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  • 特開-空気入りタイヤ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083808
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20240617BHJP
   B60C 9/22 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
B60C11/00 F
B60C9/22 C
B60C9/22 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197841
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】生野 裕亮
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BC34
3D131DA09
3D131DA33
3D131DA54
3D131DA56
3D131EA09V
3D131EA09W
3D131EA09X
3D131EB11V
3D131EB11X
(57)【要約】
【課題】トレッド面の偏摩耗を効果的に抑制することができる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】トレッド30は、一対の第1主溝38Aおよび一対の第2主溝38Bを含むトレッド面37を有し、トレッド面37の輪郭は、タイヤ軸方向中央からタイヤ軸方向外側に向かって配置された第1円弧71、第2円弧72、第3円弧73と、各円弧の連結点である第1変曲点81、第2変曲点82およびショルダー円弧40Aとの連結点である第3変曲点83と、を有し、第1円弧71、第2円弧72、第3円弧73の曲率半径R1、R2、R3はR1>R2>R3であり、第1変曲点81、第2変曲点82は、タイヤ軸方向で第1主溝38A、第2主溝38Bに対応する位置にそれぞれ配置され、トレッド30は、ベルト31のタイヤ軸方向外側の端31aおよび第3円弧73の少なくとも一部に対してタイヤ径方向に重なるベルト補強層である重ね部34aを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビードと、前記一対のビードのそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォールと、前記一対のサイドウォールの間に配置されたトレッドと、前記一対のサイドウォールのそれぞれと前記トレッドとの間に配置された一対のショルダーと、前記トレッドに配置されたベルトと、を備える空気入りタイヤであって、
前記トレッドは、タイヤ周方向に延び、タイヤ軸方向中心の両側にそれぞれ配置された第1主溝および第2主溝と、路面に接地する接地領域と、を含むトレッド面を有し、
前記トレッド面の、タイヤ軸方向断面視における輪郭は、タイヤ軸方向中央からタイヤ軸方向外側に向かって配置された互いに曲率半径が異なる第1円弧、第2円弧および第3円弧と、前記第1円弧と前記第2円弧との連結点である第1変曲点と、前記第2円弧と前記第3円弧との連結点である第2変曲点と、前記第3円弧と前記ショルダーの外表面を形成するショルダー円弧との連結点である第3変曲点と、を有し、
前記第1円弧の曲率半径をR1、前記第2円弧の曲率半径をR2、前記第3円弧の曲率半径をR3、とした場合、R1>R2>R3であり、
前記第1変曲点は、タイヤ軸方向で前記第1主溝に対応する位置に配置され、
前記第2変曲点は、タイヤ軸方向で前記第2主溝に対応する位置に配置され、
前記トレッドは、前記ベルトのタイヤ軸方向外側の端および前記第3円弧のそれぞれの少なくとも一部に対してタイヤ径方向に重なるベルト補強層を有する、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記ベルト補強層のタイヤ軸方向内側の先端は、前記第2主溝よりもタイヤ軸方向外側に位置する、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記トレッド面は、前記接地領域のタイヤ軸方向外側の端である一対の接地端を含み、
