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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083759
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】射出成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20240617BHJP
   B29C 45/74 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/74
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197756
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高松 俊輔
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AJ12
4F206AJ13
4F206AP051
4F206AR061
4F206AR071
4F206JA07
4F206JL02
4F206JM01
4F206JM04
4F206JN11
4F206JN43
4F206JP14
4F206JQ46
4F206JQ47
4F206JQ48
4F206JT32
(57)【要約】
【課題】シリンダを覆う断熱カバー内部において、過昇温が生じることを抑制する。
【解決手段】射出材料を混練するシリンダと、シリンダの側面を覆い、第1端部と第2端部とを有する断熱カバーと、断熱カバーとシリンダとの間に配置され、シリンダの第1領域を加熱するヒータと、第1領域と、第1領域と異なる第2領域とを熱的に接続する第1ヒートパイプとを備える。断熱カバーは、射出材料が通過する第1端部と第2端部とを有し、第1領域は、第2領域よりも第1端部と第2端部との間の中心点に近い領域である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から供給された射出材料を混練し、混練された射出材料を外部へと供給するシリンダと、
前記シリンダの側面を覆い、第1端部および第2端部を有する断熱カバーと、
前記断熱カバーと前記シリンダとの間に配置され、前記シリンダの第1領域を加熱するヒータと、
前記第1領域と、前記第1領域と異なる前記シリンダの第2領域とを熱的に接続する第1ヒートパイプとを備え、
前記第1領域は、前記第2領域よりも前記第1端部と前記第2端部との間の中心点に近い領域である、射出成形機。
【請求項2】
前記シリンダに供給される射出材料を冷却する冷却装置をさらに備え、
前記第2領域は、前記第1領域よりも前記冷却装置に近い領域である、請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
混練された射出材料を金型へと注入するノズルをさらに備え、
前記第2領域は、前記第1領域よりも前記ノズルに近い領域である、請求項1に記載の射出成形機。
【請求項4】
混練された射出材料を金型へと注入するノズルと、
前記断熱カバー内における第3領域と前記第1領域とを熱的に接続する第2ヒートパイプとをさらに備え、
前記第3領域は、前記第1領域よりも前記ノズルに近い領域であり、
前記第1領域は、前記第3領域よりも前記中心点に近い領域である、請求項2に記載の射出成形機。
【請求項5】
前記第1領域の温度を検出する第1温度センサと、
前記第2領域の温度を検出する第2温度センサと、
前記第1温度センサおよび前記第2温度センサと接続された制御装置とをさらに備え、
前記制御装置は、
前記第1温度センサの検出温度を取得し、
前記第2温度センサの検出温度を取得し、
前記第1温度センサの検出温度が第1基準値を下回った場合、または、前記第2温度センサの検出温度が第2基準値を上回った場合、前記第1ヒートパイプによる前記第1領域と前記第2領域との熱的な接続の遮断処理を実行し、
前記第1基準値は、前記第2基準値よりも高い温度である、請求項1~3のいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項6】
前記第1領域の温度を検出する第1温度センサと、
前記第2領域の温度を検出する第2温度センサと、
前記第3領域の温度を検出する第3温度センサと、
前記第1温度センサ、前記第2温度センサおよび前記第3温度センサと接続された制御装置とをさらに備え、
前記制御装置は、
前記第1温度センサの検出温度を取得し、
前記第2温度センサの検出温度を取得し、
前記第3温度センサの検出温度を取得し、
前記第1温度センサの検出温度が第1基準値を下回った場合、前記第1ヒートパイプによる前記第1領域と前記第2領域との熱的な接続の遮断処理および前記第2ヒートパイプによる前記第1領域と前記第3領域との熱的な接続の遮断処理を実行し、
前記第2温度センサの検出温度が第2基準値を上回った場合、前記第1ヒートパイプによる前記第1領域と前記第2領域との熱的な接続の遮断処理を実行し、
前記第3温度センサの検出温度が第3基準値を上回った場合、前記第2ヒートパイプによる前記第1領域と前記第3領域との熱的な接続の遮断処理を実行し、
前記第1基準値は、前記第2基準値および前記第3基準値よりも高い温度である、請求項4に記載の射出成形機。
【請求項7】
前記冷却装置の消費電力を取得し、前記冷却装置の出力を調整する制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記冷却装置の消費電力が予め定められた閾値を上回った場合、前記第1ヒートパイプによる前記第1領域と前記第2領域との熱的な接続の遮断処理を実行する、請求項2に記載の射出成形機。
【請求項8】
前記遮断処理は、前記第1ヒートパイプを取り外すべき旨を報知する処理である、請求項5に記載の射出成形機。
【請求項9】
前記第1ヒートパイプの配置を変更させるアクチュエータをさらに備え、
前記遮断処理は、前記アクチュエータによって前記第1ヒートパイプの配置が変更されて前記第1領域と前記第2領域との熱的な接続が遮断される処理である、請求項5に記載の射出成形機。
【請求項10】
前記第1領域に配置された第1放熱体と、
前記第2領域に配置された第2放熱体とをさらに備え、
前記第1ヒートパイプは、
前記第1放熱体を介して前記第1領域と熱的に接続し、
前記第2放熱体を介して前記第2領域と熱的に接続する、請求項1に記載の射出成形機。
【請求項11】
前記第1領域と前記第2領域とを熱的に接続する第3ヒートパイプをさらに備える、請求項1に記載の射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
工場において、プラスチックの樹脂等を基材とする成形品を成形するために射出成形機が用いられている。特許文献1(特開2016-112772号公報)には、加熱シリンダの温度制御方法に関する技術が開示されている。
【0003】
