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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083757
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】注出口具及び注出口具の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 33/38 20060101AFI20240617BHJP
   B65B 51/10 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
B65D33/38
B65B51/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197753
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】391003794
【氏名又は名称】押尾産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正昭
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正和
【テーマコード(参考)】
3E064
3E094
【Fターム(参考)】
3E064BA17
3E064BA25
3E064BB03
3E064BC08
3E064EA18
3E064HN05
3E064HN65
3E064HS04
3E094AA12
3E094CA02
3E094DA02
3E094DA06
3E094HA08
(57)【要約】
【課題】酸素バリア性に優れた注出口具を提供する。
【解決手段】内部に流体を収容する容器の開口部分に取り付けられる合成樹脂製の注出口具1は、流体の流路Cを形成する円筒状の注出部2と、注出部2との螺合により該注出部2に脱着可能に装着された蓋部4とを備えている。蓋部4は、注出部2の内側に挿入される有底円筒状の蓋本体部41を有する。注出部2の下面32aの内周と蓋本体部41の底面45aの外周は、それらが互いに溶着されてなる溶着部6によって一体となっている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流体を収容する容器の開口部分に取り付けられる合成樹脂製の注出口具であって、
前記流体の流路を形成する円筒状の注出部と、前記注出部との螺合により該注出部に脱着可能に装着された蓋部とを備え、
前記蓋部は、前記注出部の内側に挿入される有底円筒状の蓋本体部を有し、
前記注出部の下面内周と前記蓋本体部の底面外周は、それらが互いに溶着されてなる溶着部によって一体となっていることを特徴とする注出口具。
【請求項2】
前記注出部の下面及び前記蓋本体部の底面は、ガスバリア層によって被覆されていることを特徴とする請求項1に記載の注出口具。
【請求項3】
内部に流体を収容する容器の開口部分に取り付けられる合成樹脂製の注出口具の製造方法であって、
前記流体の流路を形成する円筒状の注出部の内側に、有底円筒状の蓋本体部を挿入する装着工程と
前記注出部の下面と前記蓋本体部の底面を加熱する加熱工程と、
を備え、
前記加熱工程では、前記注出部の下面内周と前記蓋本体部の底面外周とが溶着されて一体化することを特徴とする注出口具の製造方法。
【請求項4】
前記加熱工程の後に、前記注出部の下面及び前記蓋本体部の底面に対してガスバリア層を形成するガスバリア層形成工程を含むことを特徴とする請求項3に記載の注出口具の製造方法。
【請求項5】
前記装着工程では、前記蓋本体部の底面が前記注出部の下面より上方に位置するように前記注出部に前記蓋本体部が装着されることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の注出口具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に流体を収容する容器の開口部分に取り付けられる合成樹脂製の注出口具及び注出口具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
