度を調整する。グリコールエーテル類としては、例えば、アルキレングリコールモノエーテルやアルキレングリコールジエーテルなどが挙げられる。
【0062】
アルキレングリコールモノエーテルとしては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(メチルトリグリコール)、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、およびジプロピレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。
【0063】
アルキレングリコールジエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、およびジプロピレングリコールジエチルエーテルなどが挙げられる。
【0064】
インク組成物における有機溶剤の含有量は、特に限定されないが、インク組成物の全質量に対して7.5質量%以上35.0質量%以下とすることが好ましく、15.0質量%以上25.0質量%以下とすることがより好ましい。
【0065】
2.4.界面活性剤
インク組成物は界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は、インク組成物の表面張力を低下させて、中間転写媒体に対するインク組成物の濡れ性を向上させる。界面活性剤としては、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、およびフッ素系界面活性剤などが挙げられる。界面活性剤として、これらのうちの1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。これらの界面活性剤として市販品を用いてもよい。」
【0066】
アセチレングリコール系界面活性剤の市販品としては、例えば、Air Products and Chemicals. Inc.社のサーフィノール(登録商標)104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG-50、104S、420、440、465、485、SE、SE-F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA、DF110D(以上商品名)、日信化学工業社のオルフィン(登録商標)B、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD-001、PD-002W、PD-003、PD-004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF-103、AF-104、AK-02、SK-14、AE-3(以上商品名)、川研ファインケミカル社のアセチレノール(登録商標)E00、E00P、E40、E100(以上商品名)などが挙げられる。
【0067】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ポリエーテル変性オルガノシロキサンなどのポリシロキサン系化合物が挙げられる。ポリエーテル変性オルガノシロキサンの市販品としては、例えば、ビックケミー・ジャパン社のBYK(登録商標)-306、BYK-307、BYK-333、BYK-341、BYK-345、BYK-346、BYK-348(以上商品名)、信越化学工業のKF-351A、KF-352A、KF-353、KF-354L、KF-355A、KF-615A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、KF-6020、X-22-4515、KF-6011、KF-6012、KF-6015、KF-6017(以上商品名)などが挙げられる。
【0068】
フッ素系界面活性剤としては、フッ素変性ポリマーを用いることが好ましく、例えば、ビックケミー・ジャパン社のBYK-340(以上商品名)などが挙げられる。
【0069】
インク組成物における界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、インク組成物の全質量に対して0.1質量%以上2.0質量%以下とすることが好ましく、0.3質量%以上1.0質量%以下とすることがより好ましい。
【0070】
2.5.分散剤
