(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083804
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】管理装置、管理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
F23G 5/50 20060101AFI20240617BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240617BHJP
G06V 10/82 20220101ALI20240617BHJP
【FI】
F23G5/50 Q ZAB
G06T7/00 350C
G06V10/82
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197834
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 継彦
(72)【発明者】
【氏名】戸村 啓二
(72)【発明者】
【氏名】野田 秀作
(72)【発明者】
【氏名】杉本 晃輔
【テーマコード(参考)】
3K062
5L096
【Fターム(参考)】
3K062AA04
3K062AB01
3K062AC01
3K062CA01
3K062CA08
3K062CB05
3K062CB06
3K062CB08
3K062DA07
3K062DA22
3K062DA23
3K062DA25
3K062DB01
3K062DB05
3K062DB17
5L096CA02
5L096FA06
5L096FA59
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】焼却炉内を撮像した熱画像データに基づいて火格子上の廃棄物の体積を容易に導出できること。
【解決手段】火格子を備えた炉内の廃棄物を含む領域が撮像された熱画像情報の画像データを取得して画像処理を施す制御部を備える管理装置であって、制御部は、画像データを取得して記憶部に記憶させ、読み出した画像データに対して、火格子上の廃棄物の存在領域と廃棄物以外の領域との境界を識別することで境界線を生成して境界線を含む境界画像データを生成し、境界画像データに基づいて、火格子上廃棄物に対する所定軸に対応した所定断面を設定し、所定断面における境界線の上部の位置と境界線の下部の位置と火格子に廃棄物が供給される位置とをそれぞれ頂点とした3頂点を結ぶ閉曲線を設定し、所定軸に沿った複数の位置に対して閉曲線の面積を導出して、閉曲線の面積に基づいて火格子上の廃棄物の体積を導出する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を移動させる火格子を備えた廃棄物焼却炉内の前記廃棄物を含む領域が撮像された熱画像情報から生成された画像データを取得して前記画像データに対して画像処理を施す制御部を備える管理装置であって、
前記制御部は、
前記画像データを取得して記憶部に記憶させ、
前記記憶部から読み出した前記画像データに対して、前記火格子上の前記廃棄物の存在領域と、前記廃棄物以外の領域との境界を識別し、前記境界の少なくとも一部を規定する境界線を生成して、前記境界線を含む境界画像データを生成し、
前記境界画像データに基づいて、前記火格子上に存在する前記廃棄物に対する所定軸に対応した所定断面を設定し、
前記所定断面における前記境界線の上部の位置と前記境界線の下部の位置と前記火格子に前記廃棄物が供給される位置とをそれぞれ頂点とした3頂点を結ぶ閉曲線を設定し、前記所定軸に沿った複数の位置に対して前記閉曲線の面積を導出して、前記閉曲線の面積に基づいて前記火格子上の廃棄物の体積を導出する
管理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記記憶部から前記画像データを入力パラメータとして取得して、前記画像データを境界識別学習モデルに入力して、前記境界画像データを出力パラメータとして出力し、
前記境界識別学習モデルは、前記画像データを学習用入力パラメータとし、前記画像データに対して前記境界線が描画された処理画像データを学習用出力パラメータとして、機械学習によって生成された学習モデルである
請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
前記所定軸は、前記火格子と前記廃棄物が落下される段差壁との交差部分に平行に設定され、
前記所定断面は、前記所定軸に対して直交する平面であり、
前記3頂点を結ぶ閉曲線が前記平面内に設定される
請求項1に記載の管理装置。
【請求項4】
廃棄物を移動させる火格子を備えた廃棄物焼却炉内の前記廃棄物を含む領域が撮像された熱画像情報から生成された画像データを取得して前記画像データに対して画像処理を施す管理装置が実行する管理方法であって、
前記画像データを取得して記憶部に記憶させ、
前記記憶部から読み出した前記画像データに対して、前記火格子上の前記廃棄物の存在領域と、前記廃棄物以外の領域との境界を識別し、前記境界の少なくとも一部を規定する境界線を生成して、前記境界線を含む境界画像データを生成し、
前記境界画像データに基づいて、前記火格子上に存在する前記廃棄物に対する所定軸に対応した所定断面を設定し、
前記所定断面における前記境界線の上部の位置と前記境界線の下部の位置と前記火格子に前記廃棄物が供給される位置とをそれぞれ頂点とした3頂点を結ぶ閉曲線を設定し、前記所定軸に沿った複数の位置に対して前記閉曲線の面積を導出して、前記閉曲線の面積に基づいて前記火格子上の廃棄物の体積を導出する
管理方法。
【請求項5】
廃棄物を移動させる火格子を備えた廃棄物焼却炉内の前記廃棄物を含む領域が撮像された熱画像情報から生成された画像データを取得して前記画像データに対して画像処理を施す制御部を備えた管理装置の前記制御部に、
前記画像データを取得して記憶部に記憶させ、
前記記憶部から読み出した前記画像データに対して、前記火格子上の前記廃棄物の存在領域と、前記廃棄物以外の領域との境界を識別し、前記境界の少なくとも一部を規定する境界線を生成して、前記境界線を含む境界画像データを生成し、
前記境界画像データに基づいて、前記火格子上に存在する前記廃棄物に対する所定軸に対応した所定断面を設定し、
前記所定断面における前記境界線の上部の位置と前記境界線の下部の位置と前記火格子に前記廃棄物が供給される位置とをそれぞれ頂点とした3頂点を結ぶ閉曲線を設定し、前記所定軸に沿った複数の位置に対して前記閉曲線の面積を導出して、前記閉曲線の面積に基づいて前記火格子上の廃棄物の体積を導出する
ことを実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理装置、管理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ストーカ式焼却炉運転の効率化のために、焼却炉内で燃焼している廃棄物を撮像した熱画像データから火格子上の廃棄物量を導出する技術が求められている。特許文献1には焼却炉内の両側の内壁面との境界線を検出することによって、壁面における廃棄物の堆積高さを導出し、導出した堆積高さの値に基づいて廃棄物の体積を推定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、左右の壁面における高さのみに基づいて廃棄物の体積を導出しているため、廃棄物の堆積の導出において、高精度な推定は困難であった。そのため、焼却炉内を撮像した熱画像データに基づいて火格子上の廃棄物の体積を容易に導出できる技術が求められていた。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、焼却炉内を撮像した熱画像データに基づいて火格子上の廃棄物の体積を容易に導出できる管理装置、管理方法、およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る管理装置は、廃棄物を移動させる火格子を備えた廃棄物焼却炉内の前記廃棄物を含む領域が撮像された熱画像情報から生成された画像データを取得して前記画像データに対して画像処理を施す制御部を備える管理装置であって、前記制御部は、前記画像データを取得して記憶部に記憶させ、前記記憶部から読み出した前記画像データに対して、前記火格子上の前記廃棄物の存在領域と、前記廃棄物以外の領域との境界を識別し、前記境界の少なくとも一部を規定する境界線を生成して、前記境界線を含む境界画像データを生成し、前記境界画像データに基づいて、前記火格子上に存在する前記廃棄物に対する所定軸に対応した所定断面を設定し、前記所定断面における前記境界線の上部の位置と前記境界線の下部の位置と前記火格子に前記廃棄物が供給される位置とをそれぞれ頂点とした3頂点を結ぶ閉曲線を設定し、前記所定軸に沿った複数の位置に対して前記閉曲線の面積を導出して、前記閉曲線の面積に基づいて前記火格子上の廃棄物の体積を導出する。
