(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008383
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】締結具
(51)【国際特許分類】
F16B 37/08 20060101AFI20240112BHJP
F16B 35/00 20060101ALI20240112BHJP
F16B 37/00 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
F16B37/08 Z
F16B35/00 E
F16B35/00 Q
F16B37/00 G
F16B37/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110215
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】592157076
【氏名又は名称】イワブチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121496
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 重雄
(72)【発明者】
【氏名】岩島 正典
(57)【要約】
【課題】1回転未満の回転でも確実に締結(ロック)を完了して締結作業の作業負担を軽減することができると共に、締結が完了したことを容易かつ確実に確認する。
【解決手段】ピン部材11とナット部材12とを備え、ナット部材12のロック用孔部12bにピン部材11のロック用軸部11cを挿入して回転させた際、ロック用軸部11cに設けた一対の突起11c1,11c1が回転許容内周面12b1,12b1に対向しながら移動してナット部材12の一対の突起嵌合用凹部12c,12cに嵌合する直前ではロック用軸部11cの一対の突起11c1,11c1が回転許容内周面12b1,12b1に接触(摺接)して回転許容内周面12b1,12b1側や突起11c1,11c1側が伸縮する等の弾性変形したり、あるいは削れたり凹む等の塑性変形してナット部材12の一対の突起嵌合用凹部12c,12cに嵌合してロックする。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロック用軸部の外周面に所定の高さを有し、かつ、当該ロック用軸部の軸心方向に所定の長さを有する複数の突起が設けられたピン部材と、
前記ピン部材の前記ロック用軸部を通すロック用孔部を有するナット部材と、を備え、
前記ロック用孔部の内周面には、前記ロック用軸部の複数の突起がそれぞれ嵌る複数の突起嵌合用凹部が設けられ、
前記ロック用孔部における隣接する前記突起嵌合用凹部の中間点である隣接凹部中間点は、前記ロック用軸部の前記突起を当該隣接凹部中間点に対向させて前記ピン部材の前記ロック用軸部を前記ロック用孔部に通した際、前記ロック用軸部の複数の突起との間に間隙を有する内径である一方、
前記隣接凹部中間点から前記突起嵌合用凹部までの前記ロック用孔部の内周面として、前記ロック用軸部の複数の突起が当該ロック用孔部の内周面に接触した後、前記突起嵌合用凹部に嵌合するまで前記ピン部材または前記ナット部材の少なくとも一方の回転を許容する内径を有する回転許容内周面を有しており、
前記ナット部材のロック用孔部に前記ピン部材のロック用軸部を挿入して前記突起が前記回転許容内周面を介し前記突起嵌合用凹部に向けて回転させると、前記ピン部材の前記各突起は前記突起嵌合用凹部に嵌合する前に前記回転許容内周面に接触して前記各突起と前記ロック用孔部の少なくとも一方が変形して前記ナット部材の前記各突起嵌合用凹部に嵌合してロックされるように構成されていることを特徴とする締結具。
【請求項2】
請求項1記載の締結具において、
前記ナット部材における前記複数の突起嵌合用凹部の前後で前記ロック用孔部の内周面の内径が異なっており、
前記隣接凹部中間点に前記突起を対向させた状態で前記ピン部材の前記突起が前記ナット部材の前記突起嵌合用凹部の前後の内で内周面の内径が大きい方に近付くように回転させた際、当該隣接凹部中間点から当該突起嵌合用凹部までの前記ロック用孔部の内周面は、前記回転許容内周面である一方、
前記隣接凹部中間点に前記突起を対向させた状態で前記ピン部材の前記突起が前記ナット部材の前記突起嵌合用凹部の前後の内で内周面の内径が小さい方に近付くように回転させた際、前記隣接凹部中間点から前記突起嵌合用凹部までの前記ロック用孔部の内周面は、前記突起が前記突起嵌合用凹部に嵌合するまでの前記ピン部材または前記ナット部材の少なくとも一方の回転を禁止する内径を有する回転禁止内周面であり、
前記ナット部材のロック用孔部に前記ピン部材のロック用軸部を挿入して前記ピン部材の前記突起が前記ナット部材の前記突起嵌合用凹部の前後の内で内周面の内径が大きい方に近付くように回転させた際、前記ピン部材の前記各突起は前記回転許容内周面に対向しながら移動して、前記突起嵌合用凹部に嵌合する前に前記回転許容内周面に接触して前記各突起と前記回転許容内周面の少なくとも一方が変形することにより前記ナット部材の前記各突起嵌合用凹部に嵌合し、その後、前記各突起嵌合用凹部を超えて前記回転禁止内周面側に向かう回転は禁止され前記ピン部材と前記ナット部材とがロックされることを特徴とする締結具。
【請求項3】
請求項1記載の締結具において、
前記ナット部材と前記ピン部材の強度が異なることを特徴とする締結具。
【請求項4】
請求項1記載の締結具において、
