(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083785
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】空間充填構造体の製造方法、及び空間充填構造体の作製に用いる折目付装置
(51)【国際特許分類】
B32B 3/28 20060101AFI20240617BHJP
B32B 7/14 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
B32B3/28 A
B32B7/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197796
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】大久保 洋志
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AT00A
4F100AT00C
4F100BA04
4F100BA08A
4F100BA08B
4F100BA32A
4F100BA32B
4F100CB00A
4F100CB00B
4F100CB00C
4F100CB00D
4F100DD04A
4F100DD04C
4F100DD05A
4F100DD05C
4F100DD09A
4F100DD09C
4F100DD11A
4F100DD11C
4F100DD17A
4F100DD17C
4F100DD18A
4F100DD18C
4F100DD20A
4F100DD20C
4F100EH46B
4F100EH46D
4F100EJ40A
4F100EJ40C
(57)【要約】
【課題】格子形状が正多角形に近い、異方性の小さな空間充填構造体を形成できる、空間充填構造体の製造方法、及び該製造方法に用いる折目付装置を提供する。
【解決手段】本発明の空間充填構造体の製造方法は、シート材から空間充填構造体を製造する方法であり、上記シート材に接着剤を部分的に塗布する接着剤塗布工程と、
上記シート材を重ね合わせて積層体を形成する工程と、
上記積層体を、その積層方向に展張する工程と、をこの順に有し、
さらに、上記接着剤塗布工程前に、上記シート材に山折り及び谷折りの少なくとも一方の折り目を形成する工程を有し、
上記接着剤塗布工程が、上記シート材に形成した折り目と折り目との間に接着剤を塗布する処理を含むこととしたため、シート材のスプリングバックを抑制して異方性の小さな空間充填構造体を製造することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材から空間充填構造体を製造する方法であって、
上記シート材に接着剤を部分的に塗布する接着剤塗布工程と、
上記シート材を重ね合わせて積層体を形成する工程と、
上記積層体を、その積層方向に展張する工程と、をこの順に有し、
さらに、上記接着剤塗布工程前に、上記シート材に山折り及び谷折りの少なくとも一方の折り目を形成する工程を有し、
上記接着剤塗布工程が、上記シート材に形成した折り目と折り目との間に接着剤を塗布する処理を含むことを特徴とする空間充填構造体の製造方法。
【請求項2】
シート材から空間充填構造体を製造する方法に用いられる折目形成装置であって、
少なくとも1部が弾性材で形成された平型と、凸部及び凹部の少なくとも一方を有する折部を有する押圧型とを備え、
上記平型上のシート材に上記押圧型を押し付けながら上記押圧型を回転移動させ、上記シート材に折り目を形成することを特徴とする折目形成装置。
【請求項3】
上記押圧型が円柱形であり、その高さ方向に線状に延びる折部を側面に有し、
上記シート材に上記押圧型を押し付けながら上記押圧型を回転移動させることを特徴とする請求項2に記載の折目形成装置。
【請求項4】
上記平型は、回転移動方向と直交する方向に延びる線状の凸部を有し、
上記押圧型は、上記平型の線状の凸部を押圧する部位が弾性材で形成され、
前記線状の凸部は前記シート材を前記弾性体に入り込ませるように折り目を形成することを特徴とする請求項3に記載の折目形成装置。
【請求項5】
上記押圧型が櫛型であり、櫛型の先端に上記折部を有し、
上記折部がローラで形成され、上記シート材に上記ローラを押し付けながら上記ローラを回転移動させることを特徴とする請求項2に記載の折目形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間充填構造体の製造方法、及び空間充填構造体の作製に用いる折目付装置に係り、更に詳細には、シート材からハニカム構造などの格子構造を有する空間充填構造体を作製する際に、シート材に折り目を形成し空間充填構造体を製造する方法、及び折目付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハニカムコアなどの、立体図形を隙間なく並べた空間充填構造体は、軽量かつ高強度であるので構造材料として幅広く利用されている。
【0003】
