(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083758
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】多機能の除草具
(51)【国際特許分類】
A01B 1/16 20060101AFI20240617BHJP
A01M 21/02 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
A01B1/16
A01M21/02
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197755
(22)【出願日】2022-12-12
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】504133095
【氏名又は名称】吉田 甫
(72)【発明者】
【氏名】吉田 甫
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA19
2B121BB22
2B121EA26
2B121EA27
2B121FA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】従来の除草具は、除草操作の反復周期が長く、除草に時間がかかり、その大部分は同一の除草操作を反復する単機能のものである。
【解決手段】把持部14の直前に刃板1が位置する構造とし、力点と作用点を隣接させて、腕の力を効率良く刃に伝え、手首から先、または肘から先を使用して、左右方向に除草具を振って地面を削る操作により、除草操作の反復周期を短くして高速で除草操作を可能とし、作業時間を短縮した。除草方向に対して斜めに傾斜した刃、弓状の刃で削る操作によって、地面をより削り易くした。刃板の両面を使い分けて除草可能とし、刃板を裏返して、柄を前方に押して除草する数種類の除草法は、単体の雑草に対して優れた除草能力を有する。複数の形状の刃と、複数の除草法の組み合わせにより、小型軽量で簡単な構造ながら、多機能を有し、除草する雑草一本ごとに最適な刃と除草法を瞬時に選択して使用できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柄の前端から長さ15mm以上に亘って、柄の上面、下面間の厚みが、柄の厚み(37)
よりも薄く、前端の厚みが、柄の厚み(37)の80%以下である棒状の柄(11)備え、
刃板(1)、立ち上がり部(2)、装着部(3)によって構成される刃体(4)を、柄の前
部に装着し、柄の直前に刃板が位置する構造で、刃板の左右の側縁が平板で、刃板の真上
の光源から、水平面への刃板の投影面積が最大となる姿勢の正面視において、刃板前端が
柄の前方に突出し、刃板後端は柄の前端下面よりも下方に位置する、刃板の全長が150
mm以下である除草具において、刃板の一方の側縁に直線状刃を有し、他方の側縁に凸弓
形状の刃を有することを特徴とする除草具。
【請求項2】
請求項1に記載の除草具において、直線状刃に代えて、凸弓形状の刃を備えたことを特
徴とする除草具。
【請求項3】
請求項1に記載の除草具において、直線状刃に代えて、乖離の比率20%以下の凹弓形
状の刃を備えたことを特徴とする除草具。
【請求項4】
柄の前端から長さ15mm以上に亘って、柄の上面、下面間の厚みが、柄の厚み(37)
よりも薄く、前端の厚みが、柄の厚み(37)の80%以下である棒状の柄(11)備え、
刃板、立ち上がり部、装着部によって構成される刃体を、柄の前部に装着し、柄の直前に
刃板が位置する構造で、刃板の左右の側縁に刃を有し、刃板の真上の光源から、水平面へ
の刃板の投影面積が最大となる姿勢の正面視において、刃板前端が柄の前方に突出し、刃
板後端は柄の前端下面よりも下方に位置する、刃板の全長が150mm以下である除草具
において、刃板の側縁に鈍角状刃を備えた縁を有することを特徴とする除草具。
【請求項5】
柄の前端から長さ15mm以上に亘って、柄の上面、下面間の厚みが、柄の厚み(37)
よりも薄く、前端の厚みが、柄の厚み(37)の80%以下である棒状の柄(11)備え、
刃板、立ち上がり部、装着部によって構成される刃体を、柄の前部に装着し、柄の直前に
刃板が位置する構造で、刃板の真上の光源から、水平面への刃板の投影面積が最大となる
姿勢の正面視において、刃板前端が柄の前方に突出し、刃板後端は柄の前端下面よりも下
方に位置する、刃板の全長が150mm以下である除草具において、 刃板の同一の側縁に、
直線状刃と凸弓状刃を併設した縁を有することを特徴とする除草具。
【請求項6】
柄の前端から長さ15mm以上に亘って、柄の上面、下面間の厚みが、柄の厚み(37)
よりも薄く、前端の厚みが、柄の厚み(37)の80%以下である棒状の柄(11)備え、
刃板、立ち上がり部、装着部によって構成される刃体を、柄の前部に装着し、柄の直前に
刃板が位置する構造で、刃板の真上の光源から、水平面への刃板の投影面積が最大となる
姿勢の正面視において、刃板前端が柄の前方に突出し、刃板後端は柄の前端下面よりも下
方に位置する、刃板の全長が150mm以下である除草具において、刃板の左右の側縁に
直線状刃を有し、前縁に凸弓形状の刃を有することを特徴とする除草具。
【請求項7】
請求項6に記載の除草具において、前縁の凸弓形状の刃に代えて、頂点部分の角度が8
0度以上、180度未満の角度内に収まる、三角形の二辺と類似形状の刃を備えたことを
特徴とする除草具。
【請求項8】
請求項6に記載の除草具において、前縁の凸弓形状の刃に代えて、直線状刃を備えたこ
とを特徴とする除草具。
【請求項9】
刃板、立ち上がり部、装着部によって構成される刃体を、棒状の柄(11)の前部に装
着し、柄の直前に刃板が位置する構造で、刃板の真上の光源から、刃板の水平面への投影
面積が最大となる姿勢の正面視において、 刃板前端が柄の前方に突出し、刃板後端が柄の
前端下面よりも下方に位置する、全長が150mm以下の刃板を備えた除草具において、
平板の刃板の片方の直線状刃の側縁を、刃板に対して斜め下方に曲げて傾斜させた形状の
刃板を備えていることを特徴とする除草具。
【請求項10】
刃板、立ち上がり部、装着部によって構成される刃体を、棒状の柄(11)の前部に装
着し、柄の直前に刃板が位置する構造で、刃板の真上の光源から、刃板の水平面への投影
面積が最大となる姿勢の正面視にて、刃板前端が柄の前方に突出し、刃板後端は柄の前端
下面よりも下方に位置する、全長が150mm以下の刃板を備えた除草具において、基本
姿勢の平面視にて、刃板の側縁に、刃の角度(20)が刃の角度基準線(19)に対して、
25度から85度の範囲内である直線状刃を有し、且つ、刃板のシフト量が2mm以上で
あることを特徴とする除草具。
【請求項11】
請求項10に記載の除草具において、直線状刃に代えて、側縁に乖離の比率が10%未
満で、刃の角度が刃の角度基準線(19)に対して、25度から85度の範囲内である凸
弓形状の刃を備え、且つ、刃板のシフト量が2mm以上であることを特徴とする除草具。
【請求項12】
請求項10に記載の除草具において、直線状刃に代えて、側縁に乖離の比率が10%未
満で、刃の角度が刃の角度基準線(19)に対して、25度から85度の範囲内である凹
弓形状の刃を備え、且つ、刃板のシフト量が2mm以上であることを特徴とする除草具。
【請求項13】
刃板、立ち上がり部、装着部によって構成される刃体を、棒状の柄(11)の前部に装
着し、柄の直前に刃板が位置する構造で、刃板の真上の光源から、刃板の水平面への投影
面積が最大となる姿勢の正面視にて、刃板前端が柄の前方に突出し、刃板後端は柄の前端
下面よりも下方に位置する、全長が150mm以下の刃板を備えた除草具において、刃板
の側縁に1型曲げ刃を有することを特徴とする除草具。
【請求項14】
刃板、立ち上がり部、装着部によって構成される刃体を、棒状の柄(11)の前部に装
着し、柄の直前に刃板が位置する構造で、刃板の真上の光源から、刃板の水平面への投影
面積が最大となる姿勢の正面視にて、刃板前端が柄の前方に突出し、刃板後端は柄の前端
下面よりも下方に位置する、全長が150mm以下の刃板を備えた除草具において、刃板
の側縁に捻りを加えた、捻り刃を有することを特徴とする除草具。
【請求項15】
刃板、立ち上がり部、装着部によって構成される刃体を、棒状の柄(11)の前部に装
着し、柄の直前に刃板が位置する構造で、刃板の左右の側縁が水平面に接する姿勢の正面
視において、刃板前端が柄の前方に突出し、刃板後端は柄の前端下面よりも下方に位置す
る、全長が150mm以下の刃板を備えた除草具において、スプーンを伏せた形状の刃板
を備えていることを特徴とする除草具。
【請求項16】
請求項4、請求項9から請求項14の何れかに記載の除草具において、もう一方の側縁
に凸弓形状の刃を併設した除草具。
【請求項17】
請求項1から請求項14の何れかに記載の除草具において、側縁に2型曲げ刃を併設し
た除草具。
【請求項18】
請求項1から請求項9、請求項13から請求項15の何れかに記載の除草具において、
刃板のシフト量が2mm以上である除草具。
【請求項19】
請求項1から請求項15の何れかに記載の除草具において、正面視にて、柄の後端から
長さ15mm以上に亘って、柄の後部の厚みが柄の厚み(37)よりも薄く、後端の厚み
が、柄の厚み(37)の80%以下である柄を備えていることを特徴とする除草具。
【請求項20】
請求項1から請求項15の何れかに記載の除草具において、刃板の真上の光源から、刃
板の水平面への投影面積が最大となる姿勢の正面視にて、 柄の中心線の下方50mm以内
の区間を通る柄の中心線と平行な直線の何れかが、刃板と交差するように、水平面に対し
て柄が傾斜した形状である除草具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、庭、畑、公園等の、比較的小型の雑草の除去を主用途とする、除草具に関す
る。
【背景技術】
【0002】
従来の除草具には、二股の尖鋭部を雑草の根元に刺して、梃子の原理を利用して雑草を
抜き取るもの、台形状の刃板の下側の縁に形成した刃を地面に押し付けながら、取手を手
前に引いて地面を削って除草するものがある。
他に、鋸状の刃を往復させて根切りするもの、幅広い木の葉状の刃板前半部を地面に刺
して根切りするもの、前後方向に長い平面の刃板を地面に密着させて、側縁の直線状の刃
で左右方向に地面を薄く削って除草するもの、鎌の柄と刃に段差を設けた形状で、刃を地
面下に侵入させて、柄を手前に引いて根切りして除草するものがある。
【0003】
特許文献1の草取り器は、尖鋭な二股の先端部分を雑草の根元に刺し、支点部を地面に
当て、柄の後部を押し下げて、 梃子の原理を利用して雑草を1本ずつ抜き取るものである。
【0004】
特許文献2の除草具は、除草する雑草の向こう側の地面に刃を当てて、刃を地面に押し
付けながら取手を手前に引いて、雑草を地面ごと削り取って除草するものである。
【0005】
特許文献3の雑草地中根切り具は、鋸状の刃を地中に刺し、前後に往復させて、根切り
するものである。
【0006】
特許文献4の草取器は、出願書類には、前後に操作し草の根を切ると記述されており、
刃板前半部を雑草の根元に刺して、根切りして除草するものである。
【0007】
特許文献5の除草器具は、側縁の刃について明細書には、刃状4の部分を土表と平行に
して、草をひげをそるが如く、そぎ払うように操作すれば、容易に草を刈ることができる
と記述されている。刃板を地面に密着させて、左右方向に地面を薄く削って除草するもの
である。
前部の刃は、雑草の根元に刺し、握り保持部を押し下げて、梃子の原理を利用して根を
掘り起こして除草する用途のものである。
【0008】
特許文献6の根切り用除草具は、鎌に似た形状で、把持棒よりも刃が低くなるように段
差を設け、刃を地面下に侵入させ、把持棒を下方に押し付けながら、手前に引いて根を地
面ごと削り取って除草するものである。
【0009】
特許文献7の根切り器は使用法が記載されていないが、刃板前部の刃は、比較的軟らか
い地面において雑草の基部に刺して根を切る用途、右縁の直線の刃は、右に振って雑草を
地面ごと削り取る用途、左縁の鋸状の刃は、雑草の右側に押し付けて前後に操作して、根
を切る用途に使用するものと推定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002-84801号公報
【特許文献2】特開2009-45046号公報
【特許文献3】実開平3-18701号公報
【特許文献4】特開昭63-237701号公報
【特許文献5】実開昭59-16301号公報
【特許文献6】特開2018-183127号公報
【特許文献7】意匠登録857785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1の草取り器は、雑草1本ごとに、先端部分を雑草の根元に刺す操作と、柄の
後部を押し下げて雑草を抜き取る操作が必要であるため、除草に時間がかかって効率が悪
く、多数の雑草を除去する用途には不適である。
【0012】
特許文献2の除草具は、記載名称である柄を介して刃部と取手が連結され、この中間支
持体の柄があることで、取手から刃部までの長さが長くなってしまう。
このため、握った取手部分を下方に押して、刃を地面に押し付けながら取手を手前に引
く操作では、力点から作用点までの長さが長いため、刃を地面に押し付ける力が弱くなっ
てしまう欠点がある。
そこで、もう一方の手で刃部上側を押さえて、刃先を地面に押し付ける操作と、取手を
手前に引く操作を、両手で分担して行うように工夫されている。
ところが、刃部上側を押さえる手が、除草する雑草の視野を遮ってしまうため、除草す
る地面に刃を当てた後に、もう一方の手を添えて、刃部上側を押さえる操作を毎回繰返す
必要があり、この操作が甚だ煩わしく、除草操作の反復周期が長くなる欠点がある。
この除草具は一定の刃幅で地面を削るため、まばらに生えた雑草を1本ずつ削り取る場
合は、必要幅以上の地面を削ってしまう欠点がある。 また、刃を押し付ける方向と削り取
る方向が同一方向ではなく、地面を削る刃の深さを一定に保ち難く、地面を極めて薄く削
り取るのは困難である。
取手を手前に引くことによって、一定の刃幅で地面を削って除草する使用法のため、刃
の左右幅よりも狭い場所の除草には使用できない欠点がある。
【0013】
特許文献3の雑草地中根切り具は、鋸刃の刀身を地中で前後に往復させて根切りするも
のであるが、この文献の各図面に記載の根切り具は、 校庭のような固まった地面では、記
載名称である刀身を地中に侵入させることが不可能で、比較的軟らかい地面での使用に限
定したものである。
鋸刃を往復させて根切りする除草法は、大型の雑草や、頑強な根を張り巡らす雑草の根
切りには有効であるが、鋸刃は切断した根で目詰まりし易い欠点がある。
しかし、小型の雑草の場合は、地中で鋸刃を往復させて根切りするような頑強な根では
なく、通常刃の除草具で削り取った方が速く、簡単に除草できるので、この根切り具は比
較的軟らかい地面において、大型の雑草を除去する用途のものである。
【0014】
特許文献4の草取器は、幅広い木の葉状の刃板側縁後半部に、ほぼ垂直に立った縁を有