前記ナット部材の外周面における前記隣接凹部中間点の近傍には、前記ロック用軸部を当該ロック用孔部に挿入する際、前記各突起の挿入位置を示すと共に、締結完了時にずれることで締結完了の位置の目安を示す目印が設けられていることを特徴とする締結具。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか一の請求項に記載の締結具において、
前記ナット部材の軸方向には、前記ナット部材の長径より大きい直径を有する挿入ロック用孔部が設けられ、
前記ロック用孔部は、前記挿入ロック用孔部の内周面にロック用孔部形成凸部を突出させることにより形成されており、
前記ロック用孔部形成凸部は、前記挿入ロック用孔部の内周面に前記ロック用孔部の軸方向に対し螺旋状に傾斜して設けられていることを特徴とする締結具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少ない回転量で締結(ロック)することができると共に、締結完了時にクリック音やクリック感等によって締結完了を容易かつ確実に確認することができる締結具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、締結具として、ネジ山が形成されたボルトと、ネジ溝が形成されたナットが広く利用されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-221068号公報
【特許文献2】特開2016-13006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1,2に記載の締結具では、通常、ネジ山が形成されたボルトの軸部をナットのボルト通し孔に螺合させた後、ナットまたはボルトを数回転させる必要があるため、締結が完了するまで時間を要し、手間がかかり、作業性が悪いという問題があった。
【0005】
また、ネジ山とネジ溝との螺合による締結であるため、熟練者でない作業員にとっては確実に締結が完了していることの確認が難しく、締結忘れが発生し易いという問題もあった。
【0006】
そこで、本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、1回転未満の回転でも確実に締結(ロック)を完了して締結作業の作業負担を軽減することができると共に、締結が完了したことを容易かつ確実に確認することができる締結具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る締結具は、ロック用軸部の外周面に所定の高さを有し、かつ、当該ロック用軸部の軸心方向に所定の長さを有する複数の突起が設けられたピン部材と、前記ピン部材の前記ロック用軸部を通すロック用孔部を有するナット部材と、を備え、前記ロック用孔部の内周面には、前記ロック用軸部の複数の突起がそれぞれ嵌る複数の突起嵌合用凹部が設けられ、前記ロック用孔部における隣接する前記突起嵌合用凹部の中間点である隣接凹部中間点は、前記ロック用軸部の前記突起を当該隣接凹部中間点に対向させて前記ピン部材の前記ロック用軸部を前記ロック用孔部に通した際、前記ロック用軸部の複数の突起との間に間隙を有する内径である一方、前記隣接凹部中間点から前記突起嵌合用凹部までの前記ロック用孔部の内周面として、前記ロック用軸部の複数の突起が当該ロック用孔部の内周面に接触した後、前記突起嵌合用凹部に嵌合するまで前記ピン部材または前記ナット部材の少なくとも一方の回転を許容する内径を有する回転許容内周面を有しており、前記ナット部材のロック用孔部に前記ピン部材のロック用軸部を挿入して前記突起が前記回転許容内周面を介し前記突起嵌合用凹部に向けて回転させると、前記ピン部材の前記各突起は前記突起嵌合用凹部に嵌合する前に前記回転許容内周面に接触して前記各突起と前記ロック用孔部の少なくとも一方が変形して前記ナット部材の前記各突起嵌合用凹部に嵌合してロックされるように構成されていることを特徴とする。
また、本発明に係る締結具では、前記ナット部材における前記複数の突起嵌合用凹部の前後で前記ロック用孔部の内周面の内径が異なっており、前記隣接凹部中間点に前記突起を対向させた状態で前記ピン部材の前記突起が前記ナット部材の前記突起嵌合用凹部の前後の内で内周面の内径が大きい方に近付くように回転させた際、当該隣接凹部中間点から当該突起嵌合用凹部までの前記ロック用孔部の内周面は、前記回転許容内周面である一方、前記隣接凹部中間点に前記突起を対向させた状態で前記ピン部材の前記突起が前記ナット部材の前記突起嵌合用凹部の前後の内で内周面の内径が小さい方に近付くように回転させた際、当該隣接凹部中間点から当該突起嵌合用凹部までの前記ロック用孔部の内周面は、前記突起が前記突起嵌合用凹部に嵌合するまでの前記ピン部材または前記ナット部材の少なくとも一方の回転を禁止する内径を有する回転禁止内周面であり、前記ナット部材のロック用孔部に前記ピン部材のロック用軸部を挿入して前記ピン部材の前記突起が前記ナット部材の前記突起嵌合用凹部の前後の内で内周面の内径が大きい方に近付くように回転させた際、前記ピン部材の前記各突起は前記回転許容内周面に対向しながら移動して、前記突起嵌合用凹部に嵌合する前に前記回転許容内周面に接触して前記各突起と前記回転許容内周面の少なくとも一方が変形することにより前記ナット部材の前記各突起嵌合用凹部に嵌合し、その後、前記各突起嵌合用凹部を超えて前記回転禁止内周面側に向かう回転は禁止され前記ピン部材と前記ナット部材とがロックされることも特徴とする。
また、本発明に係る締結具では、前記ナット部材と前記ピン部材の強度が異なることも特徴とする。
