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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083813
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】導電性組成物
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/22 20060101AFI20240617BHJP
   B23K 35/14 20060101ALI20240617BHJP
   B23K 35/26 20060101ALI20240617BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20240617BHJP
   B22F 1/052 20220101ALI20240617BHJP
   B22F 1/103 20220101ALI20240617BHJP
   B22F 1/16 20220101ALI20240617BHJP
   C22C 12/00 20060101ALN20240617BHJP
   C22C 13/02 20060101ALN20240617BHJP
   B23K 35/363 20060101ALN20240617BHJP
【FI】
B23K35/22 310A
B23K35/14 Z
B23K35/26 310A
B23K35/26 310C
B22F1/00 K
B22F1/00 L
B22F1/00 R
B22F1/052
B22F1/103
B22F1/16
C22C12/00
C22C13/02
B23K35/363 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197853
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅田 裕明
(72)【発明者】
【氏名】西山 聡
(72)【発明者】
【氏名】坂口 充弘
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AA02
4K018AA03
4K018AA40
4K018BA01
4K018BA02
4K018BA20
4K018BB04
4K018BC22
4K018BD04
4K018KA33
(57)【要約】
【課題】硬化後の導電性、密着性、長期信頼性、及び放熱性に優れた、導電性組成物を提供する。
【解決手段】金属粒子100質量部に対して、フラックスを2~8質量部含有し、上記金属粒子は、SnBiはんだ粒子からなる金属粒子(A)を30~60質量部と、銅粒子、銀粒子、及び銀被覆銅粒子からなる群から選択される1種又は2種以上からなり、少なくとも銅と銀を含有する金属粒子(B)を25~70質量部含有し、上記金属粒子(A)の粒子径の10%累積値が4~30μmであり、かつ粒子径の90%累積値が8~60μmである、導電性組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粒子100質量部に対して、フラックスを2~8質量部含有し、
前記金属粒子は、SnBiはんだ粒子からなる金属粒子(A)を30~60質量部と、
銅粒子、銀粒子、及び銀被覆銅粒子からなる群から選択される1種又は2種以上からなり、少なくとも銅と銀を含有する金属粒子(B)を25~70質量部含有し、
前記金属粒子(A)の粒子径の10%累積値が4~30μmであり、かつ粒子径の90%累積値が8~60μmである、導電性組成物。
【請求項2】
前記金属粒子(B)の平均粒子径が1~35μmである、請求項1に記載の導電性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
EV/HEV化や自動運転化に向けて自動車の電装化が進み、搭載されるエンジンコントロールユニット(ECU)の個数が増加している。これに伴い高密度実装の要求が高まり、ECUの小型化が進んでいる。
【0003】
また、EV/HEVでは、高耐圧絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)を採用したパワーデバイスの搭載増加などに伴い、実装関連製品への高耐熱/高放熱の要求が高まっている。さらに、5G向けの基地局でも、パワーデバイスの高性能化かつ小型化により高放熱の要求が高まりつつある。
