(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083795
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】産業用装置および産業用装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
G05B 9/02 20060101AFI20240617BHJP
F24F 9/00 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
G05B9/02 L
F24F9/00 K
G05B9/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197812
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】八木 星弥
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 朋行
(72)【発明者】
【氏名】矢田 洋一
【テーマコード(参考)】
5H209
【Fターム(参考)】
5H209AA05
5H209AA15
5H209CC05
5H209DD08
5H209FF06
5H209JJ01
5H209JJ07
5H209JJ09
(57)【要約】
【課題】
装置に異常が発生していない場合および使用者が危険を感じていない場合において使用者が非常停止スイッチを押すことを抑制させることができ、また、非常停止状態を誤って解除したとしても使用者の安全を確保することができる産業用装置およびその制御方法を提供する。
【解決手段】
産業用装置の各機構の制御を行なう制御部と、非常停止手段を備えた産業用装置であって、制御部は、非常停止手段による非常停止状態において、使用者による非常停止状態を解除する動作に対して、非常停止状態を一定時間延長するように構成する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業用装置の各機構の制御を行なう制御部と、非常停止手段を備えた産業用装置であって、
前記制御部は、前記非常停止手段による非常停止状態において、使用者による非常停止状態を解除する動作に対して、前記非常停止状態を一定時間延長することを特徴とする産業用装置。
【請求項2】
請求項1に記載の産業用装置において、
前記非常停止手段による非常停止状態となった時から前記非常停止状態を解除する動作を行なった時までの時間が所定時間以内の場合に、前記非常停止状態を一定時間延長することを特徴とする産業用装置。
【請求項3】
請求項1に記載の産業用装置において、
前記非常停止状態を解除する動作は、前記非常停止手段を再度実行する動作であることを特徴とする産業用装置。
【請求項4】
請求項1に記載の産業用装置において、
前記非常停止手段は非常停止スイッチであって、
前記非常停止状態を解除する動作は、前記非常停止スイッチを再度押すことであることを特徴とする産業用装置。
【請求項5】
請求項1に記載の産業用装置において、
前記産業用装置はエアシャワー装置であることを特徴とする産業用装置。
【請求項6】
請求項1に記載の産業用装置において、
周知手段を備え、
前記制御部は、前記非常停止状態であることを前記周知手段により周囲に周知することを特徴とする産業用装置。
【請求項7】
請求項1に記載の産業用装置において、
前記非常停止状態であることを上位監視機器へ通知する機能を有することを特徴とする産業用装置。
【請求項8】
制御部と非常停止手段を備えた産業用装置の制御方法であって、
前記制御部が、前記非常停止手段による非常停止状態において、使用者による非常停止状態を解除する動作に対して、前記非常停止状態を一定時間延長することを特徴とする産業用装置の制御方法。
【請求項9】
請求項8に記載の産業用装置の制御方法において、
前記制御部が、前記非常停止手段による非常停止状態となった時から前記非常停止状態を解除する動作を行なった時までの時間が所定時間以内の場合に、前記非常停止状態を一定時間延長することを特徴とする産業用装置の制御方法。
【請求項10】
請求項8に記載の産業用装置の制御方法において、
前記非常停止手段は非常停止スイッチであることを特徴とする産業用装置の制御方法。
【請求項11】
請求項8に記載の産業用装置の制御方法において、
前記産業用装置はエアシャワー装置であることを特徴とする産業用装置の制御方法。
【請求項12】
請求項8に記載の産業用装置の制御方法において、
前記制御部が、前記非常停止状態であることを周囲に周知することを特徴とする産業用装置の制御方法。