また、本発明に係る締結具では、前記ナット部材の外周面における前記隣接凹部中間点の近傍には、前記ロック用軸部を当該ロック用孔部に挿入する際、前記各突起の挿入位置を示すと共に、締結完了時にずれることで締結完了の位置の目安を示す目印が設けられていることも特徴とする。
また、本発明に係る締結具では、前記ナット部材の軸方向には、前記ナット部材の長径より大きい直径を有する挿入ロック用孔部が設けられ、前記ロック用孔部は、前記挿入ロック用孔部の内周面にロック用孔部形成凸部を突出させることにより形成されており、前記ロック用孔部形成凸部は、前記挿入ロック用孔部の内周面に前記ロック用孔部の軸方向に対し螺旋状に傾斜して設けられていることも特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る締結具によれば、ナット部材のロック用孔部にピン部材のロック用軸部を挿入してピン部材の突起がナット部材の回転許容内周面を介し突起嵌合用凹部に向かうようにピン部材やナット部材を回転させると、ピン部材の各突起は突起嵌合用凹部に嵌合する前に回転許容内周面に接触して各突起とロック用孔部の少なくとも一方が弾性変形や塑性変形してナット部材の各突起嵌合用凹部に嵌合してロックされる。
尚、ナット部材のロック用孔部やピン部材の突起が伸縮する等の弾性変形する場合は、ピン部材およびナット部材を合成樹脂等で成形した場合に起こり易く、それらが削れたり凹む等の塑性変形する場合は、ピン部材およびナット部材を合成樹脂等で成形した場合でも起こるが主に金属で成形した場合に起こり易い。
そのため、ピン部材とナット部材とがロックするまでの回転数はピン部材の各突起がナット部材の各突起嵌合用凹部に嵌合するまでの1回転未満になるので、締結作業の作業負担を軽減することができる。
また、ピン部材をナット部材に挿入して回転させてピン部材の各突起それぞれがナット部材の各突起嵌合用凹部に嵌合する際、クリック感やクリック音等も得られるため、作業者は締結作業時に手に伝わるクリック感等の感触やクリック音等から締結が完了したことを容易かつ確実に確認することができ、熟練者でなくても確実に締結作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(a),(b)、それぞれ、本発明に係る実施形態1の締結具の斜視図である。
【
図2】(a),(b)、それぞれ、本発明に係る実施形態1の締結具を構成するピン部材の斜視図である。
【
図3】(a)~(d)、それぞれ、本発明に係る実施形態1の締結具を構成するピン部材の平面図、正面図、側面図、底面図である。
【
図4】本発明に係る実施形態1の締結具を構成するピン部材の拡大底面図である。
【
図5】(a),(b)、それぞれ、本発明に係る実施形態1の締結具を構成するナット部材の斜視図である。
【
図6】(a)~(c)、それぞれ、本発明に係る実施形態1の締結具を構成するナット部材の平面図、正面図、側面図である。
【
図7】(a)~(c)、それぞれ、本発明に係る実施形態1の締結具を構成するナット部材の底面図、A-A線断面図、B-B線断面図である。
【
図8】(a),(b)、それぞれ、本発明に係る実施形態1の締結具を構成するナット部材の拡大底面図、C部分の要部拡大図である。
【
図9】本発明に係る実施形態1の締結具においてナット部材のロック用孔部にピン部材のロック用軸部を通した状態を示す断面図である。
【
図10】(a),(b)、それぞれ、本発明に係る実施形態1の締結具においてナット部材のロック用孔部にピン部材のロック用軸部を通した後、ナット部材を
図9に示す状態から時計回りに45度回転させた状態を示す断面図、D部分の要部拡大断面図である。
【
図11】(a),(b)、それぞれ、本発明に係る実施形態1の締結具においてナット部材のロック用孔部にピン部材のロック用軸部を通した後、ナット部材を
図9に示す状態から時計回りに85度回転させた状態を示す断面図、E部分の要部拡大断面図である。
【
図12】(a),(b)、それぞれ、本発明に係る実施形態1の締結具においてナット部材のロック用孔部にピン部材のロック用軸部を通した後、ナット部材を
図9に示す状態から時計回りに90度回転させた状態を示す断面図、F部分の要部拡大断面図である。
【
図13】(a),(b)、それぞれ、本発明に係る実施形態1の締結具にけるピン部材の突起の別の形状の一例がナット部材の突起嵌合用凹部に嵌合する直前と、嵌合した状態を示す要部拡大図である。
【
図14】(a),(b)、それぞれ、本発明に係る実施形態2の締結具を構成するピン部材の特徴を示す平面図、ナット部材の特徴を示す平面図である。
【
図15】(a),(b)、それぞれ、本発明に係る実施形態2の締結具においてナット部材にピン部材を挿入した状態を示す平面図、ナット部材の突起嵌合用凹部にピン部材の突起が嵌合した状態を示す平面図である。
【
図16】(a),(b)、それぞれ、本発明に係る実施形態3の締結具を構成するピン部材の特徴を示す平面図、ナット部材の特徴を示す平面図である。
【
図17】(a),(b)、それぞれ、本発明に係る実施形態3の締結具においてナット部材にピン部材を挿入した状態を示す平面図、ナット部材の突起嵌合用凹部にピン部材の突起が嵌合した状態を示す平面図である。
【
図18】本発明に係る実施形態4の締結具を構成するナット部材の突起嵌合用凹部の特徴を示す参考断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る締結具の実施形態1~4について、図面を参照して説明する。なお、下記に説明する実施形態1~4はあくまで本発明の一例であり、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で適宜変更可能である。
【0011】
実施形態1.
