(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083749
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】漏液補修方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/12 20060101AFI20240617BHJP
C09K 3/10 20060101ALN20240617BHJP
【FI】
C09K3/12
C09K3/10 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197744
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】修多羅 洋一
(72)【発明者】
【氏名】初田 弘毅
【テーマコード(参考)】
4H017
【Fターム(参考)】
4H017AA04
4H017AB01
4H017AC08
4H017AD06
4H017AE05
(57)【要約】
【課題】漏液箇所を含む補修対象物内を流れる液体を止めることなく、簡易かつ確実に漏液補修を行うことができる漏液補修方法の提供。
【解決手段】漏液箇所を含む補修対象物の一部が露出するように前記補修対象物上にシームレス状態の第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層を形成する第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層形成工程と、露出した前記漏液箇所を含む補修対象物の一部に、第2の活性エネルギー線硬化性組成物を押し当て、前記第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層と前記第2の活性エネルギー線硬化性組成物とを一体化させる一体化工程と、を含む漏液補修方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
漏液箇所を含む補修対象物の一部が露出するように前記補修対象物上にシームレス状態の第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層を形成する第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層形成工程と、
露出した前記漏液箇所を含む補修対象物の一部に、第2の活性エネルギー線硬化性組成物を押し当て、前記第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層と前記第2の活性エネルギー線硬化性組成物とを一体化させる一体化工程と、
を含むことを特徴とする漏液補修方法。
【請求項2】
前記第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層に対し、前記第2の活性エネルギー線硬化性組成物の接着性を向上させる処理を行う接着性向上処理工程を含む、請求項1に記載の漏液補修方法。
【請求項3】
前記漏液箇所における漏液の圧力が0.1MPa以上である、請求項1から2のいずれかに記載の漏液補修方法。
【請求項4】
前記第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層を形成する第1の活性エネルギー線硬化性組成物と前記第2の活性エネルギー線硬化性組成物とは同一の組成物である、請求項1から2のいずれかに記載の漏液補修方法。
【請求項5】
前記第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層を形成する第1の活性エネルギー線硬化性組成物と前記第2の活性エネルギー線硬化性組成物とは異なる組成物である、請求項1から2のいずれかに記載の漏液補修方法。
【請求項6】
前記第1の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化前の貯蔵弾性率が10,000Pa以上500,000Pa以下である、請求項4に記載の漏液補修方法。
【請求項7】
前記第2の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化前の貯蔵弾性率が30,000Pa以上600,000Pa以下である、請求項1から2のいずれかに記載の漏液補修方法。
【請求項8】
露出した前記漏液箇所を含む補修対象物の一部に、支持体上に設けた前記第2の活性エネルギー線硬化性組成物を前記支持体と共に押し当てる、請求項1から2のいずれかに記載の漏液補修方法。
【請求項9】
前記支持体が可撓性を有し、かつ光透過性を有する、請求項8に記載の漏液補修方法。
【請求項10】
前記補修対象物が配管の継手である、請求項1から2のいずれかに記載の漏液補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏液補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水配管は様々なところで使われており、漏水補修のニーズも多い。特に工場内配管の継手から水漏れすることが多く、漏水補修作業のために工場稼働を一時停止すると多大な被害が生じるおそれがある。このことから、工場内配管への配水を止めることなく簡易に漏水補修を行える漏水補修方法の提供が望まれている。
【0003】
このような継手部からの漏水を補修する方法として、例えば、地下構造物の継手部からの漏水を仮止水してから切削により穴を設け、該穴を止水材で埋めて漏水を止水する漏水補修方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記先行技術は、漏液箇所を含む補修対象物の一部が露出するように補修対象物上にシームレス状態の第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層を形成して漏水補修を行うものではなく、先行技術で用いられているセメントや発泡ウレタン等は硬化時間が30分間程度と時間を要し、更に漏水の圧力が高い場合には専用の注入器が必要になり、補修対象物である配管内を流れる液体を止めることなく漏液補修を行うことは極めて困難である。
