IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社熊谷組の特許一覧

特開2024-83761車両の自動走行方法及び車両の自動走行システム
<>
  • 特開-車両の自動走行方法及び車両の自動走行システム 図1
  • 特開-車両の自動走行方法及び車両の自動走行システム 図2
  • 特開-車両の自動走行方法及び車両の自動走行システム 図3
  • 特開-車両の自動走行方法及び車両の自動走行システム 図4
  • 特開-車両の自動走行方法及び車両の自動走行システム 図5
  • 特開-車両の自動走行方法及び車両の自動走行システム 図6
  • 特開-車両の自動走行方法及び車両の自動走行システム 図7
  • 特開-車両の自動走行方法及び車両の自動走行システム 図8
  • 特開-車両の自動走行方法及び車両の自動走行システム 図9
  • 特開-車両の自動走行方法及び車両の自動走行システム 図10
  • 特開-車両の自動走行方法及び車両の自動走行システム 図11
  • 特開-車両の自動走行方法及び車両の自動走行システム 図12
  • 特開-車両の自動走行方法及び車両の自動走行システム 図13
  • 特開-車両の自動走行方法及び車両の自動走行システム 図14
  • 特開-車両の自動走行方法及び車両の自動走行システム 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083761
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】車両の自動走行方法及び車両の自動走行システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20240617BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20240617BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20240617BHJP
【FI】
G08G1/09 Q
G08G1/00 X
G05D1/02 P
G05D1/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197758
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】北原 成郎
(72)【発明者】
【氏名】古川 敦
(72)【発明者】
【氏名】天下井 哲生
(72)【発明者】
【氏名】畑本 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】飛鳥馬 翼
(72)【発明者】
【氏名】竹下 嘉人
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕
【テーマコード(参考)】
5H181
5H301
【Fターム(参考)】
5H181AA07
5H181AA15
5H181AA27
5H181FF05
5H181FF13
5H181FF14
5H301AA01
5H301AA10
5H301BB05
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD01
5H301DD06
5H301DD07
5H301DD15
5H301KK03
5H301KK04
5H301KK08
5H301KK09
5H301KK19
5H301LL01
5H301LL03
5H301LL06
(57)【要約】
【課題】走行路に片側交互通行区間がある場合でも、複数台の車両を所定の経路に沿って、安全に、かつ、効率よく自走させる。
【解決手段】第1の作業場所を始点とし、前記第1の作業場所とは異なる第2の作業場所を終点とする往路と、前記第2の作業場所を始点とし前記第1の作業場所を終点とする、前記往路と少なくとも一つの片側交互通行区間を共有する復路とを備えた走行路を走行する複数の車両を自動走行させるにおいて、前記走行路を複数のマス目に分割するとともに、前記マス目に、当該マス目を走行する車両の予約の優先順位を所定時間ごとに設定し、前記複数の車両を前記マス目のうちの当該車両の走行が予約されたマス目のみを走行可能とした。また、前記走行路を走行する複数の車両を予め指定された車両のみとした。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の作業場所を始点とし、前記第1の作業場所とは異なる第2の作業場所を終点とする往路と、前記第2の作業場所を始点とし前記第1の作業場所を終点とする、前記往路と少なくとも一つの片側交互通行区間を共有する復路とを備えた走行路を走行する複数の車両を自動走行させる方法であって、
前記走行路を走行する複数の車両は予め指定された車両のみであり、
前記走行路は複数のブロックに分割され、
前記ブロックには、当該ブロックを走行する車両の予約の優先順位が所定時間ごとに設定され、
前記複数の車両は前記ブロックのうちの当該車両の走行が予約されたブロックのみ走行可能であることを特徴とする車両の自動走行方法。
【請求項2】
前記片側交互通行区間の一端側のブロックが予約された場合には、他端側のブロックの、前記ブロックを予約した車両の走行方向とは反対側に走行する車両の予約を禁止することを特徴とする請求項1に記載の車両の自動走行方法。
【請求項3】
前記ブロックの大きさが前記車両の大きさよりも小さいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両の自動走行方法。
【請求項4】
第1の作業場所を始点とし、前記第1の作業場所とは異なる第2の作業場所を終点とする往路と、前記第2の作業場所を始点とし前記第1の作業場所を終点とする、前記往路と少なくとも一つの片側交互通行区間を共有する復路とを備えた走行路を走行する複数の車両と、前記複数の車両を自動走行させる自動走行制御装置とを備えた車両の自動走行システムであって、
前記複数の車両は、
当該車両の現在位置と走行速度とを取得する現位置取得手段と、前記取得された当該車両の現在位置と走行速度とを前記自動走行制御装置に送信する送信手段と、走行手段とを備え、
前記自動走行制御装置は、
前記送信された各車両の現在位置と走行速度とを受信する受信機と、
前記第1及び第2の作業場所と前記走行路とを含み、かつ、前記走行路が前記車両のうちの一台の車両のみが走行可能な複数のブロックに分割された地図と、当該ブロックを走行する車両の予約の優先順位を所定時間ごとに設定した予約テーブルと、前記受信された各車両の現在位置とを保存する記憶手段と、
前記送信された各車両の現在位置に基づいて、前記当該ブロックを走行する車両を時間ごとに予約した予約表を作成するとともに、前記ブロックを予約する車両の優先順位を設定する作成する予約表作成手段と、
前記各ブロックの予約状態を前記各車両に送信する送信手段と、
前記複数の車両の走行手段を制御して、前記複数の車両を、前記車両の走行が予約されたブロックを走行させる走行制御手段と、を備え
