IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝電機サービス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-蓄電池システムおよび制御方法 図1
  • 特開-蓄電池システムおよび制御方法 図2
  • 特開-蓄電池システムおよび制御方法 図3
  • 特開-蓄電池システムおよび制御方法 図4
  • 特開-蓄電池システムおよび制御方法 図5
  • 特開-蓄電池システムおよび制御方法 図6
  • 特開-蓄電池システムおよび制御方法 図7
  • 特開-蓄電池システムおよび制御方法 図8
  • 特開-蓄電池システムおよび制御方法 図9
  • 特開-蓄電池システムおよび制御方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083837
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】蓄電池システムおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/0283 20230101AFI20240617BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240617BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240617BHJP
   F02N 11/08 20060101ALI20240617BHJP
   B60R 16/033 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
G06Q30/0283
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H02J7/00 302Z
F02N11/08 L
B60R16/033 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197886
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 武司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 修一
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
5L030
5L049
【Fターム(参考)】
5G503AA04
5G503BB02
5H030AA10
5H030AS08
5H030FF22
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
5L030BB55
5L049BB55
(57)【要約】
【課題】クランキングによる蓄電池への影響を考慮した使用料金を決定すること。
【解決手段】実施形態に係る蓄電池および整備装置を備える蓄電池システムであって、蓄電池は、クランキングにより発生する定格電圧範囲を超えた超過電圧および定格電流範囲を超えた超過電流と、クランキング時間と、蓄電池の温度とを含むクランキング電池情報を計測する計測部と、クランキング電池情報に基づいてクランキング点数を算出するBMSと、算出したクランキング点数を送信する通信部と、を備え、整備装置は、クランキング点数に基づいて計算された蓄電池の第1の課金額を計算し、第1の課金額を含む、蓄電池を使用したユーザへの使用料金を計算する課金部と、使用料金が支払われたかどうか判定する判定部と、を備える。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池および整備装置を備える蓄電池システムであって、
前記蓄電池は、
クランキングにより発生する定格電圧範囲を超えた超過電圧および定格電流範囲を超えた超過電流と、クランキング時間と、前記蓄電池の温度とを含むクランキング電池情報を計測する計測部と、
前記クランキング電池情報に基づいてクランキング点数を算出するBMSと、
前記算出したクランキング点数を送信する通信部と、
を備え、前記整備装置は、
前記クランキング点数に基づいて計算された前記蓄電池の第1の課金額を計算し、前記第1の課金額を含む、前記蓄電池を使用したユーザへの使用料金を計算する課金部と、
前記使用料金が支払われたかどうか判定する判定部と、
を備える、蓄電池システム。
【請求項2】
前記計測部は、前記蓄電池の電圧および電流をさらに計測し、
前記通信部は、前記電圧、前記電流、および前記温度を含む電池情報を送信し、
前記整備装置は、前記電池情報に含まれる前記電圧および前記電流と、前記温度とから前記蓄電池の内部抵抗の変化率を算出することによりクランキング性能の劣化率を算出する算出部をさらに備え、
