(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083751
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】表示装置及び表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H10K 50/813 20230101AFI20240617BHJP
H10K 50/818 20230101ALI20240617BHJP
H10K 50/816 20230101ALI20240617BHJP
H10K 59/122 20230101ALI20240617BHJP
H10K 85/00 20230101ALI20240617BHJP
H10K 71/20 20230101ALI20240617BHJP
H10K 71/60 20230101ALI20240617BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240617BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240617BHJP
H10K 102/10 20230101ALN20240617BHJP
【FI】
H10K50/813
H10K50/818
H10K50/816
H10K59/122
H10K85/00
H10K71/20
H10K71/60
G09F9/30 365
G09F9/00 338
H10K102:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197746
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】袁 澤
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC33
3K107DD22
3K107DD23
3K107DD24
3K107DD25
3K107DD27
3K107DD46X
3K107DD72
3K107DD75
3K107FF08
3K107FF15
3K107FF19
3K107GG14
3K107GG23
3K107GG28
5C094AA25
5C094BA03
5C094BA27
5C094CA19
5C094DA14
5C094EA04
5C094EA05
5C094FA01
5C094FA02
5C094FA04
5G435AA16
5G435BB05
5G435CC09
5G435HH20
5G435KK10
(57)【要約】
【課題】画素間でのキャリアのリークを抑制することが可能な表示装置及び表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】表示装置は、基板と、基板の上に設けられた複数の画素電極と、画素電極の表面に設けられた保護膜と、画素電極を囲んで設けられたバンクと、画素電極の上に、この順で積層された下部バッファ層、発光層、上部バッファ層及び対向電極と、を有し、下部バッファ層、発光層、上部バッファ層及び対向電極は、複数の画素電極及びバンクを覆って連続して設けられ、画素電極は、平面視で、画素電極の中央部で保護膜が設けられた重畳領域と、重畳領域の外縁側で保護膜が設けられない非重畳領域と、を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上に設けられた複数の画素電極と、
前記画素電極の表面に設けられた保護膜と、
前記画素電極を囲んで設けられたバンクと、
前記画素電極の上に、この順で積層された下部バッファ層、発光層、上部バッファ層及び対向電極と、を有し、
前記下部バッファ層、前記発光層、前記上部バッファ層及び前記対向電極は、複数の前記画素電極及び前記バンクを覆って連続して設けられ、
前記画素電極は、平面視で、前記画素電極の中央部で前記保護膜が設けられた重畳領域と、前記重畳領域の外縁側で前記保護膜が設けられない非重畳領域と、を含む
表示装置。
【請求項2】
前記画素電極の前記非重畳領域の仕事関数は、前記重畳領域の仕事関数よりも低い
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記画素電極の前記非重畳領域の表面粗さは、前記重畳領域の表面粗さよりも大きい