ることを特徴とする車両の自動走行システム。
【請求項5】
前記片側交互通行区間の一端側のブロックが予約された場合には、他端側のブロックの、前記ブロックを予約した車両の走行方向とは反対側に走行する車両の予約を禁止することを特徴とする請求項4に記載の車両の自動走行システム。
【請求項6】
前記第1の作業場所と前記第2の作業場所のいずれか一方または両方を複数設けたことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の車両の自動走行システム。
【請求項7】
前記複数の車両の各々に対して始点と終点とをそれぞれ設定することを特徴とする請求項6に記載の自動走行システム。
【請求項8】
前記往路と復路のいずれか一方または両方に迂回路を設けたことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の自動走行システム。
【請求項9】
前記往路と復路のいずれか一方または両方を複数としたことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の車両の自動走行システム。
【請求項10】
前記複数の車両に障害物検知装置を設けるとともに、
前記走行制御手段は障害物を検知した車両を停車させることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の車両の自動走行システム。
【請求項11】
前記複数の車両において、前記現位置取得手段で求めた前記車両の速度が予め設定された最大速度を超えた場合には、
前記走行制御手段は前記最大速度を超えた車両の速度を前記最大速度以下に低減させることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の車両の自動走行システム。
【請求項12】
前記複数の車両に慣性計測用のセンサーを設けるとともに、
前記現位置取得手段と前記慣性計測用のセンサーとを用いて算出された車両の進行方向と、前記車両の現在位置における前記走行路の延長方向とのなす角度が予め設定された角度を超えた場合には、
前記走行制御手段は前記車両を一時停止させるとともに、前記車両の進行方向が前記走行路の延長方向になるように前記車両を制御することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の車両の自動走行システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数台の車両を自動走行させる方法とそのシステムとに関するもので、特に、往路と復路とが少なくとも一つの1車線の区間を共有する走行路を走行させる車両の自動走行方法及び車両の自動走行システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボットを、障害物を回避しながら「既定の経路」に沿って最適な経路を生成しつつ自律的に移動させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、まず、ロボットの現在位置から目的地までのパスを複数のサブゴールをつなぐ折れ線で表すとともに、ロボットの走行距離、走行方向と、ロボットに搭載されたステレオビジョンセンサで観測した周囲の状況とからロボットの現在位置を推定した後、ロボットの走行領域(フィールド)のグリッドマップとステレオビジョンセンサで観測した障害物の情報とを重ね合わせた統合マップを作成する。そして、統合マップ上で仮想ロボットを、障害物を回避させながら移動させて得られた複数のパスの中からAスターの探索方法を利用して最適なパスを選択し、この選択された最適パスの通過点の点列に沿ってロボットを移動させることで、ロボットを効率よく移動させることができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-249632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の方法では、フィールド内の移動ロボットが複数台である場合には、ロボット毎に最適パスの演算を行う必要があるだけでなく、ロボット同士の衝突を避ける必要があるため演算量が階乗的に増加してしまう、といった問題点があった。
また、複数台の車両の停車、進行などの司令を1つの管理装置で集中管理すると、車両の制御が進歩しても管理装置の処理性能で使用台数の上限が決定される問題があった。
しかしながら、人間社会の交通システムの様に、人が信号機や道路標識を見て認識し解釈して、判断する方法の交通管理情報を参照するシステムであれば、管理装置は信号機と標識のみ管理するため管理装置の演算性能に左右されない車両数をフィールドに投入することが可能である。
また、特許文献1には、「片側交互通行区間エリア」におけるロボットの制御については言及されていない。「片側交互通行区間」とは走行路が一車線の区間で(イ)進行方向が同じ場合には追い抜きができない、(ロ)進行方向が異なる車両が同時にエリア内にいることがない、という制約がある。
特許文献1では、グリッドマップ上では、ロボットが1つのグリッドを占有しているが、上記の「既定の経路」は、ロボットの進行方向に直行する方向にある複数のグリッドもロボットが移動可能である。すなわち、ロボットは当該ロボットの進行方向とは反対方向から移動してきた他のロボットとすれ違ったり、障害物を避けるために進路を変更したりすることが可能である。
このように、特許文献1では、走行路として、片側交互通行区間を想定していない。
【0005】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、走行路に片側交互通行区間がある場合でも、複数台の車両を所定の経路に沿って、安全に、かつ、効率よく自走させる方法と車両の自動走行システムとを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1の作業場所を始点とし、前記第1の作業場所とは異なる第2の作業場所を終点とする往路と、前記第2の作業場所を始点とし前記第1の作業場所を終点とする、前記往路と少なくとも一つの片側交互通行区間を共有する復路とを備えた走行路を走行する複数の車両を自動走行させる方法であって、前記走行路を走行する複数の車両は予め指定された車両のみであり、前記走行路は複数のブロックに分割され、前記ブロックには、当該ブロックを走行する車両の予約の優先順位が所定時間ごとに設定され、前記複数の車両は、前記ブロックのうちの当該車両の走行が予約されたブロックのみ走行可能であることを特徴とする。
これにより、全体的な走行ルートの再計画は不要となり、車両が走行する方向の数~十数マス分の計画のみで複数の車両の走行を制御することができる。
したがって、走行路に片側交互通行区間がある場合でも、複数台の車両を所定の経路に沿って、安全に、かつ、効率よく自走させることが可能となる。