包装袋等の容器の開口部分に取り付けられる注出口具が知られている。注出口具は、内部に形成される流路を通じた容器内への外気の流入を抑制するように構成されている。
たとえば、特許文献1には、内部に流体の流路を形成するスパウトと、スパウトの内筒状本体部に螺合することにより脱着自在に装着されるキャップとを備えた注出口具が開示されている。そして、スパウトと、キャップは、次のような構造を備えている。スパウトは、円筒状の内筒状本体部と、その下部に一体に連なった容器接合用筒を有している。容器接合用筒は、内筒状本体部に一体に連なった筒状基部と、筒状基部の外面から径方向に張り出している張出片を備えている。キャップは、スパウトの内筒状本体部及び筒状基部の内部に挿入されてスパウト内部の流路を閉塞する有底筒状の栓体を有している。
【0003】
特許文献1に記載される注出口具では、キャップの栓体の外面が、スパウトの筒状基部の内面に密着し、スパウト内部の流路を閉塞する。これにより、内筒状本体部の外面から透過した酸素が、内筒状本体部の内部を軸方向に流れて容器内に流入することを抑制できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-90271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、内筒状本体部及び筒状基部の内部での酸素の流れを遮断することはできない。このため、たとえ、筒状基部の内部を流れる酸素の量を制限することができたとしても、その制限には限界がある。酸素バリア性の観点からは、なお改善の余地があるものであった。
【0006】
本発明は、こうした従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、酸素バリア性に優れた注出口具及び注出口具の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、注出口具としては、内部に流体を収容する容器の開口部分に取り付けられる合成樹脂製の注出口具であって、前記流体の流路を形成する円筒状の注出部と、前記注出部との螺合により該注出部に脱着可能に装着された蓋部とを備え、前記蓋部は、前記注出部の内側に挿入される有底円筒状の蓋本体部を有し、前記注出部の下面内周と前記蓋本体部の底面外周は、それらが互いに溶着されてなる溶着部によって一体となっている。
【0008】
上記の課題を解決するため、合成樹脂製の注出口具の製造方法としては、内部に流体を収容する容器の開口部分に取り付けられる合成樹脂製の注出口具の製造方法であって、前記流体の流路を形成する円筒状の注出部の内側に、有底円筒状の蓋本体部を挿入する装着工程と前記注出部の下面と前記蓋本体部の底面を加熱する加熱工程と、を備え、前記加熱工程では、前記注出部の下面内周と前記蓋本体部の底面外周とが溶着されて一体化する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、酸素バリア性に優れた注出口具が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の注出口具の斜視図。
図2】注出口具の縦断面図。
図3】本実施形態の注出口具の製造工程を順に示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示す合成樹脂製の注出口具1は、合成樹脂製の袋状容器の開口部分に取り付けられる。これによって、袋状容器の内部に収容された流体を注出するための流路を形成する。注出口具1は、袋状容器の開口部分にヒートシールにより接着固定される。袋状容器は、ポリエチレン製の薄膜状の複数層のシートの間にアルミニウム箔層が積層された多層構造シートにより成形されている。なお、以下の説明では、図1に示す上下、左右を、注出口具1の上下、左右として説明する。
【0012】
図1及び図2に示すように、合成樹脂製の注出口具1は、内部に流体の流路Cを形成する注出部2と、注出部2との螺合により注出部2に脱着可能に装着された蓋部4と、ガスバリア層としてのシート体5を備えている。
【0013】
(注出部2の構成)
