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特開2024-83803グラフェン光素子及びグラフェン光素子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083803
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】グラフェン光素子及びグラフェン光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/10 20060101AFI20240617BHJP
   G01J 1/02 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
H01L31/10 Z
G01J1/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197833
(22)【出願日】2022-12-12
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、防衛装備庁、安全保障技術研究推進制度、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 大雄
【テーマコード(参考)】
2G065
5F149
5F849
【Fターム(参考)】
2G065AA04
2G065AB02
2G065BA08
2G065BA14
2G065BA40
5F149AB01
5F149BA01
5F149DA44
5F149HA15
5F149LA01
5F149XB12
5F849AB01
5F849BA01
5F849DA44
5F849HA15
5F849LA01
5F849XB12
(57)【要約】
【課題】赤外線の吸収率を向上することができるグラフェン光素子及びグラフェン光素子の製造方法を提供する。
【解決手段】グラフェン光素子は、複数の絶縁層と、それぞれ前記複数の絶縁層の間に設けられ、複数の開口が形成された複数のグラフェン層と、を有し、前記複数のグラフェン層に含まれる少なくとも2つのグラフェン層の間で、前記開口の形態が相違し、吸収する赤外線のピーク波長が相違する。グラフェン光素子は、例えば、宇宙衛星、自動車の測距装置に使用することができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁層と、
それぞれ前記複数の絶縁層の間に設けられ、複数の開口が形成された複数のグラフェン層と、
を有し、
前記複数のグラフェン層に含まれる少なくとも2つのグラフェン層の間で、前記開口の形態が相違し、吸収する赤外線のピーク波長が相違することを特徴とするグラフェン光素子。
【請求項2】
前記少なくとも2つのグラフェン層には、複数の円形状の開口が規則的に形成されており、
前記少なくとも2つのグラフェン層の間で、前記円形状の開口の直径が相違することを特徴とする請求項1に記載のグラフェン光素子。
【請求項3】
前記円形状の開口の直径は50nm以上500nm以下であることを特徴とする請求項2に記載のグラフェン光素子。
【請求項4】
前記少なくとも2つのグラフェン層には、複数の直線状の開口が規則的に形成されており、
前記少なくとも2つのグラフェン層の間で、前記直線状の開口の幅が相違することを特徴とする請求項1に記載のグラフェン光素子。
【請求項5】
前記直線状の開口の幅は50nm以上500nm以下であることを特徴とする請求項4に記載のグラフェン光素子。
【請求項6】
前記複数の絶縁層のうちの2つの絶縁層の間に設けられた遷移金属ダイカルコゲナイド積層体を有し、
前記遷移金属ダイカルコゲナイド積層体は、
第1遷移金属ダイカルコゲナイド層と
前記第1遷移金属ダイカルコゲナイド層と重なり合い、前記第1遷移金属ダイカルコゲナイド層とは材料が相違する第2遷移金属ダイカルコゲナイド層と、
を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のグラフェン光素子。
【請求項7】
前記絶縁層は、六方晶窒化ホウ素を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のグラフェン光素子。
【請求項8】
複数の絶縁層と、
それぞれ前記複数の絶縁層の間に設けられ、複数の開口が形成された複数のグラフェン層と、
を有する積層体を形成する工程を有し、
前記複数のグラフェン層に含まれる少なくとも2つのグラフェン層の間で、前記開口の形態が相違し、吸収する赤外線のピーク波長が相違することを特徴とするグラフェン光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、グラフェン光素子及びグラフェン光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
円形状の複数の開口が形成されたグラフェンを含むグラフェン光素子が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/145299号