なお、第1の作業場所は第1の作業(例えば、廃棄する土砂を車両に積込むなどの作業)を行う場所を指し、前記第2の作業場所は第2の作業(例えば、運搬してきた土砂を廃棄する作業)を行う場所を指す。すなわち、本発明においては、第1の作業場所も第2の作業場所もそれぞれ複数あってもよい。
また、前記片側交互通行区間の一端側のブロックが予約された場合には、他端側のブロックの、前記ブロックを予約した車両の走行方向とは反対側に走行する車両の予約を禁止することで、片側交互通行区間のある走行路に対向車が入り込まないようにしたので、車両を効果的に走行させることができる。
また、前記ブロックの大きさを前記車両の大きさよりも小さくしたので、サイズの異なる車両が混在していたとしても、予約するマス目の数を制御することで対応できる。
【0007】
また、本発明は、第1の作業場所を始点とし、前記第1の作業場所とは異なる第2の作業場所を終点とする往路と、前記第2の作業場所を始点とし前記第1の作業場所を終点とする、前記往路と少なくとも一つの片側交互通行区間を共有する復路とを備えた走行路を走行する複数の車両と、前記複数の車両を自動走行させる自動走行制御装置とを備えた車両の自動走行システムであって、前記複数の車両は、当該車両の現在位置と走行速度とを取得する現位置取得手段と、前記取得された当該車両の現在位置と走行速度とを前記自動走行制御装置に送信する送信手段と、走行手段と、を備え、前記自動走行制御装置は、前記送信された各車両の現在位置と走行速度とを受信する受信機と、前記第1及び第2の作業場所と前記走行路とを含み、かつ、前記走行路が前記車両のうちの一台の車両のみが走行可能な複数のブロックに分割された地図と、当該ブロックを走行する車両の予約の優先順位を所定時間ごとに設定した予約テーブルと、前記受信された各車両の現在位置とを保存する記憶手段と、前記送信された各車両の現在位置に基づいて、前記当該ブロックを走行する車両を時間ごとに予約した予約表を作成するとともに、前記ブロックを予約する車両の優先順位を設定して作成する予約表作成手段と、前記各ブロックの予約状態を前記各車両に送信する送信手段と、前記複数の車両の走行手段を制御して、前記複数の車両を、前記車両の走行が予約されたブロックを走行させる走行制御手段と、を備えることを特徴とする。
このような構成を採ることで、走行路に片側交互通行区間がある場合でも、複数台の車両を所定の経路に沿って、安全に、かつ、効率よく自走させることができる車両の自動走行システムを得ることができる。
また、前記第1の作業場所と前記第2の作業場所のいずれか一方または両方を複数設けてもよい。この場合、前記複数の車両の各々に対して始点と終点とをそれぞれ設定するようにすれば、予約表の作成を容易にすることができる。
また、前記往路と復路のいずれか一方または両方に迂回路を設けたので、予め設定された往路または復路が、例えば、落石などにより通行できなくなった場合でも、車両の運行を継続できる。
また、前記往路と復路のいずれか一方または両方を複数とすれば、車両の台数を容易に増やすことが可能となり、作業効率が向上する。
また、本システムでは、車両はブロックの予約に基づき行動を制御するため、全車両を集中管理する必要がない。このため、ブロック管理のみをする演算装置と車両を制御する演算装置とを分離し、非同期で処理することが可能である。これにより、グリッド情報の車両台数の増加による車両台数上限を向上させることができる。
また、前記複数の車両に障害物検知装置を設けるとともに、前記走行制御手段は障害物を検知した車両を停車させるようにしたので、車両の走行安全性が更に向上した。
また、前記複数の車両において、前記現位置取得手段で求めた前記車両の速度が予め設定された最大速度を超えた場合には、前記走行制御手段は前記最大速度を超えた車両の速度を前記最大速度以下に低減させるようにしたので、車両が予約されたブロックを超えて走行することを防ぐことができる。
また、前記複数の車両に加速度センサーやジャイロセンサーなどの慣性計測用のセンサーを設けるとともに、前記現位置取得手段と前記慣性計測用のセンサーとを用いて算出された車両の進行方向(車両の姿勢)と、前記車両の現在位置における前記走行路の延長方向とのなす角度が予め設定された角度を超えた場合には、前記走行制御手段は前記車両を一時停止させるとともに、前記検知された車両の進行方向が前記走行路の延長方向になるように前記車両を制御するようにしたので、車両が走行路からはずれて走行することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る車両の自動走行システムを示す図である。
図2】仮想フィールドの分割方法の一例を示す図である。
図3】予約表の一例を示す図である。
図4】マス目の予約方法を示す図である。
図5】片側交互通行区間におけるマス目の予約方法を示す図である。
図6】本発明による車両の自動走行方法を示すフローチャートである。
図7】自動走行管理装置の処理フローを示すフローチャートである。
図8】車両システム動作フローを示すフローチャートである。
図9】予約表の監視方法を示すフローチャートである。
図10】片側交互通行区間のリストの編集方法を示すフローチャートである。
図11】片側交互通行区間における予約表の入れ替え例を示す図である。
図12】走行エリアの他の例を示す図である。
図13】グリッド情報の非同期処理の一例を示すフローチャートである。
図14】グリッド情報の非同期処理の他の例を示すフローチャートである。
図15】グリッド情報の非同期処理の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本実施形態に係る車両の自動走行システム100を示す図で、1は自動走行管理装置、2は車両、3は第1の作業場所としての土積込場、4は第2の作業場所としての土捨場、5は道路や橋などの車両2の走行が可能な走行エリア、6は車両2の走行が禁止されている走行禁止エリアである。走行禁止エリアには、山林6a、雑木林6b、建物6cなどがある。走行エリア5が本発明の走行路に相当する。
土積込場3は廃棄する土砂を車両2に積込む場所で、土捨場4は車両2が運搬してきた土砂を廃棄する場所で、いずれも、複数の車両2.2が十分にすれ違うことのできる広さを有している。
以下、土積込場3、土捨場4、走行エリア5、走行禁止エリア6を含む区域を車両2のサイズよりも小さな面積の複数のマス目に分割してモデル化したものを仮想フィールド7という。走行エリア5は車両2が走行可能な複数のマス目から成り、車両2が自律的に走行できる。なお、後述するように、マス目を走行可能なのは、予約された車両2(例えば、車両IDがAの車両;以下、車両Aという)のみで、予約されていない車両2(車両Bなど)は上記の予約されたマス目を走行することはできない。
土積込場3のマス目と土捨場4のマス目とは、車両2が自由に同行できるマス目である。なお、土積込場3と土捨場4での車両2の制御(土砂の積込み及び廃棄)は、本発明の走行制御とは別途に行うものとする。
走行エリア5は土積込場3から土捨場4へ向かう往路5Aと、土捨場4から土積込場3へ戻る復路5Bとを備えている。
