(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083829
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】リニアアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
B60N 2/06 20060101AFI20240617BHJP
【FI】
B60N2/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197876
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】598106326
【氏名又は名称】トヨタ紡織精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 真樹
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 貴行
(72)【発明者】
【氏名】兵藤 宏昭
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087AA02
3B087BA02
3B087BB02
3B087BC30
(57)【要約】
【課題】ラックギアの途中にボルトなどの部品を配置するスペースを確保したリニアアクチュエータを提供する。
【解決手段】本明細書が開示するリニアアクチュエータは、レールと、レールにスライド可能に係合するピニオンユニットを備える。レールは、レールの長手方向に沿って延びているラックギアを備える。ラックギアの歯列の途中に少なくとも1カ所の距離L1の無歯区間が設けられている。ピニオンユニットは、ラックギアに係合する2個のピニオンギアと、ピニオンギアを駆動するモータを備える。2個のピニオンギアは、レールの長手方向で中心間距離L2を隔てて配置されている。距離L1は、ラックギアの歯ピッチ2個分以上であり、中心間距離L2よりも短い。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールと、
前記レールにスライド可能に取り付けられているピニオンユニットと、
を備えており、
前記レールは、前記レールの長手方向に沿って延びているラックギアであって歯列の途中に少なくとも1カ所の距離L1の無歯区間を有するラックギアを備えており、
前記ピニオンユニットは、前記ラックギアに係合する2個のピニオンギアであってそれらが前記長手方向で中心間距離L2を隔てて配置されている2個のピニオンギアと、前記ピニオンギアを駆動するモータを備えており、
前記距離L1は前記ラックギアの歯ピッチ2個分以上であり、前記中心間距離L2よりも短い、リニアアクチュエータ。
【請求項2】
前記ラックギアにて前記無歯区間の両側に位置する2個の端歯の間隔が前記歯ピッチの整数倍である、請求項1に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項3】
2個の前記ピニオンギアが1個のアイドルギアに係合している、請求項1または2に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項4】
前記ラックギアにて前記無歯区間の隣に位置する端歯の大きさが前記ラックギアの他の歯よりも小さく、前記端歯の高さが、前記ラックギアと前記ピニオンギアが係合しているときの前記ラックギアの歯谷の底と前記ピニオンギアの歯の先端との間の距離よりも大きい、請求項1に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項5】
前記ラックギアは、第1ラックギアと第2ラックギアを含んでおり、
前記第1ラックギアと前記第2ラックギアが前記長手方向にて距離L1の前記無歯区間を隔てて配置されている、請求項1に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項6】
前記レールはフロアパネルに固定されているロアレールであり、
前記ピニオンユニットはシートの下部に取り付けられているアッパレールであり、