【0006】
本発明は、従来にける前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、漏液箇所を含む補修対象物内を流れる液体を止めることなく、簡易かつ確実に漏液補修を行うことができる漏液補修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 漏液箇所を含む補修対象物の一部が露出するように前記補修対象物上にシームレス状態の第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層を形成する第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層形成工程と、
露出した前記漏液箇所を含む補修対象物の一部に、第2の活性エネルギー線硬化性組成物を押し当て、前記第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層と前記第2の活性エネルギー線硬化性組成物とを一体化させる一体化工程と、
を含むことを特徴とする漏液補修方法である。
<2> 前記第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層に対し、前記第2の活性エネルギー線硬化性組成物の接着性を向上させる処理を行う接着性向上処理工程を含む、前記<1>に記載の漏液補修方法である。
<3> 前記漏液箇所における漏液の圧力が0.1MPa以上である、前記<1>から<2>のいずれかに記載の漏液補修方法である。
<4> 前記第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層を形成する第1の活性エネルギー線硬化性組成物と前記第2の活性エネルギー線硬化性組成物とは同一の組成物である、前記<1>から<2>のいずれかに記載の漏液補修方法である。
<5> 前記第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層を形成する第1の活性エネルギー線硬化性組成物と前記第2の活性エネルギー線硬化性組成物とは異なる組成物である、前記<1>から<2>のいずれかに記載の漏液補修方法である。
<6> 前記第1の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化前の貯蔵弾性率が10,000Pa以上500,000Pa以下である、前記<4>に記載の漏液補修方法である。
<7> 前記第2の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化前の貯蔵弾性率が30,000Pa以上600,000Pa以下である、前記<1>から<2>のいずれかに記載の漏液補修方法である。
<8> 露出した前記漏液箇所を含む補修対象物の一部に、支持体上に設けた前記第2の活性エネルギー線硬化性組成物を前記支持体と共に押し当てる、前記<1>から<2>のいずれかに記載の漏液補修方法である。
<9> 前記支持体が可撓性を有し、かつ光透過性を有する、前記<8>に記載の漏液補修方法である。
<10> 前記補修対象物が配管の継手である、前記<1>から<2>のいずれかに記載の漏液補修方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、漏液箇所を含む補修対象物内を流れる液体を止めることなく、簡易かつ確実に漏液補修を行うことができる漏液補修方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1の(a)から(d)は、従来の漏液補修方法の一例を示す概略図である。
【
図2】
図2の(a)から(d)は、本発明の漏液補修方法の一例を示す概略図である。
【
図3】
図3は、露出した漏液箇所を含む補修対象物の一部に、支持体上に設けた第2の活性エネルギー線硬化性組成物を支持体と共に押し当てる状態を示す概略図である。
【
図4】
図4は、配管の継手の水漏れ評価装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(漏液補修方法)
本発明の漏液補修方法は、第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層形成工程、及び一体化工程を含み、接着性向上処理工程を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0011】
本発明においては、漏液箇所を含む補修対象物の一部が露出するように前記補修対象物上にシームレス状態の第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層を形成することにより、第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層同士の接合部(つなぎ目)をなくし、更に露出した前記漏液箇所を含む補修対象物の一部に、第2の活性エネルギー線硬化性組成物を押し当て、前記第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層と前記第2の活性エネルギー線硬化性組成物とを一体化させることによって、従来の漏液補修方法における、第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層同士の接合部(つなぎ目)から液漏れしやすいという課題を解決でき、漏液箇所を含む補修対象物内を流れる液体を止めることなく、簡易かつ確実に漏液補修を行うことができる。