また、本例の走行エリア5は、少なくとも1つの片側交互通行区間5Cを備えている。
片側交互通行区間5Cは、走行エリア5のうちの、往路5Aと復路5Bとが共有する1車線の区間で、同じ方向に走行する車両2は追抜きができず、また、互いに反対方向に走行する2台の車両2,2がすれ違うこともできない区間である。なお、本例では、往路5Aと復路5Bについてもそれぞれ1車線とした。
【0010】
自動走行管理装置1は、車両情報取得手段11と、グリッドマップ作成手段12と、グリッド情報更新手段13と、伝達事項更新手段14と、車両制御手段15と、問い合わせ処理手段16と、記憶手段17とを備える。グリッドマップ作成手段12~記憶手段17までの各手段は、ROMやRAMなどの記憶装置とマイクロコンピュータのプログラムとから構成される。
車両情報取得手段11は、各車両2から車両情報を取得する。ここで、車両情報は、車両2の位置情報や車両2に搭載された空間情報取得手段23により取得した障害物等の空間情報を指す。
グリッドマップ作成手段12は仮想フィールド構築部12aと、グリッド構築部12bと、グリッド情報付与部12cとを備え、仮想フィールドを、グリッド情報を有する複数のマス目から成るグリッドマップを作成する。
仮想フィールド構築部12aは、土積込場3、土捨場4、及び、走行エリア5を含む地図を読み込む。読み込まれた地図情報は、車両2の移動範囲全てを含むので、以下、仮想フィールドという。このとき、往路・復路のルート情報と、仮想フィールドを走行する車両2の台数や車種の情報も、地図情報と同時に読み込まれて記憶手段17に保存される。なお、車両2同士は車両番号(もしくは、車両ID)で区別される。
グリッド構築部12bは、図2に示すように、仮想フィールドをN本の縦グリッド線、及び、M本の横グリッド線で分割することで、仮想フィールドを複数のマス目sij(i=1~N,j=1~M)に分割する。本例では、異なる大きさの車両2が走行できるように、マス目sijの大きさを車両2の大きさよりも小さくした。以下、マス目sijの場所を特定しない場合には、符号sijを省略し、単に「マス目」という。
グリッド情報付与部12cは、マス目が属するエリア(往路5Aか、復路5Bか、片側交互通行区間5C)、マス目に勾配やぬかるみなどの路面状態などの当該マス目に関する情報(以下、グリッド情報という)を付与する。
マス目が属するエリアは、往路・復路のルート情報から決定される。一方、勾配は、予め走行エリア5に試験車両を走行させて得られたマス目の中心の3次元座標から得ることができる。また、ぬかるみなどは、試験車両に搭載したLiDAR(Light Detection And Ranging)等の空間情報取得手段により検出することができる。
グリッド情報としては、他に、後述する予約表、車両2の最大速度、マス目を予約した車両2の車両IDなどがあるが、これらは、後述するように、グリッド情報更新手段12により、車両2の走行開始後に追加される。
作成されたグリッドマップは記憶手段17に保存される。
なお、本例では、土積込場3、土捨場4、及び、走行禁止エリア6のマス目にはグリッド情報を付与しないようにしている。これにより、図2に示すように、i行j列目のマス目sijの成分は、網目模様を施した走行エリア5のマス目以外のマス目は値を有しない(暗示的に0という情報になる)、いわゆるスパースな構造となる。したがって、グリッドマップを保存する際には、DOK(Dictionary of keys)やLIL(List of lists)などの周知の格納方法を用いて非ゼロ要素のみを保存するようにすれば、メモリーの容量を大幅に削減できる。
【0011】
グリッド情報更新手段13は、予約時間設定部13aと、予約表作成部13bと、マス目予約部13cと、予約表監視部13dとを備え、各車両2から送られてくる位置情報に基づいて、各マス目のグリッド情報を更新して各車両に配信する。
予約時間設定部13aは、マス目に与えられる、車両2の予約が有効である時間幅(以下、予約時間という)を設定する。予約時間は車両2の車種により決定されるが、1分~3分とすることが好ましい。例えば、クローラキャリアなどの不整地運搬車の予約時間はダンプカーの予約時間よりも長く設定される。また、土砂を積載した車両2が走行する往路5Aでは予約時間を長くし、空車となった車両2が走行する復路5Bでは予約時間を短くしてもよい。
予約表作成部13bは、各マス目を走行する車両2を所定時間ごとに予約するとともに、予約する車両2に優先順位をつけた予約表を作成する。
図3はマス目sijにおける予約表の一例を示す図で、ここでは、マス目を通過する車両が、車両IDがA,B,Cの3台(以下、車両A,車両B,車両Cという)である場合を示した。ここで、tk,k+1は時間域tk≦tk,k+1で、1,2,3は優先順位(予約順位)を示す。このマス目sijでは、車両A,車両B,車両Cの順、すなわち、マス目sijに近い方の車両2の優先順位を高くする予約を行ったが、土砂を積載した車両Bの優先順位を、空車である車両A,車両Cの優先順位よりも高くしてもよい。
なお、優先順位が高い車両(ここでは、車両A)がマス目を通過するか、車両Aが当該マス目を予約してからの経過時間が予約時間設定部13aで設定された予約時間を超えると優先順位が変わる。
【0012】
マス目予約部13cは、各車両2から送られてくる、車両2の現在位置の位置情報と車両2周辺のグリッド情報とに基づいて、車両2毎に、車両2の進行方向前方の複数のマス目を予約する。
進行方向前方の複数のマス目とは、図4に示すマス目sk,1,sk+1,3,sk+2,2などの、網がけした複数のマス目si,jを指す。本例では、複数のマス目si,jを、車両2の進行方向垂直な方向に並んだ複数列(ここでは、Sk,Sk+1,Sk+2の3列)のマス目とした。この予約されたマス目si,jの総数を、以下、車両の移動可能保有値という。なお、上記の列数を移動可能保有値としてもよい。
ところで、図5(a)に示すように、片側交互通行区間5Cの往路5Aの側の端部のマス目(ブロックB1のマス目)が往路5Aを走行する車両Pに予約された場合、片側交互通行区間5Cの全てのマス目は車両Pに予約されるか、走行方向が車両Pの走行方向になる。このとき、復路5Bを走行する車両Qは片側交互通行区間5Cの復路5B側の端部のマス目(ブロックB2のマス目)を予約できない。すなわち、ブロックB2のマス目は、復路5Bを走行する車両Qに対しては、走行禁止エリアとなる。
図5(b)に示すように、復路5Bを走行する車両Qは、上記の車両Pが片側交互通行区間5Cの復路5B側の端部であるブロックB2を通過した後に、片側交互通行区間5Cを通過できる。この時には、上記のブロックB1は、往路5Aを走行する車両Pに対して走行禁止エリアとなる。
予約表監視部13dは、各マス目につき、予約表に予約されている車両2が、予約時間を超えて予約されているか否かを監視し、予約時間を超えている場合には、上記の車両2の予約を削除する。
【0013】
