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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083831
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】直動案内軸受装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 29/06 20060101AFI20240617BHJP
   F16C 33/66 20060101ALI20240617BHJP
   F16N 9/04 20060101ALI20240617BHJP
   F16C 33/62 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
F16C29/06
F16C33/66 Z
F16N9/04
F16C33/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197879
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】水村 美典
【テーマコード(参考)】
3J104
3J701
【Fターム(参考)】
3J104AA03
3J104AA23
3J104AA25
3J104AA34
3J104AA36
3J104AA65
3J104AA69
3J104AA74
3J104AA76
3J104AA77
3J104BA24
3J104CA13
3J104CA14
3J104CA23
3J104CA24
3J104DA05
3J104DA06
3J104DA12
3J104EA01
3J701AA02
3J701AA13
3J701AA43
3J701AA44
3J701AA64
3J701CA14
3J701EA31
3J701EA32
3J701FA15
3J701FA32
3J701GA31
(57)【要約】
【課題】潤滑性能を向上させるとともに、転動体の循環の阻害を抑制して、耐久性の向上を図れる直動案内軸受装置を提供すること。
【解決手段】案内レール10と、軸方向に沿って移動可能に案内レール10に支持されたスライダ20と、案内レール10の転動体転動溝とスライダ20の転動体転動溝とによって画成される転動体軌道路25を転走し、スライダ20の貫通孔H内に画成された転動体戻し路26を通って無限循環する転動体と、貫通孔Hに挿入されて、転動体戻し路26を画成する戻し路用部材40と、を備えた直動案内軸受装置1であって、戻し路用部材40は、潤滑剤と樹脂材料を混合して形成される、潤滑剤含有部材で構成され、軸方向の全長に亘って延びるスリット44を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる転動体転動溝を有する案内レールと、
前記案内レールの前記転動体転動溝に対向する転動体転動溝を有し、軸方向に沿って移動可能に前記案内レールに支持されたスライダと、
前記案内レールの前記転動体転動溝と前記スライダの前記転動体転動溝とによって画成される転動体軌道路を転走し、前記スライダの貫通孔内に画成された転動体戻し路を通って無限循環する転動体と、
前記貫通孔に挿入されて、前記転動体戻し路を画成する戻し路用部材と、を備えた直動案内軸受装置であって、
前記戻し路用部材は、
潤滑剤と樹脂材料を混合して形成される、潤滑剤含有部材で構成され、
前記軸方向の全長に亘って延びるスリットを有する、
直動案内軸受装置。
【請求項2】
前記戻し路用部材は、一つの前記潤滑剤含有部材から構成される、
請求項1に記載の直動案内軸受装置。
【請求項3】
前記戻し路用部材は、
少なくとも前記転動体の外周の半分を覆う、
請求項1に記載の直動案内軸受装置。
【請求項4】
前記転動体戻し路は、
前記戻し路用部材と前記貫通孔と、によって画成される、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の直動案内軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、案直動案内軸受装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、直線状の案内レールと、案内レールに相対移動可能に跨架されたスライダと、を備えて、案内レール及びスライダに形成された転動体転動溝間を循環する複数の転動体(例えば、ボール)を介して、スライダが案内レール上を軸方向に相対移動可能に構成される、直動案内軸受装置が提案されている。このような直動案内軸受装置では、転動体は、案内レールとスライダによって画成される転動体軌道路を転走し、スライダに形成された転動体戻し路を通って無限循環可能に構成されている。
【0003】