図2に示すように、注出部2は、内部に流路Cを形成する。注出部2は、注出部2の全長に亘って形成された円筒状の筒本体部20と、筒本体部20の下部に筒本体部20と一体に形成された取付部30を備えている。
【0014】
筒本体部20の内周面は、上下方向に径が変化しないストレート形状に形成されているとともに、凹凸の存在しない平坦面として形成されている。これにより、袋状容器の内部から流体を注出する際には、流路Cを構成する筒本体部20の内周面に、流体が付着したり滞留したりすることが抑制される。
【0015】
筒本体部20の上部の外周面には、雄螺子21が周方向に延びるように形成されている。また、筒本体部20の上下方向中間部の外周面には、径方向に突出する環状突部22が周方向全体に形成されている。さらに、環状突部22の上部には、複数のラチェット23が形成されている。
【0016】
図1及び図2に示すように、取付部30は、筒本体部20の下部において、筒本体部20の外周面から径方向外方へ突出する形状に形成されている。取付部30は、上面視で左右方向に細長い形状の複数のリブによって形成されている。複数のリブは、上側に設けられた上壁31と、下側に設けられた下壁32と、上壁31及び下壁32の間に設けられた複数の中間壁33で構成されている。上壁31、下壁32、及び中間壁33は、同形状で同じ大きさであって互いに平行に延びており、それぞれの側面は上下方向において面一とされている。上壁31、下壁32、及び中間壁33の各側面は、袋状容器の開口部分がヒートシールにより接着固定される部分であり、凹凸のない平坦面として形成されている。下壁32の下面32a及び蓋部4の蓋本体部41の底面45aは、後に説明するガスバリア層形成工程で、シート体5が貼り付けられる面であり、それぞれ左右方向に水平で凹凸のない平坦面として形成されている。上壁31、下壁32、及び中間壁33は、上壁31、下壁32、及び中間壁33の間で左右方向に延びる連結壁34によって一体に連結されている。
【0017】
(蓋部4の構成)
図1及び図2に示すように、蓋部4は、注出部2の内側に挿入される有底円筒状の蓋本体部41と、蓋本体部41の上端部から径方向外方へ延びるフランジ部42と、フランジ部42の外方端部から下方へ延びる外筒部43を備えている。
【0018】
図2に示すように、蓋本体部41は、円筒状の周壁44と、周壁44の下端縁に設けられた底壁45を備えた中空体として形成されている。蓋本体部41の上面は開放されている。蓋本体部41が注出部2の筒本体部20の内側に挿入されていることにより、蓋本体部41の底壁45が筒本体部20の流路Cを閉塞している。
【0019】
蓋本体部41の周壁44の内周面は、上下方向に径が変化しないストレート形状に形成されている。また、周壁44の外周面の上部には、径方向に突出する突部46が全周に亘って形成されており、突部46の下端部は、下方ほど縮径するテーパ面46aとして形成されている。周壁44の外周面は、突部46が形成されていない部分では、上下方向に径が変化しないストレート形状に形成されており、その内周面は凹凸の存在しない平坦面として形成されている。底壁45の底面45aは、左右方向に水平で凹凸のない平坦面として形成されている。
【0020】
蓋本体部41の周壁44の外径は、注出部2の筒本体部20の内径より少し小さく形成されている。これにより、後に説明する装着工程によって、蓋部4が注出部2に取り付けられた状態では、蓋本体部41の周壁44の外周面と、注出部2の筒本体部20の内周面との間に、幅L1の隙間が形成されている。幅L1は、約0.3~0.5mm程度である。また、周壁44の上部に形成された突部46の突出長は、幅L1に等しい。なお、幅L1の大きさは適宜に変更可能である。
【0021】
蓋本体部41の上下方向の長さは、注出部2の筒本体部20の上下方向の長さよりも僅かに短く設定されている。具体的には、蓋本体部41において、フランジ部42の下面から底壁45の底面45aまでの長さは、筒本体部20の上端面から取付部30の下壁32の下面32aまでの長さより短くなっている。これにより、蓋部4が注出部2に取り付けられた状態では、注出部2の筒本体部20の上端面が蓋部4のフランジ部42の下面に当接するとともに、蓋本体部41の底壁45の底面45aが筒本体部20の下壁32の下面32aより上方に位置する。これら底面45aと下面32aとの上下方向の差は、約0.1~0.7mm程度であり、好ましくは0.5mmである。
