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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083750
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】魚釣用リール
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/015 20060101AFI20240617BHJP
【FI】
A01K89/015 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197745
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】古瀬 咲希
(72)【発明者】
【氏名】野々垣 元博
(72)【発明者】
【氏名】小畑 利昭
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108EG01
2B108EG06
2B108EG09
(57)【要約】
【課題】釣糸案内体が回動する構成を備えた魚釣用リールにおいて、釣糸の巻き取り操作時に、釣糸案内体が軸方向へガタ付くことを抑制することを目的とする。
【解決手段】魚釣用リールのレベルワインド装置は、クラッチ機構のON/OFF動作に連動して回動する管状体12と、管状体12内に収容され、ハンドルの回転操作によって回転駆動されるウォームシャフトと、ウォームシャフトの螺旋溝に係合する係合ピンを備え、釣糸が挿通される釣糸挿通部22を保持する保持体21と、保持体21と管状体12が一体回動するように、保持体21と管状体12に設けられた2つの周方向回り止め部(リブ12b及びこれに対応する凹部21b)と、を有している。2つの周方向回り止め部は、管状体12に略180°間隔で設けられており、2つの周方向回り止め部の中間位置に、保持体21が管状体12の軸方向にガタ付くことを抑制する軸方向回り止め部50を設けたことを特徴とする。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体の左右側板間に回転自在に支持されたスプールと、
前記スプールを釣糸巻き取り状態と釣糸放出状態に切り換えるクラッチ機構と、
前記クラッチ機構がON状態でハンドルを回転操作した際、前記スプールに釣糸を均等に巻回するレベルワインド装置と、を有する魚釣用リールにおいて、
前記レベルワインド装置は、リール本体の左右側板間に回動可能に支持され、前記クラッチ機構のON/OFF動作に連動して回動する管状体と、前記管状体内に収容され、前記ハンドルの回転操作によって回転駆動されるウォームシャフトと、前記ウォームシャフトの螺旋溝に係合する係合ピンを備え、釣糸が挿通される釣糸挿通部を保持する保持体と、前記保持体と前記管状体が一体回動するように、前記保持体と前記管状体に設けられた2つの周方向回り止め部と、を有しており、
前記2つの周方向回り止め部は、前記管状体に略180°間隔で設けられており、
前記2つの周方向回り止め部の中間位置に、前記保持体が前記管状体の軸方向にガタ付くことを抑制する軸方向回り止め部を設けた、
ことを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
前記2つの周方向回り止め部は、前記管状体の外周面に略180°間隔で形成された2つのリブと、前記保持体の対応する位置に形成された2つの凹部を備えており、
前記軸方向回り止め部は、前記2つのリブが形成される位置から周方向に45°以上離れた範囲内に設けられることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項3】
前記軸方向回り止め部は、前記係合ピンと対向する範囲内に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の魚釣用リール。
【請求項4】