する形状で、図面には、刃板側縁に刃状の部分は明示されていない。
従って、この草取器は雑草基部に刺して根を切る用途のもので、左または右に振って、
側縁前半部の弓状の縁で、地面を削り取って除草する用途を想定したものではない。根切
り、掘り起こしによる除草操作は効率が悪く、多数の雑草を除去する長時間の作業には不
向きである。
【0015】
特許文献5の除草器具の使用法は、上述の「背景技術」に記述の通りである。同等のも
のを試作して試用した結果、除草時の除草器具の姿勢において、構造上、握り保持部が地
面から高い位置となってしまうため、操作上の問題点がある。
握り保持部の大きさを基準にして試作したものは、全長220mm、高さ100mm、
前側に突出した刃の長さが85mmである。
側縁の刃で左右に雑草を削り取る姿勢、すなわち、刃板裏面を地面に密着させた状態で
は、地面から握り保持部の太さの中心までの高さは85mmで、握り保持部は水平に近い
姿勢となって、手首から先を上側に曲げた状態での除草操作を強いられるので、長時間の
作業には不適である。
刃板下面を地面に密着するように押し付けて左右方向に削る操作は、根が浅い小さな雑
草に限定すれば、刃にかかる負荷が軽いので、地面と共に削り取ることができる。但し、
サイズがやや大きく、握り保持部の高さが高いため、左右に振って雑草を削り取る操作が
行い難く、多数の雑草を削り取る長時間の作業には不適である。
握り保持部の高さが高く、地面との高低差が大きいため、小型の根が張った雑草、株が
やや大きい雑草では、刃に負荷がかかった瞬間に、除草器具全体が除草する側に大きく傾
いてしまい、削り取りが困難である。この除草具のような、除草方向とほぼ直交する直線
状の刃を左右に振って雑草を削る方式のものは、刃板下面から握り保持部前端下面までの
高低差が大きくなると、刃に負荷がかかった時、除草具が除草方向に傾き易い欠点がある。
この文献の第3図のものは、鋸刃を往復させて除草する用途のため、除草速度が遅く多
数の雑草を除去するには不適である。
従って、側縁の直線状の刃の主用途は、刃板下面全体を地面に密着させた姿勢で、除草
具を左または右に振って、地面をごく薄く削って、根が浅い小さな雑草を除去する用途の
ものである。
刃板の前部の刃は、やや大きい雑草の除草用で、雑草の基部に刺して、梃子の原理を利
用して根を掘り起こす用途のものである。この操作では、握り保持部の高さが高いため、
刃を地面に刺し難く、掘り起こす用途に使用するには、段差が大きく、刃が長いため操作
性が悪く、短い反復周期で除草するのは不可能である。
【0016】
特許文献6の根切り用除草具は鎌と類似の形状で、 切断刃と把持棒は、ほぼ直角に交差
し、切断刃と把持棒に段差を設けて、把持棒を握った指と地面との干渉を回避している。
切断刃を地面下に侵入させて、把持棒を下方に押し付けながら、手前に引いて根切りし
て除草するものである。
鎌で雑草を刈り取る場合は、地上の茎の部分を切り取るので、刃を地面に押し付ける必
要は無いが、地面下の根を削り取るには、刃幅全体を下方に押し付けながら、把持棒を手
前に引く必要がある。ところが、切断刃全体が把持棒の側方に突出しているので、切断刃
の先端に近くなるにつれて把持棒との距離が遠くなって、刃を下方に押し付ける力が弱く
なる欠点があり、把持棒に左回転する力を与えて、切断刃先端部まで均一に押し付けなが
らながら、把持棒を手前に引くことが必要で、操作性に問題がある。
除草操作の反復周期は毎秒1回程度で、特許文献2の除草具と同様、切断刃の左右幅よ
りも狭い場所や、 周囲に障害物がある狭い場所では使用不可能で、単体の雑草の除草時は、
必要幅以上の幅で地面を削ってしまう欠点がある。
【0017】
特許文献7の根切り器のサイズは、柄の直径を30mmと仮定すると、刃板の長さが約
260mm、刃板の最大幅は約147mmとなる。刃板の下面から柄の前端下面までの高
さは約117mmで、柄の長さは約167mmである。刃板に対して柄の傾斜角度は40
度となっている。
柄の長さが約167mmであることから、この根切り器は片手で操作するするものであ
るが、刃板が上記の大きなサイズでは相応の重量となるため、右方向に振って右縁の刃で
雑草がある地面を削り取る操作は、腕に対して重い負荷となるため、素早い除草操作は不
可能で、腕の疲労が大きく長時間の作業には不適である。
右縁の直線状の刃の長さは約227mmで、幅広く削ることはできるが、刃が地面を削
り取る力は、この刃長全域に分散するので刃長が短いものと比較して弱く、根が張った雑
草の除草は困難で、削り取る雑草は比較的小さなものに限定される。正面図において、直
線状の刃は柄に対して約14度傾斜しているが、柄を握って右方向に削る操作では、この
程度の傾斜角度では、刃を傾斜させることによる効果は小さい。
刃板のサイズが大きいため、右方向に振って雑草を削り取る操作は、周囲に障害物があ
る場所や、狭い場所では無理である。
刃板下面から柄の前端下面までの高さが約117mmもあるため、直線状の刃で右方向
に雑草を削る操作では、負荷がかかると柄が回転して、器具全体が除草方向に傾き易い欠
点がある。
刃板に対して柄の傾斜角度が40度の急角度では、 器具を右に振って地面を削る操作、
左縁の刃を前後に往復して雑草を削る操作とも、操作性が悪く、使い難い。
片手で操作する器具としては、サイズが大き過ぎ、相応の重量となるため、操作性に問
題があり、長時間の作業には不適である。刃板の長さを4分の1以下にすれば、片手で操
作し易いサイズになるが、 柄の直径は約8mm以下となってしまうので、柄が細すぎて、
しっかりと把持することが困難となる。
【0018】
上記特許文献の除草具で、特許文献2、5、6、7の直線状の刃は、地面を削って除草
する用途で、何れも刃とほぼ直交する方向に除草するものである。特許文献2と6は、柄
を手前に引いて除草する方式のため、柄を斜め後方引いて削る操作には不適である。
特許文献5と7の直線状の刃は、使用状態の平面視において、除草方向に対して刃を斜
めに傾斜させて削る操作は可能であるが、把持部の位置が高いので、操作性が悪く、短い
周期で除草操作を反復するには不適である。
除草時の平面視において、
図7のように、除草方向55に対して、ある角度以上に刃を
傾斜させて地面を削る操作ができれば、除草幅は狭くなるものの、やや硬い地面や、根が
張った雑草の削り取りが、より容易となる利点があるが、従来の除草具では、このような
効果を意図したものは無いと思われる。
【0019】
以上、 上記特許文献の除草具の問題点について述べたが、更に、特許文献1から4、 特
許文献6、7の除草具は、何れも腕全体を使用して操作する除草法のため、素早い除草操
作ができず、除草操作の反復周期が長い欠点がある。特許文献5、7の除草具は、把持部
の高さが高く、操作性に問題があって、短い周期で反復する除草操作には不適である。
【0020】
公知の、地面を削って除草する方式の除草具には様々なものがあるが、何れも地面をほ
ぼ一定の幅で均一に薄く削って除草するもので、雑草の周囲の地面を、瞬時に凹面状に小
さく削り取って除草する除草法を併用できるものは無いようである。
除草作業する作業者の立場に立って見ると、点在する単体の小型の雑草を削り取る場合、
狭い削り幅で雑草の周囲の地面を小さく削ればよく、幅広く削る必要は無い。同一の除草
具で、地面を幅広く薄く削って、複数の雑草を同時に除草する操作と、雑草の周囲を瞬時
に小さく削り取る操作の、2種類の削り方ができる除草具があれば、より使い易く便利で
ある。
刃板と把持部が隣接し、把持部の高さが低く、左右方向に除草する方式の除草具で、こ
の2種類の削り方ができれば、短い周期で除草操作を反復できるので、より使い勝手が良
い。同一の除草方向で、この2種類の削り方ができれば、更に使い易い。
【0021】
除草具において、刃体の形状、操作方法以外に、柄のサイズと形状も操作性の良否にか
かわる大切な要素である。柄は、腕の力を刃や除草爪に伝える接点であって、手に馴染ん
で違和感なくしっかりと把持でき、腕の疲労が小さく、滑り難く、伝達する力のロスが少
なく、長時間の除草作業が可能であることが望ましい。
市販の片手で操作する除草具の把持部の太さは、周囲長が80mm~90mmのものが
多く、中には、周囲長が60mmの平たい形状の柄を装着したものも見受けられる。
把持部の周囲長が短い柄は、握った手の平や指との接触面積が小さいため、十分な把持
力が得られず、長時間の作業には不適である。可能な限り太い柄が望ましい。
同一の刃体で、柄が太いものと細いものを試作して比較使用してみると、使い易さの差
は歴然としている。柄の良否によってその使用感が全く異なり、柄のサイズと形状が実用
面では使い易さを大きく左右する。
(本発明の除草具の要点の説明)
【0022】
本発明の除草具全般について簡単に表現すれば、除草速度が極めて速いことが他の除草
具には無い特徴で、小型軽量で、シンプルな構造ながら、多種類の除草法が可能である。
本発明の除草具の共通した形状は、刃板、立ち上がり部、装着部で構成される刃体を、
棒状の柄の前部に装着し、且つ、刃板と柄との相互位置関係は、後述の(用語の説明)に
記述の、刃板と柄が基本位置関係、すなわち、刃板前端は柄の前方に突出し、刃板後端は
柄の前端下面よりも下方に位置する形状となっている。
本発明の除草具は、この共通した形状と、柄の形状、様々な形状の刃との相乗効果によ
り、従来の除草具には無い使い易さと、高速除草を可能としたものである。
刃板形状は、平面のものの他に、刃板を曲げたもの、
図25の除草具において、直線状
刃の側縁部分を
図26、
図27のように僅かに斜め下方に曲げたもの、刃板に捻りを加え
たもの、スプーンを伏せた刃板形状のものがある。刃板の縁の形状は、直線状、弓状、鈍
角状、前部が尖った形状のものがある。
これらの形状の刃板は、本発明の代表的な形状である、実施例1の除草具、
図1の刃板
形状を原型とした刃板の変形である。
柄の前部、後部の厚みを薄くして、刃板を裏返して除草する、非常に使い易い除草法を
可能としたことが、他の除草具に無い特徴的な部分である。
刃板の左縁、右縁、前縁、または同一の側縁に、異なる形状の刃を併設することによっ
て、除草中に複数の形状の刃を頻繁に選択して使い分けでき、より使い易く、より短時間
で除草できることを目標としたもので、機能面での主な特徴は、次の(イ)から(ヌ)に
記述の通りである。
(イ)
【0023】
小型軽量で除草速度が速く、作業時間を短縮できる。
柄の直前に刃があって、
図5のように地面に近い低い位置で柄を把持でき、把持部が刃
板と隣接しているので、腕の力を効率よく刃板に伝達できる。除草具を左または右に振っ
て、側縁の刃で地面を削る操作に適した形状で、この除草法は短い周期で除草操作を反復
可能である。
この形状の除草具を左右に振って地面を削る除草法は、柄を手前に引いて地面を削る除
草法と比較して、高速で除草操作を反復できる利点がある。肘から先を左右に振る除草操
作では毎秒2~3回程度、手首から先を左右に振る除草操作では、毎秒3~4回程度の反
復操作ができる。このような高速で除草操作を反復できる除草具は、従来の除草具には見
られないものである。
図9の手法を使用すれば、力点と作用点が更に接近し、より楽に除
草できる。
特許文献5の除草器具は側縁の刃で雑草を削り取る方式であるが、把持部が高い位置に
あるため、刃に負荷がかかると、除草器具全体が除草する側に傾いてしまう欠点があり、
除草対象となる雑草は、刃板が地面に密着にした姿勢で除草できる、根が浅い小さなもの
に限定される。把持部が高い位置にあるため操作性に難点があり、地面を削る操作を高速
で反復するには不適である。
(ロ)
【0024】
除草時の平面視において、刃と直交しない方向に地面を削ることで、削り難い地面や、
根が張った雑草にも対応できる。
従来の雑草を削り取る方式の除草具は、刃とほぼ直交する方向に削るのに対し、本発明
の除草具は、刃と直交しない方向に削る操作を主とし、直交方向に削る操作も可能である。
特許文献5、特許文献7は、側縁の直線状刃は除草方向と直交しないが、除草方向に対
して刃の角度が90度に近く、刃を傾斜させたことによる効果は小さい。
この操作は、除草時の上面から見た刃の向きが、
図7の、除草方向55に対して傾斜し
た刃で地面を削る操作や、
図12の、弓状の刃が旋回しながら撫でるように地面を削る操
作によって、 強引に刃と直交する方向に削るのと比較して、削り易さの違いが実感できる
ものである。 包丁の刃をスライドさせながら切ると、刃と直交する方向に切るのと比較し
て、切り易いのと同様である。
図7の除草方向に傾斜した刃は、傾斜の度合いが大きくなるにつれて、柄の側方に刃が
大きく突出して、刃板の左右のバランスが悪くなるが、刃板のシフトによってこの欠点を
修正できる。
この、除草方向に対して傾斜した刃で削る除草法において特筆すべきは、
図10におい
てY方向、またはY方向寄りに地面を削る手法である。除草幅は狭いが軽快に地面を削る
ことができ、実に使い易く、切れ味の違いを実感できるものである。詳細は実施例1の除
草具の使用法の説明に記述の通りである。
特筆事項2としては、
図18の除草姿勢において、刃板を地面に対して60度程度の角
度とし、刃板先端方向よりも僅かに斜め前方寄りのb方向に柄を押して、凸弓状刃で雑草
を削り取る除草法である。この手法は比較的硬い地面においても有効で、削り幅は狭いが、
軽快に削り取る操作ができる優れた除草法である。
他に、弓状の刃を弓状に移動させて削り取る手法も削り易く、左右に振る操作は小型の
雑草の高速除草に適し、旋回削りは根が張った雑草の削り取りに適している。
(ハ)
【0025】
前部の厚みを薄くした柄の採用により、柄の前部と地面との干渉を回避して、刃板の長
さが比較的短い刃板でも、刃板を裏返した姿勢で柄を前下方に押して除草する、数種類の
使い易い除草法が可能となり、刃板の両面を使い分けて多種類の除草法が使用できる。
本発明の除草具の、実施例1の正面図、
図3において、刃板が柄の中心線に対して傾斜
した形状であるので、
図5の姿勢以外に、
図15、または、
図15と類似の除草姿勢にお
いて、柄を押して地面を削る操作、 地面を切り崩す操作、地面を掘り起こす操作、硬い地
面や小石交じりの地面の除草操作が容易で、刃板の表裏両面を使い分けて除草できる、従
来の除草具には無い使い易さがある。
刃板を裏返して、柄を押して雑草を削り取る各除草法は、刃板と柄が最適な対地面角度
となるので非常に使い易く、使用頻度が高く、他の除草具は無い優れた使用法で、操作性
が大きく向上し、除草法の選択肢を更に増加させた、本発明の除草具の最も特徴的な部分
である。
この除草法の使い易さを文章で表現するのは困難であるが、作業し易い適度な地面と柄
の角度で、軽快、且つ、スムーズに、子気味よく除草できることが、作業者の精神面の疲
労を緩和し、長時間の作業において腕の疲労を軽減できる。使用法の詳細は、各実施例の
除草具の使用法の説明の通りである。
(ニ)
【0026】
側縁に凸弓形状の刃を備えることによって、多種類の除草法が使用可能である。
本発明全般の共通した形状であって、
図1の、前部の厚みを薄くした柄を備え、正面視、
または背面視において、刃板の側縁が柄の中心線に対して傾斜した形状の除草具の、刃板