【0022】
外筒部43は、蓋本体部41の外周面との間に所定の間隔を形成した状態で、蓋本体部41を取り囲むような形状に形成されている。外筒部43は、蓋本体部41と同一中心の円筒状をなしている。外筒部43の内周面には、注出部2の筒本体部20の雄螺子21と螺合する雌螺子47が周方向に延びるように設けられている。
【0023】
図1及び図2に示すように、外筒部43の下端には、蓋部4の開閉履歴を証明する公知のタンパーエビデント機能を構成するキャップリング48が連結されている。キャップリング48は、注出部2の筒本体部20に設けられたラチェット23の位置に対応するように、外筒部43の下端縁と筒本体部20の環状突部22との間の位置に取り付けられており、蓋部4を開栓方向に回動させて開栓する際に破断される。これにより、袋状容器が開栓された状態であることが示される。
【0024】
注出部2及び蓋部4は、従来公知の合成樹脂材料で成形されている。公知の合成樹脂材料としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0025】
(溶着部6の構成)
図2に示すように、溶着部6は、注出部2の下面32aと蓋本体部41の底面45aとの間にある幅L1の隙間を埋めるように形成されている。つまり、注出部2の下面32aと、蓋本体部41の底面45aとの間は、溶着部6によって一体となっていて隙間がない。溶着部6は、後に説明する加熱工程により、注出部2の下面32aの内周と、蓋本体部41の底面45aの外周が熱溶着されることにより形成されている。
【0026】
(シート体5の構成)
図2に示すように、ガスバリア層としてのシート体5は、注出部2の下面32aと、蓋本体部41の底面45aとが溶着部6によって一体となった面に貼り付けられている。シート体5の形状、大きさは、取付部30の下壁32の形状、大きさと同じであり、注出口具1の下面全体を覆うような態様で貼り付けられている。
【0027】
シート体5は、薄膜状の複数層のシートからなる多層構造シートにより構成されている。シート体5は、基材層と、基材層の下面側に積層されたガスバリア層と、基材層の上面側に積層された熱融着層を備えている。シート体5の材質は特に限定されないが、例えば、ポリエチレン層、ポリプロピレン層、ポリエチレンテレフタレート層、エチレンビニル-アルコール共重合体層、アクリル層等の熱可塑性樹脂層や、アルミニウム箔層、セラミック蒸着フィルム層等が積層された多層構造シートを用いることができる。なお、図2では、シート体5の厚みを誇張して示している。
【0028】
次に、本実施形態の注出口具1の製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。
本実施形態の注出口具1の製造方法は、装着工程、加熱工程およびガスバリア層形成工程を備えている。製造方法について説明する図3(a)~(c)では、装着工程および加熱工程での注出口具1の状態を示している。
【0029】
(装着工程)
装着工程では、注出部2の内側に蓋本体部41を挿入することで、注出部2と蓋部4を取り付ける。
【0030】
図3(a)に示すように、装着工程においては、注出部2は、下面32aを下側にした状態でライン上に複数配置される。蓋部4は、蓋本体部41の底面45aが下方を向いた状態で、外筒部43を掴むことで保持できる巻締め機に配置される。巻締め機によって、注出部2の下面32aの中心と、蓋本体部41の底面45aの中心とを結ぶ線は、下面32aに対して垂直になるように配置される。この状態から、巻締め機が、保持している蓋部4を下方へ垂直に移動させるとともに閉栓方向に回動させると、図3(b)に示すように注出部2と蓋部4が巻締めされた状態となる。このとき、注出部2の筒本体部20の上端面は蓋部4のフランジ部42の下面に当接するとともに、蓋本体部41の底面45aは筒本体部20の下面32aより上方に位置している。
【0031】
(加熱工程)
図3(b)に示すように、装着工程後、つまり加熱工程前では、注出部2の下面32aの内周と、蓋本体部41の底面45aの外周の間には幅L1の隙間が形成されている。
【0032】