前記課金部は、前記クランキング性能の劣化率に基づいて前記蓄電池の第2の課金額を計算し、前記第2の課金額をさらに含んだ前記使用料金を計算する、請求項1に記載の蓄電池システム。
【請求項3】
前記計測部は、前記蓄電池の電圧および電流をさらに計測し、前記電圧、前記電流、および前記温度から前記蓄電池の内部抵抗の変化率を算出することによりクランキング性能の劣化率を算出し、
前記通信部は、前記クランキング性能の劣化率を送信し、
前記課金部は、前記クランキング性能の劣化率に基づいて前記蓄電池の第2の課金額を計算し、前記第2の課金額をさらに含んだ前記使用料金を計算する、請求項1に記載の蓄電池システム。
【請求項4】
前記クランキング点数は、前記超過電圧が大きい程高く、前記超過電流が大きい程高く、前記クランキング時間が長い程高く、前記温度が所定の気温から離れるほど高い、請求項1に記載の蓄電池システム。
【請求項5】
前記クランキング点数は、前記超過電圧、前記超過電流、および前記温度のうちの少なくとも2つによりマッピングされた領域に対応する点数である、請求項1に記載の蓄電池システム。
【請求項6】
前記整備装置は、
前記使用料金が支払われたことを示す信号を受信した場合、使用許可フラグおよび利用設定時間を含む使用許可情報を生成する制御部と、
前記使用許可情報を送信する整備装置通信部と、
をさらに備え、前記BMSは、前記使用許可フラグがあるかどうかを判定し、前記使用許可フラグがないと判定した場合、前記蓄電池を停止する、請求項1に記載の蓄電池システム。
【請求項7】
前記蓄電池は、使用時間を計測し、前記使用時間が利用設定時間を経過しているかどうか判定する時計部をさらに備え、
前記BMSは、前記使用時間が前記利用設定時間を経過していると判定した場合、前記蓄電池を動作状態から停止状態にする、請求項6に記載の蓄電池システム。
【請求項8】
前記蓄電池および前記整備装置は、常時接続され、前記整備装置は、前記蓄電池を使用するユーザの要求により前記使用料金を計算する、請求項1に記載の蓄電池システム。
【請求項9】
前記蓄電池および前記整備装置は、常時接続され、前記課金部は、周期的に前記使用料金を計算し、前記整備装置は、前記使用料金が所定の金額を超えた場合、前記ユーザに通知する出力部をさらに備える、請求項1に記載の蓄電池システム。
【請求項10】
プロセッサが実行する制御方法であって、
クランキングにより発生する蓄電池の定格電圧範囲を超えた超過電圧および定格電流範囲を超えた超過電流と、クランキング時間と、前記蓄電池の温度とを含むクランキング電池情報に基づいて算出されたクランキング点数を受信することと、
前記クランキング点数に基づいて計算された前記蓄電池の第1の課金額を含む、前記蓄電池を使用したユーザへの使用料金を計算することと、
前記使用料金が支払われたかどうか判定することと、
を備える、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、蓄電池システムおよび制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池としてのリチウムイオン電池は、家庭内、車両、船舶、鉄道車両などで広く用いられ、旧来の鉛バッテリーにとって代わろうとしている。例えば、チタン酸リチウム(LTO)を負極に使用した、次世代型のリチウムイオン電池が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1では、家電向けの電池パックの課金システムについての技術が開示されている。さらに特許文献2では、電気自動車向けの課金システムについての技術が開示されている。これらの技術は、電池の充放電容量および容量維持率の変化に従い、使用料金または貸出料金を決める課金制度を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-288539号公報
【特許文献2】特開2020-149679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エンジン始動向け蓄電池のような置き換え用の電池では、充放電容量または容量維持率の変化よりもエンジンを始動する際に大電流が流れることによる電池の性能への影響が大きい。そのため、特許文献1または特許文献2に開示されるように電池の充放電容量および容量維持率の変化に従って使用料金を決定する技術を置き換え用の電池に適用した場合、エンジンを始動する際の電池への影響を考慮しないため、算出された使用料金は、本来請求すべき使用料金との誤差が大きくなるという問題がある。
【0006】