伝達事項更新手段14は、車両情報取得手段11が取得した車両2の位置情報や障害物等の空間情報を解析して、車両2へ伝達する伝達事項を作成し、これを全車両に伝達する。伝達事項は、例えば、ある区間で車間距離が短くなっているとか、ぬかるみがなくなっているなどの走行中の車両2に伝達する事項で、伝達事項更新手段14は、車両2の位置情報や空間情報を受け取るたびに伝達事項を更新する。
一方、伝達事項を受け取った車両2は、例えば、ぬかるみがなくなっている場合には、その区間での走行速度を上げるなど伝達事項に対応する。
車両制御手段15は、各車両2の走行制御手段26を制御して、各車両2を走行、もしくは停止させる。
問い合わせ処理手段16は、グリッド情報の要求や伝達事項の有無のなど車両2からの問い合わせを受理し、グリッド情報の要求や伝達事項を記憶手段17から取出して、車両2に送信する。
記憶手段17は、グリッドマップ17a、グリッド情報17b 伝達事項17cを保存する。グリッドマップ17a及びグリッド情報17bは一定時間ごとに更新される。
【0014】
図1に示すように、車両2は、走行手段21と、GPSなどの衛星を用いて当該車両2の位置情報を取得する位置情報取得手段22と、LiDAR等の障害物等の空間情報を取得する空間情報取得手段23と、位置情報取得手段22で取得された位置情報と空間情報取得手段23で取得された空間情報とを、自動走行管理装置1の車両情報取得手段11とに送信する送信機24と、自動走行管理装置1から送られてくるグリッド情報や走行制御信号を受信する受信機25と、受信機25で受信した車両制御手段15からの指令により、当該車両2の走行状態を制御する走行制御手段26と、を備え、土積込場3と土捨場4との間を、自動運転により往復する。
本例では、林道を整備した程度の、舗装がなされていない走路を安定して走行させるため、車両2として、走行手段21が無限軌道である不整地運搬車(クローラキャリア)等を用いている。
なお、符号27は土砂を積載するための荷台、24Aは送信アンテナ、25Aは受信アンテナである(GPSの受信アンテナについては省略した)。
【0015】
次に、本発明による車両の自動走行方法について、図6のフローチャートを参照して説明する。
始めに、マップ情報を読み込み(ステップS101)、この読み込んだマップ情報から往路と復路のルート情報を読み込む(ステップS102)。具体的には、往路5Aと復路5Bを構成するマス目の3次元座標とマス目に与える情報(以下、グリッド情報という)とを読み込む。
ところで、往路5Aと復路5Bを構成するマス目以外のマス目は、車両が走行できないエリア(走行禁止エリア)のマス目か、もしくは、車両が自由に走行できる、土砂の積み込み作業や積み下ろし作業を行うエリア(土積込場3と土捨場4)のマス目であるので、以下、「マス目」及び「グリッド情報」は、往路5Aと復路5Bを構成するマス目とそのグリッド情報のみを指すものとする。なお、土積込場3のエリアでの土砂の積込み作業と土捨場4のエリアでの土砂の積下ろし作業については、別途プログラムを作成して車両2を制御すればよい。
次に、マップのマス目に対して予約時間を設定する(ステップS103)。予約時間は、往路5Aと復路5Bとの共通区間である片側交互通行区間5Cを除いて一定としてもよい。また、急な上り坂などでは長めにしてもよい。
【0016】
次に、各車両2は自動走行を開始する(ステップS104)。
ステップS105では、各車両2の位置情報を取得する。具体的には、各車両2がGPSの情報に基づいて当該車両2の現在位置を算出し、算出した車両2の現在位置を自動走行管理装置1に送る。自動走行管理装置1では、各車両2に位置情報に基づき、各マス目を走行する車両2の優先順位を設定した予約表を作成するとともに、各車両2の走行方向前方のマス目を予約する(S106)。
なお、上記ステップS105及びステップS106の操作は、土積込場3を出発した最初の車両2が、土砂を積載して土捨場4を出発してから所定時間経過後に始めればよい。
自動走行管理装置1は、各車両2周辺の全てのマス目の予約が完了した後、この予約されたマス目の予約情報を各車両2に配信し(ステップS107)、各車両2は、この配信された予約情報に基づき、往路もしくは復路を移動する(ステップS108)。
次に、自動走行が終了したか否かを判定する(ステップS109)。
自動走行の終了は、例えば、土積込場3を最後に出発した車両2が土積込場3で土砂を積載して土積込場3に戻った時点とすればよい。
自動走行が終了していない場合には、自動走行を継続する(ステップS110)。
【0017】
次に、共通サーバーである自動走行管理装置1の処理フローについて、図7のフローチャートを参照して説明する。
始めに、仮想フィールドとグリッドの構築を行う(ステップS201)。このステップS201は、図のマップ情報の読み込み(ステップS101)とルート情報の読み込み(ステップS102)に相当する。マップ情報及びグリッド情報は記憶手段17に保存される。
仮想フィールドとグリッドの構築が終了すると、車両2からの問い合わせの受付を開始する(ステップS202)。
まず、問い合わせがあるか否かを判定する(ステップS203)。
問い合わせがなければ、問い合わせの受付を継続し、問い合わせがあれば、その問い合わせがグリッド情報の要求か否かを判定する(ステップS204)。
問い合わせがグリッド情報の要求である場合には、ステップS205に進み、問い合わせがグリッド情報の要求でない場合には、ステップS211に進む。
ステップS205では、グリッド情報を有するマス目の座標を受信した後、前記のグリッド情報の要求がグリッド情報取得要求か否かを判定する(ステップS206)。
グリッド情報の要求がグリッド情報取得要求である場合には、前記の座標を有するマス目のグリッド情報を問い合わせた車両2に送信する(ステップS207)。
グリッド情報の要求が取得要求でない場合には、ステップS208に進み、グリッド情報の要求がグリッド情報の変更要求か否かを判定する。グリッド情報の要求がグリッド情報の変更要求である場合には、変更要求のデータを解析した後、グリッド情報を更新し、この更新したグリッド情報を問い合わせた車両2に送信する(ステップS209)。
グリッド情報の要求が取得要求でも変更要求でもない場合には、受信した問い合わせが受信エラーであると判定してエラー対応(ステップS210)した後、ステップS202に戻り、車両2からの問い合わせの受付を継続する。
ステップS211では、問い合わせた車両2から全車両への伝達事項があるか否かを判定する。
伝達事項があれば伝達事項をデータ解析した後、全車両への伝達事項を更新(ステップS212)し、この更新された伝達事項は全車両へ送信される(ステップS213)。伝達事項の送信後には、ステップS202に戻り、車両2からの問い合わせの受付を継続する。また、グリッド情報の要求も伝達事項もない場合には、受信した問い合わせが受信エラーであると判定してエラー対応(ステップS210)した後、ステップS202に戻り、車両2からの問い合わせの受付を継続する。
【0018】
また、各車両2の動作を示す車両システム動作フローを図8に示す。
各車両2は、所定時間ごとに図示しない衛星からGPS情報を受信する(ステップS301)した後、自動走行管理装置1に全車両伝達事項があるか否かの問い合わせを行う(ステップS302)
