(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083856
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 33/48 20200101AFI20240617BHJP
【FI】
D06F33/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197915
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】白上 守
【テーマコード(参考)】
3B167
【Fターム(参考)】
3B167AA01
3B167AA02
3B167AA04
3B167AA11
3B167AA12
3B167AB23
3B167AB24
3B167AB32
3B167AE03
3B167AE04
3B167AE05
3B167AE11
3B167BA82
3B167BA91
3B167BA92
3B167FB01
3B167HA11
3B167HA16
3B167HA22
3B167KA02
3B167KA32
3B167KA63
3B167KA78
3B167KB05
3B167LA05
3B167LA08
3B167LA23
3B167LA38
3B167LB04
(57)【要約】
【課題】洗濯機の耐震性能に変化が生じているか否かを検知することができユーザの利便性を向上する洗濯機を提供する。
【解決手段】洗濯機は、外箱と、外箱に弾性的に支持された水槽と、水槽内に回転可能に設けられ、内部に洗濯物を収容できる回転槽と、回転槽を回転駆動するモータと、水槽の振動を検知する振動検知部と、を備える。洗濯機は、洗濯機の使用開始から所定の期間経過までである初期使用期間における振動検知部の検知結果である初期振動値と、現運転における振動検知部の検知結果である現振動値とに基づいて洗濯機の消耗を判定する消耗判定処理を実行する消耗判定処理部を更に備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外箱と、
前記外箱内に弾性的に支持された水槽と、
前記水槽内に回転可能に設けられ、内部に洗濯物を収容できる回転槽と、
前記回転槽を回転駆動するモータと、
前記水槽の振動を検知する振動検知部と、を備える洗濯機であって、
前記洗濯機の使用開始から所定の期間経過までである初期使用期間における前記振動検知部の検知結果である初期振動値と、現運転における前記振動検知部の検知結果である現振動値とに基づいて前記洗濯機の消耗を判定する消耗判定処理を実行する消耗判定処理部を更に備える、
洗濯機。
【請求項2】
前記回転槽の駆動を制御して脱水工程を実行する運転処理部を更に備え、
前記運転処理部は、前記消耗判定処理部が前記洗濯機の消耗ありと判定した場合、脱水工程の制御を補正する補正処理を実行する、
請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記洗濯機の温度を検知する温度検知部を更に備え、
前記消耗判定処理部は、前記初期振動値と、前記初期使用期間内における前記温度検知部の検知結果と、に基づいて温度毎の閾値を設定し、現運転における前記温度検知部の検知結果に対応する前記閾値と、前記現振動値とを比較して、前記現振動値が前記閾値よりも大きかった場合に前記洗濯機が消耗していると判定する、
請求項1に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記回転槽に収容された洗濯物の重量を検知する重量検知部を更に備え、
前記消耗判定処理部は、前記初期振動値と、前記初期使用期間内における前記重量検知部の検知結果と、に基づいて前記回転槽に収容された洗濯物の重量毎の閾値を設定し、現運転における前記重量検知部の検知結果に対応する前記閾値と前記現振動値とを比較して、前記現振動値が前記閾値よりも大きかった場合に前記洗濯機が消耗していると判定する、
請求項1に記載の洗濯機。
【請求項5】
前記消耗判定処理部は、前記重量検知部の検知結果が所定の最小重量値を超え、かつ所定の最大重量値未満である場合に、前記消耗判定処理を実行する、
請求項4に記載の洗濯機。
【請求項6】
前記初期振動値は、前記初期使用期間における脱水工程での前記振動検知部の検知結果であり、
前記現振動値は、現運転における脱水工程での前記振動検知部の検知結果である、
請求項1に記載の洗濯機。
【請求項7】
前記振動検知部の検知した振動の異常を判定する異常判定処理部を更に備え、
前記消耗判定処理部は、脱水工程において前記異常判定処理部が異常有りと判定した場合、前記消耗判定処理を実行する、
請求項5に記載の洗濯機。
【請求項8】
前記消耗判定処理部は、脱水工程の終了時に、前記消耗判定処理を実行する、
請求項1に記載の洗濯機。
【請求項9】
外部の情報処理サーバと接続可能な通信部と、
前記モータ、前記振動検知部、前記消耗判定処理部、及び前記通信部の動作を制御する制御装置と、を更に備え、
前記制御装置は、前記初期振動値を前記通信部によって前記外部の情報処理サーバに送信し記憶させ、
前記消耗判定処理部は、前記外部の情報処理サーバに記憶された前記初期振動値を取得して、前記消耗判定処理を実行する、
請求項1に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる縦型洗濯機は、水槽をばねで吊り下げて弾性的に支持している。また、ドラム式洗濯機は、水槽をばねで吊り下げて更に下からはダンパで弾性的に支持している。水槽を弾性的に支持することにより、脱水運転などで生じる振動を逃がす構造となっている。
【0003】
近年、洗濯機の大容量化が進んでおり、1回の運転で処理される洗濯物の量が増えている。また、衣類の材質が多様化しており、様々な吸水率の衣類が混在するため、脱水時における洗濯物中の水分変化量も以前に増して大きくなっている。これらの結果、近年の洗濯機においては脱水時における回転槽内の洗濯物重量の偏りいわゆるアンバランスが生じやすくなっている。そして、脱水時にアンバランスが生じると、脱水時の振動が大きくなる。
【0004】
振動が過度に大きくなると、騒音や洗濯機の損傷にもつながるため、衣類の偏りに起因して洗濯機に生じたアンバランスの発生を検知することが求められる。例えば、アンバランス量を検知し、それに基づいて脱水回転制御を行う洗濯機が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
洗濯機は生活家電の中でも使用頻度が高く、長年にわたる使用により、例えばバネやダンパ、外箱の耐震性能は次第に変化する。これらの性能の変化により、水槽が揺れやすくなり、アンバランスが発生した結果、運転が途中で停止してしまう頻度が高まることが懸念される。
【0007】