この発明は、上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、始動特性(以下、クランキング特性と称する)を測定できる蓄電池または整備装置を活用することにより、クランキング始動特性の変化を考慮した電池の利用状況を測定し、当該電池の利用状況に応じた使用料金を算出することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る蓄電池および整備装置を備える蓄電池システムにおいて、前記蓄電池は、クランキングにより発生する定格電圧範囲を超えた超過電圧および定格電流範囲を超えた超過電流と、クランキング時間と、前記蓄電池の温度とを含むクランキング電池情報を計測する計測部と、前記クランキング電池情報に基づいてクランキング点数を算出するBMSと、前記算出したクランキング点数を送信する通信部と、を備え、前記整備装置は、前記クランキング点数に基づいて計算された前記蓄電池の第1の課金額を計算し、前記第1の課金額を含む、前記蓄電池を使用したユーザへの使用料金を計算する課金部と、前記使用料金が支払われたかどうか判定する判定部と、を備えるようにしたものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態に係る蓄電池システムの構成例を示す概念図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る蓄電池の構成例を示すブロック図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る整備装置の構成例を示すブロック図である。
図4図4は、図1に示される蓄電池を利用する際の蓄電池および整備装置の動作の一例を示すシーケンス図である。
図5図5は、ステップST105の詳細な動作の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、クランキング時の電圧波形および電流波形の一例を示した図である。
図7図7は、クランキング電池情報と点数との関係の一例を示した図である。
図8図8は、クランキング電池情報と点数との関係の別の一例を示した図である。
図9図9は、第2の実施形態に係る蓄電池システムの構成例を示す概念図である。
図10図10は、図9に示される蓄電池を利用する際の蓄電池および整備装置の動作の一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら蓄電池システムおよび制御方法について詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、同一の番号を付した部分については同様の動作を行うものとして、重ねての説明を省略する。例えば、複数の同一または類似の要素が存在する場合に、各要素を区別せずに説明するために共通の符号を用いることがあるし、各要素を区別して説明するために当該共通の符号に加えて枝番号を用いることもある。
【0010】
[第1の実施形態]
(構成)
図1は、第1の実施形態に係る蓄電池システムの構成例を示す概念図である。
第1の実施形態において、蓄電池100は、内燃機関(エンジン)により駆動力を得る車両200に搭載される。車両200のハンドルの近傍に設置されたキースイッチ(イグニッションスイッチ(IGN))300が操作されると、蓄電池100の電力が車両200のスタータに供給され、エンジンが始動される。
【0011】
その際、キースイッチ300から接点信号(スタータ情報)が、インタフェース400を介して蓄電池100に供給される。
【0012】
また、実施形態に係る蓄電池100は、その外装面に正極端子1aと、負極端子1bと、外部からの信号を取得するための外部制御端子1cとを備える。外部制御端子1cを介して信号を与えることで、蓄電池100の動作を制御することが可能である。
【0013】
蓄電池100が所定の期間の間使用されると、蓄電池100の使用期間を更新する、或いは使用に応じた使用料金を算出するため、整備装置500の外部制御端子5aと外部制御端子1cとが所定の線(図1では簡単化のため省略)で接続される。そして、整備装置500による制御信号を介して、使用期間の更新または使用料金が算出されることになる。
【0014】
図2は、第1の実施形態に係る蓄電池100の構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、蓄電池100は、電池モジュール101と、計測部102と、BMS(Battery Management Unit)103と、記憶部104と、通信部105と、時計部106と、を備える。電池モジュール101、計測部102、BMS103、記憶部104、通信部105、時計部106は、バスを介して互いに通信可能に接続されている。
【0015】
電池モジュール101は、例えば、直列に接続された複数のセルを備える。ここで、各セルは、例えば一般的なリチウムイオン電池であって良い。