次のステップS303で、全車両伝達事項があった場合には、伝達事項に対応(ステップS304)した後、受信したGPS情報を座標変換して当該車両2の現在位置を算出する(ステップS305)。また、全車両伝達事項がなかった場合には、ステップS305に進み、当該車両2の現在位置を算出する。
当該車両2の現在位置を算出後にはステップS306に進み、前記算出した現在位置と周辺のグリッドの座標を自動走行管理装置1に送信して、自動走行管理装置1から現在位置と周辺のグリッドのグリッド情報を取得する。
次に、ステップS306で取得したグリッド情報から当該車両2が安全か否かを判定する(ステップS307)。
安全でないと判定した場合には、車両2を停止(ステップS309)させた後、ステップS301に戻り、自動走行管理装置1からの伝達事項を待つ。
一方、安全であると判定した場合には、当該車両2の移動可能保有値を計算(ステップS308)した後、ステップS310に進む。
ステップS310では、車両2の進行方向前方の複数のグリッドの座標を自動走行管理装置1に送り、自動走行管理装置1から各グリッドのグリッド情報を取得する。
次に、この取得した情報から、進行方向前方の各グリッドの少なくとも1つを他車両2が占有しているか否かを判定する(ステップS311)。
上記のグリッドを他車両2が占有している場合には、車両2を停止(ステップS312)させた後、ステップS301に戻り、進行方向前方の各グリッドから他車両2が移動するまで待機する。進行方向前方の各グリッドを他車両2が占有していない場合には、進行方向前方の各グリッドのグリッド情報から当該車両2の移動可能保有値を更新する(ステップS313)。
そして、更新された移動可能保有値が予め設定された閾値k以上であるか否かを判定する(ステップS314)。更新された移動可能保有値がk未満である場合には、ステップS310に戻り、車両2の進行方向前方の複数のグリッドのグリッド情報を取得する。
更新された移動可能保有値がk以上である場合には、移動可能先までの距離に応じて車両2を進める(ステップS315)。なお、車両2を移動可能先まで進めた後は、ステップS301に戻る。上記の動作は、車両2の土砂運搬が終了するまで繰り返される。
【0019】
次に、グリッド情報更新手段13に設けられた予約表監視部13dの動作について、図9のフローチャートを参照して説明する。
まず、フィールド上の検査位置を決定する(ステップS401)。検査するマス目は予め設定されたマス目とする。なお、検査を走行エリア5の端のマス目から順に行うなど、検査順序は予め決めておいてもよいし、ランダムであってもよい。
次に、最初の検査位置のマス目のグリッド情報を問い合わせ(ステップS402)、マス目の予約表に予約があるか否かを判定する(ステップS403)。
検査位置のマス目のグリッド情報がある場合には、ステップS404に進んで、予約表の先頭が、予約した時間から予め設定された予約間隔を超えているか否かを調べる。
一方、検査位置のマス目のグリッド情報がない場合には、ステップS406に進む。
ステップS404で、予約表の先頭が予約した時間から予め設定された予約間隔を超えている場合には、予約表の先頭を削除(ステップS405)した後、ステップS406に進む。一方、予約表の先頭が予約した時間から予め設定された予約間隔を超えていない場合には、ステップS406に進む。
ステップS406では、全ての検査位置での検査が終了したか否かを調べ、終了した場合には、処理フローを終了する。
全ての検査位置での検査が終了していない場合には、次の検査位置を決定(ステップS407)した後、ステップS402に戻って、次の検査位置のマス目のグリッド情報の問い合わせを行う。
【0020】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
【0021】
例えば、前記実施の形態では、仮想フィールドを複数の同じ大きさの矩形のマス目に分割したが、大きさの異なる複数の多角形に分割してもよい。この場合、車両2が走行する場所を細かく分割し、車両2が走行する可能性の低い領域は粗く分割することはいうまでもない。
また、前記実施の形態では、グリッド情報を、エリア上にある車両番号、予約表、ぬかるみや傾斜などの路面情報としたが、車両2にLiDAR等の障害物検知装置を搭載して検知した人の有無などの障害物情報を追加するようにすれば、車両2の安全性をさらに高めることができる。なお、障害物が検知されたエリアは通行禁止エリアとすればよい。また、エリア内での最大走行速度や、エリアが片側交互通行区間5Cか否か、周辺に迂回ルートがあるかなどの情報を追加してもよい。
また、前記実施の形態では、エリア予約表を、予約した時間と予約した車両情報(車両ID)と優先度としたが、これに、予約時間間隔を追加してもよい。予約時間間隔は、通常はすべて同じであるが、図8に示した車両2システム動作フローのループ1回にかかる時間が遅い車両2がある場合には、その車両2がマス目を予約する時間間隔を長くすればよい。
【0022】
また、前記実施の形態では片側交互通行区間の全てのマス目を、最初に片側交互通行区間5C内のマス目を予約した車両2の走行方向を走行方向とする一方通行としたが、以下に説明するように、車両2に優先度を付与するとともに、片側交互通行区間5Cにおける予約表の編集(車両2の入れ替え)を可能とすれば、各車両2を更に効率よく走行させることができる。
以下、片側交互通行区間5Cにおける予約表の編集方法について、図10のフローチャートを参照して説明する。なお、予約表の入れ替えは自動走行管理装置1にて行う。
まず、往路5Aと復路5Bのルート情報から片側交互通行区間5Cのリストを取得し(ステップS501)、取得したリストのなかから、最初の片側交互通行区間5Cを選択する(ステップS502)。
次に、選択された片側交互通行区間5Cの全グリッド情報を取得し(ステップS503)、この取得した全グリッド情報から、予約表のうちの、通行中の車両番号以降の表を抽出する(ステップS504)。
そして、抽出した予約表に、優先度が高い車両2が優先度の低い車両2よりも後に予約されているところがあるか否かを調べる(ステップS505)。優先度が高い車両2が優先度の低い車両2よりも後に予約されているところがなければ、ステップS508に進み、片側交互通行区間のリストの編集が終了したか否かを調べる。
一方、優先度が高い車両2が優先度の低い車両2よりも後に予約されているところがある場合にはステップS506に進み、予約表の入れ替えが可能か否かを調べる。
ステップS506で、入れ替えが可能であればステップS507に進み、予約表の入れ替えを行った後、ステップS508に進み、片側交互通行区間5Cのリストの編集が終了したか否かを調べる。入れ替えが可能でなければ、予約表はそのままにしてステップS508に進む。
図11(a)は入れ替え前の予約表の一例を示す図で、A~Eは5台の車両2の車両ID、矢印(→と←)は車両2の走行方向、数値は優先度、Yes,Noは各車両2がエリア(片側交互通行区間5C)内にいるか否かを示す。なお、数字が低いほど、優先度は高い。