請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記下部バッファ層は、前記重畳領域で前記保護膜の上に直接接し、前記非重畳領域で前記画素電極の上に直接接する
請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記画素電極、前記下部バッファ層、前記発光層、前記上部バッファ層及び前記対向電極は、トップエミッション型の発光素子であり、
前記画素電極及び前記対向電極は、それぞれ透光性を有する材料で形成される
請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記画素電極はアノード電極であり、
前記対向電極はカソード電極である
請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
基板の上に複数の画素電極及び前記画素電極を囲むバンクを形成し、前記画素電極の表面処理を行って保護膜を形成する工程と、
前記画素電極の外縁部にレーザ光を照射して、前記画素電極の中央部に位置する前記保護膜を残し、前記画素電極の前記外縁部に位置する前記保護膜を除去する工程と、を有する
表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置及び表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から特許文献3には、複数の有機EL素子を有する表示装置について記載されている。有機EL素子は、陽極と陰極との間に、正孔輸送層、電子輸送層等のバッファ層、及び、発光層が積層されて構成される。特許文献2には、発光層で生成された光を効率よく外部に取り出すために、上部電極にレーザ光を照射して低抵抗化を図る技術が記載されている。また、特許文献3には、陽極にレーザアニール処理を施すことで、陽極の屈折率を調整する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-20744号公報
【特許文献2】特開2016-212979号公報
【特許文献3】特開2015-149231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バッファ層及び発光層が複数の画素(画素電極)に跨がって連続して設けられた場合、バッファ層を通して画素間でキャリアのリークが発生する可能性がある。特許文献1から特許文献3では、画素間でのキャリアのリークについて考慮されていない。
【0005】
本発明は、画素間でのキャリアのリークを抑制することが可能な表示装置及び表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の表示装置は、基板と、前記基板の上に設けられた複数の画素電極と、前記画素電極の表面に設けられた保護膜と、前記画素電極を囲んで設けられたバンクと、前記画素電極の上に、この順で積層された下部バッファ層、発光層、上部バッファ層及び対向電極と、を有し、前記下部バッファ層、前記発光層、前記上部バッファ層及び前記対向電極は、複数の前記画素電極及び前記バンクを覆って連続して設けられ、前記画素電極は、平面視で、前記画素電極の中央部で前記保護膜が設けられた重畳領域と、前記重畳領域の外縁側で前記保護膜が設けられない非重畳領域と、を含む。
【0007】
本発明の一態様の表示装置の製造方法は、基板の上に複数の画素電極及び前記画素電極を囲むバンクを形成し、前記画素電極の表面処理を行って保護膜を形成する工程と、前記画素電極の外縁部にレーザ光を照射して、前記画素電極の中央部に位置する前記保護膜を残し、前記画素電極の前記外縁部に位置する前記保護膜を除去する工程と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る表示装置を模式的に示す平面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る画素の、画素電極、対向電極及びバンクの構成を示す平面図である。
【
図4】
図4は、
