(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083791
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】変退色測定装置及び変退色評価方法
(51)【国際特許分類】
G01N 17/00 20060101AFI20240617BHJP
【FI】
G01N17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197805
(22)【出願日】2022-12-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (A)令和4年6月25日に「一般社団法人日本繊維製品消費科学会 2022年年次大会要旨集」において発表 (B)令和4年6月26日に一般社団法人日本繊維製品消費科学会主催の「2022年年次大会」において発表 (C)令和4年7月7日に一般社団法人ボーケン品質評価機構「ボーケンREPORT No.104(2022),第44頁-第50頁」において発表
(71)【出願人】
【識別番号】501043706
【氏名又は名称】一般財団法人ボーケン品質評価機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永井 優子
(72)【発明者】
【氏名】坂井 史治
(72)【発明者】
【氏名】嶋崎 良知
【テーマコード(参考)】
2G050
【Fターム(参考)】
2G050AA02
2G050AA07
2G050BA09
2G050CA01
2G050DA01
2G050EB07
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、複数のLED照明により繊維製品がどの程度光漂白するかを適切に検証できる変退色測定装置及び変退色評価方法を提供することである。
【解決手段】本発明は、LED照明による繊維製品の変退色を評価する測定装置であって、第1測定ユニットと、第2測定ユニットと、を含み、前記第2測定ユニットは、仕切りAを介して前記第1測定ユニットと隣り合って備えられ、第1LED照明が発するエネルギー量をE
1(W/m
2)、第2LED照明が発するエネルギー量をE
2(W/m
2)とし、第1測定ユニットでT
1(時間)にわたって第1LED照明を繊維製品に照射するときに、第2測定ユニットでは、T
2=(E
1×T
1)/E
2(時間)にわたって第2LED照明を繊維製品に照射することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
LED照明による繊維製品の変退色を評価する測定装置であって、
第1LED照明と、前記第1LED照明に対向する第1載置台とを有する第1測定ユニットと、
前記第1LED照明と異なるエネルギー量を発する第2LED照明と、前記第2LED照明に対向する第2載置台とを有する第2測定ユニットと、を含み、
前記第2測定ユニットは、仕切りAを介して前記第1測定ユニットと隣り合って備えられ、
第1LED照明が発するエネルギー量をE1(W/m2)、第2LED照明が発するエネルギー量をE2(W/m2)とし、第1測定ユニットでT1(時間)にわたって第1LED照明を繊維製品に照射するときに、第2測定ユニットでは、T2=(E1×T1)/E2(時間)にわたって第2LED照明を繊維製品に照射することを特徴とする変退色測定装置。
【請求項2】
前記第1測定ユニットと前記第2測定ユニットは、装置内部に外光が侵入可能な外枠で囲われている請求項1に記載の変退色測定装置。
【請求項3】
前記第1LED照明は、380nm~475nmにピーク波長を有する請求項1又は2に記載の変退色測定装置。
【請求項4】
前記第1LED照明は、4~200W/m2のエネルギー量を発する請求項1又は2に記載の変退色測定装置。
【請求項5】
前記第1載置台及び前記第2載置台は、試料を置く載置面が自動的に回転する請求項1又は2に記載の変退色測定装置。
【請求項6】
前記繊維製品は、植物繊維、動物繊維及び合成繊維からなる群より選択される少なくとも1種以上を含む請求項1又は2に記載の変退色測定装置。
【請求項7】
さらに、前記第1~第2LED照明と異なるエネルギー量を発する第3LED照明と、前記第3LED照明に対向する第3載置台とを有する第3測定ユニットを含み、
前記第3測定ユニットは、仕切りBを介して前記第1測定ユニットまたは前記第2測定ユニットと隣り合って備えられる請求項1又は2に記載の変退色測定装置。
【請求項8】
LED照明を有する変退色測定装置により繊維製品の変退色を評価する方法であって、