【特許文献2】特開2021-168332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のグラフェン光素子では、グラフェンを透過する赤外線が多く、吸収率の向上が困難である。
【0005】
本開示の目的は、赤外線の吸収率を向上することができるグラフェン光素子及びグラフェン光素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態によれば、複数の絶縁層と、それぞれ前記複数の絶縁層の間に設けられ、複数の開口が形成された複数のグラフェン層と、を有し、前記複数のグラフェン層に含まれる少なくとも2つのグラフェン層の間で、前記開口の形態が相違し、吸収する赤外線のピーク波長が相違するグラフェン光素子が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、赤外線の吸収率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係るグラフェン光素子を示す平面図である。
図2】第1実施形態に係るグラフェン光素子を示す断面図である。
図3】第1実施形態における複数のグラフェン層の形状を比較して示す平面図である。
図4】第1実施形態に係るグラフェン光素子の製造方法を示す断面図(その1)である。
図5】第1実施形態に係るグラフェン光素子の製造方法を示す断面図(その2)である。
図6】第1実施形態に係るグラフェン光素子の製造方法を示す断面図(その3)である。
図7】第2実施形態に係るグラフェン光素子を示す断面図である。
図8】第2実施形態における複数のグラフェン層の形状を比較して示す平面図である。
図9】第3実施形態に係るグラフェン光素子を示す断面図である。
図10】第3実施形態におけるTMDC積層体の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。本明細書及び図面において、X1-X2方向、Y1-Y2方向、Z1-Z2方向を相互に直交する方向とする。X1-X2方向及びY1-Y2方向を含む面をXY面とし、Y1-Y2方向及びZ1-Z2方向を含む面をYZ面とし、Z1-Z2方向及びX1-X2方向を含む面をZX面とする。便宜上、Z1方向を上方向、Z2方向を下方向とする。また、本開示において平面視とは、Z1側から対象物を視ることをいう。
【0010】
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。第1実施形態はグラフェン光素子に関する。図1は、第1実施形態に係るグラフェン光素子を示す平面図である。図2は、第1実施形態に係るグラフェン光素子を示す断面図である。図2は、図1中のII-II線に沿った断面図に相当する。図3は、第1実施形態における複数のグラフェン層の形状を比較して示す平面図である。
【0011】
第1実施形態に係るグラフェン光素子1は、図1及び図2に示すように、主として、基板100と、絶縁層121と、グラフェン層111と、絶縁層122と、グラフェン層112と、絶縁層123と、第1電極103と、第2電極104と、第3電極105とを有する。
【0012】
基板100は、上面(Z1側の面)に絶縁性を有する。例えば、基板100は、シリコン基板101と、絶縁層102とを有する。絶縁層102はシリコン基板101の上に設けられている。絶縁層102は、例えば酸化シリコン層である。
【0013】
絶縁層121は絶縁層102の上に設けられている。絶縁層121は絶縁層102の一部の上に設けられている。絶縁層121は、例えば2次元材料である六方晶窒化ホウ素(hBN)からなる。絶縁層121は、1又は互いに積層された複数のhBNを含む。
【0014】
グラフェン層111は絶縁層121の上に設けられている。グラフェン層111は、1又は互いに積層された複数のグラフェンを含む。グラフェン層111には、図3に示すように、複数の円形状の開口111Aが形成されている。平面視で、例えば開口111Aは三角格子状に配置されている。平面視で、開口111Aは正三角格子状に配置されていることが好ましい。例えば、開口111Aの直径D11は400nmであり、開口111AのピッチP11、すなわち最近接で隣り合う開口111Aの平面視での中心間距離は600nmである。
【0015】
絶縁層122はグラフェン層111の上に設けられている。絶縁層122は、例えばhBNからなる。絶縁層122は、1又は互いに積層された複数のhBNを含む。
【0016】
グラフェン層112は絶縁層122の上に設けられている。グラフェン層112は、1又は互いに積層された複数のグラフェンを含む。グラフェン層112には、図3に示すように、複数の円形状の開口112Aが形成されている。平面視で、例えば開口112Aは三角格子状に配置されている。平面視で、開口112Aは正三角格子状に配置されていることが好ましい。例えば、開口112Aの直径D12は300nmであり、開口112AのピッチP12、すなわち最近接で隣り合う開口112Aの平面視での中心間距離は450nmである。
【0017】
絶縁層123はグラフェン層112の上に設けられている。絶縁層123は、例えばhBNからなる。絶縁層123は、1又は互いに積層された複数のhBNを含む。
【0018】