【0012】
<第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層形成工程>
第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層形成工程は、漏液箇所を含む補修対象物の一部が露出するように前記補修対象物上にシームレス状態の第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層を形成する工程である。
【0013】
第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層がシームレス状態であるとは、隣接する第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層同士の接合部(つなぎ目)のない状態を意味する。第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層の形成に液状の第1の活性エネルギー線硬化性組成物を用いているので、補修対象物としての配管の回りに複数回に分けて付与した第1の活性エネルギー線硬化性組成物が自己融着して、硬化させることによりシームレス状態の第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層を形成することができる。
第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層がシームレス状態であることは、例えば、第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層同士の接合部を目視観察することにより段差や筋がないことにより確認することができる。
【0014】
図1の(a)から(d)に示す従来の漏液補修方法では、
図1の(d)に示すように配管11の1周分に活性エネルギー線硬化性組成物12aを付与する。その場合、1度に多量の活性エネルギー線硬化性組成物を付与し、硬化させることができないので、
図1の(b)のように活性エネルギー線硬化性組成物12aを部分的に付与し、
図1の(c)のように活性エネルギー線照射装置13を用いて光硬化させる工程を複数回繰り返し行うことにより、配管11の1周分に活性エネルギー線硬化性樹脂層12bを形成する。そのとき、隣接する活性エネルギー線硬化性樹脂層12b同士の接合部(つなぎ目)12cが複数個所生じ、この接合部12cから液漏れが生じるおそれがある。
漏液箇所における漏液の圧力は0.1MPa以上の比較的高い圧力である。このような比較的高い圧力に耐えられるように高い弾性率を有する活性エネルギー線硬化性組成物を用いると活性エネルギー線硬化性樹脂層同士の接合部12cの密着性が弱くなり、接合部12cから液漏れが生じる。再び活性エネルギー線硬化性組成物を付与し硬化させても別の接合部12cから液漏れが生じてしまう。したがって、
図1の(a)から(d)に示す従来の漏液補修方法では、活性エネルギー線硬化性組成物を多量に付与したとしても活性エネルギー線硬化性樹脂層同士の接合部12cからの液漏れを完全に止めることは困難であった。
【0015】
本発明の漏液補修方法における漏液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、油などが挙げられる。
前記水としては、水道水、処理水、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水などが挙げられる。なお、水には、水以外の成分が含まれていてもよく、水以外の成分としては、有機溶剤、塩素、各種添加剤などが挙げられる。
前記油としては、例えば、絶縁油(アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、アルキルジフェニル、アルカン)、合成潤滑油(ポリアルファオレフィン油、シリコーン油、フッ素油)、石油系油(原油、灯油、ガソリン、軽油)、鉱物油、動物油(ラード、動物油等)、植物油(大豆油、オリーブオイル等)などが挙げられる。
【0016】
本発明の漏液補修方法における漏液補修の対象物としては、材質、形状、大きさ、構造などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記漏液補修の対象物の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステンレス鋼等の金属、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂等の樹脂などが挙げられる。
前記漏液補修の対象物としては、例えば、工場内の冷却装置の配管及び配管の継手、各種洗浄装置の配管及び配管の継手、工作機械、計測機器、大型コンピュータ等の冷却・温度調節に用いられる冷却水循環装置の配管及び配管の継手、飲料水の配管などが挙げられる。
前記漏液補修の対象物の漏液箇所としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、配管に生じた穴(例えば、ピンホール、線状の貫通穴、腐食や老朽化により生じる穴)、配管の継手部分(例えば、ねじこみ部、フランジ部)などが挙げられる。
前記漏液補修の対象物の表面には、本発明の目的及び効果を損なわない限り、防食塗装等が施されていても構わない。
【0017】
-第1の活性エネルギー線硬化性組成物-
第1の活性エネルギー線硬化性組成物は、重合性化合物、ゴム、粘着付与剤、及び光重合開始剤を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0018】
--重合性化合物--
重合性化合物としては、(メタ)アクリル基を有する重合性化合物が好ましい。(メタ)アクリル基とは、アクリル基及びメタクリル基を意味する。