【請求項13】
請求項8に記載の産業用装置の制御方法において、
前記制御部が、前記非常停止状態であることを上位監視機器へ通知することを特徴とする産業用装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用装置に係わり、特に産業用装置の非常停止動作に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な産業用装置には、装置に異常が発生したり使用者が危険を感じたときに装置を緊急に停止させ、使用者の安全を確保するための非常停止スイッチが備えられている。非常停止スイッチが使用者により押されると即座に装置の動作が停止し、再度非常停止スイッチを操作すると非常停止状態が解除され定常状態に復帰させていることが多い。
【0003】
非常停止スイッチを有する産業用装置として、例えば、エアシャワー装置や自動ドア、電動ドリルなどがある。
【0004】
エアシャワー装置は、半導体や精密機械等の製造や、食品の加工などを行う清浄室の出入口に設置され、使用者に付着した塵埃や花粉などをエアジェットで除去する装置である。前述の産業用装置に加えて、エアシャワー装置の多くにも非常停止スイッチが備えられている。
【0005】
エアシャワー装置は使用者に対し所定時間エアジェットを浴びせるために、エアジェット動作中は扉が開かないようにロックするよう制御している。エアジェット動作中などにエアシャワー装置に異常が発生したり使用者が危険を感じたときは非常停止スイッチを押すことで、エアジェットの動作が停止し扉のロックが解除される。これにより使用者の安全を確保することができるし、災害等により清浄室からの避難が必要になった際には、エアシャワー装置を通路のようにすることもできる。このような制御を行うエアシャワー装置は、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の制御方法では、エアシャワー装置に異常が発生していない場合および使用者が危険を感じていない場合においても使用者が非常停止スイッチを押し、エアジェットを停止させることで所定時間エアジェットを浴びずに清浄室に入室することができてしまう。このような場合には、清浄室への塵埃等を持ち込む、いわゆる「すり抜け動作」となる。また、エアシャワー装置に異常が発生したり使用者が危険を感じた際に非常停止スイッチを押して非常停止状態に移行した後、使用者が手元の狂いなどで誤って非常停止状態を解除する動作を行った場合、装置が再動作したり使用者の安全を確保できない。
【0008】
このように、特許文献1は、非常停止スイッチが単に記載されているのみで、故意に非常停止スイッチを押すことの抑制、及び、誤って非常停止状態を解除した場合でも安全を確保できる点について考慮されていない。
【0009】
本発明の目的は、上記課題に鑑みてなされたものであり、装置に異常が発生していない場合および使用者が危険を感じていない場合において使用者が非常停止スイッチを押すことを抑制させることができ、また、非常停止状態を誤って解除したとしても使用者の安全を確保することができる産業用装置およびその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、その一例を挙げるならば、産業用装置の各機構の制御を行なう制御部と、非常停止手段を備えた産業用装置であって、制御部は、非常停止手段による非常停止状態において、使用者による非常停止状態を解除する動作に対して、非常停止状態を一定時間延長するように構成する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、装置に異常が発生していない場合および使用者が危険を感じていない場合において使用者が非常停止スイッチを押すことを抑制させることができ、また、非常停止状態を誤って解除したとしても使用者の安全を確保することができる産業用装置およびその制御方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例におけるエアシャワー装置を示す断面平面図である。
【
図2】従来における非常停止状態を説明するためのタイムチャートである。
【
図3】実施例における非常停止状態を説明するためのタイムチャートである。
【
図4】実施例における非常停止処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。なお、以下の実施例では、産業用装置としてエアシャワー装置を例に説明する。
【実施例0014】
図1は、本実施例におけるエアシャワー装置の断面平面図である。