インク組成物は分散剤を含有してもよい。分散剤は、インク組成物における色材の分散安定性を向上させる。分散剤としては、例えば、アニオン系分散剤、ノニオン系分散剤、高分子分散剤が挙げられる。これらの分散剤は、一種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0071】
アニオン系分散剤としては、例えば、芳香族スルホン酸のホルマリン縮合物、β-ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、およびクレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物が挙げられる。
【0072】
芳香族スルホン酸としては、えば、クレオソート油スルホン酸、クレゾールスルホン酸、フェノールスルホン酸、β-ナフトールスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸等のアルキルナフタレンスルホン酸、β-ナフタレンスルホン酸とβ-ナフトールスルホン酸との混合物、クレゾールスルホン酸と2-ナフトール-6-スルホン酸との混合物、リグニンスルホン酸などが挙げられる。
【0073】
ノニオン系分散剤としては、例えば、フィトステロールのエチレンオキサイド付加物、コレスタノールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0074】
高分子分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸部分アルキルエステル、ポリアルキレンポリアミン、ポリアクリル酸塩、スチレン-アクリル酸共重合物、ビニルナフタレン-マレイン酸共重合物などが挙げられる。
【0075】
インク組成物における分散剤の含有量は、色材の総量に対して、好ましくは1質量%以上200質量%以下であり、より好ましくは50質量%以上150質量%以下である。これにより、色材の分散安定性がさらに向上する。
【0076】
2.6.その他の成分
インク組成物は、その他の成分として、エマルションなどの樹脂粒子、界面活性剤、溶解助剤、粘度調整剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、防かび剤、腐食防止剤、およびキレート化剤などの種々の添加剤を含んでもよい。これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0077】
インク組成物における各種添加剤の含有量は、インク組成物の全質量に対して、例えば、各々0.01質量%以上5.00質量%以下とすることが好ましい。
【0078】
2.7.インク組成物の調製方法
インク組成物は、上記の各成分を任意の順序で混合し、処理液組成物と同様な方法にて調製される。
【0079】
2.8.インク組成物の物性
インク組成物の物性は、中間転写媒体の種類や、インクジェットヘッドの特性などに応じて適宜調節される。インク組成物を中間転写媒体に付着させる方法については後述する。
【0080】
2.8.1.粘度
インク組成物の20℃における粘度は、例えば、2mPa・s(ミリパスカル秒)以上15mPa・s以下であることが好ましい。これにより、インクジェットヘッドからの吐出安定性が向上すると共に、中間転写媒体に対する広がり易さなどの塗工性が向上する。インク組成物の20℃の粘度は、処理液組成物と同様な方法にて測定することが可能である。
【0081】
2.8.2.表面張力
インク組成物の25℃における表面張力は、20mN/m以上30mN/m以下であることが好ましく、22mN/m以上25mN/m以下であることがより好ましい。これにより、インク組成物において、インクジェットヘッドからの吐出安定性が向上すると共に、中間転写媒体に対する適度な濡れ性や浸透性が発現する。インク組成物の25℃における表面張力は、処理液組成物と同様な方法にて測定することができる。
【0082】
3.インクジェット記録方法
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、布帛前処理工程と、布帛乾燥工程と、インク塗布工程と、熱転写工程と、を有する。以下、各工程の詳細について説明する。
【0083】
3.1.布帛前処理工程
布帛前処理工程では、熱転写工程の前段階として、予め処理液組成物をセルロース系繊維が含まれる布帛に付着させる。布帛において、処理液組成物が付着される領域は、画像などが形成される領域を含めばよい。すなわち、処理液組成物は、布帛全体に付着されてもよく、画像が形成される領域を含む一部分に付着されてもよい。
【0084】