この表では、優先度の高い車両である車両Cと車両Dとが、優先度が低い車両Bよりも後に予約されているので、車両C及び車両Dと車両Bとを入れ替える。
一方、車両Cは車両Dよりも優先度が低いが、走行方向が同じなので入れ替えは行わない。これは、片側交互通行区間5Cでは追い抜きができないためである。同様の理由で、車両Bと車両Eとを入れ替えることもできないので、入れ替え後の予約表は図11(b)にように、優先順位は、A,C,D,B,Eの順となる。
ステップS508では、全ての片側交互通行区間5Cのリストの編集が終了したか否かを調べ、終了した場合には、処理フローを終了する。
全てのリストの編集が終了していない場合には、次の片側交互通行区間5Cを選択(ステップS509)した後、ステップS503に戻って、選択された片側交互通行区間の予約表の編集を行う。
【0023】
また、前記実施の形態では、往路5Aと復路5Bについてもそれぞれ1車線としたが、土積込場3と片側交互通行区間5Cとの間の走行エリア5、または、土捨場4と片側交互通行区間5Cとの間の走行エリア5のいずれか一方、または両方を2車線としてもよい。
なお、走行エリア5を2車線にした場合には、例えば、坂道などでは走行する方向で、一方が上り坂、他方が下り坂となるので、マス目のグリッド情報を走行方向毎に与える必要がある。
また、走行エリア5に迂回路や駐車スペースなどを設けてもよい。なお、迂回路は、一般に、遠回りとなり通過に時間がかかるので、通常は、車両2は迂回路を走行しないが、迂回路を設けることで、例えば、落石などにより本線が通行できなくなった場合でも、車両の運行を継続することができる。
また、前記実施の形態では、土積込場3と土捨場4とをそれぞれ1ケ所ずつとしたが、図12(a),(b)に示すように、土積込場3と土捨場4とを複数設けてもよい。
図12(a)は、土積込場3から2ケ所の土捨場4a,4bに土砂を運搬して廃棄する例を示す図で、この例では、2本の往路5A1,5A2と2本の復路5B1,5B2を有しており、往路5A2と復路5B1とが片側交互通行区間5Cを共有しているが、走行エリア5によっては、往路5A1と復路5B1とが片側交互通行区間5Cを有するようなケースや、往路5A2と復路5B2とが片側交互通行区間5Cを有するようなケースもある。
図12(b)は、土積込場3が3ケ所(土積込場3a,3b,3c)で、土捨場4も3ケ所(土捨場4a,4b,4c)である例を示す図である。この例では、土積込場3aからは2か所の土捨場4a,4bに土砂を運搬し、土積込場3cから2か所の土捨場4b,4cに土砂を運搬し、土積込場3bのみが、3か所の土捨場4a,4b,4cに土砂を運搬しているが、土積込場3a,3cからも3か所の土捨場4a,4b,4cに土砂を運搬してもよい。なお、同図において、5Aijは、土積込場3iと土捨場4jとを結ぶ往路で、5Bijは、土積込場3iと土捨場4jとを結ぶ復路である(i,j=a,b,c)。
また、土積込場3と土捨場4とが複数ある場合には、複数の車両2の各々に対して始点となる土積込場3の場所と終点となる土捨場4とをそれぞれ設定するようにすれば、予約表の作成を容易にすることができるので、車両2を効率よく走行させることができる。
また、同図の往路5A12と復路5B12や往路5A23と往路5A32にように、走行エリア5が交差部5Xを有していてもよい。交差部5Xの予約等は片側交互通行区間5Cと同様に扱われる。
また、走行エリア5において、勾配が急な箇所には、同図に示すように、走行エリア5にスイッチバック5Zを設けてもよい。これにより、車両2の走行安全性が向上する。
【0024】
また、前記実施の形態では、グリッド情報として、当該マス目の最大速度を設定しているので、車両2は最大速度以内で走行するが、最大速度を超えて走行するという不測の事態が発生する場合がある。車両2が最大速度を超えて走行すると、車両2が予約されたブロックを超えて走行するおそれがある。
そこで、現位置取得手段22で求めた車両2の速度が予め設定された最大速度を超えた場合には、最大速度を超えた車両2の速度を前記の最大速度以下に低減させるようにしたので、車両2が予約されたブロックを超えて走行することを防ぐことができる。これにより、車両2が走行禁止エリアの建物6cに衝突するなどの事故を防ぐことができるので、車両2の走行安全性が向上する。
また、前記実施の形態では、車両2は当該車両2の進行方向垂直な方向に並んだ複数列の予約されたマス目を走行するので、車両2が走行エリア5から外れることはないが、車両2の進行方向が決められた方向(車両2の現位置における走行エリア5の延長方向)からずれてしまうという事態が発生する場合がある。このずれが小さい場合には問題はないが、予め設定された一定値よりも大きい場合には、車両2が走行エリア5からはずれて走行するおそれがある。
そこで、車両2にジャイロセンサーなどの慣性計測用のセンサーを設けるとともに、現位置取得手段22と慣性計測用のセンサーとを用いて算出された車両の進行方向(車両の姿勢)と、車両2の現在位置における走行エリア5の延長方向とのなす角度が予め設定された角度を超えた場合には、当該車両2を一時停止させるとともに、前記車両2の進行方向が走行エリア5の延長方向になるように車両2を制御するようにしたので、車両2が走行エリア5からはずれて走行することを防ぐことができる。したがって、車両2の走行安全性を更に向上させることができる。
【0025】
ところで、本例では、複数の車両2がそれぞれの交通するための処理をそれぞれの処理能力で行っているため、ある時間時点での予約すべての予約が成立していた場合、その予約表に従って車両2が行動すれば、車両2は安全に運行できる。したがって、1度フィールドの全グリッド情報を入手しておけば、車両2は常に最新のグリッド情報を入手する必要がない。
一方、記憶手段17は、すべての車両2が頻繁にアクセスするため、処理量が多い。例えば、図7のS205、S207、S209などのステップでは、フィールド全グリッド情報はフィールドグリッド分のデータがあるため非常に大きいデータサイズとなる。
そこで、グリッドサーバーである自動走行管理装置1の対応を、車両2からの個別の全ての問い合わせに対して、常に最新のグリッド情報を提供する同期型から、1ターンごとある程度処理したタイミングのグリッド情報を車両2に配布する非同期型に変更すれば、データの処理量を大幅に低減することができるとともに、記憶手段17自体の容量も小さくすることができる。
具体的には、自動走行管理装置1に更新要求箱を設けるとともに、グリッド情報を受け取った車両2は、各々のタイミングで更新要求箱に更新要求を投函する。自動走行管理装置1は、自分のタイミングで、更新要求箱に投函された更新要求をある程度処理してグリッド情報を更新する。
自動走行管理装置1は、更新後に、再度グリッド情報を車両2に配布する。
更新要求箱としては、例えば、キュー(Queue)が好適に用いられる。キューはスレッドセーフなFIFO(First In First Out)で、複数の非同期処理プロセスがキューにデータを格納できる。なお、キューのサイズは、メモリーの使用量などにより制限される。