前記第3変曲点は、前記接地端よりもタイヤ軸方向外側に配置されている、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、路面に接地する接地面を含むトレッド面を、タイヤ軸方向断面視において複数の曲率半径を有するように形成して、タイヤ接地時における特性の適切化を図った空気入りタイヤが知られている。例えば特許文献1には、トレッド面の輪郭を、車両幅方向の曲率半径が所定の値以上の円弧を周方向に延びる溝の位置でつなげた不連続曲線によって構成することにより、当該輪郭の湾曲度合いを緩やかにしてトレッド面の中央およびショルダー側の耐摩耗性の向上を図った空気入りタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-202706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トレッド面の輪郭の調整によっても、特にショルダー側の耐摩耗性が不十分であることによる偏摩耗が懸念され、上記特許文献1に開示されるタイヤは改良の余地がある。
【0005】
そこで本発明は、トレッド面の偏摩耗を効果的に抑制することができる空気入りタイヤを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の空気入りタイヤは、一対のビードと、前記一対のビードのそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォールと、前記一対のサイドウォールの間に配置されたトレッドと、前記一対のサイドウォールのそれぞれと前記トレッドとの間に配置された一対のショルダーと、前記トレッドに配置されたベルトと、を備える空気入りタイヤであって、前記トレッドは、タイヤ周方向に延び、タイヤ軸方向中心の両側にそれぞれ配置された第1主溝および第2主溝と、路面に接地する接地領域と、を含むトレッド面を有し、前記トレッド面の、タイヤ軸方向断面視における輪郭は、タイヤ軸方向中央からタイヤ軸方向外側に向かって配置された互いに曲率半径が異なる第1円弧、第2円弧および第3円弧と、前記第1円弧と前記第2円弧との連結点である第1変曲点と、前記第2円弧と前記第3円弧との連結点である第2変曲点と、前記第3円弧と前記ショルダーの外表面を形成するショルダー円弧との連結点である第3変曲点と、を有し、前記第1円弧の曲率半径をR1、前記第2円弧の曲率半径をR2、前記第3円弧の曲率半径をR3、とした場合、R1>R2>R3であり、前記第1変曲点は、タイヤ軸方向で前記第1主溝に対応する位置に配置され、前記第2変曲点は、タイヤ軸方向で前記第2主溝に対応する位置に配置され、前記トレッドは、前記ベルトのタイヤ軸方向外側の端および前記第3円弧のそれぞれの少なくとも一部に対してタイヤ径方向に重なるベルト補強層を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、トレッド面の偏摩耗を効果的に抑制することができる空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るタイヤのタイヤ軸方向半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係る空気入りタイヤであるタイヤ1の内部構造を示す図であって、右側半分を示す半断面図である。実施形態に係るタイヤ1は、例えば、乗用車用の空気入りタイヤである。なお、実施形態に係るタイヤ1の構成は、乗用車の他に、ライトトラック、トラック、バス等の各種車両用として採用することができる。
【0010】
図1の断面図は、タイヤ1を図示しない正規リムに装着して正規内圧を充填した無負荷状態でのタイヤ軸方向半断面図(タイヤ子午線半断面図)である。正規リムとは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRA、およびETRTOであれば”Measuring Rim”である。正規内圧とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、トラックバス用タイヤ、ライトトラック用タイヤの場合は、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表”TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば”INFLATION PRESSURE”である。乗用車用タイヤの場合は通常180kPaとするが、タイヤに、Extra Load、または、Reinforcedと記載されたタイヤの場合は220kPaとする。