セルロース系繊維は、主としてセルロースで形成されたものであるが、セルロース以外の成分を含んでもよい。セルロース以外の成分としては、例えば、ヘミセルロース、リグニンなどが挙げられる。セルロース系繊維を含む布帛としては、例えば、綿、麻、アセテート、およびトリアセテートなど繊維を含む布帛が挙げられる。セルロース系繊維を含む布帛には、セルロース系繊維と他の繊維との混紡繊維から成る布帛も含まれる。
【0085】
本実施形態のインクジェット記録方法は、セルロース系繊維を含まない布帛などに適用されてもよい。上記布帛としては、羊毛、絹などの天然繊維、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリウレタンなどの合成繊維、ポリ乳酸などの生分解性繊維を含む布帛が挙げられる。また、本実施形態のインクジェット記録方法は、上記の布帛に代えて皮革に用いられてもよい。
【0086】
布帛の形態としては、例えば、織物、編物、不織布、布地、およびこれらに加工を施した衣類やその他の服飾品が挙げられる。衣類やその他の服飾品としては、例えば、縫製後のTシャツ、ハンカチ、スカーフ、タオル、手提げ袋、布製のバッグ、カーテン、シーツ、ベッドカバー、壁紙などのファーニチャー類、縫製前の部品である裁断前後の布地などが挙げられる。
【0087】
また、布帛は、ロール状に巻かれた長尺のもの、所定の大きさや形状に裁断されたものなどであってもよい。なお、布帛には、熱転写工程の前に処理液組成物が付着されていればよい。そのため、布帛として予め処理液組成物が付着されたものを用いてもよい。
【0088】
布帛の目付としては、布帛に形成される画像などの品質の観点から、例えば、1.0oz以上10.0oz以下であることが好ましい。
【0089】
布帛には、予め染料によって着色された布帛を用いてもよい。予め布帛に着色する染料としては、例えば、酸性染料、および塩基性染料などの水溶性染料、分散剤を併用する分散染料、反応性染料、溶剤染料などが挙げられる。布帛としてセルロース系繊維を含む布帛を用いる場合には、セルロース系繊維の染色に適した反応性染料を用いることが好ましく、分散染料を用いることがより好ましい。
【0090】
処理液組成物を布帛に付着させる方法としては、例えば、処理液組成物中に布帛を浸漬する浸漬塗布方法、処理液組成物をマングルローラーやロールコーターなどで塗布するローラー塗布方法、処理液組成物をスプレー装置などによって噴射するスプレー塗布方法、および処理液組成物をインクジェットヘッドから吐出して塗布するインクジェット塗布方法が挙げられる。これらの塗布方法は、布帛の形態などに応じて適宜選択される。また、1つの塗布方法を単独で用いてもよく、複数の塗布方法を組み合わせて用いてもよい。
【0091】
処理液組成物の上記塗布方法の中でも、ローラー塗布方法が好ましい。これによれば、処理液組成物の付着量の設定の自由度が広がると共に、処理液組成物の付着量のばらつきを抑えて布帛に付着させることができる。
【0092】
布帛に対する処理液組成物の付着量は、例えば、0.02g/cm2以上0.50g/cm2以下であることが好ましく、0.02g/cm2以上0.30g/cm2以下であることがより好ましい。これによれば、布帛に対して処理液組成物が比較的に均一に付着して、布帛に形成される画像においてムラなどの発生を抑制すると共に、色材の発色性が向上する。
【0093】
3.2.布帛乾燥工程
布帛乾燥工程では、布帛に付着された処理液組成物を乾燥させる。これにより、処理液組成物中の有機溶剤および水などの揮発分を揮散させて、布帛を構成するセルロース系繊維において、ポリエステル樹脂を含む層の形成が促進される。また、熱転写工程にて色材が中間転写媒体から布帛に移行する際に、上記層中の水や有機溶剤などの残存量が低減されることによって、布帛に形成される画像においてにじみなどの発生が抑制される。
【0094】
布帛に付着された処理液組成物の乾燥には、自然乾燥または加熱乾燥が適用可能である。当工程の所要時間の削減という観点から、加熱乾燥とすることが好ましい。
【0095】
加熱乾燥の加熱方法としては、例えば、ヒートプレス法、常圧スチーム法、高圧スチーム法、およびサーモフィックス法が挙げられる。加熱の熱源としては、例えば、温風、赤外線(ランプ)、およびマイクロウェーブなどが挙げられる。
【0096】