前記変退色測定装置は、
第1LED照明と、前記第1LED照明に対向する第1載置台とを有する第1測定ユニットと、
前記第1LED照明と異なるエネルギー量を発する第2LED照明と、前記第2LED照明に対向する第2載置台とを有する第2測定ユニットと、を含み、
前記第2測定ユニットは、仕切りAを介して前記第1測定ユニットと隣り合って備えられており、
前記測定方法は、下記(1)~(3)の工程を含むことを特徴とする変退色評価方法。
(1)第1載置台及び第2載置台それぞれに測定対象の繊維製品を置く。
(2)第1測定ユニットでは、T1(時間)にわたって第1LED照明を繊維製品に照射する。
(3)第1LED照明が発するエネルギー量をE1(W/m2)、第2LED照明が発するエネルギー量をE2(W/m2)としたときに、第2測定ユニットでは、T2=(E1×T1)/E2(時間)にわたって第2LED照明を繊維製品に照射する。
【請求項9】
前記第1測定ユニットと前記第2測定ユニットは、装置内部に外光が侵入可能な外枠で囲われている請求項8に記載の変退色評価方法。
【請求項10】
前記第1LED照明は、380nm~475nmにピーク波長を有する請求項8又は9に記載の変退色評価方法。
【請求項11】
前記第1LED照明は、4~200W/m2のエネルギー量を発する請求項8又は9に記載の変退色評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED照明による繊維製品の変退色を評価する測定装置及びその評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、照明器具を高効率の次世代照明に変更する流れを受け、国内主要メーカーによる蛍光灯照明器具の生産が中止となり、LED照明器具へ移行が進んでいる。量販店をはじめとする店舗においては、照明器具がLEDへシフトし、ディスプレイにLED照明を使用するケースも増えている。LED照明の多くは紫外線を含まないため、商品の色褪せや劣化を抑制できると言われている。しかし、白色LED照明をディスプレイに使用したときにウールのセーターが変色するという事例が発生しており、繊維製品の展示においてはLED照明によるウールの変色に注意が必要である。
【0003】
LED照明に含まれる短波長光によって衣類の変色が生じることは、特許文献1にも示されている。特許文献1は、衣類の耐光性を短期間で検査できる光変色検査装置及び光変色検査方法を提供する。特許文献1に開示される光変色検査装置は、店舗に陳列した衣類に対する光による影響を検査する光変色検査装置であって、暗室と、前記暗室の内側に位置する台と、前記暗室の内側に位置する光源とを備え、前記台は、前記衣類を構成する衣類構成物を載置する載置面を有し、前記光源は、前記衣類構成物と前記載置面とに短波長光を含む光を照射し、前記光源から前記衣類構成物に照射される短波長光の時間当たりの照射量が、前記衣類が前記店舗において照射される短波長光の時間当たりの照射量よりも多い点に特徴を有する。
【0004】
また、非特許文献1にもLED照明によるウールの光漂白現象が示されている。特に非特許文献1では、ブルー系統のLED照明がウールの漂白に最も作用したことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】永井,各種LEDランプによるウールの光漂白の調査,ボーケンREPORT,No.103,p.66-70(2021)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
照明器具がLED照明器具へ急速に移行する中、今後も繊維製品の変退色による様々な問題が発生すると予測される。非特許文献1では主としてウールの漂白現象を検証しているが、ウール以外の動物繊維(例えば、カシミヤ)、植物繊維(例えば、綿、麻等)、合成繊維等、身の回りの繊維製品には種々の繊維が使用されており、これらの繊維についての検証も必要となるであろう。また非特許文献1は、ウールの淡色生地は光漂白の影響が表れやすいため注意が必要と促しており、繊維製品の色味も変退色に影響を与えることがわかっている。つまり、繊維製品の商品価値を維持するためには、引き続き、様々な色のLED照明により、種々の繊維製品がどう変退色するのか検討しなければならない。
【0008】
しかし特許文献1に開示される光変色検査装置には、光源が1つしか設けられておらず、ある特定の波長のLED照明による繊維製品の変退色しか検証することができない。照明の色、繊維の種類は、世の中に豊富に存在するにも関わらず、特許文献1の光変色検査装置では、種々のLED照明で繊維製品の変退色を検証しようにも、照明を都度交換する必要があり効率的でない。