【0011】
図1において、符号S1はタイヤ赤道面である。タイヤ赤道面S1は、タイヤ回転軸(タイヤ子午線)に直交する面で、かつタイヤ軸方向中心に位置する面である。タイヤ1の基本的な内部構造は、タイヤ軸方向の断面においてタイヤ赤道面S1を対称面として左右対称となっている。
【0012】
ここで、タイヤ軸方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向であり、図1の断面図における紙面左右方向である。図1においては、タイヤ軸方向Xとして図示している。そして、タイヤ軸方向内側とは、タイヤ赤道面S1に近づく方向であり、図1においては、紙面左側である。タイヤ軸方向外側とは、タイヤ赤道面S1から離れる方向であり、図1においては、紙面右側である。また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向であり、図1における紙面上下方向である。図1においては、タイヤ径方向Yとして図示している。そして、タイヤ径方向外側とは、タイヤ回転軸から離れる方向であり、図1においては、紙面上側である。タイヤ径方向内側とは、タイヤ回転軸に近づく方向であり、図1においては、紙面下側である。
【0013】
タイヤ1は、タイヤ軸方向両側に設けられた一対のビード10と、一対のビード10のそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール20と、一対のサイドウォール20の間に配置されたトレッド30と、一対のサイドウォール20のそれぞれからトレッド30に移行する部分である一対のショルダー40と、トレッド30内に配置されたベルト31と、一対のビード10の間に架け渡されて配置されたカーカスプライ50と、カーカスプライ50のタイヤ内腔側に配置されたインナーライナー60と、を備える。
【0014】
ビード10は、ビードコア11と、ビードコア11のタイヤ径方向外側に延びるビードフィラー12と、を有する。
【0015】
ビードコア11は、ゴムが被覆された金属製のビードワイヤがタイヤ周方向に複数回巻かれた環状の部材である。ビードコア11は、空気が充填されたタイヤ1を、リムに固定する役目を果たす部材である。ビードフィラー12は、タイヤ径方向内側からタイヤ径方向外側に延びるにつれて厚みが減じる先細り形状となっている。ビードフィラー12は、ビード10の周辺部分の剛性を高め、高い操縦性および安定性を確保するために設けられる。ビードフィラー12は、例えば、周囲のゴム部材よりも硬度の高いゴムにより構成される。
【0016】
ビード10は、カーカスプライ50を間に挟んでリムストリップゴム13で囲まれている。リムストリップゴム13は、ビード10のタイヤ軸方向内側からタイヤ径方向内側の端を経てタイヤ軸方向外側まで回り込む態様で、タイヤ1のタイヤ径方向内側に配置されている。リムストリップゴム13は、タイヤ1が装着されるリムの内面に接触する。
【0017】
サイドウォール20は、カーカスプライ50のタイヤ軸方向外側に配置されたサイドウォールゴム21を含む。サイドウォールゴム21は、タイヤ1のタイヤ周方向外側の側面を構成する。サイドウォールゴム21のタイヤ径方向内側の端21aは、タイヤ径方向内側に延びてリムストリップゴム13を覆っている。サイドウォールゴム21のタイヤ径方向内側の端21aの先端には、タイヤ周方向に沿ったリムライン21cが形成されている。サイドウォールゴム21は、タイヤ1がクッション作用をする際に最もたわむ部分であり、通常、耐疲労性を有する柔軟なゴムが採用される。
【0018】
トレッド30は、無端状のベルト31およびキャッププライ34と、トレッドゴム36と、を有する。ベルト31は、カーカスプライ50のタイヤ径方向外側に配置されている。キャッププライ34は、ベルト31のタイヤ径方向外側に配置されている。