特許文献1には、スライダに設けられた貫通孔に挿入され、内部空間に転動体戻し路を画成する高分子焼結多孔質体の焼結樹脂部材を備えた直動案内軸受装置が提案されている。特許文献1の直動案内軸受装置は、焼結樹脂部材の多孔質構造の内部に潤滑油やグリースが吸収され、通過する転動体に潤滑油やグリースを長期に亘って供給し続けて、転動体を介して転動体軌道路を潤滑させている。これにより、スライダの摺動抵抗を軽減させて、直動案内軸受装置の耐久性の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-79776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、焼結樹脂材料は、樹脂材料を形成した後に樹脂材料に潤滑剤を吸収させて、樹脂材料に潤滑剤を含有させている。このため、焼結樹脂材料は、より多くの潤滑剤を含有することが困難である。一方、より多くの潤滑剤を樹脂材料に含有させるべく、潤滑剤と樹脂材料を混合して潤滑剤含有部材を形成する方法がある。この方法で形成された樹脂材料は、より多くの潤滑剤を含有するものの、潤滑剤の染み出しによって、樹脂部材そのものが収縮するおそれがある。これにより、転動体戻し路が狭くなるため、転動体の循環が阻害されて、スライダの摺動抵抗が増大するおそれがある。
【0006】
本発明は、上述した問題点に着目してなされたものであり、潤滑性能を向上させるとともに、転動体の循環の阻害を抑制して、耐久性の向上を図れる直動案内軸受装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明の上記目的は、レールカバーに係る下記(1)~(4)の構成により達成される。
(1)
軸方向に延びる転動体転動溝を有する案内レールと、
前記案内レールの前記転動体転動溝に対向する転動体転動溝を有し、軸方向に沿って移動可能に前記案内レールに支持されたスライダと、
前記案内レールの前記転動体転動溝と前記スライダの前記転動体転動溝とによって画成される転動体軌道路を転走し、前記スライダの貫通孔内に画成された転動体戻し路を通って無限循環する転動体と、
前記貫通孔に挿入されて、前記転動体戻し路を画成する戻し路用部材と、を備えた直動案内軸受装置であって、
前記戻し路用部材は、
潤滑剤と樹脂材料を混合して形成される、潤滑剤含有部材で構成され、
前記軸方向の全長に亘って延びるスリットを有する、
直動案内軸受装置。
(2)
前記戻し路用部材は、一つの前記樹脂部材から構成される、
(1)に記載の直動案内軸受装置。
(3)
前記戻し路用部材は、
少なくとも前記転動体の外周の半分を覆う、
(1)又は(2)に記載の直動案内軸受装置。
(4)
前記転動体戻し路は、
前記戻し路用部材と前記貫通孔と、によって画成される、
(1)から(3)の何れか一つに記載の直動案内軸受装置。
【発明の効果】
【0008】
上記(1)の構成の直動案内軸受装置によれば、転動体戻し路を画成する戻し路用部材は、潤滑剤と樹脂材料を混合して形成される、潤滑剤含有部材で構成され、軸方向の全長に亘って延びるスリットを有する。ここで、一般に、潤滑剤と樹脂材料を混合して形成される潤滑剤含有部材は、潤滑剤の染み出しによって、樹脂部材そのものが収縮して、転動体戻し路が狭くなるおそれがある。しかしながら、本構成の直動案内軸受装置は、仮に上述したように転動体戻し路が狭くなったとしても、戻し路用部材にスリットが設けられていることによって、転動体の通過時に、戻し路用部材が拡径しやすくなる。この結果、潤滑性能を向上させるとともに、転動体の循環の阻害が抑制され、直動案内軸受装置の耐久性の向上を図れる。
【0009】
上記(2)の構成の直動案内軸受装置によれば、戻し路用部材は、一つの上記樹脂部材から構成される。このように、本構成の直動案内軸受装置は、他の部材を用いることなく、容易に耐久性の向上を図れる。
【0010】
上記(3)の構成の直動案内軸受装置によれば、戻し路用部材は、少なくとも前記転動体の外周の半分を覆っている。これにより、本構成の直動案内軸受装置は、転動体戻し路を通過する転動体に潤滑剤(油およびグリース)を長期に亘って安定的に供給し続けることができる。
【0011】
上記(4)の構成の直動案内軸受装置によれば、転動体戻し路は、戻し路用部材とスライダの貫通孔と、によって画成される。これにより、戻し路用部材のみによって転動体戻し路を画成する場合に比べて、貫通孔の孔径を小さくでき、スライダの小型化を図ることができる。又は、貫通孔の孔径を小さくできるため、スライダの強度・剛性の向上を図ることができる。
【0012】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る直動案内軸受装置の一例を示す斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る直動案内軸受装置において、エンドキャップ、リターンガイド、及び戻し路用部材を示す斜視図である(ただし、右側の戻し路用部材の図示省略)。