【0009】
また非特許文献1の公開後、本発明者らはさらに検討を進めた。非特許文献1ではブルー系統のLED照明がウールの光漂白現象に最も作用することを指摘しているが、本発明者らは、LED照明の波長が光漂白に影響しているのか、それともLED照明のエネルギーが光漂白に影響しているのか明らかにしたいと考えた。前者の影響を検討するためには、各々LED照明のエネルギーによる違いを相殺すべく、複数のLED照明間で積算エネルギー量を揃える必要がある。後者の影響を検討するためには、各々LED照明自体が有するエネルギーの違いを比較できるよう、複数のLED照明間で照射時間を揃える必要がある。比較検討の結果、本発明者らは複数のLED照明間で積算エネルギー量を揃えたときに、LED照明の波長と、照射前後の色差ΔE*abに相関関係が存在することを見出した。
【0010】
すなわち本発明の課題は、複数のLED照明により繊維製品がどの程度光漂白するかを適切に検証できる変退色測定装置及び変退色評価方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、LED照明による繊維製品の変退色を評価する測定装置であって、複数の測定ユニットを含み、各測定ユニットが仕切りを介して隣り合って配置され、複数のLED照明間で積算エネルギー量を揃えることのできる変退色測定装置であれば、繊維製品がどの程度光漂白するかを適切に検証できることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明に係る変退色測定装置及び変退色評価方法は、以下の点に要旨を有する。
[1] LED照明による繊維製品の変退色を評価する測定装置であって、
第1LED照明と、前記第1LED照明に対向する第1載置台とを有する第1測定ユニットと、
前記第1LED照明と異なるエネルギー量を発する第2LED照明と、前記第2LED照明に対向する第2載置台とを有する第2測定ユニットと、を含み、
前記第2測定ユニットは、仕切りAを介して前記第1測定ユニットと隣り合って備えられ、
第1LED照明が発するエネルギー量をE1(W/m2)、第2LED照明が発するエネルギー量をE2(W/m2)とし、第1測定ユニットでT1(時間)にわたって第1LED照明を繊維製品に照射するときに、第2測定ユニットでは、T2=(E1×T1)/E2(時間)にわたって第2LED照明を繊維製品に照射することを特徴とする変退色測定装置。
[2] 前記第1測定ユニットと前記第2測定ユニットは、装置内部に外光が侵入可能な外枠で囲われている[1]に記載の変退色測定装置。
[3] 前記第1LED照明は、380nm~475nmにピーク波長を有する[1]又は[2]に記載の変退色測定装置。
[4] 前記第1LED照明は、4~200W/m2のエネルギー量を発する[1]~[3]のいずれかに記載の変退色測定装置。
[5] 前記第1載置台及び前記第2載置台は、試料を置く載置面が自動的に回転する[1]~[4]のいずれかに記載の変退色測定装置。
[6] 前記繊維製品は、植物繊維、動物繊維及び合成繊維からなる群より選択される少なくとも1種以上を含む[1]~[5]のいずれかに記載の変退色測定装置。
[7] さらに、前記第1~第2LED照明と異なるエネルギー量を発する第3LED照明と、前記第3LED照明に対向する第3載置台とを有する第3測定ユニットを含み、
前記第3測定ユニットは、仕切りBを介して前記第1測定ユニットまたは前記第2測定ユニットと隣り合って備えられる[1]~[6]のいずれかに記載の変退色測定装置。
[8] LED照明を有する変退色測定装置により繊維製品の変退色を評価する方法であって、
前記変退色測定装置は、
第1LED照明と、前記第1LED照明に対向する第1載置台とを有する第1測定ユニットと、
前記第1LED照明と異なるエネルギー量を発する第2LED照明と、前記第2LED照明に対向する第2載置台とを有する第2測定ユニットと、を含み、
前記第2測定ユニットは、仕切りAを介して前記第1測定ユニットと隣り合って備えられており、
前記測定方法は、下記(1)~(3)の工程を含むことを特徴とする変退色評価方法。
(1)第1載置台及び第2載置台それぞれに測定対象の繊維製品を置く。
(2)第1測定ユニットでは、T1(時間)にわたって第1LED照明を繊維製品に照射する。
(3)第1LED照明が発するエネルギー量をE1(W/m2)、第2LED照明が発するエネルギー量をE2(W/m2)としたときに、第2測定ユニットでは、T2=(E1×T1)/E2(時間)にわたって第2LED照明を繊維製品に照射する。