【0019】
ベルト31は、トレッド30を補強する部材である。実施形態のベルト31は、インナーライナー60のタイヤ径方向外側に配置された内側ベルト32と、内側ベルト32のタイヤ径方向外側に配置された外側ベルト33と、を備えた二層構造である。内側ベルト32および外側ベルト33は、いずれも複数のスチールコード等のベルトコードがゴムで覆われた構造を有する。内側ベルト32は、外側ベルト33よりも幅広である。ベルト31を設けることにより、タイヤ1の剛性が確保され、路面に対するトレッド30の接地性が向上する。なお、ベルト31は二層構造に限らず、一層、あるいは三層以上の構造を有してもよい。
【0020】
キャッププライ34は、ベルト31とともにトレッド30を補強する部材である。キャッププライ34は、例えば、ポリアミド繊維等の絶縁性を有する複数の有機繊維コードがゴムで覆われた構造を有する。キャッププライ34は、ベルト31全体をタイヤ外表面側から覆っている。キャッププライ34を設けることにより、耐久性の向上や走行時のロードノイズの低減を図ることができる。なお、実施形態のキャッププライ34は一層であるが、二層以上の構造であってもよい。
【0021】
トレッドゴム36は、キャッププライ34のタイヤ径方向外側に配置されている。トレッドゴム36は、トレッド30の外表面であるトレッド面37を構成する部材である。トレッドゴム36のタイヤ軸方向外側の端36bは、キャッププライ34のタイヤ軸方向外側の先端34bよりもタイヤ軸方向外側に張り出し、タイヤ径方向内側に屈曲している。そのトレッドゴム36のタイヤ軸方向外側の端36bは、上述したサイドウォールゴム21のタイヤ径方向外側の端21bで覆われている。
【0022】
トレッド面37には、タイヤ赤道面S1の左側および右側のそれぞれに、第1主溝38Aおよび第2主溝38Bがタイヤ軸方向に間隔をおいて形成されている。これら主溝は、タイヤ周方向に沿ってトレッド面37の全周にわたり形成されている。第1主溝38Aは、タイヤ赤道面S1側に配置され、第2主溝38Bは、第1主溝38Aのショルダー40側に配置されている。トレッド30は、左右の第1主溝38Aの間の中央陸39Aと、第1主溝38Aと第2主溝38Bとの間の一対の中間陸39Bと、第2主溝38Bのショルダー40側の一対のショルダー陸39Cと、を含む。トレッド面37は、中央陸39A、中間陸39Bおよびショルダー陸39Cの外表面を含む。そのトレッド面37は、接地領域37Aを含む。
【0023】
接地領域37Aは、正規リムに装着され正規内圧が充填されたタイヤ1が路面に接地し、そこへ正規荷重が負荷された条件下での、路面に接地する領域である。正規荷重とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば”最大負荷能力”、TRAであれば表”TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば”LOAD CAPACITY”である。タイヤが乗用車用の場合には、前記荷重の88%に相当する荷重である。タイヤがレーシングカート用の場合、正規荷重は392Nである。接地領域37Aのタイヤ軸方向両端が、接地端37bとなる。
【0024】
トレッド30は、本開示において特徴的な構成を有するが、それについては後で詳述する。
【0025】
ショルダー40は、トレッド30からサイドウォール20に屈曲する部分であり、サイドウォール20とトレッド30との間に配置されている。実施形態のショルダー40は、接地領域37Aの接地端37bからサイドウォール20に移行する部分であり、サイドウォールゴム21のタイヤ径方向外側の端21bと、トレッドゴム36のタイヤ軸方向外側の端36bと、を含む部分で形成されている。
【0026】
カーカスプライ50は、一対のビード10の間に架け渡されている。カーカスプライ50は、タイヤ1の骨格となるプライを構成している。カーカスプライ50は、一対のビード10の間を、一対のサイドウォール20、一対のショルダー40およびトレッド30のタイヤ内腔側を通過する態様で、タイヤ1内に埋設されている。トレッド30においては、カーカスプライ50のタイヤ径方向外側にベルト31が配置されている。