前記重合性化合物の重量平均分子量は600以上が好ましく、600以上15,000以下がより好ましく、1,000以上10,000以下が更に好ましい。重合性化合物の重量平均分子量が600未満であると、重合性化合物が漏液(水)に拡散してしまい、第1の活性エネルギー線硬化性組成物中で可塑剤として機能している液体成分がなくなり固形化して、第1の活性エネルギー線硬化性組成物の粘着性が低下してしまう。
前記重合性化合物の重量平均分子量が15,000を超えると、ゴムや粘着付与剤との溶解性が悪化し、それぞれ相溶性のあるものが少なくなり、配合により任意の物性に調整しにくくなるという弊害が生じるおそれがある。
前記重合性化合物の重量平均分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0019】
前記重合性化合物は、(メタ)アクリル基等の官能基数が2以上であることが好ましく、4以上がより好ましく、6以上が更に好ましい。官能基数が2以上であると、第1の活性エネルギー線硬化性組成物の速硬化性の点から好ましい。
前記重合性化合物としては、重量平均分子量が600以上を実現する点から、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルポリマー、又はマクロモノマーなどが好適に用いられる。
これらの中でも、金属密着性、疎水性、ゴム及び粘着付与剤への溶解性の観点から、ウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。また、速硬化性の観点から多官能のウレタン(メタ)アクリレートであることがより好ましい。(メタ)アクリルモノマーに比べて(メタ)アクリルオリゴマーは分子量が大きい分、移動が小さく光硬化においてアクリル基同士が出会いにくい。詳しくは、光ラジカル開始剤が光を吸収してラジカルを発生し、それがアクリル基同士に連鎖的に反応し重合する。漏液への拡散の観点からは分子量は大きい方が好ましいので、硬化反応性と漏液への拡散は相反する特性となる。そこで、(メタ)アクリル基数が大きい(メタ)アクリルオリゴマーを選択することにより、速硬化性を確保することができる。
【0020】
前記ウレタン(メタ)アクリレートとしては、市販品を用いることができ、前記市販品としては、例えば、KRM8667、KRM8452(いずれも、ダイセルオルネクス株式会社製)などが挙げられる。
【0021】
前記重合性化合物の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、第1の活性エネルギー線硬化性組成物の全量に対して、20質量%以上80質量%以下が好ましく、30質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0022】
--ゴム--
ゴムとしては、粘着性を有し、かつ重合性化合物に溶解可能であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステル系ゴム、ポリエーテル系ゴム、アクリル系ゴム、ウレタン系ゴム、アミド系ゴムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、重合性化合物に対する溶解性の観点から、アクリル系ゴム、ウレタン系ゴムが好ましい。
前記アクリル系ゴムとしては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。該市販品としては、例えば、クラリティ LA4285(アクリル系ブロック共重合体、株式会社クラレ製)などが挙げられる。
前記ウレタン系ゴムとしては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。前記市販品としては、例えば、E185(熱可塑性エステル型ポリウレタンエラストマー、日本ミラクトラン株式会社製)、E380(熱可塑性エーテル型ポリウレタンエラストマー、日本ミラクトラン株式会社製)などが挙げられる。
前記ゴムの含有量は、第1の活性エネルギー線硬化性組成物の全量に対して、10質量%以上20質量%以下が好ましく、15質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0023】
--粘着付与剤--
粘着付与剤は、表面に粘着性を付与する機能と共に、重合性化合物とゴムの溶解性を取り持つ機能を有する。
前記粘着付与剤としては、ゴムに対する溶解性の点から、酸変性ロジン、ロジンエステル樹脂、テルペンフェノール樹脂、及びケトン樹脂から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
前記酸変性ロジンとしては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。前記酸変性ロジンの市販品としては、例えば、パインクリスタル KR120(酸変性超淡色ロジン、荒川化学工業株式会社製)、KE-604:酸変性超淡色ロジン、荒川化学工業株式会社製などが挙げられる。また、前記ケトン樹脂の市販品としては、例えば、ケトン樹脂(荒川化学工業株式会社製)などが挙げられる。
前記粘着付与剤の含有量は、第1の活性エネルギー線硬化性組成物の全量に対して、20質量%以上40質量%以下が好ましく、25質量%以上40質量%以下がより好ましい。
【0024】
--光重合開始剤--
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン類、ベンジルケタール類、ジアルコキシアセトフェノン類、ヒドロキシアルキルアセトフェノン類、アミノアルキルフェノン類、アシルホスフィンオキシド類などが挙げられる。