図3】本発明の第1実施形態に係る直動案内軸受装置の転動体戻し路について説明するための概略断面図である。
図4図3に示す第1実施形態に係る直動案内軸受装置の変形例について説明するための概略断面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る直動案内軸受装置の転動体戻し路について説明するための概略断面図である(ただし、左側の貫通孔においては、戻し路用部材及びボールの図示省略)。
図6図5に示す第2実施形態に係る直動案内軸受装置の変形例について説明するための概略断面図である(ただし、左側の貫通孔においては、戻し路用部材及びボールの図示省略)。
図7】本発明の第3実施形態に係る直動案内軸受装置の転動体戻し路について説明するための概略断面図である。
図8】本発明の第4実施形態に係る直動案内軸受装置の転動体戻し路について説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る直動案内軸受装置1の第1実施形態を図面に基づいて説明する。直動案内軸受装置1としては、リニアガイドを例に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、以下に説明する実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば限定されるものではない。
【0015】
図1に示すように、直動案内軸受装置1は、直線状の案内レール10と、案内レール10を跨ぐように組み付けられ、複数の転動体(本例では、ボールB)を介してスライド自在に係合するスライダ20と、を備えている。
【0016】
案内レール10は、両側面12に、断面略半円形または断面ゴシックアーチ形状のレール側軌道面13が軸方向に形成されている。なお、レール側軌道面13は、本発明の「転動体転動溝」に対応している。
【0017】
また、案内レール10の上面11には、下面まで貫通する取付穴14が、軸方向に略等間隔で複数個所形成されている。取付穴14は貫通穴と、各貫通穴に対応して案内レール上面側に形成される座ぐり穴で構成されている。なお、取付穴14には、案内レール10を基台等に取り付けるためのねじ(図示省略)が挿通され、座ぐり穴には、取付穴14を閉塞するレールキャップ等(図示省略)が嵌め込まれる。
【0018】
スライダ20は、スライダ本体21と、スライダ本体21の軸方向両端部に取り付けられたエンドキャップ30と、各エンドキャップ30の更に軸方向端部に取り付けられたサイドシール23と、を含んで構成される。各エンドキャップ30及び各サイドシール23は、ねじ29を介してスライダ本体21に締結・固定されている。
【0019】
スライダ本体21は、両袖部22を有する略コ字状に形成されている。両袖部22の内側面には、案内レール10のレール側軌道面13に対向するスライダ側軌道面24(図3参照)を有している。なお、スライダ側軌道面24は、本発明の「転動体転動溝」に対応している。これにより、直動案内軸受装置1は、レール側軌道面13及びスライダ側軌道面24によって、転動体が転走される転動体軌道路25が画成される(図3参照)。転動体軌道路25は、転動体を転動自在に案内するとともに、転動体を介してスライダ20に作用する荷重を支持している。
【0020】
また、両袖部22には、転動体戻し路26を画成する戻し路用部材40が挿入される貫通孔Hが、それぞれ設けられている(図3参照)。
【0021】
エンドキャップ30は、図2に示すように、スライダ本体21に対応する形状の本体部31と、スライダ20の両袖部22にそれぞれ対応する形状の両袖部32と、が一体に構成され、略コ字状に形成されている。
【0022】
エンドキャップ30は、両袖部32にそれぞれ組み付けられるリターンガイド33と共に、転動体軌道路25と転動体戻し路26とを連通させる湾曲路27を画成している。つまり、転動体軌道路25、転動体戻し路26、及び湾曲路27によって、転動体の無限循環を可能とする転動体循環路が画成される。転動体循環路内には、複数の転動体(本例では、ボールB)が転動自在に装填されている。
【0023】
両袖部32における湾曲路27の転動体戻し路26側の開口端には、軸方向に短く突出する半円筒状の樋状部34が設けられている。樋状部34は、上記開口端の外側領域(具体的には、紙面右側の袖部32では右側領域、紙面左側の袖部32では左側領域)に位置するように設けられている。なお、図2図8において、左右方向中央側を「内」側、内側とは反対側を「外」側という。
【0024】
また、本体部31には、ねじ29が挿通される挿通孔36が設けられている。
【0025】