図3における1つの発光素子を拡大して示す断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る発光素子の画素電極及び下部バッファ層の構成を説明するための説明図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る表示装置の製造方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本開示が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、本開示の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本開示の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本開示と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0010】
本明細書及び特許請求の範囲において、ある構造体の上に他の構造体を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある構造体に接するように、直上に他の構造体を配置する場合と、ある構造体の上方に、さらに別の構造体を介して他の構造体を配置する場合との両方を含むものとする。
【0011】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る表示装置を模式的に示す平面図である。本実施形態の表示装置1は、自発光素子である有機発光ダイオード(OLED:Organic Light Emitting Diode)を備えた有機EL表示装置である。表示装置1は、アレイ基板2と、画素PXと、走査線駆動回路12と、信号線駆動回路13と、駆動IC(Integrated Circuit)210と、を含む。
【0012】
アレイ基板2は、各画素PXを駆動するための駆動回路基板であり、バックプレーン又はアクティブマトリクス基板とも呼ばれる。アレイ基板2は、基板21を基体として形成され、基板21上に複数のトランジスタTr(
図3参照)、複数の容量及び各種配線等を有する。特に図示しないが、アレイ基板2上には、外部の制御基板から各種制御信号及び電力を入力するための配線基板(例えばフレキシブルプリント基板(FPC))等が接続されていてもよい。
【0013】
なお、以下の説明において、第1方向Dxは、基板21と平行な面内の一方向である。第2方向Dyは、基板21と平行な面内の一方向であり、第1方向Dxと直交する方向である。なお、第2方向Dyは、第1方向Dxと直交しないで交差してもよい。第3方向Dzは、第1方向Dx及び第2方向Dyと直交する方向であり、基板21の法線方向である。また、「平面視」とは、第3方向Dzから見た場合の位置関係をいう。
【0014】
走査線駆動回路12は、表示領域AAの走査線(図示しない)に信号を供給して複数の画素PXを駆動する駆動回路である。信号線駆動回路13は、表示領域AAの信号線(図示しない)に画素信号を供給して複数の画素PXを駆動する駆動回路である。駆動IC210は、走査線駆動回路12及び信号線駆動回路13に制御信号を供給して、複数の画素PXの表示を制御する回路である。なお、走査線駆動回路12及び信号線駆動回路13の少なくとも一部は、駆動IC210と一体に形成されていてもよい。また、駆動IC210は、アレイ基板2上に設けられる。ただし、これに限定されず、駆動IC210はアレイ基板2に接続された配線基板に設けられてもよい。
【0015】
アレイ基板2は、表示領域AAと、周辺領域GAとを有する。表示領域AA内には、複数の画素PXが設けられている。複数の画素PXは、表示領域AAにマトリクス状に配列される。周辺領域GAは、表示領域AAの外側の領域であり、複数の画素PXが設けられない領域である。周辺領域GAには、走査線駆動回路12、信号線駆動回路13及び駆動IC210が設けられる。走査線駆動回路12は、周辺領域GAのうち第2方向Dyに沿って延在する領域に設けられる。信号線駆動回路13及び駆動IC210は、周辺領域GAのうち第1方向Dxに沿って延在する領域に設けられる。
【0016】
本実施形態では、説明を分かりやすくするために、表示領域AAを矩形状とし、周辺領域GAを、表示領域AAの周囲を囲む矩形の枠状としている。ただし、これに限定されず、表示領域AAは、多角形状でもよく、外周の一部に切り欠き(ノッチ)や曲線部を有する異形状であってもよい。周辺領域GAも、表示領域AAの形状に対応して種々の形状に異ならせることができる。