特許文献1の射出成形機は、樹脂を融解させる加熱シリンダを有する。特許文献1における加熱シリンダの側面は、断熱カバーによって覆われている。加熱シリンダの側面と断熱カバーとの間には、複数のバンドヒータが配置されている。特許文献1では、加熱シリンダの側面と断熱カバーとの間に、複数のバンドヒータに加えてヒートポンプ回路が設けられている。加熱シリンダが目標温度よりも高くなってしまった場合に、ヒートポンプ回路は、冷却流体を用いて断熱カバー内を冷却する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-112772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の射出成形機において、断熱カバーは、複数のバンドヒータによって上昇した加熱シリンダが外気に晒されることによる加熱シリンダの温度の急低下を抑制することができる。言い換えれば、断熱カバーは、断熱カバー内部の熱が容易に外部に放出されることを抑制して、加熱シリンダを保温する。しかしながら、断熱カバー内部では、熱の放出が抑制されることによって、温度が下がりにくくなる領域が生じてしまう場合がある。断熱カバー内の温度が下がりにくい領域は、シリンダを加熱するヒータがオン状態となることによって過昇温となってしまう場合があった。
【0006】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、シリンダを覆う断熱カバー内部において、過昇温が生じることを抑制する射出成形機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係る射出成形機は、外部から供給された射出材料を混練し、混練された射出材料を外部へと供給するシリンダと、シリンダの側面を覆い、第1端部および第2端部を有する断熱カバーと、断熱カバーとシリンダとの間に配置され、シリンダの第1領域を加熱するヒータと、第1領域と、第1領域と異なるシリンダの第2領域とを熱的に接続する第1ヒートパイプとを備える。第1領域は、前記第2領域よりも第1端部と第2端部との間の中心点に近い領域である。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る射出成形機によれば、シリンダを覆う断熱カバー内部において、過昇温が生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】射出成形機の外観図である。
図2】実施の形態1における断熱カバーおよびシリンダの構造を説明するための図である。
図3】放熱板およびヒートパイプを説明するための斜視図である。
図4】温度センサの検出温度とヒータのデューティ比とを示す第1図である。
図5】温度センサの検出温度とヒータのデューティ比とを示す第2図である。
図6】ヒートパイプによる熱的な接続を遮断する制御の第1例を示す。
図7】ヒートパイプによる熱的な接続を遮断する制御の第2例を示す。
図8】実施の形態2における断熱カバーおよびシリンダの構造を説明するための図である。
図9】実施の形態2におけるヒートパイプによる熱的な接続を遮断する制御例を示す。
図10】実施の形態3における断熱カバーおよびシリンダの構造を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0011】
[実施の形態1]
<射出成形機の全体構成>
以下では、図1を用いて射出成形機100について説明する。図1は、射出成形機100の外観図である。図1を用いて、射出成形機100の全体構成を説明する。
【0012】
射出成形機100は、XY平面上に載置されている。XY平面に垂直な方向をZ軸方向とする。以下では、図1におけるZ軸の正方向を上面側または上方、負方向を下面側または下方と称する場合がある。なお、図1に示される射出成形機100は横型の射出成形機として示されているが、本実施の形態の射出成形機100は横型に限られず、竪型の射出成形機であってもよい。
【0013】
射出成形機100によって実行される射出成形処理は、型閉工程、射出工程、保圧工程、型開工程、冷却工程、突出工程、および可塑化工程を含む。射出成形機100は、上記の射出成形処理のサイクルを繰り返し実行する。射出成形機100は、種々の形状、材質の成形品を成形可能であり、成形品の形状および材質の種類に応じた射出成形処理を行う。
【0014】
射出成形機100は、金型を型締めする型締装置10と、射出材料を溶融して射出する射出装置20と、操作盤30とを備える。型締装置10は、射出装置20に対して、X軸の負方向側に配置されている。
【0015】
<型締装置>
本実施の形態の型締装置10は、固定盤12と、型締ハウジング13と、可動盤14と、タイバー15と、型締機構16と、金型17,18と、ボールねじ19と、サーボモータ80C,80Dと、ベッド11とを備える。ベッド11は、固定盤12、型締ハウジング13、可動盤14等を保持する。型締ハウジング13および可動盤14の各々は、ベッド11上をX軸方向にスライド可能に構成されている。
【0016】
タイバー15は、固定盤12と型締ハウジング13との間に配置され、固定盤12と型締ハウジング13とを連結する。実施の形態1における射出成形機100は、4本のタイバー15を有する。なお、射出成形機100が有するタイバー15の数は、4本に限られず、たとえば5本以上であってもよい。
【0017】
可動盤14は、固定盤12と型締ハウジング13との間でX軸方向にスライド可能に構成される。型締機構16は、型締ハウジング13と可動盤14との間に設けられる。本実施の形態における型締ハウジング13は、トグル機構を含んで構成される。なお、型締機構16は、直圧式の型締機構を含んで構成されてもよい。直圧式の型締機構とは、すなわち型締シリンダを意味する。
【0018】
サーボモータ80Cは、型締ハウジング13内に設けられている。サーボモータ80Cは、ボールねじ19を介して型締機構16を駆動させる。ボールねじ19は、サーボモータ80Cからの回転運動を直線運動に変換して型締機構16を駆動させる。金型17,18は、固定盤12と可動盤14との間に設けられている。金型17,18は、型締機構16が駆動することにより開閉される。すなわち、金型17はボールねじ19によって可動する金型であり、金型18は固定盤12によって固定されている金型である。
【0019】
金型17,18とが離れている状態から密着する状態へと移行する工程を「型閉工程」と称する。また、金型17,18とが密着している状態から離れている状態へと移行する工程を「型開工程」と称する。サーボモータ80Cは、型閉工程および型開工程に用いられるモータである。
【0020】
射出成形機100は、型開工程の後に「突出工程」と称される工程を行う。突出工程は、金型17,18内に充填された後に固化した射出材料を金型17から取り外す工程である。具体的には、サーボモータ80Dの回転によって図示されないピンなどが突出し、金型17に密着している成形品は取り外される。可動盤14内に設けられているサーボモータ80Dは、突出工程に用いられるモータである。
【0021】
<射出装置>
射出装置20は、シリンダ22と、駆動機構24と、ホッパ25と、射出ノズル26と、ノズルタッチ装置27と、サーボモータ80A,80Bと、ヒータHt1,Ht2と、温度センサSr1,Sr2と、冷却装置R1とを備える。
【0022】
シリンダ22は、射出材料を混練するスクリュ23を内部に有する。シリンダ22の外観は、円柱形状である。より具体的には、シリンダ22は、ノズル側とホッパ側とに底面を有する円柱形状を有する。シリンダ22は、スクリュ23および射出材料を格納するための内部に空洞を有する。
【0023】
シリンダ22におけるノズル側とホッパ側との底面には、射出材料を運搬するための開口が形成されている。以下では、シリンダ22において、2つの底面とを接続する面をシリンダ22の「側面」と称する。シリンダ22の側面は、円柱形状における曲面に対応する。
【0024】