【0007】
本発明の一態様に係る管理装置は、上記の発明において、前記制御部は、前記記憶部から前記画像データを入力パラメータとして取得して、前記画像データを境界識別学習モデルに入力して、前記境界画像データを出力パラメータとして出力し、前記境界識別学習モデルは、前記画像データを学習用入力パラメータとし、前記画像データに対して前記境界線が描画された処理画像データを学習用出力パラメータとして、機械学習によって生成された学習モデルである。
【0008】
本発明の一態様に係る管理装置は、上記の発明において、前記所定軸は、前記火格子と前記廃棄物が落下される段差壁との交差部分に平行に設定され、前記所定断面は、前記所定軸に対して直交する平面であり、前記3頂点を結ぶ閉曲線が前記平面内に設定される。
【0009】
本発明の一態様に係る管理方法は、廃棄物を移動させる火格子を備えた廃棄物焼却炉内の前記廃棄物を含む領域が撮像された熱画像情報から生成された画像データを取得して前記画像データに対して画像処理を施す管理装置が実行する管理方法であって、前記画像データを取得して記憶部に記憶させ、前記記憶部から読み出した前記画像データに対して、前記火格子上の前記廃棄物の存在領域と、前記廃棄物以外の領域との境界を識別し、前記境界の少なくとも一部を規定する境界線を生成して、前記境界線を含む境界画像データを生成し、前記境界画像データに基づいて、前記火格子上に存在する前記廃棄物に対する所定軸に対応した所定断面を設定し、前記所定断面における前記境界線の上部の位置と前記境界線の下部の位置と前記火格子に前記廃棄物が供給される位置とをそれぞれ頂点とした3頂点を結ぶ閉曲線を設定し、前記所定軸に沿った複数の位置に対して前記閉曲線の面積を導出して、前記閉曲線の面積に基づいて前記火格子上の廃棄物の体積を導出する。
【0010】
本発明の一態様に係るプログラムは、廃棄物を移動させる火格子を備えた廃棄物焼却炉内の前記廃棄物を含む領域が撮像された熱画像情報から生成された画像データを取得して前記画像データに対して画像処理を施す制御部を備えた管理装置の前記制御部に、前記画像データを取得して記憶部に記憶させ、前記記憶部から読み出した前記画像データに対して、前記火格子上の前記廃棄物の存在領域と、前記廃棄物以外の領域との境界を識別し、前記境界の少なくとも一部を規定する境界線を生成して、前記境界線を含む境界画像データを生成し、前記境界画像データに基づいて、前記火格子上に存在する前記廃棄物に対する所定軸に対応した所定断面を設定し、前記所定断面における前記境界線の上部の位置と前記境界線の下部の位置と前記火格子に前記廃棄物が供給される位置とをそれぞれ頂点とした3頂点を結ぶ閉曲線を設定し、前記所定軸に沿った複数の位置に対して前記閉曲線の面積を導出して、前記閉曲線の面積に基づいて前記火格子上の廃棄物の体積を導出することを実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る管理装置、管理方法、およびプログラムによれば、焼却炉内を撮像した熱画像データに基づいて火格子上の廃棄物の体積を容易に導出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態による廃棄物管理装置を適用した廃棄物焼却施設を模式的に示す全体構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態による焼却炉における廃棄物、廃棄物の火格子上への供給部分、および撮像部を示す側面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態による燃焼制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態による管理システムにおける廃棄物管理装置の構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態による撮像部によって撮像された燃焼中の廃棄物の透過画像データの例を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態による撮像部によって撮像した透過画像データに対して境界線を設定した境界画像データに対して、廃棄物の縦断面を設定した例を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態による管理方法を説明するためのフローチャートである。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態による焼却炉における火格子上の座標(格子線)を説明するための正面図である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態による3頂点閉曲線の設定例のx方向視を模式的に示す図である。
【
図10】
図10は、本発明の一実施形態による撮像部によって撮像した透過画像データに対して設定した廃棄物の部分体積の設定の例を示す図である。
【
図11A】
図11Aは、本発明の一実施形態による3頂点閉曲線の設定例のx方向視の第1変形例を模式的に示す図である。
【
図11B】
図11Bは、本発明の一実施形態による3頂点閉曲線の設定例のx方向視の第2変形例を模式的に示す図である。
【
図11C】
図11Cは、本発明の一実施形態による3頂点閉曲線の設定例のx方向視の第3変形例を模式的に示す図である。
【
図11D】
図11Dは、本発明の一実施形態による3頂点閉曲線の設定例のx方向視の第4変形例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の一実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。また、本発明は以下に説明する一実施形態によって限定されるものではない。
【0014】
上述したように、焼却炉の運転の効率化のために、焼却炉内を撮像した熱画像データから火格子上の廃棄物量を把握する技術が求められていたが、焼却炉内を撮像した熱画像データに対する画像処理によって、廃棄物量を高精度に推定することは困難であった。この点、本発明者の知見によれば、ストーカ式の焼却炉(以下、火格子式焼却炉)においては、供給口から段差壁で落下されて供給された廃棄物は、火格子によって移動されながら燃焼される。そのため、火格子上に堆積する廃棄物の断面形状を、段差壁と火格子との交差部分、廃棄物の上点、および火格子上の廃棄物の燃焼点をそれぞれ頂点とする単純閉曲線(単一閉曲線またはジョルダン曲線ともいう)、すなわち、三角形や直角三角形や3つの頂点を結んだ閉曲線によって近似できる。本明細書においては、各種の三角形や3つの頂点を結んだ単純閉曲線を3頂点閉曲線という。一方、例えば深層学習(ディープラーニング)などの画像信号処理によって火格子上に堆積された廃棄物の外縁の境界線を検出し、閉曲線のモデルを適用することによって、廃棄物の分布形状を精度良く推定することができる。これにより、本発明者は、火格子上の廃棄物の境界線を検出すれば、廃棄物量を導出できることを想到した。以下に説明する一実施形態は、以上の本発明者の鋭意検討に基づいて、案出されたものである。
【0015】
(廃棄物管理システム)
図1は、本発明の一実施形態による廃棄物管理装置が適用される焼却施設としての廃棄物焼却施設を示す全体構成図である。