前記光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ベンジル、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、ジメトキシアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メトキシチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパン-2-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、ジフェニルアシルフェニルホスフィンオキシド、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチル-ベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
前記光重合開始剤の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、第1の活性エネルギー線硬化性組成物の全量に対して、0.1質量%以上5質量%以下が好ましく、0.5質量%以上4質量%以下がより好ましく、1質量%以上3質量%以下が特に好ましい。
【0026】
--その他の成分--
その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、粘度調整剤、酸化防止剤、老化防止剤、架橋促進剤、紫外線吸収剤、着色剤、可塑剤、防腐剤、分散剤などが挙げられる。
【0027】
第1の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化前の貯蔵弾性率G’は、10,000Pa以上500,000Pa以下が好ましく、10,000Pa以上350,000Pa以下がより好ましく、30,000Pa以上300,000Pa以下が更に好ましい。この範囲に貯蔵弾性率があると、自己融着が起こりやすくシームレス状態になりやすいという利点がある。
前記貯蔵弾性率G’が10,000Pa・s未満であると、漏液の圧力により短時間で風船のように膨らみ破裂して液漏れが生じてしまう。一方、前記貯蔵弾性率G’が500,000Paを超えると、第1の活性エネルギー線硬化性組成物を漏液箇所に付与することが困難となり、ハンドリング性が劣るという問題がある。
また、補修対象としての配管表面への粘着性の観点から、第1の活性エネルギー線硬化性組成物の損失正接(tanδ)は大きい方が塑性変形しやすく、配管の継手のネジ部分のような表面に凹凸があっても追従することができる点から好ましい。一方、tanδが小さいと弾性変形により配管表面に接着しにくい。前記損失正接(tanδ)は、貯蔵弾性率G’/損失弾性率G”から求められ、1より大きいことが好ましく、2以上であることがより好ましい。
硬化前の第1の活性エネルギー線硬化性組成物の貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”、及び損失正接(tanδ)は、例えば、レオメータ(装置名:RSA3、TAインスツルメンツ株式会社製)を用い、25℃、1Hzにて1%歪みの値を測定することにより求めることができる。
【0028】
漏液箇所に第1の活性エネルギー線硬化性組成物を付与する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、刷毛塗り、ヘラ塗り、ローラー塗布、スプレー塗布などが挙げられる。漏液箇所に付与する第1の活性エネルギー線硬化性組成物の付与量は多い方が液漏れにより決壊するまでの時間をかせげる点から好ましい。
【0029】
補修対象としての配管上に付与した第1の活性エネルギー線硬化性組成物に対し、活性エネルギー線照射手段から活性エネルギー線を照射し、第1の活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させる。
前記活性エネルギー線照射手段としては、例えば、発光ダイオード(LED)、レーザダイオード(UV-LD)、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプなどが挙げられる。これらの中でも、小型、高寿命、高効率、低コストの点からLEDが好ましい。
【0030】
第1の活性エネルギー線硬化性組成物に照射する光としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、波長420nm以下の光が好ましい。
照射時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0031】
<一体化工程>
一体化工程は、露出した前記漏液箇所を含む補修対象物の一部に、第2の活性エネルギー線硬化性組成物を押し当て、前記第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層と前記第2の活性エネルギー線硬化性組成物とを一体化させる工程である。
一体化とは、第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層と第2の活性エネルギー線硬化性組成物とが隙間なく連続に形成されることを意味する。
【0032】
第2の活性エネルギー線硬化性組成物は、重合性化合物、ゴム、粘着付与剤、及び光重合開始剤を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
第2の活性エネルギー線硬化性組成物における重合性化合物、ゴム、粘着付与剤、光重合開始剤、及びその他の成分は、上記第1の活性エネルギー線硬化性組成物における重合性化合物、ゴム、粘着付与剤、光重合開始剤、及びその他の成分と同様のものを用いることができる。
【0033】
第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層を形成する第1の活性エネルギー線硬化性組成物と前記第2の活性エネルギー線硬化性組成物とは同一の組成物であることが好ましい。第1の活性エネルギー線硬化性組成物と前記第2の活性エネルギー線硬化性組成物とが同一の組成物であると、第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層と第2の活性エネルギー線硬化性組成物とが互いに相溶して一体化を容易に行うことができる。