前記軸方向回り止め部は、前記管状体の外周面に形成され、前記2つのリブよりも高さが低く幅広な凸部を有することを特徴とする請求項2又は3に記載の魚釣用リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプール前方の側板間に、スプールに釣糸を巻回案内する釣糸案内体を備えた魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、両軸受型タイプの魚釣用リールには、左右側板間に回転可能に支持されたスプールに対して釣糸を均等に巻回するように、レベルワインド装置が配設されている。このレベルワインド装置は、一方の側板側に回転可能に配設されたハンドルの巻き取り操作に連動して、スプール前方で左右に往復動する釣糸案内体を備えており、前記釣糸案内に釣糸が挿通されることで、スプールに対して釣糸を均等に巻回することが可能となっている。
【0003】
上記した釣糸案内体として、釣糸放出時の抵抗を軽減するように開口領域が広く形成された開口部と、釣糸巻き取り時に釣糸を案内する幅狭部を備え、クラッチの切換操作に連動して釣糸案内体を回動させる構成が知られている(例えば、特許文献1)。このような構成では、クラッチをOFFにすると、開口部がスプール前方に位置するため、キャスティング操作時にスプールに巻回された釣糸は、釣糸案内体の開口部の内面から大きな抵抗を受けることがなく、仕掛けの飛距離の低下を抑制して安定したキャスティングを行なうことが可能となる。また、クラッチをONに復帰すると、幅狭の案内部がスプール前方に位置するため、釣糸をスプールに対して均等に巻き取ることが可能となる。
【0004】
上記した釣糸案内体は、クラッチ操作と連動して回動する管状体に対して、軸方向(左右方向)に移動可能で管状体と共に一体回動する保持体に取り付けられている。前記保持体には、管状体内に配設されたウォームシャフトの螺円溝に係合する係合ピンが設けられており、ウォームシャフトがハンドルの回転操作と共に回転駆動されることで、釣糸案内体は、螺円溝と係合ピンの係合関係によって軸方向に移動可能となっている。
【0005】
また、前記管状体と保持体は、一体回動が可能となるように構成されている。前記特許文献1に開示された構成では、管状体の外面に、軸方向に延出するリブを略180°間隔で形成し、このリブを保持体に軸方向に沿って形成された凹部に嵌合させることで、一体回動させている。すなわち、前記管状体がクラッチ操作によって回動駆動された際、前記保持体(釣糸案内体)は、上記した嵌合関係によって、管状体と共に一体となって回動できるよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-45号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した両軸受け型リールでは、2つのリブと凹部の嵌合関係によって、前記管状体と前記保持体(釣糸案内体)を一体的に回動可能としている。前記保持体の回動は、スプールに釣糸を巻き取っていない状態、すなわち、クラッチ機構をON/OFF操作するときに成され、釣糸案内体は軸方向で停止した状態となっている。
前記保持体は、クラッチ機構がONになった状態で、ハンドルを巻き取り操作することで管状体に対して軸方向に摺動する。
【0008】
従来の保持体は、軸方向(左右方向)に往復駆動される際、軸方向にガタ付き易くなるという問題がある(図6の矢印D2,D3で示す揺動するようなガタ付き)。そして、このように保持体がガタ付くと、釣糸を巻き取り操作する際にスプールに対して釣糸を綺麗に巻けなくなり、次の釣糸放出時に抵抗となってしまう。また、保持体がガタ付くことで、巻き取り操作する際、特に高速で巻き取り操作する際に異音が生じてしまい精密感に欠けてしまう。
【0009】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、釣糸案内体が回動する構成を備えた魚釣用リールにおいて、釣糸の巻き取り操作時に、釣糸案内体が軸方向へガタ付くことが抑制された魚釣用リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するために、本発明に係る魚釣用リールは、リール本体の左右側板間に回転自在に支持されたスプールと、前記スプールを釣糸巻き取り状態と釣糸放出状態に切り換えるクラッチ機構と、前記クラッチ機構がON状態でハンドルを回転操作した際、前記スプールに釣糸を均等に巻回するレベルワインド装置と、を有する構成において、前記レベルワインド装置は、リール本体の左右側板間に回動可能に支持され、前記クラッチ機構のON/OFF動作に連動して回動する管状体と、前記管状体内に収容され、前記ハンドルの回転操作によって回転駆動されるウォームシャフトと、前記ウォームシャフトの螺旋溝に係合する係合ピンを備え、釣糸が挿通される釣糸挿通部を保持する保持体と、前記保持体と前記管状体が一体回動するように、前記保持体と前記管状体に設けられた2つの周方向回り止め部と、を有しており、前記2つの周方向回り止め部は、前記管状体に略180°間隔で設けられており、前記2つの周方向回り止め部の中間位置に、前記保持体が前記管状体の軸方向にガタ付くことを抑制する軸方向回り止め部を設けた、ことを特徴とする。