なお、シリンダ22の形状は、円柱形状に限られず、スクリュ23を格納可能な柱形状であれば、たとえば四角柱または三角柱であってもよい。射出成形機100は、スクリュ23を用いて「可塑化工程」と称される工程を行う。
【0025】
可塑化工程は、ヒータHt1,Ht2によるシリンダ22に対する加熱とスクリュ23の回転とによって、射出する樹脂を混錬する工程である。シリンダ22は、ヒータHt1,Ht2によって、たとえば180℃~350℃の温度にまで加熱され、射出材料を融解する。ヒータHt1,Ht2は、シリンダ22の側面を覆うバンドヒータである。なお、実施の形態1では、射出成形機100は、2つのヒータHt1,Ht2を有する例が示されているが、ある局面においては、射出成形機100は、3つ以上のヒータを有してもよく、たとえば、10~30個のヒータを有してもよい。また、実施の形態1におけるシリンダ22の側面は、さらに断熱カバーによって覆われている。図1においては説明を簡単とするため断熱カバーの図示が省略されており、断熱カバーを含むシリンダ22の構造は、図2を用いて詳述する。
【0026】
駆動装置24内のサーボモータ80BはX軸方向を中心軸としてスクリュ23を回転させる。すなわち、サーボモータ80Bは可塑化工程に用いられるモータである。射出成形機100は「射出工程」と称される工程と「保圧工程」と称される工程とを行う。射出工程は、可塑化工程によって可塑化された樹脂を金型17,18内へと射出する工程である。保圧工程とは、射出工程によって射出された樹脂を金型17,18内に保持するために圧力を加える工程である。サーボモータ80Aの駆動によって、スクリュ23はX軸方向の負方向側にスライドする。これにより、可塑化された樹脂は金型17,18内へと射出される。サーボモータ80Aは射出工程または保圧工程に用いられるモータである。
【0027】
ホッパ25は、シリンダ22のZ軸の正方向側に設けられており、可塑化前の射出材料を格納している。すなわち、ホッパ25内には、融解される前の粒形状の射出材料が格納されている。ホッパ25内に格納されている射出材料は、スクリュ23の駆動により、シリンダ22の内部へと運搬される。ホッパ25からシリンダ22へ射出材料が通過する経路の近傍には、冷却装置R1が配置されている。
【0028】
冷却装置R1は、ホッパ25からシリンダ22内へと供給されている射出材料を冷却する。これにより、射出成形機100では、ヒータHt1,Ht2の発熱によって、ホッパ25内に格納されている粒形状の射出材料が融解してしまうことを抑制できる。シリンダ22に到達する前に射出材料が融解すると、射出材料の運搬経路上において、詰まりが生じ得る。すなわち、射出成形機100では、射出成形処理中において、ヒータHt1,Ht2は発熱することによってシリンダ22を加熱しつつ、冷却装置R1によってホッパ25内の射出材料が意図せずに融解してしまうことを抑制できる。冷却装置R1は、たとえば、冷却水を循環させる水冷式の装置である。
【0029】
制御装置40は、冷却装置R1の出力を調整可能である。図1には、冷却装置R1が循環させる冷却水の温度を検出する温度センサSr4が示されている。制御装置40は、温度センサSr4の検出温度を取得し、取得した温度に応じて、冷却装置R1の出力を調整する。
【0030】
図1に示されているように、ヒータHt1は、シリンダ22の中央付近の領域を加熱するヒータであり、ヒータHt2は、ヒータHt1よりも冷却装置R1に近いシリンダ22の領域を加熱するヒータである。
【0031】
シリンダ22内における射出材料は、スクリュ23の回転によって、X軸の正方向の端部から負方向側の端部に向かって運搬される。すなわち、射出材料は、まずヒータHt2によって加熱され、次いで、ヒータHt1によって加熱される。これにより、射出材料は混練される。温度センサSr1,Sr2は、ヒータHt1,Ht2によって加熱される領域の温度をそれぞれ測定する。温度センサSr1,Sr2は、たとえば、熱電対である。
【0032】
混練された射出材料は、シリンダ22のX軸の負方向側における端部に設けられている射出ノズル26へと運搬される。ノズルタッチ装置27は、射出装置20自体をX軸方向にスライドさせて、射出ノズル26を金型18のスプルーブッシュに接触させる。これにより、射出材料は、金型18へと注入される。
【0033】
基台21は、ベッド11のX軸の正方向側に配置され、駆動機構24等を保持する。基台21は、内部に制御装置40と、図示しないサーボアンプを備える。当該サーボアンプは、サーボモータ80A~80Dに対して電力を供給する。制御装置40は、温度センサSr1,Sr2の検出温度を取得し、取得した検出温度に基づいてヒータHt1,Ht2をそれぞれ制御する。
【0034】
<操作盤>
操作盤30は、射出成形処理に関連する情報を表示する表示装置31と、ユーザからの操作を受け付ける入力装置32とを備える。操作盤30は、制御装置40と電気的に接続されている。図1の例では、操作盤30は、射出成形機100のY軸の負方向側に設けられている。ある局面では、操作盤30は、射出成形機100と別体として設けられてもよく、たとえば、射出成形機100が配置されている工場と異なる部屋に配置されてもよい。
【0035】
表示装置31は、たとえばディスプレイである。入力装置32は、たとえば、複数のボタンから構成される。ある局面では、表示装置31および入力装置32がタッチパネルとして一体的に設けられてもよい。また、操作盤30は、マイクおよびスピーカを含み、音声を用いてユーザからの操作を受け付けてもよい。
【0036】
<断熱カバーおよびシリンダの構造>
図2は、実施の形態1における断熱カバーC1およびシリンダ22の構造を説明するための図である。図2(A)は、X軸の負方向側から視たときの断熱カバーC1およびシリンダ22の断面図である。図2(B)は、Z軸の正方向側から視たときの断熱カバーC1およびシリンダ22を示す図である。図2(B)における線II-IIは、図2(A)に示される断面の位置を示している。
【0037】
断熱カバーC1は、シリンダ22の側面およびヒータHt1,Ht2が外気に露出しないようにシリンダ22を覆う。断熱カバーC1とシリンダ22との間には、ヒータHt1,Ht2および放熱板B1,B2が配置されている。図2(A)に示されているように、スクリュ23、シリンダ22、ヒータHt1,Ht2,放熱板B1,B2、断熱カバーC1の断面は、すべて略円形状を有し、スクリュ23の回転軸Axを中心として略同心円状を形成する。スクリュ23、シリンダ22、ヒータHt1,Ht2,放熱板B1,B2、断熱カバーC1のうち、スクリュ23は、最も内側に配置されており、断熱カバーC1は、最も外側に配置されている。
【0038】
ヒータHt1,Ht2は、領域Rg1,Rg2をそれぞれ加熱する。領域Rg1,Rg2の各々には、目標温度が設定されている。領域Rg1に設定された目標温度と、領域Rg2に設定された目標温度とは、同じ温度であってもよいし異なる温度であってもよい。
【0039】
図2(A)に示されるように、シリンダ22、ヒータHt2、放熱板B2、断熱カバーC1の各断面におけるY軸の負方向側であってZ軸の負方向側には、凹部U1が形成されている。凹部U1には、熱電対である温度センサSr2が挿入されている。これにより、温度センサSr2は、ヒータHt2によって加熱される領域の温度を検出する。
【0040】
断熱カバーC1は、ヒータHt1,Ht2によって生じる熱が外気へと放出されることを抑制する。これにより、射出成形機100では、射出材料を融解させるために必要なヒータHt1,Ht2の消費電力を抑制できるため、省エネ効果を実現できる。断熱カバーC1は、たとえば、グラスウールを用いて形成される。