同一の組成物であるとは、第1の活性エネルギー線硬化性組成物と第2の活性エネルギー線硬化性組成物に含まれる成分の種類及び含有量が同じであることを意味する。
高圧の漏液と対峙する必要があるため、第2の活性エネルギー線硬化性組成物の弾性率は、第1の活性エネルギー線硬化性組成物よりも高い方が好ましい。
【0034】
第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層を形成する第1の活性エネルギー線硬化性組成物と前記第2の活性エネルギー線硬化性組成物とは異なる組成物であることが好ましい。第2の活性エネルギー線硬化性組成物は最終閉塞を行うため、高圧の液漏れと対峙する必要があるので、弾性率を第1の活性エネルギー線硬化性組成物よりも高くすることができる。
異なる組成物であるとは、第1の活性エネルギー線硬化性組成物と第2の活性エネルギー線硬化性組成物に含まれる成分の種類及び含有量の少なくともいずれかが異なることを意味する。
【0035】
第2の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化前の貯蔵弾性率G’は30,000Pa以上600,000Pa以下であることが好ましく、30,000Pa以上100,000Pa以下であることがより好ましい。これにより、第2の活性エネルギー線硬化性組成物を用いて漏液口を最終閉塞する際の高圧の液漏れに対応することができる。
硬化前の第2の活性エネルギー線硬化性組成物の貯蔵弾性率G’は、例えば、レオメータ(装置名:RSA3、TAインスツルメンツ株式会社製)を用い、25℃、1Hzにて1%歪みの値を測定することにより求めることができる。
【0036】
本発明の漏液補修方法は、露出した漏液箇所を含む補修対象物の一部に、支持体上に設けた第2の活性エネルギー線硬化性組成物を支持体と共に押し当てることが、高圧での液漏れを確実に止める点から好ましい。
前記支持体としては、材質、形状、大きさ、構造などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記支持体の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂、ガラスなどが挙げられる。前記樹脂としては、光透過性を有するものが好ましく、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂などが挙げられる。
前記支持体の形状としては、例えば、シート状、板状などが挙げられる。
【0037】
前記支持体は可撓性を有し、かつ光透過性を有することが好ましい。作業者は両手の指で支持体上に設けた第2の活性エネルギー線硬化性組成物を支持体と共に押し当てるが、支持体が軟らかすぎると支持体全体に力が伝わらず均一に押し当てることができない。一方、支持体が硬すぎて可撓性を有さない場合には面としては均一に押し当てることはできるが、配管の継手のような曲面に追随させて押し当てることができない。また、活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させる際の光照射は支持体の裏側から(支持体を透過させて)行うので、十分な硬化性を得る点から、支持体は光透過性を有することが好ましい。
前記支持体が可撓性を有するとは、支持体が柔軟であり、折り曲げることが可能である性質を有することを意味する。アクリル樹脂、シリコーン樹脂、塩化ビニル樹脂等の樹脂製支持体は可撓性を有するが、ガラス製支持体は可撓性を有しない。
前記支持体が光透過性を有するとは、厚み1mmの支持体の波長405nmの透過率が90%以上であることを意味する。
波長405nmの透過率は、紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V-560)を用いて、測定することができる。
【0038】
<接着性向上処理工程>
接着性向上処理工程は、第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層に対し、第2の活性エネルギー線硬化性組成物の接着性を向上させる処理を行う工程である。接着性向上処理を行うことにより、第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層と第2の活性エネルギー線硬化性組成物との接着性を高くできるので、液漏れを確実に防止できる。
【0039】
前記接着性向上処理としては、第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層に対する第2の活性エネルギー線硬化性組成物の接着性を向上させることができる処理であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記接着性向上処理としては、例えば、(1)第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層の残存モノマーや汚れ等をアセトン等の有機溶剤で除去する処理、(2)第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層の表面をやすり等で削って平坦化させ押し当てたときの密着性を向上させる処理、(3)アンカー効果による接着性の向上を期待してやすり等によりミクロレベルで表面に凹凸をつける処理、(4)露出した漏液箇所を含む補修対象物の一部に、支持体上に設けた第2の活性エネルギー線硬化性組成物を支持体と共に押し当てるときの押圧力を強くする処理などが挙げられる。これらの処理は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
<その他の工程>