【0011】
上記した構成の魚釣用リールによれば、レベルワインド装置を構成する管状体と、釣糸挿通部を保持する保持体が、2つの周方向回り止め部によってクラッチ操作と共に一体的に回動するようになっている。前記2つの周方向回り止め部は、前記管状体に略180°間隔で設けられており、その中間位置に、保持体が管状体の軸方向にガタ付くことを抑制する軸方向回り止め部が設けられている。このため、釣糸をスプールに巻き取る際、釣糸挿通部を保持した保持体が左右側板間で往復駆動されても、保持体が軸方向に沿ってガタ付くことが抑制される。このように、保持体が軸方向に沿ってガタ付かないため、スプールに対して正確に釣糸が巻回され、ガタ付きに伴う異音の発生が抑制される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、釣糸案内体が回動する構成を備えた魚釣用リールにおいて、釣糸の巻き取り操作時に、釣糸案内体が軸方向へガタ付くことが抑制された魚釣用リールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る魚釣用リールの一実施形態を示し、前方側から見た斜視図。
図2】本実施形態の釣糸案内体の構造を示す分解斜視図。
図3】釣糸案内体を示す部分断面図。
図4】管状体の構成を示す概略図。
図5】(a)は、図4に示す嵌合関係の作用を説明する正面図、(b)は、図(a)の側面図。
図6】(a)は、従来の嵌合関係の作用を説明する正面図、(b)は、図(a)の側面図。
図7】管状体の別の構成を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1から図5を参照して本発明に係る魚釣用リールの一実施形態について説明する。
なお、以下の説明において、前後方向(前方、後方)、左右方向、上下方向(上方、下方)は、図1で示す方向で定義する。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係る魚釣用リールは、左右のフレーム2a,2bを、それぞれ左右のカバー3a,3bで覆った左右側板1A,1Bを備えたリール本体1を有している。前記リール本体1には、左右側板間に位置し、釣竿100に装着されるリール脚が一体形成されている。また、前記左右のフレーム2a,2b間には、スプール軸が軸受を介して回転可能に支持されており、スプール軸には、釣糸が巻回されるスプール3が一体的に固定されている。
【0016】
本実施形態では、前記スプール3を回転駆動するハンドル5を左側板1A側に設置しており、左フレーム2aと左カバー3aとの間の空間には、ハンドル5の回転駆動力をスプール軸に伝達する公知の動力伝達機構が配設されている。また、いずれかの側板には、スプール軸を動力伝達状態と動力遮断状態に切り換える公知のクラッチ機構が配設されており、このクラッチ機構は、スプール3の後方側の左右側板間に配設されたクラッチレバー8を押し下げ操作することで、クラッチON状態(動力伝達状態)からOFF状態(動力遮断状態)に切り換えるようになっている。なお、クラッチOFF状態からクラッチON状態への復帰は、公知の自動復帰機構によってハンドル5を回転操作することで行うことが可能となっている。
【0017】
前記左右の側板1A,1B間には、スプール3の前方側にレベルワインド装置10が配設されている。
前記レベルワインド装置10は、スプール3に巻回された釣糸を挿通させる釣糸案内体20と、前記駆動力伝達機構を介して回転駆動されるウォームシャフト(螺軸)11と、前記ウォームシャフト11を収容する管状体(筒体)12とを備えており、釣糸案内体20に設けられた係合ピンがウォームシャフト11と係合することによって、左右往復駆動されるよう構成されている。
【0018】