【0016】
計測部102は、センサを有し、当該センサにより電池モジュール101の電圧、電流、温度等を含む電池情報を計測する。計測された電池情報は、後述するBMS103に転送されるとともに、後述する記憶部104に記憶される。
【0017】
さらに計測部102は、クランキングによって発生する各種情報を含むクランキング電池情報を計測する。ここで、クランキング電池情報は、後述する。計測部102は、クランキング電池情報を記憶部104に記憶させて良い。
【0018】
BMS103は、プロセッサであって良く、例えばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などの、演算機能を有する半導体チップである。そのためBMS103は、蓄電池100を統括的に制御することが可能である。また、BMS103は、計測部102から得られた電池情報に基づいて、蓄電池100の管理を実施する。例えば、BMS103は、蓄電池が正常であるかどうか判定し、正常であると判定した場合、電池モジュール101の動作を許可して良い。動作が許可されたBMS103は、電池モジュール101に対して充放電を実施する。
【0019】
記憶部104は、記憶媒体である。記憶部104は、例えばHDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の随時書き込みおよび読出し可能な不揮発性メモリと、ROM等の不揮発性メモリと、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリとを組み合わせて構成される。記憶部104は、記憶領域に、プログラム記憶領域と、データ記憶領域とを備える。プログラム記憶領域は、OS(Operating System)やミドルウェアに加えて、BMS103による各種処理を実行するために必要なアプリケーションプログラムを格納する。また、データ記憶領域は、計測部102により計測された電池情報およびクランキング電池情報を記憶して良い。さらに、データ記憶領域は、BMS103により計算した情報を記憶する。
【0020】
通信部105は、1つ以上の有線の通信モジュールを含む。例えば、通信部105は、外部制御端子1cを通じて、上位装置(システムコントローラ(図示せず))または整備装置500と接続することが可能な通信モジュールを含む。通信部105によって蓄電池100が整備装置500と接続することにより、蓄電池100の管理者は、蓄電池のON/OFF、BMS103による管理情報を、整備装置500を介して確認することができる。
【0021】
時計部106は、蓄電池100の使用開始時刻、使用開始からの経過時間等を測定し、記憶部104に記憶させる。BMS103は、記憶された時計部106からの情報に基づいて、蓄電池をユーザが使用している時間が所定の時間を超えているかどうかを判定して良い。
【0022】
図3は、第1の実施形態に係る整備装置500の構成例を示すブロック図である。
図3に示すように、整備装置500は、制御部501と、記憶部502と、通信部503と、課金部504と、算出部505とを備える。制御部501、記憶部502、通信部503、課金部504、および算出部505は、バスを介して互いに通信可能に接続されている。
【0023】
制御部501は、整備装置500を制御する。制御部501は、中央処理ユニット(CPU:Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサを備える。
【0024】
記憶部502は、記憶媒体である。記憶部502は、例えばHDD又はSSD等の随時書込み及び読出し可能な不揮発性メモリと、ROM等の不揮発性メモリと、RAM等の揮発性メモリとを組み合わせて構成される。記憶部502は、記憶領域に、プログラム記憶領域と、データ記憶領域とを備える。プログラム記憶領域は、OSやミドルウェアに加えて、各種処理を実行するために必要なアプリケーションプログラムを格納する。データ記憶領域は、後述する通信部503を通じて、蓄電池から取得した各種情報を記憶するために使用する。
【0025】
通信部503は、1つ以上の通信モジュールを含む。例えば、通信部105は、外部制御端子5aを通じて、上位装置(システムコントローラ)または蓄電池100と接続することが可能な通信モジュールを含む。通信部503によって整備装置500が蓄電池100と接続することにより、整備装置500は、蓄電池100の記憶部104に記憶される各種情報を取得することができる。
【0026】
課金部504は、クランキング特性(クランキング点数およびクランキング性能の劣化)に基づいて、蓄電池100を使用したユーザが支払うべき使用料金(課金額)を決定する。なお、クランキング特性であるクランキング点数およびクランキング性能の劣化は後述する。
【0027】