【0017】
図2は、実施形態に係る画素の、画素電極、対向電極及びバンクの構成を示す平面図である。具体的には、
図2は、画素PXにおける発光層31、下部バッファ層36、上部バッファ層37等(
図3、
図4参照)の構成を省略して模式的に示す平面図である。
【0018】
図2に示すように、画素PXは、副画素SPX-R、SPX-G、SPX-Bを有する。副画素SPX-R、SPX-G、SPX-Bは、それぞれ、発光素子3(
図3参照)として有機発光ダイオードを備える。なお、以下の説明では、副画素SPX-R、SPX-G、SPX-Bを区別して説明する必要が無い場合には、単に副画素SPXと表す。
【0019】
副画素SPX-Rは、例えば赤色(R)を表示する。副画素SPX-Gは、例えば緑色(G)を表示する。副画素SPX-Bは、例えば青色(B)を表示する。副画素SPX-Rと副画素SPX-Gとは第2方向Dyに隣り合って配置される。1つの副画素SPX-Bは、第2方向Dyに隣り合う副画素SPX-R及び副画素SPX-Gと第1方向Dxに隣り合って配置される。ただしこれに限定されず、画素PXは、他の配列であってもよい。例えば、副画素SPX-R、SPX-G、SPX-Bは、第1方向Dxに並んで配置されてもよい。また、画素PXは、いわゆるペンタイル配列で構成されてもよい。また、画素PXは、3つの副画素SPXに限定されず、4つ以上の副画素SPXで構成されてもよい。
【0020】
図2に示すように、表示装置1は、基板21と、発光素子3(発光素子3R、3G、3B)と、バンク24と、を有する。発光素子3は、それぞれ発光層31、下部バッファ層36及び上部バッファ層37(
図3、
図4参照)と、画素電極32と、対向電極33と、を有する。
【0021】
複数の画素電極32は、副画素SPXごとに離隔して設けられる。より詳細には、副画素SPX-Rの画素電極32と、副画素SPX-Gの画素電極32とは、第2方向Dyで間隔を有して隣り合う。また、副画素SPX-Bの画素電極32は、副画素SPX-Rの画素電極32及び副画素SPX-Gの画素電極32と、第1方向Dxで間隔を有して隣り合う。
【0022】
複数の画素電極32のそれぞれの表面に保護膜38が設けられる。保護膜38は、平面視で、画素電極32の中央部に設けられる。保護膜38は、画素電極32に表面処理を施すことで形成されるものである。なお、画素電極32及び保護膜38の詳細な構成については、
図4、
図5にて後述する。
【0023】
バンク24は、平面視で、複数の画素電極32を囲んで設けられる。バンク24は、傾斜部24aと、平坦部24bと、を有する凸状に形成される。バンク24の傾斜部24aは、画素電極32の外縁部に重なって設けられる。バンク24の平坦部24bは、画素電極32の間に設けられる。言い換えると、バンク24は、複数の画素電極32の中央部と重なる領域に開口OPが設けられる。バンク24の開口OPを構成する内壁24eは、画素電極32の外縁部と重なる。発光素子3R、3B、3Gからの光は、開口OPを通って外部に出射される。
【0024】
対向電極33は、複数の発光素子3R、3G、3B(副画素SPX)に亘って連続して設けられる。すなわち、対向電極33は、複数の画素電極32及びバンク24を覆って連続して設けられる。
【0025】
次に、表示装置1の断面構成について説明する。
図3は、
図2のIII-III’断面図である。
図3では、副画素SPX-B及び副画素SPX-Gの断面構成について示す。ただし、副画素SPX-Rの断面構成も副画素SPX-B及び副画素SPX-Gと同様であり、副画素SPX-B及び副画素SPX-Gについての説明は、副画素SPX-Rにも適用できる。
【0026】
また、以下の説明において、基板21の表面に垂直な方向(第3方向Dz)において、基板21から対向基板29に向かう方向を「上側」又は単に「上」とする。また、対向基板29から基板21に向かう方向を「下側」又は単に「下」とする。
【0027】
図3に示すように、表示装置1は、さらに、基板21の上に設けられた回路形成層22、平坦化膜23及び封止膜26、接着層27、フィルタ層28及び対向基板29を有する。
【0028】
基板21は絶縁基板であり、例えば、石英、無アルカリガラス等のガラス基板、又はポリイミド等の樹脂基板が用いられる。基板21として、可撓性を有する樹脂基板を用いた場合には、シートディスプレイとして表示装置1を構成することができる。また、基板21は、ポリイミドに限らず、他の樹脂材料を用いても良い。