前記ウォームシャフト11は、左右側板間に回動可能に保持される管状体12内に収容された状態となっており、前記管状体12の外面には、軸方向に延出する長孔12aが形成されている。前記ウォームシャフト11の表面には、螺旋溝11aが形成されており、この螺旋溝11aは、前記長孔12aを介して露出した状態となっている。また、前記釣糸案内体20は、樹脂等によって一体形成された保持体(本体)21と、保持体21の上部に一体的に固定されて、実際に釣糸が挿通する釣糸挿通部22とを備えている。前記保持体21には、左右方向に沿って貫通孔21aが形成されており、前記管状体12を囲繞するように配置、形成されている。すなわち、管状体12は、保持体21の貫通孔21aを挿通した状態となっている。
【0019】
前記管状体12は、前記クラッチ機構のクラッチレバー8の操作に伴って、所定の角度だけ回動駆動される。具体的には、図1に示すクラッチON状態からクラッチレバー8を押し下げてクラッチOFF状態にすると、管状体12は手前側(図1の矢印D1方向)に回動駆動される。なお、クラッチレバー8を押し下げ操作した際、管状体12を回動駆動させる動力伝達機構については、例えば、上記した特許文献1に開示されている構成と同様の動力伝達機構で行なうことが可能である。すなわち、クラッチレバー8を押し下げ操作すると、クラッチプレート(図示せず)が回動駆動され、管状体12に回り止め固定されてた回動プレート12Aの長孔12Bに係合しているクラッチプレートの係合突起(図示せず)を介して管状体12は回動駆動される。
【0020】
前記保持体21と管状体12は、周方向回り止め部によって一体回動可能となるように連結されている。本実施形態の周方向回り止め部は、図3に示すように、前記管状体12に、径方向に突出する2つのリブ12bを形成すると共に、前記保持体21に、各リブ12bが嵌合するように、対応した2つの凹部21bを形成することで構成されている。これらのリブ12bと凹部21bは、略180°間隔(180°±20°程度を含む)で形成されており、これにより、前記保持体21は、管状体12と共に一体的に回動駆動されるようになっている。
なお、前記リブ12bと凹部21bの嵌合関係によって、前記保持体21は、釣糸巻き取り操作時に、管状体12に対する左右方向の往復駆動が案内される。
【0021】
前記保持体21は、前方に向けて突出し、レベルワインド装置10の前端部を構成する筒状部(本実施形態では円筒状に構成される)21Aを備えており、その内部には、前記管状体12に形成された長孔12aを介して、ウォームシャフト11の表面に形成された螺旋溝11aと係合する係合ピン23が収容されている。
【0022】
前記係合ピン23は、螺旋溝11aと係合する係合部23aと、筒状部21A内に圧入される本体23bとを備えている。前記係合ピン23は、筒状部21Aに圧入された状態で抜け止めされるように構成されている。この抜け止め構造については、図2に示すように、筒状部21Aの直径方向に貫通孔21dを形成しておき、筒状部21Aに係合ピン23の本体23bを圧入し、係合部23aが螺旋溝11aと係合した状態で抜け止めピン25を圧入することで構成される。
なお、本実施形態では、前記本体23bに空洞部23cを形成して係合ピン23の軽量化が図られているが、本体23bは中実状に構成されていても良い。
【0023】
また、前記筒状部21Aには、抜け止めピン25が径方向に抜けないように、抜け止めピン25の圧入位置に対応してОリング30が取着されている。前記筒状部21Aには、円周方向に沿って固定溝21Bが形成されており、Оリング30を固定溝21Bに嵌入することで、抜け止めピン25が筒状部21Aから外れないようにしている。
【0024】
前記保持体21の上面側には、前記釣糸挿通部22が止めビス28等によって固定されている。釣糸挿通部22は、上記した特許文献1と同様、釣糸放出時の抵抗を軽減するように開口領域が広く形成された開口部22Aと、釣糸巻き取り時に釣糸を案内する幅狭部22Bを備えており、例えば、SUS、チタン等の釣糸抵抗が少ない材料によって形成されている。
これらはクラッチをOFF状態にすると、管状体12と共に保持体21が回動して、開口部22Aがスプール3の前方に位置し(釣糸放出状態)、クラッチをON状態にすると、管状体12と共に保持体21が逆向きに回動して、幅狭部22Bがスプール3の前方に位置する(釣糸案内状態)。
【0025】