前記ロアレールと前記アッパレールは、フロアパネルに対してシートを移動させるシートスライド装置を構成する、請求項1に記載のリニアアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、ラックギアとピニオンギアを用いたリニアアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のシートを電動でスライドさせるためにリニアアクチュエータが採用されることがある。リニアアクチュエータは、レールに沿ってピニオンユニットが往復移動できる装置である。リニアアクチュエータは、ピニオンユニットが床に拘束され、レールがピニオンユニットに対して往復移動できる装置であってもよい。
【0003】
特許文献1に開示されたシートスライド装置は一種のリニアアクチュエータに相当する。シートスライド装置は、フロアに取り付けられるロアレールと、シートに固定されるアッパレールを備える。アッパレールはロアレールにスライド可能に係合している。ロアレールがラックギアを備え、アッパレールはピニオンギアとモータ(電気モータ)を備える。アッパレールのピニオンギアがロアレールのラックギアに係合している。モータがピニオンギアを駆動することで、ピニオンギアを含むアッパレールがラックギアに沿って移動する。すなわちシートがロアレールの長手方向に沿って移動する。
【0004】
本明細書では、ラックギアを備えている部品をレールと称し、ピニオンギアとモータを備えている部品をピニオンユニットと称する。電動シートスライド装置において、ロアレールがレールに対応し、アッパレールがピニオンユニットに対応する。また、本明細書が開示するリニアアクチュエータは、レールが機械の基部に固定され、ピニオンユニットがレール上を移動するタイプであってもよいし、ピニオンユニットが機械の基部に固定され、レールが移動するタイプであってもよい。説明の便宜上、いずれのタイプも「ピニオンユニットがレールに対してスライド可能に取り付けられている」と表現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
細長いレールにラックギアが固定される。レールに他の部品(例えばフロアパネル)も固定される。他の部品を固定するボルトとラックギアが干渉するおそれがある。例えば電動シートスライド装置の場合、フロアパネルの上にレール(ロアレール)の底板がボルトで固定され底板の上にラックギアが固定される。この場合、上面に歯列を設けたラックギアの下面に切欠を設け、切欠の空間にボルトヘッドが位置するようにラックギアを構成すれば、ボルトとラックギアの干渉は避けられる。しかしながらこの場合、レールをフロアパネルに取り付けた後にラックギアをレールに取り付けることになり、手間がかかる。本明細書は、ラックギアの歯列の途中にボルトなどの部品を配置するスペースを確保したリニアアクチュエータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書が開示するリニアアクチュエータは、レールと、レールにスライド可能に係合するピニオンユニットを備える。レールは、レールの長手方向に沿って延びているラックギアを備える。ラックギアの歯列の途中に少なくとも1カ所の距離L1の無歯区間が設けられている。ピニオンユニットは、ラックギアに係合する2個のピニオンギアと、ピニオンギアを駆動するモータを備える。2個のピニオンギアは、レールの長手方向で中心間距離L2を隔てて配置されている。距離L1は、ラックギアの歯ピッチ2個分以上であり、中心間距離L2よりも短い。
【0008】
本明細書が開示するリニアアクチュエータは、ラックギアの歯列の途中に無歯区間を設ける。この無歯区間にボルトなどの部品を配置することができる。一方、ピニオンユニットには、無歯区間を超えて移動できるように、2個のピニオンギアを取り付ける。一方のピニオンギアが無歯区間を通るとき、他方のピニオンギアがラックギアと係合しているので、ピニオンユニットは無歯区間を超えて移動することができる。なお、無歯区間は、1本のラックギアの歯列の途中に設けられた切欠であってよい。あるいは、ラックギアは直線上に並んだ第1ラックギアと第2ラックギアを含んでおり、両者が距離L1を隔てて配置されているものであってもよい。第1ラックギアと第2ラックギアの間の空間が無歯区間に相当する。リニアアクチュエータがシートスライド装置に用いられる場合、レールがロアレールに対応し、ピニオンユニットがアッパレールに対応する。