図1に示すように、一実施形態による廃棄物管理システム1は、ネットワーク2を介して互いに通信可能な、監視燃焼制御装置30および廃棄物管理装置40を有する。監視燃焼制御装置30は、所定施設としての廃棄物焼却炉100を制御可能に構成される。
【0016】
ネットワーク2は、インターネット回線網や携帯電話回線網などから構成される。ネットワーク2は、例えば、インターネットなどの公衆通信網であって、WAN(Wide Area Network)や、携帯電話などの電話通信網や、WiFiなどの無線通信網などのその他の通信網を含んでも良い。なお、監視燃焼制御装置30と廃棄物管理装置40との間の通信において送受信されるデータは、廃棄物焼却炉100の運転に重要な運転管理指標を含む場合がある。この場合、送受信データのセキュリティを考慮すると、監視燃焼制御装置30と廃棄物管理装置40との間の通信回線は、専用線またはVPN回線とすることが可能である。また、監視燃焼制御装置30および廃棄物管理装置40を一体に構成しても良く、監視燃焼制御装置30および廃棄物管理装置40を廃棄物焼却炉100と同じ施設内に設置しても別の施設に設置しても良い。廃棄物焼却炉100と監視燃焼制御装置30と廃棄物管理装置40とを別々の施設に設置する場合には、ネットワーク2を介して各種情報や各種データの通信が行われる。
【0017】
(廃棄物焼却炉)
図1に示すように、例えば火格子式のごみ焼却炉などの廃棄物焼却炉100は、廃棄物であるごみの燃焼が行われる炉101、ごみを投入するごみ投入口102、およびボイラ109を備える。なお、ボイラ109は、炉101の炉出口107の下流側に設置された熱交換器109aおよび蒸気ドラム109bを備える。
【0018】
ごみ投入口102から投入されたごみは、ごみ供給装置103によって火格子104に搬送される。火格子104が往復運動を行うことにより、ごみの撹拌および移動が行われる。火格子104上のごみは、火格子104の下方の風箱に燃焼用空気ブロア106により供給される燃焼用空気の吹き込みによって乾燥されながら燃焼されて、排ガスおよび灰が生成される。生成された灰は、灰落下口105を通じて落下して炉101の外部に排出される。
【0019】
火格子104の下から炉101の内部に供給される燃焼用空気の総量は、燃焼用空気ブロア106の直近に設けた燃焼用空気ダンパ114によって調整される。それぞれの風箱に供給される燃焼用空気の流量は、それぞれの風箱に燃焼用空気を供給する配管にそれぞれ設けられた、火格子下燃焼用空気ダンパ114a,114b,114c,114dによって調整される。すなわち、火格子下燃焼用空気ダンパ114a~114dによって、それぞれの風箱に供給される燃焼用空気の流量の比率が調整される。なお、
図1においては、ごみの搬送方向に沿って火格子104の下を4つの風箱で分割し、それぞれの風箱を通じて燃焼用空気を供給しているが、火格子下燃焼用空気ダンパ114a~114dおよび風箱の数は必ずしも4つに限定されず、ごみ焼却炉の規模や目的などに応じて適宜変更可能である。
【0020】
さらに、燃焼用空気ダンパ114には、例えば直列に接続された燃焼空気温度ダンパ126aと、並列に接続された燃焼空気温度ダンパ126bとが連結されている。これらの燃焼空気温度ダンパ126a,126bによって、火格子104の下から炉101の内部に供給される燃焼用空気の温度が調整される。
【0021】
炉101の炉壁や天井に設けられた冷却用空気吹き込み口110からは、冷却用空気ブロア111によって冷却用空気が炉101内に吹き込まれる。冷却用空気が炉101内に吹き込まれることによって、燃焼ガス中の未燃焼成分がさらに燃焼するとともに、炉壁の温度が過度に上昇することを抑制する。冷却用空気吹き込み口110から炉101内に供給される冷却用空気の流量は、冷却用空気ブロア111の直近に設けられた冷却用空気ダンパ115によって調整される。炉101の天井などには、再循環ブロワ127によって排ガス処理装置(図示せず)の出口からの排ガスを燃焼空気に混合して炉101内に再循環させる際の、排ガスおよび燃焼空気の流量を調整する排ガス再循環空気ダンパ128が設けられている。排ガス再循環空気ダンパ128による低空気比燃焼によって燃焼時のNOxの発生を抑制することが可能となる。
【0022】
火格子104におけるごみの搬送方向に沿って、上流側のごみ乾燥過程および主燃焼過程において発生した可燃性ガスと、下流側の後燃焼過程において発生した燃焼排ガスとは、炉101の炉出口107側に設けられたガス混合部において合流する。ガス混合部において合流した可燃性ガスおよび燃焼排ガスは、再度攪拌および混合された後、二次燃焼用空気の供給によって、二次燃焼が行われる。ボイラ109は、二次燃焼が行われる部分(以下、二次燃焼部)に対して、ごみの搬送方向に沿った下流側に設置されている。二次燃焼が行われた燃焼ガスは、ボイラ109の熱交換器109aによって熱エネルギーが回収された後に、煙突108から外部に排気される。
【0023】
炉101内には、炉101の高さ方向に沿った上側の位置に中間天井116が設けられている。炉101内に流動するガスは、中間天井116によって、上流側におけるごみ乾燥過程および主燃焼過程で発生した可燃性ガスを多く含むガスと、下流側における後燃焼過程で発生した燃焼排ガスとに、分割して排出できる。具体的には、燃焼排ガスが中間天井116よりも下方の煙道(主煙道)を流れる一方、可燃性ガスを多く含むガスが中間天井116よりも上方の煙道(副煙道)を流れる。燃焼排ガスと可燃性ガスを多く含むガスとがガス混合部において合流することによって、ガス混合部でのガスの攪拌および混合がさらに促進される。これにより、二次燃焼部における燃焼がより安定化し、燃焼過程におけるダイオキシン類の発生を抑制し、ごみの未燃分の発生を抑制することができる。なお、炉101内に中間天井116を設けない構成にしても良い。
【0024】
炉101内の複数位置に、炉101内のガス温度を計測するセンサとしての温度計が設けられている。具体的には、炉101の高さ方向に沿って、火格子104と冷却用空気吹き込み口110との中間位置に燃焼室ガス温度計117が設けられている。
【0025】
炉101の高さ方向に沿って、炉出口107より下方位置に主煙道ガス温度計118が設けられている。炉101の高さ方向に沿って、炉出口107の下部位置に炉出口下部ガス温度計119が設けられている。炉101の高さ方向に沿って、炉出口107の中部位置に炉出口中部ガス温度計120が設けられている。炉101の高さ方向に沿って、炉出口107の下流側位置に燃焼管理温度を測定する炉出口ガス温度計121が設けられている。燃焼室ガス温度計117、主煙道ガス温度計118、炉出口下部ガス温度計119、炉出口中部ガス温度計120、および炉出口ガス温度計121により計測された温度の計測値は、燃焼プロセス測定値として監視燃焼制御装置30の記憶部34(
図3参照)に記憶される。記憶部34に記憶された温度の計測値のデータは、測定値データとして、監視燃焼制御装置30から廃棄物管理装置40に送信しても良い。
【0026】
ボイラ109には、出口側に排ガス中の酸素(O2)の濃度を計測するボイラ出口酸素濃度計122が設けられている。煙突108の入口には、排ガス中の一酸化炭素(CO)および窒素酸化物(NOx)の濃度を計測するガス濃度計123が設けられている。ボイラ109の出口と煙突108とを接続する配管には、排ガス量を計測するための排ガス流量計124が設けられている。ボイラ出口酸素濃度計122、ガス濃度計123、および排ガス流量計124により計測されたガスの濃度や流量の計測値は、燃焼プロセス測定値として監視燃焼制御装置30の記憶部34に記憶される。なお、燃焼プロセス測定値は単に測定値ともいう。
【0027】
炉101における廃棄物の搬送方向の下流側には、撮像部125が設けられている。撮像部125は、例えば赤外線カメラから構成される火炎透過カメラ、および撮像した画像データを処理する画像処理部を有して構成される。撮像部125は、火格子104上のごみの燃焼状態を撮像して、撮像した熱画像情報から生成された熱画像データである透過画像データを監視燃焼制御装置30の記憶部34に記憶させる。さらに、撮像部125は、火格子104上のごみの燃焼状態を撮像して、撮像した透過画像データは、廃棄物管理装置40の記憶部42の例えば撮像画像データベース421(