[9] 前記第1測定ユニットと前記第2測定ユニットは、装置内部に外光が侵入可能な外枠で囲われている[8]に記載の変退色評価方法。
[10] 前記第1LED照明は、380nm~475nmにピーク波長を有する[8]又は[9]に記載の変退色評価方法。
[11] 前記第1LED照明は、4~200W/m2のエネルギー量を発する[8]~[10]のいずれかに記載の変退色評価方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数のLED照明により繊維製品がどの程度光漂白するかを適切に検証できる変退色測定装置及び変退色評価方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明に係る変退色測定装置の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る変退色測定装置に関して、実施例を示す図面を参照しつつ具体的に説明するが、本発明はもとより図示例に限定される訳ではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0016】
<変退色測定装置>
図1は、本発明に係る変退色測定装置40の一例を示す概略断面図である。本発明に係る変退色測定装置40は、LED照明による繊維製品の変退色を評価する測定装置であって、第1LED照明10と、前記第1LED照明10に対向する第1載置台11とを有する第1測定ユニット1と、前記第1LED照明10と異なるエネルギー量を発する第2LED照明20と、前記第2LED照明20に対向する第2載置台21とを有する第2測定ユニット2と、を含み、前記第2測定ユニット2は、仕切りA(4)を介して前記第1測定ユニット1と隣り合って備えられ、第1LED照明10が発するエネルギー量をE
1(W/m
2)、第2LED照明20が発するエネルギー量をE
2(W/m
2)とし、第1測定ユニット1でT
1(時間)にわたって第1LED照明10を繊維製品に照射するときに、第2測定ユニット2では、T
2=(E
1×T
1)/E
2(時間)にわたって第2LED照明20を繊維製品に照射することを特徴とする。仕切りを介して2つの測定ユニットを配置することにより、隣接したLED照明の光が試料(繊維製品)に照射することを防ぐことができる。そのため複数のLED照明を使って、繊維製品の変退色を一度で効率的に評価することが可能となる。また複数のLED照明間で積算エネルギー量を揃えることができるため、LED照明の波長による影響を適切に評価できる。
【0017】
第1LED照明10は、好ましくは380nm~475nmにピーク波長を有する。前記範囲にピーク波長を有するLED照明により繊維製品の変退色が生じる傾向にあるからである。第1LED照明10のピーク波長の下限は、より好ましくは400nm、さらに好ましくは420nmであり、上限は好ましくは470nmである。第1LED照明10はブルー系が好ましい。
【0018】
使用するLED照明の種類によってLED照明が持つエネルギー量は異なるが、第1LED照明10としては、好ましくは4~200W/m2、より好ましくは50~180W/m2、さらに好ましくは100~160W/m2のエネルギー量を発するものが使用される。
【0019】
第2LED照明20は、前記第1LED照明10と異なるエネルギー量を発するLED照明として定義する。第2LED照明20が発するエネルギー量は、好ましくは第1LED照明10より低いエネルギー量であって4~200W/m2の範囲に包含されるものである。第2LED照明20の波長は特に限定されず、380nm~750nmにピーク波長を有する(ただし、第1LED照明10のピーク波長とは異なる)。
【0020】
各LED照明の形態は特に限定されないが、例えば、基板9にLEDチップ8を固定した形態等が好ましく採用できる。LEDチップ8の個数は特に限定されず所望のエネルギー量が得られればよい。各LED照明用のチップ数は、例えば1~25個である。
【0021】
第1LED照明10及び第2LED照明20には、それぞれに対向する第1載置台11及び第2載置台21が備えられる。各載置台は、測定対象の試料を置く載置面(12,22)を有する。試料の照射ムラを防ぎ、照射を均一に実施するため、第1載置台11及び第2載置台21においては、試料を置く載置面(12,22)は自動的に回転することが好ましい。載置面(12,22)の回転軸は、それぞれ、載置面(12,22)の中心を通り前記載置面(12,22)に垂直な直線である。
【0022】