【0041】
円柱形状のシリンダ22の側面を覆う断熱カバーC1は、円柱形状の側面と対応する形状を有する。シリンダ22は、ホッパ25側から射出材料が供給される端部と、射出ノズル26へと射出材料を供給する端部とを有する。すなわち、シリンダ22の内部は、射出材料が通過するために連通している。断熱カバーC1は、シリンダ22の側面を覆う。断熱カバーC1は、ホッパ25側の端部P1と、射出ノズル26側の端部P2とを有する。
【0042】
断熱カバーC1は、円柱形状の側面に対応する形状を有することから、端部P1,端部P2において開口を有する。そのため、断熱カバーC1の内部の熱は、端部P1,P2の開口を介して、外部装置または外気と熱交換し得る。言い換えれば、断熱カバーC1内部の熱は、端部P1,P2の開口から放出されてしまう。なお、図2の例では、断熱カバーC1は、シリンダ22の側面の全体を覆う例を示しているが、ある局面においては、断熱カバーC1は、シリンダ22の側面の一部だけを覆っていてもよい。たとえば、断熱カバーC1は、シリンダ22の側面におけるホッパ25側の半分、すなわち、図2に示されている中心点Mp1から端部P1までの領域を覆っていてもよい。この場合、端部P1と端部P2との間の中心点は、図2に示されている位置と異なる位置となる。
【0043】
断熱カバーC1の内部における端部P1と端部P2との間の中心点Mp1は、端部P1から中心点Mp1までの距離X1と、端部P2から中心点Mp1までの距離X2とが同じ距離となる点である。断熱カバーC1における中心点Mp1以外の他の位置と比較して、中心点Mp1は、端部P1までの距離または端部P2までの距離のうちの最小距離が最も長くなる。そのため、中心点Mp1は、断熱カバーC1の内部において最も熱が放出されにくい点である。中心点Mp1を含む領域Rg1は、断熱カバーC1内部における他の領域と比較して、過昇温が生じやすい。
【0044】
そのため、実施の形態1の射出成形機100では、図2(B)に示されているヒートパイプHR1,HL1を用いて、領域Rg1と、領域Rg1よりも端部P1に近い領域Rg2とを熱的に接続し、領域Rg1の熱を領域Rg2へと伝達する。より具体的には、ヒートパイプHR1,HL1の一方端は、領域Rg1に配置された放熱板B1と接触し、ヒートパイプHR1,HL1の他方端は、領域Rg2に配置された放熱板B2と接触する。
【0045】
ヒートパイプHR1,HL1は、放熱板B1の温度が放熱板B2の温度よりも高い場合、放熱板B1の温度を低下させ、放熱板B2の温度を上昇させる。ヒートパイプHR1,HL1の内部には、作動流体として所定の液体が封入されている。当該作動流体は、ヒートパイプHR1,HL1の一方端において放熱板B1と熱交換して加熱されることにより蒸発潜熱を吸収し、放熱板B1を冷却する。蒸発した作動流体は、減圧された空間または真空の空間を通過してヒートパイプHR1,HL1の他方端へと移動し、他方端側に配置されている放熱板B2と熱交換し、蒸発潜熱を放出して凝縮する。その後、凝縮した作動流体は、毛細管構造(ウイック)が形成されている内壁を通じて、作動流体が蒸発した位置に戻り、ヒートパイプHR1,HL1の内部の流路を循環する。これにより、ヒートパイプHR1,HL1は、放熱板B1の温度を低下させ、放熱板B2の温度を上昇させることができる。
【0046】
実施の形態1におけるヒートパイプHR1,HL1は、領域Rg1と領域Rg2との熱的な接続を一時的に遮断可能であるように構成されている。より具体的には、図2に示されるように、ヒートパイプHR1,HL1には、ヒートパイプHR1,HL1の配置をそれぞれ変更させるアクチュエータAR1,AL1が設けられている。すなわち、アクチュエータAR1,AL1は、ヒートパイプHR1,HL1自体をそれぞれ移動させる。アクチュエータAR1,AL1は、ヒートパイプHR1,HL1の状態は、放熱板B1,B2の両方と接触する状態と、放熱板B1,B2の少なくとも一方とは接触していない状態とに変化させることができる。制御装置40は、後述する所定の条件が満たされたことに基づいて、ヒートパイプHR1,HL1による熱的な接続を遮断する。放熱板B1,B2は、熱の排出効率を高めるヒートシンクであって、たとえば、伝熱性の高いアルミニウム、鉄、銅などの金属である。
【0047】
図3は、放熱板B1,B2およびヒートパイプを説明するための斜視図である。図3には、図2(B)に示されているヒートパイプHR1に加えて、ヒートパイプHU1,HD1が示されている。図2(B)に示されているように、放熱板B1,B2は、断熱カバーC1と同様に、円柱の曲面に対応する形状を有する。図2(B)に示されているヒートパイプHL1は、図3においては、放熱板B1に妨げられて図示されていない。
【0048】
X軸の負方向側から視たとき、ヒートパイプHR1は、スクリュ23に対してY軸の負方向側に配置され、ヒートパイプHL1は、スクリュ23に対してY軸の正方向側に配置される。また、X軸の負方向側から視たとき、ヒートパイプHU1は、スクリュ23に対してZ軸の正方向側に配置され、ヒートパイプHD1は、スクリュ23に対してZ軸の負方向側に配置される。以下では、ヒートパイプHR1,HL1,HD1,HU1を、総称して「ヒートパイプH1」と称する場合がある。
【0049】
実施の形態1においてヒートパイプH1の各々は、棒形状であって同一の形状を有する。ヒートパイプH1の各々は、放熱板B1と放熱板B2と接触している。実施の形態1では、4つのヒートパイプH1が設けられる構成について説明したが、ヒートパイプH1の数は4つに限られず、1つであってもよいし、5つ以上であってもよい。
【0050】
図2に示されるように、実施の形態1の射出成形機100では、断熱カバーC1の内部において、熱が放出されにくい領域Rg1と、熱が放出されやすい領域Rg2とがヒートパイプH1によって熱的に接続されている。つまり、実施の形態1の射出成形機100は、ヒートパイプH1を備えることによって、最も熱が放出されにくい中心点Mp1に近い領域Rg1の温度を低下させ、端部P1の近傍であって領域Rg1よりも熱が放出されやすい領域Rg2の温度を上昇させることができる。これにより、断熱カバーC1内部におけるヒータHt1,Ht2によって加熱される各領域の温度を、各々が設定された目標温度に近づけることが可能となり、実施の形態1の射出成形機100では、シリンダ22を覆う断熱カバーC1内部において、過昇温が生じることを抑制できる。
【0051】
さらに、図2に示されるように、領域Rg2は、領域Rg1よりも冷却装置R1に近い領域である。すなわち、放熱板B2を介してヒートパイプH1との間で熱交換する領域Rg2は、ヒータHt1によって加熱される第1領域よりも冷却装置R1の近い領域であることから、領域Rg2は、端部P1を介して、冷却装置R1と熱交換し得る。すなわち、領域Rg2の温度は、冷却装置R1の冷却によって低下してしまう場合がある。
【0052】
領域Rg2の温度を高く保持するためにはヒータHt2のワット密度を高めることが考えられるが、ワット密度の高いヒータを設けることによって、コストは増大し得る。また、ワット密度の高いヒータを設けた場合、消費電力も増大し得る。実施の形態1の射出成形機100では、ヒートパイプH1によって領域Rg1から領域Rg2へと熱が伝達されるため、ヒータHt2としてワット密度の高いヒータを設けることなく、領域Rg2の温度の低下を抑制することが可能となる。