【0009】
ラックギアにて無歯区間の両側に位置する2個の端歯の間隔が歯ピッチの整数倍であるとよい。無歯区間を通過した後のピニオンギアがラックギアに円滑に再係合できる。2個の端歯の間隔とは、一方の端歯の中心から他方の端歯の中心までの距離を指す。
【0010】
ピニオンユニットは1個のアイドルギアを備えており、2個のピニオンギアが1個のアイドルギアに係合しているとよい。2個のピニオンギアは、アイドルギアを介して連動する。この構成によれば、2個のピニオンギアを簡単に同期回転させることができる。この特徴と、無歯区間の両側の端歯の間隔が歯ピッチの整数倍であることを組み合わせると、無歯区間を通過した後のピニオンギアがラックギアにさらに円滑に再係合できる。
【0011】
端歯(無歯区間の両側に位置する歯)の大きさが、ラックギアの他の歯よりも小さく、端歯の高さが、ラックギアとピニオンギアが係合しているときのラックギアの歯谷の底とピニオンギアの歯の先端との間の距離よりも大きいとよい。端歯を他の歯よりも小さくすることで、無歯区間を通過した後のピニオンギアがより円滑に再係合できるようになる。
【0012】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例のリニアアクチュエータ(シートスライド装置)を含むシートの側面図である。
【
図4】ラックギアと2個のピニオンギアの係合関係を示す図である(1)。
【
図5】ラックギアと2個のピニオンギアの係合関係を示す図である(2)。
【
図6】ラックギアと2個のピニオンギアの係合関係を示す図である(3)。
【
図7】ラックギアと2個のピニオンギアの係合関係を示す図である(4)。
【
図8】シートスライド装置の変形例を示す図である。
【
図9】ラックギアの端の側面図である(ラックギアの第1変形例)。
【
図10】ラックギアの端の側面図である(ラックギアの第2変形例)。
【
図11】ラックギアの端の側面図である(ラックギアの第3変形例)。
【
図12】ラックギアの端の側面図である(ラックギアの第4変形例)。
【
図13】ラックギアの端の側面図である(ラックギアの第5変形例)。
【
図14】ラックギアの端の側面図である(ラックギアの第6変形例)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施例)図面を参照して実施例のリニアアクチュエータを説明する。実施例のリニアアクチュエータは、フロアパネルとシートの間に配置されるシートスライド装置2である。
図1に、自動車のフロアパネル90に取り付けられたシートスライド装置2の側面図を示す。シートスライド装置2は、ロアレール10とアッパレール20で構成される。ロアレール10は長尺である。アッパレール20は、ロアレール10に対してその長手方向に移動可能(スライド可能)に取り付けられている。詳しくは後述するが、アッパレール20はモータによってロアレール10に沿って移動することができる。ユーザが不図示のスイッチを入れるとモータが回転し、アッパレール20(シート)がロアレール10に沿って動く。ロアレール10がリニアアクチュエータのレールに相当し、アッパレール20がリニアアクチュエータのピニオンユニットに相当する。
【0015】
ロアレール10は車体のフロアパネル90に固定される。アッパレール20は、シート91の下部に取り付けられる。アッパレール20は、不図示のフレームを介してシート91の下部に取り付けられる。1個のシート91に対して一対のシートスライド装置2が取り付けられる。一対のアッパレール20のそれぞれは、シート91の下部の左右に夫々取り付けられる。一対のロアレール10のそれぞれは、一対のアッパレール20のそれぞれに対応するようにフロアパネル90に固定される。
【0016】
図中の座標系のX方向がロアレール10とアッパレール20の長手方向に相当する。レールの長手方向(X方向)を以下ではレール長手方向と称する。図中の座標系のY方向がレールの短手方向に相当する。レールの短手方向を以下ではレール短手方向と称する。図中の座標系の+Z方向が上方を示す。
【0017】
図2に、シートスライド装置2の正面図を示す。