図4参照)に記憶させても良い。
【0028】
図2は、撮像部125の設置状態を示す側面図である。本実施形態において撮像部125は、
図2に示すように、例えば廃棄物供給部112および段差壁113に対して略正対する位置に設置される。なお、撮像部125の設置は、廃棄物供給部112および段差壁113に対して略正対する位置に限定されない。撮像部125の設置位置は、少なくとも火格子上廃棄物52と、他の物体、ここでは段差壁113および火格子104との境界部分が撮像可能であれば、種々の位置に設置可能である。撮像部125は、炉壁101aに設けられた監視窓に近接して炉外に配設されても、水冷構造を有して炉101内に配設されても良い。
図2に示すように、廃棄物50は、段差壁113の部分で廃棄物供給部112から火格子104上に落下する。火格子104上に落下した廃棄物50は、火格子104の前後移動に伴う往復運動によって攪拌されつつ、撮像部125側である前方に移動される。
【0029】
(監視燃焼制御装置)
図3は、監視燃焼制御装置30の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、監視燃焼制御装置30は、算出制御部31、操作量基準値調整部32、操作量基準値補正部33、記憶部34、操作量調整部35、通信部36を備える。算出制御部31、操作量基準値調整部32、操作量基準値補正部33、および操作量調整部35は、具体的に、ハードウェアを有するCPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのプロセッサ、およびRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの主記憶部(いずれも図示せず)を備える。
【0030】
記憶部34は、RAMなどの揮発性メモリ、ROMなどの不揮発性メモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、ハードディスクドライブ(HDD、Hard Disk Drive)、およびリムーバブルメディアなどから選ばれた記憶媒体から構成される。なお、リムーバブルメディアは、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリ、または、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、もしくはBD(Blu-ray(登録商標) Disc)のようなディスク記録媒体である。また、記憶部34を、外部から装着可能なメモリカードなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体を用いて構成しても良い。
【0031】
記憶部34には、監視燃焼制御装置30の動作を実行するための、オペレーティングシステム(Operating System:OS)、各種プログラム、各種テーブル、各種データベースなどが記憶可能である。ここで、各種プログラムには、本実施形態による学習モデルや学習済みモデルなどのモデルに基づいた処理を実現する、情報処理プログラムも含まれる。これらの各種プログラムは、ハードディスク、フラッシュメモリ、CD-ROM、DVD-ROM、フレキシブルディスクなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して広く流通させることも可能である。記憶部34には、外部から入力された焼却量設定値や蒸発量設定値を情報として格納する設定値データベース341と、廃棄物焼却炉100から取得した燃焼に関連するプロセス測定値を情報として格納する測定値データベース342とを有する。なお、記憶部34は、種々のネットワークを介して通信可能な他のサーバに設けても良い。
【0032】
監視燃焼制御装置30は、あらかじめ定められた操作量基準値設定関係式に基づいて、それぞれの操作端の操作量として、燃焼用空気量、冷却用空気量、ごみ供給装置送り速度、および火格子送り速度を制御する。なお、監視燃焼制御装置30は、ごみ供給装置送り速度および火格子送り速度については、停止や運転操作の制御も行う。操作量基準値設定関係式は、ごみ焼却量設定値またはごみ質設定値と操作量基準値(操作量の目標値)との関係式であって、補正係数としての制御パラメータを含む。制御パラメータは、操作量基準値調整部32によって、ごみ焼却量設定値、およびごみ質設定値に適合するように調整される。調整された制御パラメータは、ごみ焼却量設定値およびごみ質設定値のうちの少なくとも一方の設定値が変更された際に、変更された設定値に対応して、操作量基準値調整部32により変更される。制御パラメータが変更されることにより、あらかじめ設定された操作量基準値が補正される。
【0033】
算出制御部31は、種々の制御および算出を実行する。具体的に例えば、算出制御部31は、所定期間、例えば1日間(24時間)において廃棄物焼却炉100における廃棄物の燃焼により生じる時間単位の蒸発量を、蒸発量設定値として導出する。また例えば、算出制御部31は、ごみ算出部として機能する場合、ごみ焼却量設定値に応じてごみ質(ごみの低位発熱量)を算出する。操作量基準値調整部32は、操作量基準値設定関係式に含まれる制御パラメータの調整により操作量基準値を調整する。操作量基準値補正部33は、操作量基準値調整部32によって調整された操作量基準値を所定の制御アルゴリズム(PID制御やファジィ演算等)に基づいて補正する。なお、算出制御部31、操作量基準値調整部32、および操作量基準値補正部33によって参照されるデータは、記憶部34に読み出し可能に格納されている。記憶部34は、あらかじめ定められた操作量基準値設定関係式、および制御アルゴリズムと、廃棄物管理装置40から送信された日々の蒸発量設定値および焼却量設定値、さらに廃棄物焼却炉100から送信され、炉101内の燃焼状態量として取得した燃焼プロセス測定値が格納されている。
【0034】
操作量調整部35は、操作量基準値に追従するように各操作端のそれぞれの操作量を調整する。具体的に操作量調整部35は、燃焼用空気量調整部351、空気量比率調整部352、冷却用空気量調整部353、ごみ供給装置送り速度調整部354、火格子送り速度調整部355、燃焼用空気温度調整部356、および排ガス再循環空気流量調整部357を有する。
【0035】
燃焼用空気量調整部351は、燃焼用空気量が操作量基準値補正部33により補正された操作量基準値(以下、補正操作量基準値)に追従するように操作量を調整する。空気量比率調整部352は、火格子下燃焼用空気ダンパ114a~114dのそれぞれを制御して、それぞれの風箱における流量の相互の比率を調整する。冷却用空気量調整部353は、冷却用空気量が補正操作量基準値に追従するように操作量を調整する。ここで、燃焼用空気量および冷却用空気量の調整は、燃焼用空気ダンパ114、火格子下燃焼用空気ダンパ114a~114d、および冷却用空気ダンパ115のそれぞれの開度を制御して調整する。ごみ供給装置送り速度調整部354は、ごみ供給装置送り速度が補正操作量基準値に追従するように操作量を調整する。火格子送り速度調整部355は、火格子送り速度が補正操作量基準値に追従するように操作量を調整する。燃焼用空気温度調整部356は、燃焼用空気の温度が補正操作量基準値に追従するように、燃焼空気温度ダンパ126a,126bをそれぞれ制御する。排ガス再循環空気流量調整部357は、再循環させる排ガスおよび空気の流量が補正操作量基準値に追従するように排ガス再循環空気ダンパ128を制御する。操作量調整部35は、操作量基準値補正部33により操作量基準値が補正されなかった場合には、その補正されていない操作量基準値に基づいてそれぞれの操作量を調整する。
【0036】
通信部36は、例えば、LAN(Local Area Network)インターフェースボード、無線通信のための無線通信回路である。LANインターフェースボードや無線通信回路は、公衆通信網であるインターネットなどのネットワーク2に接続される。通信部36は、ネットワーク2に接続して、廃棄物管理装置40やその他の装置やサーバとの間で通信可能に構成される。
【0037】
(廃棄物管理装置)
図4は、廃棄物管理装置40の構成を概略的に示すブロック図である。