側縁に備えた凸弓形状の刃は、刃板を裏返した姿勢での除草も可能で、撫で削り、押し削
り、凹面状削り、旋回削り、地面を切り崩す除草法等の多用途に使用できる便利な使い易
い刃で、詳細は実施例1の除草具の使用法の説明に記述の通りである。
特許文献4の草取器は、刃板前半部の凸弓状の縁に刃が明示されていないが、刃を形成
しても、形成可能な刃は縁の長さの半分程度で、左右に地面を削る操作、地面を掬い取る
操作では、後半部の立った縁の下部が地面と干渉して除草の障害となる。
(ホ)
【0027】
刃板の左縁、右縁、前縁に異なる形状の刃を形成して、複数の除草具の機能を持たせる
ことができる。
特許文献2の柄を手前に引いて雑草を削り取る方式の除草具では、刃を形成した縁は一
つのみであるが、本発明の除草具では、左右の縁の他に前縁にも異なる形状の刃を形成で
き、刃板を裏返した姿勢でも使用できるので、より多種類の除草法に対応できる。
側縁に形成した直線状刃は平面削り用で、一回の除草操作で複数の雑草の削り取る用途
に適し、凸弓状刃は単体の雑草の削り取りに適した、多種類の除草法が使用可能である。
前縁の刃は押し削りに適している。
このように複数の形状の刃を併設することによって、複数の除草具の機能を持たせるこ
ができ、異なる形状の刃を頻繁に使い分けできる利点がある。
左右の縁に、同形状の刃を形成した、左右対称の刃板形状のものは、左右両方向に同一
条件で地面を削ることができ、利き手が左、右の何れでも同様に使用できる利点がある。
一方の側縁の刃が摩耗した時、もう一方の側縁の刃を予備の刃として使用できる。
(ヘ)
【0028】
地面への刃の押し付け方向と、地面を削る方向が同方向である。
特許文献2、特許文献6の除草具の除草操作は、地面を削って除草する方式であるが、
刃を押し付ける方向と削り取る方向が異なり、刃を地面に押し付けながら、柄を手前に引
く操作を同時に行う必要がある。
本発明の除草具では、左右方向に地面を削る操作、柄を前方に押して刃板の両面を使い
分けて前縁の刃で地面を削る操作とも、刃を押し付ける方向と、地面を削り取る方向が同
方向となるので、刃を押し付けることによって刃の移動が同時に行われるのが特徴で、極
めて操作性が良い。
図5の除草姿勢では地面に近い低い位置で柄を把持できるので、刃板
がぐらつき難く、刃の押さえが良く効いた状態で、左右に振って短い周期で除草操作を反
復できる。
特許文献5、特許文献7の直線状の刃は、刃の押し付け方向と、地面を削る方向が同方
向であるが、把持部の高さが高いので操作性が悪く、負荷がかかると柄が回転して、除草
具が傾き易い欠点があり、高速で除草操作を反復する用途には不適である。
(ト)
【0029】
前縁と、左右の縁に刃を形成すれば、左、右、前、後、斜め方向に除草できる。
柄を手前に引いて地面を削る特許文献2の方式の除草具では、除草方向が一方向のみで
あるが、上記の刃を備えた除草具は、左右方向、前方向、斜め前方向、斜め後ろ方向に除
草できる。刃の角度が90度未満の直線状刃を備えたものは、
図10のように除草方向を
選択でき、Y方向に削る操作では、削り幅が
図11においてY1となるので、削り幅は狭
いが楽に除草できる利点があり、削り難い地面にも対応できる。
(チ)
【0030】
図30から
図33の、1型曲げ刃と2型曲げ刃を備えたものは、平面削り、凹面状削り
が、より容易となる。詳細は、実施例7の除草具の説明の通りである。
(リ)
【0031】
図37の、刃板に捻りを加えた形状のものは、左、または右の、捻りを加えた同一の側
の縁に形成した複数の刃を、柄を回転するのみで選択可能で、同一の柄と地面との角度、
適度な刃板と地面との角度、使い勝手が良い同一の除草方向で、複数の刃を使用して除草
できる利点がある。詳細は、実施例8の除草具の説明に記述の通りである。
(ヌ)
【0032】
図40から
図42のスプーンを伏せた形状の刃板を備えた除草具は、刃を地面に押し付
けた状態で左右に振って、一往復で2回の除草操作が可能で、他にも多用途に使用できる。
詳細は、実施例9の除草具の説明に記述の通りである。
【0033】
従来の片手で操作する除草具全般の共通した課題として、除草速度が遅い欠点が挙げら
れる。本発明の除草具は、この課題を改善するため、除草具本体の構造と、刃の形状、柄
の形状、除草法の工夫により、操作性と除草速度を向上させている。
単一の除草法を繰り返して除草する単機能の除草具に対し、本発明の小型軽量で多種類
の除草法を併用しながら除草できる除草具は、従来の除草具には無い使い易さを備えてい
る。
従来の除草具は単機能のものが多い中で、本発明の除草具は、刃板の左縁、右縁、前縁
に、それぞれ異なる形状の刃を形成することが可能で、除草する雑草1本ごとに最適な刃
と除草法を瞬時に選択して使用でき、簡単な構造ながら多種類の除草法を使い分けて、高
速除草できる特徴がある。前部の厚みを薄くした柄を備えたものは、刃板の長さが比較的
短い刃でも、刃板を裏返した姿勢での除草が可能で、除草法の選択肢が更に広くなってい
る。
刃板を裏返した姿勢での除草を可能としたことにより、刃板の両面を使用可能とし、使
い易さと高い除草能力を兼ね備えた除草具を実現できる。
また、同一の側の縁に2種類の刃を形成したものは、左右の別々の縁に各1種類の刃を
形成したものと比較して、使い勝手が良い同一の除草方向で、2種類の刃を使い分けでき
る利点がある。
【0034】
除草方法において、雑草を1本ずつ抜き取る手法は、如何に優れた除草具を使用しても
除草に時間がかかる、極めて効率が悪い除草法である。
これに対して、雑草を地面ごと削り取る除草法は、根の切断と、雑草を地面から分離す
る作業を同時に行うことができ、抜き取る除草法と比較して除草速度が速く、多数の雑草
を除去する用途に適している。
本発明の除草具は、左右方向、前方向、斜め前方、斜め後方、後方向に雑草を削り取る
除草操作によって、効率の良い除草作業を可能としたものである。
【0035】
本発明の除草具は、基本的には片手操作が主で、もう一方の手に持った小型の熊手を併
用して、 除草しながら除草した雑草の排除を平行して行うことで、 除草洩れが分かり易
く、効率良く除草作業ができる。
【課題を解決するための手段】
【0036】
本発明の除草具は、従来の除草具の課題を解決するために、除草姿勢が低い、小型軽量
の除草具を左右に振って、棒状の柄の前部に装着した刃板の、側縁の刃で地面を削る操作
に適した形状とし、除草操作を短い周期で反復可能として、除草に要する時間を短縮した
ことである。
この、高速除草を可能とする条件として、本発明の基本的な形状である、刃体の立ち上
がり部の高さが低いことと、柄の直前に刃板が位置する形状であることが肝要である。
柄の高さが低い除草具で左右方向に地面を削る操作は、柄を手前に引いて地面を削る方
式の除草具と比較して、短い周期で反復可能で、高速除草できる利点がある。刃板の左右
の縁に刃を形成すれば、左右何れの方向にも高速除草が可能である。
本発明の除草具は、左右に振って雑草を削る除草操作、柄を前方に押して雑草を削り取
る除草操作とも、刃を押し付ける方向と除草方向が同方向となるので、刃を押し付ける方
向と削り取る方向が異なる除草具と比較して、刃の往復操作のみで除草でき、速い反復操
作が可能である。
本発明の共通形状である除草具は、
図5のように地面に近い低い位置で柄を把持できる
ので、側縁の刃で左、または右方向に雑草を削り取る除草操作に適し、このような、手首
または肘を支点として、除草具を左右に振って除草操作を高速で反復可能な除草具は、従
来の除草具には見られないものである。
刃板と把持部を隣接させて、力点と作用点を接近させたことで、刃板の近くを把持し、
地面への刃の押し付け、除草具を左右に振る操作ともに、腕の力を効率よく刃板に伝達で
きる形状とした。
図8、
図9のように人差し指を柄の前部上面、または前部右側面に当てて操作すれば、
更に、刃を地面に押しつける力、刃を左に押す力を助長することができる。右縁の刃で除
草する場合は、親指を柄の前部左側面に当てて、刃を右方向に押す力を助長することがで
きる。
この、力点を刃に近づけて、人差し指、または親指で刃を除草方向へ押す力を助長する
操作は、刃板と柄を隣接させたことによって可能となるもので、非常に使い易く、除草具
を高速で左右に振って除草する操作が、より容易で、操作性の良さの違いを実感できる優
れた使用法である。
図9のように人差し指を当てて、
図10のX方向からY方向までの、
任意の方向に除草する操作は、地面を削る作業が楽で、より使い易い手法である。
但し、立ち上がり部の段差が大きい除草具、刃板と柄の前端との距離が離れた形状の除
草具は、力点と作用点が遠くなるので、この操作には不適である。
上述の特許文献の、腕全体を使用して操作する除草具では、除草操作を連続して行う場
合、その反復回数は毎秒1回程度で、毎秒2回の操作を連続して行うのは困難である。
一方、本発明の除草具を左または右に振って、側縁の刃で地面ごと雑草を削り取る方式
では、腕全体を動かす必要がなく、肘から先、または手首から先を左右に振る操作で除草
できるので、毎秒2~4回程度の連続除草操作が可能で、除草に要する時間を短縮できる
利点がある。
図15の、柄を押して、刃板の前縁の刃で雑草を削り取る除草法では、前縁
の刃を雑草の基部に当てて、柄を20mm~30mm前方に押すことによって、小型の雑
草を一本除草できるので、毎秒2~3回の除草操作が可能である。
【0037】
第2の課題解決手段として、
図7のように除草方向55に対し、 斜めに傾斜した刃で削
ることによって、刃と直交する方向に削るのと比較して、地面の削り取りを、より容易と
したことである。
図2の除草具の直線状刃6が、斜めに傾斜した刃の実施例である。
除草方向に対して、鈍角となる傾斜した刃でも同様の効果があるが、鋭角の刃と比較し
て、刃が摩耗して切れ味が悪くなった時、刃が滑って、やや逃げ易い。
刃を斜め向きに取り付けたピーラーと同様、押し付けた刃を斜め向きで移動させること
で、地面をより軽快に削ることができる。庭木の剪定において、鋏を使用して太めの枝を
切る時、枝と直交する方向には切り難いが、刃を斜め向きにすると容易に切ることができ
るのと同様で、除草方向に対して傾斜した刃は、削り難い地面や、頑強な根の雑草に対し
て有効である。
手首または肘を支点として、除草具を左右に振る操作は、刃の軌跡が弓状になるので、
側縁が弓状の刃を左、または右に振ると、弓状の刃が弓状に移動して、この、撫でるよう
に旋回する刃で地面を削る除草法も、同様の効果がある。
但し、
図7の除草方向55に対して傾斜した刃は、刃の角度20が90度から0度の方
向に小さくなるにつれて、柄の側方に刃板が大きく突出するため、除草具の左右のバラン
スが悪くなるが、刃板のシフトによりこれを修正することが可能である。
図2、
図7では、
刃板を右にシフトしてバランスを修正している。
図2において、刃の角度20が小さくなるにつれて、左方向に削る幅が狭くなるが、地
面を撫でるような削り方となるため、より削り易い利点がある。
図1の直線状刃6は、
図10に示すように、X方向からY方向までの90度の範囲内で、
除草する方向を任意に選択可能で、除草幅は
図10、
図11において、Z方向がZ1で最
大、Y方向がY1で最小となる。Y方向では、刃の角度が除草方向に対して150度とな
るため、 除草方向と直交するZ方向と比較して除草幅は50%になるが、より小さい力で
軽快に削ることができ、切れ味が向上した使用感がある。
この、Y方向、またはY方向寄りに柄を引いて地面を削る操作は、実に削り易く、多用
したい手法である。
X方向に削る操作は、除草具を左右に振って削る操作ができるので、Y方向よりも短い
反復周期で、高速除草できる利点がある。
図10、
図11において、X方向除草幅はZ方
向の86%である。
除草方向の選択により、削り易い地面は最大幅、削り難い地面は最小幅で削ることによ
って、削り難い地面の除草や、根が張った雑草にも対応でき、削り取りが容易となる。
除草方向と直交する刃と比較して、傾斜した刃は削り幅が狭くなるが、地面に対する刃
板の角度が安定して、ぶれ難く、地面を削る深さの変動が少なく、刃が地面に深く侵入す
るのを抑制する効果がある。
図3において、立ち上がり部2の高低差が大きくなると、負荷がかかった時、除草具が
除草方向に傾き易くなるが、
図2の除草方向に対して傾斜した直線状刃は、刃の角度20
が90度付近のもの比較して、90度との角度差が大きくなる程、 傾き難くなる利点があ
る。除草方向に対して逆方向に傾斜した刃も同様の効果がある。
本発明の除草具では、直線状刃で地面を削り取る除草操作の大部分が、除草方向に対し
て傾斜した刃で削る除草法である。
【0038】
第3の課題解決手段として、刃板の弓状に張り出した縁に刃を形成した、凸弓形状の刃
を採用したことである。
図1の除草具の右縁の刃7が凸弓形状の刃の実施例で、この形状
の刃は、刃板の両面を使い分けて除草可能で、多用途に使用できる利点がある。
図3の、柄の中心線に対して刃板が傾斜し、前部の厚みを薄くした形状の柄を備えた除
草具の、刃板側縁に形成した凸弓形状の刃は、押し削り、撫で削り、凹面状削り、旋回削
り、地面を切り崩す除草法、三日月状削り等の多用途に使用可能で、多種類の除草法を併
用して除草できる、すこぶる利用価値が高いものである。多種類の除草法の詳細は、実施
例1の除草具の使用法の説明に記述の通りである。
側縁に形成した凸弓形状の刃は、直線の刃では削り難い、凹んだ地面の除草にも適し、
石の側面や壁面に密接して生えた雑草の除去にも有効である。
【0039】
第4の課題解決手段として、実施例7、
図30から
図32は、左縁に1型曲げ刃、右縁
に2型曲げ刃を備えた除草具である。1型曲げ刃は平面削りを、より削り易く、2型曲げ
刃は、凹面状削りを、より容易としたものである。詳細は各々の刃の説明、および実施例
7の説明に記述の通りである。
【0040】
第5の課題解決手段として、実施例8、
図37は、捻りを加えた、捩れた刃を備えた除
草具である。 捩れた刃は、左または右の捻り刃がある側の縁に形成した複数の刃の何れか
を、柄を回転するのみで選択できるので、柄と地面との角度を一定として、刃板と地面と
の角度は使い易い適度な角度で、複数の刃を使い分けて、使い勝手が良い同一の除草方向
に除草できる利点がある。詳細は、実施例8の除草具の説明に記述の通りである。
【0041】
第6の課題解決手段として、実施例9、
図40から
図42は、スプーンを伏せた形状の
刃板を備えた除草具である。この除草具の特徴は、左右の縁の刃が適度な傾斜角度で同時
に水平面に接する形状のため、除草具を左右に振ると、一往復で左右両方向に各々1回の
地面を削る操作ができるので、効率良い作業が可能である。この刃板形状の除草具は、他
にも多用途に使用可能である。
【0042】
第7の課題解決手段として、柄の形状と太さに改良を加えたことである。
第1の改良点は、 柄の前部の厚みが柄の厚みよりも薄い形状にしたことである。
図3
の32は、柄前部上面を切除して、厚みを薄くした部分である。
これは、単なる面取りと異なり、この形状にすることによって、刃板の長さが比較的短
い刃でも、
図15の刃板を裏返した除草姿勢において、柄の前部が地面と干渉するのを回