加熱乾燥の加熱温度は、例えば、300℃以下とすることが好ましく、250℃以下とすることがより好ましい。また、加熱温度の上限をこの範囲にすることで、布帛が予め染料で着色されていても、加熱乾燥による染料の昇華を抑えて、予め着色された染料の退色が抑えられる。加熱温度の下限は、例えば、50℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、110℃以上とすることがさらにより好ましい。
【0097】
加熱乾燥の加熱時間としては、例えば、1秒以上5分以下とすることが好ましい。これにより、布帛において、有機溶剤および水などの揮発成分の揮散が促進されることに加えて、熱ダメージが低減される。
【0098】
ヒートプレス法などの加圧を伴う加熱乾燥の場合に、加圧の圧力としては、例えば、1N/cm3以上10N/cm3以下とすることが好ましく、3N/cm3以上6N/cm3以下とすることがより好ましい。これによれば、布帛において、有機溶剤および水などの揮発成分の揮散が促進されることに加えて、熱ダメージが低減される。
【0099】
3.3.インク塗布工程
インク塗布工程では、インク組成物をインクジェットヘッドから中間転写媒体に吐出させて塗布し、中間転写媒体に画像などを形成する。
【0100】
中間転写媒体は、ガラス転移点が100℃以上200℃以下である樹脂を含む剥離層と、基材とを備える。インク組成物は、中間転写媒体の剥離層に対して塗布される。剥離層は、後段の熱転写工程にて、中間転写媒体の基材から分離されて布帛に転写される。すなわち、布帛には色材を含む剥離層が付着する。布帛に転写された色材は、処理液組成物の繊維に形成されたポリエステル樹脂を含む層と、剥離層とによって保護される。
【0101】
剥離層に含まれる樹脂のガラス転移点が100℃以上200℃以下であることから、熱転写工程にて上記範囲に中間転写媒体を加熱することにより、基材から剥離層が剥離する。また、上記樹脂が溶融することによって、剥離層の布帛への結着が促進される。
【0102】
中間転写媒体は、インク組成物が塗布される剥離層の表面側に、インク受容層を有してもよい。インク受容層には、塗布されたインク組成物の色材などの成分が保持される。インク受容層は、剥離層と共に布帛に転写される。
【0103】
色材に昇華性染料などを用いる場合には、熱転写工程の加熱によって、インク受容層中の昇華性染料を剥離層へ昇華拡散させてもよい。剥離層は透明であることが好ましく、インク受容層は不透明、具体的には白色であることが好ましい。これにより、インク受容層と剥離層とが布帛に転写されると、白色のインク受容層が布帛の色を遮蔽する。そのため、布帛の表面側の剥離層に昇華拡散した昇華性染料が布帛の色の影響を受け難くなり、発色性が向上する。
【0104】
剥離層に含まれるガラス転移点が100℃以上200℃以下である樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリル樹脂、スチレン-アクリル共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、およびジアリルメチルアンモニウムクロリドに基づく重合体のうちの1種以上が挙げられる。これによれば、基材からの剥離性、布帛に形成される画像における発色性、画質などが向上する。
【0105】
上述した中間転写媒体として市販品を用いてもよい。中間転写媒体の市販品としては、例えば、Forever社のSubli-Light(No-cut)、およびSubli-Flex(No-cut)などが挙げられる。
【0106】
インク塗布工程は、インクジェット法にて行われる。インクジェット法とは、液滴をインクジェットヘッドから対象物に対して吐出して付着させ、対象物に画像、模様、テキストなどを形成する方法である。インクジェット法には、インクジェットプリンターなどの公知のインクジェット記録装置が適用可能である。液滴吐出の駆動手段であるインクジェットヘッドのアクチュエーターとしては、圧電素子、振動板を静電吸着により変位させる電気機械変換素子、および加熱によって発生する気泡にて液滴を吐出する電気熱変換素子が挙げられる。
【0107】
インク塗布工程では、インクジェット記録装置のインクジェットヘッドから、中間転写媒体に対してインク組成物の液滴を塗布する。このとき、上記液滴を、中間転写媒体の所定の位置に対して所定の質量で付着させる。これにより、中間転写媒体に液滴が塗布されて、画像、文字、模様などが形成される。
【0108】
インク組成物は、中間転写媒体の剥離層またはインク受容層に塗布される。中間転写媒体に形成されるインク組成物の画像は、布帛に形成される所望の画像の反転画像である。
【0109】
3.4.熱転写工程