算出部505は、通信部503を通じて蓄電池100から取得した各種情報に基づいて蓄電池のクランキング性能の劣化を算出する。そして、算出部505は、測定されたクランキング性能の劣化を記憶部502に記憶させて良い。
【0028】
入出力インタフェース506は、入力部507及び出力部508との間で情報の送受信を可能にするインタフェースである。
【0029】
入力部507は、例えば、出力部508が備える表示デバイスの表示画面上に配置された、静電方式又は圧力方式を採用した入力検知シートであり、入出力インタフェース506を介して、整備装置500の管理者のタッチ位置に対応した信号を制御部501に出力する。例えば、入力部507及び出力部508は、入出力が一体となったタッチスクリーンであって良い。すなわち、入力部507は、タッチスクリーン上に表示された釦等に管理者がタッチすることで必要な情報の入力を受け付け、受け付けた情報に対応する信号を制御部501に出力しても良い。
【0030】
また、入力部507は、例えば、整備装置500の管理者が整備装置500に対して指示を入力するためのキーボードやポインティングデバイス等を含んでも良い。
【0031】
出力部508は、例えば液晶、有機EL(Electro Luminescence)等を使用した表示デバイスであり、入出力インタフェース506から入力された信号に応じた画像及びメッセージを表示する。
【0032】
(動作)
図4は、図1に示される蓄電池100を利用する際の蓄電池100および整備装置500の動作の一例を示すシーケンス図である。
【0033】
蓄電池100のBMS103および整備装置500の制御部501がそれぞれ記憶部104および記憶部502に格納されたプログラムを読み出して実行することにより、このシーケンスの動作が実現される。最初に、蓄電池100の外部制御端子1cと、整備装置500の外部制御端子5aとが所定の有線により接続されたことにより、このシーケンスの動作が開始される。
【0034】
最初に、図4では、蓄電池100をユーザに提供する前に蓄電池100の管理者等が整備動作を実施し、整備が終了後、蓄電池100をユーザが実際に使用し、その後、ユーザが定期整備のために管理者に蓄電池100を戻して整備するまでの一連の動作を示している。
【0035】
そして、以下で説明するステップST101~ステップST104は、提供開始時の整備動作を示しており、ステップST105~ステップST107は、ユーザが使用する蓄電池100の動作を示しており、ステップST108~ステップST114は、定期整備の際の整備動作を示している。
【0036】
ステップST101で、BMS103は、初期状態情報を生成する。最初に、計測部102が電池モジュール101の電池情報を測定し、当該電池情報を記憶部104に記憶させる。さらに、時計部106は、記憶部104に記憶された使用開始時間、経過時間等をリセットする。BMS103は、記憶部104に記憶された情報に基づいて、初期状態情報を生成する。例えば、初期状態情報は、電池情報および使用開始時間および経過時間等がリセットされたことを示す情報を含む。
【0037】
ステップST102で、通信部105は、初期状態情報を送信する。通信部105は、記憶部104に記憶された初期状態情報を取得し、外部制御端子1cを通じて、当該初期状態情報を整備装置500に送信する。
【0038】
ステップST103で、制御部501は、初期状態情報を記憶部502に記憶させる。また、制御部501は、記憶部502に記憶された、或いは入力部507から入力された情報に基づいて、使用許可情報を生成する。例えば、使用許可情報は、蓄電池を使用することができることを示す使用許可フラグ、使用開始時間、および利用設定時間等を含んで良い。ここで、使用許可フラグは、利用設定時間でのみ有効となるように設定されていて良い。制御部501は生成した使用許可情報を通信部503に出力する。
【0039】
ステップST104で、通信部503は、使用許可情報を送信する。通信部503は、制御部501から受信した使用許可情報を、外部制御端子5aを介して、蓄電池100に送信する。
【0040】
このようにして、管理者は、提供開始前の整備を実施する。また、提供開始前の整備が終了した後、蓄電池100は、停止状態になっていて良い。
【0041】
ステップST105で、蓄電池100は、動作状態となる。最初に、ユーザが実際に蓄電池100を使用する際に車両200に搭載する。そして、蓄電池100を動作状態にすることとなる。
【0042】
図5は、ステップST105の詳細な動作の一例を示すフローチャートである。
蓄電池100のBMS103が記憶部104に格納されたプログラムを読み出して実行することによりこのフローチャートの動作が実現される。
【0043】