【0027】
カーカスプライ50は、プライ本体部51と、折り返し部52と、屈曲部53と、を有する。プライ本体部51は、一方のビードコア11のタイヤ軸方向内側から、一方のサイドウォール20、トレッド30および他方のサイドウォール20を経て、他方のビードコア11のタイヤ軸方向内側まで延在する部分である。折り返し部52は、プライ本体部51のタイヤ径方向内側の端からビードコア11周りに折り返されることにより、ビードフィラー12のタイヤ軸方向外側においてタイヤ径方向外側に延びている部分である。屈曲部53は、プライ本体部51からビードコア11周りに断面U字状に屈曲し、折り返し部52につながる部分である。プライ本体部51と折り返し部52とは、屈曲部53を介して連続している。
【0028】
プライ本体部51は、タイヤ径方向内側においてビードコア11およびビードフィラー12のタイヤ軸方向内側に配置されている。折り返し部52は、ビードコア11およびビードフィラー12のタイヤ軸方向外側に配置されている。屈曲部53は、カーカスプライ50においてタイヤ径方向の最も内側の部分を含む。
【0029】
実施形態のカーカスプライ50は、第1カーカスプライ層55および第2カーカスプライ層56が重ねられた二層構造を有する。プライ本体部51においては、第1カーカスプライ層55が第2カーカスプライ層56のタイヤ内腔側に配置される。
【0030】
折り返し部52においては、第1カーカスプライ層55が第2カーカスプライ層56のタイヤ軸方向外側に配置されている。折り返し部52の第1カーカスプライ層55は、屈曲部53からサイドウォール20のタイヤ径方向中央付近まで延びている。折り返し部52の第2カーカスプライ層56は、屈曲部53からビードフィラー12の途中まで延びている。折り返し部52の第1カーカスプライ層55のタイヤ径方向外側の端55bは、プライ本体部51の第2カーカスプライ層56に重なっている。上述したリムストリップゴム13は、屈曲部53を含むカーカスプライ50のタイヤ径方向内側の端を取り囲むように設けられている。
【0031】
実施形態のカーカスプライ50は、薄いゴム層からなる可撓性および弾力性を有する一対のゴムシート57を有する。このゴムシート57は、トレッド30のタイヤ軸方向外側の端からショルダー40を経てサイドウォール20におけるタイヤ径方向の中間部分にわたる部分の、第1カーカスプライ層55と第2カーカスプライ層56との間に挟まれている。このゴムシート57が第1カーカスプライ層55と第2カーカスプライ層56との間に介在することにより、ゴムシート57が緩衝材となってこの部分の第1カーカスプライ層55と第2カーカスプライ層56とが互いに接触して損傷するといった事態が起こりにくくなる。
【0032】
実施形態のカーカスプライ50は二層構造であるが、カーカスプライ50は、一層であってもよいし、三層以上であってもよい。カーカスプライ50が二層、あるいはそれ以上の層構造のプライにより構成されると、タイヤ1がリムの装着部付近で局所的に変形することが十分に抑制されるので好ましい。
【0033】
インナーライナー60は、一対のビード10の間のタイヤ内面を覆っている。インナーライナー60は、トレッド30、ショルダー40、サイドウォール20およびビード10のタイヤ径方向外側の部分にわたる領域で、カーカスプライ50のプライ本体部51の内面を覆っている。インナーライナー60のタイヤ径方向内側の端は、リムストリップゴム13のタイヤ軸方向内側の部分で覆われている。実施形態のインナーライナー60は、第1インナーライナー61および第2インナーライナー62が重ねられた二層構造を有する。第1インナーライナー61が、第2インナーライナー62のタイヤ内腔側に配置されている。第1インナーライナー61および第2インナーライナー62は、耐空気透過性ゴムにより構成されており、タイヤ内腔内の空気が外部に漏れるのを防ぐ。
【0034】
トレッド30のタイヤ軸方向外側の端からサイドウォール20にわたる部分においては、第2インナーライナー62と第1カーカスプライ55との間に薄いゴム層59が配置されている。
【0035】