加熱工程では、注出部2の下面32a及び蓋本体部41の底面45aが上方を向いた状態で保持することができる受け治具を配置し、受け治具に複数の注出口具1を保持させる。また、受け治具の上方位置には、熱溶着手段を備えた圧着治具を配置する。そして、圧着治具を下降させて、注出部2の下面32a及び蓋本体部41の底面45aに圧力を掛けて押し当てる。これにより、図3(c)に示すように、注出部2の下面32aの内周及び蓋本体部41の底面45aの外周が、熱溶着されて、溶着部6が形成される。この溶着部6によって、注出部2の下面32aと、蓋本体部41の底面45aは一体となる。注出部2の下面32a及び蓋本体部41の底面45aに対する熱溶着手段の押し当てでは、それらの面が好適に熱溶融するように、押し当て温度、所定の押し当て時間が選定される。
【0033】
(ガスバリア層形成工程)
ガスバリア層形成工程では、注出口具1の下面に対してシート体5を貼り付けることで、ガスバリア層を形成する。
【0034】
シート体5を構成する多層構造シートは長尺状をなし、ロール状に巻き取られた状態で配置されている。ロールから繰り出された多層構造シートは、接着工程及び切出工程を経て注出部2の下面32aと、蓋本体部41の底面45aとが溶着部6によって一体となった面に接合される。
【0035】
接着工程においては、まず、熱融着層を下側にした状態で多層構造シートを製造ラインへ供給する。多層構造シートの下方位置には、シート体5が接合されていない複数の注出口具1を、注出部2の下面32aと、蓋本体部41の底面45aとが溶着部6によって一体となった面が上方を向いた状態で保持することができる受け治具を配置し、受け治具に複数の注出口具1を保持させる。また、多層構造シートの上方位置には、熱溶着手段を備えた圧着治具を配置する。そして、圧着治具を下降させて、多層構造シートを注出部2の下面32aと、蓋本体部41の底面45aとが溶着部6によって一体となった面に圧力を掛けて押し当てることにより、注出部2の下面32aと、蓋本体部41の底面45aとが溶着部6によって一体となった面に多層構造シートを接合する。圧着治具による圧着は、複数回実施することが好ましく、例えば、2回実施することが好ましい。こうすることで、高いシール圧を掛けることができ、多層構造シートの接合強度を向上させることができる。
【0036】
切出工程においては、注出部2の下面32aと、蓋本体部41の底面45aとが溶着部6によって一体となった面に熱溶着された多層構造シートに対して、各注出口具1の取付部30の周縁に沿ってレーザーを照射して、外周部分をカットする。切出工程の後、多層構造シートの巻き取り処理を行うことによって、受け治具内には、シート体5が貼り付けられた注出口具1が残る。これにより、注出部2の下面32aと、蓋本体部41の底面45aとが溶着部6によって一体となった面にシート体5が接合された注出口具1が得られる。
【0037】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
(1)注出口具1は、合成樹脂製であり、内部に流体を収容する袋状容器の開口部分に取り付けられる。注出口具1は、内部に流路Cを形成する円筒状の注出部2と、注出部2との螺合により注出部2に脱着可能に装着された蓋部4とを備える。蓋部4は、注出部2の内側に挿入される有底円筒状の蓋本体部41を有する。注出部2の下面32aの内周と蓋本体部41の底面45aの外周は、それらが互いに溶着されてなる溶着部6によって一体となっている。
【0038】
上記構成によれば、注出部2の下面32aの内周と蓋本体部41の底面45aの外周との間に隙間はない。そのため、酸素が、注出部2の内部に流入したとしても、注出部2の下面32aの内周と蓋本体部41の底面45aの外周とが一体となった溶着部6で遮断される。つまり、容器内へ酸素が流入することが抑制される。したがって、酸素バリア性に優れた注出口具1が得られ、開封前の袋状容器内の収容物の保存状態を良好に保持することができる。
【0039】
(2)注出部2の下面32a及び蓋本体部41の底面45aは、ガスバリア層としてのシート体5によって被覆されている。上記構成によれば、注出部2の下面32aと、蓋本体部41の底面45aとが溶着部6によって一体となった面にかけて貼り付けられたシート体5によって、酸素の流れが遮断される。このため、酸素バリア性により優れた注出口具1が得られる。