避して、この姿勢で柄を押して前縁の刃で地面を削って除草する、すこぶる使い易い除草
法が可能となる。
図1の、前縁から側縁にかけて凸弓状刃を有し、この形状の柄を備えた、柄の中心線に
対して刃板が傾斜した形状の除草具は、
図15と類似の除草姿勢において、地面を切り崩
す除草法、撫で削り、三日月状削り、雑草を堀り起こす除草法、硬化した地面や小石混じ
りの地面の除草法が可能となり、刃板の両面を使用可能としたことで除草機能を拡大して
いる。これらの除草法の詳細は、実施例1の除草具の使用法の説明に記述の通りである。
第2の改良点は、柄の後部の厚みを薄くして、刃板を裏返して柄の後部を手の平で包む
ように握って、柄を押して除草する
図15の除草法において、柄の後部が手の平に密着す
るので、柄の後部の角が手の平に当たる違和感が無く、握り易く押し易い形状としたこと
である。
図3の33は柄後部の切除部分で、この形状の柄は、刃板を裏返した状態で実に握り易
く、滑りが無く、柄を押して除草する操作が行い易い利点がある。
第3の改良点は、柄の前部の、上面、側面を平面としたことである。
図8、
図9の、柄
の前部の上面、側面に人差し指を当てる操作、柄の前部左側面に親指を当てる操作によっ
て刃板の押さえ、刃板を左または右方向に押す操作を助長する際に、円柱状の丸い形状の
柄と比較して、指先を当て易く、除草操作の助長を容易としている。
第4の改良点は、単に、柄を太くして断面形状を楕円状としたのみであるが、太い柄は、
握った指、手の平との接触面積を広くして、柄を押す操作、引く操作、回転する操作、左
右に振る操作において、滑り難く、把持力を向上させることができ、長時間の作業に適し、
実に使い易いものである。
柄を回転する除草操作において、 太い柄は、より小さい力で回転でき、楕円状断面の柄
は円形断面の柄よりも滑り難い利点がある。 柄の太さ、すなわち、把持部の周囲長は、9
0mm~130mm程度とするのが望ましい。これは、個人個人で手の大きさが異なるた
め、柄の太さを使用する人に合わせるのは不可能であるが、違和感がなく握れる範囲で、
なるべく太い柄が望ましい。
(用語の説明)
【0043】
以下、「発明の効果」までの間を、本発明の除草具の、基本姿勢、刃板と柄の位置関係、
操作性が最良となる形状、および、使用している用語の説明項とし、以下の配列順に説明
する。
(1) 除草具の基本姿勢
(2) 刃板と柄が基本位置関係
(3) 操作性が最良となる形状
(4) 刃体、刃板、立ち上がり部、装着部
(5) 柄の中心線
(6) 柄幅中央線
(7) 平刃
(8) 平板の刃板、側縁が平板
(9) 乖離、乖離の比率
(10) 直線状刃
(11) 凸弓状刃、凸弓形状の刃、鈍角状刃
(12) 凹弓形状の刃、凹弓状刃
(13) 曲げ刃
(14) 1型曲げ刃
(15) 2型曲げ刃
(16) 捻り刃
(17) スプーン形状の刃板、スプーンを伏せた形状の刃板
(18) 刃の角度基準線
(19) 刃の角度
(20) 直線状刃の刃の角度
(21) 凸弓状刃の刃の角度
(22) 凹弓状刃の刃の角度
(23) 柄の傾斜角
(24) 柄の厚み
(25) 前部の厚みを薄くした柄、後部の厚みを薄くした柄
(26) 刃板のシフト
(27) 除草具の前後、左右、
(28) 刃板先端、刃板前端
(29) 側縁後端、刃板後端
(30) 左縁、右縁、側縁、前部の縁、前縁
(31) 柄の回転、柄の旋回
(32) 平面削り、撫で削り
(33) 凹面状削り、凹状削り
(34) 旋回削り、えぐり取る除草法
(35) 押し削り
(36) 地面を切り崩す除草法
【0044】
除草具の基本姿勢とは、説明する上での除草具の基本となる姿勢で、次の2項目は基本
姿勢における除草具の状態を表す。
・刃板と柄が基本位置関係
・側縁後端 詳細は側縁後端の説明に記述
基本姿勢は、各形状の除草具において次の通りとする。
図1から
図3は、本発明の除草具の代表的な形状である、刃体の立ち上がり部2の段差
部分を有し、刃板が平面の除草具の斜視図で、
図3の刃板下面が水平面に密着した姿勢を
基本姿勢とする。
刃板が平面でなくても、側縁が平面である場合は、各々の側縁ごとに、下面が水平面に
密着した姿勢を基本姿勢とする。
側縁が平面ではなく、下面側に突出する形状に曲がった刃の場合は、
図45において、
水平面45と柄の中心線36との角度135を20度とし、側縁後端125が水平面45
に接した状態で、刃板の真上の光源から、刃板の水平面への投影面積が最大となる姿勢を
基本姿勢とする。
左右の縁の曲げ形状が同一でない場合は、上記姿勢において、各側縁ごとに側縁後端が
水平面に接した姿勢を基本姿勢とする。
左、または右の同一の側縁に、上記の曲がった刃と、長さ20mm以上の平面の刃を併
設した刃板形状の場合は、その側縁の後側にある刃を対象とした基本姿勢を、その除草具
の基本姿勢とする。すなわち、側縁の後部が平面の刃では、下面が水平面に密着した姿勢、
側縁後部が
図45の 曲がった刃の場合は、水平面と柄の中心線との角度を20度として、
曲がった部分の側縁後部が水平面に接し、刃板の真上の光源から、刃板の水平面への投影
面積が最大となる姿勢である。
スプーンを伏せた刃板形状の除草具は、水平面上に刃板を伏せた姿勢を基本姿勢とする。
【0045】
次に、本発明の除草具の刃板と柄の位置関係について説明する。本発明の除草具の基本
姿勢における刃板と柄の相互位置関係で、本発明全般に共通したものである。
実施例1の除草具の、基本姿勢の正面図である
図3において、刃板前端24は柄の前端
12の前側に突出し、 側縁後端27は、柄の前端の下面28よりも下方に位置している。
この位置関係は基本姿勢の背面図においても同様である。
これは、本発明の除草具全般に共通した、基本姿勢の正面図、または背面図における刃
板と柄の位置関係で、この位置関係を、刃板と柄が基本位置関係であるという。この位置
関係は、
図1以外の形状の除草具においても同様である。
この形状の除草具は、柄の直前に刃があって、
図5のように、地面50に対して柄の前
部の高さが低く、地面に近い低い位置で柄を把持し、除草具を左右に振って、刃板の側縁
に形成した刃で地面を削る除草法に適している。
各実施例の図は、刃体の装着部を柄の前部下面に装着した形状であるが、柄の下面に装
着した形状のみに限定するものではない。各実施例において、立ち上がり部、装着部は板
状となっているが、棒状の素材を溶接等の手法で刃板と接合した構造としてもよい。
【0046】
図5のように柄を把持して、除草具を左右に振って雑草を削り取る操作や、凸弓状刃で
雑草基部の地面を掬い取る操作、
図14、
図15の柄を押して前縁の刃で地面を削る操作
によって除草する方式の除草具において、操作性が最良となる形状について割り出してみ
ると次のようになる。
除草具を左右に振って除草する操作では、刃板の側縁に形成した刃を、地面に対して僅
かに傾斜させた姿勢で地面を削るため、柄の直前に刃板があって、立ち上がり部の高さが
低く、刃板と隣接する柄を握って、刃板の押さえが良く効いた状態で左右に振る操作がで
きる形状であることが望ましい。力点と作用点が隣接した形状が望ましく、把持部と刃板
との距離が遠い形状のものは不適である。
立ち上がり部の高さが高いものは、左右方向に雑草を削り取る操作において、負荷がか
かると柄が回転して、除草具が除草方向に傾き易い欠点がある。
除草時の柄の下面と地面との間隔は、柄を握った指が地面と干渉しない柄の高さが必要
であるが、柄が地面と平行、または平行に近い除草姿勢となるものは、刃板を地面に対し
てやや傾斜させて操作することを考慮すると、地面との干渉を避けるために、刃板に対し
て柄の下面までの高さを35mm以上とする必要がある。手首から先を上に曲げた姿勢で
の除草操作となるため長時間の作業には不適である。
除草時の除草具の姿勢は、地面に対して柄の中心線の角度が、15度~30度の範囲内
であることが望ましい。刃体の立ち上がり部の高さを15mm程度として、地面に対して
柄の中心線が20度~25度の角度で除草操作できる形状とすれば、柄を握った指と地面
との干渉を回避でき、手首をほとんど曲げないで操作ができるので、長時間の作業におい
て有利である。
図3において、刃体の立ち上がり部2の高さを約15mmとして、柄の把持部下面を通
る柄の中心線と平行な直線29が、刃板と交差する形状とすれば操作性が良く、
図15の
刃板を裏返した除草姿勢においても、使い易い地面と刃板の角度、使い易い地面と柄の角
度で除草操作ができる。
図3において、直線29のように、柄の中心線36を上限として、その下50mm以内
の区間を通る、柄の中心線と平行な直線の何れかと交差するように、刃板が位置する形状
であることが望ましい。
柄の形状は、
図1から
図3に示す形状が望ましく、前部の厚みを薄くした柄は、刃板の
長さが比較的短い刃でも、柄の前部と地面との干渉を回避して、
図15の刃板を裏返して
除草する除草法、および類似の数種類の使い易い除草法を可能とし、後部の厚みを薄くし
た柄は、これらの除草法を更に使い易くしている。
【0047】
刃体とは、刃板、立ち上がり部、装着部の総称で、
図1において、1が刃板、2が立ち
上がり部、3が装着部、4が刃体である。
刃板は、立ち上がり部、装着部以外の、刃を形成した縁、縁と同一の平面、曲面の板の
部分である。幅が広い形状の刃板、面積が広い刃板では、穴を明けて軽量化することもで
きる。刃板の全長とは、刃板の先端からの長さが最長となる刃板の後部までの長さをいう。
立ち上がり部とは、刃板と装着部との中間支持体であって、基本姿勢における正面視、
または背面視において、水平面に接した側縁後端から、柄の前端下面までの高低差部分で
ある。
図3では、側縁後端27から柄の前端下面28までの部分である。
立ち上がり部を、刃板前端と後端の中間位置に設けた形状や、棒状の立ち上がり部を有
する形状のものは、立ち上がり部には刃を形成できないが、側縁後部を弓状に上側に曲げ
て、この曲げ部分に刃を形成できるので、この、曲げ部分に形成した刃は立ち上がり部に
形成した刃として扱う。
同一の側縁に、曲がった刃と、長さ20mm以上の平面の刃を併設した刃板形状のもの
は、その縁の後側にある刃の、基本姿勢の正面図、または背面図において、側縁後端が接
する水平面から柄の前端下面までの高低差部分を立ち上がり部とする。
図3は、立ち上がり部上部から装着部にかけて曲がった刃体形状であるが、立ち上がり
部の傾斜角度を水平面に対して15度~30度程度として、この、立ち上がり部上部の曲
げ部分が無く、立ち上がり部下部のみを、単に、くの字状、または弓状に曲げた刃体形状
とすることもできる。
この形状のものは基本姿勢の正面図、または背面図において、側縁後端が接した水平面
から、立ち上がり部と装着部を兼ねた、刃体の傾斜部分に装着した柄の前端下面までの高
低差部分を立ち上がり部とする。
立ち上がり部の段差とは、
図3のような立ち上がり部の上部と下部を曲げた形状、
図2
8、
図29の刃板の前端と後端の中間に立ち上がり部を設けた形状、あるいは、上記の立
ち上がり部の下部のみを曲げた形状の除草具、または、棒状の立ち上がり部を有する形状
の除草具の基本姿勢において、側縁後端から柄の前端下面までの高低差をいう。
立ち上がり部に形成した刃は、立ち上がり部に属する。
図3のような、立ち上がり部下
部を丸みがある曲げ形状として、この部分に刃を形成すれば、この弓状の曲がった刃と、
側縁後部の刃を併用して雑草を地面ごと掬い取る除草操作ができる。
図2において、この
部分の刃16が、柄の右側面に対し、柄の右側に突出する刃体形状とすればこの除草操作
が、より容易となる。
図3では、水平面45から柄の前端下面28までの高低差部分が立ち上がり部で、この
高低差と傾斜した柄が、
図5のように柄を握った指を地面から遠ざけて、地面との干渉を
回避し、地面に近い低い位置で柄を把持できるようになっている。
柄を握った指と地面との間隔を確保し、地面に近い低い位置で柄を把持して除草するに
は、立ち上がり部の高さは15mm程度が望ましい。
図1の形状の除草具では、立ち上が
り部の高低差が大きくなると、
図15の除草法において柄の前部が地面と干渉するため、
この使い易い除草法が不可能となる。
【0048】
柄の中心線とは、柄の長さの中央部分50mm区間において、その区間の両端の各々の
断面の太さの中心を結んだ直線およびその延長線をいう。
図3において、36が柄の中心
線である。
全長が170mmを超える柄は、先端からの長さ170mmの中央部分50mm区間に
おいて、上記の直線と、その延長線を柄の中心線とする。
【0049】
柄幅中央線とは、刃の角度基準線を引く基準となる直線である。
刃板の上面が上向きで柄を水平にした姿勢において、柄の長さの中央部分の50mm区
間の両端位置を柄の上面にマーキングし、刃板の真上の光源から、刃板の水平面への投影
面積が最大となる姿勢の平面視において、上記50mm区間の両端位置の柄幅の中心を結
んだ直線、およびその延長線である。
図2では、18が柄幅中央線である。
全長が170mmを超える柄は、先端からの長さ170mmの中央部分50mm区間に
おいて、上記の直線と、その延長線を柄幅中央線とする。
【0050】
平刃とは、刃板の平面の縁、または平面に近い縁に形成した長さ20mm以上、刃の曲
がりによる乖離の比率5%未満の刃で、ここでは、直線状刃、凸弓状刃、凹弓状刃、鈍角
状刃の何れかを指すものとする。
平面に対して下面側に突出する形状に曲がった縁に形成した刃であって、刃の曲がりに
よる乖離の比率が5%未満の刃も平刃に含まれる。側縁を僅かに上面側に曲げた、刃の曲
がりによる乖離の比率が2%未満の刃も平刃に属する。
【0051】
平板とは、刃板全体、あるいは、刃板の左縁または右縁が、平面、もしくは平面に近い
板という意味である。ここでは、平面の板を含む、側縁が下面側に緩やかに突出する形状
に曲がった、刃の曲がりによる乖離の比率が5%未満の板という意味で用いる。僅かに上
面側に曲がった刃で、刃の曲がりによる乖離の比率2%未満の刃も平板として扱う。軽量
化のため穴を明けた上記形状の刃板は平板として扱う。
刃板全体を指す場合は、上記の平面または平面に近い刃板を平板の刃板、側縁の部分の
みを指す場合は、左右の各々の縁の端から10mm幅の板の部分について、刃が形成され
ていない部分も含めた、刃板の真上の光源から、刃板の水平面への投影面積が最大となる
姿勢の平面視における、その側縁の全長の70%以上の長さの縁が平板であるものを、側
縁が平板であるという。
これは、平面視における左、または右の縁の長さの70%以上の部分が平板であれば、
その縁全体が平板である刃板と、ほぼ同等の機能の刃を形成可能と判断できるからである。
【0052】
乖離について、
図43から、
図45において説明する。
図43は、刃板の左縁に凸弓形
状の刃100を備えた除草具 、
図44は、刃板の左縁に凹弓形状の刃110を備えた除
草具の平面図である。刃板の形状、大きさは異なるが、各々の正面図は、
図3と同様の形
状である。
凸弓形状の刃、凹弓形状の刃の両端を結んだ直線101、111に対して、刃先が最も
離れた部分との距離103が凸弓形状の刃の乖離、113が凹弓形状の刃の乖離で、ミリ
メートルで表す。
乖離の比率とは、上記の刃の両端を結んだ直線の長さ102に対する乖離103の比率、