<実施形態1の締結具1の構成>
実施形態1の締結具1は、従来のボルトおよびナットの代わりに使用するもので、
図1(a),(b)に示すようにロック用軸部11cを有するピン部材11と、そのロック用軸部11cを通すロック用孔部12bを有するナット部材12とから構成されており、合成樹脂や金属で形成されている。
【0012】
(ピン部材11)
ピン部材11は、
図2~
図4に示すように頭部11aと、頭部11aの下面側に設けられた断面形状(切断面)が円形で半径r1(
図4参照。)の軸部本体11bと、軸部本体11bに連続して設けられ半径がr2(<r1)(
図4参照。)のロック用軸部11cを有する。
【0013】
ロック用軸部11cは、半径r1の軸部本体11bを金属であれば切削加工や鍛造等、樹脂であれば射出成形等によって設けられた部位で、ロック用軸部11cの外周面には、当該ロック用軸部11cの中心を通る直径との交点に所定の高さh(
図4参照。)を有し、かつ、当該ロック用軸部11cの軸心方向に所定の長さを有する一対の突起11c1,11c1を設けている。そのため、一対の突起11c1,11c1間の角度は、180度となる。
【0014】
尚、本発明に係る実施形態1の締結具1では、一対の突起11c1,11c1は、半径r1の軸部本体11bを金属であれば切削加工や鍛造等、樹脂であれば射出成形等によって設けて半径r2のロック用軸部11cを形成する際に残存させた部位としているため、
図4に示すようにr1-r2=hの関係が成立している。
【0015】
(ナット部材12)
ナット部材12は、ピン部材11のロック用軸部11cを挿入しピン部材11またはナット部材12を回転させることにより締結する部材で、
図5~
図7等に示すように締結時にピン部材11の軸部本体11bが収まる軸部本体用孔部12aと、その軸部本体用孔部12aに連続して設けられ、ピン部材11のロック用軸部11cが収まるロック用孔部12bと、ロック用軸部11cがロック用孔部12bに挿入して回転した際にロック用軸部11cの一対の突起11c1,11c1が嵌って締結する一対の突起嵌合用凹部12c,12cと、一対の目印用凹部12d,12d等で構成される。
【0016】
(軸部本体用孔部12a)
軸部本体用孔部12aは、ピン部材11の軸部本体11bが挿入されて収まるため、軸部本体用孔部12aの内径R1(
図7(b),(c)参照。)は、ピン部材11の軸部本体11bの半径r1と同じか、わずかに大きい値でガタ付きが少ないように構成している。
【0017】
(ロック用孔部12b)
ロック用孔部12bは、ピン部材11のロック用軸部11cが挿入されて収まると共に、ピン部材11またはナット部材12の少なくとも一方を回転した際にロック用軸部11cの一対の突起11c1,11c1が突起嵌合用凹部12c,12cに嵌合してロックしそれ以上回転しないように、後述する
図8(a),(b)に示すようにナット部材12における一対の突起嵌合用凹部12c,12cの前後でロック用孔部12bの内周面の内径である短軸半径(短径の1/2)RS,RS’を変えている。
【0018】
つまり、ロック用孔部12bは、一対の突起11c1,11c1がそれぞれ突起嵌合用凹部12c,12cに嵌合するまでロック用軸部11cの回転を許容する短軸半径RS(
図8(a)、(b)参照)を有する回転許容内周面12b1,12b1と、一対の突起11c1,11c1がそれぞれ突起嵌合用凹部12c,12cに嵌合するまでロック用軸部11cの回転を禁止する短軸半径RS’(
図8(a)、(b)参照)を有する内径を有する回転禁止内周面12b2,12b2とを有し、ピン部材11とナット部材12とが回転して一対の突起11c1,11c1が回転許容内周面12b1,12b1に対向して移動してきて突起嵌合用凹部12c,12cに嵌った後は、突起嵌合用凹部12c,12cを超えて回転禁止内周面12b2,12b2側へ移動できず回転が止まるように構成している。
【0019】
より具体的には、
図8(a)に示すようにナット部材12の中心から90度~180度および270度~360度までの回転許容内周面12b1は、短軸半径RSおよび長軸半径(長径の1/2)RL(>RS)を有する楕円形または湾曲形状とし、一対の突起11c1,11c1がそれぞれ突起嵌合用凹部12c,12cに嵌合するまでロック用軸部11cの回転を許容する。つまり、
図8(a)において回転許容内周面12b1,12b1と回転禁止内周面12b2,12b2との境界である回転許容・禁止内周面境界12b3,12b3から突起嵌合用凹部12c,12cまでの反時計回りの回転および突起嵌合用凹部12c,12cから回転許容・禁止内周面境界12b3,12b3への時計回りの回転を許容する。尚、回転許容・禁止内周面境界12b3,12b3はロック用孔部12bにおける一対の突起嵌合用凹部12,12cの中間点である隣接凹部中間点となる。
【0020】
これに対し、
図8(a)に示すようにナット部材12の中心から0度~90度および180度~270度までの回転禁止内周面12b2は、短軸半径RS’(<RS)および長軸半径(長径の1/2)RL(>RS>)RS’)を有する楕円形または湾曲形状とし、一対の突起11c1,11c1がそれぞれ突起嵌合用凹部12c,12cに嵌合および突起嵌合用凹部12c,12cの嵌合後に回転禁止内周面12b2へ移行する回転を禁止する。つまり、
図8(a)において回転許容・禁止内周面境界12b3,12b3から突起嵌合用凹部12c,12cまでの時計回りの回転で一対の突起11c1,11c1がそれぞれ突起嵌合用凹部12c,12cに嵌合すること、および突起嵌合用凹部12c,12cに嵌合した一対の突起11c1,11c1が回転許容・禁止内周面境界12b3,12b3への反時計回りの回転を禁止する。
【0021】