【0029】
回路形成層22は、基板21上に設けられ、複数の発光素子3を駆動するためのトランジスタTrや各種配線(図示は省略する)が形成される層である。回路形成層22に設けられたトランジスタTrは、発光素子3の画素電極32と重なる領域に設けられる。トランジスタTrは、半導体層61、ソース電極62、ドレイン電極63及びゲート電極64を有する。また、回路形成層22は、絶縁膜として、アンダーコート膜91、ゲート絶縁膜92、層間絶縁膜93及び重畳絶縁膜94を含む。
【0030】
アンダーコート膜91は、基板21の上に設けられる。アンダーコート膜91は、例えば、シリコン窒化膜やシリコン酸化膜等の無機絶縁膜で形成される。なお、アンダーコート膜91の構成は、
図3に示すものに限定されない。例えば、アンダーコート膜91は、2層あるいは3層以上積層された積層膜であってもよい。
【0031】
トランジスタTrは、基板21の上に設けられる。半導体層61は、アンダーコート膜91の上に設けられる。ゲート絶縁膜92は、半導体層61を覆ってアンダーコート膜91の上に設けられる。ゲート絶縁膜92は、例えばシリコン酸化膜等の無機絶縁膜である。ゲート電極64は、ゲート絶縁膜92の上に設けられる。
【0032】
図3に示す例では、トランジスタTrは、トップゲート構造である。ただし、これに限定されず、トランジスタTrは、ボトムゲート構造でもよく、半導体層61の上側及び下側の両方にゲート電極64が設けられたデュアルゲート構造でもよい。
【0033】
層間絶縁膜93は、ゲート電極64を覆ってゲート絶縁膜92の上に設けられる。層間絶縁膜93は、例えば、シリコン窒化膜とシリコン酸化膜との積層構造を有する。ソース電極62及びドレイン電極63は、層間絶縁膜93の上に設けられる。ソース電極62は、ゲート絶縁膜92及び層間絶縁膜93に設けられたコンタクトホールを介して、半導体層61のソース領域に接続される。ドレイン電極63は、ゲート絶縁膜92及び層間絶縁膜93に設けられたコンタクトホールを介して、半導体層61のドレイン領域に接続される。重畳絶縁膜94は、ソース電極62及びドレイン電極63を覆って層間絶縁膜93の上に設けられる。
【0034】
平坦化膜23は、回路形成層22のトランジスタTr及び各種配線を覆って回路形成層22の重畳絶縁膜94の上に設けられる。平坦化膜23は、感光性アクリル等の有機絶縁材料が用いられる。
【0035】
バンク24は、基板21の上側で平坦化膜23の上に設けられる。バンク24は、傾斜部24aと、平坦部24bとを有する凸状である。バンク24は、有機絶縁材料が用いられる。
【0036】
図4は、
図3における1つの発光素子を拡大して示す断面図である。
図3及び
図4に示すように、発光素子3は、画素電極32と、下部バッファ層36と、発光層31と、上部バッファ層37と、対向電極33と、を含む。発光素子3は、画素電極32の上に、下部バッファ層36、発光層31、上部バッファ層37及び対向電極33の順に積層される。本実施形態の発光素子3(画素電極32、下部バッファ層36、発光層31、上部バッファ層37及び対向電極33)はトップエミッション型の発光素子として構成される。すなわち、発光層31で生成された光は、対向電極33を透過して上側(対向基板29側)に出射される。なお、
図3では、下部バッファ層36及び上部バッファ層37を省略して示す。
【0037】
画素電極32は、平坦化膜23の上に設けられる。画素電極32は、平坦化膜23を貫通するコンタクトホールCH(
図3参照)を介してトランジスタTrのドレイン電極63と接続される。画素電極32は、発光素子3の陽極(アノード)であり、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)等の透光性を有する導電材料で形成される。
【0038】
図4に示すように、保護膜38は画素電極32の上に形成される。画素電極32は、重畳領域A1と、非重畳領域A2とを含む。重畳領域A1は、平面視で、画素電極32の中央部の領域であって、保護膜38が設けられた領域である。非重畳領域A2は、重畳領域A1の外縁側の領域であって、保護膜38が設けられない領域である。非重畳領域A2は、保護膜38とバンク24との間の領域ともいえる。
【0039】