図4に示すように、廃棄物管理装置40は、ネットワーク2を介して通信可能な、一般的なコンピュータの構成を有する。廃棄物管理装置40は、制御部41、記憶部42、通信部43、および入出力部44を備える。制御部41、記憶部42、および通信部43はそれぞれ、物理的および機能的には、上述した算出制御部31、記憶部34、および通信部36と同様である。廃棄物管理装置40は、廃棄物50の体積を導出したり推定したりする廃棄物50の体積推定装置や、燃焼点の位置を測定する燃焼点の位置測定装置として機能する。
【0038】
制御部41は、記憶部42に記憶されたプログラムを主記憶部の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて各構成部などを制御することによって、所定の目的に合致した機能を実現できる。本実施形態においては、制御部41は、記憶部42に格納されたプログラムの実行によって、境界生成部411、体積演算部412、および学習部413の機能を実行する。具体的に例えば、制御部41は、記憶部42からプログラムである境界識別学習モデル423を読み込むことによって、境界生成部411の機能を実行する。また、制御部41は、記憶部42から体積演算プログラムを読み込むことによって、体積演算部412の機能を実行する。境界生成部411、体積演算部412、および学習部413の機能の詳細については、後述する。
【0039】
記憶部42は、機能的および物理的には、上述した記憶部34と同様の構成を有し、RAMなどの揮発性メモリ、ROMなどの不揮発性メモリ、EPROM、HDD、およびリムーバブルメディアなどから選ばれた記憶媒体から構成される。なお、リムーバブルメディアは、例えば、USBメモリ、または、CD、DVD、もしくはBDのようなディスク記録媒体である。また、外部から装着可能なメモリカードなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体を用いて記憶部42を構成しても良い。
【0040】
記憶部42には、廃棄物管理装置40の動作を実行するためのOS、各種プログラム、各種テーブル、各種データベースなどが記憶可能である。ここで、各種プログラムには、本実施形態による学習モデルまたは学習済みモデルを用いた制御を実現する情報処理プログラムが含まれる。記憶部42は、種々のネットワークを介して通信可能な他のサーバに設けても良いし、監視燃焼制御装置30に設けても良い。
【0041】
記憶部42には具体的に、撮像画像データベース421、体積情報データベース422、および境界識別学習モデル423が格納されている。なお、本実施形態において説明するデータベース(DB)は、上述したプロセッサによって実行されるデータベース管理システム(Database Management System:DBMS)のプログラムが、記憶部42に記憶されるデータを管理することによって構築される。撮像画像データベース421には、撮像部125によって撮像されて得られた透過画像データや、境界生成部411によって生成された境界画像データなどの炉101内の撮像画像データが検索可能に格納されている。体積情報データベース422には、撮像部125によって撮像された透過画像データに基づいて得られた境界画像データから、体積演算部412が演算した炉101内における火格子104上の廃棄物50の体積情報が検索可能に格納されている。これらのデータベース421,422は、例えばリレーショナルデータベース(RDB)である。なお、記憶部42に格納されているデータベースは、以上のデータベースに限定されない。
【0042】
境界識別学習モデル423は、少なくとも1つの学習モデルを含む更新可能なモデルである。なお、学習モデルを更新しない場合には、学習済みモデルとして記憶部42に格納される。境界識別学習モデル423は、透過画像データや境界画像データなどの炉101内の画像データに基づいて、燃焼領域を抽出する処理を実行可能な学習モデルである燃焼状態学習モデルを含んでいても良い。また、境界識別学習モデル423の代わりに、入力されたデータに対して所定の情報処理を実行する、学習などを行わずに作成されたルールベースの情報処理プログラムを用いても良い。さらに、撮像部125によって撮像された輝炎自体の燃焼画像のデータから所定の判断を実行可能な、燃焼画像学習モデルを用いた判断処理を実現する自動判断処理プログラムが含まれていても良い。これらの各種プログラムは、ハードディスク、フラッシュメモリ、CD-ROM、DVD-ROM、フレキシブルディスクなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して広く流通させることも可能である。
【0043】
出力手段としての入出力部44は、制御部41による制御に従って、例えば有機ELパネルや液晶表示パネルなどからなるディスプレイモニタに、炉101内の廃棄物50の画像などを表示したり、タッチパネルディスプレイの画面上に文字や図形などを表示したり、スピーカから音声を出力したりする。入力手段としての入出力部44は、キーボードや入力用のボタン、レバーや、液晶などのディスプレイに重畳して設けられる手入力のためのタッチパネル、または音声認識のためのマイクロホンなどの、ユーザインターフェースを用いて構成される。ユーザなどが入出力部44を操作することによって、制御部41に所定の情報を入力可能に構成される。すなわち、入出力部44は、例えば、キーボードや表示部の内部に組み込まれて表示パネルのタッチ操作を検出するタッチパネル式キーボード、または外部との間の通話を可能とする音声入力デバイスなどから構成される。なお、入出力部44を、出力部と入力部とを別体として構成しても良い。
【0044】
(境界識別学習モデル)
次に、以上のように構成された廃棄物管理システム1による管理方法において廃棄物管理装置40に用いられる記憶部42に記憶されている境界識別学習モデル423およびその生成方法について説明する。
図5は、本実施形態の撮像部125によって撮像された燃焼中の廃棄物の透過画像データの例を示す図である。
図6は、本実施形態による撮像部125により撮像された透過画像データに対して境界線を生成した境界画像データの例を示す図である。
【0045】
図5に示すように、撮像部125は、炉101内において、廃棄物供給部112および火格子104上に供給される前の供給前廃棄物51、段差壁113、火格子104および火格子104上の火格子上廃棄物52、ならびに炉壁101aを、火炎を透過した状態で撮像して透過画像データとして出力する。境界識別学習モデル423は、
図6に示すように、撮像部125が撮像した透過画像データに対して、廃棄物50と他の物体との境界に対して境界線531を生成する処理を実行する。
図6に示す例では、火格子上廃棄物52と、段差壁113、炉壁101a、および火格子104との境界に境界線531が描画される。境界線531の描画によって、境界画像データは、火格子104上に存在する火格子上廃棄物52の外縁を規定することができる。
【0046】
境界識別学習モデル423の生成のために用いられるデータは、撮像部125が撮像した透過画像データ、および透過画像データに対して境界が識別されて上述した境界線531が描画処理された処理画像データ(以下、境界画像データ)である。透過画像データおよび境界画像データの数は、例えばそれぞれ、100以上とするのが好ましい。すなわち、生成のために用いられる境界画像データは、作業者によって、透過画像データに対して、廃棄物50と、廃棄物供給部112、段差壁113、炉壁101a、および火格子104とのそれぞれの境界に対して境界線531が描画された画像データである。境界識別学習モデル423を生成する際の入出力データセットとしては、学習用入力パラメータとして透過画像データが用いられ、学習用出力パラメータとして境界画像データが用いられる。制御部41の学習部413は、上述した学習用入力パラメータおよび学習用出力パラメータを教師データとして、例えばU-Netなどの階層型畳み込みニューラルネットワーク(階層型CNN)を用いたディープラーニング(深層学習)によって、境界識別学習モデル423を生成する。制御部41は、学習部413により学習された内容に基づいて、透過画像データから境界画像データを生成する。また、学習部413は、入力された透過画像データ、および作業者が境界を修正したり描画したりすることで得られた境界画像データを用いて、境界識別学習モデル423を適宜更新する。