第1測定ユニット1は、第1LED照明10と第1載置台11とを備える。また第2測定ユニット2は、第2LED照明20と第2載置台21とを備える。各測定ユニットにおいて、LED照明と載置面(12,22)の距離(以後、照射距離Lと称する場合がある)は可変であることが好ましい。本発明に係る変退色測定装置40は、世の中に豊富に存在するLED照明や繊維の種類を考慮しながら、繊維製品の変退色を検証するものである。そのため照射距離を自由に変更できることで、試料毎に適切な照射距離を設定し、変退色が最も顕著に観察される照射距離で繊維製品を評価できる。照射距離は、好ましくは1~18cm、より好ましくは5~15cmである。
【0023】
仕切りA(4)の形状は、隣接したLED照明の光が試料(繊維製品)に干渉しない形状であることが望ましく、隣り合うユニットの間の照明を隙間なく遮光できることが好ましい。隣接したLED照明からの光を遮るため、仕切りA(4)の上端は外枠6に達していることが好ましい。また仕切りA(4)は、LED照明の発熱に十分に耐えうる素材であることが望ましく、例えば、木製、布製、紙製、発泡性プラスチック製であるとよい。
【0024】
第1測定ユニット1と第2測定ユニット2は、装置内部に外光が侵入可能な外枠6で囲われていることが好ましい。特に外枠6は、第1測定ユニット1と第2測定ユニット2の両方を覆う1つの枠体であることが望ましい。外枠6を設けることで、LED照明を固定でき、照明の組み換えを簡便に行うことができる。また外枠6により、照射距離Lの変更が容易となる。さらに装置内部に外光が侵入可能な外枠6とすることで、(i)複数ある測定ユニットの配置を容易に確認できるため試料のセッティングが簡便となる、(ii)放熱性が高いためモーター可動部や照明から生じる熱を効率よく放熱できる、(iii)強度を保持したまま装置の軽量化が図れる、(iv)変退色の進行状態を試験途中でも観察できる、(v)装置自体をコンパクトにできる等の利点がある。外枠6は網状であることが好ましく、より好ましくは金属製メッシュ(例えば、メッシュワイヤー)、プラスチック製メッシュ(例えば、FRP製メッシュ)等である。試験実施時に外光の侵入を防ぐため、また試験中のLED照明が外部に漏れ周辺の試料等の変色を避けるため、測定時には外枠6を遮光性の布で覆うことが好ましい。また変退色測定装置40は実験台7の上に置き、均しくLED照明が試料に当たるようにするとよい。
【0025】
外枠6の形状は特に限定されず、上面、左側側面及び右側側面からなる3面形状、上面、左側側面、右側側面及び背面からなる4面形状、上面、左側側面、右側側面、背面及び正面からなる5面形状、半円筒形状、角錐形状、円錐形状等が例示され、各測定ユニットを収めやすく、試料の観察が容易なことから4面形状が好ましい。
【0026】
<変退色評価方法>
本発明はさらに、以下に定める変退色評価方法も包含する。
LED照明を有する変退色測定装置40により繊維製品の変退色を評価する方法であって、
前記変退色測定装置40は、
第1LED照明10と、前記第1LED照明10に対向する第1載置台11とを有する第1測定ユニット1と、
前記第1LED照明10と異なるエネルギー量を発する第2LED照明20と、前記第2LED照明20に対向する第2載置台21とを有する第2測定ユニット2と、を含み、
前記第2測定ユニット2は、仕切りA(4)を介して前記第1測定ユニット1と隣り合って備えられており、
前記測定方法は、下記(1)~(3)の工程を含むことを特徴とする変退色評価方法。
(1)第1載置台11及び第2載置台21それぞれに測定対象の繊維製品を置く。
(2)第1測定ユニット1では、T1(時間)にわたって第1LED照明10を繊維製品に照射する。
(3)第1LED照明10が発するエネルギー量をE1(W/m2)、第2LED照明20が発するエネルギー量をE2(W/m2)としたときに、第2測定ユニット2では、T2=(E1×T1)/E2(時間)にわたって第2LED照明20を繊維製品に照射する。
【0027】
本発明では、第1LED照明10が発するエネルギー量をE1(W/m2)、第2LED照明20が発するエネルギー量をE2(W/m2)、第1測定ユニット1でT1(時間)にわたって第1LED照明10を繊維製品に照射したときに、第2測定ユニット2では、T2=(E1×T1)/E2(時間)にわたって第2LED照明20を繊維製品に照射する。こうすることで複数のLED照明間で積算エネルギー量を揃えることができるため、波長による影響を適切に評価できる。各LED照明のエネルギー量にもよるが、照射時間(T1、T2)は好ましくは1~200時間、より好ましくは1.5~100時間である。