そこで、洗濯機の耐震性能に変化が生じているか否かを検知することができる洗濯機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の洗濯機は、外箱と、前記外箱内に弾性的に支持された水槽と、前記水槽内に回転可能に設けられ、内部に洗濯物を収容できる回転槽と、前記回転槽を回転駆動するモータと、前記水槽の振動を検知する振動検知部と、を備える。洗濯機は、前記洗濯機の使用開始から所定の期間経過までである初期使用期間における前記振動検知部の検知結果である初期振動値と、現運転における前記振動検知部の検知結果である現振動値とに基づいて前記洗濯機の消耗を判定する消耗判定処理を実行する消耗判定処理部を更に備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態による洗濯機の一例の概略構成を示す縦断側面図
【
図2】第1実施形態による洗濯機の一例の電気的構成を示すブロック図
【
図3】第1実施形態による洗濯機について、初期使用期間における振動検知部と温度検知部と重量検知部との検知結果に基づいて定められる基準値のチャートの一例
【
図4】第1実施形態による洗濯機について、洗濯運転終了時に操作パネルに表示される状態報知表示の一例(その1)
【
図5】第1実施形態による洗濯機について、洗濯運転終了時に操作パネルに表示される状態報知表示の一例(その2)
【
図6】第1実施形態による洗濯機について、異常ありと判定された時に操作パネルに表示される異常報知表示の一例
【
図7】第1実施形態による洗濯機について、制御装置による洗濯運転における処理内容を示すフローチャート(その1)
【
図8】第1実施形態による洗濯機について、制御装置による洗濯運転における処理内容を示すフローチャート(その2)
【
図9】第1実施形態による洗濯機について、制御装置による洗濯運転における処理内容を示すフローチャート(その3)
【
図10】第2実施形態による洗濯機を含むシステムの概略構成を示す図
【
図11】第2実施形態による洗濯機の電気的構成を示すブロック図
【
図12】その他の実施形態による洗濯機の電気的構成を示すブロック図
【
図13】その他の実施形態による洗濯機について、初期使用期間における振動検知部と温度検知部と重量検知部との検知結果及び運転における温水及び温風の利用の有無に基づいて定められる基準値のチャートの一例
【
図14】その他の実施形態による洗濯機について、初期使用期間における振動検知部と温度検知部と重量検知部と布質検知部の検知結果に基づいて定められる基準値のチャートの一例
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、複数の実施形態による洗濯機について、図面を参照して説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0011】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について、
図1~
図9を参照して説明する。
図1に示すように、洗濯機10は、外箱11、水槽12、回転槽13、モータ14、給水経路15、給水弁16、排水経路17、排水弁18、及び操作パネル19を備えている。洗濯機10は、例えば回転槽13の回転軸が地面に対して水平又は傾斜したいわゆるドラム式の洗濯機である。なお、洗濯機10は、ドラム式に限られず、回転槽13の回転軸が地面に対して垂直方向に向いたいわゆる縦型の洗濯機であっても良い。また、洗濯機10はヒートポンプ方式又はヒータ式の乾燥機能を備えていても良いし備えていなくても良い。
【0012】
外箱11は、洗濯機10の外殻を構成する物であり、例えば鋼板などによって該矩形の箱状に形成されている。水槽12は、外箱11の内部に収容されて、下部の左右に設けられた一対のサスペンション121によって弾性的に支持されている。回転槽13は、水槽12の内部に回転可能に配置されている。水槽12及び回転槽13は、いずれも有底円筒状に形成されている。水槽12の後面には水槽端板122が、回転槽13の後面には回転槽端板131が設けられて、それぞれ円筒状の底面を形成している。水槽12及び回転槽13は、内部に洗濯物を収容する洗濯槽として機能する。
【0013】
モータ14は、水槽端板122の外側に設けられて、回転槽13を回転駆動する。モータ14は、例えばアウターロータ型のDCブラシレスモータである。モータ14の軸部141は、水槽端板122を貫いて水槽12の内側へ突出し、回転槽端板131の中心部に固定されている。これにより、モータ14は、水槽12に対して回転槽13を相対的に回転させる。この場合、軸部141、回転槽13の回転軸、及び水槽12の中心軸は、それぞれ一致している。
【0014】
給水経路15は、水道の蛇口等、図示しない外部の水源から水槽12に至る水路である。給水弁16は、給水経路15の途中に設けられており、給水経路15を開閉する機能を有する。給水弁16は、電磁的に開閉動作可能な液体用の電磁弁で構成されており、電磁的な指令に基づいて開閉する。給水弁16は水槽12内に対する給水を制御する。給水弁16の上流側は水道の蛇口等、図示しない外部の水源に接続される。給水弁16の下流側は、例えば注水ケース151を介して水槽12に繋がっている。注水ケース151は、例えば樹脂製であって内部に空間を有する箱状に形成されている。注水ケース151は、給水経路15の途中において給水弁16の下流に設けられている。注水ケース151は、ユーザが洗濯処理剤を投入する際に使用する処理剤収容部を内部に有して構成することができる。
【0015】
排水経路17は、水槽12から機外に至る水路で、水槽12内の水を機外に排出する機能を有する。排水弁18は、排水経路17の途中に設けられており、排水経路17を開閉する機能を有する。排水弁18は、電磁的に開閉動作可能な液体用の開閉弁で構成されており、電磁的な指令に基づいて開閉する。排水弁18の上流側は水槽12に接続される。排水弁18の下流側は外部の例えば排水口等に接続される。
【0016】
操作パネル19は、ユーザから洗濯機10の設定や運転に関する操作入力を受け付けると共に、ユーザに対して洗濯機10の設定や運転に関する情報を表示や音声等によって提示する機能を有する。操作パネル19は、例えばタッチパネルディスプレイで構成することもできるし、タッチスイッチや機械的なスイッチ等で構成することもできる。また、操作パネル19は、タッチパネルディスプレイとタッチスイッチ及び機械的なスイッチ等を組み合わせて構成することもできる。操作パネル19は、例えば外箱11の上面の前側部分に設けられている。
【0017】
洗濯機10は、
図2に示す制御装置20、温度検知部21、重量検知部22、振動検知部23、計時部24、運転処理部25、異常判定処理部26、消耗判定処理部27、報知処理部28を備えている。制御装置20は、CPU201や、ROM、RAM、不揮発性メモリなどの記憶領域202を有するマイクロコンピュータを主体として構成されている。制御装置20は、洗濯機10全体の動作を管理する機能を有する。モータ14、給水弁16、排水弁18、操作パネル19は、制御装置20に電気的に接続されており、制御装置20の制御を受けて動作する。