特許文献1には、シート材に接着剤を条線状に塗布し、積層、圧着して積層体とし、該積層体を所望の幅に切断し、積層方向に展張することでハニカム構造体を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のものにあっては、シート材のスプリングバックによって展張後の格子形状が、展張方向と該展張方向と直交する方向との長さとが異なった、異方性が大きな形状になってしまう。
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、格子形状が正多角形に近い、異方性の小さな空間充填構造体を形成できる、空間充填構造体の製造方法、及び該製造方法に用いる折目付装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、接着剤塗布工程前に、上記シート材に折り目を付ける工程を設けることにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の空間充填構造体の製造方法は、シート材から空間充填構造体を製造する方法である。
そして、上記シート材に接着剤を部分的に塗布する接着剤塗布工程と、
上記シート材を重ね合わせて積層体を形成する工程と、
上記積層体を、その積層方向に展張する工程と、をこの順に有し、
さらに、上記接着剤塗布工程前に、上記シート材に山折り及び谷折りの少なくとも一方の折り目を形成する工程を有し、
上記接着剤塗布工程が、上記シート材に形成した折り目と折り目との間に接着剤を塗布する処理を含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の折目付装置は、シート材から空間充填構造体を製造する方法に用いられる折目形成装置である。
そして、少なくとも1部が弾性材で形成された平型と、凸型及び/又は凹型の折部を有する押圧型とを備え、
上記平型上のシート材の上記押圧型を押し付けながら相対移動させ、上記シート材に折り目を付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、接着剤塗布工程前に、上記シート材に折り目を付ける工程を設けることとしたため、シート材のスプリングバックを抑制して異方性の小さな空間充填構造体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】展張法で空間充填構造体を作製する際の、積層体の隣り合うシート材の位置関係を説明する図である。
【
図2】シート材に付ける山折りと谷折りの折り目のパターンと、接着剤の塗布パターンとを示す図である。
【
図3】本発明の空間充填構造体の製造方法で作製できる空間充填構造体の格子構造の一例を示す図である。
【
図4】円柱形の押圧型を用いて折り目のパターンを形成する状態を説明する図である。
【
図5】折部の形状と、形成される折り目との関係を説明する図である。
【
図6】線状の凸部を備える平型で折り目を形成する状態を説明する図である。
【
図7】櫛型の押圧型を用いて折り目のパターンを形成する状態を説明する図である。
【
図8】櫛型の押圧型で形成できる折り目のパターンの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の空間充填構造体の製造方法について詳細に説明する。
本発明の製造方法は、展張法によって空間充填構造体を製造する方法である。
【0013】
上記展張法は、接着剤が条線状に部分的に塗布されたシート材を、
図1に示すように、半ピッチずつずらして、又は表裏交互に重ね合わせて積層体とし、この積層体を積層方向に展張して空間充填構造体を作製する方法である。
【0014】
上記展張法では、シート材に接着剤が条線状に周期的に塗布されており、接着剤が塗布された部分と塗布されていない部分とが交互に形成されているので、上記積層体を展張することによって接着剤が塗布されていない部分のみが拡がり、空間充填構造体を作製することができる。
【0015】
しかし、展張後の空間充填構造体は、シート材のスプリングバックによって展張方向とは逆の方向に縮むため、展張後の格子形状が、展張方向の長さと該展張方向と直交する方向の長さとが異なった異方性が大きな形状となりやすい。
【0016】
本発明の空間充填構造体の製造方法は、シート材に折り目を形成する工程を設け、シート材のスプリングバックを抑制することとしたため、展張方向の長さと該展張方向と直交する方向の長さとがほぼ等しい、等方的な格子形状の空間充填構造体を作製できる。
【0017】
すなわち、本発明の空間充填構造体の製造方法は、シート材に折り目を付ける工程と、折り目と折り目との間に接着剤を塗布しシート材に接着剤を部分的に塗布する接着剤塗布工程と、接着剤が塗布されたシート材を重ね合わせて積層体を形成する工程と、上記積層体をその積層方向に展張する工程とを、この順に有する。
【0018】
上記シート材に折り目を付ける工程は、
図2に示すように、山、山、谷、谷を周期的に繰り返す、平行な山折りと谷折りとの折り目を付ける工程である。