下部バッファ層36、発光層31、上部バッファ層37及び対向電極33は、複数の画素電極32及びバンク24を覆って連続して設けられる。下部バッファ層36は、正孔注入層34(HIL)及び正孔輸送層35(HTL)を含む。下部バッファ層36は、画素電極32の上に、正孔注入層34、正孔輸送層35の順に積層される。
【0040】
なお、以下の説明では、正孔注入層34及び正孔輸送層35を区別して説明する必要が無い場合には、単に下部バッファ層36と表す場合がある。また、下部バッファ層36は、正孔注入層34及び正孔輸送層35の2層の積層構造としたが、3層以上の積層構造であってもよい。
【0041】
下部バッファ層36の正孔注入層34及び正孔輸送層35は、画素電極32の上及びバンク24の上に亘って設けられる。より詳細には、画素電極32の重畳領域A1で、下部バッファ層36の正孔注入層34は、保護膜38の上に直接接する。保護膜38は、第3方向Dzで画素電極32と、下部バッファ層36の正孔注入層34との間に設けられる。また、非重畳領域A2で、下部バッファ層36の正孔注入層34は、画素電極32の上に直接接する。また、正孔注入層34及び正孔輸送層35は、バンク24の傾斜部24a及び平坦部24bを覆って設けられる。
【0042】
発光層31は、有機EL(Electroluminescent)層で形成される。発光層31は、下部バッファ層36の上に設けられ、画素電極32と重なる領域及びバンク24と重なる領域に亘って設けられる。また、発光層31は、副画素SPXごとに選択的に形成される。
【0043】
上部バッファ層37は、発光層31の上に設けられ、画素電極32と重なる領域及びバンク24と重なる領域に亘って設けられる。上部バッファ層37は、電子輸送層(ETL)である。なお、上部バッファ層37は単層に限定されず、2層あるいは3層以上の積層構造としてもよい。
【0044】
対向電極33は、上部バッファ層37の上に設けられる。対向電極33は、複数の副画素SPXの発光層31を覆って、表示領域AA(
図1参照)に亘って設けられる。本実施形態の表示装置1では、トップエミッション構造としているため、対向電極33は透光性を有する必要がある。対向電極33は、半透過性を有する金属膜(例えば、MgAg)が用いられ、発光層31からの出射光が透過する程度の薄膜として形成される。本実施形態では、画素電極32が陽極(アノード)となり、対向電極33が陰極(カソード)となる。例えば、対向電極33の厚さは10nm以上15nm以下程度である。なお、対向電極33の厚さはあくまで一例であり、適宜変更できる。なお、対向電極33は、半透過性を有する金属膜に限定されず、ITO等の透光性を有する導電材料であってもよい。
【0045】
対向電極33は、表示領域AA上と、表示領域AA近傍に設けられた陰極コンタクト部(図示しない)に亘って形成され、陰極コンタクト部で回路形成層22の導電層と接続される。
【0046】
封止膜26は、複数の発光素子3を覆って対向電極33の上に設けられる。封止膜26はシリコン窒化膜や酸化アルミニウム膜などの無機膜、あるいはアクリルなどの樹脂膜が用いられる。封止膜26は、単層に限定されず、上記の無機膜及び樹脂膜を組み合わせた2層以上の積層膜であってもよい。封止膜26により発光素子3は良好に封止され、上面側からの水分の侵入を抑制することができる。
【0047】
図3に戻って、フィルタ層28は封止膜26の上に接着層27により接着される。フィルタ層28は、隣接する副画素SPXの間に設けられた遮光層28aと、副画素SPXごとに異なる色に着色されたカラーフィルタ28bとを含む。カラーフィルタ28bは、発光素子3のそれぞれに重なって設けられる。カラーフィルタ28bは、発光素子3のそれぞれから出射される光の色と同色に着色された着色層を有して構成される。隣接する発光素子3B、3G(副画素SPX-G、SPX-B)で、発光素子3Bに重なるカラーフィルタ28bの周縁部と、発光素子3Gに重なるカラーフィルタ28bの周縁部とは第1方向Dxで接している。ただしこれに限定されず、隣接するカラーフィルタ28bの周縁部どうしは、第3方向Dzで重なって設けられていてもよい。
【0048】