【0018】
温度検知部21は、洗濯機10の設置環境温度として、外箱11の内部又は外部の温度を測定する。温度検知部21は、例えば外箱11内において、洗濯機10が設置されている周囲の環境と同等の温度になる箇所、すなわち洗濯機10の運転による温度上昇の影響を受け難い箇所設けられている。本実施形態では、温度検知部21は、
図1に示すように、外箱11内部の例えば外箱11の上部壁面近傍に設けられている。
【0019】
重量検知部22は、回転槽13内に収容された洗濯物の重量を検知する機能を有する。重量検知部22は、例えばモータ14に流れる電流を計測する図示しない電流計によって実現することができる。この場合、重量検知部22は、回転槽13を回転させた際にモータ14に流れる電流を計測することでモータ14に作用している負荷を測定し、その不可に基づいて回転槽13内に収容されている洗濯物の重量を検知することができる。また、重量検知部22は、例えばモータ14の回転数を検知するエンコーダ等を用いて実現することもできる。この場合、重量検知部22は、制御装置20が指示する目標回転数と実際のモータ14の回転数との差からモータ14の負荷を測定し、その負荷に基づいて洗濯物の重量を検知する。
【0020】
振動検知部23は、水槽12に生じる振動を検知する機能を有する。振動検知部23は、例えば3次元加速度センサで構成することができる。振動検知部23は、
図1に示すように例えば水槽12の外周面の上部に設けられている。振動検知部23は、水槽12に生じた振動の大きさつまり振動量に応じた値を出力する。
【0021】
計時部24は、時間を計る機能を有する。制御装置20は、計時部24によって計時された洗濯機10の使用開始時の情報、及び洗濯機10の使用開始からの経過時間を記憶領域202に記憶する。使用開始日としては、例えば、工場から出荷された洗濯機10にユーザ又は作業者が初めて電源を入れた日、又は、工場から出荷された洗濯機10に対してユーザ又は作業者が操作パネル19を操作して洗濯機10の初期設定を最初に行った日が記憶されても良い。また、計時部24は、各工程における時間を計る機能を有している。
【0022】
制御装置20の記憶領域202は、運転処理部25、異常判定処理部26、消耗判定処理部27、及び報知処理部28を実現するためのプログラムを記憶している。制御装置20は、記憶領域202に記憶されている上記プログラムをCPU201において実行することにより、運転処理部25、異常判定処理部26、消耗判定処理部27、及び報知処理部28をソフトウェアによって仮想的に実現する。なお、運転処理部25、異常判定処理部26、消耗判定処理部27、及び報知処理部28の一部又は全部は、制御装置20と一体の集積回路としてハードウェア的に実現しても良い。
【0023】
運転処理部25は、モータ14、給水弁16、排水弁18、重量検知部22、及び計時部24を必要に応じて動作させることにより、洗濯運転を実行することができる。洗濯運転は、重量検知工程と、洗い工程、濯ぎ工程、脱水工程のうちの少なくとも一つ又は全部の工程とを含む。運転処理部25は、洗濯運転が実行されると、重量検知工程と、ユーザによって設定された工程或いは予め設定された工程を順に実行する。
【0024】
重量検知工程は、重量検知部22によって回転槽13内の洗濯物の重量と検知する工程である。制御装置20は、重量検知工程を実行すると、モータ14を動作させて回転槽13を例えば低速から中速の範囲で回転させ、これによりモータ14の負荷を検知することで洗濯物の重量を検知する。
【0025】
なお、本実施形態において低速とは、例えば回転槽13内の洗濯物が遠心力によって回転槽13の内側の周壁に張り付かない程度の速度、つまり回転槽13の回転に伴い衣類が一旦持ち上がった後に落ちる程度の速度である。中速とは、低速よりも早い速度であって、例えば回転槽13内の洗濯物が回転槽13の内側の周壁に張り付き始める程度の回転速度である。高速とは、低速及び中速よりも速い速度であって、例えば回転槽13内の洗濯物が回転槽13の内側の周壁に張りついた状態に維持される回転速度である。すなわち、高速で回転している場合、回転槽13内の洗濯物は遠心力によって回転槽13の内側の周壁に張りついて回転によって回転槽13の上部まで移動しても重力によっても落下しない。なお、各工程におけるモータ14の回転速度つまり回転槽13の回転速度は、工程の内容等に応じて適宜変更することができる。
【0026】
洗い工程において、運転処理部25は、注水動作及び洗い動作を含む複数の動作を実行する。注水動作は、外部の水源から供給される水を水槽12内に注水する動作である。運転処理部25は、注水動作を実行すると、例えば排水弁18を閉じた状態で給水弁16を平井で水槽12内に注水する。この時、注水ケース151内に投入された洗剤などの洗濯処理剤は、注水に伴って水槽12内に投入される。
【0027】
洗い動作は、水槽12内に水を貯留した状態でモータ14を動作させて回転槽13を回転させるなどして回転槽13内の洗濯物を攪拌し、これにより洗濯物を洗う動作である。運転処理部25は、洗い動作を実行すると、例えば給水弁16及び排水弁18を閉じた状態でモータ14を動作させて回転槽13を中速で回転させて、回転槽13内の衣類をたたき洗いする。尚、洗い動作において、運転処理部25は例えば給水弁16を間歇的に開閉する等して注水する。
【0028】
すすぎ工程において、運転処理部25は、注水動作及びすすぎ動作を含む複数の動作を実行する。すすぎ動作は、水槽12内に水を貯留した状態でモータ14を動作させて回転槽13を回転させる等して、回転槽13内の洗濯物を水中で攪拌し、これにより洗濯物をすすぐ動作である。運転処理部25は、すすぎ動作を実行すると、洗い動作と同様に、例えば給水弁16及び排水弁18を閉じた状態でモータ14を動作させて回転槽13を中速で回転させて回転槽13内の洗濯物を濯ぐ。なお、すすぎ動作において、運転処理部25は、例えば給水弁16を間歇的に開閉する等して注水すすぎを行っても良い。
【0029】
脱水工程において、運転処理部25は、脱水動作を実行する。脱水動作は、回転槽13を高速回転させて、洗い動作を経た等により水分を含んだ洗濯物を遠心脱水する動作である。運転処理部25は、例えば排水弁18を開いた状態に維持すると共にモータ14を動作させて回転槽13を高速で回転させ、これにより回転槽13内の洗濯物を遠心脱水する。
【0030】
運転処理部25は、必要に応じて、脱水工程において注水動作とほぐし動作を実行する。ほぐし動作は、回転槽13内で偏ったり絡まったりした洗濯物をほぐす動作である。ほぐし動作は、例えば回転槽13を低速で周期的に正逆回転させて、洗濯物間の相対位置を移動させ、洗濯物を分散させることで洗濯物をほぐす動作である。運転処理部25は、例えばモータ14を動作させて回転槽13を低速で回転させ、これにより回転槽13内の洗濯物を遠心脱水する。
【0031】