熱転写工程では、中間転写媒体に形成された画像などを、処理液組成物が付着された布帛に熱転写させる。詳しくは、中間転写媒体の画像が形成された領域と、布帛において画像を形成したい領域とを、対向させた状態で加熱する。これにより、剥離層およびインク受容層が布帛に転写されて、所望の画像などが布帛に形成される。なお、上述した通り、布帛において画像を形成したい領域には処理液組成物が付着されている。
【0110】
熱転写工程における加熱温度は、160℃以上220℃以下が好ましく、160℃以上210℃以下がより好ましく、170℃以上200℃以下がさらにより好ましい。熱転写工程における加熱の処理時間は、15秒以上90秒以下が好ましく、20秒以上60秒以下がより好ましく、20秒以上50秒以下がさらにより好ましい。これらによれば、中間転写媒体からの剥離層の剥離と布帛への転写が促進される。また、布帛に形成される画像などの発色性が向上し、にじみなどの発生が抑制される。
【0111】
熱転写工程においては、中間転写媒体の画像が形成された領域と、布帛において画像を形成したい領域とを、密着させて加熱することが好ましく、加圧して加熱することがより好ましい。上記加圧は、1.5bar以上6.0bar以下が好ましく、2.0bar以上3.0bar以下がより好ましい。これによれば、中間転写媒体からの剥離層の剥離と布帛への転写が促進される。また、布帛に形成される画像などの発色性が向上し、にじみなどの発生が抑制される。なお、画像が形成された布帛に対して、洗浄などの後処理工程を行ってもよい。
【0112】
以上の工程を経て、布帛に所望の画像などが形成される。
【0113】
本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。布帛に形成された画像などの洗濯堅牢性を向上させることができる。詳しくは、処理液組成物により、布帛にポリエステル樹脂を含む層が形成される。そして、熱転写工程にて、中間転写媒体から布帛へ色材を含む剥離層が転写されて、布帛のポリエステル樹脂を含む層と剥離層とが溶着する。そのため、色材が剥離層によって保護されるため、布帛の材質に依らず洗濯堅牢性が向上する。すなわち、洗濯堅牢性を向上させるインクジェット記録方法を提供することができる。また、布帛に形成された画像などの発色性および退色性を向上させることができる。
【0114】
4.実施例および比較例
以下、実施例および比較例を示して、本発明の効果をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって限定されない。
【0115】
4.1.処理液組成物の調製
表1の組成にしたがって、各処理液を上述した方法にて調製した。処理液1および処理液2は、ポリエステル樹脂、架橋剤、および水を含む処理液組成物である。処理液3は、処理液1,2に対して、架橋剤を抜いた処理液組成物である。処理液4は、ポリエステル樹脂および架橋剤を含まない、水のみの処理液組成物である。
【0116】
【0117】
表1において、数値の単位は質量%であり、数値の記載がない、-表記の欄は含有しないことを意味する。ポリエステル樹脂および架橋剤の各成分の数値は、水分散体としての添加量である。なお、一部の成分の名称に略称を用いている。略称の詳細は以下の通りである。
【0118】
ポリエステル樹脂
・KT-8803:エリーテル(登録商標)KT-8803(商品名)。ユニチカ社。
架橋剤
・フィキサー♯220:水分斬型ブロックポリイソシアネート。村山化学研究所社。
・フィキサー♯104EA:水分散型ブロックポリイソシアネート。村山化学研究所社。
【0119】
4.2.インク組成物の調製
表2の組成にしたがって、各インク組成物を上述した方法にて調製した。インク1からインク4は、色材として昇華性染料を用いた水準である。インク5,6は、色材として白色顔料を用いた水準である。
【0120】
【0121】
表2において、数値の単位は質量%であり、数値の記載がない、-表記の欄は含有しないことを意味する。昇華性染料および白色顔料の数値は、固形分換算値である。界面活性剤および樹脂粒子の数値は添加量である。なお、一部の成分の名称に略称を用いている。略称の詳細は以下の通りである。
【0122】
昇華性染料
・DB359:C.I.ディスパースブルー359。
・DR60:C.I.ディスパースレッド60。
・DY54:ディスパースイエロー54。
白色顔料
・PW6:C.I.ピグメントホワイト。二酸化チタン粒子。NanoTek(登録商標)Slurry。シーアイ化成社。
・中空粒子:中空構造を有するスチレン-アクリル樹脂粒子の水分散体。SX8782。JSR社。