遮光層28aは、隣接する副画素SPXの間に設けられ、第3方向Dzでカラーフィルタ28bと対向基板29との間に積層される。遮光層28aは、ブラックマトリクスとも呼ばれる。より具体的には、遮光層28aは、隣接するカラーフィルタ28bの境界と重なって設けられる。さらに、遮光層28aは、バンク24の平坦部24bと重なる領域に設けられ、バンク24の一部(傾斜部24a)及び画素電極32と重なる領域には開口が設けられる。
【0049】
対向基板29は、フィルタ層28を覆って設けられる。対向基板29は、ガラス基板、又は樹脂基板で形成されたカバーパネルである。
【0050】
次に画素電極32の、保護膜38が設けられた重畳領域A1、及び、保護膜38が設けられない非重畳領域A2について詳細に説明する。
図5は、実施形態に係る発光素子の画素電極及び下部バッファ層の構成を説明するための説明図である。
図5は、図面を見やすくするために発光素子3の一部を拡大して示している。
【0051】
図5に示す重畳領域A1の保護膜38は、ITOで形成された画素電極32に、表面処理(例えば酸素プラズマ処理)を施すことで画素電極32の表面に形成された酸素保護膜である。非重畳領域A2は、画素電極32の表面に形成された保護膜38が、例えばレーザ光の照射により除去された領域である。非重畳領域A2の第1方向Dxでの幅は、例えば0.5μm以上3.0μm以下程度である。言い換えると、非重畳領域A2の第1方向Dxでの幅は、画素電極32の表面に形成された保護膜38の外縁と、バンク24が画素電極32に接する部分との間の、第1方向Dxでの距離である。
【0052】
画素電極32の重畳領域A1では、表面処理が施されているので、表面処理を行わない場合に比べて仕事関数が高くなる。これにより、画素電極32の重畳領域A1では、キャリア(正孔)の移動度、注入性が向上する。また、画素電極32の非重畳領域A2では、保護膜38が除去されて仕事関数が低くなる。すなわち、画素電極32の非重畳領域A2の仕事関数は、重畳領域A1の仕事関数よりも低い。例えば、画素電極32の重畳領域A1の仕事関数は5.85eV程度であり、画素電極32の非重畳領域A2の仕事関数は、4.94eV程度である。仕事関数は、紫外光電子分光法(UPS:Ultraviolet Photoelectron Spectroscopy)によって測定される。
【0053】
画素電極32の非重畳領域A2では、保護膜38が除去されることで、非重畳領域A2表面でのITOのスズ(Sn)及びインジウム(In)の濃度(含有量)が重畳領域A1に比べて増加する。この結果、画素電極32の非重畳領域A2の表面には、微細な凹凸部32aが形成される。これにより、画素電極32の非重畳領域A2の表面粗さは、重畳領域A1の表面粗さよりも大きい。例えば、画素電極32の重畳領域A1の表面粗さRaは1nm程度であり、画素電極32の非重畳領域A2の表面粗さRaは、8nm程度である。本実施形態の表面粗さは、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)によって測定される。
【0054】
また、下部バッファ層36の正孔注入層34は、画素電極32の重畳領域A1及び非重畳領域A2に重なって設けられる。画素電極32の非重畳領域A2は表面粗さが大きいので、正孔注入層34の非重畳領域A2と重なる部分では有機膜の凝集、再結晶化が生じる。これにより、正孔注入層34の非重畳領域A2と重なる部分には高抵抗領域34aが形成される。
【0055】
以上のように、本実施形態の表示装置1において、画素電極32は、保護膜38が設けられた重畳領域A1と、保護膜38が設けられない非重畳領域A2と、を有する。これにより、キャリア100(正孔)の、隣接する画素間で移動が抑制される。
【0056】
具体的には、下部バッファ層36の正孔注入層34でのキャリア100は、正孔注入層34の高抵抗領域34aにより、画素電極32の表面に沿った横方向での移動が抑制される。これにより、本実施形態では、キャリア100が下部バッファ層36の正孔注入層34から、バンク24を通って隣接する他の画素PX(副画素SPX)の正孔注入層34に移動することを抑制できる。すなわち、本実施形態の表示装置1は、隣接する画素PX間の混色を抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態では、キャリア100が下部バッファ層36の正孔注入層34から、バンク24と重なる領域の発光層31に到達することを抑制できる。したがって、本実施形態の発光素子3では、発光層31の重畳領域A1と重なる領域から表示光L1が出射され、発光層31のバンク24と重なる領域から不要な光L2が出射されることを抑制できる。これにより、表示装置1は、単色発光の色度差Δu’v’を小さくすることができる。