異常判定処理部26は、回転槽13内に収容されている洗濯物の偏りや絡まり等に起因して発生するアンバランス状態の発生の有無を判定する。異常判定処理部26は、例えば脱水工程の実行時に、振動検知部23の検出値に基づいて、振動量が所定の基準値を超えた場合に回転槽13に異常つまりアンバランス状態が発生していると判定する。なお、異常判定処理部26は、モータ14の実回転数と運転処理部25が指示した指令回転数との差から、回転槽13にアンバランス状態が発生しているか否かを検知しても良い。
【0032】
消耗判定処理部27は、消耗判定処理を実行する。消耗判定処理は、洗濯機10の消耗状態とりわけ洗濯機10の耐振性能の消耗状態を判定する処理である。例えば長期に亘る使用により、外箱11の剛性が低下したりサスペンション121に永久変形が生じて弾性が低下したりする等して、洗濯機10の耐震性能が消耗することがある。この場合、回転槽13内に収容されている洗濯物に過度の偏りや絡まりが生じていないにも拘らず、水槽12が大きく振動する可能性がある。消耗判定処理部27は、振動検知部23の検知値に基づいて、洗濯機10の消耗状態を判定する。
【0033】
消耗判定処理部27は、運転時例えば脱水工程において異常判定処理部26が回転槽13の異常を判定した場合、消耗判定処理を実行する。また、消耗判定処理部27は、運転中又は運転終了時例えば各脱水工程が終了する毎に消耗判定処理を実行する。この場合、脱水工程が終了するとは、設定された脱水期間が終了してモータ14が停止することをいう。
【0034】
消耗判定処理部27は、各洗濯機10に固有の基準値に基づいて、洗濯機10の消耗状態を判定する。消耗判定処理部27は、使用開始時の情報と、初期使用期間における振動検知部23の検知結果である初期振動値と、現運転における振動検知部23の検知結果である現振動値とに基づいて消耗判定処理を実行する。
【0035】
使用開始時の情報とは、例えば洗濯機10の使用を開始した日を特定する情報である。初期使用期間とは、洗濯機10に長期の使用による消耗が生じていないと想定される期間であってかつ洗濯機10の設置環境の最低気温と最高気温とを経験することができる期間であって、例えば使用開始から所定の期間経過するまでの期間である。所定の期間は、例えば6月~12月の範囲内に設定することができる。これにより、洗濯機10が設置された場所における最も暑い時期における振動特性と、最も寒い時期における振動特性とが考慮される。更に、最も暑い時期にユーザが洗濯する洗濯物の種類や数の特性と、最も寒い時期にユーザが洗濯する洗濯物の種類や数の特性とが考慮される基準が設定される。すなわち、基準値には各洗濯機10の環境及びユーザの使用方法の影響が反映される。
【0036】
制御装置20は、初期使用期間内の各運転において、振動検知部23に脱水工程での振動値を検知させる。記憶領域202は、初期振動値の最大値を基準値として記憶する。すなわち、消耗が少ない状態で水槽12が最も振動した場合にどれだけ振動したかが消耗判定の基準として設定される。なお、他の実施形態では、基準値は、例えば初期使用期間内の各運転における振動値の平均値として定めても良いし、最も大きい値から所定の個数までの平均値として定めても良い。
【0037】
消耗判定処理部27は、基準値から閾値を算出する。本実施形態の場合閾値は、例えば基準値の110%~150%の範囲内に設定することができる。本実施形態では、閾値は基準値の130%に設定されている。この場合、閾値は、次の式1で求めることができる。
【0038】
閾値=基準値×1.3 ・・・(式1)
【0039】
消耗判定処理部27は、閾値と現運転における振動検知部23の検知結果である現振動値とを比較して、現振動値が閾値よりも大きかった場合、洗濯機10が消耗していると判定する。本実施形態では、現振動値は、現運転における振動検知部23の検知結果の最大値である。なお、他の実施形態では、現振動値は、現運転における振動検知部23の検知結果の平均値であっても良いし、最も大きい値から所定の個数の値までの平均値であっても良い。この場合、消耗の判定式は次の式2のようになる。
【0040】
現振動値>閾値(=基準値×1.3) ・・・(式2)
【0041】
なお、基準値を初期使用期間内の各運転における振動値の平均値として定めた場合、閾値は例えば基準値の150%~200%の範囲内に設定することができる。
【0042】
基準値は、洗濯物の重量と、洗濯機10の温度とに対応して設定される。本実施形態では、基準値は、幅を持って特定される洗濯物の重量ランクと、幅を持って特定される洗濯機10の温度ランクとに対応して設定される。制御装置20は、初期使用期間内の各運転において、振動検知部23に加えて温度検知部21と、重量検知部22とに検知させる。初期振動値は、温度検知部21の検知結果及び重量検知部22の検知結果と紐付けられて整理され、各温度ランク及び各重量ランクにおける初期振動値の最大値が基準値として記憶領域202に記憶される。
【0043】
記憶領域202は、
図3に示すような各温度ランク及び各重量ランクにおける基準値のチャートを記憶する。制御装置20は、温度検知部21の検知結果を複数の区分この場合温度ランク0~3までの4区分に分類する。本実施形態では、温度ランク0は温度Tが10℃未満、温度ランク1は温度Tが10℃以上17℃未満、温度ランク2は温度Tが17℃以上25℃未満、温度ランク3は温度Tが25℃以上に設定されている。また、制御装置20は、重量検知部22の検知結果を複数の区分この場合重量ランク1~8までの8区分に分類する。本実施形態では、重量ランク1は0~0.9kg、重量ランク2は1.0~1.9kg、重量ランク3は2.0~2.9kg、重量ランク4は3.0~3.9kg、重量ランク5は4.0~4.9kg、重量ランク6は5.0~5.9kg、重量ランク7は6.0~6.9kg、重量ランク8は7.0~kgに設定されている。
【0044】
図3に示す例では、温度ランク0の場合、重量ランク2~7の各基準値は、S02~S07に設定され、温度ランク1の場合、重量ランク2~7の各基準値はS12~S17に設定され、温度ランク2の場合、重量ランク2~7の各基準値はS22~S27に設定され、温度ランク3の場合、重量ランク2~7の各基準値はS32~S37に設定されている。
【0045】
消耗判定処理は、重量検知部22の検知結果が所定の最小重量以下、及び又は所定の最大重量以上の場合には、実行されない。換言すると、消耗判定処理は、回転槽13に収容された洗濯物の重量が最小重量を超えてかつ最大重量未満の場合に実行される。回転槽13に収容された洗濯物の重量が軽すぎる場合、例えばタオルケット一枚や柔道着一着だけなど洗濯物の点数が少ないことが考えられる。この場合、回転槽13の内部の周壁の全体にバランスよく張り付かないため、バランスが悪くなりがちである。よって、最小重量値以下の場合は消耗状態を正確に判定できない虞がある。一方回転槽13に収容された洗濯物の重量が重すぎる場合、バランスが崩れると振動が大きくなり過ぎて、こちらも正確な消耗状態の判定は難しい。更に、平均的にユーザは例えば容量の3割~7割程度の重量の洗濯物を洗濯する機会が多い。本実施形態の場合、最小重量値は、例えば0.9kgに設定されている。最大重量値は、例えば7.0kgに設定されている。
