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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083861
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】車載用静止誘導機器
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/28 20060101AFI20240617BHJP
   H01F 27/12 20060101ALI20240617BHJP
   H01F 30/10 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
H01F27/28 176
H01F27/12 Z
H01F30/10 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197921
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】竹岡 敬晃
(72)【発明者】
【氏名】真屋 岳良
(72)【発明者】
【氏名】薦池 一
(72)【発明者】
【氏名】式井 正俊
(72)【発明者】
【氏名】武井 雅斗
(72)【発明者】
【氏名】高橋 泰弘
【テーマコード(参考)】
5E043
5E050
【Fターム(参考)】
5E043DA04
5E043DA05
5E043DB02
5E043DB03
5E043DB08
5E050CA02
5E050CA04
(57)【要約】
【課題】車両に平置き型に配置されるものにあって、冷却媒体の流れを効率化して巻線の冷却効果を高める。
【解決手段】実施形態の車載用静止誘導機器は、鉄心及び巻線を有する誘導機器本体を、タンク内に冷却媒体と共に収容して構成され、車両に平置き型に配置されるものであって、前記巻線は、内層コイルと、この内層コイルの外周に、前記冷却媒体が流れるメインギャップを介して配置された外層コイルとを備えると共に、前記内層コイル及び外層コイルに、前記冷却媒体が流れる層間流路を備えて構成され、前記メインギャップに流入する前記冷却媒体の流れの障害となって流通状態を変化させるための流れ変更構造が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄心及び巻線を有する誘導機器本体を、タンク内に冷却媒体と共に収容して構成され、車両に平置き型に配置される車載用静止誘導機器であって、
前記巻線は、内層コイルと、この内層コイルの外周に、前記冷却媒体が流れるメインギャップを介して配置された外層コイルとを備えると共に、前記内層コイル及び外層コイルに、前記冷却媒体が流れる層間流路を備えて構成され、
前記メインギャップに流入する前記冷却媒体の流れの障害となって流通状態を変化させるための流れ変更構造が設けられている車載用静止誘導機器。
【請求項2】
前記流れ変更構造は、前記メインギャップの径方向中間部に配置されて前記冷却媒体の流路を内外周に分けるスペーサからなる請求項1記載の車載用静止誘導機器。
【請求項3】
前記流れ変更構造は、前記巻線の軸方向端部のうち前記冷却媒体の入口側端部の、前記メインギャップの径方向中間部に配置された閉塞板と、その閉塞板から軸方向に延びて該メインギャップの径方向中間部に配置されて前記冷却媒体の流路を内外周に分ける仕切板とを含む請求項1記載の車載用静止誘導機器。
【請求項4】
前記流れ変更構造は、前記メインギャップ内の前記冷却媒体の流路を、蛇行状の入り組んだ形態とするための、複数枚の仕切板から構成される請求項1記載の車載用静止誘導機器。
【請求項5】
前記流れ変更構造は、前記巻線の軸方向端部のうち前記冷却媒体の入口側端部に配置された閉塞板を備え、該閉塞板には、前記メインギャップ及び層間流路に対する該冷却媒体の流量バランスを調整するための入口開口部が形成されている請求項1記載の車載用静止誘導機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、鉄心及び巻線を有する誘導機器本体を、タンク内に冷却媒体と共に収容して構成され、車両に平置き型に配置される車載用静止誘導機器に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用静止誘導機器例えば鉄道車両の床下に搭載される車載用変圧器としては、高さ方向に薄型とする必要があり、平置き型に配置されるタンク内に、軸方向を横向きつまり水平方向とした変圧器本体を、冷却媒体としての絶縁油と共に収容して構成されるものがある(例えば、特許文献1参照)。そして、前記タンクの前側に隣り合って冷却器を設けると共に、タンクと冷却器とをつなぐ配管、及び、絶縁油を送るための循環ポンプを設け、タンクに対し絶縁油を循環供給することが行われる。
【0003】
前記変圧器本体は、鉄心の脚部に巻線を巻回して構成されるが、前記巻線は、一次側の内層コイルと、その外周側に配置される二次側の外層コイルとを備えて構成される。このとき、内層コイルと外層コイルとの間には、前記絶縁油が流れるメインギャップが、径方向隙間寸法を比較的大きくして設けられている。冷却媒体としての絶縁油は、変圧器本体の巻線の軸方向の一端側から他端側に向かって流れ、その際に、前記メインギャップなどを通過することにより、変圧器本体の冷却が図られる。尚、内層コイル及び外層コイルの各々について、複数層の巻線から構成され、それらの層間にも絶縁油が流れる層間流路が比較的狭く設けられる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-283757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来構成では、絶縁油は、メインギャップを軸方向に直線的に流れるため、メインギャップの中央付近を流れる絶縁油が、巻線との熱交換にさほど寄与せず、絶縁油の流量の割に十分に高い冷却効率が得られない事情があった。また、巻線に、メインギャップに加えて層間流路を設けたものにあっては、メインギャップ側に絶縁油が多く流れて層間流路における冷却性が低くなる傾向にあった。更に、コイル毎、各層毎に巻線の温度が異なる場合でも、絶縁油の流量は一定であり、改善の余地が残されていた。