その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、洗浄工程、乾燥工程などが挙げられる。
【0041】
以下、本発明の漏液補修方法について、図面を参照して説明する。
図2の(a)から(d)は、本発明の漏液補修方法の一例を示す概略図である。
まず、
図2の(a)に示すように、漏液口15を一箇所確保した上で、漏液箇所を含む補修対象物としての配管11の1周分に液状の硬化前の第1の活性エネルギー線硬化性組成物14aを付与する。なお、第1の活性エネルギー線硬化性組成物の付与は複数回行うが、第1の活性エネルギー線硬化性組成物は液状なので自己融着して活性エネルギー線硬化性樹脂層同士の接合部(つなぎ目)がなくなりシームレス状態となる。漏液口15を一箇所確保しなければ液漏れによって付与した第1の活性エネルギー線硬化性組成物14aが風船のように膨らんでしまう。一箇所の漏液口15は任意の場所でよく、配管内部をつたって開放している漏液口15から液漏れが生じる。液流に対しても第1の活性エネルギー線硬化性組成物14aが流れない限りはゆっくり作業しても第1の活性エネルギー線硬化性組成物14aの形状を整えることができる。
【0042】
次に、
図2の(b)に示すように活性エネルギー線照射装置13としてのLEDランプを配管11の周りを動かしながらゆっくりと光照射して第1の活性エネルギー線硬化性組成物14aを十分に硬化させる。
次に、
図2の(c)に示すように、最終閉塞の際に漏液口15に第2の活性エネルギー線硬化性組成物16aを付与する場合は液漏れの圧力に対して押し戻す必要がある。このため、
図3に示すように、第2の活性エネルギー線硬化性組成物16aを支持体17上に付与して、支持体17を漏液口15に押し当てて第2の活性エネルギー線硬化性組成物を潰して止水した後、支持体17の裏側から活性エネルギー線照射装置13により光を照射して硬化させる。
【実施例0043】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0044】
(活性エネルギー線硬化性組成物の調製例1)
-活性エネルギー線硬化性組成物A1の調製-
ゴム(クラリティ LA4285、アクリル系ブロック共重合体、株式会社クラレ製)14.3質量部、粘着付与剤(パインクリスタル KR120、酸変性超淡色ロジン、荒川化学工業株式会社製)28.6質量部、重合性化合物(KRM8452、官能基数=10、重量平均分子量=1,200、ウレタンアクリレート、ダイセルオルネクス株式会社製)56.0質量部、光重合開始剤1(Omnirad 1173、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、IGM Rsins B.V.社製)0.9質量部、及び光重合開始剤2(Omnirad 819、ビス(2,4,6-トリメチル-ベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、IGM Rsins B.V.社製)0.3質量部を、自転・公転ミキサー(株式会社シンキー製、型式:ARE-400TWIN、自転及び公転をそれぞれ1,600rpm)により30分間撹拌することにより、活性エネルギー線硬化性組成物A1を調製した。
【0045】
(活性エネルギー線硬化性組成物の調製例2)
-活性エネルギー線硬化性組成物B1の調製-
ゴム(クラリティ LA4285、アクリル系ブロック共重合体、株式会社クラレ製)18.8質量部、粘着付与剤(パインクリスタル KR120、酸変性超淡色ロジン、荒川化学工業株式会社製)37.5質量部、重合性化合物(KRM8452、官能基数=10、重量平均分子量=1,200、ウレタンアクリレート、ダイセルオルネクス株式会社製)43.0質量部、光重合開始剤1(Omnirad 1173、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、IGM Rsins B.V.社製)0.5質量部、及び光重合開始剤2(Omnirad 819、ビス(2,4,6-トリメチル-ベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、IGM Rsins B.V.社製)0.2質量部を、自転・公転ミキサー(株式会社シンキー製、型式:ARE-400TWIN、自転及び公転をそれぞれ1,600rpm)により30分間撹拌することにより、活性エネルギー線硬化性組成物B1を調製した。
【0046】
次に、得られた活性エネルギー線硬化性組成物A1及び活性エネルギー線硬化性組成物B1について、以下のようにして、貯蔵弾性率G’を測定した。結果を表1及び表2に示した。
【0047】
<貯蔵弾性率の測定>
硬化前の各漏液補修用組成物について、レオメータ(装置名:RSA3、TAインスツルメンツ株式会社製)を用い、25℃、1Hzにて1%歪みの値を測定し、貯蔵弾性率G’を求めた。
【0048】
(実施例1~5及び比較例1~2)
表1及び表2に示す漏液補修方法に基づき、配管の継手の水漏れ補修を行い、以下のようにして、配管の継手の水漏れ補修性能を評価した。結果を表1及び表2に示した。
【0049】
<従来の漏液補修方法>
図1の(a)から(d)に示すように、第1の活性エネルギー線硬化性組成物12aを配管11の継手周りに付与し、光硬化させた。約1gずつ第1の活性エネルギー線硬化性組成物12aを配管11の継手周りに付与し、支持体としてのシリコーンゴムシート(商品名:シリコーンゴムシート、アズワン株式会社製、厚み:1.0mm)により形を整えた。そして、活性エネルギー線照射装置13としてのLEDライトによる光(中心波長405nm、500mW/cm
2)を30秒間照射することにより光硬化させて第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層12bを形成した。この作業を配管の継手の全周にわたって繰り返し行った。
【0050】
<本発明の漏液補修方法>