【0040】
(3)注出口具1の製造方法としては、内部に流路Cを形成する円筒状の注出部2の内側に、有底円筒状の蓋本体部41を挿入する装着工程と、注出部2の下面32aと蓋本体部41の底面45aを加熱する加熱工程を含んでいる。加熱工程では、注出部2の下面32aの内周と蓋本体部41の底面45aの外周とが溶着されて一体する。
【0041】
上記構成によれば、加熱という簡便な方法にて、注出部2の下面32aと蓋本体部41の底面45aを一体化することができる。また、ガスバリア層形成工程で用いる熱溶着手段を備えた圧着治具と同様の圧着治具を加熱工程でも活用することができる。
【0042】
(4)注出口具1の製造方法としては、加熱工程の後に、注出部2の下面32a及び蓋本体部41の底面45aに対して、シート体5を貼り付けることで、ガスバリア層を形成するガスバリア層形成工程を含んでいる。
【0043】
上記構成によれば、注出部2の下面32aと、蓋本体部41の底面45aとが溶着部6によって一体となった面にかけて貼り付けられたシート体5によって、酸素の流れが遮断される。このため、酸素バリア性により優れた注出口具1が得られる。
【0044】
(5)注出口具1の製造方法としては、装着工程では、蓋本体部41の底面45aは注出部2の下面32aより上方に位置するように、注出部2に蓋本体部41が装着される。上記構成によれば、装着工程にて注出部2と蓋部4が巻締めされる際に、蓋本体部41の底面45aが、ラインに抵触し、擦れることを抑制できる。
【0045】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態の注出口具1では、蓋本体部41の上下方向の長さは、注出部2の筒本体部20の上下方向の長さよりも僅かに短く設定したが、これに限定されない。例えば、蓋本体部41の上下方向の長さを、注出部2の筒本体部20の上下方向の長さに合わせて設定してもよい。具体的には、蓋本体部41において、フランジ部42の下面から底壁45の底面45aまでの長さを、筒本体部20の上端面から取付部30の下壁32の下面32aまでの長さと等しくなるようにしてもよい。この場合、蓋部4が注出部2に取り付けられた状態では、注出部2の筒本体部20の上端面が蓋部4のフランジ部42の下面に当接するとともに、注出部2の取付部30の下面32aが蓋本体部41の底壁45の底面45aと面一になっている。
【0046】
・上記実施形態の注出口具1では、ガスバリア層としてのシート体5を有している構成としたが、これに限らない。例えば、ガスバリア層として、ガスバリア剤を所定の厚さとなるように塗布することで形成されたものでもよい。また、ガスバリア層を有していなくてもよい。
【0047】
・上記実施形態の注出口具1の製造方法は、一例であって、他の形態であってもよい。たとえば、ガスバリア層形成工程を省略してもよい。
・装着工程では、蓋部4をライン上に配置し、注出部2を巻締め機に配置してもよい。
【0048】
・加熱工程では、注出口具1と熱溶着手段を備えた圧着治具との間に多層構造シートを配置して熱溶着を行うことで加熱工程とガスバリア層形成工程のうちの接着工程を同時に行ってもよい。
【0049】
・加熱工程では、注出部2の下面32a及び蓋本体部41の底面45aの面全体に熱溶着手段を接触させなくてもよい。例えば、注出部2の下面32aの内周及び蓋本体部41の底面45aの外周を含んで接面するような環状の熱溶着手段を用いてもよい。
【0050】
・製造工程における上下方向は、上記実施形態によらなくてもよい。例えば、加熱工程で、注出部2の下面32a及び蓋本体部41の底面45aが下方を向いた状態で、熱溶着手段を備えた圧着治具を下方から押し当てるようにしてもよい。
【0051】
・注出部2が取付部30を有していなくてもよい。この場合、注出部2は、円筒状の筒本体部20で形成されており、筒本体部20の下部に、袋状容器の開口部分がヒートシールされる。また、注出部2の筒本体部20の下面内周と蓋本体部41の底面45aの外周が、溶着部6によって一体となっている。
【0052】
・取付部30の形状は上記実施形態のものに限定されない。左右方向に細長い形状である方がヒートシールによる接着強度が増すが、必ずしも細長い形状でなく、上面視円形状であってもよい。