界面活性剤
・BYK348:シリコーン系界面活性剤。ビックケミー・ジャパン社。
樹脂粒子
・樹脂エマルション:タケラック(登録商標) WS-602。三井化学社。
【0123】
4.3.評価用布帛の作製
表3および表4に示した条件にて、実施例1から実施例8、および比較例1から比較例11の評価用布帛を作製した。実施例1から実施例6、および比較例1から比較例5は、インク組成物の色材として昇華性染料を用いた水準である。実施例7,8、および比較例6から比較例11は、インク組成物の色材として白色顔料を用いた水準である。具体的な評価用布帛の作製手順は以下の通りである。
【0124】
【0125】
【0126】
布帛として東洋紡社の白色綿ブレード♯4000を用いた。白色顔料にて画像を形成する水準には、黒色綿100%のTシャツであるトムス社のPrintstar(登録商標),ヘビーウェイト5.6Oz(商品名)を用いた。
【0127】
まず、布帛前処理工程として、布帛に各処理液組成物を浸透させた後、絞り率が80%となるようにマングルローラーに通して、余剰の処理液組成物を排除した。
【0128】
なお、絞り率は、マングルローラーを通した後の処理液組成物が残存する布帛の質量と、処理液組成物を浸透させる前の布帛の初期質量との差分を、上記初期質量にて除した数値の百分率である。
【0129】
次に、布帛乾燥工程として、ヒートプレス法を採用した。詳しくは、イツミ社のヒートプレス機 AF-54TEN(商品名)を用いた。加熱乾燥の条件として、加熱温度を200℃、加圧の圧力を4.2N/cm2、加圧加熱の処理時間を40秒とした。これにより、各処理液組成物を付着させた布帛を作製した。
【0130】
次にインク塗布工程として、インクジェット法にて中間転写媒体にインク組成物を付着させた。詳しくは、まず、セイコーエプソン社のインクジェットプリンター PX-G930のインクカートリッジに各インク組成物を充填した。中間転写媒体は、転写紙1としてForever社のSubli-Light(No-cut)を用い、転写紙2としてセイコーエプソン社のMultipurposeを用いた。転写紙1は、ガラス転移点が100℃以上200℃以下である樹脂を含む剥離層を有する。転写紙2は、剥離層を有しない。
【0131】
次いで、各中間転写媒体の印刷面に、各インク組成物をベタパターンで付着させた。詳しくは、720dpi(dots per inch)×720dpiの解像度、かつ100%Dutyのインク吐出量の場合におけるインク組成物の打ち込み量が12mg/平方inchとなる条件とした。これにより、ベタ状の画像が形成された中間転写媒体を得た。
【0132】
次に熱転写工程として、画像が形成された中間転写媒体から布帛に画像を転写させた。詳しくは、処理液組成物が付着された布帛と、画像が形成された中間転写媒体と、を重ね合わせた。このとき、布帛の処理液組成物が付着した領域と、中間転写媒体の画像が形成された領域と、を対向させた。
【0133】
次いで、両者を重ね合わせた状態にて、太陽精機社のヒートプレス機 TP-608Mを用いて、加熱温度を200℃、加圧の圧力を4.2N/cm2、ヒートプレスの処理時間を40秒として熱転写を行った。これにより、ベタ状の画像が形成された実施例および比較例の各評価用布帛を得た。なお、比較例5,8,9では、熱転写工程にて中間転写媒体の画像が布帛に殆ど転写されなかった。
【0134】
4.4.評価
実施例および比較例の各評価用布帛について、以下に述べる評価を実施して、その評価結果を表3および表4に示した。
【0135】
4.4.1.洗濯堅牢性評価
実施例および比較例の各評価用布帛について、JIS L0844L0844(洗濯に対する染色堅ろう度試験方法)のA-2法に準拠して、洗濯堅牢性評価を実施した。具体的には、蛍光増白剤フリーの一般家庭用洗濯洗剤と、東芝社の家庭用洗濯機 ZABOON(登録商標、商品名)とを用いて、各評価用布帛に対して洗濯、すすぎ、脱水、乾燥の洗濯処理を施した。次いで、評価用布帛の変退色を判定した。
【0136】
評価用布帛の変退色は、初期の評価用布帛と、洗濯処理が施された後の評価用布帛とについて、コニカミノルタ社の蛍光分光濃度計 FD-7を用いてE76を測定し、その変化量ΔE76を以下の評価基準にて評価した。なお、比較例5,8,9は、布帛に色材が殆ど転写されなったため評価に値せず、評価結果の欄を-表記とした。
評価基準
AA:ΔE76<2である。
A:2≦ΔE76<3である。
B:3≦ΔE76<4である。
C:4≦ΔE76<5である。