ステップST201で、蓄電池100は、外部、例えば、ユーザが電源ボタン等を入れる等により入力される動作信号を受信するかどうか判定する。動作信号を受信した場合、蓄電池100は、BMS103を起動する。そして、処理は、ステップST202に進む。一方、動作信号を受信しない場合、処理はステップST205に進む。
【0044】
ステップST202で、BMS103は、記憶部104に使用許可フラグが記憶されているかどうかを判定する。記憶部104に使用許可フラグが記憶されていた場合、処理は、ステップST203に進む。一方、記憶部104に使用許可フラグが記憶されていなかった場合、処理は、ステップST205に進む。
【0045】
ステップST203で、BMS103は、経過時間が利用設定時間を過ぎているかどうか判定する。BMS103は、時計部106によって測定された経過時間および利用設定時間についての情報を記憶部104から取得し、測定された経過時間が利用設定時間を超えているかどうか判定する。超えていないと判定した場合、処理は、ステップST204に進む。一方、超えていると判定した場合、処理は、ステップST205に進む。
【0046】
ステップST204で、BMS103は、蓄電池100を動作状態にする。例えば、BMS103は、蓄電池100を、正極端子1aおよび負極端子1bから電圧を出力し、充放電が可能となる動作状態にする。
【0047】
ステップST205で、蓄電池100を停止状態にする。ステップST201で動作信号を受信していなかった場合、蓄電池100は、停止状態のままとなる。また、ステップST102で使用許可情報が記憶されていない、或いはステップST203で利用設定時間を超過している場合、蓄電池100は、BMS103を停止する、すなわち、蓄電池100を停止状態にする。
【0048】
このようにして、使用許可フラグが記憶されており、且つ経過時間が利用設定時間内である場合に蓄電池100は、動作状態となることができる。蓄電池100が動作状態になることにより、ユーザは、車両200を使用することができる。
【0049】
また、ユーザが蓄電池100を使用している間、計測部102は、周期的または常に、電池モジュールの電圧、電流、温度等を含む電池情報を計測して良い。そして、計測部102は、電池情報を記憶部104に記憶させる。
【0050】
図4に戻って、ステップST106で、BMS103は、クランキング点数を算出する。BMS103は、ユーザが車両200のエンジンを始動するようなクランキングを実施するごとに、クランキング点数を算出する。クランキング点数は、クランキングを実施するごとに、すなわちユーザがエンジンを始動するごとに算出して良い。また、BMS103は、算出されたクランキング点数を記憶部104に記憶させる。
【0051】
図6は、クランキング時の電圧波形および電流波形の一例を示した図である。
図6の(a)は、クランキングを実施した際の電圧の変化を示した図の一例であり、(b)は、クランキングを実施した際の電流の変化を示した図である。
【0052】
図6に示すように、クランキングを実施すると、一時的に定格電圧範囲および定格電流範囲を超えた範囲で使用することになる。すなわち、クランキングにより、定格電圧範囲を超えた超過電圧および定格電流範囲を超えた超過電流が発生することになる。そのため、クランキング時間が長いほど電池の性能劣化に影響を及ぼす。さらに、蓄電池100の温度が高いと蓄電池100の性能劣化に影響を及ぼす。また、温度が低いと、蓄電池100の電池の抵抗値が高くなるため、クランキングのための電圧・電流を維持することが難しい領域で使用することになる。
【0053】
そこで、エンジンを始動するようなクランキングによって蓄電池100に対して負荷が発生した時、計測部102は、定格電圧範囲を超えた超過電圧、定格電流範囲を超えた超過電流、クランキング時間、温度を含むクランキング電池情報を計測する。そして、BMS103は、当該クランキング電池情報に基づいて1回のクランキングによるクランキング点数を算出する。
【0054】
図7は、クランキング電池情報と点数との関係の一例を示した図である。
図7の(a)は、超過電圧と点数の関係を示した図であり、(b)は、超過電流と点数の関係を示した図であり、(c)は、クランキング時間と点数の関係を示した図であり、(d)は、温度と点数の関係を示した図である。
【0055】
図7に示すように点数は、超過電圧が大きい程高く、超過電流が大きい程高く、クランキング時間が長い程高い。また、点数は、温度が所定の気温から離れる(低温または高温に向かう)ほど高い。
【0056】
計測部102は、クランキングを実施した際、超過電圧の大きさ、超過電流の大きさ、クランキング時間、温度を計測し、計測結果をクランキング電池情報として、記憶部104に記憶させる。BMS103は、図7に示した図およびクランキング電池情報に基づいて点数を算出し、算出された点数の合計であるクランキング点数を算出する。そして、BMS103は、算出したクランキング点数を記憶部104に記憶させる。