直動案内軸受装置1は、上述したように、スライダ20の貫通孔Hに挿入されて、転動体戻し路26を画成する戻し路用部材40を更に備えている。戻し路用部材40は、潤滑剤を含有した一つの樹脂部材から構成される。この樹脂部材は、潤滑剤と樹脂材料を混合することによって形成される。
【0026】
具体的には、戻し路用部材40は、ゴムや合成樹脂等の多孔質体などで形成されて、潤滑剤を含浸する。潤滑剤としては、鉱油、合成油、グリースなどを用いることができる。合成樹脂としては、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを用いることができる。
【0027】
戻し路用部材40の潤滑剤含浸量は、長期間の使用の観点から、70重量%以上であることが好ましい。また、潤滑剤含浸量の上限は、戻し路用部材40の強度を考慮して85重量%以下であることが好ましい。例えば、本実施形態の一例として、戻し路用部材40は、重量比率を15:85とする、ポリエチレンと鉱油とを混合して成形したものが挙げられる。
【0028】
図2に示すように、戻し路用部材40は、軸方向に延びる円筒状の円筒部41と、円筒部41の開口端から軸方向に短く突出する半円筒状の樋状部42と、が一体に構成されている。樋状部42は、エンドキャップ30の樋状部34に対応するように設けられている。樋状部42の端面43は、エンドキャップ30の端面35と突き合わされて、転動体戻し路26と湾曲路27との連通路を画成する。
【0029】
また、円筒部41には、樋状部42とは反対側の領域(本例では、外側領域)に軸方向の全長に亘って延びるスリット44が設けられている。これにより、戻し路用部材40は、略C字状に形成される。
【0030】
つまり、戻し路用部材40は、直動案内軸受装置1の製造時に、スライダ20の貫通孔Hに挿入されるとともに、樋状部42の端面43がエンドキャップ30の樋状部34の端面35により回転方向への変位が規制され、スリット44による開口が外側に向くように配置される(図3参照)。
【0031】
また、図3に示すように、第1実施形態に係る直動案内軸受装置1では、円筒部41の筒孔が転動体戻し路26としての機能を有して、転動体の外周の大部分を覆っている。これにより、転動体戻し路26を通過する転動体(本例では、ボールB)に潤滑剤を長期に亘って安定的に供給し続けて、転動体を介して転動体軌道路25を潤滑させている。
【0032】
このように、第1実施形態に係る直動案内軸受装置1によれば、仮に、潤滑剤の染み出しによる戻し路用部材40の収縮(円筒部41の縮径)が発生しても、戻し路用部材40にスリット44が設けられていることによって、転動体の通過時に、戻し路用部材40が拡径しやすくなる。この結果、潤滑性能を向上させるとともに、転動体の循環の阻害が抑制され、ひいては直動案内軸受装置1の耐久性の向上を図れる。
【0033】
更に、第1実施形態に係る直動案内軸受装置1によれば、戻し路用部材40は、一つの樹脂部材から構成されるため、他の部材を用いることなく、容易に耐久性の向上を図れる。つまり、製造コストや製造作業等、種々の観点からも優れていると云える。
【0034】
<第1実施形態の変形例>
次いで、第1実施形態の変形例について説明する。変形例については、第1実施形態との相違点についてのみ説明する。変形例と第1実施形態との相違点は、スリット44の向きである。具体的には、第1実施形態では、スリット44は外側を向いている(図3参照)のに対して、変形例では、スリット44は内側を向いている(図4参照)。
【0035】
つまり、第1実施形態では、エンドキャップ30の樋状部34が外側領域に設けられているが、変形例では、樋状部34は内側領域に設けられている。これにより、戻し路用部材40が180度回転した状態で使用されるため、変形例と第1実施形態とでは、スリット44の向きが異なっている。以上、変形例と第1実施形態との相違点について説明した。なお、他の構成については、第1実施形態と同様に構成されている。このため、第1実施形態の変形例に係る直動案内軸受装置は、第1実施形態に係る直動案内軸受装置1と同様の作用・効果を奏し得る。
【0036】
このように、本発明の直動案内軸受装置(以下の実施形態も含む)は、スリット44の向きに関わらず本発明を達成できるため、スリット44の向きについては限定されるものではない。ただし、直動案内軸受装置の使用時に、スリット44の向きが変位することは、転動体の循環を阻害するおそれがあるため好ましくない。このため、本発明では、エンドキャップ30によって、戻し路用部材40の回転方向の変位が規制されている。
【0037】
<第2実施形態>
次いで、第2実施形態に係る直動案内軸受装置について説明する。第2実施形態については、第1実施形態との相違点についてのみ説明する。第2実施形態と第1実施形態との相違点は、転動体戻し路である。具体的には、第1実施形態では、転動体戻し路26は円筒部41の筒孔内に画成されている(図3参照)のに対して、第2実施形態では、転動体戻し路26aは円筒部51の内周面とスライダ20の貫通孔Hの内周面とによって画成されている(図5参照)。なお、戻し路用部材50は、転動体の外周の少なくとも半分以上を覆っている。