【0004】
特に、ジャンクション温度が175℃を超えるような半導体では、リードフレームとダイとの接続に使用する接着剤を、シンタリングペーストに切り替えることが求められている。しかし、シンタリングペーストは樹脂を含有しないため、応力緩和が難しく長期にわたる接合強度の保持(長期信頼性)が問題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-12734号公報
【特許文献2】特開2017-39163号公報
【特許文献1】特開2017-39167号公報
【特許文献1】WO2020/017065A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、硬化後の導電性、密着性、長期信頼性、及び放熱性に優れた、導電性組成物を提供することを目的とする。
【0007】
なお、特許文献1~4には、SnBiはんだ粒子からなる金属粒子(A)として、粒子径の10%累積値が4~30μmであり、かつ粒子径の90%累積値が8~60μmであるものを使用することは記載されていない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
[1] 金属粒子100質量部に対して、フラックスを2~8質量部含有し、上記金属粒子は、SnBiはんだ粒子からなる金属粒子(A)を30~60質量部と、銅粒子、銀粒子、及び銀被覆銅粒子からなる群から選択される1種又は2種以上からなり、少なくとも銅と銀を含有する金属粒子(B)を25~70質量部含有し、上記金属粒子(A)の粒子径の10%累積値が4~30μmであり、かつ粒子径の90%累積値が8~60μmである、導電性組成物。
[2] 上記金属粒子(B)の平均粒子径が1~35μmである、[1]に記載の導電性組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る導電性組成物によれば、硬化後の優れた導電性、密着性、長期信頼性、及び放熱性が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、より具体的に説明する。
【0011】
本実施形態に係る導電性組成物は、金属粒子100質量部に対して、フラックスを2~8質量部含有し、上記金属粒子は、SnBiはんだ粒子からなる金属粒子(A)を30~60質量部と、銅粒子、銀粒子、及び銀被覆銅粒子からなる群から選択される1種又は2種以上からなり、少なくとも銅と銀を含有する金属粒子(B)を25~70質量部含有し、上記金属粒子(A)の粒子径の10%累積値が4~30μmであり、かつ粒子径の90%累積値が8~60μmであるものとする。
【0012】
金属粒子(A)はSnBiはんだ粒子であり、SnBiはんだ粒子としては、スズ(Sn)とビスマス(Bi)を基本組成とした鉛フリーはんだ合金であれば特に限定されないが、亜鉛(Zn)や銀(Ag)などの金属をさらに含有するものであってもよい。金属粒子(A)におけるスズ(Sn)の含有割合は、20~90質量%であり、40~80質量%であることが好ましく、60~80質量%であることがより好ましい。金属粒子(A)におけるビスマス(Bi)の含有割合は、10~80質量%であり、20~60質量%であることが好ましく、20~40質量%であることがより好ましい。
【0013】
金属粒子100質量部における金属粒子(A)の含有量は、30~60質量部であり、30~55質量部であることが好ましく、30~50質量部であることがより好ましい。金属粒子(A)の含有量が30質量部以上である場合、優れた導電性が得られやすく、60質量部以下である場合、優れた長期信頼性が得られやすい。
【0014】
金属粒子(A)の粒子径は、10%累積値が4~30μmであり、かつ粒子径の90%累積値が8~60μmであるものとする。好ましくは、粒子径の10%累積値が5~27μmであり、かつ粒子径の90%累積値が10~55μmである。ここで、10%累積値および90%累積値とは、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定した粒子径において、頻度累積を100%とした場合の、10%累積または90%累積に相当する値である。金属粒子(A)の粒子径が下限値以上である場合、優れた導電性や密着性、長期信頼性が得られやすく、上限値以下である場合、接合部の厚さが増して熱抵抗が増大する(放熱効果が低下する)のを抑制しやすい。
【0015】