同じく、直線の長さ112に対する乖離113の比率を、乖離の比率としてパーセントで
表す。
図43では約26%、
図44では約6%である。
刃板の真上の光源から、刃板の水平面への投影面積が最大となる姿勢の平面視において、
平板の刃板の縁が120度以上の鈍角状に突出、または120度以上の鈍角状に凹んだ刃
の乖離、乖離の比率も、上記の凸弓形状の刃、凹弓形状の刃と同様に表す。
平面に対して刃の曲がりによる乖離、刃の曲がりによる乖離の比率も同様に次のように
表す。
図45は、側縁が下面側へ突出する形状に曲がった刃を備えた除草具の基本姿勢の正面
図で、水平面45と柄の中心線36との角度135を20度として、 側縁後端125が水
平面45に接した状態において、刃板の真上の光源から、刃板の水平面への投影面積が最
大となる姿勢である。 但し、この図では側縁の刃は、刃板の上面側の縁に形成されている。
図45において、側縁後端125と、その側縁の刃の前端126を直線127で結び、
この直線に対して、刃が最も離れた部分との距離129を刃の曲がりによる乖離、この直
線の長さ128に対して、刃の曲がりによる乖離129との比率を、刃の曲がりによる乖
離の比率とする。この図では、刃の曲がりによる乖離の比率は約10%である。
側縁後端よりも前の部分が、弓状ではなく、角度120度以上の鈍角状に下面側に突出
する形状に曲がった刃の、刃の曲がりによる乖離の比率も同様に表す。
側縁の前部を曲げ戻した形状の刃板は、曲げ戻し部分は除外して判定する。
【0053】
直線状刃とは、刃板の真上の光源から、水平面への刃板の投影面積が最大になる姿勢の
平面視において、長さが20mm以上であって、直線の縁に形成した刃、および、乖離の
比率5%未満の凸弓形状の刃、同じく、凹弓形状の刃いう。乖離の比率5%未満の、鈍角
状に突出、同じく、鈍角状に凹んだ縁に形成した各々の縁の長さ10mm以上の刃も、直
線状刃として扱う。
但し、刃の長さが20mm未満のものを含む場合は、直線状の刃という表現を用いる。
何れの刃も、刃の曲がりによる乖離の比率は5%未満とする。
同一の縁に、ある角度を持って2個の直線状刃を連続して形成することも可能で、この
形状のものは、個々の直線状刃を単独で使用できる他に、2個の刃が交差する頂点部分を
利用して、雑草基部の地面を掬い取る用途、雑草基部に刺して掘り起こす用途に使用でき
る。
図1の左縁の刃6は直線状刃の実施例で、刃幅全体を使用して複数の雑草を同時に削り
取る用途に適している。
刃板の前縁に形成した、刃の角度基準線に対する刃の角度が120度以上、180度以
下の直線状の刃で、刃の左右幅が狭いものは押し削りで雑草を1本ずつ削る用途、雑草の
基部に刺して掘り起こす用途に、刃の左右幅が広いものは、押し削りで複数の雑草を同時
に削り取る用途に使用できる。
図43の右縁のように、同一の側縁に複数の形状の刃を備えたものは、この図では、各々
の刃を直線状刃、凸弓状刃として扱う。鈍角状の突出部分105は鈍角状刃として扱う。
【0054】
凸弓状刃とは、刃の長さが20mm以上で、刃板の縁が直径10mmの円弧以上の大き
さの弓状に、外側に突出した板の縁に形成した、乖離の比率が5%以上、刃の曲がりによ
る乖離の比率が5%未満の刃をいう。
図1の右縁の刃7が凸弓状刃の実施例である。
この形状の刃は、 雑草基部の地面を凹面状に掬い取る用途と、刃を旋回させて雑草基部
の地面を削り取る用途に適し、実施例1の除草具の説明に記載の多用途に使用可能である。
円板状、楕円板状の刃板、および縁の形状が、円板状、楕円板状の板の一部分の形状の
刃板、直線、または直線に近い刃を連続させて、折れ線状に類似凸弓状とした縁に形成し
た、上記条件を満たす刃も凸弓状刃である。
凸弓形状の刃とは、凸弓状刃と、弓状に外側に突出した板の縁に形成した刃であって、
上記、凸弓状刃に該当しない、乖離の比率5%未満で、刃の曲がりによる乖離の比率5%
未満のものを含めた、長さ20mm以上の刃の総称である。
同一の側縁に、円弧の大きさが異なる複数の凸弓形状の刃を併設することもできる。
刃板の前縁に配置した凸弓形状の刃は、押し削りで地面を凹状、または凹面状に削る操
作ができる。
刃板の前縁に配置した凸弓形状の刃は、刃板の基部よりも前部が広がった刃板形状とす
れば、扇状の刃板形状とすることもできる。 扇状の刃板の前縁に形成した凸弓形状の刃は、
側縁に形成した凸弓形状の刃と比較して、刃を押し付けて柄を左右に複数回旋回させる操
作が行い易く、広い幅で刃を侵入させる除草操作が可能である。
鈍角状刃とは、鈍角状に突出した縁に形成した、鈍角の角度範囲内の収まる刃で、鈍角
状刃を構成する各々の縁の長さが10mm以上の刃をいう。側縁に形成した鈍角状刃は、
凸弓形状の刃と同様に雑草を地面ごと掬い取る除草操作が可能で、 他に、鈍角状刃を押し
付けて旋回削り、地面を切り崩す除草法が可能である。前縁にある鈍角状刃の角度が12
0度以上のものは、刃板の表裏を使い分けて、個々の直線状刃で押し削りが可能である。
鈍角状刃を構成する2つの刃で、上記の直線状刃、または凸弓状刃の条件を満たすもの
は、個々の刃は、独立した直線状刃、または凸弓状刃として扱う。直線状刃を含んだ2個
の刃で構成される鈍角状刃の縁は、直線状刃を有する縁でもある。
鈍角状部の頂点が直径10mmの円弧未満の丸みのある形状で、刃の長さが20mm以
上のものは、鈍角状刃に含まれる。
図24の刃板の前部、
図43の刃板の前部、および、右縁の刃の、鈍角状の突出部分1
05が鈍角状刃の例である。
【0055】
凹弓形状の刃とは、
図44において、左縁の刃110のように、刃の両端を結んだ直線
111に対して、内側へ弓状に後退した縁に形成した刃をいう。刃の曲がりによる乖離の
乖離の比率は5%未満とする。 乖離の比率が5%以上のものに限定する場合は、凹弓状刃
という表現を用いる。
左縁に形成した凹弓形状の刃を使用して、刃板が地面に密着した姿勢で、除草具を左に
振って地面を削ると、凹弓形状の刃が凸弓状に旋回しながら、地面を撫でるように移動し
て削るので直線の刃よりも削り易く、地面をごく薄く削り取ることが可能で、密生した根
が浅い小さな雑草を削り取る用途に適している。
但し、刃板を地面に対して傾斜させると、中央部の刃が地面から浮いてしまうので、乖
離の比率が小さいもの以外は、地面をやや深く削る用途には不適である。
【0056】
曲げ刃とは、
図45のような刃板側縁が下面側に突出する形状に曲がった刃である。図
45において、水平面45と柄の中心線36との角度135を20度とし、側縁後端12
5が水平面に接した状態で、刃板の真上の光源から、刃板の水平面への投影面積が最大と
なる基本姿勢において、刃の曲がりによる乖離の比率が5%以上の刃をいう。刃の曲がり
による乖離の比率が5%未満で長さ20mm以上の刃は平刃として扱う。
側縁の前部を曲げ戻した形状のものは、曲げ戻し部分を除外して、曲げ刃か否かを判定
する。 側縁後端から側縁前端の間を、鈍角状に下面側に突出する形状に曲げた、刃の曲が
りによる乖離の比率5%以上で、 鈍角状部の各縁の長さが10mm以上の刃は曲げ刃とし
て扱う。
図30から
図32は、左縁に1型曲げ刃、右縁に2型曲げ刃を備えた除草具の実施例で
ある。
【0057】
1型曲げ刃とは、平面の刃板の凹弓形状の刃の側縁を、
図31のように下面側へ弓状に
突出する形状に曲げた形状の、上記、曲げ刃の条件を満たす刃で、
図30から、
図32に
示す除草具の左縁の刃、77が1型曲げ刃の実施例である。 複数の直線の刃を連続させて
類似凹弓形状とした縁を、下面側へ弓状に突出する形状に曲げた刃で、上記、曲げ刃の条
件を満たす刃も1型曲げ刃に属する。
1型曲げ刃は、
図32の除草姿勢において側縁の刃全域が、ほぼ一定の角度で地面に接
するので、直線の縁に形成した直線状刃と比較して、刃板が地面に対してぐらつき難く、
一定の角度を維持し易い利点がある。
図32において、刃板は地面に対して適度に傾斜している。 除草具を矢印方向に振ると、
刃先全域が凹弓状に地面に接した状態で、地面に対して適度に傾斜した刃が、旋回しなが
ら撫でるように弓状に移動するので、直線の刃よりも削り易い利点がある。複数の雑草を
同時に削り取る用途に適している。
【0058】
2型曲げ刃とは、平面の刃板の直線の側縁、外側へ凸弓形状に突出した側縁、または、
外側に鈍角状、台形状に突出した側縁を、
図31のように刃板下面側に突出する形状に曲
げた、上記曲げ刃の条件を満たす刃で、実施例7、
図30から
図32は、右縁に2型曲げ
刃78を備えた除草具である。
平面の凸弓形状の刃と比較して、2型曲げ刃は地面ごと雑草を掬い取る操作が、より容
易である。
2型曲げ刃は、平刃の側縁の一部分のみを下側に突出する形状に曲げて、同一の側縁に
平刃と併設することも可能で、この形状のものは、同一除草方向で2種類の刃を使用でき
る利点がある。
丸みがあるスプーンの縁に刃を形成した形状の刃板、同じく底が無い同形状の刃板は、
2型曲げ刃に含まれる。この形状のスプーン状の刃板の縁に形成した刃で地面を掬い取る
操作、地面を削る除草操作の除草形態は、
図30から
図32の右縁の刃78で除草するの
と同様である。
【0059】
図37の左縁の刃80、83は捻り刃の実施例である。捻り刃とは、側縁に捻りを加え
て、左または右の同じ側の縁にある、異なる区間の刃を、 地面と柄との角度を変えないで、
柄を回転するのみで選択使用できるようにしたものである。
側縁の一部に捻りを加えた刃は、必然的に曲がった形状の刃となるので、同じ側の縁に
複数の形状の刃を有することになる。側縁を斜めに交差する方向に折り曲げた形状の刃も
捻り刃に属する。
捻り刃は地面と柄との角度を一定として、使い易い適度な柄の角度のままで、柄を回転
して同一の側の縁の複数の刃を選択使用でき、使い勝手が良い同一の除草方向に、複数の
形状の刃で除草できる利点がある。
図36は、実施例8の除草具の柄を水平にした姿勢の平面図、
図37は、同正面図であ
る。
図38は柄を握って、水平面と柄の中心線との角度を25度にした姿勢である。
図38の姿勢から、柄を僅かに左に回転した姿勢で、曲がった刃83で雑草基部の地面
を掬い取る操作、更に柄を左に回転して
図39の姿勢にすると、曲がった刃83は地面か
ら離れて、直線状刃80の全域が地面に接し、刃は除草方向に傾斜し、刃板は地面に対し
て適度な傾斜角度となって、除草具を左に振って平面削りが可能である。
【0060】
スプーン形状の刃板を備えた除草具とは、丸みがあるスプーンと類似形状の刃板の縁に
刃を形成した刃体を、柄の前部に装着したものである。地面を削る操作は、スプーンで左
右に地面を掬い取るように操作し、スプーンの底部分は無くても機能的には同じである。
スプーン形状の刃板は、地面を掬い取る除草操作以外に、刃板を裏返した姿勢において、
地面を切り崩す操作、前部の刃で押し削りと、比較的硬い地面の除草操作ができる。平面
の刃板の左縁と右縁に形成した、凸弓形状の刃を下面側に曲げた形状の2型曲げ刃と見な
すことができ、刃の形状による分類は、2型曲げ刃に含まれる。
実施例9、
図40から
図42はスプーンを伏せた形状の刃板を備えた除草具で、スプー
ン形状の刃板を備えた除草具とは、機能的には別のものである。スプーンの底に相当する
部分は無くても機能的には同じである。
この除草具は、片手で操作する小型のスコップを裏返した形状と類似部分があるが、正
面図、
図41において、刃板と柄に段差を設けた形状となっている点がスコップと異なり、
柄と地面との間隔を確保して柄の把持を容易とし、刃板の押さえが効いた状態で左右に振
って除草できる。
図41の姿勢において、左右の縁の刃が地面に対して適度に傾斜した状態で、同時に地
面に接し、左右に振ると、一往復で2回の除草操作が可能で、他にも多用途に使用できる
ものである。
図30の1型曲げ刃77は、平面の板の凹弓状の側縁を
図31のように下面側に突出す
るように曲げた形状にであるのに対し、
図40、
図41の除草具は、平面の板の凸弓状の
側縁を上面側に突出する形状に曲げたものと類似形状の縁を、刃板の左右に有するのが特
徴である。
刃板の側縁が角張った刃板形状にすれば、側縁の刃は直線状刃、または直線状刃に近い
形状となるので、刃板を伏せた除草姿勢で、左右の縁が地面に対して傾斜した直線状刃で
左右両方向に平面削りが可能で、前縁の刃は押し削りに使用できる。
右縁と左縁、前縁を異なる形状とすることもできる。
図40から
図42の除草具と類似の刃板形状のものとして、扇状、台形状、逆台形状、
方形の、平面の刃板を、左右の縁に対して中央部が高い上面側に突出した刃板形状、すな
わち、円錐筒、円筒の一部を切り取った形状に曲げた刃板形状や、屋根状の形状としたも
のも、左右の縁が傾斜した状態で同時に水平面に接するので、左右方向に振れば一往復で
2回の除草操作が可能で、刃板前部に形成した刃は、刃板を裏返して柄を押す操作によっ
て凹面状、または浅い谷状に地面を削る操作ができる。
屋根状と類似のものとして、断面の曲げ形状をへの字状としたものは、左縁の刃と右縁
の刃を、対地面角度が異なる刃として使用できる。断面の曲げ形状を台形状とすることも
できる。これらの形状の刃板も、スプーンを伏せた形状の刃板に属する。
【0061】
刃の角度基準線とは、柄幅中央線と直交する直線で、側縁が平刃である刃の角度を表す
基準となるものである。
図2において、柄幅中央線18と直交する直線19が刃の角度基
準線である。
【0062】
刃の角度とは、刃板に形成した直線の刃と、乖離の比率が10%未満の凸弓形状の刃、
同じく凹弓形状の刃について、基本姿勢の平面視において、刃の角度基準線19との角度
を0度~180度未満の範囲で表したものである。前縁に形成した直線状刃は180度の
刃も有り得る。
側縁に形成した直線の刃で地面を削って除草する場合、
図7の除草方向55に対して傾
斜した刃は、「課題を解決するための手段」で述べた長所を有している。
この長所を有する刃の傾斜の度合いを表す尺度として、直線の刃と、直線の刃に近い乖
離の比率が10%未満の凸弓形状の刃、同じく凹弓形状の刃について、次のように刃の角
度を表す。
【0063】
直線状刃の刃の角度とは、刃の角度基準線に対する直線状刃の傾斜の度合いを表すもの
である。
直線状刃の刃の角度を表すには、平面視において、刃が直線であることが必要で、直線
状刃に該当する刃で直線以外の刃では、基本姿勢の平面視において、直線状刃の両端を結
んだ直線を刃と見なして、この直線と刃の角度基準線との角度を表す。
図2において、柄幅中央線18と直交する刃の角度基準線19を引き、この、刃の角度
基準線と直線状刃6との角度20が、直線状刃の刃の角度である。
刃の角度基準線を0度として、左縁にある直線状刃では右回りに、右縁にある直線状刃
では左回りに角度数値が増加するように、0度から180度未満の範囲で表す。但し、前
縁に形成した直線状刃は、180度の刃も有り得る。
刃板の同一の側縁に直線状刃と他の形状の刃が混在する形状の場合は、 基本姿勢の平面
視において、直線状刃に該当する最長区間の両端を結んだ直線と、刃の角度基準線との角
度を直線状刃の刃の角度とする。
【0064】
凸弓状刃の刃の角度とは、凸弓状刃の乖離の比率が10%未満の刃において、刃の角度
基準線に対する凸弓状刃の平均的な傾きを表すものである。
基本姿勢の平面視において、乖離の比率が10%未満の凸弓状刃の両端を直線で結び、