【0053】
なお、実施の形態1において、領域Rg1は、本開示における「第1領域」の一例である。領域Rg2は、本開示における「第2領域」の一例である。ヒートパイプHR1は、本開示における「第1ヒートパイプ」の一例である。ヒートパイプHU1,HD1,HL1は、本開示における「第3ヒートパイプ」の一例である。放熱板B1は、本開示における「第1放熱体」の一例である。放熱板B2は、本開示における「第2放熱体」の一例である。端部P1は、本開示における「第1端部」の一例である。端部P2は、本開示における「第2端部」の一例である。
【0054】
また、図2にて説明した例では、領域Rg1は中心点Mp1を含む領域であるが、領域Rg1が領域Rg2よりも中心点Mp1に近い領域であれば、領域Rg1は中心点Mp1を含まなくともよい。すなわち、領域Rg1は、断熱カバーC1内部において、領域Rg2よりも熱が放出されにくい領域であればよい。
【0055】
[温度変化の比較]
図4は、温度センサSr1,Sr2の検出温度とヒータHt1,Ht2のデューティ比とを示す第1図である。図4の上段には、温度センサSr1,Sr2の検出温度を示すグラフG1が示されており、図4の下段には、ヒータHt1,Ht2のデューティ比を示すグラフG2が示されている。グラフG1とグラフG2とは、横軸の時間軸を共有している。デューティ比とは、ヒータのオン期間とオフ期間とを合計した1周期に対するオン期間の比である。デューティ比が高い程、ヒータの温度は上昇し、消費電力も増大する。デューティ比が低い程、ヒータの温度は低下し、消費電力も低下する。
【0056】
図2に示されているように、ヒータHt1は、領域Rg1を加熱する位置に配置されており、ヒータHt2は、領域Rg2を加熱する位置に配置されている。すなわち、ヒータHt1,Ht2は、領域Rg1,Rg2の温度をそれぞれ上昇させる。また、温度センサSr1,Sr2は、領域Rg1,Rg2の温度をそれぞれ検出する。
【0057】
上述したように、シリンダ22は、ヒータHt1,Ht2によって、たとえば180℃~350℃の温度にまで加熱され得る。すなわち、シリンダ22の目標温度が取り得る範囲は、たとえば、180℃~350℃である。上述したようにシリンダ22に設定される目標温度は、シリンダ22の領域Rg1,Rg2ごとに異なる目標温度が設定されてもよい。
【0058】
図4の例では、シリンダ22の目標温度として180℃が設定されている。すなわち、シリンダ22には、比較的低い目標温度が設定されている。図4では、シリンダ22に比較的低い目標温度が設定された場合に生じる過昇温の発生を実施の形態1の射出成形機100によって抑制できることを説明する。
【0059】
グラフG1における線T1,T2は、実施の形態1における温度センサSr1,Sr2の検出温度をそれぞれ示す。一方で、線Tz1,Tz2は、比較例における温度センサSr1,Sr2の検出温度を示す。比較例は、実施の形態1の射出成形機100からヒートパイプH1を取り除いた構成を有する射出成形機である。
【0060】
制御装置40は、温度センサSr1,Sr2から取得した検出温度に基づいて、ヒータHt1,Ht2を制御する。たとえば、制御装置40は、PID制御を用いてヒータHt1,Ht2を制御する。これにより、制御装置40は、目標温度と温度センサSr1,Sr2の検出値との差に応じたヒータHt1,Ht2のデューティ比を決定することができる。
【0061】
なお、制御装置40は、PID制御ではなく、温度センサSr1の検出温度が目標温度よりも小さい場合は、ヒータHt1のデューティ比を大きくし、温度センサSr1の検出温度が目標温度よりも大きい場合は、ヒータHt1のデューティ比を小さくしてもよい。同様に、制御装置40は、温度センサSr2の検出温度が目標温度よりも小さい場合は、ヒータHt2のデューティ比を大きくし、温度センサSr2の検出温度が目標温度よりも大きい場合は、ヒータHt2のデューティ比を小さくしてもよい。
【0062】
グラフG2における線D1,D2は、実施の形態1におけるヒータHt1,Ht2のデューティ比をそれぞれ示す。一方で、線Dz1,Dz2は、比較例におけるヒータHt1,Ht2のデューティ比をそれぞれ示す。
【0063】
続いて、図4における比較例の線Tz1,Dz1に着目する。ヒートパイプH1を有さない比較例において、温度センサSr1,Sr2の検出温度が目標温度に近づくにつれて、制御装置40は、ヒータHt1,Ht2のデューティ比を低下させるように制御する。すなわち、制御装置40は、目標温度に到達したときに、目標温度を維持するためにデューティ比を低下させる。
【0064】
目標温度を上回った後、グラフG1の線Tz1に示されるように、比較例の温度センサSr1の検出温度には、大きなオーバーシュートが発生する。これは、上述したように、ヒータHt1によって加熱される領域Rg1は熱が放出されにくい領域であるためである。
【0065】
温度センサSr1の検出温度が目標温度を大きく上回ったことによって、線Dz1に示されるように、制御装置40はヒータHt1のデューティ比が0%となる状態を継続させる。すなわち、ヒータHt1には電力が供給されなくなる。しかし、領域Rg1は熱が放出されにくい領域であるため、比較例では、温度センサSr1の検出温度を目標温度まで低下させることができず、目標温度よりも高い状態が維持されてしまう。目標温度よりも高い状態が維持されると、断熱カバーC1内において過昇温が発生し得る。
【0066】
続いて、実施の形態1の線T1,D1に着目する。ヒートパイプH1を有する実施の形態1において、温度センサSr1の検出温度が目標温度を上回った後に、線T1におけるオーバーシュートは線Tz1におけるオーバーシュートよりも小さい。これは、ヒートパイプH1によって、領域Rg1の熱が領域Rg2へと伝達されるためである。これにより、実施の形態1では、温度センサSr1の検出温度が目標温度へと制御されるタイミングが比較例よりも早くなり、目標温度よりも高い状態が維持されることを抑制することができる。
【0067】
図5は、温度センサSr1,Sr2の検出温度とヒータHt1,Ht2のデューティ比とを示す第2図である。図5の上段には、温度センサSr1,Sr2の検出温度を示すグラフG3が示されており、図5の下段には、ヒータHt1,Ht2のデューティ比を示すグラフG4が示されている。グラフG3とグラフG4とは、横軸の時間軸を共有している。
【0068】
図5の例では、シリンダ22の目標温度として350℃が設定されている。シリンダ22には、比較的高い目標温度が設定されている。図5では、シリンダ22に比較的高い目標温度が設定された場合に生じる温度不足の発生を、実施の形態1の射出成形機100によって抑制できることを説明する。
【0069】
図5における比較例の線Tz2,Dz2に着目する。ヒートパイプH1を有さない比較例において冷却装置R1の駆動、射出材料の種類変更などの外的要因によって、領域Rg2の温度が低下し得る。すなわち、温度センサSr1,Sr2の検出温度は目標温度よりも小さくなる。これにより、制御装置40は、ヒータHt1,Ht2のデューティ比を上昇させるように制御する。図5の例では、線Tz2に示される温度センサSr2の検出温度の低下に伴い、制御装置40は、ヒータHt2のデューティ比を最大値(100%)まで上昇させた状態を継続させる。
【0070】
しかしながら、比較例では、冷却装置R1の駆動などの外的要因によって断熱カバーC1内の熱が端部P1から放出されてしまうため、端部P1に近い領域Rg2の温度を目標温度まで上昇させることができず、温度不足の状態が維持されてしまう。