【0047】
また、境界識別学習モデル423が燃焼状態学習モデルを含む場合においては、燃焼状態学習モデルを生成する際の入出力データセットとしては、学習用入力パラメータとして透過画像データまたは境界画像データが用いられ、学習用出力パラメータとして所定の燃焼状態を抽出した抽出画像データが用いられる。
【0048】
すなわち、燃焼状態学習モデルの学習用入力パラメータは、撮像部125が撮像した透過画像データ、および境界生成部411が境界識別学習モデル423に基づいて生成した境界画像データの少なくとも一方とする。また、燃焼状態学習モデルの生成のために用いられる学習用出力パラメータは、作業者によって、透過画像データまたは境界画像データに対して、火格子上廃棄物52と他の領域との境界、および燃焼温度が所定温度以上の火格子上廃棄物52と所定温度未満の火格子上廃棄物52を含む他の領域との境界が描画処理された抽出画像データとする。なお、熱画像カメラなどを備えた撮像部125は、廃棄物50の温度分布に基づいた透過画像データを出力することができる。この場合、出力された透過画像データは、例えば、温度が高いほど輝度が高くされ、温度が低いほど輝度が低くされた画像データとして出力できる。これにより、透過画像データから火格子上廃棄物52を抽出し、抽出した火格子上廃棄物52において、所定温度以上となる高温の領域を燃焼領域として抽出することによって抽出画像データを生成できる。このように、輝度によって温度分布が把握できる透過画像データに対して、火格子上廃棄物52と燃焼領域とを抽出した抽出画像データを境界画像データとして用いても良い。
【0049】
学習に用いる透過画像データ、境界画像データ、および抽出画像データの数はそれぞれ、例えば100以上が好ましい。制御部41の学習部413は、上述した学習用入力パラメータおよび学習用出力パラメータを教師データとして、例えばニューラルネットワークを用いたディープラーニングなどの機械学習によって、燃焼状態学習モデルを生成する。制御部41は、学習部413により学習された内容に基づいて、透過画像データまたは境界画像データから抽出画像データを生成する。また、学習部413は、入力された透過画像データまたは境界画像データ、および作業者が境界を修正したり描画したりすることで得られた抽出画像データを用いて、燃焼状態学習モデルを適宜更新できる。
【0050】
(管理方法)
次に、以上のように構成された廃棄物管理システム1の廃棄物管理装置40によって実行される管理方法について説明する。
図7は、本実施形態による管理方法を説明するためのフローチャートである。
図8は、本実施形態による炉101内の火格子104上の座標(格子線)を説明するための正面図である。
図9は、3頂点閉曲線の設定例のx方向視を模式的に示す図である。
図10は、撮像部125によって撮像した透過画像データに対して設定した廃棄物の部分体積の設定の例を示す図である。なお、以下の説明においては、
図5および
図6も適宜参照しつつ説明を行う。本実施形態において、ステップST1は炉101における撮像部125、ステップST2~ST7は廃棄物管理装置40が行う処理である。
【0051】
図7に示すように、ステップST1において撮像部125は、炉101内を撮像する。撮像部125は、視野内における炉101内の状況を、火炎を透過した画像として撮像する。撮像部125は具体的に、
図5に示すように、廃棄物供給部112における供給前廃棄物51、段差壁113、火格子上廃棄物52、火格子104、および炉壁101aを、輝炎を透過した状態として撮像する。なお、供給前廃棄物51については撮像しなくても良い。撮像部125は、撮像した透過画像データを、廃棄物管理装置40の入出力部44を通じて、制御部41に送信する。制御部41は、受信した透過画像データを記憶部42の撮像画像データベース421に格納する。
【0052】
図8に示すように、撮像部125は例えば、炉101の上下方向(z方向)、左右方向(炉幅方向:x方向)、および火格子104上の搬送方向(y方向)に拡がる測定視野を有する。本実施形態において撮像部125の視野は少なくとも、廃棄物供給部112、段差壁113、火格子104、および炉壁101aである。撮像部125の視野に含まれる炉壁101aは、廃棄物50の左右方向の外側への移動、すなわち拡がりを規制する。なお、撮像部125の視野としては、火格子104上に存在する火格子上廃棄物52と、炉壁101a、火格子104、および段差壁113との境界部分を撮像可能な視野を有すれば良い。また、撮像部125は、廃棄物供給部112まで搬送された廃棄物50を撮像できるのが好ましい。これにより、段差壁113の位置で落下する廃棄物50を撮像できる。
【0053】
また、廃棄物管理装置40の体積演算部412は、段差壁113の下端、すなわち段差壁113と火格子104との交差部分の左右方向(x方向)の位置xに対する、火格子104の搬送方向(y方向)の座標を設定する。すなわち、撮像画像データの2次元の画面において、火格子104の上面に対して例えば格子状の座標(x,y)を設定する。ここで、所定軸としてのx方向とy方向とは通常は互いに直交するが、必ずしも直交に限定されない。また、x方向およびy方向によって設定された平面に対する炉101の上下方向(高さ方向)にz方向を設定する。ここで、z方向とy方向とは通常は互いに直交するが、必ずしも直交に限定されず、z方向とx方向とについても通常は互いに直交するが、必ずしも直交に限定されない。以上の設定によって、撮像画像データの2次元の画面に対して、3次元座標(x,y,z)を設定できる。これにより、体積演算部412は、撮像画像データの2次元の画面において、段差壁113近傍の廃棄物50の堆積高さをx座標に対応したz座標で規定できるとともに、火格子104上の搬送方向に沿った下流側の端部をx座標に対応したy座標で規定できる。
【0054】
次に、
図7に戻ってステップST2に移行し、廃棄物管理装置40の境界生成部411は、境界識別学習モデル423を読み込んで、撮像部125から取得した透過画像データ(
図5参照)に対し、廃棄物50と、廃棄物供給部112、段差壁113、炉壁101a、および火格子104との境界を判断する。なお、境界生成部411は、ルールベースの画像識別アルゴリズムによって、廃棄物50と、廃棄物供給部112と、段差壁113と、炉壁101aと、火格子104とを相互に識別して、それらの境界を判断しても良い。
【0055】
次に、ステップST3に移行して境界生成部411は、透過画像データに対して、廃棄物50の存在領域と他の物体との境界、すなわち廃棄物50と、廃棄物供給部112、段差壁113、炉壁101a、および火格子104とのそれぞれの境界に対して境界線531を描画する。これにより、境界生成部411は、
図6に示すように、例えば、透過画像データに対して、段差壁113、火格子104、および炉壁101aと火格子上廃棄物52との境界に対して境界線531を描画する。換言すると、境界生成部411は、火格子上廃棄物52の外縁を囲むように境界線531を描画する。以上により、境界生成部411は、透過画像データに対して境界線531が描画された境界画像データを生成する。境界生成部411は、生成した境界画像データを体積演算部412に出力する。
【0056】
次に、
図7に示すステップST4に移行して制御部41の体積演算部412は、火格子上廃棄物52の層の高さ(以下、廃棄物層高さz)を算出する。具体的に、廃棄物管理装置40の体積演算部412は、境界線531における段差壁113と火格子上廃棄物52との境界部分に基づいて、廃棄物層高さzを算出する。ここで、
図6に示すように、境界線531における段差壁113と火格子上廃棄物52との境界部分は凹凸状である。体積演算部412は、境界画像データにおいてあらかじめ設定された火格子104と段差壁113との交差部分に沿ったx方向の任意の位置座標x
0に対応した境界線531の高さの座標z
0を導出する。
【0057】
次に、