【0038】
つまり、第2実施形態のスリット52は、第1実施形態のスリット44に比べて、スリット幅が大きくなるように構成されている。
【0039】
また、第2実施形態では、貫通孔Hの軸方向の両端部(即ち、開口端)に、エンドキャップとの位置決めを行うための凹部28が設けられている。凹部28は、上記開口端の外側領域が径方向外側に窪む溝である。
【0040】
このように、第2実施形態に係る直動案内軸受装置によれば、転動体戻し路26aが、戻し路用部材50と貫通孔Hとによって画成されるため、第1実施形態に比べて、貫通孔Hの孔径を小さくでき、スライダ20の小型化を図ることができる。又は、貫通孔Hの孔径を小さくできるため、スライダ20の強度・剛性の向上を図ることができる。
【0041】
以上、第2実施形態と第1実施形態との相違点について説明した。なお、他の構成については、第1実施形態と同様に構成されている。このため、第2実施形態に係る直動案内軸受装置は、第1実施形態に係る直動案内軸受装置1と同様の作用・効果を奏し得る。
【0042】
<第2実施形態の変形例>
次いで、第2実施形態の変形例について説明する。変形例については、第2実施形態との相違点についてのみ説明する。変形例と第2実施形態との相違点は、スリット幅の大きさである。具体的には、第2実施形態では、スリット52幅が円筒部51の周壁の半分未満である(図5参照)のに対して、変形例では、スリット52a幅が円筒部51aの周壁の半分である(図6参照)。つまり、戻し路用部材50aは、転動体の外周の半分を覆っている。
【0043】
このように、戻し路用部材50aは、少なくとも転動体(本例では、ボールB)の外周の半分を覆っていればよく、これにより、本発明を達成できる。なお、符号26bは、転動体戻し路である。
【0044】
以上、変形例と第2実施形態との相違点について説明した。なお、他の構成については、第2実施形態と同様に構成されている。このため、第2実施形態の変形例に係る直動案内軸受装置は、第2実施形態に係る直動案内軸受装と同様の作用・効果を奏し得る。
【0045】
<第3実施形態>
次いで、第3実施形態に係る直動案内軸受装置について説明する。第3実施形態に係る直動案内軸受装置は、図7に示すように、案内レール110と、案内レール110を跨ぐように組み付けられ、複数の転動体(本例では、ローラR)を介してスライド自在に係合するスライダ120と、を備えている。
【0046】
また、第3実施形態に係る直動案内軸受装置は、レール側軌道面及びスライダ側軌道面によって転動体軌道路125が画成され、スライダ120の貫通孔に挿入される戻し路用部材40によって転動体戻し路26が画成され、スライダ120に組み付けられるエンドキャップによって湾曲路(図示省略)が画成されている。つまり、転動体軌道路125、転動体戻し路126、及び湾曲路によって、転動体の無限循環を可能とする転動体循環路が画成される。転動体循環路内には、複数の転動体(本例では、ローラR)が転動自在に装填されている。
【0047】
第3実施形態では、第1実施形態と同様に、円筒部41の筒孔が転動体戻し路126としての機能を有して、転動体の外周の大部分を覆っている。これにより、転動体戻し路126を通過する転動体(本例では、ローラR)に潤滑剤を長期に亘って安定的に供給し続けて、転動体を介して転動体軌道路125を潤滑させている。つまり、第3実施形態に係る直動案内軸受装置は、第1実施形態係る直動案内軸受装置1と同様の作用・効果を奏し得る。このように、本発明の直動案内軸受装置は、転動体の種類に限定されない。
【0048】
<第4実施形態>
次いで、第4実施形態に係る直動案内軸受装置について説明する。第4実施形態については、第3実施形態との相違点についてのみ説明する。第4実施形態と第3実施形態との相違点は、転動体戻し路である。第4実施形態では、第2実施形態と同様に、転動体戻し路126が円筒部51の内周面とスライダ120の貫通孔の内周面とによって画成されている(図8参照)。つまり、第4実施形態に係る直動案内軸受装置は、第2実施形態係る直動案内軸受装と同様の作用・効果を奏し得る。
【符号の説明】
【0049】
1 直動案内軸受装置
10,110 案内レール
13 レール側軌道面
20,120 スライダ
23 サイドシール
24 スライダ側軌道面
25,125 転動体軌道路
26,26a,26b,126 転動体戻し路
27 湾曲路
30 エンドキャップ
33 リターンガイド
34 樋状部
35 端面
40,50,50a 戻し路用部材
41,51,51a 円筒部
42 樋状部
43 端面
44,52,52a スリット
B ボール
H 貫通孔
R ローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8