金属粒子(B)は、銅粒子、銀粒子、及び銀被覆銅粒子からなる群から選択される少なくとも1種又は2種以上とからなるものであって、少なくとも銅及び銀を含有するものである。すなわち、銀被覆銅粒子単独であってもよく、銅粒子と銀粒子との併用であってもよく、銅粒子と銀被覆銅粒子との併用であってもよく、銀粒子と銀被覆銅粒子との併用であってもよく、銅粒子と銀粒子と銀被覆銅粒子との併用であってもよい。ここで、銀被覆銅粒子とは、銅粒子と、銅粒子の少なくとも一部を被覆する銀被覆層とを有するものであれば特に限定されない。銀被覆銅粒子における銀の含有割合は特に限定されないが、5~25質量%であることが好ましく、5~20質量%であることがより好ましい。
【0016】
金属粒子100質量部における金属粒子(B)の含有量は、25~70質量部であり、30~70質量部であることが好ましく、40~70質量部であることがより好ましい。金属粒子(B)の含有量が25質量部以上である場合、優れた長期信頼性が得られやすく、70質量部以下である場合、優れた導電性が得られやすい。
【0017】
金属粒子(B)における銅の含有量は、1~99質量%であることが好ましく、20~97質量%であることがより好ましく、30~95質量%であることがさらに好ましい。金属粒子(B)における銀の含有量は、1~99質量%であることが好ましく、2~80質量%であることがより好ましく、3~70質量%であることがさらに好ましく、5~65質量%であることが得に好ましい。銅と銀の含有量が上記範囲内である場合、優れた密着性や長期信頼性が得られやすい。
【0018】
金属粒子(B)の形状は、特に限定されず、球状、フレーク状(鱗片状)、樹枝状、繊維状のものを使用することができる。なお、「球状」の金属粒子は、略真球のもの(アトマイズ粉)だけでなく、略多面体状の球体(還元粉)や、不定形状(電解粉)等の略球状のものを含む。また、「樹枝状」とは、粒子表面から突出する1以上の樹枝状突起を有する形状をいい、樹枝状突起は分岐なしの主枝のみであってもよく、主枝から枝部分が分岐して平面状或いは三次元的に成長してなる形状であってもよい。
【0019】
金属粒子(B)の平均粒子径は、1~35μmであることが好ましい。金属粒子(B)の平均粒子径が1μm以上である場合、酸化しにくく合金化が進みやすい。また、金属粒子(B)の分散性が良好となるので、凝集を防止しやすい。金属粒子(B)の平均粒子径が35μm以下であると、接合部の厚さが増して熱抵抗が増大する(放熱効果が低下する)のを抑制しやすい。
【0020】
銅粒子の平均粒子径は、3~35μmであることが好ましく、5~30μmであることがより好ましい。銀粒子の平均粒子径は、1~15μmであることが好ましく、1~10μmであることがより好ましい。銀被覆銅粒子の平均粒子径は、2~35μmであることが好ましく、5~30μmであることがより好ましい。
【0021】
本明細書において、「金属粒子の平均粒子径」とは、レーザー回折・散乱法で測定した、個数基準の平均粒子径D50(メジアン径)のことを意味する。
【0022】
金属粒子は、本発明の効果を損なわない範囲で、金属粒子(A)や金属粒子(B)以外の金属粒子を含有するものであってもよい。このような金属粒子としては、例えば、インジウム(In)、亜鉛(Zn)が挙げられる。
【0023】
フラックスとしては、特に限定されないが、アミン、アルコール、ロジン、有機酸等を使用することができる。アミンとしては、脂肪族アミン、芳香族アミン、アルカノールアミン等を使用することができる。脂肪族アミンとしては、ジメチルアミン、エチルアミン、1-アミノプロパン、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、アリルアミン、n-ブチルアミン、ジエチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、N,N-ジメチルエチルアミン、イソブチルアミン、及びシクロヘキシルアミン等を使用することができる。芳香族アミンとしては、アニリン、N-メチルアニリン、ジフェニルアミン、N-イソプロピルアニリン、及びp-イソプロピルアニリン等を使用することができる。アルカノールアミンとしては、2-アミノエタノール、2-(エチルアミノ)エタノール、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-N-シクロヘキシルアミン、N,N,N',N'-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、及びN,N,N',N'',N''-ペンタキス(2-ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミンを使用することができる。