上記した構成のレベルワインド装置10によれば、キャスティング操作時にクラッチ機構をOFFにすると、スプール前方には、開口領域が広く形成された開口部22Aが位置するため、放出される釣糸は、開口部22Aの内面から大きな抵抗を受けることがなく、仕掛けの飛距離の低下を抑制して安定したキャスティングを行なうことが可能となる。また、クラッチ機構をONに復帰すると、幅狭部22Bがスプール前方に位置する(図1参照)。この状態でハンドル5を巻き取り操作すると、釣糸案内体20(釣糸挿通部22)は、回転駆動されるウォームシャフト11の螺旋溝11aと係合する係合ピン23によって左右方向に往復駆動されるため、釣糸は、スプール3に対して均等に巻回される。
【0026】
前記釣糸案内体20に設けられた前記リブ40は、前方に突出するように保持体21の中央に一体的に設けられている。このようなリブ40を形成することで、筒状部21Aの上方領域の隙間や段部に、釣糸が入り込んで糸絡みがすることが防止される。
【0027】
なお、前記リブ40は、ライントラブル等を引き起こした釣糸が、筒状部21A、及び、その近傍に接触した際に抜け易い形状(抜ける方向に摺動させる形状)に形成されている。すなわち、図2図3に示すように、その前端縁40aを、筒状部21A側から上側(釣糸挿通部22側)に移行するに従って、保持体21の中央部に向けて接近するような傾斜状にすることで、釣糸を上方に抜け易くすることができる。
【0028】
また、本実施形態では、前記抜け止めピン25が径方向に抜けないように、抜け止めピン25の圧入位置に対応して筒状部21AにОリング30を取着している。このOリング30と、リブ40の下面40bとの間の隙間に釣糸が入り込んで糸絡みが発生することがある。このため、前記Oリング30については、リブ40との関係で、筒状部21Aのリブ40の下面40bと対向する対向部21eとの隙間を埋めるように配設することが好ましい。
【0029】
さらに、本実施形態では、上述したように、筒状部21Aに、Oリング30を圧入して固定するための固定溝21Bが円周方向に沿って形成されており、Oリング30が筒状部21Aから外れ難くなるようにしている。
この固定溝21Bについては、筒状部21Aの全周に亘って形成するのではなく、前記リブ40の対向部となる領域(対向部21e)を除いて形成しておくことが好ましい。このように、一部に溝を形成しないことで、Oリング30の固定作業を容易に行うことが可能になると共に、釣糸が入り易い部分には固定溝が存在していないため、釣糸が引っ掛かることもない。
【0030】
上記したように、前記保持体21と管状体12には、略180°間隔で周方向回り止め部(管状体12に形成された2つのリブ12b、及び、保持体21に形成された2つの凹部21bで構成される)が形成されており、これにより両部材は一体回動可能となるように構成されている。すなわち、前記管状体12の外周面と前記保持体21の内周面に、略180°間隔で2つの周方向回り止め部が形成されることで、クラッチ機構を操作して管状体12が回動した際、管状体12と一体的に保持体21(釣糸挿通部22)を回動させることが可能となる。
【0031】
本発明では、この2つの周方向回り止め部の中間位置に、前記保持体21が管状体12の軸方向にガタ付くことを抑制するように、軸方向回り止め部50を設けている。この軸方向回り止め部50は、ハンドルの巻き取り操作によって、ウォームシャフト11及び係合ピン23を介して、保持体21が左右方向に往復移動する際、軸方向に沿ったガタ付きを防止するものである。すなわち、従来の構成では、図6に示すように、略180°間隔で設置された周方向回り止め部のみであるため、軸方向に沿ってガタ付き(保持体21を中心にして揺動するようなガタ付き)が発生してしまう。このガタ付きは、釣糸を巻き取り操作する際、主に、釣糸の張力が釣糸挿通部22の幅狭部22Bの側面22B1,22B2に作用する際に生じる。
【0032】
具体的には、保持体21の左右方向の移動に伴って釣糸の張力が幅狭部22Bの側面22B1に作用すると、保持体21の一端側にD2方向の力が作用することとなり、これがガタ付の原因となる。また、釣糸の張力が幅狭部22Bの側面22B2に作用すると、保持体21の他端側にD3方向の力が作用することとなり、これがガタ付の原因となる。
この場合、寸法公差によって、保持体21の内周面と管状体12の外周面との間にギャップGが生じていると、そのガタ付きは大きくなってしまう。