絶縁層121、グラフェン層111、絶縁層122、グラフェン層112及び絶縁層123からなる積層体130は、X1-X2方向に平行な2辺と、Y1-Y2方向に平行な2辺とを有する矩形状の平面形状を有する。
【0019】
第1電極103及び第2電極104は絶縁層102の上に設けられている。第1電極103は積層体130のX2側に設けられ、グラフェン層111及び112のX2側の端部に接する。第2電極104は積層体130のX1側に設けられ、グラフェン層111及び112のX1側の端部に接する。第1電極103及び第2電極104の材料は特に限定されず、例えば、Au、Pd、Ni、Cr又はTiが用いられてもよい。第1電極103及び第2電極104が、これら金属の積層体を含んでいてもよい。例えば、第1電極103及び第2電極104が、Ti膜と、Ti膜上に形成されたAu膜との積層体を含んでいてもよく、Cr膜と、Cr膜上に形成されたAu膜との積層体を含んでいてもよい。第1電極103と第2電極104との間で材料が共通していてもよく、相違していてもよい。
【0020】
第3電極105は基板100の下方に設けられている。第3電極105はグラフェン層111及び112のキャリア濃度を変調する制御電極として機能する。すなわち、グラフェン光素子1はバックゲート構造を備える。第3電極105の材料としては、所望の波長域の赤外線を吸収しないか、又は、吸収の程度が無視し得る程度であるグラフェンなどの材料が好適である。第3電極105の厚さが、吸収が十分に小さい厚さであれば、第3電極105の材料が所望の波長域の赤外線を吸収し得る材料であってもよい。
【0021】
グラフェン光素子1にグラフェン層111及び112の上方から赤外線が照射されると、グラフェン層111及び112はプラズモン共鳴を利用して赤外線を吸収する。グラフェン層111には、直径D11が400nmで、ピッチP11が600nmの開口111Aが形成されているため、グラフェン層111が吸収する赤外線のピーク波長は約10.3μmである。また、グラフェン層112には、直径D12が300nmで、ピッチP12が450nmの開口112Aが形成されているため、グラフェン層112が吸収する赤外線のピーク波長は約9.7μmである。
【0022】
従って、第1実施形態によれば、より波長の範囲が広い赤外線を吸収することができ、赤外線の吸収率を向上することができる。
【0023】
次に、第1実施形態に係るグラフェン光素子1の製造方法について説明する。図4図6は、第1実施形態に係るグラフェン光素子1の製造方法を示す断面図である。
【0024】
まず、図4に示すように、基板100を準備する。例えばシリコン基板101のZ1側の面を酸化することで、酸化シリコン層を絶縁層102として形成してもよい。熱酸化膜付きシリコン基板又は絶縁性基板を基板100として用いてもよい。
【0025】
次いで、図5に示すように、絶縁層102の上に積層体130を設ける。積層体130を設ける際には、例えば、絶縁層102の上に、絶縁層121、グラフェン層111、絶縁層122、グラフェン層112及び絶縁層123を順に転写する。グラフェン層111及び112は、例えば、図示しない基板上にグラフェン層を成長させ、アンチドット加工を行うことで作製することができる。
【0026】
積層体130を設けた後、図6に示すように、第1電極103、第2電極104及び第3電極105を形成する。
【0027】
このようにして、第1実施形態に係るグラフェン光素子1を製造することができる。
【0028】
なお、グラフェン層に形成される円形状の開口の直径及びピッチは特に限定されない。例えば、開口の直径は50nm以上500nm以下である。開口の直径が100nm以上400nm以下であってもよく、200nm以上400nm以下であってもよい。グラフェン層に直径が相違する複数の開口が形成されていてもよい。開口のピッチは、例えば開口の直径の1.5倍であってもよい。
【0029】
また、グラフェン光素子1が、円形状の開口が形成された3層以上のグラフェン層を含んでいてもよい。3層以上のグラフェン層の間で開口の直径が相違することで、より広い範囲の波長の赤外線を吸収することが可能となり、赤外線の吸収率を更に向上することができる。
【0030】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。第2実施形態は、主としてグラフェン層の構成の点で第1実施形態と相違する。図7は、第2実施形態に係るグラフェン光素子を示す断面図である。図7は、図1中のII-II線に沿った断面図に相当する。図8は、第2実施形態における複数のグラフェン層の形状を比較して示す平面図である。
【0031】
第2実施形態に係るグラフェン光素子2は、図7に示すように、グラフェン層111に代えてグラフェン層211を有し、グラフェン層112に代えてグラフェン層212を有する。
【0032】
グラフェン層211は、1又は互いに積層された複数のグラフェンを含む。グラフェン層211には、図8に示すように、複数の直線状の開口211Aが形成されている。例えば、開口211AはY1-Y2方向に平行に延び、X1-X2方向に等間隔で配置されている。例えば、開口211Aの幅W21は150nmであり、開口211AのピッチP21、すなわち最近接で隣り合う開口211Aの平面視での中心軸間距離は300nmである。