【0024】
アルコールとしては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、sec-ペンタノール、tert-ペンタノール、3-ペンタノール、1-ヘキサノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール等を使用することができる。
【0025】
ロジンとしては、酸変性ロジン、精製ロジン、水添ロジン、不均化ロジン、ロジンエステル、及び重合ロジンが挙げられる。ロジンは、マツ科植物の松やに等に含まれる不揮発性成分である。ロジンとしては、例えば、トールロジン、ガムロジン、及びウッドロジンが挙げられる。酸変性ロジンは、ロジンを酸処理したものである。酸変性ロジンは、水素化されていてもよい。酸変性ロジンとしては、例えば、アクリル酸変性ロジン、アクリル酸変性水添ロジン、マレイン酸変性ロジン、及びマレイン酸変性水添ロジンが挙げられる。
【0026】
有機酸としては、分子内に2以上のカルボキシル基を有する化合物を使用することができる。このような化合物として、ジカルボン酸としては、シュウ酸、グルタル酸、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、シトラコン酸、α-ケトグルタル酸、ジグリコール酸、チオジグリコール酸、ジチオジグリコール酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、ドデカン二酸、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸、ピリジン-2,6-ジカルボン酸、テトラヒドロカルボン酸、ヘキサヒドロカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等が挙げられ、トリカルボン酸では、例えば、トリメリット酸、クエン酸、イソクエン酸、ブタン-1,2,4-トリカルボン酸、シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸、ベンゼン-1,2,4-トリカルボン酸、1,2,3-プロパントリカルボン酸等が挙げられ、テトラカルボン酸では、例えば、エチレンテトラカルボン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、ベンゼン-1,2,4,5-テトラカルボン酸等を使用することができる。
【0027】
これらの中でも、アルカノールアミン、炭素数4以下の直鎖アルコール、ロジン、およびジカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1つを配合したものが好ましい。このような配合とすることで、優れた密着性、及び長期信頼性が得られやすい。
【0028】
フラックスの含有量は、金属粒子100質量に対して、2~8質量部であり、2.5~7質量部であることが好ましい。フラックスの含有量が2質量部以上である場合、優れた導電性が得られやすく、8質量部以下である場合、優れた密着性や長期信頼性が得られやすい。
【0029】
本実施形態に係る導電性組成物は、金属粒子(A)と金属粒子(B)とフラックスとの合計の含有量が、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。
【0030】
本実施形態に係る導電性組成物は溶剤を含有するものであってもよい。溶剤としては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類、ターピネオール、2,2,4-トリメチルペンタン-1,3-ジオールモノイソブチラート、ジヒドロターピネオール、テルピネオール、ベンジルアルコール等のアルコール類、γ-ブチロラクトンなどが挙げられる。
【0031】
溶剤の含有量は、特に限定されないが、金属粒子100質量部に対して、1~10質量部であることが好ましく、2~8質量部であることがより好ましい。
【0032】
本発明の導電性組成物は、上記した各成分を所定量配合して十分混合することにより得られる。
【0033】