図2は、レール長手方向に沿って見たシートスライド装置2の図である。
図3に、シートスライド装置2の側面図を示す。
図3は、
図2のIII-III線に沿って見たシートスライド装置2の側面図である。
【0018】
ロアレール10をレール長手方向に垂直な平面でカットした断面形状は溝形であり、ロアレール10は、底板11と、底板11のレール短手方向の両端から上に延びている一対の側板19を有する。また、ロアレール10は、レール長手方向に沿って延びているラックギア12を有している。ラックギア12は、底板11に固定されている。なお、
図2、3では、ラックギア12のギア歯は図示を省略してある。
【0019】
フロアパネル90には溝が形成されており、ロアレール10はフロアパネル90の溝の中に配置される。ロアレール10は、ボルト93によってフロアパネル90に固定されている。ボルト93のヘッドは、レール長手方向にてラックギア12の歯列の途中に配置されている。ラックギア12には上方が開口している切欠13が設けられており、ボルト93のヘッドは切欠13に配置されている。ボルト93により、ラックギア12と底板11とフロアパネル90が共締めされる。
【0020】
アッパレール20は複数のローラ28を備えている。ローラ28は、アッパレール20の本体29の四隅に備えられている。ローラ28はロアレール10の底板11に当接する。4個のローラ28によって、アッパレール20はロアレール10に沿って円滑に動くことができる。ロアレール10の側板19の上部は逆U字に湾曲しており、ローラ28は、底板11と、側板19の上部湾曲部の間の空間に収まっている。
図3では、アッパレール20の本体29とローラ28は仮想線で描いてある。
【0021】
アッパレール20には、2個のピニオンギア(第1ピニオンギア21と第2ピニオンギア22)と、1個のアイドルギア23と、モータ24が備えられている。なお、
図2、3では、第1ピニオンギア21、第2ピニオンギア22、アイドルギア23は簡略化して描いてあり、ギア歯の図示は省略している。第1ピニオンギア21と第2ピニオンギア22はラックギア12に係合しており、アイドルギア23は第1ピニオンギア21と第2ピニオンギア22の両方に係合している。モータ24は不図示の減速機を介してアイドルギア23を駆動する。モータ24がアイドルギア23を駆動すると、アイドルギア23に連動して第1ピニオンギア21と第2ピニオンギア22が同期回転する。モータ24が第1ピニオンギア21と第2ピニオンギア22を駆動すると、アッパレール20がラックギア12(すなわちロアレール10)に沿って移動する。すなわち、アッパレール20は電動で動く。
【0022】
図4-7を参照してギアの係合関係を説明する。
図4-7では、アッパレール20の本体29とローラ28の図示は省略した。ロアレール10の側板19の図示も省略した。
図4-7では、係合するギアの間に隙間が存在するが、この隙間は、図を見やすくするために便宜上設けたものである。当然ながら、係合するギア間のバックラッシは小さい方がよい。
【0023】
先に述べたように、ラックギア12には上方が開口した切欠13が設けられている。切欠13の範囲にはラックギア12の歯が無い。切欠13の範囲(すなわち歯の無い範囲)を以下では無歯区間14と称する。無歯区間14は、ラックギア12の歯列の途中に設けられている。無歯区間14にボルト93のヘッドが配置されている。ボルト93は、切欠13の底と、ロアレール10の底板11と、フロアパネル90を貫通し、それらを固定する。
【0024】
幅が狭い底板11にボルト93のヘッドを配置する空間を確保するために無歯区間14が設けられている。無歯区間14はレール長手方向に沿って距離L1の長さを有している。距離L1は、ラックギア12の歯ピッチ2個分以上である。
図4-7では、距離L1と歯ピッチの関係が理解できるように、無歯区間14にも仮想線でギア歯を描いてある。
図4の記号Ptが歯ピッチを示している。本実施例では、無歯区間14の距離L1は、歯ピッチPtの2倍よりも長く、歯ピッチPtの3倍よりも短い。
【0025】