図1において、エアシャワー装置1は、エアシャワー室2を有し、前室側扉3、清浄室側扉4、両側の側壁21および22と天井(図示せず)などにより構成される。エアシャワー室2の側壁21および22には、エアジェット機構21aおよび22aがそれぞれ設置され、制御部7によりエアジェット機構が駆動制御されエアジェットを噴射する。
【0015】
センサ5は、エアシャワー室2に入場した使用者100を検知するために設けられている。制御部7は、このセンサ5の検知信号を入力し、エアシャワー室2内に使用者100がいるか否か(使用者の有無)を判断することができる。
【0016】
ここで、エアシャワー装置を使用している人を「使用者」と称し、エアシャワー装置を使用しようとして前室側で待機している人を「後続者」と称し、エアシャワー装置を管理しエアシャワー装置を使用者に最適に使用させようとする人を「管理者」と称する。
【0017】
非常停止スイッチ6はエアシャワー室2の内、外にそれぞれ備えられており、使用者100が押したり、エアシャワー装置を使用しようと待機している後続者101や管理者102(図示せず)が室外から押すこともできる。
【0018】
非常停止スイッチ6は、使用者100などがエアシャワーを停止させるために用いるための非常停止手段であり、どのようなスイッチでも構わないが非常用であることが分かるものであることが望ましい。
【0019】
制御部7は、エアシャワー装置1全体の各機構の制御を行なうために設けられ、前室側扉スイッチ(図示せず)、清浄室側扉スイッチ(図示せず)およびセンサ5や非常停止スイッチ6の検知信号を入力し、使用者の入室、退室の判断を行ない、エアジェット機構21aおよび22aを駆動制御し、エアジェットを作動させるものである。本実施例では、制御部7は、全体をコンパクト化するために側壁21内に設けた例を示しているが、他の側壁22側に設けても、あるいは外部に設けてもよい。この制御部7は、PLCや、マイクロプロセッサなど、通常の計算機の機能を有する機器で実現することができる。
【0020】
表示設定部8は、エアシャワー室2の側壁21に設置されており、エアシャワー装置1の操作に関する設定を行なうこと、および使用者に対する注意事項(ガイダンス)などを表示すること、などのために設けられている。
【0021】
なお、図示しないが、エアシャワー装置は、周囲にエアシャワー装置の状態を周知できるブザーや回転灯のような周知手段を設ける。
【0022】
次に、一般的なエアシャワー装置の動作について説明する。通常の入室の場合は、使用者100は、前室側扉3が閉じた時点以降(開閉時間経過後)にセンサ5の検知領域を通過し、清浄室側扉4に向けて移動する。この移動の途中において、センサ5がONになり使用者100を検知する。この場合、制御部7は、その使用者100は清浄室に入室する人であると判断し、エアジェットを作動させる。
【0023】
エアジェットは、使用者100に付着している塵埃を吹き飛ばすため、予め定められた時間動作を継続するが、その間、前室側扉3および清浄室側扉4はロックされる。これにより、使用者100は、扉を開くことができなくなるため、所定時間エアジェットを浴びることが可能となるが、使用者100は、その間、エアシャワー室2から自由に退出することができなくなる。
【0024】
エアシャワー装置に異常が発生したり使用者100が危険を感じたときにエアシャワー装置を緊急に停止させたい場合は、エアシャワー室の内、外に設けられている非常停止スイッチ6によりエアシャワー装置を非常停止状態に移行させる。また、エアシャワー装置や使用者100に異変を感じた後続者101や管理者102が押すことで同様に非常停止状態に移行させることができる。非常停止状態に移行したと同時にエアシャワー装置のエアジェットは停止し、前室側扉3、清浄室側扉4のロックが解除され扉の開放が可能となる。非常停止状態は、エアシャワー装置の異常が無くなり、使用者100の安全を確保したことを確認できるまで継続させる必要がある。そのため、一度、非常停止スイッチ6を押し非常停止状態となった後は、再度押すことで非常停止状態を解除したり、自己保持型のスイッチを用いた場合はスイッチの自己保持を解除したときに非常停止状態を解除するような制御にしていることが多い。
【0025】