【0046】
消耗判定処理は、使用開始から所定の期間経過後から実行される。つまり、洗濯機10がある程度の期間使用されてからでないと消耗が発生する可能性が低いため、消耗判定処理は実行されない。本実施形態では、消耗判定処理は、初期使用期間が経過後に実行される。すなわち、消耗判定処理は、基準値が設定された後に実行される。
【0047】
運転処理部25は、脱水工程実行中に異常判定処理部26が回転槽13の異常を判定した場合、脱水工程を中断する。運転処理部25は、脱水工程において消耗判定処理部27が洗濯機10の消耗有りと判定した場合、補正処理を実行する。補正処理は、振動しやすい状態である洗濯機10においてアンバランス状態を緩和できるように脱水工程の制御を補正して、脱水工程の成功率を高める処理である。補正処理は、例えば、ほぐし動作を追加する処理である。なお、ほぐし動作を追加する処理は補正処理の一例であって、脱水工程の成功率が高まるのであれば、ほぐし動作に替えて又はほぐし動作に加えて注水動作等の他の動作を追加しても良いし、ほぐし動作に替えて又はほぐし動作に加えて脱水動作におけるモータ14の回転速度や周期等を変更する処理を行っても良い。
【0048】
報知処理部28は、消耗判定処理部27が洗濯機10の消耗有りと判定した場合、消耗報知処理を実行する。消耗報知処理は、洗濯機10の状態についてのユーザの理解を促すためにユーザに報知を行う処理である。この場合、1回の運転において、複数回消耗判定が実行された場合、少なくとも1度の消耗判定において消耗がありと判定されていた場合、報知処理部28は、消耗報知処理を実行する。
【0049】
報知処理部28は、例えば洗濯機10の使用期間、消耗により発生し易くなる異常状態の解消のためのアドバイス、及び又は洗濯機10が消耗していることをユーザに報知する。例えば、報知処理部28は、計時部24の計時した使用開始からの経過期間に基づいて、操作パネル19に
図4に示すような状態報知表示191を表示する。状態報知表示191は、例えばメッセージ「この洗濯機の使用開始からの期間は、YY年MM月です。」を含む。更に、報知処理部28は、操作パネル19に
図5に示すような状態報知表示192を表示する。状態報知表示192は、例えば上記のメッセージに加えて、メッセージ「洗濯物のアンバランスが発生しがちです。スムーズな脱水運転のコツは、取扱説明書p.xyzをご参照下さい。」を含む。
【0050】
報知処理部28は、例えば消耗ありと判定されたものの、現運転において一度も異常判定がなかったすなわち脱水工程がスムーズに実行された場合に、
図4に示すような状態報知表示191をすることができる。また、報知処理部28は、例えば消耗ありと判定され、かつ現運転において少なくとも一度異常判定があったすなわち脱水工程が少なくとも一度失敗した場合に、
図5に示すような状態報知表示192をすることができる。消耗報知を受けたユーザは、取扱説明書の適切な個所を参照することによって、洗濯運転の質を向上することができる。また、もし使用期間が長い場合、ユーザは新しい洗濯機の購入を検討することもできる。
【0051】
報知処理部28は、運転終了時に消耗報知処理を実行する。運転終了時とは、例えば洗濯運転に含まれる各工程が完了した後であって、洗濯機10の電源が切れる前である。ユーザは、回転槽13に収容された洗濯物を取り出す際に、操作パネル19に表示されたメッセージを読むことができる。
【0052】
運転処理部25は、脱水工程において消耗判定処理部27が洗濯機10の消耗無しと判定した場合、リトライ処理を実行する。リトライ処理は、異常判定処理部26が回転槽13の異常を判定した回数に応じた方法で脱水動作をやり直す処理である。
【0053】
例えば、本実施形態では、異常の発生回数が所定の第1回数よりも少ないこの場合2回以下の場合には、運転処理部25は、注水動作と、ほぐし動作とを実行した後、脱水動作を再度実施する。注水動作と、ほぐし動作とにより、洗濯物の偏りや絡まりがほぐれやすくなり、再度の脱水動作における成功率が高まる。異常の発生回数が所定の第1回数を超え所定の第2回数以下この場合2回を超え4回以下の場合には、運転処理部25は、脱水動作を再度実施する。異常の発生回数が所定の第2回数よりも多いこの場合5回以上の場合には、運転処理部25は、脱水動作を実施しない。
【0054】
異常の発生回数が所定の第2回数よりも多い場合、報知処理部28は異常報知処理を実行する。異常報知処理は、回転槽13に異常この場合アンバランス状態が発生したことをユーザに報知する処理である。例えば、報知処理部28は、操作パネル19に、
図6に示すような異常報知表示193を表示すると共に、ブザー音及び又は音声によってユーザに異常の発生を報知する。異常報知表示193は、例えばメッセージ「バランスの異常が発生しました。運転を停止します。」を含む。
【0055】
図7~
図9に示すフローチャートを参照して、洗濯運転における制御装置20による処理を説明する。なお、ここでは、洗濯運転に重量検知工程と1回の脱水工程とが含まれる場合について説明する。
図7のスタート時において、洗濯機10の電源が入っており、洗濯物が回転槽13に収容された状態であるとする。また、洗濯機10は初期使用期間が気化しており、基準値が設定されているものとする。ユーザの操作パネル19への操作によって、洗濯運転の開始が指示されると、制御装置20は洗濯運転を開始する(スタート)。
【0056】
ステップA11において、運転処理部25は重量検知工程を実行する。また、制御装置20は、ステップA12においてカウントi=0に設定する。ステップA13において、運転処理部25は排水弁18を開く。ステップA14においてモータ14を駆動する。ステップA13とステップA14とは脱水動作に含まれる。ステップA15において、制御装置20は異常判定処理部26により異常判定処理を実行する。異常判定処理は、脱水動作の実行期間である脱水期間において、一定の周期で繰り返し実施される。一定の周期は、例えば数ミリ秒、数秒、数十秒等、任意に設定することができる。
【0057】
異常判定処理部26が異常有りと判定した場合(ステップA16でYes)、制御装置20は処理を
図8のステップB11に進める。異常判定処理部26が異常無しと判定した場合(ステップA16でNo)、制御装置20は処理をステップA17に進める。
【0058】
ステップA17において、制御装置20は、計時部24の計る時間がモータ14の駆動開始から所定の脱水期間が経過したか否かを判定する。脱水期間が経過していない場合(ステップA17でNo)、制御装置20は処理をステップA15に戻す。脱水期間が経過した場合(ステップA17でYes)、制御装置20は処理をステップA18に進める。ステップA18において、運転処理部25はモータ14を停止する。これにより、脱水動作が終了する。