【0033】
グラフェン層212は、1又は互いに積層された複数のグラフェンを含む。グラフェン層212には、図8に示すように、複数の直線状の開口212Aが形成されている。例えば、開口212AはY1-Y2方向に平行に延び、X1-X2方向に等間隔で配置されている。例えば、開口212Aの幅W22は170nmであり、開口212AのピッチP22、すなわち最近接で隣り合う開口212Aの平面視での中心軸間距離は340nmである。
【0034】
他の構成は第1実施形態と同様である。
【0035】
グラフェン光素子2にグラフェン層211及び212の上方から赤外線が照射されると、グラフェン層211及び212はプラズモン共鳴を利用して赤外線を吸収する。グラフェン層211には、幅W21が150nmで、ピッチP21が300nmの開口211Aが形成されているため、グラフェン層211が吸収する赤外線のピーク波長は約9.7μmである。また、グラフェン層212には、幅W22が170nmで、ピッチP22が340nmの開口212Aが形成されているため、グラフェン層212が吸収する赤外線のピーク波長は約10.3μmである。
【0036】
従って、第2実施形態によっても、より波長の範囲が広い赤外線を吸収することができ、赤外線の吸収率を向上することができる。
【0037】
また、グラフェン層211及び212は平面視での形状異方性が高いため、光の入射方向がZ1-Z2方向から傾斜している場合、その傾斜の方向に応じて吸収率が相違する。従って、グラフェン層211及び212に偏光フィルタとしての機能を持たせることができ、所望の偏光成分を検出することも可能となる。グラフェン層211とグラフェン層212との間で開口が延びる方向が相違していてもよい。
【0038】
第2実施形態に係るグラフェン光素子2の製造にあたっては、グラフェン層111に代えてグラフェン層211を用い、グラフェン層112に代えてグラフェン層212を用いる。グラフェン層211及び212は、例えば、図示しない基板上にグラフェン層を成長させ、リボン加工を行うことで作製することができる。
【0039】
なお、グラフェン層に形成される直線状の開口の幅及びピッチは特に限定されない。例えば、開口の幅は50nm以上500nm以下である。開口の幅が100nm以上400nm以下であってもよく、200nm以上400nm以下であってもよい。グラフェン層に幅が相違する複数の開口が形成されていてもよい。
【0040】
また、グラフェン光素子2が、直線状の開口が形成された3層以上のグラフェン層を含んでいてもよい。3層以上のグラフェン層の間で開口の幅が相違することで、より広い範囲の波長の赤外線を吸収することが可能となり、赤外線の吸収率を更に向上することができる。
【0041】
幅W21を有するリボン状の複数のグラフェン層が互いに分離して並ぶことでグラフェン層211が構成されていてもよい。また、幅W22を有するリボン状の複数のグラフェン層が互いに分離して並ぶことでグラフェン層212が構成されていてもよい。
【0042】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。第3実施形態は、主として遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC)積層体を更に有する点で第1実施形態と相違する。図9は、第3実施形態に係るグラフェン光素子を示す断面図である。図9は、図1中のII-II線に沿った断面図に相当する。図10は、第3実施形態におけるTMDC積層体の構成を示す模式図である。
【0043】
第3実施形態に係るグラフェン光素子3では、図9に示すように、積層体130が、更に、TMDC積層体310と、絶縁層124とを有する。
【0044】
TMDC積層体310は絶縁層123の上に設けられている。TMDC積層体310は、第1TMDC層311と、第2TMDC層312とを有する。第1TMDC層311と第2TMDC層312との間で材料が相違している。第1TMDC層311及び第2TMDC層312は互いに重なり合い、互いに接触している。
【0045】
第1TMDC層311は、絶縁層123の一部の上に設けられている。第1TMDC層311は、例えば二硫化ハフニウム(HfS)からなる。第1TMDC層311は、1又は互いに積層された複数のHfSを含む。平面視で、第1TMDC層311のX2側の端部は、絶縁層123のX2側の端部と一致する、第1TMDC層311のX1側の端部は、絶縁層123のX1側の端部よりもX2側にある。
【0046】
第2TMDC層312は、絶縁層123の他の一部及び第1TMDC層311の一部の上に設けられている。第2TMDC層312は、例えば二硫化タングステン(WS)からなる。第2TMDC層312は、1又は互いに積層された複数のWSを含む。平面視で、第2TMDC層312のX1側の端部は、絶縁層123のX1側の端部と一致するが、第2TMDC層312のX2側の端部は、絶縁層123のX2側の端部よりもX1側にある。また、第2TMDC層312のX2側の端部は、第1TMDC層311のX1側の端部よりもX2側にある。
【0047】