また、ロック用孔部12bは、ピン部材11のロック用軸部11cが挿入されて収まる必要があるため、ピン部材11の突起11c1,11c1をナット部材12のロック用孔部12bにおける隣接凹部中間点である回転許容・禁止内周面境界12b3,12b3に対向させてピン部材11のロック用軸部11cをロック用孔部12bに通した際、ロック用軸部11cの一対の突起11c1,11c1との間に間隙を有する必要がある。つまり、ピン部材11のロック用軸部11cの直径2・r2より大きい短径2・RSおよび長径2・RL、2・r2<2・RS<2・RL、つまりr2<RS<RLの関係が必要である。
【0022】
さらに、ロック用孔部12bの回転許容内周面12b1にて回転した際にロック用軸部11cの一対の突起11c1,11c1が突起嵌合用凹部12c,12cに嵌合する必要があるため、ロック用孔部12bの回転許容内周面12b1の短径2・RS(
図8(a),(b)参照。)が一対の突起11c1,11c1の先端部間の間隔2・r1(=2・(r2+h))より小で、かつ、ロック用軸部11cに一対の突起11c1,11c1が設けられていてもロック用孔部12bに挿入可能な必要があるため、ロック用孔部12bの長径2・RLは一対の突起11c1,11c1の先端部間の間隔2・r1(=2・(r2+h))より大である必要がある。
【0023】
つまり、2・RS<2・r1(=2・(r2+h))<2・RLの関係、すなわちRS<r1(=2・(r2+h))<RLの関係が必要である。尚、実施形態1では、
図8(a)に示すように軸部本体用孔部12aの内径R1(
図7(b),(c)参照。)とロック用孔部12b長軸半径(長径の1/2)RLと同じかRLより僅かに大としている。
【0024】
また、ロック用孔部12bの回転許容内周面12b1にて回転して突起嵌合用凹部12c,12cそれぞれに嵌った一対の突起11c1,11c1が、突起嵌合用凹部12c,12cで止まり、突起嵌合用凹部12c,12cを超えて回転禁止内周面12b2側に移行しないようにするため、ロック用孔部12bの回転禁止内周面12b2の短軸半径RS’がロック用孔部12bの回転許容内周面12b1の短軸半径RSよりも数mm程度等の所定の大きさだけ小、つまりRS’<RSに形成している。
【0025】
ロック用孔部12bの回転許容内周面12b1の短軸半径RSと回転禁止内周面12b2の短軸半径RS’との差は、回転時の一対の突起11c1,11c1と回転許容内周面12b1との摩擦等によって一対の突起11c1,11c1が削れてその高さhが低くなっても突起嵌合用凹部12c,12cから回転禁止内周面12b2側への移行を阻止できる高さを確保する必要がある。
【0026】
(突起嵌合用凹部12c)
一対の突起嵌合用凹部12c,12cは、それぞれ、ロック用軸部11cの一対の突起11c1,11c1が嵌合するため、一対の突起11c1,11c1の高さhだけ凹んで形成される。
【0027】
(目印用凹部12d)
一対の目印用凹部12d,12dは、ナット部材12のロック用孔部12bにピン部材11のロック用軸部11cが挿入し易くするため、この一対の目印用凹部12d,12dにそれぞれロック用軸部11cの一対の突起11c1,11c1を合わせるためのロック用孔部12bの長径方向上に設けた目印の凹部で、ナット部材12の外側面における隣接凹部中間点である回転許容・禁止内周面境界12b3,12b3近傍に設けている。尚、一対の目印用凹部12d,12dは、凹部以外の目印であっても勿論良い。
【0028】
<実施形態1の締結具1の締結動作>
次に、以上のように構成された実施形態1の締結具1の締結動作について説明する。
【0029】
図9は、ロック用孔部12bに、ピン部材11のロック用軸部11cを挿入した状態を示している。
【0030】
ナット部材12のロック用孔部12bにピン部材11のロック用軸部11cを挿入する場合は、一対の突起11c1,11c1を目印用凹部12d,12d(
図6(a)等参照。)に合わせ、
図9に示すようにロック用軸部11cの一対の突起11c1,11c1がロック用孔部12bの長径2・RL部分近傍である一対の突起嵌合用凹部12c,12cの中間点、つまり隣接凹部中間点である回転許容・禁止内周面境界12b3,12b3に一対の突起11c1,11c1それぞれを対向するように挿入すると、ロック用孔部12b内周面に設けた一対の突起嵌合用凹部12c,12cに対し90度前後の角度でロック用孔部12bの内周面との間に隙間を確保した状態で無理なく挿入できる。
【0031】
尚、
図9上、ナット部材12のロック用孔部12b内周面に設けた一対の突起嵌合用凹部12c,12cは、それぞれ時計の0時と6時の位置にある。また、
図9において、ピン部材11の一対の突起11c1,11c1は、それぞれ時計の3時と9時の水平の位置にあり、それぞれ、ナット部材12のロック用孔部12b内周面における隣接凹部中間点である回転許容・禁止内周面境界12b3,12b3やナット部材12外側面の目印用凹部12d,12d(
図6(a)等参照。)にほぼ対向していることになる。
【0032】
図10(a),(b)は、
図9に示すようにナット部材12のロック用孔部12bにピン部材11のロック用軸部11cを挿入後、ナット部材12側を時計回りに45度回転させた状態を示している。
【0033】
この場合、ナット部材12側を時計回りに45度回転させたため、ナット部材12のロック用孔部12b内周面に設けた一対の突起嵌合用凹部12c,12cは、
図9に示す時計の0時と6時の位置から45度ずつ時計回りに回転したことになり、3時と9時の位置にあるピン部材11の一対の突起11c1,11c1は、それぞれ、ナット部材12のロック用孔部12b内周面における一対の突起嵌合用凹部12c,12cと隣接凹部中間点である回転許容・禁止内周面境界12b3,12b3とのほぼ中間点であってロック用孔部12bの回転許容内周面12b1,12b1にそれぞれ対向することになる。
【0034】
図11(a),(b)は、