【0019】
また、上記接着剤塗布工程は、
図2に示すように、山折りと山折りとの間や谷折りと谷折りとの間に、該折り目から離して折り目と平行に接着剤を条線状に塗布する工程である。
【0020】
接着剤の塗布パターンは、
図2に示すように、シート材の接着面が表面と裏面とが交互になるように塗布されていればよく、接着剤を表面又は裏面の一方の面のみに塗布し、積層体を形成する工程において、シート材を半周期ずつずらして積層してもよく、またシート材を表裏交互に積層してもよい。
【0021】
そして、シート材の積層体を、その積層方向に展張し、接着剤が塗布されていない部分を広げて空間充填構造体を作製する。
【0022】
本発明の空間充填構造体の製造方法によれば、接着剤が折り目から離れて塗布されているので、接着剤を塗布していない部分が、接着剤を塗布した境界から拡がり、上記折り目と相俟って、
図3に示すような、従来の展張法では作製できなかった成型断面が14角形の空間充填構造体を作製できる。
【0023】
本発明の空間充填構造体の製造方法は、必要に応じて、接着剤塗布工程と積層体を形成する工程との間、又は、積層体を形成する工程と展張する工程との間に、シート材又は積層体を折り目と交差する方向に切断する工程を備えることができる。
【0024】
これにより、空間充填構造体の高さを調整することが可能であり、折り目を形成する工程と接着剤塗布工程との効率を向上させることができる。
【0025】
次に、本発明の折目形成装置について説明する。
本発明の折目形成装置は、シート材から空間充填構造体を製造する方法に用いる折目形成装置であり、全部又は一部がゴムなどの弾性材で形成された平型と、該平型の弾性材をへこませる凸部及び凹部の少なくとも一方を有する押圧型とを備える。
【0026】
この折目形成装置は、平型上に載せたシート材に上記押圧型の折部を押し付け、シート材と共に平型の弾性材をへこませた状態で、押圧型がシート材に対して相対的に回転移動し、上記押圧型の折部の凸型又は凹型を転写してシート材に線状の折り目を形成する。
【0027】
上記押圧型としては、円柱形のものや櫛型のものを挙げることができる。
【0028】
円柱形の押圧型としては、
図4に示すように、円柱の側面に、円柱の高さ方向に直線状又は所望の形状に延びる折部を有するものを使用することができる。
【0029】
上記円柱形の押圧型の折部は、円柱の周方向に等間隔に形成されており、
図5に示すように、上記押圧型を回転させながら相対移動させて折部の凸型又は凹型によって折り目を形成する。
【0030】
上記平型は、
図6に示すように、回転して相対移動する方向と直交する方向に延びる線状の凸部を備えることができる。
【0031】
この線状の凸部は、上記円柱形の押圧型の凹型の折部の代わりに設けられるものであり、円柱形の押圧型をへこませてシート材に凸型の折り目を形成する。
【0032】
この折目形成装置は、
図6に示すように、平型の線状の凸部は金属材などの硬質材で形成され、該平型を押圧する円柱形の押圧型は、上記線状の凸部を押圧する部位が弾性材で形成され、前記シート材を前記弾性体に入り込ませるように折り目を形成する。
【0033】
このような折目形成装置によれば、山折りの折り目も先端に応力が集中する凸形状によって形成されるので、山折りの折り目がしっかりと形成されて、等方的な格子形状の空間充填構造体を作製できる。
【0034】
櫛型の押圧型としては、
図7に示すように、櫛型の櫛歯の先端にローラで形成された折部を有するものを使用することができる。
【0035】
図7の矢視図に示すように、上記折部のローラは凸型又は凹型をしており、このローラを平型に押し付けた状態で回転させて相対移動させ、凸型のローラで谷折り、凹型のローラで山折りの折り目を形成する。
【0036】
上記櫛型の押圧型は、ローラで形成された折部を取り換えることで、形成する折り目のパターンを変更することが可能であり、上記円柱形の押圧型に比してパターン変更を安価に行うことができる。
【0037】
さらに、上記櫛型の押圧型をX-Yプロッタに取り付け、
図7に示すように、折部をシート材の面に対して回転可能にすることで、相対移動方向に対して角度を持った折り目を形成することができる。
【0038】
角度を持った折り目の例を
図8に示す。
図8の上図は、展開法でドーム型に湾曲した空間充填構造体を作製する折り目のパターンであり、
図8の下図は、展開法で曲率半径が一定のかまぼこ型の空間充填構造体を作製する折り目のパターンである。
【0039】
上記櫛型の押圧型によれば、曲面を持った立体的な空間充填構造体をも作製することも可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 シート
11(a) 接着剤塗布部(接着面表)
11(b) 接着剤塗布部(接着面裏)
12 折り目
2 円柱形押圧型
21 凸型折部
22 凹型折部
23 弾性材
3 櫛形押圧型
31 凸型ローラ折部
32 凹型ローラ折部
4 平型
41 線状の凸部
42 弾性材
43 硬質材
5 積層体
6 空間充填構造体