D:5≦ΔE76である。
【0137】
4.4.2.発色性評価
実施例および比較例の各評価用布帛を作製後、25℃の室内に72時間放置した。次いで、上述の蛍光分光濃度計 FD-7を用いて発色濃度(OD値)を測定した。測定条件は、測定光源をD65、観測視野を2°、濃度をステータスT、偏向フィルターなしとした。
【0138】
次に、得られたOD値について、色材に昇華性染料を用いた表3の水準では、比較例3の評価用布帛のOD値を1としたとき、各水準のOD値の比率を百分率で表して、以下の評価基準にて評価した。色材に白色顔料を用いた表4の水準では、比較例5の評価用布帛のOD値を1としたとき、各水準のOD値の比率を百分率で表して、以下の評価基準にて評価した。
評価基準
AA:200%以上である。
A:150%以上200%未満である。
B:100%以上150%未満である。
C:50%以上100%未満である。
D:50%未満である。
E:殆ど転写されていない。
【0139】
4.4.3.退色性評価
実施例および比較例の各評価用布帛を作製後、25℃の室内に1年間放置した。次いで、コニカミノルタ社の蛍光分光濃度計 FD-7を用いて発色濃度(OD値)を測定した。測定条件は、上記発色性評価と同様とした。
【0140】
次に、得られたOD値について、上記発色性評価の各初期OD値と比較して、OD値の低下分を以下の評価基準にて評価した。なお、比較例5,8,9は、布帛に色材が殆ど転写されなったため評価に値せず、評価結果の欄を-表記とした。
評価基準
A:0.1以下である。
B:0.1超0.2以下である。
C:0.2超0.3以下である。
D:0.3超0.4以下である。
E:0.4超である。
【0141】
4.5.評価結果のまとめ
表3に示すように、実施例1から実施例6の評価用布帛では、洗濯堅牢性評価の結果が、全ての水準で可に相当するB評価以上となった。特に、実施例6以外は、良に相当するA評価以上となった。これにより、昇華性染料を用いた実施例では、洗濯堅牢性が向上することが示された。
【0142】
実施例1から実施例6の評価用布帛では、発色性評価の結果が、全ての水準で可に相当するB評価以上となった。特に、実施例5以外は、良に相当するA評価以上となった。これにより、昇華性染料を用いた実施例では、発色性が向上することが示された。
【0143】
実施例1から実施例6の評価用布帛では、退色性評価の結果が、全ての水準で可に相当するB評価以上となった。特に、実施例6以外は、良に相当するA評価となった。これにより、昇華性染料を用いた実施例では、退色性が向上することが示された。
【0144】
これに対して、比較例1から比較例4の評価用布帛では、洗濯堅牢性評価の結果が、全ての水準で不可に相当するC評価となった。これにより、昇華性染料を用いた比較例では、洗濯堅牢性が向上し難いことが分かった。
【0145】
比較例1から比較例5の評価用布帛では、発色性評価の結果が、全ての水準で可に相当するB評価以下となった。特に、比較例4および比較例5では、不可に相当するC評価以下となった。これにより、昇華性染料を用いた比較例では、発色性が向上し難いことが分かった。
【0146】
比較例1から比較例4の評価用布帛では、退色性評価の結果が、全ての水準で可に相当するB評価以下となった。特に、比較例3および比較例4では、不可に相当するC評価以下となった。これにより、昇華性染料を用いた比較例では、退色性が向上し難いことが分かった。
表4に示すように、実施例7および実施例8の評価用布帛では、洗濯堅牢性評価の結果が、共に可に相当するB評価となった。これにより、白色顔料を用いた実施例では、洗濯堅牢性が向上することが示された。
【0147】
実施例7および実施例8の評価用布帛では、発色性評価の結果が共に良に相当するA評価となった。これにより、白色顔料を用いた実施例では、発色性が向上することが示された。
【0148】
実施例7および実施例8の評価用布帛では、退色性評価の結果が共に良に相当するA評価となった。これにより、白色顔料を用いた実施例では、退色性が向上することが示された。
【0149】
これに対して、比較例6,7および比較例10,11の評価用布帛では、洗濯堅牢性評価の結果が、全ての水準で不可に相当するC評価となった。これにより、白色顔料を用いた比較例では、洗濯堅牢性が向上し難いことが分かった。
【0150】
比較例6から比較例11の評価用布帛では、発色性評価の結果が、全ての水準で不可に相当するC評価以下となった。これにより、白色顔料を用いた比較例では、発色性が向上し難いことが分かった。