図9に示すようにナット部材12のロック用孔部12bにピン部材11のロック用軸部11cを挿入後、ナット部材12側を時計回りに85度回転させた状態を示している。
【0035】
この場合、ナット部材12側を
図9に示す時計の0時と6時の位置から時計回りに85度回転させたため、ナット部材12のロック用孔部12b内周面に設けた一対の突起嵌合用凹部12c,12cは、
図9に示す時計の0時と6時の位置から85度ずつ時計回りに回転したことになり、3時と9時の位置にあるピン部材11の一対の突起11c1,11c1は、それぞれ、
図11(a),(b)に示すようにナット部材12のロック用孔部12b内周面における一対の突起嵌合用凹部12c,12cに嵌り込む直前の回転許容内周面12b1,12b1にそれぞれ接触した状態になる。
【0036】
その際、ナット部材12のロック用孔部12bの回転許容内周面12b1,12b1は、
図11(b)に示す2点鎖線DL1の位置がピン部材11の一対の突起11c1,11c1によって接触して押圧されていない時の無負荷位置(設計位置)であるが、ピン部材11の一対の突起11c1,11c1によって外側へ押出されることにより実線の位置まで変形する。
【0037】
図12(a),(b)は、
図9に示すようにナット部材12のロック用孔部12bにピン部材11のロック用軸部11cを挿入後、ナット部材12側を時計回りに90度回転させた状態を示している。
【0038】
この場合、ナット部材12側を
図9に示す時計の0時と6時の位置から時計回りに90度回転させたため、ナット部材12のロック用孔部12b内周面に設けた一対の突起嵌合用凹部12c,12cは、
図7に示す時計の0時と6時の位置から90度ずつ時計回りに回転したことになり、3時と9時の位置にあるピン部材11の一対の突起11c1,11c1は、それぞれ、
図12(a),(b)に示すようにナット部材12のロック用孔部12b内周面における一対の突起嵌合用凹部12c,12cに嵌合する。
【0039】
そして、一対の突起11c1,11c1がそれぞれ一対の突起嵌合用凹部12c,12cに嵌合すると、
図11(b)に示す実線位置まで変形したナット部材12側は、
図11(b)に2点鎖線DL1で示す無負荷位置(設計位置)に戻るため、ピン部材11の各突起11c1,11c1それぞれがナット部材12の各突起嵌合用凹部12c,12cに嵌合して回転が止まる際、クリック感やクリック音等が得られ、作業員は締結作業時に手に伝わるクリック感等の感触やクリック音等から締結が完了したことを容易かつ確実に確認することができる。
【0040】
そして、
図12(a),(b)に示すようにピン部材11の一対の突起11c1,11c1がそれぞれナット部材12のロック用孔部12b内周面における一対の突起嵌合用凹部12c,12cに嵌った状態からさらに時計回りに回転させようとしても、ピン部材11の一対の突起11c1,11c1は、ロック用孔部12bの回転禁止内周面12b2,12b2に乗り上げようとするが、回転禁止内周面12b2の短軸半径RS’は、回転許容内周面12b1の短軸半径RSよりも小としているため、ナット部材12は回転することができず、回転がロックしてピン部材11とナット部材12の締結が完了する。
【0041】
<本発明に係る実施形態1の締結具1のまとめ>
以上説明したように、本発明に係る実施形態1の締結具1では、ピン部材11またはナット部材12を回転させた際、ピン部材11の一対の突起11c1,11c1先端部はそれぞれ突起嵌合用凹部12c,12cに嵌合する前にロック用孔部12bの回転許容内周面12b1,12b1に接触して各突起11c1,11c1と回転許容内周面12b1,12b1の少なくとも一方が弾性変形や塑性変形して、ピン部材11の一対の突起11c1,11c1がナット部材12の各突起嵌合用凹部12c,12cに嵌合してロックする。
【0042】
そのため、ピン部材11とナット部材12とがロックするまでの回転数はピン部材11の一対の突起11c1,11c1がナット部材12の各突起嵌合用凹部12c,12cに嵌合するまでの1回転未満になるので、締結作業の作業負担を軽減することができる。
【0043】
また、ピン部材11をナット部材12に挿入して回転させてピン部材11の一対の突起11c1,11c1それぞれがナット部材12の各突起嵌合用凹部12c,12cに嵌合する際、クリック感やクリック音等も得られるため、作業者は締結作業時に手に伝わるクリック感等の感触やクリック音等からロックできたことを容易かつ確実に確認することができ、熟練者でなくても確実に締結作業を行うことができる。
【0044】
尚、実施形態1の締結具1を金属製のロック用軸部11cおよびナット部材12で構成した場合、樹脂製のロック用軸部11cおよびナット部材12の場合よりも伸縮し難く、ロック用軸部11cの一対の突起11c1,11c1が一対の突起嵌合用凹部12c,12cに嵌合する前に回転許容内周面12b1,12b1等に接触して一対の突起嵌合用凹部12c,12cや回転許容内周面12b1,12b1が削れたり凹んだりしてロック用軸部11cの一対の突起11c1,11c1が一対の突起嵌合用凹部12c,12cに確実に嵌ってロックすることができる。
【0045】
また、本発明に係る実施形態1の締結具1では、ロック用孔部12bは、ロック用孔部12bの回転許容内周面12b1,12b1、つまり
図6(a)においてナット部材12の中心から90度~180度および270度~360度までの回転許容内周面12b1,12b1は、短軸半径RSおよび長軸半径(長径の1/2)RL(>RS)を有する楕円形状ないしは湾曲形状とし、ロック用孔部12bの回転禁止内周面12b2、つまり