ここで、ビードフィラー12に採用するゴムとしては、少なくともサイドウォールゴム21およびインナーライナー60よりも硬度が高いゴムが用いられる。ゴムの硬度は、JIS K6253-3:2012のデュロメータ硬さ タイプAである。
【0036】
例えば、サイドウォールゴム21の硬度を基準としたとき、ビードフィラー12の硬度は、サイドウォールゴム21の硬度の1.2倍以上2.3倍以下程度が好ましい。このような硬度とすることで、タイヤとしての柔軟性とビード10付近の剛性のバランスを確保することができる。
【0037】
以上が、実施形態に係るタイヤ1の内部構造である。次いで、トレッド30に係る特徴的な構成について説明する。
【0038】
トレッド30のトレッド面37のタイヤ軸方向断面における輪郭は、タイヤ軸方向中央からタイヤ軸方向外側に向かって配置された互いに曲率半径が異なる3つの円弧による不連続曲線で構成される。すなわち3つの円弧は、タイヤ軸方向中央に配置されてタイヤ赤道面S1をまたがる第1円弧71と、ショルダー40に隣接する第3円弧73と、第1円弧71と第3円弧73との間の第2円弧72と、である。第1円弧71と第2円弧72とは、第1変曲点81で連結される。第2円弧72と第3円弧73とは、第2変曲点82で連結される。第3円弧73とショルダー40の外表面を形成するショルダー円弧40Aとは、第3変曲点83で連結される。すなわちトレッド面37のタイヤ軸方向断面における輪郭は、タイヤ軸方向中央からタイヤ軸方向外側に向かって配置された互いに曲率半径が異なる第1円弧71、第2円弧72および第3円弧73と、第1円弧71と第2円弧72との連結点である第1変曲点81と、第2円弧72と第3円弧73との連結点である第2変曲点82と、第3円弧73とショルダー円弧40Aとの連結点である第3変曲点83と、を有する。
【0039】
ここで、第1円弧71の曲率半径をR1、第2円弧72の曲率半径をR2、第3円弧73の曲率半径をR3、とした場合、R1>R2>R3である。第1円弧71の曲率半径R1は、例えば、1500mm以上3000mm以下であることが好ましい。第2円弧72の曲率半径R2は、例えば、500mm以上1400mm以下であることが好ましい。第3円弧73の曲率半径R3は、例えば、50mm以上300mm以下であることが好ましい。
【0040】
第1変曲点81は、タイヤ軸方向で第1主溝38Aに対応する位置に配置されている。第2変曲点82は、タイヤ軸方向で第2主溝38Bに対応する位置に配置されている。したがって、中央陸39Aの輪郭は第1円弧71で構成され、中間陸39Bの輪郭は第2円弧72で構成され、ショルダー陸39Cの輪郭は第3円弧73で構成されている。また、第3変曲点83は、接地端37bよりもタイヤ軸方向外側に配置されている。
【0041】
トレッド30が有するキャッププライ34は、タイヤ軸方向外側の先端34bがタイヤ軸方向内側に折り返されてタイヤ径方向内側の面に重ねられた重ね部34aを有する。この重ね部34aは、内側ベルト32の一部、外側ベルト33の一部およびカーカスプライ50の一部を覆っている。重ね部34aを含むキャッププライ34のタイヤ軸方向外側の端は、ベルト31のタイヤ軸方向外側の端31aをタイヤ外表面側からカーカスプライ50の側に押さえる状態で配置されている。重ね部34aは、ベルト31のタイヤ軸方向外側の端31aに対してタイヤ径方向に重なっている。また、重ね部34aは、ショルダー陸39Cおよび第3円弧73におけるタイヤ軸方向中央よりもややタイヤ軸方向内側の位置からタイヤ軸方向外側の部分に対して、タイヤ径方向に重なっている。キャッププライ34の重ね部34aは、ベルト31のタイヤ軸方向外側の端31aおよび第3円弧73のそれぞれの少なくとも一部に対してタイヤ径方向に重なる本開示のベルト補強層の一例である。
【0042】
重ね部34aは、キャッププライ34のタイヤ軸方向外側の先端34bからタイヤ軸方向内側に向かって延びているが、第2主溝38Bまでは延びておらず、その折り返し先端であるタイヤ軸方向内側の先端34cは、第2主溝38Bよりもタイヤ軸方向外側に位置している。
【0043】
上記実施形態のタイヤ1によれば、以下の効果を奏する。
【0044】