【0071】
続いて、実施の形態1の線T2,D2に着目する。ヒートパイプH1を有する実施の形態1において、温度センサSr2の検出温度が低下した後、線Tz2と異なって、早いタイミングで目標温度へと収束する。これは、ヒートパイプH1によって、領域Rg1の熱が領域Rg2へと伝達されるためである。これにより、線T2に示されるように、実施の形態1では、温度センサSr2の検出温度が比較例よりも早く目標温度へと制御され、領域Rg2において温度が不足した状態が維持されることを抑制することができる。
【0072】
<制御例1>
図2~5にて、ヒートパイプH1を用いて、熱が放出されにくい領域Rg1の熱を、熱が放出されやすい領域Rg2へと伝達する構成について説明した。しかしながら、ヒートパイプH1によって領域Rg1の温度が過剰に低下するか、もしくは、領域Rg2の温度が過剰に上昇してしまうことが考えられる。図6,7では、領域Rg1の温度が過剰な低下または領域Rg2の温度の過剰な上昇が発生した場合に、ヒートパイプH1による熱的な接続を遮断するための処理を説明する。
【0073】
図6は、ヒートパイプH1による熱的な接続を遮断する制御の第1例を示す。図6に示されるフローチャートは、制御装置40がアクセス可能な記憶装置によってプログラムとして記憶されている。制御装置40は、射出成形機100によって射出成形処理が実行されている間、図6に示されるフローチャートの実行を繰り返す。
【0074】
制御装置40は、領域Rg1の温度を検出する温度センサSr1の検出温度を取得する(ステップS101)。制御装置40は、領域Rg2の温度を検出する温度センサSr2の検出温度を取得する(ステップS102)。制御装置40は、ステップS101にて取得した温度センサSr1の検出温度を第1基準値と比較し、ステップS102にて取得した温度センサSr2の検出温度を第2基準値と比較する。
【0075】
第1基準値は、たとえば、領域Rg1に設定された温度の下限値である。なお、第1基準値は、領域Rg1に設定された温度の下限値から所定の温度だけ高い温度であってもよい。また、第2基準値は、たとえば、領域Rg2に設定された温度の上限値である。なお、第2基準値は、領域Rg2に設定された温度の上限値から所定の温度だけ低い温度であってもよい。ヒートパイプH1は、領域Rg1から領域Rg2へと熱を伝達するために設けられているため、第1基準値は、第2基準値よりも高い温度である。
【0076】
第1基準値は、領域Rg1に熱不足が生じる虞がある温度である。第2基準値は、領域Rg2の過昇温が生じる虞がある温度である。第1基準値、第2基準値は、目標温度に応じて定められる。制御装置40は、温度センサSr1の検出温度が第1基準値を下回ったか、または、温度センサSr2の検出温度が第2基準値を上回ったかを判定する(ステップS103)。
【0077】
温度センサSr1の検出温度が第1基準値を下回った場合、または、温度センサSr2の検出温度が第2基準値を上回った場合(ステップS103でYES)、制御装置40は、領域Rg1と領域Rg2とのヒートパイプH1による熱的な接続の遮断処理を実行する(ステップS104)。温度センサSr1の検出温度が第1基準値を下回っておらず、かつ、温度センサSr2の検出温度が第2基準値を上回っていない場合(ステップS103でNO)、制御装置40は、処理を終了する。
【0078】
以下、ステップS104におけるヒートパイプH1による熱的な接続の遮断処理について説明する。ステップS104の熱的な接続の遮断処理は、上述にて説明したヒートパイプH1に設けられているアクチュエータAR1,AL1を駆動させる処理である。アクチュエータAR1,AL1の駆動によって、ヒートパイプH1は、放熱板B1または放熱板B2と非接触の状態となる。これにより、ヒートパイプH1の熱的な接続は遮断される。すなわち、領域Rg1の熱は、領域Rg2へと伝達されなくなる。これによって、射出成形機100は、ユーザの作業負担を発生させることなく、領域Rg1と領域Rg2との熱的な接続を遮断できる。なお、アクチュエータAR1,AL1は、ヒートパイプH1における流路内に設けられた切換装置を駆動することによって、ヒートパイプH1における作動流体の循環を停止させてもよい。
【0079】
また、ステップS104の熱的な接続の遮断処理は、たとえば、ヒートパイプH1を取り外すべき旨を報知する処理であってもよい。具体的には、制御装置40は、表示装置31、図示されないスピーカ、表示灯などを用いて、ユーザにヒートパイプH1を取り外すべき旨を報知する。これにより、射出成形機100では、ヒートパイプH1が配置されていることによって、領域Rg1の温度不足、領域Rg2の過昇温が生じ得ることを外部に報知することができる。
【0080】
ステップS104の熱的な接続の遮断処理は、遮断回路によって遮断する処理またはユーザにヒートパイプH1を取り外すべき旨を報知する処理のいずれであってもよいし、両方が同時に行われてもよい。なお、温度センサSr1は、本開示における「第1温度センサ」の一例である。温度センサSr1は、本開示における「第2温度センサ」の一例である。
【0081】
<制御例2>
図6にて、温度センサSr1,Sr2の検出温度と第1基準値、第2基準値とをそれぞれ比較することによって遮断処理を実行する制御例を説明した。図7では、冷却装置R1の消費電力に基づいて遮断処理を実行する制御例を説明する。
【0082】
上述したように、制御装置40は、冷却装置R1の出力を調整可能であり、冷却装置R1の冷却水の温度を検出する温度センサSr4の検出温度に応じて、冷却装置R1の出力を調整する。すなわち、冷却水の温度が上昇する場合、制御装置40は冷却装置R1の出力を上げ、冷却水の温度が低下する場合、制御装置40は冷却装置R1の出力を下げる。冷却装置R1の出力が上がると、冷却装置R1に消費される電力は増大してしまう。
【0083】
図7は、ヒートパイプH1による熱的な接続を遮断する制御の第2例を示す。図7に示されるフローチャートは、制御装置40がアクセス可能な記憶装置によってプログラムとして記憶されている。制御装置40は、射出成形機100によって射出成形処理が実行されている間、図7に示されるフローチャートの実行を繰り返す。
【0084】
制御装置40は、冷却装置R1の消費電力を取得する(ステップS201)。すなわち、制御装置40は、冷却装置R1の出力を取得する。冷却装置R1の出力は、冷却水を循環させるためのモータの回転数などによって定められる。
【0085】
制御装置40は、冷却装置R1の消費電力が予め定められた閾値を上回るか否か判定する(ステップS202)。予め定められた閾値を上回る場合(ステップS202でYES)、制御装置40は、図6にて説明したステップS104と同様に、ヒートパイプH1による熱的な接続の遮断の処理を実行する(ステップS203)。予め定められた閾値を上回らない場合(ステップS202でNO)、制御装置40は、処理を終了する。
【0086】
これにより、実施の形態1の射出成形機100では、ヒートパイプH1により領域Rg2の温度が過剰に上昇し冷却装置R1にて消費される電力が増大した場合、熱的な接続の遮断処理を実行することができる。
【0087】
[実施の形態2]
以下では、図8を用いて実施の形態2における射出成形機について説明する。図8は、実施の形態2における断熱カバーC1およびシリンダ22の構造を説明するための図である。なお、実施の形態2において、実施の形態1と同様の構成について説明を繰り返さない。