この直線と刃の角度基準線との角度を凸弓状刃の刃の角度として、 直線状刃の刃の角度と
同様に表す。
凸弓状刃は多用途に使用可能な刃で、その個々の用途に適した刃の角度範囲があるので、
凸弓状刃全域では乖離の比率が10%以上の刃においては、区間を分割して、各用途に適
した部分的な刃の角度を次のように表す。
長さ10mmの直線で、凸弓状刃の一部の任意の区間を結び、その区間の乖離の比率が
10%未満の刃に分割した区間について、その直線と刃の角度基準線19との角度を、そ
の分割区間ごとに表す。
この、10mm区間の部分的な角度を表す場合は、区間角度という表現を用いる。各区
間の刃は角度によって異なる適性を有しているので、これについて説明する。
例として、刃板形状が、直径70mmの円形で平面の刃板を備えた除草具の、左半分の
半円形の凸弓状刃の縁について、上記の長さ10mmの直線で任意の区間を結んで区間を
分割し、その直線と刃の角度基準線との区間角度を表すと、各用途に適した概略の区間角
度の範囲は次のようになる。
区間角度が40度~150度の区間の刃は平面削りと凹面状削り、60度以上の区間の
刃は旋回削りと撫で削り、90度~150度の区間の刃は地面を切り崩す除草法、130
度以上の区間の刃は押し削りに適している。70度以下の区間の刃は、斜め後方に地面を
削る操作ができる。この例のような広範囲の区間角度を有する凸弓状刃は、多種類の除草
法に使用できる。同一側縁内で、部分的に円弧の大きさが異なる凸弓形状の刃を形成する
こともできる。
【0065】
凹弓状刃の刃の角度とは、凹弓状刃の、乖離の比率が10%未満の刃について、基本姿
勢の平面視において、直線状刃と同様に、刃の角度基準線に対する凹弓状刃の平均的な傾
きを表すものである。
乖離の比率が10%未満の凹弓状刃の両端を直線で結び、この直線と刃の角度基準線と
の角度を、凹弓状刃の刃の角度とする。
【0066】
柄の傾斜角とは、立ち上がり部の段差部分を有し、刃板の側縁が平面の除草具の、基本
姿勢の正面視、または背面視において、側縁下面が密着した水平面に対して、柄の中心線
の傾斜の度合いを表すものである。
図3では、刃板下面が密着した水平面45と、柄の中心線36との角度40が柄の傾斜
角である。
側縁下面が水平面と密着した姿勢の正面視、もしくは背面視において、水平面と柄の中
心線が平行な場合を0度とし、柄の中心線の、柄の後端側が柄の前端側よりも低い場合は、
角度数値にマイナス符号(-)を付して表す。
立ち上がり部の段差部分を有し、柄の傾斜角が0度前後のものは、立ち上がり部の高さ
が低いと、柄を握った指と地面とが干渉するため、この高さを35mm以上とする必要が
ある。 柄の下面と地面の間隔が広くなるにつれて、刃の角度が90度付近の直線状刃では、
左右に振って地面を削る際に、刃に負荷がかかった瞬間に除草具が除草方向に傾き易い欠
点がある。柄の傾斜角が0度付近のものは、平面削りでは柄が水平、または水平に近い姿
勢で除草操作することになるため、手首から先を上側に曲げる必要があり、長時間の作業
には不適である。
図3では柄の傾斜角40が25度で、立ち上がり部の高さが低くても、
図5のように地
面と指との干渉無く柄の前部付近を握ることができ、低い位置で柄を把持できる。
手首をほとんど曲げないで左右に振って除草操作ができ、刃板を裏返した除草姿勢にお
いても適度な柄の角度で除草操作が可能な、20度~25度付近の角度のものが使い易い。
図3は平面の刃板であるが、柄の把持部下面を通る柄の中心線と平行な直線29が、刃
板と交差するように柄を傾斜させた形状とすることによって、側縁が曲がった形状の刃を
備えた除草具においても、地面に対して適度な柄の角度で操作することができ、刃板を裏
返した除草姿勢でも、地面に対して適度な柄の角度で除草操作ができる。
【0067】
柄の厚みとは、刃板の上面を上向きとし、刃板の真上の光源から、刃板の水平面への投
影面積が最大となる姿勢として、正面視において、柄の長さの中央部分50mm区間の、
柄の下面から、柄の上面までの厚みの最大値をいう。
図3において、37が柄の厚みであ
る。
長さが170mmを超える柄は、先端からの長さ170mmの中央部分50mm区間に
おいて上記の通りする。
【0068】
前部の厚みを薄くした柄とは、
図3において、柄の前端から15mm以上の区間に亘っ
て、柄の前部上面、または前部下面を切除し、前端の厚みが、柄の厚み(37)の80%
以下である柄をいう。但し、この15mm以上の区間とは、柄の中心線と平行な直線上に
おける、柄の前端からの距離である。
図3では32が柄の前部の切除部分である。
図3は柄の前部上面を切除した形状であるが、前部下面を切除した形状でも、刃体の装
着部3の傾斜角度を変えれば、刃板と柄の中心線との角度を同じ角度とすることができる
ので機能的に同等とすることが可能である。
この形状の柄は、刃板の長さが比較的短い刃板でも、
図15の、刃板を裏返して柄を前
下方に押して除草する除草法において、柄の前部と地面との干渉を回避でき、類似姿勢で
除草する数種類の使い易い除草法が可能となる。
図6の除草姿勢においては、柄の前部を握っても、親指と人差し指の間の凹部は切除部
分に接しないので、切除によって柄前部の周囲長は短くなるが、柄を握った指、手の平と
の接触面積が減少することはない。
後部の厚みを薄くした柄とは、柄の後部の下面を切除して、後部の厚みを、後端からの
長さ15mm以上の区間に亘って、柄の厚みよりも薄くし、後端の厚みが、柄の厚み37
の80%以下である柄をいう。
図3の33は柄の後部下面の切除部分である。
図15の、刃板を裏返して柄を押して除
草する除草法において、柄の後部を手の平で包むように握って、柄を前下方に押して除草
する際に、柄の後部の角が手の平に当たる違和感が無く、握った手にフィットして握り易
く、押し易い形状となっている。この形状とすることによって、
図15、および類似の姿
勢で柄を押して操作する除草法が、実に使い勝手が良いものとなっている。
【0069】
刃板のシフトについて、
図22において説明する。
直線状刃の刃の角度20が、90度から0度側に近付くにつれて、刃板が柄の側方に大
きく突出する形状となる。
図22の除草具の直線状刃の刃の角度20は45度で、刃板の
シフトが無い場合、2点鎖線で示すように刃が柄の左側に突出して、左右のバランスが悪
くなる。
左縁の直線状刃で地面を削り取って除草するには、鎌で雑草を刈り取る場合と異なり、
除草方向が左方向、左後方、後方向の何れにおいても、刃幅全域の刃先をしっかりと地面
に押し付けることが必要である。
ところが、2点鎖線で示す刃では、左縁の直線状刃は、刃の全域が柄の左側に突出し、
刃の先端に近付くにつれて、柄幅中央線18からの距離が離れて、力点から遠くなるため、
刃を地面に押し付ける力が弱くなってしまう。
左縁の先端部分の刃まで、しっかりと地面に押し付けるには、柄を下方に押し付けなが
ら、左回転させる力を与えておく必要があり、これでは腕の疲労が大きく、操作性が悪く
なってしまう。
図22は、2点鎖線の刃板部分を右にずらすことによって、柄幅中央線18に対して刃
板左右のバランスを修正している。直線状刃の柄の側方への突出量を小さくして、直線状
刃全域を地面に押し付け易くすると共に、刃板左右のバランスを修正したものである。
柄幅中央線に対して刃板を右、または左にずらして、刃板左右のバランスを修正するこ
とを、刃板のシフトという。
刃板のシフト量について説明する。
図22において、左右のバランス修正のために刃板
を右に寄せた結果、立ち上がり部下部の刃板の左右幅60の中心61と、柄幅中央線18
とのずれが生じ、この、ずれた距離62が刃板のシフト量で、ミリメートルで表す。
左右のバランスが良い形状の刃板以外では、刃板のシフトによりバランスを修正し、操
作性を向上させるのが望ましい。
【0070】
除草具の前、後とは、柄の前端側を前、後端側を後とした状態での前、後をいう。除草
具の左、右とは、刃板の上面を上向き、柄の前端を前に向けた姿勢の平面視における左、
右をいう。
【0071】
刃板先端とは、代表的な形状である実施例1の除草具の基本姿勢の平面図、
図2におい
て、柄の前端位置に引いた、柄幅中央線18と直交する直線21との交点22に対して、
柄の前方または斜め前方に最も突出した刃板の端で、23が刃板先端である。
刃板前端とは、
図2において、直線21に対して前方に最も突出した刃板の端で、24
が刃板前端である。刃板前端と刃板先端は必ずしも同一ではない。
他形状のものも、刃板先端、刃板前端は、基本姿勢の平面視において上記と同様とする。
刃板最前部に刃の角度180度の直線の刃が有る刃板形状のものは、この直線の刃全域
が前端、上記の交点22に対し、直線の刃の両端が等距離である場合は、側縁との交点2
ケ所が刃板先端となる。 前縁が凹弓形状のものは、先端が2ヶ所存在する場合がある。
【0072】
側縁後端とは、基本姿勢の正面視、または背面視において、水平面に接する側縁の最後
部で、左右の側縁各々に側縁後端がある。
図3では27、
図45では125が側縁後端で
ある。
図28の形状のものは、左右の側縁後端が同一となる。
刃板後端とは、刃板の左右何れかの側縁の、最後部の端をいう。
【0073】
左縁、右縁、側縁、前部の縁、前縁とは、次の説明の通りである。
柄の前端を前、刃板の上面を上向きにして、刃板の真上の光源から、水平面への刃板の
投影面積が最大となる姿勢の平面視おいて、刃板の左側にある刃板前端までの縁を左縁、
刃板の右側にある刃板前端までの縁を右縁という。左縁、右縁のことを側縁という。
前部の縁とは、上記平面視において、刃板の前後方向の長さの半分よりも前にあって、
前方または斜め前方に向いた縁をいう。
前縁とは、刃板の最前部にある、前方または斜め前方に向いた縁で、刃の形状は、凸弓
形状の刃、直線状刃、凹弓形状の刃、2個の直線状刃で構成される三角形の二辺と類似し
た形状の刃の何れかの縁を指すものとする。
前縁の形状が凸弓形状、または突出した三角形の二辺と類似形状のものは、前縁部分の
前端の左右の各々の縁は、左縁、または右縁の一部であるが、前縁の刃は主に柄を押す操
作によって除草する用途、前縁の後側にある側縁の刃は主に柄を左右に振る操作によって
除草する用途であるので、前縁と側縁を併記した場合の側縁とは、前縁部分を除外した区
間を指すものとする。
【0074】
柄の回転とは、柄の中心線を中心に柄を回す操作で、主に、握った柄を左または右に捻
ることによって除草する操作である。柄の旋回とは、除草時の平面視において、時計回り、
または反時計回りに柄を旋回させる操作をいう。
【0075】
平面削りとは、押し削り以外の、側縁の刃で左右方向、斜め前方、斜め後方、後方に、
地面を薄く削り取る除草操作をいう。 除草具を左右に振って撫でるように地面を削る撫で
削りも平面削りに含まれる。
撫で削りとは、刃で地面を撫でるように、 刃をスライドさせながら地面を削る除草法で、
刃と直交する方向に削るのと比較して、削り幅は狭くなるが削り易く、湿った地面の除草
にも適している。 凸弓形状の刃、 凹弓形状の刃、1型曲げ刃、スプーンを伏せた形状の
刃を左右に振って地面を削る操作は、弓状の刃が撫でるように弓状に移動しながら削るた
め、包丁を滑らせるようにして切る操作と類似で、反りがある刀が直刀よりもよく切れる
のと同様、直線の刃よりも削り易い利点がある。
図10のY方向に地面を削る操作は、除草方向に対して直線状刃が大きく傾斜して、撫
でるように地面を削るので、削り幅は狭いが実に削り易い優れた手法である。
凸弓状刃で地面を切り崩す除草操作説明図、
図18において、刃板の対地面角度を60
度程度として、柄を、刃板先端方向よりも僅かに斜め前方の、b方向に押す操作によって
も撫で削りが可能で、この手法は乾燥した硬い地面の除草にも適し、削り幅は狭いが実に
削り易い除草法である。
包丁で軟らかいものを切る時、刃を滑らせるように切ると切り易いのと同様、撫で削り
には長い刃が有利で、湿った地面の除草にも適している。
刃板の弓状の縁は、直線の縁よりも長い刃が形成でき、肘から先、または、手首から先
を左右に振って地面を削ると、刃の動きは弓状となるため、弓状の刃が弓状に移動するの
で撫で削りに適している。手首から先のみを振って除草する操作は、肘から先を振って除
草する操作よりも短い反復周期で撫で削りが可能で、密生した小さい雑草の除草に適して
いる。
【0076】
凹面状削りとは、凸弓形状の刃、または下面側に突出する形状に曲がった刃を、
図13
のように雑草の脇に当てて、雑草の基部の地面を掬い取るように操作して、深さが1mm
~5mm程度の凹面状に削り取る除草法をいう。
雑草の周囲の地面を瞬時に小さく削り取ることができるので、点在する雑草を1本ずつ
削り取る用途に適し、必要幅以上の地面を削る度合いを少なくすることができる。毎秒2
~3回程度の比較的速い反復操作が可能である。
凹状削りとは、上記の刃で地面を浅い弓型または、浅いV型の溝状に削る操作をいう。
掬い取るように操作すれば凹面状削り、連続して削れば凹状削りとなる。
刃板の前縁に形成した凸弓形状の刃も、柄を押す操作によって凹面状、凹状に削ること
が可能である。
【0077】
旋回削りとは、凸弓形状の刃、または下面側に突出する形状に曲がった刃を、
図13の
ように雑草の脇、もしくは手前に押し付けて、柄を反時計回りに旋回して削り取る除草法
で、刃が雑草の周りを旋回しながら移動する撫で削りとなるので削り易く、根が張った雑
草の除去に適している。左縁に上記形状の刃がある除草具で旋回削りする場合は、柄の旋
回方向が時計回りとなる。
刃板の前縁に凸弓形状の刃を配置した、扇状の刃板形状のものは、刃を押し付けて柄を
左右に複数回旋回する操作が行い易く、幅広く刃を侵入させる操作ができる。
えぐり取る除草法は、刃板を地中にある程度深く刺した状態で、 柄を回転、または旋回
して根切りするもので、旋回削りとは、やや異なる。一方の側縁に直線状刃、他方の側縁
に凸弓形状の刃を備えた除草具でこの操作を行う場合、凸弓形状の刃の側に柄を回転、ま
たは旋回した方が削り易い。
旋回削り、えぐり取りによる除草法とも、根が張った雑草の除去に有効である。
【0078】
押し削りとは、柄を前方、または前下方に押して、前縁の刃で雑草を地面ごと削り取る
除草法で、
図14、
図15のように刃板の両面を使い分けて除草できる。刃を押し付ける
方向と削り取る方向が同方向となるので、柄を直線的に押すのみで除草でき、極めて操作
性が良く使い易い除草法で、毎秒2~3回の除草操作が可能である。
図15の、刃板を裏返して地面を削る押し削りは、刃板に対して柄の中心線36が傾斜
した形状とすることによって、刃板が地面に対して適度な角度となって、柄を直線的に押
す操作によって、地面への刃の押し付けと、刃の移動が同時に行われるのが特徴で、柄を
押す方向と前縁の刃が向いた方向が釣り合った、地面をほぼ一定の深さに削って除草でき
るので、実に使い易く、優れた除草法である。
図17の、刃板と柄の中心線が平行な除草
具は、柄を押す方向と刃先の向きが同一方向となるので、刃が地中深く直進し易く、地面
を削る用途には不適である。
後部の厚みを薄くした柄の採用により、刃板を裏返した姿勢で除草する押し削りでは、
柄の周囲を握るよりも、柄の後部を包むように握る方が滑りが無く、柄の後部が手の平に