図6(a)においてナット部材12の中心から0度~90度および180度~270度までの回転禁止内周面12b2は、短軸半径RS’(<RS)および長軸半径(長径の1/2)RL(>RS)を有する楕円形状ないしは湾曲形状として、ナット部材12における一対の突起嵌合用凹部12c,12cの前後で内周面の内径を回転許容内周面12b1,12b1の短軸半径RSと回転禁止内周面12b2の短軸半径RS’とに変えることにより、ナット部材12のロック用孔部12bにピン部材11のロック用軸部11cを挿入してロック用軸部11cの一対の突起11c1,11c1先端部が回転許容内周面12b1,12b1に対向しながら一対の突起嵌合用凹部12c,12cに向かうように回転させた際、ロック用軸部11cに設けた一対の突起11c1,11c1が回転許容内周面12b1,12b1に対向しながら移動してナット部材12の一対の突起嵌合用凹部12c,12cに嵌合する直前ではロック用軸部11cの一対の突起11c1,11c1がナット部材12のロック用孔部12bの回転許容内周面12b1,12b1に接触(摺接)して回転許容内周面12b1,12b1側や突起11c1,11c1側が伸縮する等の弾性変形したり、あるいは削れたり凹む等の塑性変形してナット部材12の一対の突起嵌合用凹部12c,12cに嵌合し、さらに突起嵌合用凹部12c,12cを超えて回転許容内周面12b1,12b1の方へ回転しようとしてもロック用軸部11cの一対の突起11c1,11c1が突起嵌合用凹部12c,12cと回転禁止内周面12b2,12b2との境界部に当たって突起嵌合用凹部12c,12cを乗り越えることができず、回転禁止内周面12b側への回転が止まるように構成している。
【0046】
そのため、ロック用軸部11cの一対の突起11c1,11c1先端部が回転許容内周面12b1,12b1に対向しながら移動してナット部材12の一対の突起嵌合用凹部12c,12cに嵌合した後は、回転禁止内周面12b2,12b2によって回転を確実に止めることができるので、ピン部材11とナット部材12とを確実にロックすることが可能となり、締結作業の作業負担を軽減することができると共に、締結作業をさらに容易化することができ、作業性をさらに向上させることができる。
【0047】
また、本発明に係る実施形態1の締結具1では、ピン部材11の複数の突起は、ロック用軸部11cの中心を通る直線とロック用軸部11cの外周面との交点に設けた一対の突起11c1,11c1であり、ナット部材12のロック用孔部12bに設ける複数の突起嵌合用凹部は、ロック用孔部12bの中心を通る直線とロック用孔部12bの内周面との交点に設けられた一対の突起嵌合用凹部12c,12cとしている。
【0048】
そのため、ピン部材11とナット部材12とがロックするまでの回転数はピン部材11の一対の突起11c1,11c1がナット部材12の各突起嵌合用凹部12c,12cに嵌合するまでの1回転未満の90度になるので、締結作業の作業負担を大幅に軽減することができる。
【0049】
また、本発明に係る実施形態1の締結具1では、ロック用孔部12bにおいて内径が最も広くなる隣接凹部中間点である回転許容・禁止内周面境界12b3,12b3に一対の突起11c1,11c1の位置を合わせてロック用孔部12bにロック用軸部11cを挿入するように構成しているが、ナット部材12外周面における回転許容・禁止内周面境界12b3,12b3の近傍に一対の突起11c1,11c1それぞれの挿入位置を示すと共に、締結完了時にずれることで締結完了の位置の目安を示す目印用凹部12d,12dを設けている。
【0050】
そのため、ナット部材12のロック用孔部12bへのピン部材11のロック用軸部11cの挿入作業が容易になると共に、締結完了時に突起11c1,11c1の位置と目印用凹部12d,12dの位置とがずれることで締結が完了したことを目視で認識することができるので、この点でも締結作業の作業負担を軽減することができる。
【0051】
尚、上記実施形態1の説明では、ピン部材11の一対の突起11c1,11c1は、通常の二等辺三角形に近似する山形形状の断面で説明したが、本発明では、これに限らず、例えば、
図13(a),(b)に示すような一方が絶壁のような直角三角形に近似する山形形状の断面でも勿論良い。尚、この場合、直角三角形に近似する突起11c1が嵌合するナット部材12の突起嵌合用凹部12cも、
図13(a),(b)に示すよう同様に直角三角形に近似する溝(谷)形状の凹部となる。
【0052】
ただし、この場合、二等辺三角形に近似する山形形状の断面の場合よりも、突起11c1,11c1が突起嵌合用凹部12c,12cに嵌合した後、突起嵌合用凹部12c,12cを超えて回転許容内周面12b1,12b1の方へ回転し難くなるように、直角三角形の突起11cは回転許容内周面12b1,12b1側が傾斜面で、回転禁止内周面12b2側が絶壁のような垂直面の直角三角形に近似する山形形状の断面とする。
【0053】
実施形態2.
上記実施形態1の締結具1では、ピン部材11のロック用軸部11cに180度の角度を開けて一対の突起11c1,11c1を設ける一方、ナット部材12のロック用孔部12bにも180度の角度を開けて一対の突起11c1,11c1それぞれが嵌合する一対の突起嵌合用凹部12c,12cを設けて説明したが、実施形態2の締結具1’では、
図14(a)に示すようにピン部材11’のロック用軸部11c’にはその中心に対し120度間隔で3つの突起11c1’を設ける一方、ナット部材12’のロック用孔部12b’には、
図14(b)に示すようにその中心に対し3つの突起11c1’それぞれが嵌る3つの突起嵌合用凹部12c’をそれぞれ設けている。
【0054】
そのため、実施形態2の締結具1’の場合、
図15(a)に示すようにナット部材12’のロック用孔部12b’にピン部材11’のロック用軸部11c’を挿入し、その
図15(a)に示す状態から例えばナット部材12’を60度回転させることにより、
図15(b)に示すようにピン部材11’のロック用軸部11c’の3つの突起11c1’それぞれをナット部材12’のロック用孔部12b’の3つの突起嵌合用凹部12c’に嵌合させてロックすることができる。
【0055】
実施形態3.