図7に示すステップST5に移行して体積演算部412は、燃焼点の位置測定装置として機能して、火格子上廃棄物52の火格子104上の搬送方向に沿った手前位置、つまり燃焼点の位置測定を実行する。すなわち、火格子上廃棄物52と火格子104との境界線531のうちの手前位置の境界線531aは、廃棄物50の具体的な燃焼点となる。なお、通常、廃棄物50の具体的な燃焼点は、凹凸状である。体積演算部412は、境界画像データにおいてあらかじめ設定された火格子104と段差壁113との交差部分に沿ったx方向の任意の位置座標x
0に対応した境界線531aの手前位置の座標y
0を導出する。以上のステップST5,ST6は、上述した順序に限定されず、並行して行っても、逆順に行っても、任意の順序で行っても良い。
【0058】
その後、ステップST6に移行して体積演算部412は、ステップST4,ST5によって導出した、x方向の位置座標x0に対応した、境界線531の高さの座標z0、および境界線531aの手前位置の座標y0に基づいて、3点を導出する。ここで、x方向の位置座標x0に対応した、境界線531の高さの座標z0、および境界線531aの手前位置の座標y0における3点について説明する。
【0059】
すなわち、
図9に示すように、体積演算部412は、境界画像データにおいて、火格子104上の火格子上廃棄物52における段差壁113と火格子104との交差部分に沿ったx方向における所定位置x
0を点A(x
0,0,0)とする。また、体積演算部412は、境界画像データにおいて点Aに対応した段差壁113の近傍の火格子上廃棄物52の位置(境界線531の上端)を点B(x
0,0,z
0)とする。さらに、体積演算部412は、境界画像データにおいて点Aに対応した燃焼点(境界線531aの手前位置)を点C(x
0,y
0,z
0)とする。
【0060】
体積演算部412は、境界画像データにおいて、点A,B,Cを結んだ単純閉曲線からなる3頂点閉曲線を設定する。3頂点閉曲線ABCは、火格子104上に存在する火格子上廃棄物52の縦断面に相当する。所定断面である縦断面は通常、x方向に対して直交する平面とすることが好ましいが、限定されない。ここで、
図9に示す例においては、辺AB、辺AC、および辺BCが直線の三角形を3頂点閉曲線として設定する。なお、頂角Aの角度は90°が通常であるが、必ずしも限定されない。また、辺ACは、火格子104の上面の形状に基づいて設定可能であり、辺ABは、段差壁113の側面の形状に基づいて設定可能である。また、辺BCは、
図9中点線で示すように、上方に盛り上がった曲線に設定しても、下方に凹んだような曲線に設定しても良い。
【0061】
さらに、体積演算部412は、点A,B,Cを頂点とした例えば三角形などの3頂点閉曲線ABCの面積を導出する。3頂点閉曲線ABCの面積S(x)はx方向に沿って変化するため、以下の(1)式で表すことができる。
3頂点閉曲線ABCの面積=S(x) …(1)
【0062】
体積演算部412は、上述した点A,B,Cの導出、および3頂点閉曲線ABCの面積の導出を、x方向に沿った所定間隔Δxごとに実行する。なお、所定間隔Δxは、境界画像データにおいて任意の幅を設定可能である。所定間隔Δxを、境界画像データを構成する1画素の幅以下の間隔とする場合、任意の補間手法、例えばバイキュービックフィルタなどを用いた補間画像を利用することができる。また、2次元データである境界画像データにおいては、火格子104の搬送方向(y方向)の手前側のx方向の単位長さは、段差壁113の交差部分のx方向の単位長さより大きくなる。すなわち、境界画像データにおいては、y方向に沿ってx方向の幅が大きくなるように表示される。この場合、所定間隔Δxは、段差壁113の交差部分のx方向に沿った1画素分を最小としても、火格子104の搬送方向の手前側の部分におけるx方向に沿った1画素分としても良い。なお、撮像画像データや境界画像データにおける1画素分は、撮像する光学系によって求めることができ、例えば1.1cmから10cm程度である。
【0063】
その後、ステップST7に移行して体積演算部412は、ステップST6においてx方向に沿って所定間隔Δxごとに導出した3頂点閉曲線の面積に基づいて、
図10に示すように火格子上廃棄物52の部分的な体積ΔVを導出する。すなわち、体積演算部412はまず、水平位置x
0(点A)に対応する、火格子上廃棄物52の高さに相当する境界線531の高さz
0(点B)と、境界線531aの手前位置y
0(点C)とによって、例えば直角三角形などの3頂点閉曲線を設定する。一方、体積演算部412は、x方向の水平位置x
1に対応する、境界線531の高さz
1と、境界線531aの手前位置y
1とによって、3頂点閉曲線を設定する。ここで、これらの3頂点閉曲線は互いに相似であっても良く、異なる形状であっても良い。
【0064】
まず、3頂点閉曲線ABCが三角形であり、水平位置x
1に対応して設定された3頂点閉曲線も三角形である場合、部分的な体積ΔVは三角錐台の体積を求めることによって導出できる。なお、S(x)は、水平位置xに対応する三角形の面積である。
【数1】
【0065】
(2)式に基づいた場合、火格子104上に堆積された火格子上廃棄物52の体積Vは、以下の(3)式に示すように、部分的な体積ΔVをx方向に沿って段差壁113の幅の全体に合計すれば導出可能である。これにより、火格子上廃棄物52の体積Vを(2)式および(3)式によって近似して推定することが可能となる。
V=Σ(段差壁113の幅全体)ΔV …(3)
【0066】
また、水平位置x
0と、水平位置x
0に対応する高さz
0と手前位置y
0とからなる3頂点閉曲線が、水平位置x
1と、水平位置x
1に対応する高さz
1と手前位置y
1とからなる3頂点閉曲線とにおいて互いに相似であるか否かを問わず、部分的な体積ΔVは、一般的に以下の(4)式で導出できる。これは、複数の任意の水平位置xにおいて設定される3頂点閉曲線が互いに相似である場合も互いに相似でない場合も同様である。なお、(4)式において、S(x)は、水平位置xに対応する3頂点閉曲線の面積である。
【数2】
【0067】
(4)式に基づいた場合、火格子104上に堆積された火格子上廃棄物52の体積Vは、以下の(5)式に示すように、部分的な体積ΔVをx方向に沿って段差壁113の幅の全体に亘って積分することによって導出可能である。これにより、火格子上廃棄物52の体積Vを(4)式および(5)式によって近似して推定することが可能となる。なお、Lは、段差壁113の幅全体の長さである。
【数3】
【0068】
体積演算部412は、導出した火格子上廃棄物52の体積Vの推定値を体積情報データベース422に格納する。
【0069】
さらに、境界線531の上部である高さzと、境界線の下部である手前位置yとの3頂点閉曲線を設定することによって、火格子上廃棄物52の全体の形状を近似することができる。これにより、火格子104上における廃棄物50の分布形状を精度良く推定することが可能となる。火格子上廃棄物52の分布形状のデータは体積情報データベース422に格納される。そのため、制御部41は、導出した火格子上廃棄物52の体積Vの推定値や、火格子上廃棄物52の推定された分布形状の情報を、体積情報データベース422から読み出して、監視燃焼制御装置30に送信する。監視燃焼制御装置30においては、取得した火格子上廃棄物52の体積の推定値や推定された分布形状の情報に基づいて、廃棄物焼却炉100を高精度に制御できる。
【0070】
以上によって、体積演算部412は、火格子上廃棄物52の体積Vの近似値を推定することができ、本実施形態による火格子上廃棄物52の管理処理が終了する。
【0071】
(変形例)
次に、上述した一実施形態の変形例について説明する。
図11A、
図11B、
図11C、および
図11Dはそれぞれ、第1変形例、第2変形例、第3変形例、および第4変形例による火格子上の廃棄物のx方向視を模式的に示す図である。
【0072】
(第1変形例)
上述した一実施形態においては、境界画像データの火格子上廃棄物52の縦断面の3頂点閉曲線ABCを直角三角形としている。これに対し、
図11Aに示すように、第1変形例においては、3頂点閉曲線ABCを、段差壁113と火格子104との交差部分である頂角Aの角度θが90°より大きい鈍角三角形としている。この場合においても、段差壁113の水平位置xに対応する、火格子上廃棄物52の縦断面の面積S(x)から、上述した(1)~(5)式を適宜利用して、火格子上廃棄物52の体積Vの推定値を近似値として導出することができる。