【0088】
図8(A)は、実施の形態2におけるX軸の負方向側から視たときの断熱カバーC1およびシリンダ22の断面図である。図8(B)は、実施の形態2におけるZ軸の正方向側から視たときの断熱カバーC1およびシリンダ22を示す図である。図8(B)における線II-IIは、図8(A)に示される断面の位置を示している。
【0089】
実施の形態2においては、ヒートパイプHR1,HL1に加えて、ヒートパイプHR2,HL2を有する。以下では、ヒートパイプHR2,HL2を、総称して「ヒートパイプH2」と称する。なお、ヒートパイプH2は、ヒートパイプH1と同様に、4つのヒートパイプを含んでもよいし、5つ以上のヒートパイプを含んでもよい。
【0090】
実施の形態2の射出成形機100では、ヒートパイプH2を用いて、領域Rg1と領域Rg1よりも端部P2に近い領域Rg3とを熱的に接続し、領域Rg1の熱を領域Rg3へと伝達する。領域Rg1は、領域Rg3よりも中心点Mp1に近い領域である。図8に示されるように、領域Rg3は、領域Rg1よりも射出ノズル26に近い領域である。そのため、領域Rg3の熱は、端部P2を介して射出ノズル26と熱交換してしまうことにより、放出されやすい。領域Rg3には、放熱板B3,ヒータHt3が配置されている。また、射出成形機100は、領域Rg3の温度を検出する温度センサSr3をさらに備える。
【0091】
図8に示されるように、実施の形態2の射出成形機100では、断熱カバーC1の内部において、熱が放出されにくい領域Rg1と、熱が放出されやすい領域Rg3とがヒートパイプH2によって熱的に接続されている。つまり、実施の形態2の射出成形機100は、ヒートパイプH2を備えることによって、最も熱が放出されにくい中心点Mp1を含む領域Rg1の温度を低下させ、端部P2の近傍であって領域Rg1よりも熱が放出されやすい領域Rg3の温度を上昇させることができる。これにより、断熱カバーC1内部におけるヒータHt1~Ht3によって加熱される各領域の温度を、各々が設定された目標温度に近づけることが可能となり、実施の形態2の射出成形機100では、シリンダ22を覆う断熱カバーC1内部において、過昇温が生じることを抑制できる。
【0092】
なお、ヒートパイプH2は、本開示における「第2ヒートパイプ」の一例である。領域Rg3は、本開示における「第3領域」の一例である。
【0093】
図9は、実施の形態2におけるヒートパイプH1,H2による熱的な接続を遮断する制御例を示す。制御装置40は、射出成形機100によって射出成形処理が実行されている間、図9に示されるフローチャートの実行を繰り返す。
【0094】
制御装置40は、領域Rg1の温度を検出する温度センサSr1の検出温度を取得する(ステップS301)。制御装置40は、領域Rg2の温度を検出する温度センサSr2の検出温度を取得する(ステップS302)。制御装置40は、領域Rg3の温度を検出する温度センサSr3の検出温度を取得する(ステップS303)。制御装置40は、図6のステップS101と同様に、ステップS301にて取得した温度センサSr1の検出温度を第1基準値と比較する。
【0095】
制御装置40は、温度センサSr1の検出温度が第1基準値を下回ったか否かを判定する(ステップS304)。温度センサSr1の検出温度が第1基準値を下回った場合(ステップS304でYES)、制御装置40は、ヒートパイプH1,H2による熱的な接続の遮断処理を実行する(ステップS305)。これにより、実施の形態2の射出成形機100は、領域Rg1が温度不足となることを抑制できる。温度センサSr1の検出温度が第1基準値を下回っていない場合(ステップS304でNO)、制御装置40は、ステップS302にて取得した温度センサSr2の検出温度を第2基準値と比較する。すなわち、制御装置40は、温度センサSr2の検出温度が第2基準値を上回ったか否かを判断する(ステップS306)
温度センサSr2の検出温度が第2基準値を上回った場合(ステップS306でYES)、制御装置40は、ヒートパイプH1による熱的な接続の遮断処理を実行する(ステップS307)。これにより、実施の形態2の射出成形機100は、領域Rg2において過昇温が発生することを抑制できる。温度センサSr2の検出温度が第2基準値を下回っていない場合(ステップS306でNO)、制御装置40は、ステップS303にて取得した温度センサSr3の検出温度を第3基準値と比較する。
【0096】
第3基準値は、たとえば、領域Rg3に設定された温度の上限値である。なお、第3基準値は、領域Rg3に設定された温度の上限値から所定の温度だけ低い温度であってもよい。ヒートパイプH2は、領域Rg1から領域Rg3へと熱を伝達するために設けられているため、第1基準値は、第3基準値よりも高い温度である。
【0097】
制御装置40は、温度センサSr3の検出温度が第3基準値を上回ったか否かを判断する(ステップS308)。温度センサSr3の検出温度が第3基準値を上回った場合(ステップS308でYES)、制御装置40は、ヒートパイプH2による熱的な接続の遮断処理を実行する(ステップS309)。これにより、実施の形態2の射出成形機100は、領域Rg2において過昇温が発生することを抑制できる。温度センサSr3の検出温度が第3基準値を下回っていない場合(ステップS308でNO)、制御装置40は、処理を終了する。このように、図6にて説明した制御例は、温度センサSr3の検出値を考慮することによって実施の形態2の構成に対しても適用可能である。なお、図7にて説明した制御例は、実施の形態2の構成に対して、図7と同様のフローチャートをそのまま適用可能である。
【0098】
[実施の形態3]
以下では、図10を用いて実施の形態3における射出成形機について説明する。図10は、実施の形態3における断熱カバーC1およびシリンダ22の構造を説明するための図である。なお、実施の形態3において、実施の形態1,2と同様の構成について説明を繰り返さない。
【0099】
図10(A)は、実施の形態3におけるX軸の負方向側から視たときの断熱カバーC1およびシリンダ22の断面図である。図10(B)は、実施の形態3におけるZ軸の正方向側から視たときの断熱カバーC1およびシリンダ22を示す図である。図10(B)における線II-IIは、図10(A)に示される断面の位置を示している。
【0100】
実施の形態3の射出成形機100では、実施の形態1における領域Rg2の位置が異なる。図10に示されるように、領域Rg2は、領域Rg1よりも射出ノズル26に近い領域である。そのため、領域Rg2の熱は、端部P2を介して放出されやすい。
【0101】
実施の形態3の射出成形機100では、断熱カバーC1の内部において、熱が放出されにくい領域Rg1と、熱が放出されやすい領域Rg2とがヒートパイプH1によって熱的に接続されている。つまり、実施の形態3の射出成形機100は、ヒートパイプH1を備えることによって、最も熱が放出されにくい中心点Mp1を含む領域Rg1の温度を低下させ、端部P2の近傍であって領域Rg1よりも熱が放出されやすい領域Rg2の温度を上昇させることができる。これにより、断熱カバーC1内部におけるヒータHt1,Ht2によって加熱される各領域の温度を、各々が設定された目標温度に近づけることが可能となり、実施の形態3の射出成形機100では、シリンダ22を覆う断熱カバーC1内部において、過昇温が生じることを抑制できる。
【0102】
なお、実施の形態3において、ヒートパイプH1は、本開示における「第1ヒートパイプ」の一例である。領域Rg1は、本開示における「第1領域」の一例である。領域Rg2は、本開示における「第2領域」の一例である。