アッパレール20には、2個のピニオンギア(第1ピニオンギア21と第2ピニオンギア22)が取り付けられている。2個のピニオンギアは、レール長手方向に並んでいる。2個のピニオンギアは、レール長手方向に沿って中心間距離L2を隔てて配置されている。2個のピニオンギア(第1ピニオンギア21と第2ピニオンギア22)は、同じ形状である。2個のピニオンギア(第1ピニオンギア21と第2ピニオンギア22)は、同じ直径を有し、同数のギア歯を有する。先に述べたように、アイドルギア23が第1ピニオンギア21と第2ピニオンギア22の両方に係合しており、モータ24がアイドルギア23を介して第1ピニオンギア21と第2ピニオンギア22を駆動する。同形状の第1ピニオンギア21と第2ピニオンギア22は1個のアイドルギア23を介して同期回転するので、それらはラックギア12に係合しつつ円滑に回転する。
【0026】
図4-7では、アッパレール20が図の太矢印線Aが示す方向(左方向)に移動すると仮定する。ただし、図示の都合上、
図4から
図7の順に、ロアレール10を左から右へ移動させている。
図4から
図7の順に、無歯区間14が左から右へ移動している。
【0027】
図4では無歯区間14はアッパレール20の進行方向前方に位置している。無歯区間14の距離L1はラックギア12の歯ピッチPt2個分以上である。それゆえ、第1ピニオンギア21が無歯区間14に達すると、第1ピニオンギア21はラックギア12から外れて空転する(
図5)。しかし、第2ピニオンギア22がラックギア12との係合を保持しているので、アッパレール20は移動し続けることができる。
【0028】
アッパレール20がさらに移動すると、第1ピニオンギア21が再びラックギア12と係合する(
図6)。無歯区間14の両側に位置する2個の端歯15a、15bの間隔L3は歯ピッチPtの整数倍である。本実施例では、間隔L3は歯ピッチPtの3倍である(
図4参照)。端歯15a、15bの間隔L3は、一方の端歯15aの中心から、他方の端歯15bの中心までの距離を指す。それゆえ、空転しながら無歯区間14を通過し終えた第1ピニオンギア21は、円滑にラックギア12に再係合できる。
図6にて太矢印線Bが示す箇所が、端歯15aと第1ピニオンギア21の再係合箇所を示している。第1ピニオンギア21は無歯区間14を通過している間に空転するが、ラックギア12と再係合する際、端歯15aの山に第1ピニオンギア21の谷が合う。
【0029】
さらにアッパレール20が左方向に進むと、今度は第2ピニオンギア22が無歯区間14を通過する(
図7)。このとき、第2ピニオンギア22は空転するが、第1ピニオンギア21がラックギア12との係合を保持しているので、アッパレール20は進むことができる。第1ピニオンギア21の場合と同様に、第2ピニオンギア22も円滑にラックギア12に再係合することができる。
【0030】
このように、実施例のシートスライド装置2は、ラックギア12に無歯区間14を設けることで、ラックギア12の歯列の途中にボルト93を配置することができる。2個のピニオンギア(第1ピニオンギア21と第2ピニオンギア22)を有するアッパレール20は、無歯区間14を超えて円滑に移動することができる。なお、無歯区間14の距離L1は、2個のピニオンギア(第1ピニオンギア21と第2ピニオンギア22)の中心間距離L2よりも短い。無歯区間14が中心間距離L2よりも長いと、両方のピニオンギアが無歯区間に入ってしまうからである。好ましくは、端歯15a、15bの間隔L3が、中心間距離L2よりも短いとよい。無歯区間14には、ボルト以外の部品が配置されてもよい。
【0031】
(変形例)
図8を参照して変形例のシートスライド装置2aを説明する。シートスライド装置2aのアッパレール20は実施例のシートスライド装置2のアッパレール20と同じである。
図8でもアッパレール20の本体とローラは図示を省略した。変形例のシートスライド装置2aは、2個のラックギア12a、12bを備えている。2個のラックギア12は、レール長手方向に沿って距離L1を隔てて配置されている。2個のラックギア12a、12bの間の距離L1のスペースが無歯区間14に相当する。無歯区間14にボルト93のヘッドが位置している。距離L1は、ラックギアの歯ピッチ2個分以上であり、2個のピニオンギアの中心間距離L2よりも短い。また、無歯区間14の両側の端歯15a、15bの間隔L3は、ラックギア12a、12bの歯ピッチの整数倍である。間隔L3は、中心間距離L2よりも短い。