(1)実施形態に係るタイヤ1は、一対のビード10と、一対のビード10のそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール20と、一対のサイドウォール20の間に配置されたトレッド30と、一対のサイドウォール20のそれぞれとトレッド30との間に配置された一対のショルダー40と、トレッド30内に配置されたベルト31と、を備える空気入りタイヤであって、トレッド30は、タイヤ周方向に延び、タイヤ軸方向中心の両側にそれぞれ配置された第1主溝38Aおよび第2主溝38Bと、路面に接地する接地領域37Aと、を含むトレッド面37を有し、トレッド面37の、タイヤ軸方向断面視における輪郭は、タイヤ軸方向中央からタイヤ軸方向外側に向かって配置された互いに曲率半径が異なる第1円弧71、第2円弧72および第3円弧73と、第1円弧71と第2円弧72との連結点である第1変曲点81と、第2円弧72と第3円弧73との連結点である第2変曲点82と、第3円弧73とショルダー40の外表面を形成するショルダー円弧40Aとの連結点である第3変曲点83と、を有し、第1円弧71の曲率半径をR1、第2円弧72の曲率半径をR2、第3円弧73の曲率半径をR3、とした場合、R1>R2>R3であり、第1変曲点81は、タイヤ軸方向で第1主溝38Aに対応する位置に配置され、第2変曲点82は、タイヤ軸方向で第2主溝38Bに対応する位置に配置され、トレッド30は、ベルト31のタイヤ軸方向外側の端31aおよび第3円弧73のそれぞれの少なくとも一部に対してタイヤ径方向に重なるベルト補強層として、キャッププライ34の重ね部34aを有する。
【0045】
実施形態に係るタイヤ1によれば、第1変曲点81がタイヤ軸方向で第1主溝38Aに対応する位置に配置され、第2変曲点82がタイヤ軸方向で第2主溝38Bに対応する位置に配置されている。このため、トレッド面37に、これら第1変曲点81および第2変曲点82による段差は形成されない。これにより、トレッド面37の接地圧が低減し、かつ均一になりやすいため、摩耗が抑制される。一方、実施形態のタイヤ1においては、ベルト31のタイヤ軸方向外側の端31aが、キャッププライ34の重ね部34aにより補強されている。このため、ショルダー陸39Cおよびショルダー陸39Cの接地面である第3円弧73が、走行時においてタイヤ径方向外側に膨出する変形が抑制され、ショルダー陸39Cの摩耗が抑制される。これらの結果、トレッド面37の偏摩耗が効果的に抑制される。
【0046】
(2)実施形態に係るタイヤ1においては、ベルト補強層であるキャッププライ34の重ね部34aのタイヤ軸方向内側の先端34cは、第2主溝38Bよりもタイヤ軸方向外側に位置することが好ましい。
【0047】
これにより、例えばオゾン等の影響でトレッドゴム36が劣化して第2主溝38Bの底面にクラックが生じても、重ね部34aはそのクラックの影響を受けることが回避され、ショルダー陸39Cを補強する作用が保持される。
【0048】
(3)実施形態に係るタイヤ1においては、トレッド面37は、接地領域37Aのタイヤ軸方向外側の端である一対の接地端37bを含み、第3変曲点83は、接地端37bよりもタイヤ軸方向外側に配置されていることが好ましい。
【0049】
これにより、第3変曲点83は路面に接地しないため、第3変曲点83での摩耗が生じることが防止される。
【0050】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で変形、改良などを行っても、本発明の範囲に含まれる。
【0051】
例えば、上記実施形態では、キャッププライ34の重ね部34aが、ベルト31のタイヤ軸方向外側の端31aおよび第3円弧73のそれぞれの少なくとも一部に対してタイヤ径方向に重なる本開示のベルト補強層を構成しているが、ベルト補強層としては、キャッププライ34と別体の補強部材であってよい。
【符号の説明】
【0052】
1 タイヤ(空気入りタイヤ)
10 ビード
20 サイドウォール
30 トレッド
31 ベルト
31a ベルトのタイヤ軸方向外側の端
34a 重ね部(ベルト補強層)
37 トレッド面
37A 接地領域
38A 第1主溝
38B 第2主溝
40 ショルダー
40A ショルダー円弧
71 第1円弧
72 第2円弧
73 第3円弧
81 第1変曲点
82 第2変曲点
83第3変曲点
図1