【0053】
・取付部30は、複数のリブによって形成されているものに限定されない。例えば、筒本体部20の外径より大径の一つの面として形成されていてもよい。
・取付部30の上壁31、下壁32、及び中間壁33は同形状で同じ大きさでなくてもよい。例えば、上壁31が最も大きくてもよく、中間壁33が最も大きくてもよい。また、中間壁33の数は特に限定されない。
【0054】
・取付部30の上壁31、下壁32、及び中間壁33の側面は、平坦面に限定されない。凹凸を有する面であってもよい。
・注出部2の筒本体部20の上下方向中間部の外周面に形成された環状突部22の形状は特に限定されない。例えば、円形状であってもよく、六角形状であってもよい。また、環状突部22が形成されていなくてもよい。
【0055】
・筒本体部20にラチェット23が形成されていなくてもよい。また、上記実施形態のようなタンパーエビデント機能が設けられていなくてもよい。
・蓋部4の蓋本体部41は中実状であってもよい。また、中空状の蓋本体部41において、その上端部が閉塞されていてもよい。
【0056】
・蓋本体部41の周壁44の内周面は、上下方向に径が変化しないストレート形状に形成されているが、これに限定されない。周壁44の内周面にテーパ面が形成されている等により、内径が変化してもよい。
【0057】
・蓋本体部41の周壁44の外周面は、突部46以外の部分では、上下方向に径が変化しないストレート形状に形成されているが、これに限定されない。周壁44の外周面にテーパ面が形成されている等により、外径が変化してもよい。
【0058】
・蓋本体部41の周壁44の外周面に形成された突部46は、その下端部にテーパ面46aが形成されているが、その形状はこれに限定されない。例えば、上端部に、上方ほど縮径するテーパ面が形成されていてもよい。
【0059】
・蓋本体部41の底壁45の底面45aは、左右方向に水平で凹凸のない平坦面として形成されているがこれに限定されない。例えば、底面45aにゲートが設けられており、これによって凹凸が形成されていてもよい。
【0060】
・蓋本体部41の外筒部43は、円筒状でなくてもよい。例えば、外周面が上面視楕円形状、上面視六角形状等であってもよい。
・シート体5の形状、大きさは、取付部30の下壁32の形状、大きさと同じでなくてもよく、適宜変更可能である。
【0061】
・シート体5を貼り付ける方法は、上記実施形態のような接着工程によらなくてもよい。例えば、注出口具1の一個ずつに、枚葉状態の多層構造シートを接着してもよい。
・上記実施形態では、切出工程において、多層構造シートを各注出口具1の取付部30の周縁に沿ってレーザーを照射しているが、これに限定されない。例えば、刃物でカットするようにしてもよい。
【0062】
・上記実施形態の袋状容器は、ポリエチレン製の薄膜状の複数層のシートの間にアルミニウム箔層が積層された多層構造シートにより成形されているが、その構成、材質はこれに限定されない。
【0063】
・注出口具1は、袋状容器の開口部分にヒートシールにより接着固定されなくてもよい。注出口具1の固定の方法はヒートシール以外の他の方法に適宜変更することができる。
次に、上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想を以下に記載する。
【0064】
内部に流体を収容する容器の開口部分に取り付けられる合成樹脂製の注出口具の製造方法であって、前記流体の流路を形成する円筒状の注出部の内側に、有底円筒状の蓋本体部を挿入する装着工程と、前記注出部の下面と前記蓋本体部の底面を加熱する加熱工程と、を備え、前記加熱工程では、前記注出部の下面内周と前記蓋本体部の底面外周とが溶着されて一体化するとともに、前記注出部の下面及び前記蓋本体部の底面に対してガスバリアシートを貼り付ける。この構成によれば、工程数を減らすことができ、簡便に酸素バリア性に優れた注出口具を得られる。
【符号の説明】
【0065】
C…流路
1…注出口具
2…注出部
4…蓋部
5…シート体(ガスバリア層)
6…溶着部
20…筒本体部
30…取付部
32a…下面
41…蓋本体部
45…底壁
45a…底面
図1
図2
図3