図2の(a)から(d)に示すように、漏液口15を一箇所確保した上で、漏液箇所を含む補修対象物としての配管11の1周分に液状の第1の活性エネルギー線硬化性組成物14aを付与し、活性エネルギー線照射装置13としてのLEDライトによる光(中心波長405nm、500mW/cm
2)を配管11の周りを動かしながら30秒間照射して十分に硬化させた。得られた第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層14bは目視観察で第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層同士の接合部に段差や筋がなくシームレス状態であった。
次に、
図3に示すように、支持体17上に付与した第2の活性エネルギー線硬化性組成物16aを支持体と共に漏液口15に押し当てて止水した後、支持体17の裏側から活性エネルギー線照射装置13としてのLEDライトによる光(中心波長405nm、500mW/cm
2)を30秒間照射して硬化させた。
【0051】
-支持体の種類-
実施例1は、支持体としてシリコーンゴムシート(商品名:シリコーンゴムシート、アズワン株式会社製、厚み:1.0mm、波長405nmの透過率46%)を用いた。なお、シリコーンゴムシートは可撓性を有する。
【0052】
実施例2、4、5は、支持体として塩化ビニル樹脂シート(商品名:サンデーシート、アクリサンデー株式会社製、厚み:1.0mm、波長405nmの透過率92%)を用いた。なお、塩化ビニル樹脂シートは可撓性を有する。
【0053】
実施例3は、支持体としてガラス板(商品名:MICRO SLIDE GLASS S1127 76mm×26mm、松浪硝子工業株式会社製、厚み:1.0mm、波長405nmの透過率91%)を用いた。なお、ガラス板は可撓性を有しない。
【0054】
上記支持体の波長405nmの透過率は、紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V-560)を用いて測定した値である。
【0055】
-接着性向上処理-
実施例4では、第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層の表面をやすりで削り、ミクロレベルで表面を粗し、接着性向上処理を行った。
【0056】
<配管の継手の水漏れ評価>
図4は、配管の継手の水漏れ補修評価装置10(自作品)の概略図を示す。この
図4の配管の継手の水漏れ補修評価装置10を用い、工場内の配管2のエアーをレギュレータ1(エアー圧調整)により0.1MPa~0.5MPaのエアー圧に調整した。エアハイドロユニット3において、エアー圧により水を押し出すことにより同じ水圧の水を送り出す。流量計4により流量を50mL/minに調整した。配管(20A 3/4B、ねじ込み式)とソケットの継手5を緩めることにより水漏れを起こした。継手を閉めすぎると流量が小さくなるので、流量が50mL/minとなるよう継手の締め付けを調整した。
次に、表1及び表2に記載されている本発明の漏液補修方法又は従来の漏液補修方法にしたがって、上記の配管の継手の水漏れ補修を行った。
[評価基準]
水圧が0.1MPa、0.4MPa、又は0.5MPaでそれぞれ止水後(光硬化後)60秒の間に目視にて水の滴り落ちることがなければ「止水可:〇」と評価し、光硬化後から止水できない又は止水後60秒未満で水漏れが生じた場合には「止水不可:×」と評価した。
【0057】
【0058】
【0059】
表1及び表2の結果から、本発明の漏液補修方法を行った実施例1~5は、いずれも水圧0.1MPaでの配管の継手の水漏れを止水することができた。
実施例1は、支持体としてシリコーンゴムシートを用いており、このシリコーンゴムシートは実施例2で用いた支持体である塩化ビニル樹脂シートに比べて波長405nmの透過率が低いため、第1の活性エネルギー線硬化性組成物の光硬化が十分ではなく、水圧0.1MPaでの配管の継手の水漏れを止水することはできたが、水圧0.4MPaでの配管の継手の水漏れを止水できなかった。
実施例3は、支持体として可撓性のないガラス板を用いており、支持体を強く押し当てることができないため、第1及び第2の活性エネルギー線硬化性樹脂層の密着性が低くなり、水圧0.1MPaでの配管の継手の水漏れを止水することはできたが、水圧0.4MPaでの配管の継手の水漏れを止水できなかった。
実施例4は、実施例2において、更に接着性向上処理を行ったものであり、その結果、水圧0.5MPaでの配管の継手の水漏れを止水することができた。
実施例5は、実施例2において、第1及び第2の活性エネルギー線硬化性組成物として活性エネルギー線硬化性組成物A1を用いており、第2の活性エネルギー線硬化性組成物の弾性率が低くなり、最終閉塞が弱くなるため、水圧0.1MPaでの配管の継手の水漏れを止水することはできたが、水圧0.4MPaでの配管の継手の水漏れを止水できなかった。
【0060】
これに対して、従来の漏液補修方法を行った比較例1は、第1の活性エネルギー線硬化性樹脂層と第2の活性エネルギー線硬化性樹脂層との接合部(つなぎ目)から液漏れが生じ、水圧0.1MPaでの配管の継手の水漏れを止水できなかった。
比較例2は、従来の漏液補修方法を行い、かつ第1及び第2の活性エネルギー線硬化性組成物として活性エネルギー線硬化性組成物B1を用いているので、第1及び第2の活性エネルギー線硬化性組成物の弾性率が高すぎて、互いに自己融着してシームレス状態になりにくく、水圧0.1MPaでの配管の継手の水漏れを止水できなかった。
本発明の漏液補修方法は、漏液箇所を含む補修対象物内を流れる液体を止めることなく、簡易かつ確実に漏液補修を行うことができるので、例えば、工場内の冷却装置の配管及び配管の継手、各種洗浄装置の配管及び配管の継手、工作機械、計測機器、大型コンピュータ等の冷却・温度調節に用いられる冷却水循環装置の配管及び配管の継手、飲料水の配管などに好適に用いられる。