【0028】
なお、上記に示す変退色評価方法で用いる測定装置は前に詳述した通りである。
【0029】
変退色測定装置40は、さらに第1~第2LED照明と異なるエネルギー量を発する第3LED照明30と、第3LED照明30に対向する第3載置台31とを有する第3測定ユニット3を含んでいてもよい。第3測定ユニット3を備えることで、3種のLED照明を使って、繊維製品の変退色をより効率的に評価することが可能となる。
【0030】
第3LED照明30は、第1LED照明10及び第2LED照明20とはエネルギー量が異なる第3のLED照明である。第3LED照明30が発するエネルギー量は、好ましくは第1LED照明10より低いものであって(ただし第2LED照明20とは異なる)、4~200W/m2の範囲に包含されるものである。第3LED照明30の波長は特に限定されず、380nm~750nmにピーク波長を有する(ただし、第1LED照明10及び第2LED照明20のピーク波長とは異なる)。第1LED照明10及び第2LED照明20と同様に、第3LED照明30は、例えば、基板9にLEDチップ8を固定した形態等が好ましく採用できる。
【0031】
第3LED照明30には、これに対向する第3載置台31が備えられ、載置台は、測定対象の試料を置く載置面(32)を有する。第1~第2載置面と同様に、載置面32は自動的に回転(載置面32の中心を通り前記載置面32に垂直な直線を回転軸とする)することが好ましい。第3測定ユニット3は、第3LED照明30と第3載置台31とを備える。第1~第2測定ユニットと同様に、第3測定ユニット3でも、照射距離Lは可変であることが好ましく、照射距離Lは、好ましくは1~18cm、より好ましくは5~15cmである。
【0032】
第3測定ユニット3は、仕切りB(5)を介して第1測定ユニット1または第2測定ユニット2と隣り合って備えられる。仕切りを介して第3測定ユニット3を配置することにより、隣接したLED照明の光が第3測定ユニット3の試料(繊維製品)に照射することを防ぐことができる。仕切りB(5)の具体的な構成は、仕切りA(4)と同様である。
【0033】
第1~第3測定ユニットは、第1測定ユニット1/第2測定ユニット2/第3測定ユニット3の順に配置されてもよく、第3測定ユニット3/第1測定ユニット1/第2測定ユニット2の順に配置されてもよい。
図1では、第1測定ユニット1/第2測定ユニット2/第3測定ユニット3の順に配置されている。
【0034】
複数のLED照明間で積算エネルギー量を揃え、波長による影響を適切に評価するため、第3LED照明30が発するエネルギー量をE3(W/m2)としたときに、第3測定ユニット3ではT3=(=E1×T1)/E3(時間)にわたって第3LED照明30を繊維製品に照射するとよい。照射時間(T3)は好ましくは1~200時間、より好ましくは1.5~100時間である。
【0035】
また第3測定ユニット3を設ける場合にも外枠6が設けられることが好ましく、この場合外枠6は、第1測定ユニット1、第2測定ユニット2及び第3ユニット3の全てを覆う1つの枠体であることが望ましい。
【0036】
なお前記変退色測定装置40は、測定ユニット間に仕切りを配置する限り、4以上の測定ユニット(LED照明及び載置台を備える)を有していてもよい。
【0037】
各測定ユニットで所定時間LED照射された試料は、LED照射後、分光測色計などにより照射前の試料に対する色の違い(色差、ΔE*ab)を求めることで、LED照明による試料の変退色の影響を比較評価するとよい。
【0038】
試料としては繊維製品が採用でき、前記繊維製品としては、綿、麻等の植物繊維;羊毛、カシミヤ、絹等の動物繊維;ポリエステル、ナイロン等の合成繊維;等を含むものが例示され、好ましくは動物繊維、より好ましくは羊毛を含むことが好ましい。繊維製品はいかなる形態であってもよく、糸;織物、編物、不織布等の生地;セーター、シャツ、ズボン、下着、ドレス、ブラウス、スカート、カバー等の衣料品;等が例示される。繊維製品に含まれる繊維は、染色されていても、染色されていなくてもよい。また繊維製品に含まれる繊維は、漂白されていても、漂白されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 第1測定ユニット
2 第2測定ユニット
3 第3測定ユニット
4 仕切りA
5 仕切りB
6 外枠
7 実験台
8 LEDチップ
9 基板
10 第1LED照明
11 第1載置台
20 第2LED照明
21 第2載置台
30 第3LED照明
31 第3載置台
12,22,32 載置面
40 変退色測定装置
L 照射距離