【0103】
[付記]
上述した複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0104】
(第1項) 本開示における射出成形機は、外部から供給された射出材料を混練し、混練された射出材料を外部へと供給するシリンダと、シリンダの側面を覆い、第1端部および第2端部を有する断熱カバーと、断熱カバーとシリンダとの間に配置され、シリンダの第1領域を加熱するヒータと、第1領域と、第1領域と異なるシリンダの第2領域とを熱的に接続する第1ヒートパイプとを備え、第1領域は、第2領域よりも第1端部と第2端部との間の中心点に近い領域である。
【0105】
第1項に記載の射出成形機100によれば、シリンダを覆う断熱カバー内部において、過昇温が生じることを抑制できる。つまり、断熱カバーによって熱が集中しやすい第1領域の熱を、熱が放出されやすい第2領域へと伝達することが可能となり、第1領域の過昇温を抑制できる。
【0106】
(第2項) 第1項に係る射出成形機は、シリンダに供給される射出材料を冷却する冷却装置をさらに備え、第2領域は、第1領域よりも、冷却装置に近い領域である。
【0107】
第2項に記載の射出成形機100によれば、冷却装置によって熱が放出されやすい第2領域の温度不足が発生することを抑制できる。
【0108】
(第3項) 第1項に係る射出成形機は、混練された射出材料を金型へと注入するノズルをさらに備え、第2領域は、第1領域よりも、ノズルに近い領域である。
【0109】
第3項に記載の射出成形機100によれば、ノズルによって熱が放出されやすい第2領域の温度不足が発生することを抑制できる。
【0110】
(第4項) 第2項に係る射出成形機は、混練された射出材料を金型へと注入するノズルと、断熱カバー内における第3領域と第1領域とを熱的に接続する第2ヒートパイプとをさらに備え、第3領域は、第1領域よりもノズルに近い領域であり、第1領域は、第3領域よりも中心点に近い領域である。
【0111】
第4項に記載の射出成形機100によれば、冷却装置によって熱が放出されやすい第2領域、ノズルによって熱が放出されやすい第3領域の温度不足が発生することを抑制できる。
【0112】
(第5項) 第1項~第4項のいずれか1項に係る射出成形機は、第1領域の温度を検出する第1温度センサと、第2領域の温度を検出する第2温度センサと、第1温度センサおよび第2温度センサと接続された制御装置とをさらに備え、制御装置は、第1温度センサの検出温度を取得し、第2温度センサの検出温度を取得し、第1温度センサの検出温度が第1基準値を下回った場合、または、第2温度センサの検出温度が第2基準値を上回った場合、第1ヒートパイプによる第1領域と第2領域との熱的な接続の遮断処理を実行し、第1基準値は、第2基準値よりも高い温度である。
【0113】
第5項に記載の射出成形機100によれば、第1温度センサ、第2温度センサの検出温度が閾値を超えたとき、ヒートパイプを遮断すべき状態であることを検出して、遮断処理を実行できる。
【0114】
(第6項) 第4項に記載の射出成形機は、第1領域の温度を検出する第1温度センサと、第2領域の温度を検出する第2温度センサと、第3領域の温度を検出する第3温度センサと、第1温度センサ、第2温度センサおよび第3温度センサと接続された制御装置とをさらに備える。制御装置は、第1温度センサの検出温度を取得し、第2温度センサの検出温度を取得し、第3温度センサの検出温度を取得し、第1温度センサの検出温度が第1基準値を下回った場合、第1ヒートパイプによる第1領域と第2領域との熱的な接続の遮断処理および第2ヒートパイプによる第1領域と第3領域との熱的な接続の遮断処理を実行し、第2温度センサの検出温度が第2基準値を上回った場合、第1ヒートパイプによる第1領域と第2領域との熱的な接続の遮断処理を実行し、第3温度センサの検出温度が第3基準値を上回った場合、第2ヒートパイプによる第1領域と第3領域との熱的な接続の遮断処理を実行し、第1基準値は、第2基準値および第3基準値よりも高い温度である。
【0115】
第6項に記載の射出成形機100によれば、第1温度センサ~第3温度センサの検出温度が閾値を超えたとき、2つのヒートパイプのうちの少なくとも1つを遮断すべき状態であることを検出して、遮断処理を実行できる。
【0116】
(第7項) 第2項に係る射出成形機は、冷却装置の消費電力を取得し、冷却装置の出力を調整する制御装置をさらに備え、制御装置は、冷却装置の消費電力が予め定められた閾値を上回った場合、第1ヒートパイプによる第1領域と第2領域との熱的な接続の遮断処理を実行する。
【0117】
第7項に記載の射出成形機100によれば、ヒートパイプによって第2領域の温度が過度に上昇した場合に、冷却装置の消費電力から第2領域の過度な温度上昇を検出して、ヒートパイプによる熱の伝達の遮断処理を実行することができる。
【0118】
(第8項) 第5項~第7項のいずれか1項に係る射出成形機において、遮断処理は、第1ヒートパイプを取り外すべき旨を報知する処理である。
【0119】
第8項に記載の射出成形機100によれば、ユーザにヒートパイプの取り外すべき旨を報知できる。
【0120】
(第9項) 第5項~第7項のいずれか1項に係る射出成形機において、第1ヒートパイプの配置を変更させるアクチュエータをさらに備え、遮断処理は、アクチュエータによって第1ヒートパイプの配置が変更されて第1領域と第2領域との熱的な接続が遮断される。
【0121】
第9項に記載の射出成形機100によれば、ユーザの作業負担を生じさせずに自動でヒートパイプの流路を遮断できる。
【0122】
(第10項) 第1項~第9項のいずれか1項に係る射出成形機は、第1領域に配置された第1放熱体と、第2領域に配置された第2放熱体とをさらに備え、第1ヒートパイプは、第1放熱体を介して第1領域と熱的に接続し、第2放熱体を介して第2領域と熱的に接続する。
【0123】
第10項に記載の射出成形機100によれば、放熱体を用いることにより、第1領域と第2領域との間における効率的な熱の伝達を促進できる。
【0124】
(第11項) 第1項~第10項のいずれか1項に係る射出成形機は、第1領域と第2領域とを熱的に接続する第3ヒートパイプをさらに備える。
【0125】
第11項に記載の射出成形機100によれば、複数のヒートパイプを用いることにより、第1領域と第2領域との間における効率的な熱の伝達を促進できる。
【符号の説明】
【0126】
10 型締装置、11 ベッド、12 固定盤、13 型締ハウジング、14 可動盤、15 タイバー、16 型締機構、17,18 金型、19 ボールねじ、20 射出装置、21 基台、22 シリンダ、23 スクリュ、24 駆動機構、25 ホッパ
26 射出ノズル、27 ノズルタッチ装置、30 操作盤、31 表示装置、32 入力装置、40 制御装置、80A~80D サーボモータ、100 射出成形機、AR1,AR2,AL1,AL2 アクチュエータ、Ax 回転軸、B1~B3 放熱板、C1 断熱カバー、D1,D2,Dz1,Dz2,T1,T2,Tz1,Tz2 線、G1~G4 グラフ、H1,H2,HD1,HL1,HL2,HR1,HR2,HU1 ヒートパイプ、Ht1~Ht3 ヒータ、Mp1 中心点、P1,P2 端部、R1 冷却装置、Rg1~Rg3 領域、Sr1~Sr4 温度センサ、U1 凹部。
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