【0033】
このため、上記したガタ付きが抑制されるように、2つの周方向回り止め部の中間位置に、保持体21が軸方向に沿ってガタ付くことを防止する軸方向回り止め部50を設けることで、保持体21が管状体12の軸方向にガタ付くことを抑制することができる。
本実施形態では、前記軸方向回り止め部50を、図4から図6に示すように、管状体12の外周面に形成された凸部12gと、保持体21の内周面に形成された凹溝21gによって構成している。
【0034】
このような軸方向回り止め部50を設けることで、上記したような釣糸巻き取り操作時に、保持体21に作用するガタ付きは、凸部12gの上面12g´と、凹溝21gの底面21g´が当接することで、保持体21のD2,D3方向の移動が制限され、図6で示すようなD2,D3方向の移動によるガタ付きを抑制することが可能となる。すなわち、釣糸をスプールに巻き取る際、釣糸挿通部22を保持した保持体21が左右側板間で往復駆動されても、軸方向に沿ってガタ付くことが抑制されることから、スプールに対して正確に釣糸を巻回することができると共に、ガタ付きに伴う異音の発生も抑制されるため、魚釣用リールとして精密感の向上が図れるようになる。更に、軸方向回り止め部50を設けることで、釣糸案内体の回動動作をより安定して行なうことが可能となる。
【0035】
上記した軸方向回り止め部50が設けられる位置は、2つの周方向回り止め部の中間位置であれば良いが、夫々の周方向回り止め部(リブ12bが形成される位置)から周方向に45°以上離れた範囲R内に設けることが好ましい(図4参照)。このような範囲R内に軸方向回り止め部50を設けることで、安定してガタ付きを抑制することが可能になる。特に、軸方向回り止め部50は、ウォームシャフト11の螺旋溝に係合する係合ピン23と対向する範囲内に設けることが好ましい。すなわち、管状体12の長孔12aを介して係合ピン23がウォームシャフト11の螺旋溝11aに係合すると、この係合部分で軸方向に沿って大きな力が生じることから、図4に示すように、係合ピンの中心と管状体12の軸心Cとを結ぶ線Y上に、軸方向回り止め部50(凸部12g)を設けることで、より効果的にガタ付きを抑制することが可能になる。
【0036】
実際に、軸方向回り止め部50を設けなかった構成(図6)と、軸方向回り止め部50を設けた構成(図5)とについて、同一条件でガタ付の発生を比較試験したところ、軸方向回り止め部50を設けた構成では、ガタ付きが最低でも10%、最大で35.9%減少したことを確認することができた。
【0037】
図7は、管状体12の別の構成を示す概略図である。
この実施形態で示すように、軸方向回り止め部50を構成する凸部12gは、前記2つの周方向回り止め部の各リブ12bよりも高さHが低く、その幅Wが広く形成されることが好ましい。
【0038】
このように、軸方向回り止め部50の凸部12gを、高さが低く、幅広に形成することで、凹溝を浅くして強度の低下が防止できると共に、凸部12gの上面12g´と凹溝21gの底面との当接面積が広くなり、より効果的にガタ付を抑制することが可能となる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
【0040】
本発明は、レベルワインド装置10の釣糸案内体20(保持体21)と管状体12の部分に特徴があり、それ以外の構成、例えば、リール本体の大きさ、形状、その他の機能部材などについては、特に限定されることはない。また、釣糸挿通部22の構成、螺軸に係合する係合ピンの保持構造等についても適宜変形することが可能である。
【0041】
また、軸方向回り止め部50については、2つの周方向回り止め部の中間位置に、配設されれば2個所以上、設けても良い。更に、軸方向回り止め部50を凸部12gと凹溝21gの嵌合関係で形成する場合、その高さ、幅、溝の深さ等、適宜変形することが可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 リール本体
1A,1B 左右側板
3 スプール
10 レベルワインド装置
11 ウォームシャフト
12 管状体
12g 凸部
20 釣糸案内体
21 保持体
21g 凹溝
22 釣糸挿通部
50 軸方向回り止め部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7