車両2は、自分の更新要求の合否を更新されたグリッド情報の結果から判別し、次の処理を行う。
このように、グリッド情報の更新を非同期型に変更すれば、前記の同期型に比較して、走行エリア5を走行する車両2の台数の上限を増やすことができる。
【0026】
次に、非同期処理の具体例について説明する。
図13は、グリッドサーバーである自動走行管理装置1が、複製したフィールド全グリッド情報を、運搬車両に配布し、変更要求を一定数処理した後、グリッド情報を再複製し配布する非同期処理の一例を示すフローチャートである。
始めに、仮想フィールドとグリッドの構築を行う(ステップS601)。このステップS601は、図7のステップS201と同じで、マップ情報の読み込みとグリッド情報の読み込みを行うとともに、読み込んだマップ情報とグリッド情報とを記憶手段17に保存する。
次に、記憶手段17に保存されたグリッド情報を複製し(ステップS602)、この複製されたグリッド情報のデータである複製データを各車両2に配布する(ステップS603)。各車両2は、配布された複製データをもとに、それぞれの車両2が変更要求キューを登録する。
一方、自動走行管理装置1は、変更要求キューがあるか否かを調べ(ステップS604)、変更要求キューがあった場合には、ステップS605に進んで、グリッド情報を更新する。一方、変更要求キューがなかった場合には、ステップS602に戻って、グリッド情報を複製する。
次に、合計処理数が処理数上限に達したか否かを調べる(ステップS606)。
合計処理数とは1ターンで処理するキューの合計で、処理数上限とは1ターンで処理するキューの処理上限である。処理数上限が多いほど、車両2へ複製データを配布するサイクルが遅くなる。
合計処理数が処理数上限に達した場合には、自動走行管理装置1はこれ以上の変更要求には対応できないので、ステップS602に戻って、グリッド情報を複製する。
一方、合計処理数が処理数上限に達していない場合には、ステップS604に戻って、変更要求キューがあるか否かを調べる。
本フローは、車両2の自動走行が終了した段階で終了する。
このように、グリッド情報を更新するスレッドが1ターンごとに複製を行い、複製データを車両2に配布するようにすれば、データの処理量を大幅に低減することができる。
【0027】
図14は、複製したフィールド全グリッド情報をグリッドサーバーである自動走行管理装置1にアップロードし、車両2がこのアップロードされたグリッド情報をダウンロードして使用する例を示すフローチャートで、仮想フィールドとグリッドの構築を行って(ステップS701)、マップ情報とグリッド情報とを記憶手段17に保存した後、記憶手段17に保存されたグリッド情報を複製する(ステップS702)までは、前記の図13のステップS601,S602と同じである。
この例では、複製データを各車両2に配布するのに替えて、複製データをダウンロードデータ用にセットし(ステップS703)、車両2からのダウンロード要求を待つ(ステップS704)。
車両2からのダウンロード要求があった場合には、ダウンロード要求した車両2にグリッド情報を送信する(ステップS705)。
車両2からのダウンロード要求がない場合には、変更要求キューがあるか否かを調べる(ステップS706)。変更要求キューがあった場合には、ステップS707に進んで、グリッド情報を更新する。一方、変更要求キューがなかった場合には、ステップS702に戻って、グリッド情報を複製する。
次に、合計処理数が処理数上限に達したか否かを調べ(ステップS708)、合計処理数が処理数上限に達した場合には、ステップS702に戻って、グリッド情報を複製する。
一方、合計処理数が処理数上限に達していない場合には、ステップS706に戻って、変更要求キューがあるか否かを調べる。
このように、複製したフィールド全グリッド情報をグリッドサーバーである自動走行管理装置1にアップロードし、このアップロードされたグリッド情報をダウンロード用データとして、ダウンロード要求のあった車両2に送っても、データの処理量を大幅に低減することができる。
【0028】
図15は、複製したフィールド全グリッド情報をストリーミング配信することで運搬車両がその情報をもとに処理する例を示すフローチャートである。
このフローは、複製データをダウンロードデータ用にセットするステップS703に替えて、複製データを各車両2にブロードキャストするステップS803を設けたもので、ステップS801,ステップS802は、図14のステップS701,ステップS702と同じで、ステップS804~S808ステップは、図14のステップS704~ステップS708と同じである。
なお、複製データを車両にブロードキャストするとは、JDPやWEBRTCなどのリアルタイムの配信や、ストリーミングでのグリッド情報を車両2へ配布するなど、同じメッセージを複数の車両2に同時に配信することをいう。
このように、複製データをダウンロードデータ用にセットするステップに替えて、複製データを各車両2にブロードキャストするステップを設けても、データの処理量を大幅に低減することができる。
また、安全なフィールド情報の書き換えは、1つの処理装置しかできないのに対して、ダウンロードなどは、複数の処理装置が非同期に行うことが可能である。したがって、図13図15のような非同期処理を行うことで、グリッド情報の書き込みと読込みを分けて処理することができるので、処理時間の短縮を行うことができる。
【0029】
前述グリッド情報には、予約や最大速度の他に、路面状態や、傾斜度や土質などのあらゆる情報をいれることができる。そのため、車両制御装置は、グリッド情報に基づいて、車両自身が車速を判断することで、各々最適な速度設定を決定することができるとともに、自動走行管理装置1は車両2ごとにカスタマイズされた車速を計算する必要が無く処理時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 自動走行管理装置、2 車両、3 土積込場、4 土捨場、
5 走行エリア、5A 往路、5B 復路、5C 片側交互通行区間、
6 走行禁止エリア、6a 山林、6b 雑木林、6c 建物、
11 車両情報取得手段、
12 グリッドマップ作成手段、12a 仮想フィールド構築部、
12b グリッド構築部、12c グリッド情報付与部、
13 グリッド情報更新手段、13a 予約時間設定部、13b 予約表作成部、
13c マス目予約部、13d 予約表監視部、
14 伝達事項更新手段、15 車両制御手段、16 問い合わせ処理手段、
17 記憶手段、17a グリッドマップ、17b グリッド情報、17c 伝達事項、
21 走行手段、22 位置情報取得手段、23 空間情報取得手段、
24 送信機、24A 送信アンテナ、25 受信機、25A 受信アンテナ、
26 走行制御手段、27 荷台、
100 車両の自動走行システム、s マス目。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15