【0032】
シートスライド装置2aもモータ24によって電動で動く。シートスライド装置2aも、アッパレール20は無歯区間14を超えて円滑に移動することができる。
【0033】
次に、
図9-14を参照してラックギアの端歯の形状のバリエーションについて説明する。
図9-14のラックギア112が
図2-8のラックギア12に対応する。
図9-14のピニオンギア121が
図2-8の第1ピニオンギア21に対応する。仮想線で示したピニオンギア121aは、右からラックギア112に近づき、ラックギア112に係合する直前のピニオンギアを示している。
【0034】
図9-14では、ラックギア112の端に位置する歯を端歯115(115a、115b、115c)と称し、端歯115の隣の歯を次歯116(116a、116b、116c)と称し、それ以外の歯を通常歯117と称する。また、端歯115は、無歯区間の隣に位置する歯であってもよい。
【0035】
図9の例では、ラックギア112の側面視において端歯115aの大きさが通常歯117よりも小さい。
図9の例では、次歯116は通常歯117と同じ大きさを有している。端歯115aの高さH1は、通常歯117の高さH2よりも低い。端歯115aの高さH1は、ラックギア112に係合したピニオンギア121の歯先とラックギア112の歯谷の間の距離H3よりも高い。端歯115aを小さくすることで、無歯区間を通過したピニオンギア121がラックギア12に係合しやすくなる。「高さH1>距離H3」は、ピニオンギア121が端歯115aと係合するのに必要な条件である。
【0036】
図10の例では、ラックギア112の側面視において端歯115aの大きさが通常歯117よりも小さく、次歯116aの大きさが端歯115aよりも大きく通常歯117よりも小さい。端歯115aの高さH1は、通常歯117の高さH2よりも低い。端歯115aの高さH1は、ラックギア112に係合したピニオンギア121の歯先とラックギア112の歯谷の間の距離H3よりも高い。次歯116aの高さH4は、端歯115aの高さH1よりも高く、通常歯117の高さH2よりも低い。ラックギア112の中心から端に向かって歯の高さを徐々に低くすることで、ラックギア112の端に到達したピニオンギア121がラックギア12に係合しやすくなる。
【0037】
図11の例では、側面視において端歯115bの先端幅W1が通常歯117の先端幅W2よりも狭い(すなわち先端幅W1<先端幅W2)。
図11の例では、次歯116は通常歯117と同じ形である。端歯115bの先端幅W1を狭くすることによっても、無歯区間を通過したピニオンギア121がラックギア112に係合しやすくなる。
【0038】
図12の例では、側面視において端歯115bの先端幅W1が通常歯117の先端幅W2よりも狭い(すなわち先端幅W1<先端幅W2)。さらに、次歯116bの先端幅W3が先端幅W1よりも広く、先端幅W2よりも狭い(W1<W3<W2)。ラックギア112の中心から端に向かって歯の先端幅を徐々に狭くしていくことでも、ラックギア112に到達したピニオンギア121がラックギア112に係合しやすくなる。
【0039】
図13の例では、側面視において端歯115cのラックギア端側の側面の角度A1が通常歯117の側面の角度A2よりも緩やかである(すなわち角度A1<角度A2)。
図13の例では、次歯116は通常歯117と同じ形である。端歯115cの側面の角度Aを緩やかにすることでも、無歯区間を通過したピニオンギア121がラックギア112に係合しやすくなる。
【0040】
図14の例では、側面視において端歯115cのラックギア端側の側面の角度A1が通常歯117の側面の角度A2よりも緩やかである。次歯116cのラックギア端側の側面の角度A3が角度A1よりも大きく、角度A2よりも小さい(角度A2>角度A3>角度A1)。ラックギア112の中心から端に向かって歯の側面の角度を徐々に小さくしていくことで、ラックギア112の端に到達したピニオンギア121がラックギア112に係合しやすくなる。角度A1、A2、A3は、レール長手方向に対する歯の側面の角度を指す。
【0041】