密着するので握った手にフィットして押し易く、この除草法を、より使い易いものとして
いる。
平面視において、柄を押す方向に対して、傾斜した刃で押し削りすれば、撫で削りと同
等の削り方となる。柄を押して除草する操作において、除草方向に対して傾斜した刃は、
除草方向と直交する刃よりも削り易い利点がある。
【0079】
地面を切り崩す除草法とは、
図18に示すように、凸弓状刃を雑草の脇に当て、地面に
対して刃板の面が急角度に傾斜した姿勢として、刃板先端方向の斜め下方の、a方向に柄
を押すことによって地面に切り込みを入れて、地面を切り崩して除草するもので、柄を左
右に捻る操作を併用すると、より切り崩し易い。凸弓状刃は
図19の2点鎖線で示すよう
に地中に侵入して、平面削りで除草し難い、根がやや深い雑草や、比較的硬い地面の除草
も可能である。
この除草法は、凸弓状刃の一部分のみが接する地面に押す力を集中させて、凸弓状刃を
滑らせながら侵入させるもので、地面に接する刃幅が長い直線状刃では不可能である。
この除草姿勢と類似の姿勢で操作する、地面を三日月状に削り取る除草操作や、撫で削
りも可能で、詳細は実施例1の除草具の使用法の説明に記述の通りである。
【発明の効果】
【0080】
除草操作を短い周期で反復できるので除草速度が速く、除草作業に要する時間を短縮で
き、小型軽量で簡単な構造ながら、同一の除草具で多種類の除草法を併用して除草できる
のが特徴で、操作性が良く、利用価値が高い除草具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【
図4】
図4は、実施例1の除草具の A-A断面拡大図である。
【
図5】
図5は、実施例1の除草具の刃板下面を地面に密着させ、柄を握った姿勢である。
【
図6】
図6は、実施例1の除草具の 直線状刃での平面削り説明図である。
【
図7】
図7は、除草方向に対して傾斜した直線状刃の除草説明図である。
【
図8】
図8は、人指し指で刃板の押さえる力を助長する説明図である。
【
図9】
図9は、人指し指で刃板の横押しを助長する説明図である。
【
図10】
図10は、傾斜した直線状刃の、除草方向の説明図である。
【
図14】
図14は、刃板上面が上向きで、前縁の刃で押し削りする説明図である。
【
図15】
図15は、刃板下面が上向きで、前縁の刃で押し削りする説明図である。
【
図17】
図17は、刃板と柄の中心線が平行な除草具では、
図15の除草法が不可能なことを示す説明図である。
【
図18】
図18は、刃板を地面に対して急角度として、地面の切り崩し、撫で削りする説明図である。
【
図20】
図20は、刃板上面が上向きで、雑草を掘り起こす説明図である。
【
図21】
図21は、刃板下面が上向きで、雑草を掘り起こす説明図である。
【
図27】
図27は、実施例5の除草具のB-B断面拡大図である。
【
図30】
図30は、実施例7の除草具の柄を水平にした姿勢の平面図である。
【
図31】
図31は、実施例7の除草具の柄を水平にした姿勢の正面図である。
【
図32】
図32は、実施例7の除草具の、1形曲げ刃で平面削りする姿勢の斜視図である。
【
図33】
図33は、実施例7の除草具の、2形曲げ刃で凹面状削りする姿勢の斜視図である。
【
図34】
図34は、実施例7の除草具の、刃板を裏返して前縁の刃で押し削りする姿勢の説明図である。
【
図35】
図35は、実施例7の除草具の、刃板を裏返して2型曲げ刃の一部を使用して、撫で削りする姿勢の斜視図である。
【
図36】
図36は、実施例8の除草具の、柄を水平にした姿勢の平面図である。
【
図37】
図37は、実施例8の除草具の、柄を水平にした姿勢の正面図である。
【
図38】
図38は、
図37の姿勢から、柄を握って、水平面に対して柄の角度を25度にした状態の正面視である。
【
図39】
図39は、
図38の姿勢から柄を左回転して、直線状刃全域が水平面に接した、平面削りする姿勢の斜視図である。
【
図42】
図42は、実施例9の除草具のC-C断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0082】
本発明では、多数の実施例を示し、明細書の記載内容が多岐に亘るため、明細書最後部
に(請求項の要点の説明)項を設け、特許請求の範囲の各請求項について、請求項毎に要
点を説明している。
【0083】
刃板の左縁と右縁の形状が異なるのものは、左縁の刃と右縁の刃では、作業者の利き手
が右か左かによって使い勝手が異なるため、除草法によって左縁と右縁の刃の形状が、実
施例の図と左右が逆の形状のものの方が使い易い場合がある。
実施例6、
図28の除草具のみは、削り幅を広くするため、例外的に長い刃板を採用し
ているが、他の形状の除草具は、操作性の面から刃板の長さが60mm前後のものが使い
易い。
【0084】
実施例1から実施例4、
図1、
図22から
図24は、刃板の形状、大きさ、刃体形状の
違いはあるが、正面視における、刃体の輪郭形状、刃板と柄の角度、刃板と柄の位置関係
は、何れも実施例1の除草具の正面図、
図3と同様、刃板の断面形状は、
図4と同様であ
るので、実施例2~実施例4の
図22~
図24については、平面図のみとしている。
【0085】
柄の形状は、各実施例の図、各説明図の何れも、実施例1の除草具、
図1、
図3と同形
状で、柄の前部のみを図示している図においては、その他の部分を省略している。
【0086】
以下、本発明の除草具を、実施例1から実施例9について、
図1から
図42において説
明する。但し、
図1から
図21は、実施例1の除草具の形状と使用法に関するものである。
各実施例とも、両手で柄を握って除草する場合を除き、もう一方の手に持った小型の熊
手を併用して、除草操作と、除草した雑草の排除を平行して行うことで、除草漏れが分か
り易く、効率よく除草作業ができる。削った雑草の排除、搔き寄せる用途、雑草を熊手の
背で叩いて根に付着した土を落とす用途には、小型軽量で柄の長さが35cm程度の金属
製熊手が適している。
【実施例0087】
図1は、実施例1の除草具の斜視図、
図2は同平面図、
図3は同正面図、
図4は同A-
A断面拡大図である。
図1において、刃体4の装着部3を柄11の前部下面に装着し、柄の前端12の下部に
立ち上がり部2、その前側に刃板1が位置する形状となっている。
刃板1の左縁に直線状刃6、右縁に凸弓状刃7を形成し、刃板先端は尖鋭な形状となっ
ている。
図3において、立ち上がり部2は、上部と下部を曲げて段差を設け、段差部分の
高さの中間位置付近まで刃が形成されている。
この実施例は、直線状刃を左縁に配置して、右利きの人が直線状刃を使用して、右から
左方向、左後方、後方に地面を削って除草する用途を優先した刃の配置となっている。 利
き手と除草方向の関係から、左利きの人が直線状刃で左から右方向に除草する場合、また
は右利きの人が凸弓状刃を使用して、右から左方向に除草する場合は、刃板の縁の形状が
図2と左右逆の形状のものの方が、やや使い易い。柄を前下方に押す操作によって除草す
る除草法では、利き手が左右何れでも、殆ど操作性の差は無い。
【0088】
図2において、刃板の形状は左右非対称であることから、刃板の左右のバランス修正の
ため、柄幅中央線18に対して、刃板を右にシフトした刃体形状となっている。
直線状刃の刃の角度20は60度で、除草時の平面視において、
図7のように除草方向
55に対して、刃が傾斜した状態で移動して地面を削って除草する操作の他、
図10の、
X方向からY方向までの任意の方向に削る操作が可能である。
【0089】
図3において、刃板に対して柄11を傾斜させて、柄の傾斜角40は25度に設定され
ている。柄を傾斜させることによって、立ち上がり部2の高低差が小さくても、
図5のよ
うに柄を握った指と地面との干渉を回避でき、手首をほとんど曲げないで操作できるので
長時間の作業に適し、
図15、および類似の、刃板を裏返して除草する数種類の除草法に
おいても、地面に対して適度な柄の角度で操作できる利点がある。
立ち上がり部2に形成した刃は、刃をやや深く侵入させて地面を削る時、地面を切る役
目をしている。
立ち上がり部と傾斜した柄は、
図5のように柄を握った指を地面50から遠ざけて干渉
を回避し、力点を刃板に近付けるため、柄の前端近くの地面に近い位置を把持して、刃の
押さえがよく効いた状態で、左右に地面を削って除草できる。
また、除草操作を高速で反復する場合、刻々移動する除草開始位置へ、刃を瞬時に正確
に移動させるには、把持部が刃板に近いほど有利である。
この、立ち上がり部と傾斜した柄は、 石やコンクリート壁面脇に生えた雑草の除草時に、
石の側面、壁面から柄を握った指を遠ざけて干渉を回避できる。
刃板と柄の中心線が平行な除草具は、
図5のような除草姿勢において柄がほぼ水平とな
るため、手首から先を上側に曲げたままの除草姿勢となるので、長時間の除草作業には不
適である。また、刃板を裏返して押し削りする
図15の除草法において、
図17のように
柄を押す方向と刃先の向きが一致するため、刃が地中深く直進し易く、地面を薄く削り取
る除草操作には不適である。
【0090】
柄を太くしたことで、柄を握った指、手の平との接触面積を広くして、しっかり把持で
き、断面形状を、やや楕円状として、柄を回転させる除草操作において、円形断面の柄よ
りも滑り難く、太い柄は、より小さい力で回転できる利点があり、実に使い易いものであ
る。
図3において、前部の厚みを薄くした柄は、刃板を裏返して、柄を押して除草する除草
法において、
図15、
図21のように柄前部と地面との干渉を回避して、この姿勢で操作
する数種類の使い易い除草法が可能となる。後部の厚みを薄くした柄は、刃板を裏返して
柄の後部が手の平に接するように握って、柄を押して除草する各種の除草法において、柄
後部を包むように握った手の平に柄の後部が密着するので、柄の後部の角が手の平に当た
る違和感がなく、手の平にフィットして握り易く、押し易い利点がある。
【0091】
実施例1の除草具は、約10種類の除草法が使用可能で、以下、その使用法について、
図1から
図21において順次説明する。
【0092】
第1の使用法は、刃板左縁の傾斜した直線状刃で、 左方向に平面削りする除草法である。
図5のように柄を握って刃板下面を地面50に当てる。柄をやや左に回転して刃板を地
面に対して僅かに傾斜させ、
図6のように除草具を右から左に振って、
図7のように除草
方向55に対して傾斜した刃で地面を削って、同時に複数の雑草を削り取って除草できる。
この除草具は、
図5のように把持部が地面に近い低い位置にあって、楕円状断面の太い
柄をしっかりと握ることができるので、上述の特許文献5の除草器具の問題点である、 側
縁の刃で地面を削る際に、刃に負荷がかかった瞬間に、除草具全体が除草方向に傾く欠点
が無く、地面をやや深く削ることも可能である。
除草具を右から左に振って地面を削ると、刃の軌跡は
図6のように弓状となる。 除草具
を右から左方向へ直線的に動かすと、腕全体を使っての操作となるため、 やや操作性が悪
く、除草操作の反復周期が長くなるのに対し、肘、または手首を支点として左右に振る操
作は、反復周期が短く、操作性が良く使い易い。
雑草の分布状況により、 肘から先を振って除草する場合と、手首から先のみを振って、
小刻みに除草する場合があるが、毎秒2~4回程度の除草操作が可能である。
図9の、人差し指を柄の前部右側面に当てる手法は、力点を更に刃板に近付けて、刃を
左方向に押す操作を助長できるので、地面を削る除草操作が楽で、より削り易い、従来の
除草具には無い優れた操作法である。
除草具を左右に振る除草法は、多数の小型の雑草を削り取る用途に最適で、この除草操
作を5~20回程度繰り返した後、もう一方の手に持った小型の熊手で削った雑草を排除
して、除草洩れの雑草を再度削り取る除草パターンを繰り返すと、効率よく除草作業がで
きる。
【0093】
本除草具の除草方向に傾斜した直線状刃は、
図10に示すようにX方向からY方向まで
の90度の区間で、任意の除草方向を選択できる。
図10、
図11において、地面を削る幅は、X方向に削る場合はX1、Y方向ではY1、
Z方向ではZ1で、Z1が最大、Y1が最小となる。
本実施例では、除草幅Z1を100%とすると、X1は86%、Y1は50%となる。
Z方向は最大幅で除草できるが、刃が除草方向と直交するするので腕への負荷は最大とな
る。Y方向は削り幅が最小であるが、腕への負荷が最も軽く、Z方向では除草困難な、乾
燥した、やや硬い地面の除草、頑強な根の雑草の除草も可能で、X方向、Z方向と比較し
て、より削り易く、軽快に地面を削ることができるのが特徴で、湿った地面の除草にも適
し、切れ味が向上した使用感がある優れた除草法である。
この除草具を左手で操作してY方向に削る場合は、柄を横向きにして、右から左方向に
削ると、柄を手前に引く操作よりも削り易い。
地質や、地面の乾燥状態によって削り易さが大きく異なるので、除草方向を使い分ける
ことによって、削り易い地面は最大幅で削り、削り難い硬い地面や頑強な根の雑草は、削
り幅を狭くして除草すると削り易い。
刃板と柄が隣接しているので、Y方向に除草する操作では、
図8のように人差し指で柄
の前端部を押さえると、上述の特許文献2の除草具の、両手を使って刃を地面に押し付け
ながら、柄を手前に引いて除草する操作と類似の操作を片手で行う事ができる。刃が除草
方向に対して大きく傾斜しているので、軽快に地面を削ることができ、刃板を右にシフト
した形状が、この操作を、より容易としている。
【0094】
多数の雑草がある地面では、削り取ったつもりでも除草洩れは必ずあるもので、この削
り取りには、直線状刃よりも削り幅が狭い凸弓状刃が適し、
図13のように凸弓状刃を雑
草の根元に当てて、手首を捻って雑草を掬い取るように操作して瞬時に除草できる。
図1
5の押し削りする除草法も、除草洩れの雑草を削り取る用途に適している。
【0095】
図8、
図9は力点を更に刃板に近付けた使用法である。把持部の直前に刃板が位置して
いるので、
図8のように人差し指で柄の前部上面を押さえることで、刃を地面に押し付け
る力を助長し、
図9のように、人差し指を柄の前部右側面に当てると、左方向に刃を押す
力を助長することができる。
【0096】
第2の使用法は、刃板右縁の凸弓状刃で撫で削りする除草法である。
この除草法は、
図12のように除草具を右に振って、 凸弓状刃が凸弓状に移動しながら
撫でるように地面を削る、撫で削りで除草するものである。
図9と類似の手法で、親指を柄の前部左側面に当てて操作すると、力点が更に刃板に接
近して、刃を右方向に押す操作を助長できるので、より削り易い。
手首または肘を支点として、除草具を右に振ると、刃の動きは弓状となる。凸弓状刃が
弓状に移動して地面を撫でるように削るため、 地面を削る幅は狭いが、小さい力で除草で
きる利点がある。直刀よりも、反りがある刀の方がよく切れるのと同様である。
図12の右手を右に振って除草する操作では、右腕を大きく振って削るよりも、次に記
述の、手首から先を右に振って削る操作の方が使い勝手が良い。
根が浅い雑草は、手首から先のみを振って撫で削りすると削り易く、速い反復操作が可
能で、次のように操作する。