【0059】
ステップA19において、制御装置20は消耗判定処理部27により消耗判定処理を実行する。ステップA19の消耗判定において消耗有りと判定された場合、または現運転における少なくともいずれか1回の消耗判定において消耗有りと判定された場合(ステップA20でYes)、制御装置20は処理をステップA21に進める。ステップA21において、制御装置20は報知処理部28により消耗報知処理を実行する。これにより、ユーザは洗濯機10の使用期間等、洗濯機10の状態を把握することができる。その後、制御装置20は、洗濯運転を終了する(エンド)。
【0060】
ステップA19の消耗判定において消耗無しと判定されて、かつ現運転における1回以上の消耗判定においていずれも消耗無しと判定された場合(ステップA20でNo)、制御装置20は、洗濯運転を終了する(エンド)。
【0061】
図8に示すステップB11において、制御装置20は、カウントi=i+1とする。すなわち、カウントiは異常判定処理部26によって異常有りと判定された回数を意味する。
【0062】
ステップB12において、運転処理部25は、モータ14を停止する。これにより、脱水動作が中止される。ステップB13において、制御装置20は消耗判定処理部27により消耗判定処理を実行する。
【0063】
消耗有りと判定された場合(ステップB14でYes)、制御装置20は処理をステップB15に進める。ステップB15において、運転処理部25は、ほぐし工程を実行する。これにより、回転槽13内に収容された洗濯物の偏りや絡まりが解消されやすくなる。その後、制御装置20は処理を
図7のステップA14に進める。
【0064】
消耗無しと判定された場合(ステップB14でNo)、制御装置20は処理をステップB16に進める。ステップB16において、運転処理部25は、
図9に示すリトライ処理を実行する。
【0065】
リトライ処理が実行されると、制御装置20は、ステップC11においてカウントiが2以下か否かを判定する。カウントiが2よりも大きいつまり異常判定が通算3回以上である場合(ステップC11でNo)、制御装置20は処理をステップC12に進める。
【0066】
ステップC12において、制御装置20は、カウントiが5に等しいか否かを判定する。カウントiが5でない場合つまりこの場合異常判定が3回目又は4回目の場合(ステップC11でNo)、制御装置20は処理を
図6のステップA14に進める。
【0067】
カウントiが5に等しい場合つまりこの場合異常判定が5回目の場合(ステップC11でNo)、制御装置20は処理をステップC13に進める。ステップC13において、制御装置20は報知処理部28により異常報知処理を実行する。すなわち5回リトライしてもアンバランスが解消しない場合、制御装置20は洗濯運転を中止して異常が発生した旨をユーザに報知する。ユーザは、異常報知を受けて、洗濯物の量を増減する等して手動でアンバランスの解消に努めることができる。
【0068】
カウントiが2以下である場合つまり異常判定が1回目又は2回目である場合(ステップC11でYes)、制御装置20は処理をステップC14に進める。ステップC14において、運転処理部25は、排水弁18を閉じる。ステップC15において、運転処理部25は給水弁16を開く。ステップC14とステップC15とは、注水動作に含まれる。
【0069】
ステップC16において、制御装置20は注水が完了したか否かを判定する。例えば、図示しない水位検知部により、所定の水位まで注水されたか否かを判定しても良いし、計時部24の計る時間が給水弁16を開いてから所定の期間が経過したか否かを判定しても良い。注水が完了していない場合(ステップC16でNo)、制御装置20はステップC16の処理を繰り返す。注水が完了した場合(ステップC16でYes)、制御装置20は処理をステップC17に進める。
【0070】
ステップC17において、運転処理部25は、ほぐし動作を実行する。その後、制御装置20は、処理を
図7のステップA13に進める。
【0071】
このようにして、制御装置20は、脱水工程を含む洗濯運転を実行することができる。
【0072】
ここで、洗濯機10の消耗の程度つまり耐震性能の変化の程度を、洗濯機10の使用年数によって一律に推定することも考えられる。しかし、使用頻度は個々の洗濯機10のユーザによって異なり、消耗の程度つまり耐震性能の変化の程度も個々の洗濯機10によって異なる。したがって、同じ使用年数であっても、洗濯機10の消耗の程度つまり耐震性能の変化の程度は個々の洗濯機10毎に異なる。
【0073】
これに対して、以上説明した本実施形態によれば、洗濯機10は、外箱11と、外箱11内に弾性的に支持された水槽12と、水槽12内に回転可能に設けられ、内部に洗濯物を収容できる回転槽13と、回転槽13を回転駆動するモータ14と、水槽12の振動を検知する振動検知部23と、を備える。洗濯機10は、洗濯機10の使用開始から所定の期間経過までである初期使用期間における振動検知部23の検知結果である初期振動値と、現運転における振動検知部23の検知結果である現振動値とに基づいて洗濯機10の消耗を判定する消耗判定処理を実行する消耗判定処理部27を更に備える。
【0074】
これによれば、個々の洗濯機10の使用状況に応じてアンバランスの具合は異なるため、消耗がまだ生じていないと考えられる初期期間における振動の初期値と、現在の振動とを比較することで、より正確な消耗の判定を行うことができる。したがって、洗濯機10の耐震性能に変化が生じているか否かを検知することができる洗濯機10が提供される。これにより、ユーザの利便性が向上する。
【0075】
洗濯機10は、回転槽13の駆動を制御して脱水工程を実行する運転処理部25を更に備える。運転処理部25は、消耗判定処理部27が洗濯機10の消耗ありと判定した場合、脱水工程の制御を補正する補正処理を実行する。
【0076】
これによれば、洗濯機10が消耗していると判定された場合には、脱水工程の制御を補正することで、脱水工程の成功率を高めることができる。そのため、必要以上に何度もリトライを繰り返して運転時間が長期化したり、異常判定されて運転が途中で終了してしまったりということを抑制することができ、ユーザの利便性が向上する。
【0077】
洗濯機10は、洗濯機10の温度を検知する温度検知部21を更に備える。消耗判定処理部27は、初期振動値と、初期使用期間内における温度検知部21の検知結果と、に基づいて温度毎の閾値を設定し、現運転における温度検知部21の検知結果に対応する閾値と、現振動値とを比較して、現振動値が閾値よりも大きかった場合に洗濯機10が消耗していると判定する。
【0078】
外箱11及び水槽12の剛性は、温度に依存する。すなわち、温度が低い方が剛性がたかくなり、温度が高い方が剛性が低くなる。そのため、アンバランスは、洗濯機10の温度によって変化する。したがって、個々の洗濯機10の設置場所の例えば季節ごとに変化する環境温度に応じた閾値を設定することで、個々の洗濯機10に適する消耗判定を行うことができる。これにより、更に正確な消耗判定が可能となり、ユーザの利便性が更に向上する。