なお、本発明の導電性組成物には、従来から同種の導電性組成物に添加されることのあった添加剤を、本発明の目的から外れない範囲内で添加することもできる。その例としては、増粘剤、粘着付与剤、沈降防止剤、着色剤、難燃剤等が挙げられる。
【0034】
本発明の導電性組成物の粘度は、使用する塗布装置に応じて適宜調整すればよいが、例えば、液温25℃における粘度が、500~3000dPa・sであることが好ましく、700~2500dPa・sであることがより好ましく、900~2000dPa・sであることがさらに好ましい。
【0035】
なお、本明細書において「導電性組成物の粘度」とは、VISCOMETER TVB-10(東機産業製)、スピンドルNo.7を用いて回転数10rpmの条件で測定した値である。
【実施例0036】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下において配合割合等は、特にことわらない限り質量基準とする。
【0037】
下記表1~3に示す配合に従い、各成分を混合し、導電性組成物を調製した。
【0038】
・SnBiはんだ粒子1:Bi比率28質量%、10%累積値3μm、90%累積値6μm
・SnBiはんだ粒子2:Bi比率28質量%、10%累積値6μm、90%累積値13μm
・SnBiはんだ粒子3:Bi比率28質量%、10%累積値16μm、90%累積値29μm
・SnBiはんだ粒子4:Bi比率28質量%、10%累積値21μm、90%累積値40μm
・SnBiはんだ粒子5:Bi比率28質量%、10%累積値26μm、90%累積値50μm
・SnBiはんだ粒子6:Bi比率28質量%、10%累積値38μm、90%累積値72μm
・Sn粒子:90%累積値50μm、10%累積値26μm
・銀被覆銅粒子1:平均粒子径3μm、銀含有量5質量%、球状
・銀被覆銅粒子2:平均粒子径5μm、銀含有量5質量%、球状
・銀被覆銅粒子3:平均粒子径5μm、銀含有量10質量%、球状
・銀被覆銅粒子4:平均粒子径5μm、銀含有量20質量%、球状
・銀被覆銅粒子5:平均粒子径15μm、銀含有量5質量%、球状
・銀被覆銅粒子6:平均粒子径30μm、銀含有量5質量%、球状
・銀粒子:平均粒子径2μm、球状
・銅粒子1:平均粒子径0.19μm、球状
・銅粒子2:平均粒子径5μm、球状
・銅粒子3:平均粒子径10μm、球状
・銅粒子4:平均粒子径30μm、球状
・フラックス1:2-プロパノール、炭素数6~8の脂肪族ジカルボン酸、及びロジン系樹脂の混合物
・フラックス2:2-プロパノール、及びロジン系樹脂の混合物
・フラックス3:ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、及びロジン系樹脂の混合物
・フラックス4:トリエタノールアミン
・溶剤:テルピネオール
【0039】
なお、金属粒子の粒子径は、レーザー回折・散乱測定装置(マイクロトラック・ベル社製エアロトラックII)を用い、累積分布で10%、90%を示す粒子径をそれぞれD10およびD90として求めた。また、平均粒子径は、同様の測定により累積分布で50%を示す粒子径を採用した。
【0040】
得られた導電性組成物を用いて、体積抵抗率、ダイシェア強度、せん断強度、及び放熱性を評価し、結果を表1~3に示した。サンプルの作製方法と評価方法は以下に示すとおりである。なお、体積抵抗率、及びダイシェア強度の評価で作製したサンプルは、次の硬化条件1~4から選択した条件で硬化させ、選択した硬化条件は表1~3に示した。
硬化条件1:170℃で60分間加熱
硬化条件2:50℃から200℃まで45分間かけて昇温し、200℃で15分間加熱
硬化条件3:80℃で15分間加熱した後、170℃で60分間加熱
硬化条件4:260℃で10秒間加熱する温度プロファイルでリフロー
【0041】
<体積抵抗率>
各実施例及び比較例の導電性組成物を、それぞれガラスエポキシ基板上にメタル印刷法により印刷して表1~3に記載の硬化条件により硬化させることで、長さ60mm、幅1mm、厚さ50μmの回路パターンを5条形成した。精密テスターにより、各パターンの両端間の抵抗を測定し、断面積(S、cm)と長さ(L、cm)から次式(1)により体積抵抗率(Ω・cm)を計算した。体積抵抗率が20×10-5Ω・cm以下であれば導電性に優れていると評価した。
【数1】
【0042】
<ダイシェア強度>