本実施例は右縁に凸弓状刃があるので、手首関節の可動角度の関係から、作業者が向い
た方向に対して、右手で操作する場合は左手前から右前方向に、左手で操作する場合は左
前方向から右手前方向に除草すると削り易い。
根が浅い小型の雑草は、凸弓状刃を雑草基部に当てて、手首から先を45度~60度程
度右に振ると削り取ることができ、短い周期で除草操作を反復できる。
【0097】
第3の使用法は、凸弓状刃を使用して、地面を凹面状に削り取る除草法である。 直線状
刃での平面削りは、刃の長さ全域に腕の力が分散するのに対し、凹面状削りは凸弓状の縁
の一部分を使用して、雑草がある部分の地面のみを掬い取るように削るため、この部分に
腕の力が集中するので、単体の雑草の除草に適し、削る力は直線状刃よりも強力である。
まばらに生えた単体の雑草を除草する場合、左縁の直線状刃では、刃幅全域を使用して
地面を削るので、必要幅以上の地面を削ってしまうのに対し、凸弓状刃の一部を使用して
地面を凹面状に削り取る除草法は、雑草の周囲の必要な地面のみを削ることができる。
図13のように、雑草の脇に凸弓状刃を当て、手首を捻って雑草がある地面を、右前方
に掬い取るように操作すれば瞬時に除草できる。凸弓状刃を雑草の手前に当てて、向こう
側へ掬い取るように操作してもよい。この除草法は、直線状刃では削り難い凹んだ地面の
除草も可能である。
この、雑草周囲の地面を凹面状に浅く削り取る除草法は、毎秒2~3回の除草操作が可
能で、親指を柄の前端部の左側面に当てて操作すれば、凸弓状刃を除草方向に押す力を助
長できるので、より削り易い。
【0098】
この、凸弓状刃で地面を掬い取る除草法は、石やコンクリート構造物の脇に密接して生
えた小型の雑草の除去にも適している。
石やコンクリート構造物の高さが高い場合は、 左手で柄を握って凸弓状刃を下に向け、
刃板下面を石やコンクリート構造物の側面に沿わせて、 凸弓状刃中央部を地面に垂直に侵
入させ、柄を左回転して除草する。
この実施例は、凸弓状刃が右縁にあるので、凸弓状刃を下向きにして高い壁面脇を除草
する時、右手は壁面から遠い側となるため、右手では操作し難く、左手での操作となるが、
壁や石の高さが低い場合は、上側から右手で操作できる。
上記操作は、柄が地面に対して斜めに向きで、凸弓状刃の中央部分の刃で除草するのに
対し、柄を縦向きとして、刃板前部を、壁面に沿わせて上側から侵入させた後、柄を回転
して掘り起こす手法を使用すれば、壁面が高くても右手での操作が可能である。
立ち上がり部と、刃板に対して傾斜した柄は、柄を握った指を壁面から遠ざけて、壁面
との干渉を回避できる。
【0099】
第4の使用法は、旋回削りによる除草法である。
図13の凹面状削りする姿勢において、
凸弓状刃を雑草の基部に押し付けた状態で、平面視において反時計回りに柄を60度~1
20度程度右に旋回させる、撫で削りと類似の手法である。凸弓状刃が雑草の周囲を回る
ように移動するので削り易く、平面削りや、凸弓状刃で地面を掬い取る操作が困難な、根
が広く張った雑草の除草も可能である。
この操作は、手首から先のみで柄を旋回させるように操作すると、比較的短い周期で反
復操作が可能で、雑草周囲の地面を小さく削り取ることができる。
親指を柄の前部左側面に当てて操作すると、凸弓状刃を地面に押し付ける力を助長でき
るので、より削り易い。
両手で柄を握って、凸弓状刃を押し付けながら柄を旋回すると、より削り易く、根が広
く張った雑草、株がやや大きい雑草の除草には、この手法が適している。
【0100】
第5の使用法は、
図14のように刃板の上面25が上向きで、
図1の前縁の刃8を使用
して、押し削りする除草法である。
図14において、凸弓状刃前部の刃先を雑草の手前の地面に当て、柄を前方へ押すと地
面を薄く削って瞬時に除草できる。
図3において、柄の中心線36に対して刃板の対地面
角度が浅くなるように刃板が傾斜しているので、この除草法は根が浅い雑草や、ゼニゴケ
の削り取りに適している。 前縁の刃を押し付けて柄を左右に複数回旋回させると、刃が侵
入し易く、やや幅広く削り取ることができる。
頑強な根の雑草は、柄を左右に各15度程度捻りながら前縁の刃を押し付けると、刃が
地面に侵入し易く、容易に除草できる。
この除草操作は、柄を左右に各1~2回捻ると刃が地面に侵入するので、除草具を左、
または右に振って平面削りする除草法では削り難い、頑強な根の雑草や、やや硬めの地面
での除草にも有効である。両手で柄を握って行うと、刃を強く押し付けできるので、より
容易に除草できる。
【0101】
第6の使用法は、
図1の前縁の刃8を使用して、
図15の刃板を裏返して押し削りす
る、この除草具のユニークな除草法で、すこぶる使い易く、雑草を1本ずつ削り取る用途
に最適である。この、刃板を裏返して雑草を削り取る除草法は、従来の除草具には無い特
徴で、これを可能としたことが、本除草具の使い易さの向上に大きく寄与している。
図3において、柄の中心線に対して刃板を傾斜させ、前部の厚みを薄くした柄の採用に
よって、この除草法を可能としている。後部の厚みを薄くした柄は、この除草法をより使
い易いものとしている。
図15において、柄の前部の厚みを薄くして柄の前部が地面と干渉するのを回避し、刃
板に対して適度に柄を傾斜させてあることが、刃板を裏返した除草法においても適度な対
地面角度となって、この除草法を実に使い易いものとしている。単体の雑草の除草時に使
用頻度が高く優れた除草法である。
本実施例の正面図、
図3において、柄の把持部下面を通る柄の中心線と平行な直線29
が刃板と交差する形状とすることによって、
図15の除草法においても、刃板は地面に対
して適度な傾斜角度となっている。
図15はこの除草法の、除草姿勢の除草具を正面から見た図、
図16は平面視である。
図のように刃板を裏返して柄の後部を手の平で包むように握り、柄を押す操作によって雑
草を瞬時に削り取ることができる。この除草法は、凸弓状刃の前縁の一部を使用して除草
するので、左縁の直線状刃で平面削りするのと比較して削る幅が狭く、単体の雑草の除草
に適している。
図15において、 柄の中心線36に対して刃板が斜め前下方に傾斜しているのが味噌で、
柄を直線的に押す操作によって、柄を押す方向と、刃板の前縁の刃が向いた方向との角度
差がが釣り合った、ほぼ一定の深さに地面を薄く削って除草できるのが特徴である。
上述の特許文献2の除草具では、刃を押し付ける方向と削り取る方向が異なるため、刃
を地面に押し付ける操作と、柄を引いて地面を削る操作を同時に両手で分担して行うのに
対し、この除草法は柄を単に直線的に押すのみで、地面への刃の押し付けと、刃の移動が
同時に行われ、地面をほぼ一定の深さに削ることができるのが特徴で、極めて操作性が良
く、毎秒2~3回の除草操作が可能である。
この除草法において、頑強な根の雑草に対しては、前縁の刃を押し付けながら柄を左右
に捻る操作が有効である。この手法は硬い地面の除草も可能で、柄を捻りながら刃を押し
付けて、手前側から前方に、刃の前側の地面を連続して除草することもできる。
図17の、柄の中心線36と平行な刃板を備えた除草具では、刃板前縁の刃が向いた方
向が柄を押す方向と一致するので、刃板は地中深く直進し易く、柄を押す操作によって雑
草を削り取る用途には不適である。
【0102】
第7の使用法は、凸弓状刃を地面に対して急角度に傾斜させて、柄を押して地面を切り
崩して除草する除草法で、比較的硬い地面の除草に適している。
図18は、この除草法の
説明図である。
この除草法は、凸弓状刃を地面に対して急角度に立てて、刃板の前端が向いた方向、す
なわち、
図18のa方向に柄を押す操作によって、地面を切り崩して除草するもので、硬
めの地面では実に有効な除草法である。
この除草法は、直線の刃では地面に接する刃幅が広いので、刃を地面に侵入させるのは
困難であるが、凸弓状刃の突出した縁は、一部分の刃のみが地面に接するので、刃板前端
方向の斜め下方に柄を押す操作によって、地面の抵抗を受けながら滑るように移動して侵
入する際に、地面を切り崩して除草するものである。
凸弓状刃を地面に対して垂直に当てて柄を押すと、地面に切れ目が入るのみであるが、
刃板をやや傾斜させるか、柄を左右に捻りながら押すと、地面を切り崩して除草できる。
上述の
図15の除草法では、地面を薄く削り取って除草するのに対して、この除草法は
刃板を急角度として、凸弓状刃を地面にやや深く侵入させ、地面を切り崩して除草する点
が異なる。
図18において、柄の後部を手の平で包むように握り、凸弓状刃を地面に対して急角度
に傾斜させて、前部の縁を雑草の右手前の地面に当ててa方向に柄を押す。
図19において、柄を押すと凸弓状刃が二点鎖線で示すように、前方に移動しながら地
中に侵入して、地面を切り崩して除草できる。両手で操作すると、より楽に除草できる。
この除草法は平面削りで削り難い、乾燥した比較的硬い地面の除草にも適し、柄を左右
に捻りながら押すと、より刃が侵入し易く、地面の切り崩しがより容易である。
【0103】
この除草法は、三日月状に地面を削り取る除草操作もできる。
図18よりも、刃板をや
や右に傾けて、 柄の後部を緩く握って柄を押すと、凸弓状刃は丸みを帯びた形状で、
図3
のように柄の中心線に対して刃板が傾斜しているため、凸弓状刃が右方向に旋回気味に地
中に侵入して、雑草部分の地面を削った後に、柄を押す力を弱めると刃は地面上に出る。
両端が浅く、中央部が幅広く深い、V字状断面の三日月状に地面を削り取ることができ、
根がやや深い単体の雑草を除草する用途に使用できる。
【0104】
図18において、刃板と地面との角度を急角度から徐々に小さい角度にするにつれて、
図15の押し削りに近い削り方となる。
この、地面の切り崩しと、
図15の押し削りとの中間の、
図18において刃板と地面と
の角度を60度程度として、b方向に柄を押して除草する除草法について説明する。
この除草法は、地面に接した凸弓状刃の縁の一部分に押す力が集中し、地面を削る幅が
狭く、刃が斜め右前方に移動する撫で削りとなって、比較的硬い地面でも小気味よく削り
取ることができ、実に削り易く、有効な手法で次のように操作する。
刃板の先端が向いた方向よりも、やや斜め前方のb方向に柄を押すよことによって、削
り幅は狭いが削る力は強力で、単体の雑草を軽快に削り取りでき、毎秒2~3回の反復操
作が可能である。本除草具の優れた除草法の一つである。
【0105】
第8の使用法は、雑草の根を切断して、地面ごと掘り起こす除草法である。特許文献1
の除草具では、二股の先端部を地面に刺す操作は、雑草抜き取りの準備操作であるのに対
し、本除草具では刃板の先端部を、ある深さまで地中に刺した時点で、前縁の刃によって
根が切断され、すでに根切りがほぼ完了している点が異なる。この除草法は、平面削りや、
押し削りで除草する雑草よりも、やや根が深い雑草にも適している。
特許文献1の尖鋭な除草爪を地面に刺して、根を丸ごと抜き取る除草具と比較して、根
切りがほぼ完了しているので掘り起こしが容易である。
図20は刃板の上面が上向きでの掘り起こし、
図21は刃板の下面が上向きでの掘り起
こしを示す。
図21では、柄の後部を手の平で包むように握ると、緩く握っても滑りが無
く、柄を押して刃を侵入させる操作が容易である。
特許文献1の除草具では、柄後部を押し下げて雑草を抜き取るに対し、この除草法は刃
板を地面に刺した時点で根切りがほぼ完了しているので、 凸弓状刃を支点として柄を回転
すると、地中に侵入した刃板の上側の地面を、雑草ごと掘り起こしできる。
柄を回転させる操作において、太い楕円状断面の柄は、より小さい力で回転でき、円形
断面のものよりも滑り難く、この操作に適している。
図21の除草法は操作性が良く、刃
板前部を雑草基部に刺して、太い楕円状断面の柄を柄を右回転して掘り起こす一連の操作
は、特許文献1の除草具と比較して短い周期で反復でき、毎秒2回程度の除草操作が可能
である。
図20、
図21のように、刃板を雑草の根元の手前に斜め下方に向かって刺し、
図20
では柄を回転させるか、柄後部を押し下げて雑草を掘り起こしする。
図21では、柄を回
転して掘り起こしする。
柄を回転して掘り起こす方が、操作性が良く、速い反復操作ができる。凸弓状刃の突出
した縁は、柄を回転して掘り起こしする際の支点としてり利用できる。
図20は根が浅い雑草、
図21は根がやや深い雑草の除去に適している。除草する雑草
により、刃板の上面と下面とを使い分けることで、掘り起こす深さ、地面に対する刃板の
侵入角度が選択できる。
図21の刃板を裏返して行う除草操作は、小型の削り取り難い雑草に対しても有効で、
刃板前部を雑草基部に刺して、柄を回転して掘り起こす一連の操作は、まばらに生えた、
やや根が張った多数の雑草を除去する用途に適し、毎秒2回程度の反復操作が可能である。
図20において刃板を急角度とすれば、より深い掘り起こしが可能である。この除草操
作は、地面を削り取る除草法では除去できない厄介な雑草である、ムラサキカタバミの鱗
茎の除去にも適している。
【0106】
第9の使用法は、根切りして雑草の根をえぐり取る除草法で、広く根が張った単体の雑
草の除草に有効である。
図20の姿勢で、雑草の根元の手前から斜め下方に向けて刃板を
深く刺し、柄を右旋回して根切りして除草する。柄の回転を併用すると小さくえぐること
ができる。大きめの雑草は 両手で柄を握って操作すると、より容易に除去できる。
【0107】
第10の使用法は、乾燥して硬化した地面や、小石混じりの地面の除草法である。この
ような地面では、削り取る操作によって除草するのは困難で、この除草法は、刃板先端部
が地面に接する狭い刃幅部分に押す力を集中させて、左右に柄を捻りながら刃板先端部を
雑草の根元に押し付けて除草するもので、硬い地面では有効な除草法である。
図15と同様の姿勢で刃板下面を上向きにして、刃板の先端部を雑草の根元の手前の地
面に当てる。
柄を左右に僅かに捻りながら刃を押し付けると、先端部が地面に侵入して容易に除草で
きる。この除草法は、刃板先端部を押し付けて柄を1~2回捻ると除草できるので、硬い
地面では有効な手法である。
小石混じりの地面においても同様、 柄を左右に僅かに捻りながら刃板の先端部を押し
付けることによって、刃板先端部が小石を掻き分けながら侵入して容易に除草できる。
この除草法は、頑強な根の雑草の除草にも有効で、柄を捻りながら刃板の先端部を押し
付けることによって、容易に刃を侵入させることができ、削り取りが困難な雑草を除去す
る用途には最適な手法である。
【0108】
第11の使用法は、凸弓状刃後部から、立ち上がり部下部に形成した曲がった刃を使用
して、雑草周囲の地面を凹面状に小さく削り取る除草法である。
図2の16の部分の、凸弓状刃の後部の刃と、立ち上がり部下部に形成した曲がった刃
を、雑草の左手前の地面に当て、右斜め前方向に掬い取るように手首を捻ると、雑草の周
囲の地面を瞬時に小さく削り取ることができる。左手で操作する場合は、雑草の左前部に
16の部分の刃を当て、右手前方向に削り取る。
この実施例は、側縁後部から立ち上がり部下部が、柄の右側に突出した形状となってい
るので、16の部分の曲がった刃で雑草基部の地面を小さく掬い取る除草操作が行い易い。
右手で操作する場合は親指を、左手で操作する場合は人差し指を柄の前端左側面に当て
て操作すると、刃を右に押す操作を助長できるので、より削り易い。