【0058】
なお、
図5では、理解を容易にするために、画素電極32の凹凸部32aや、正孔注入層34の非重畳領域A2と重なる高抵抗領域34aを強調して示している。例えば、画素電極32の凹凸部32aの膜厚は、7nm以下程度に薄く形成される。また、正孔注入層34の非重畳領域A2と重なる高抵抗領域34aは、非重畳領域A2の少なくとも一部と重なる領域に、有機膜の凝集、再結晶化が生じていればよい。
【0059】
次に、画素電極32の重畳領域A1及び非重畳領域A2の製造方法について説明する。
図6は、実施形態に係る表示装置の製造方法を説明するための説明図である。
【0060】
図6に示すように、本実施形態の表示装置1の製造方法は、まず、基板21の上に複数の画素電極32及び画素電極32を囲むバンク24を形成し、画素電極32の表面処理を行って保護膜38を形成する(ステップST1)。
【0061】
具体的には、基板21の上に回路形成層22、平坦化膜23が形成される。画素電極32は、ITO等の透光性導電材料を用いて平坦化膜23上に成膜され、フォトリソグラフィ及びエッチングによりパターニングされる。
【0062】
次に、画素電極32を覆って平坦化膜23上に有機絶縁層が成膜され、フォトリソグラフィ及びエッチングにより有機絶縁層の画素電極32と重なる部分が除去される。これにより、画素電極32を囲むバンク24が形成される。
【0063】
次に酸素プラズマ処理等により画素電極32の表面処理を行う。これにより、画素電極32の表面の、バンク24と重ならない領域には保護膜38が形成される。なお、画素電極32の表面処理は酸素プラズマ処理に限定されず、他のプラズマ処理であってもよい。また、画素電極32の表面処理は複数種類のプラズマ処理を組み合わせてもよい。
【0064】
次に、画素電極32の上にマスク110が配置される(ステップST2)。マスク110は、画素電極32の中央部を遮光し、画素電極32の外縁部及びバンク24と重なる領域で光を透過するように構成される。
【0065】
次に、画素電極32の外縁部にレーザ光L3が照射され、画素電極32の中央部に位置する保護膜38を残し、画素電極32の外縁部に位置する保護膜38が除去される(ステップST3)。レーザ光L3は、例えば波長が350nm以下のナノ秒パルス半導体レーザが用いられる。
【0066】
これにより、画素電極32の非重畳領域A2の仕事関数は、重畳領域A1の仕事関数よりも低くなる。また、上述したように、保護膜38が除去されることで、画素電極32の非重畳領域A2には凹凸部32a(
図5参照)が形成される。
【0067】
次に、画素電極32及びバンク24の上に、下部バッファ層36、発光層31、上部バッファ層37及び対向電極33の順に成膜される。以上の工程で、
図3、
図4に示す複数の発光素子3を有する表示装置1が製造される。
【0068】
なお、
図6に示す製造方法は、あくまで一例であり、適宜変更することができる。例えば、レーザ光L3の種類や、マスク110の構成は、画素電極32及び保護膜38の材料、形状等に応じて適宜変更することができる。
【0069】
以上、本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明はこのような実施の形態に限定されるものではない。実施の形態で開示された内容はあくまで一例にすぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で行われた適宜の変更についても、当然に本発明の技術的範囲に属する。上述した各実施形態及び各変形例の要旨を逸脱しない範囲で、構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。
【符号の説明】
【0070】
1 表示装置
2 アレイ基板
3、3R、3G、3B 発光素子
21 基板
24 バンク
29 対向基板
31 発光層
32 画素電極
33 対向電極
34 正孔注入層
35 正孔輸送層
36 下部バッファ層
37 上部バッファ層
38 保護膜
A1 重畳領域
A2 非重畳領域
AA 表示領域
GA 周辺領域
OP 開口
PX 画素
SPX、SPX-R、SPX-G、SPX-B 副画素