【0079】
ここで、ユーザによって、どのような重量のどのような素材の洗濯物をどのような組み合わせで洗濯するかの傾向が異なる。洗濯物の種類と組合せによって、同じ総重量であってもアンバランスの大きさは変化する。例えば、同じ重量1kgの洗濯物をとっても、ユーザによっては毛布1枚だけかもしれないし、フェイスタオル6枚かもしれない。更にまた、同じ重量でも、綿素材が主な場合と、化繊素材が主な場合とによってもアンバランスの大きさは異なる。
【0080】
これに対して、洗濯機10は、回転槽13に収容された洗濯物の重量を検知する重量検知部22を更に備える。消耗判定処理部27は、初期振動値と、初期使用期間内における重量検知部22の検知結果と、に基づいて回転槽13に収容された洗濯物の重量毎の閾値を設定し、現運転における重量検知部22の検知結果に対応する閾値と現振動値とを比較して、現振動値が閾値よりも大きかった場合に洗濯機が消耗していると判定する。
【0081】
したがって、個々の洗濯機10のユーザの使用の傾向に応じた、重量毎の閾値を設定することで、個々の洗濯機10に適する消耗判定を行うことができる。これにより、更に正確な消耗判定が可能となり、ユーザの利便性が更に向上する。
【0082】
ここで、洗濯物の重量が過度に小さい又は大きい場合には、バランスが悪くなりがちである。
【0083】
消耗判定処理部27は、重量検知部22の検知結果が所定の最小重量値を超え、かつ所定の最大重量値未満である場合に、消耗判定処理を実行する。
【0084】
回転槽13に収容されている洗濯物の重量が、バランスが悪くなりがちな最小重量値以下又は最大重量値以上である場合には消耗判定しないことで、利用頻度の高い重量値の範囲において正確な消耗判定が可能となる。これにより、ユーザの利便性が更に向上する。
【0085】
初期振動値は、初期使用期間における脱水工程での振動検知部の検知結果である。現振動値は、現運転における脱水工程での振動検知部の検知結果である。
【0086】
脱水工程において、モータ14は高速回転するため、水槽12の振動も大きくなりがちであり、各洗濯機10の個体差や使用環境等に応じた特性が現れやすい。したがって、脱水工程での振動値を基準に設定することで、より正確な消耗判定が可能となる。これにより、ユーザの利便性が更に向上する。
【0087】
洗濯物の偏りによる過度なアンバランスが発生していないのに脱水工程が頻繁に中止してしまうことは、ユーザの利便性を低下する。脱水工程が振動の異常により停止した場合、アンバランスによるものなのか、洗濯機10の経年変化により振動が大きくなっているのかを見分ける必要がある。
【0088】
洗濯機10は、振動検知部23の検知した振動の異常を判定する異常判定処理部26を更に備える。消耗判定処理部27は、脱水工程において異常判定処理部26が異常有りと判定した場合、消耗判定処理を実行する。
【0089】
振動の要因を判定することで、脱水工程の中止の発生回数を抑制することができる。その結果ユーザの利便性を向上することができる。
【0090】
消耗判定処理部27は、脱水工程の終了時に、消耗判定処理を実行する。
【0091】
脱水工程において、モータ14は高速回転するため、水槽12の振動も大きくなり、消耗の判定が容易となる。したがって、脱水工程終了時に消耗を判定することで現在の消耗具合の正確な特定が可能となる。
【0092】
(第2実施形態)
続いて、
図10及び
図11を参照して第2実施形態について説明する。本実施形態の洗濯機10は、洗濯機システム100の一部を構成する。洗濯機システム100は、洗濯機10と、外部の情報処理サーバ101とを含んで構成される。
【0093】
洗濯機10と外部の情報処理サーバ101とは、アクセスポイント102及びインターネット103等の電気通信回線を介して相互に通信可能に接続される。また、洗濯機10は、外部端末104とアクセスポイント102及びインターネット103等の電気通信回線を介して、又はWi-Fi規格に準拠した無線LANなどの電気通信回線を介して相互に通信可能に接続されてもよい。
【0094】
図11に示すように、洗濯機10は通信部30を備える。通信部30は、例えば
図10に示すアクセスポイント102やインターネット103を介して接続された外部の情報処理サーバ101及び外部端末104と通信することができる。この場合、通信部30は、例えばアクセスポイント102に対して、Wi-Fi規格に準拠した無線LAN、又は有線LANを用いて接続することができる。なお、本実施形態において外部の情報処理サーバ101及び外部端末104の「外部」とは、洗濯機10の外部を意味する。
【0095】
詳細は図示しないが、外部の情報処理サーバ101は、例えばCPUや、OM、RAM、及び書き換え可能なフラッシュメモリなどの記憶領域を有するマイクロコンピュータを主体に構成されている。また、外部の情報処理サーバ101は、例えば洗濯機10や外部端末104と通信を行うための通信部を有している。
【0096】
制御装置20は、工場から出荷された洗濯機10がユーザ又は作業者の操作によって情報処理サーバ101に初めて接続された時点を使用開始時として設定し、使用開始時の情報を記憶領域202及び、又は外部の情報処理サーバ101の記憶領域に記憶する。なお、上記実施形態のように、制御装置20は、工場から出荷された洗濯機10にユーザ又は作業者が初めて電源を入れた日、又は、工場から出荷された洗濯機10に対してユーザ又は作業者が操作パネル19を操作して洗濯機10の初期設定を最初に行った日を使用開始時として設定してもよい。
【0097】
初期使用期間において、制御装置20は、振動検知部23が検知した初期振動値と、温度検知部21の検知結果と、重量検知部22の検知結果とを、外部の情報処理サーバ101の記憶領域に送信して記憶させる。外部の情報処理サーバ101は、初期使用期間の間の初期振動値を、温度検知部21の検知結果と、重量検知部22の検知結果とに紐づけて記憶する。
【0098】
初期使用期間の経過後、外部の情報処理サーバ101は、記憶した初期振動値のデータから、例えば温度ランク毎、及び重量ランク毎の基準値を算出する。また、外部の情報処理サーバ101は、温度ランク毎、及び重量ランク毎の基準値から閾値を算出して記憶領域に記憶する。
【0099】
初期使用期間の経過後、消耗判定処理部27は、外部の情報処理サーバ101に記憶された温度ランク毎、及び重量ランク毎の閾値を取得し、消耗判定処理を実行する。なお、外部の情報処理サーバ101が温度ランク毎、及び重量ランク毎の閾値を記憶領域に記憶し、消耗判定処理部27は、外部の情報処理サーバ101に記憶された温度ランク毎、及び重量ランク毎の基準値を取得した上で、基準値に基づいて閾値を算出し、当該閾値に基づいて消耗判定処理を実行する構成であってもよい。
【0100】