【0057】
図8は、クランキング電池情報と点数との関係の別の一例を示した図である。
図7の例では、クランキング電池情報に含まれる各情報に対して点数付けを行ったが、図8の例では、クランキングの回数に対して点数を算出する。
【0058】
例えば、図8では、1回のクランキングで計測されたクランキング電池情報のうちの超過電圧と超過電流でマッピングし、マッピングされた領域に対応する点数を算出する例を示している。例えば、図8の例では、(1)では点数が低く、(2)、(3)にマッピングされる毎に点数が高くなる。このようにしてクランキング点数を算出する場合、計測部102は、クランキング電池情報として少なくとも超過電流および超過電圧を計測すれば良くなり、計測時の負荷を低減することができる。
【0059】
また、図8の例では、超過電圧および超過電流でのマッピングの例を示したが、温度と超過電圧または超過電流とでマッピングしても良い。さらに、超過電圧、超過電流および温度でのマッピングを用いても良い。この場合、図8の例に加えて、z軸に温度の軸を追加し、(1)~(3)の領域を定義すればよい。すなわち、図8で示した例におけるクランキング点数は、超過電圧、超過電流、温度のうちの少なくとも2つによりマッピングされた領域に対応する点数となる。また、図8で示す点数の領域は一例であり、任意の数の領域を設定して良いのは勿論である。
【0060】
図4に戻って、ステップST107で、時計部106は、使用時間が利用設定時間を経過しているかどうか判定して良い。使用時間が利用設定時間を経過していた場合、BMS103は、蓄電池100を動作状態から停止状態にして良い。そのため、ユーザは、使用時間が利用設定時間を経過する前に蓄電池を借りた管理者の下に赴き、定期整備を受ける必要がある。定期整備を受ける際、蓄電池100は、車両200から取り出され、整備装置500と接続されることになる。
【0061】
ステップST108で、通信部105は、クランキング点数を送信する。整備装置500と接続されると、通信部105は、記憶部104に記憶されたクランキング点数を取得し、外部制御端子5aを通じて、取得したクランキング点数を整備装置500に送信する。
【0062】
ステップST109で、課金部504は、第1の課金額を計算する。課金部504は、クランキング点数に基づいて第1の課金額を計算する。例えば、課金部504は、クランキング点数が高いほど高額になる料金設定に従って第1の課金額を計算して良い。
【0063】
ステップST110で、通信部105は、電池状態情報を送信する。通信部105は、記憶部104に記憶された電池状態情報を取得し、外部制御端子1cを通じて、取得した電池状態情報を整備装置500に送信する。
【0064】
ステップST111で算出部505は、電池のクランキング性能の劣化率を算出する。算出部505は、電池状態情報に含まれる電圧、電流、温度に基づいて電池モジュール101の内部抵抗の変化率を算出し、クランキング性能の劣化率を算出する。ここで、クランキング性能の劣化率は、コールド・クランキング・アンペア(CCA)の劣化率であって良い。
【0065】
なお、クランキング性能の劣化率の算出は、蓄電池100の計測部102が行っても良い。
【0066】
ステップST112で、課金部504は、第2の課金額を計算する。課金部504は、クランキング性能の劣化率に基づいて第2の課金額を算出する。例えば、課金部504は、クランキング性能の劣化率が高いほど高額になる料金設定に従って第2の課金額を計算して良い。
【0067】
ステップST113で、制御部501は、使用料金が支払われたかどうかを判定する。課金部504は、第1の課金額および第2の課金額の合計である使用料金を出力部508のディスプレイに表示して良い。蓄電池100を使用したユーザは、使用料金を管理者に対して支払う。使用料金が支払われた場合、管理者は、入力部507に対して支払いが終了したことを示すボタン等を押して良い。制御部501は、当該ボタンが押されたことを示す信号を受信した場合、使用料金が支払われたと判定する。
【0068】
ステップST114で、通信部503は、使用許可情報を送信する。ステップST104と同様に通信部503は、蓄電池を使用することができることを示す使用許可フラグ、使用開始時間、および利用設定時間等を含む使用許可情報を、外部制御端子5aを通じて、蓄電池100に送信する。ここで、利用設定時間は新たに設定された時間であって良く、使用許可フラグは、新たに設定された利用設定時間の間有効となるように設定されていて良い。
【0069】