端歯の高さを通常歯の高さよりも低く、端歯の先端幅を通常歯の先端幅より狭くしてもよい。端歯の高さを通常歯の高さよりも低く、端歯の側面の角度を通常歯の側面の角度より小さくしてもよい。端歯の先端幅を通常歯の先端幅より狭く、端歯の側面の角度を通常歯の側面の角度より小さくしてもよい。端歯の高さを通常歯の高さよりも低く、端歯の側面の角度を通常歯の側面の角度より小さく、端歯の先端幅を通常歯の先端幅より狭くしてもよい。
【0042】
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。2個のピニオンギア(第1ピニオンギア21と第2ピニオンギア22)は、一つのアイドルギア23に係合している。この構成により、2個のピニオンギアが正確に同期して回転する。それゆえ、2個のピニオンギアのそれぞれが円滑にラックギア12に係合する。
【0043】
実施例ではモータ24はアイドルギア23を直接に駆動した。モータ24は第1ピニオンギア21(または第2ピニオンギア22)を直接に駆動してもよい。モータ24が直接に第1ピニオンギア21(第2ピニオンギア22)を駆動する場合であっても、アイドルギア23を介して第2ピニオンギア22(第1ピニオンギア21)が回転する。このときも第1ピニオンギア21と第2ピニオンギア22は同期回転する。
【0044】
2個のピニオンギア(第1ピニオンギア21と第2ピニオンギア22)は、一つのアイドルギア23に係合していることが好ましい。しかしながら、2個のピニオンギア(第1ピニオンギア21と第2ピニオンギア22)は、複数のアイドルギア23を介して連動するものであってもよい。ただし、2個のピニオンギアは、同じ形状であり、同じ速度で回転することが必要である。
【0045】
1個のラックギアに複数の無歯区間を設けてもよい。ロアレールは、3個以上のラックギアを含んでもよい。レール長手方向にて隣り合うラックギアが距離L1を隔てて配置されていればよい。さらには、無歯区間の両隣に位置する一対の端歯の間の距離(
図4における距離L3)は、ラックギア112の歯ピッチの整数倍であり、かつ、2個のピニオンギアの中心間距離L2よりも狭いとよい。
【0046】
2個のピニオンギアがラックギアと係合するリニアアクチュエータは、シートスライド装置以外にも適用できる。本明細書が開示するリニアアクチュエータは、次の特徴を有する。リニアアクチュエータは、レールと、レールにスライド可能に取り付けられているピニオンユニットを備える。レールは、レール長手方向に沿って延びているラックギアを備える。ラックギアの歯列の途中に少なくとも1カ所の距離L1の無歯区間が設けられている。ピニオンユニットは、ラックギアに係合する2個のピニオンギアと、ピニオンギアを駆動するモータを備える。2個のピニオンギアは、レール長手方向で中心間距離L2を隔てて配置されている。距離L1はラックギアの歯ピッチ2個分以上であり、中心間距離L2よりも短い。好ましくは、無歯区間の両側に位置する一対の端歯の間の距離L3が中心間距離L2よりも小さい。このリニアアクチュエータにおいて、ピニオンユニットは、無歯区間を超えて移動することができる。
【0047】
モータによって、ピニオンユニットはレールに対して相対移動することができる。ピニオンユニットが床に固定され、レールが移動するタイプであってもよいし、レールが床に固定され、ピニオンユニットが移動するタイプであってもよい。
【0048】
ピニオンユニットは、レールに沿って円滑に移動させるローラを備えているとよい。ピニオンユニットは、レールに沿って動けるように拘束されている。ピニオンユニット(アッパレール20)のローラ28が、ピニオンユニットがレール長手方向に移動できるように拘束している部品である。
【0049】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0050】
2、2a:シートスライド装置(リニアアクチュエータ) 10:ロアレール 11:底板 12、12a、12b、112:ラックギア 13:切欠 14:無歯区間 15a、15b:端歯 19:側板 20:アッパレール(ピニオンユニット) 21:第1ピニオンギア 22:第2ピニオンギア 23:アイドルギア 24:モータ 28:ローラ 29:本体 90:フロアパネル 91:シート 93:ボルト 115a-115c:端歯 116、116a-116c:次歯 117:通常歯 121、121a:ピニオンギア