上記が一般的なエアシャワー装置の使用方法であるが、使用者100の中には清浄室への入室を急いでいたり、エアジェットを浴びることを嫌う者も存在している。このような使用者100は、エアシャワー装置に異常が発生していない場合および自らに危険を感じていない場合においても非常停止スイッチ6を押し、エアジェットを作動させないようにしたり所定時間を待たずにエアジェットを停止させようとすることがある。この場合、所定時間エアジェットを浴びずに清浄室に入室してしまう「すり抜け動作」となり、清浄室の清浄度を確保することができなくなる。なお、非常停止スイッチの押し下げによる非常停止状態をブザーや回転灯などの周知手段により周囲に周知していても、非常停止スイッチ6を再度押すなどで非常停止状態を一瞬で解除されてしまうと周知手段の動作も短くなるため周囲に周知することが難しい。
【0026】
また、使用者100がエアシャワー装置に異常が発生したり自らに危険を感じた際に非常停止スイッチ6を押して非常停止状態に移行した後、使用者100が安全を確保する前に、手元が狂うなどして誤って非常停止状態を解除することがある。この場合、装置が再動作したり使用者100の意識が無い場合は周囲に周知させることもできなくなる。また、ブザーや回転灯などの周知手段により周囲に周知しようとしても非常停止状態が短い時間の場合、周知手段の動作も短くなるため周囲に周知することが難しい。
【0027】
図2は、従来における非常停止状態を説明するためのタイムチャートである。なお、
図2においては、非常停止スイッチ6は一度押すことで非常停止状態となり、再度押すことで非常停止状態を解除するような制御とする場合を示すが、自己保持型のスイッチを用い、スイッチの自己保持を解除することで非常停止状態を解除する制御としても同様である。
図2において、非常停止スイッチ6を押すことで非常停止状態に移行し、再度押すことで非常停止状態を直ちに解除する動作となる。非常停止状態が解除されるのと同時に、エアジェット作動の条件が成立していれば、再度、前室側扉3、清浄室側扉4はロックされ、エアジェットが作動する。周知手段による周知は非常停止状態の間のみなので非常停止状態が短ければ周知できる時間も短くなる。
【0028】
このように、従来においては、管理者102にとって使用者100の「すり抜け動作」は好ましくない行為であるが、使用者100はこの仕組みを利用して管理者102含む周囲の人に露見することなく「すり抜け動作」を行うことができてしまう。加えて、使用者100が誤って非常停止状態を解除した場合、周囲に異常を周知することができなかった。
【0029】
そのため、本実施例では、非常停止状態において使用者が非常停止状態を解除する動作を行っても、一定時間非常停止状態を延長させるようエアシャワー装置を制御する。また、非常停止状態においてスピーカや回転灯などの周知手段により装置の周囲に非常停止状態を周知させる。
【0030】
図3は、本実施例における非常停止状態を説明するためのタイムチャートである。なお、
図3においては、
図2と同様に、非常停止スイッチ6は一度押すことで非常停止状態となり、再度押すことで非常停止状態を解除するような制御とする場合を示す。
図3において、非常停止スイッチ6を押すことで非常停止状態に移行し、再度、非常停止スイッチ6を押しても非常停止状態は直ちに解除されず延長される。これにより、エアジェット作動の条件が成立していても前室側扉3、清浄室側扉4はロックされずエアジェットも作動しない。また、非常停止状態が延長されるため周知手段により周知できる時間を長くすることができる。
【0031】
このような構成とすることで、使用者100が「すり抜け動作」を行った後も非常停止状態が継続するので後続者101が一定時間エアシャワー装置を使用できなくなるため渋滞が発生し迷惑がかかる。また、周知手段により周囲に非常停止状態であることが一定時間周知されるため周囲の人や管理者102に非常停止スイッチ6を押したことが露見される。どちらも使用者100には好ましくない状況であるため、使用者100に対して、「すり抜け動作」を行うために非常停止スイッチ6を押すことを躊躇、抑制させることができる。
【0032】
また、使用者100がエアシャワー装置に異常が無いことと自らの安全を確認する前に誤って非常停止状態を解除する動作を行ったとしても一定時間非常停止状態が延長されるため、周囲の人にエアシャワー装置に異常があることと使用者100に危険があることを周知させることができ、使用者100の安全を確保することができる。
【0033】
非常停止状態を延長させる時間は概ね10秒から10分ほどで予め設定値として定めて制御部7内に記憶しておけばよく、あるいは表示設定部8を操作して制御部7に記憶設定してもよい。また、非常停止状態を延長させない従来の制御方法とすることができるよう設定可能としてもよい。加えて、非常停止状態を解除しないまま非常停止状態が一定時間経過した後に非常停止状態が解除された際には、正しく非常停止スイッチが使用されたとして非常停止状態の延長を行わないよう制御してもよい。この機能についても表示設定部8で設定できるようにしてもよい。