【0073】
(第2変形例)
また、
図11Bに示すように、第2変形例においては、3頂点閉曲線ABCを、段差壁113と火格子104との交差部分である頂角Aの角度θを90°とし、辺BCを上に盛り上がった形状とした単純閉曲線としている。ここで辺BCは、例えばn次関数(nは2以上の整数)や三角関数の一部に沿った曲線などの、上に凸の種々の関数に沿った曲線を採用することもできる。辺BCをいずれの関数に沿った曲線とするかについては廃棄物50の性状に基づいて選択することも可能である。この場合においても、段差壁113の水平位置xに対応する、火格子上廃棄物52の縦断面の面積S(x)から、上述した(1)~(5)式を適宜利用して、火格子上廃棄物52の体積Vの推定値を近似値として導出することができる。
【0074】
(第3変形例)
また、
図11Cに示すように、第3変形例においては、3頂点閉曲線ABCを、段差壁113と火格子104との交差部分である頂角Aの角度θが90°未満の鋭角三角形としている。この場合においても、段差壁113の水平位置xに対応する、火格子上廃棄物52の縦断面の面積S(x)から、上述した(1)~(5)式を適宜利用して、火格子上廃棄物52の体積Vの推定値を近似値として導出することができる。
【0075】
(第4変形例)
また、
図11Dに示すように、第4変形例においては、3頂点閉曲線ABCを、段差壁113と火格子104との交差部分である頂角Aの角度θを90°とし、辺BCを下に盛り下がった形状とした単純閉曲線からなる3頂点閉曲線としている。ここで、辺BCは例えば、指数関数、反比例関数、n次関数(nは2以上の整数)、または三角関数の一部に沿った曲線などの、下に凸の種々の関数に沿った曲線を採用することもできる。辺BCをいずれの関数に沿った曲線とするかについては廃棄物50の性状に基づいて選択することも可能である。この場合においても、段差壁113の水平位置xに対応する、火格子上廃棄物52の縦断面の面積S(x)から、上述した(1)~(5)式を適宜利用して、火格子上廃棄物52の体積Vの推定値を近似値として導出することができる。
【0076】
以上の第1変形例~第4変形例は適宜組み合わせることが可能である。すなわち、辺ABと辺ACのなす角度θを第2,第4変形例に適用したり、辺BCの曲線状を第1,第3変形例に適用したりすることが可能である。
【0077】
以上説明した一実施形態によれば、撮像部125によって撮像された廃棄物焼却炉100内の火格子104上の廃棄物50(火格子上廃棄物52)の撮像画像データから境界画像データを生成し、生成した境界画像データに対して、所定の座標を設定した後、段差壁113の幅方向に平行な水平位置xに対応した、境界線531の上部である高さzと、境界線の下部である手前位置yとの3頂点閉曲線を設定し、この3頂点閉曲線の面積S(x)から体積を導出することによって、火格子上廃棄物52の体積を導出していることにより、廃棄物焼却炉100内を撮像した熱画像データに基づいて火格子104上の火格子上廃棄物52の体積を容易に導出することが可能となる。
【0078】
(記録媒体)
上述の一実施形態において、監視燃焼制御装置30や廃棄物管理装置40による管理方法を実行可能なプログラムを、コンピュータその他の機械や装置(以下、コンピュータなど、という)に、コンピュータなどが読み取り可能な記録媒体に記録することができる。コンピュータなどに、当該記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、当該コンピュータが廃棄物管理装置40や監視燃焼制御装置30として機能する。ここで、コンピュータなどが読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラムなどの情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータなどから読み取ることができる非一時的な記録媒体をいう。このような記録媒体のうち、コンピュータなどから取り外し可能なものとしては、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R/W、DVD、BD、DAT、磁気テープ、フラッシュメモリなどのメモリカードなどがある。また、コンピュータなどに固定された記録媒体としてハードディスク、ROMなどがある。さらに、SSDは、コンピュータなどから取り外し可能な記録媒体としても、コンピュータなどに固定された記録媒体としても利用可能である。
【0079】
また、一実施形態に係る監視燃焼制御装置30および廃棄物管理装置40に実行させるプログラムは、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。
【0080】
(その他の実施形態)
また、一実施形態による監視燃焼制御装置30および廃棄物管理装置40では、上述した「部」は「回路」などに読み替えることができる。例えば、通信部は、通信回路に読み替えることができる。
【0081】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付のクレームおよびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。例えば、上述の一実施形態において挙げた数値や情報の種類はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値や情報の種類を用いても良く、上述の一実施形態による本発明の開示の一部をなす記述および図面により本発明は限定されることはない。
【0082】
例えば、上述した実施形態においては、機械学習の一例としてニューラルネットワークを用いたディープラーニング(深層学習)を採用しているが、それ以外の方法に基づく機械学習を行っても良い。例えば、サポートベクターマシン、決定木、単純ベイズ、k近傍法など、他の教師あり学習を用いても良い。また、教師あり学習に代えて半教師あり学習を用いても良い。
【0083】
また、上述した一実施形態においては、本発明を廃棄物処理施設に適用しているが、本発明は、バイオマス処理施設などの処理量の推定処理を要する種々のプラントに適用することが可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 廃棄物管理システム
2 ネットワーク
30 監視燃焼制御装置
31 算出制御部
32 操作量基準値調整部
33 操作量基準値補正部
34,42 記憶部
35 操作量調整部
36,43 通信部
40 廃棄物管理装置
41 制御部
44 入出力部
50 廃棄物
51 供給前廃棄物
52 火格子上廃棄物
100 廃棄物焼却炉
101 炉
101a 炉壁
102 投入口
103 供給装置
104 火格子
105 灰落下口
106 燃焼用空気ブロア
107 炉出口
108 煙突
109 ボイラ
109a 熱交換器
109b 蒸気ドラム
110 冷却用空気吹き込み口
111 冷却用空気ブロア
112 廃棄物供給部
113 段差壁
114 燃焼用空気ダンパ
114a,114b,114c,114d 火格子下燃焼用空気ダンパ
115 冷却用空気ダンパ
116 中間天井
117 燃焼室ガス温度計
118 主煙道ガス温度計
119 炉出口下部ガス温度計
120 炉出口中部ガス温度計
121 炉出口ガス温度計
122 ボイラ出口酸素濃度計
123 ガス濃度計
124 排ガス流量計
125 撮像部
126a,126b 燃焼空気温度ダンパ
127 再循環ブロワ
128 排ガス再循環空気ダンパ
341 設定値データベース
342 測定値データベース
351 燃焼用空気量調整部
352 空気量比率調整部
353 冷却用空気量調整部
354 供給装置送り速度調整部
355 火格子送り速度調整部
356 燃焼用空気温度調整部
357 排ガス再循環空気流量調整部
411 境界生成部
412 体積演算部
413 学習部
421 撮像画像データベース
422 体積情報データベース
423 境界識別学習モデル
531,531a 境界線