上記実施形態1の締結具1では、ピン部材11のロック用軸部11cに一対の突起11c1,11c1を設ける一方、ナット部材12のロック用孔部12bに一対の突起11c1,11c1それぞれが嵌合する一対の突起嵌合用凹部12c,12cを設けて説明したが、実施形態3の締結具1”では、
図16(a)に示すようにピン部材11”のロック用軸部11c”にはその中心に対し90度間隔で4つの突起11c1”を設ける一方、ナット部材12”のロック用孔部12b”には、
図16(b)に示すようにその中心に対し4つの突起11c1”それぞれが嵌る4つの突起嵌合用凹部12c”をそれぞれ設けている。
【0056】
そのため、実施形態3の締結具1”の場合、
図17(a)に示すようにナット部材12”のロック用孔部12b”にピン部材11”のロック用軸部11c”を挿入し、その
図17(a)に示す状態から例えばナット部材12”を45度回転させることにより、
図17(b)に示すようにピン部材11”のロック用軸部11c”の4つの突起11c1”それぞれをナット部材12”のロック用孔部12b”の4つの突起嵌合用凹部12c”に嵌合させてロックすることができる。
【0057】
尚、上記実施形態1~3の締結具1,1’,1”では、それぞれ、突起11c1,11c1’,11c1”および突起嵌合用凹部12c,12c’,12c”をそれぞれ180度毎に2つ、120度毎に3つ、90度毎に4つ設けて説明したが、本発明では、これに限られるものではない。
【0058】
実施形態4.
実施形態1~3の締結具1,1’,1”では、
図7(b),(c)等に示すように突起嵌合用凹部12c,12c’,12c”を設けるロック用孔部12b,12b’,12b”は、ナット部材12の軸心方向に対し直交するように設けて説明したが、実施形態4の締結具1”’では、ロック用孔部12b”’を、ナット部材12”’の軸心方向に対し
図18に示すように螺旋状に傾斜させて設けるようにしても良い。
【0059】
ロック用孔部12b”’を、ナット部材12”’の軸心方向に対し螺旋状に傾斜して設けるようにすると、実施形態1~3の締結具1,1’,1”のピン部材11,11’,11”のロック用軸部11c,11c’,11c”を実施形態4のナット部材12”’のロック用孔部12b”’に挿入して締結のため回転させた際に、ナット部材12”’の軸心方向に対し螺旋状に傾斜したロック用孔部12b”’によってピン部材11,11’,11”またはナット部材12”’がそれぞれの軸心方向に移動して、ナット部材12”’がピン部材11,11’,11”の頭部11a,11a’,11a”に近付かせることができる。
【0060】
尚、その他の効果は、上記実施形態1~3の締結具1,1’,1”と同様の効果が得られる。
【0061】
また、上記実施形態1~4の締結具1,1’,1”,1”’では、本発明に係る締結具1,1’,1”,1”’の素材は、単に金属または合成樹脂で成形するものと説明し、ピン部材11,11’,11”とナット部材12,12’,12”,12”’の強度については特に言及しななかったが、ピン部材11,11’,11”とナット部材12,12’,12”,12”’の強度を変更すると、ピン部材11,11’,11”の突起11c,11c’,11c”がナット部材12,12’,12”,12”’のロック用孔部12b,12b’,12b”,12b”’の回転許容内周面12b1,12b1’,12b1”,12b1”’に接触(摺接)して回転許容内周面12b1,12b1’,12b1”,12b1”’側や突起11c,11c’,11c”側が伸縮する等の弾性変形したり、あるいは削れたり凹む等の塑性変形し易くなり、締結具1,1’,1”,1”’による締結作業をさらに容易にすることができる。
【0062】
また、上記実施形態1~4の締結具1,1’,1”,1”’の説明では、ピン部材11,11’,11”およびナット部材12,12’,12”,12”’は、シンプルなボルト形状またはナットで説明したが、本発明ではこれに限定されず、ピン部材11,11’,11”および12,12’,12”,12”’の少なくとも一方にハンドル等を設けて構成するようにしても勿論良い。
【0063】
また、上記実施形態1~4の締結具1,1’,1”,1”’の説明では、突起嵌合用凹部12c,12c’,12c”,12c”’の前後でロック用孔部12b,12b’,12b”,12b”’の内径を変えて、回転許容内周面12b1,12b1’,12b1”と回転禁止内周面12b2,12b2’,12b2”とを設けて説明したが、本発明ではこれに限らず、突起嵌合用凹部12c,12c’,12c”,12c”’の前後でロック用孔部12b,12b’,12b”,12b”’の内径を変えずに部12c,12c’,12c”,12c”’の前後に回転許容内周面12b1,12b1’,12b1”を設け、回転禁止内周面12b2,12b2’,12b2”を省略するようにしても勿論良い。
【0064】
以上説明したように、本発明に係る実施形態1~4の締結具1,1’,1”,1”’は、1回転未満の回転でも確実に締結(ロック)を完了して締結作業の作業負担を軽減することができると共に、締結が完了したことを容易かつ確実に確認することができるため、本発明に係る締結具は、各種分野、例えば架線金物や航空宇宙用品部品、医療用部品、玩具など多岐の分野に亘り応用することができる有用な発明である。
【符号の説明】
【0065】
1,1’,1”,1”’ 締結具
11,11’,11” ピン部材
11a 頭部
11b,11b’,11b” 軸部本体
11c,11c’,11c” ロック用軸部
11c1,11c1’,11c1” 突起
12,12’,12”,12”’ ナット部材
12a,12a’,12a”,12a”’ 軸部本体用孔部
12b,12b’,12b”,12b”’ ロック用孔部
12b1,12b1’,12b1” 回転許容内周面
12b2,12b2’,12b2” 回転禁止内周面
12b3,12b3’,12b3” 回転許容・禁止内周面境界(隣接凹部中間点)
12c,12c’,12c”,12c”’ 突起嵌合用凹部
12d,12d’,12d” 目印用凹部