ステップST115で、蓄電池100は、動作状態となる。ステップST105で説明したのと同様に有効な使用許可フラグが記憶部104に記憶されており、且つ使用時間が利用設定時間を経過していない場合、蓄電池100は、動作状態になって良い。そして、これ以降、ユーザでの使用および定期整備を繰り返すことになる、すなわち、ステップST106~ステップST115を繰り返すことになる。
【0070】
(第1の実施形態の作用効果)
以上説明した第1の実施形態によれば、クランキング特性(クランキング点数およびクランキング性能の劣化率を)を計測し、計測したクランキング特性を考慮した使用料金をユーザに対して請求することができる。これにより、実際の電池の利用状況に応じた使用料金をユーザに対して請求することが可能となる。
【0071】
[第2の実施形態]
(構成)
図9は、第2の実施形態に係る蓄電池システムの構成例を示す概念図である。
第1の実施形態では初回および定期整備時に整備装置500と蓄電池100が接続されるが、第2の実施形態では、ユーザが蓄電池を使用している際にも蓄電池100が整備装置500と接続する。
【0072】
例えば、整備装置500は、カーナビゲーション装置等の車両200の任意の機器の内部に配置されていて良い。そして、ユーザが蓄電池100を使用する際、蓄電池100は、常に整備装置500と接続されていて良い。
【0073】
蓄電池100および整備装置500の構成は、図2および図3を参照して説明した構成と同様であって良いため、ここでの重複した説明を省略する。
【0074】
(動作)
図10は、図9に示される蓄電池100を利用する際の蓄電池100および整備装置500の動作の一例を示すシーケンス図である。
図10で示されるステップST301~ステップST304は、提供開始時の整備動作を示しており、ステップST305~ステップST315は、ユーザが蓄電池を利用する際の蓄電池100および整備装置500の動作を示している。
【0075】
ステップST301~ステップST315は、図4を参照して説明したステップST101~ステップST115と同様の動作であって良い。この動作において、蓄電池100と整備装置500が常時接続されているため、ユーザの要求によって、または定期的に第1の課金額および第2の課金額すなわち現在までの使用料金を算出することが可能な点で第1の実施形態と異なる。
【0076】
また、蓄電池100は整備装置500による定期的な整備が必要ない。そのため、ユーザの使用、すなわち、ステップST306~ステップST315を繰り返して良い。
【0077】
また、課金部504は、周期的に使用料金を算出して良い。処理のうちステップST308~ステップST312を実施して良い。そして、制御部501は、使用料金が所定の金額を超えた場合、出力部508のディスプレイに所定の金額を超えた旨の情報を通知するように制御して良い。
【0078】
このようにして、ユーザは、現在の使用料金をリアルタイムで知ることが可能となり、蓄電池100の使用の制御(例えば、電力管理、クランキングの回数管理)を行うことができる。
【0079】
(第2の実施形態の作用効果)
以上説明した第2の実施形態によれば、クランキング特性(クランキング点数およびクランキング性能の劣化率を)を計測し、計測したクランキング特性を考慮した使用料金をユーザに対して請求することができる。これにより、実際の電池の利用状況に応じた使用料金をユーザに対して請求することが可能となる。
【0080】
また、蓄電池100と整備装置500が常時接続されることにより、現在の使用料金を算出することが可能となる。これにより、ユーザは、現在の使用料金をリアルタイムで知ることができる。
【0081】
[他の実施形態]
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、ステップST108およびステップST110は同時に実施しても良い。同様に、ステップST109とステップST111~ステップST112も同時に実施しても良い。
【0082】
要するに、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施しても良く、その場合組み合わせた効果が得られる。さらに、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。
【符号の説明】
【0083】
10…記憶部
100…蓄電池
1a…正極端子
1b…負極端子
1c…外部制御端子
101…電池モジュール
102…計測部
103…BMS
104…記憶部
105…通信部
106…時計部
200…車両
300…キースイッチ
400…インタフェース
500…整備装置
5a…外部制御端子
501…制御部
502…記憶部
503…通信部
504…課金部
505…算出部
506…入出力インタフェース
507…入力部
508…出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10