【0034】
また、使用者100が非常停止状態を解除する動作を行ったとき非常停止状態が直ちに解除されないことで使用者100が混乱することが想定されるため、表示設定部に非常停止状態を延長している旨を表示させてもよい。
【0035】
また、使用者100が装置を非常停止させることは、管理者102にとって、清浄室の清浄度を低下させたり、使用者100の安全にかかわる重大な行為であることから、非常停止状態を上位監視機器、例えば中央制御用のパソコン等に通知し管理者102に通報させる機能があってもよい。
【0036】
次に、本実施例における制御部7が実施する非常停止状態の処理フローについて説明する。
図4は、本実施例における非常停止処理のフローチャートである。
【0037】
図4において、先ず、ステップS1の待機状態のエアシャワー装置は、ステップS2にて非常停止スイッチ6の状態を確認する。非常停止スイッチ6が押されていなければステップS2を繰り返し非常停止スイッチ6が押されるまで待つ。ここで、ステップS1の待機状態は、使用者がエアシャワー装置を使用してドアを開閉させていたりエアジェットを作動させている状態を含む。非常停止スイッチ6は、エアシャワー装置において最優先されるスイッチであるため、エアシャワー装置がどのような動作をしていてもその動作を直ちに終了させ本動作フローを発生させることができる。ステップS2において、非常停止スイッチ6が押されたと判断した場合、ステップS3に進む。ステップS3において、非常停止状態を開始し周知手段による周囲への周知を開始し、同時に上位機器を通して管理者に通報する。そして、ステップS4にて非常停止状態の継続時間をカウントするタイマを開始させる。
【0038】
ステップS5において、非常停止状態において非常停止スイッチを再度押すことで非常停止状態を解除させるが、ここでステップS6にて経過したタイマ値と設定値を比較する。タイマ値が設定値より大きい場合、ステップS7にてタイマを初期化し、ステップS8にて非常停止状態および周囲への周知を終了し、ステップS1の待機状態へ戻る。このステップS7、S8に進むということは、非常停止スイッチがエアシャワーに異常が発生するなど正当な理由で押され、その後妥当な時間をかけてその異常が解消され、非常停止状態を解除したということを意味する。
【0039】
ステップS6において、経過したタイマ値と設定値を比較した際タイマ値が設定値より大きくない場合、ステップS9に進み、非常停止延長状態を開始し、表示部に非常停止を延長している旨を表示する。このステップS9に進むということは、使用者が「すり抜け動作」を行おうとしたか、使用者が誤って短い時間で非常停止状態を解除する動作を行ってしまったということを意味する。
【0040】
次に、ステップS10にて非常停止スイッチ6の状態を検知する。非常停止スイッチ6が押されればステップS11にてタイマを初期化し、ステップS12にて非常停止状態と周囲への周知を終了する。そして、ステップS3に移行し、再び非常停止状態を開始する。このように、非常停止延長状態において非常停止スイッチを押すことで非常停止状態を延長させるようにする。
【0041】
ステップS10において非常停止スイッチ6が押されなければステップS13にてタイマ値と設定値を比較する。タイマ値が設定値より大きい場合、ステップS14にてタイマを初期化し、ステップS15にて非常停止状態および周囲への周知を終了する。そして、ステップS1の待機状態へ戻る。ステップS13にてタイマ値が設定値より大きくない場合、ステップS10に戻り、非常停止スイッチ6の状態確認に進む。
【0042】
以上のように本実施例によれば、装置に異常が発生していない場合および使用者が危険を感じていない場合において使用者が非常停止スイッチを押すことを抑制させることができ、また、非常停止状態を誤って解除したとしても使用者の安全を確保することができる産業用装置およびその制御方法を提供できる。
【0043】
なお、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例では、産業用装置として、エアシャワー装置を例にして説明したが、自動ドアや電動ドリルなどの非常停止スイッチを有する装置にも適用可能である。また、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
1:エアシャワー装置、2:エアシャワー室、3:前室側扉、4:清浄室側扉、5:センサ、6:非常停止スイッチ、7:制御部、8:表示設定部、21、22:側壁、21a、22a:エアジェット機構、100:使用者、101:後続者、102:管理者