報知処理部28は、操作パネル19による報知に代えて又は加えて、外部端末104に指令を通信して、インストールされたアプリによってユーザに異常報知処理及び又は消耗報知処理を実行することができる。すなわち、報知処理部28による指令を受けて、外部端末104は例えば状態報知表示191、192に相当する内容を表示してもよい。外部端末104は、状態報知表示192に相当する内容を表示させる場合、取扱説明書の該当箇所に移動可能なリンクを表示しても良い。なおこの場合、消耗報知処理は、洗濯運転終了時だけに限らず、ユーザが外部端末104のアプリにアクセスした時、及び又はユーザが外部端末104のアプリにおいて消耗判定処理の結果をリクエストした時に実行する構成であってもよい。
【0101】
以上説明した本実施形態によれば、洗濯機10は、外部の情報処理サーバ101と接続可能な通信部30と、モータ14、振動検知部23、消耗判定処理部27、及び通信部30の動作を制御する制御装置20と、を更に備える。制御装置20は、初期振動値を通信部30によって外部の情報処理サーバに送信し記憶させる。消耗判定処理部27は、外部の情報処理サーバ101に記憶された初期振動値を取得して、消耗判定処理を実行する。
【0102】
これによれば、初期使用期間における振動値を大量に記憶しても、洗濯機10に備え付けられた記憶領域202の容量を圧迫せずに済む。そのため、洗濯機10の制御に支障なく記憶容量を抑制することが可能となる。
【0103】
(他の実施形態)
その他の実施形態について、
図12~
図14を参照して説明する。洗濯機10は、
図12のブロック図に示すように、温風生成部41と、送風ファン42と、温水生成部43と、布質検知部44とのうちいずれか一つ以上又は全てを備える構成とすることができる。温風生成部41は、例えばヒートポンプ又はヒータなどで構成されて、空気を温める機能を有する。送風ファン42は、温風生成部41によって温められた空気を図示しない風路を通して水槽12及び回転槽13の内部に届ける機能を有する。運転処理部25は、例えば洗濯物を乾燥させる乾燥運転において、温風生成部41及び送風ファン42を駆動して温風を水槽12及び回転槽13に供給することで、回転槽13に収容された洗濯物を乾燥させる。
【0104】
温水生成部43は、例えばヒータなどの熱源で構成され、給水経路15を流れる水又は水槽12に貯留された水を温めて温水を生成する機能を有する。運転処理部25は、例えば洗濯運転の洗い工程及び又はすすぎ工程において、温水生成部43を駆動して、温水で洗い工程及び又はすすぎ工程を実行することができる。
【0105】
布質検知部44は、洗濯物の布質を検知する機能を有する。布質検知部44は、例えば洗濯物が乾いた状態つまり洗濯運転開始時例えば重量検知工程においてモータ14に掛かる負荷と、洗濯物が濡れた状態つまり注水動作後にモータ14に掛かる負荷とに基づいて、洗濯物の布質を複数区分に特定することができる。
【0106】
上記各実施形態では、洗濯機10の設置環境温度毎、及び又は回転槽13に収容された洗濯物の重量毎に、初期振動値及び閾値を決定したが、これに限らない。例えば、他の実施形態では、外箱11及び又は水槽12の剛性に影響を及ぼす可能性のある他の因子毎や、洗濯物の偏りや絡まりの発生に影響を及ぼす可能性のある他の因子の区分毎に、初期振動値及び閾値を決定する構成であっても良い。
【0107】
例えば、外箱11及び又は水槽12の剛性に影響を及ぼす可能性のある他の因子として、温風や温水を利用した工程すなわち温風生成部41及び又は温水生成部43を駆動した工程が含まれる運転であるかどうかによって、初期振動値及び閾値を区分して決定しても良い。温風や温水を利用した場合、外箱11及び又は水槽12の温度ひいては剛性に影響を与える可能性がある。この場合、消耗判定処理部27は、現運転における温度検知部21の検知結果と、現運転における重量検知部22の検知結果と、現運転における振動検知部23の検知結果に加えて、ユーザによって設定されたまたは予め設定された現運転の内容が温風や温水を利用する工程を含むか否かの情報に基づいて、消耗判定処理を実行することができる。記憶領域202は、例えば
図13に一例を示すような、初期使用期間における振動検知部と温度検知部と重量検知部との検知結果及び運転における温風や温水の利用の有無に基づいて定められる基準値のチャートを記憶することができる。
【0108】
また、例えば洗濯物の偏りや絡まりの発生に影響を及ぼす可能性のある因子として、洗濯物の布質に基づいて初期振動値及び閾値を区分して決定しても良い。洗濯物の布質がより吸水し易い綿系である場合は、より吸水し難い化繊系である場合と比較して、濡れた状態の洗濯物が重くなるため偏りが起こりやすい。この場合、消耗判定処理部27は、現運転における温度検知部21の検知結果と、現運転における重量検知部22の検知結果と、現運転における振動検知部23の検知結果に加えて、布質検知部の検知結果に基づいて、消耗判定処理を実行することができる。記憶領域202は、例えば
図14に一例を示すような、初期使用期間における振動検知部と温度検知部と重量検知部と布質検知部の検知結果に基づいて定められる基準値のチャートを記憶することができる。
【0109】
上記各実施形態では、洗濯運転の特に脱水工程における振動検知部23の検知結果である初期振動値と現振動値に基づいて消耗判定処理を実行する構成としたが、これに限らない。例えば、他の実施形態では、消耗判定処理部27は洗い工程又は濯ぎ工程における振動検知部23の検知結果に基づいて消耗判定処理を実行しても良いし、乾燥機能を有する洗濯機10の場合、乾燥工程における振動検知部23の検知結果に基づいて消耗判定処理を実行しても良い。
【0110】
更に、他の実施形態では、モータ14が所定の回転数であるときの振動検知部23の検知結果に基づいて消耗判定処理を実行する構成であっても良い。所定の回転数は、例えば高速であっても良いし、中速であっても良い。この場合、記憶領域202は、初期使用開始期間においてモータ14が所定の回転数で回転した場合の振動検知部23の検知結果を初期振動値として、各温度ランク及び各重量ランクに紐づけて記憶することができる。また、消耗判定処理部27は、現運転においてモータ14が所定の回転数で回転した場合の振動検知部23の検知結果を現振動値として、各温度ランク及び各重量ランクに紐づけられた初期振動値から設定された閾値と比較して、消耗判定処理を実行する構成であっても良い。
【0111】
なお、上記各実施形態は、適宜組み合わせて実施することができる。
【0112】
以上、本発明の複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0113】
10…洗濯機、11…外箱、12…水槽、13…回転槽、14…モータ、20…制御装置、21…温度検知部、22…重量検知部、23…振動検知部、24…計時部、25…運転処理部、26…異常判定処理部、27…消耗判定処理部、28…報知処理部、30…通信部、101…外部の情報処理サーバ