絶縁層124はTMDC積層体310の上に設けられている。絶縁層124は、例えばhBNからなる。絶縁層124は、1又は互いに積層された複数のhBNを含む。
【0048】
第1電極103は、グラフェン層111及び112のX2側の端部と、第1TMDC層311のX2側の端部とに接する。第2電極104は、グラフェン層111及び112のX1側の端部と、第2TMDC層312のX1側の端部とに接する。
【0049】
他の構成は第1実施形態と同様である。
【0050】
グラフェン光素子3にグラフェン層111、グラフェン層112及びTMDC積層体310の上方から赤外線が照射されると、第1実施形態と同様に、グラフェン層111及び112がプラズモン共鳴を利用して赤外線を吸収する。また、TMDC積層体310はバンド間遷移を利用して赤外線を吸収する。すなわち、第1TMDC層311がHfSから構成され、第2TMDC層312がWSから構成される場合、TMDC積層体310はT2SL構造を有し、中赤外領域にピーク波長を有する。
【0051】
従って、第3実施形態によれば、波長の範囲が更に広い赤外線を吸収することができ、赤外線の吸収率を更に向上することができる。
【0052】
第3実施形態に係るグラフェン光素子3の製造にあたっては、絶縁層123の転写の後に、第1TMDC層311、第2TMDC層312及び絶縁層124の転写を行って積層体130を形成する。
【0053】
なお、TMDC積層体に含まれるTMDC層の材料は特に限定されない。例えば二硫化スズ(SnS)が用いられてもよい。TMDC積層体に吸収される赤外線のピーク波長は、TMDC積層体に含まれる2つのTMDC層を構成する材料のバンドエネルギーの差に応じて決定される。
【0054】
第3実施形態では、第1実施形態にTMDC積層体310及び絶縁層124が加えられているが、第2実施形態にTMDC積層体310及び絶縁層124が加えられてもよい。
【0055】
グラフェン光素子が、円形状の開口が形成されたグラフェン層と、直線状の開口が形成されたグラフェン層とを含んでもよい。
【0056】
グラフェン光素子は、例えば、宇宙衛星、自動車の測距装置に使用することができる。
【0057】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0058】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0059】
(付記1)
複数の絶縁層と、
それぞれ前記複数の絶縁層の間に設けられ、複数の開口が形成された複数のグラフェン層と、
を有し、
前記複数のグラフェン層に含まれる少なくとも2つのグラフェン層の間で、前記開口の形態が相違し、吸収する赤外線のピーク波長が相違することを特徴とするグラフェン光素子。
(付記2)
前記少なくとも2つのグラフェン層には、複数の円形状の開口が規則的に形成されており、
前記少なくとも2つのグラフェン層の間で、前記円形状の開口の直径が相違することを特徴とする付記1に記載のグラフェン光素子。
(付記3)
前記円形状の開口の直径は50nm以上500nm以下であることを特徴とする付記2に記載のグラフェン光素子。
(付記4)
前記少なくとも2つのグラフェン層の間で、前記円形状の開口のピッチが相違することを特徴とする付記2又は3に記載のグラフェン光素子。
(付記5)
前記少なくとも2つのグラフェン層には、複数の直線状の開口が規則的に形成されており、
前記少なくとも2つのグラフェン層の間で、前記直線状の開口の幅が相違することを特徴とする付記1に記載のグラフェン光素子。
(付記6)
前記直線状の開口の幅は50nm以上500nm以下であることを特徴とする付記5に記載のグラフェン光素子。
(付記7)
前記少なくとも2つのグラフェン層の間で、前記直線状の開口のピッチが相違することを特徴とする付記5又は6に記載のグラフェン光素子。
(付記8)
前記複数の絶縁層のうちの2つの絶縁層の間に設けられた遷移金属ダイカルコゲナイド積層体を有し、
前記遷移金属ダイカルコゲナイド積層体は、
第1遷移金属ダイカルコゲナイド層と
前記第1遷移金属ダイカルコゲナイド層と重なり合い、前記第1遷移金属ダイカルコゲナイド層とは材料が相違する第2遷移金属ダイカルコゲナイド層と、
を有することを特徴とする付記1乃至7のいずれかに記載のグラフェン光素子。
(付記9)
前記絶縁層は、六方晶窒化ホウ素を有することを特徴とする付記1乃至8のいずれかに記載のグラフェン光素子。
(付記10)
複数の絶縁層と、
それぞれ前記複数の絶縁層の間に設けられ、複数の開口が形成された複数のグラフェン層と、
を有する積層体を形成する工程を有し、
前記複数のグラフェン層に含まれる少なくとも2つのグラフェン層の間で、前記開口の形態が相違し、吸収する赤外線のピーク波長が相違することを特徴とするグラフェン光素子の製造方法。
【符号の説明】
【0060】
1、2、3:グラフェン光素子
111、112、211、212:グラフェン層
111A、112A、211A、212A:開口
121、122、123、124:絶縁層
130:積層体
310:TMDC積層体
311:第1TMDC層
312:第2TMDC層
図1
図2
図3
図4
図5
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図10