各実施例及び比較例の導電性組成物を、厚さ100μm、縦5mm×横5mmで開孔したメタル印刷版とメタルスキージーを用いて銅張基板上に印刷塗布を行った。塗布した導電性組成物の上に、銀で鍍金されたダイまたは金で鍍金されたダイを実装しエアーオーブンにて大気雰囲気下で表1~3に記載の硬化条件で硬化後、測定装置としてNordson社製「4000Plus」を、ロードセルとしてノードソン・アドバンスト・テクノロジー株式会社製「S200KG」を用いてダイシェア強度を測定した。また、ヒートサイクル試験を500サイクル行った後にもダイシェア強度を測定した。測定条件は以下の通りである。ダイシェア強度が15MPa以上であれば密着性に優れていると評価し、ヒートサイクル試験後のダイシェア強度が15MPa以上であれば長期信頼性に優れていると評価した。なお、他の評価項目で優れた結果が得られなかったものについては測定しなかったものもある。その場合は表1~3に「-」と示した。
<ダイの仕様>
銀で鍍金されたダイ:ダイの表面にチタン(Ti)の鍍金膜20nm、ニッケル(Ni)の鍍金膜200nm、銀(Ag)の鍍金膜500nmを順に形成、サイズ 縦5mm×横5mm×厚さ625μm
金で鍍金されたダイ:ダイの表面にチタン(Ti)の鍍金膜20nm、ニッケル(Ni)の鍍金膜200nm、金(Au)の鍍金膜300nmを順に形成、サイズ 縦5mm×横5mm×厚さ625μm
<測定条件>
測定高さ:0.1mm
測定時移動速度:0.3mm/s
最低荷重:0.1kg
最大荷重:100kg
<ヒートサイクル試験>
-65℃の条件下に30分間曝した後、125℃の条件下に30分間曝すサイクルを1サイクルとする。
【0043】
<せん断強度>
タフピッチ銅板の上に各実施例および比較例の導電性組成物を塗布し、塗布した導電性組成物の上にタフピッチ銅板を重ね合わせてクリップで挟んで固定し、170℃で60分間加熱し硬化した。25℃及び200℃の環境下で、JIS K 6850「接着剤の引張りせん断接着強さ試験方法」に従ってせん断強度をそれぞれ測定した。25℃におけるせん断強度が4MPa以上であれば密着性に優れていると評価し、200℃におけるせん断強度が4MPa以上であれば長期信頼性に優れていると評価した。なお、他の評価項目で優れた結果が得られなかったものについては測定しなかったものもある。その場合は表1~3に「-」と示した。
【0044】
<接着層の厚さ>
ダイシェア強度測定用サンプルをモールド樹脂で固め断面観察を行い、ダイと銅張基板とを接着する接着層の厚さを測定した。接着層の厚さが70μm以下であれば放熱性に優れていると評価し、表1~3において「○」と示し、70μmを超えていた場合は放熱性に劣ると評価し、表1~3において「×」と示した。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
表1,2に示すように、各実施例は、体積抵抗率、密着性、長期信頼性、及び放熱性に優れていた。
【0049】
表3に示すように、比較例1は、金属粒子(A)の含有量が上限値を超える例であり、長期信頼性(せん断強度)が劣っていた。なお、長期信頼性(せん断強度)が劣っていたため、ダイシェア強度については評価しなかった。
【0050】
比較例2は、金属粒子(A)の含有量が上限値を超える例であり、長期信頼性(せん断強度)が劣っていた。
【0051】
比較例3は、金属粒子(A)の含有量が下限値未満の例であり、体積抵抗率が劣っていた。なお、体積抵抗率が劣っていたため、ダイシェア強度については評価しなかった。
【0052】
比較例4は、SnBiはんだ粒子の粒子径が所定範囲外の例であり、体積抵抗率、及び密着性が劣っていた。なお、体積抵抗率と密着性が劣っていたため、長期信頼性については評価しなかった。
【0053】
比較例5,6は、SnBiはんだ粒子の粒子径が所定範囲外の例であり、接着層の厚さが70μmを超えており、放熱性が劣っていた。
【0054】
比較例7は、フラックスの含有量が上限値を超える例であり、密着性(ダイシェア強度)及び長期信頼性(ダイシェア強度)が劣っていた。
【0055】
比較例8は、フラックスの含有量が下限値未満の例であり、体積抵抗率が劣っていた。なお、体積抵抗率が劣っていたため、長期信頼性(せん断強度)については評価しなかった。
【0056】
比較例9は、SnBiはんだ粒子に代えて、Sn粒子を使用した例であり、体積抵抗率が劣っていた。なお、ダイシェア強度、及び長期信頼性(せん断強度)については評価しなかった。
【0057】
比較例10は、金属粒子(B)として銀を含有しない例であり、密着性(せん断強度)が劣っていた。なお、密着性(せん断強度)が劣っていたため、ダイシェア強度、及び長期信頼性(せん断強度)については評価しなかった。