【0006】
そこで、車両に平置き型に配置されるものにあって、冷却媒体の流れを効率化することを可能とし、巻線の冷却効果を高めることができる車載用静止誘導機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る車載用静止誘導機器は、鉄心及び巻線を有する誘導機器本体を、タンク内に冷却媒体と共に収容して構成され、車両に平置き型に配置されるものであって、前記巻線は、内層コイルと、この内層コイルの外周に、前記冷却媒体が流れるメインギャップを介して配置された外層コイルとを備えると共に、前記内層コイル及び外層コイルに、前記冷却媒体が流れる層間流路を備えて構成され、前記メインギャップに流入する前記冷却媒体の流れの障害となって流通状態を変化させるための流れ変更構造が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態を示すもので、巻線の要部を破断状態で示す斜視図
図2】車載用変圧器の全体構成を概略的に示す横断平面図
図3】第2の実施形態を示すもので、巻線の要部を破断状態で示す斜視図
図4】第3の実施形態を示すもので、巻線の要部を破断状態で示す斜視図
図5】メインダクト内の蛇行状流路を示す斜視図
図6】第4の実施形態を示すもので、巻線の要部を破断状態で示す斜視図
図7】蛇行状流路を径方向に見た様子を模式的に示す図(図6のA-A線に沿う断面図)
図8】メインダクト内の蛇行状流路を示す斜視図
図9】第5の実施形態を示すもので、巻線の要部を破断状態で示す斜視図
図10】閉塞板の正面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、車載用静止誘導機器として、鉄道車両の床下に搭載される車載用変圧器に適用したいくつかの実施形態について、図面を参照しながら説明する。尚、複数の実施形態間で、共通する部分については、符号を共通して使用し、繰り返しの説明を省略することとする。また、以下の説明では、便宜上、タンクの前部側を絶縁油の流入側とし、後部側を流出側としている。図1図3図9では、巻線の前面側を下向きにして示している。
【0010】
(1)第1の実施形態
図1及び図2を参照して、第1の実施形態について述べる。図2は、本実施形態に係る車載用静止誘導機器としての車載用変圧器1(以下、単に「変圧器1」という)の全体構成を概略的に示している。この変圧器1は、電車等の車両の床下に平置き型に配置される密閉型のタンク2内に、冷却媒体例えば絶縁油Mと共に、誘導機器本体としての例えば単相の内鉄形の変圧器本体3を収容してなり、更に前記タンク2の一端側近傍この場合前方部に位置して、例えば空冷式の冷却器4を有して構成されている。
【0011】
前記タンク2は、金属板例えば鋼板から、全体として高さ方向に薄型のほぼ矩形箱状に構成されている。前記冷却器4は、前記タンク2内の絶縁油Mを熱交換により冷却するためのもので、全体として、矩形ブロック状に構成されている。詳しく図示はしないが、この冷却器4は、熱伝導性の良い金属から構成された、入口側ヘッダ、出口側ヘッダ、それらの間を接続する偏平な中空管状をなす複数の放熱管、放熱管同士間に設けられた放熱フィン等からなる周知構成を備えている。
【0012】
前記冷却器4の後端部の出口側ヘッダ部と、前記タンク2の前端部との間は、絶縁油Mを送る供給流路を構成する2本の供給配管5、5により接続されている。冷却器4の左右の側面部の入口側ヘッダ部と、タンク2の後端部との間は、タンク2の後端側から折返すように延びて冷却器4に絶縁油Mを送る戻り流路を構成する2本の戻り配管6、6により接続されている。これら戻り配管6、6の途中部には、絶縁油Mを循環させるため循環ポンプ7、7が夫々設けられている。
【0013】
これにて、循環ポンプ7、7が駆動されると、図2に白抜きの矢印で示すように、冷却器4において冷却された低温の絶縁油Mが、供給配管5、5を通してタンク2内の前端部に送られる。タンク2内に流入された絶縁油Mは、タンク2内を後方に向けて流れて変圧器本体3を冷却した後、タンク2の後端側から流出し、戻り配管6、6を通り、冷却器4に戻される。そして、冷却器4において冷却された絶縁油Mが、供給配管5、5からタンク2内に供給されるといった循環が行われる。
【0014】
さて、本実施形態における前記変圧器本体3の構成について、図1も参照して述べる。は、以下のように構成されている。変圧器本体3は、矩形枠状の鉄心8及びその鉄心8の2個の脚部8a、8aに夫々装着された例えばモールドコイルからなる円筒状の巻線9、9等を備える周知構成を備えている。この変圧器本体3は、脚部8a、8aの延びる方向即ち、巻線9、9の軸方向を前後方向としてタンク2内にほぼ水平に、つまり横置き状に配置されている。
【0015】
図1に示すように、前記巻線9は、内周側に配置された一次コイルである内層コイル10と、外周側に配置された二次コイルである外層コイル11とを備えている。このとき、内層コイル10と外層コイル11との間は、径方向に比較的大きな距離で離間しており、この部分に前記絶縁油Mが流れる冷却用のメインギャップ12が設けられる。このメインギャップ12は、円周方向に間欠的に複数個のダクトピース13を配置することにより形成される。前記ダクトピース13は、絶縁材料例えば木材やプラスチック、絶縁紙等から、軸方向全体に延びる棒状に構成されている。
【0016】
また、詳しく図示はしないが、前記内層コイル10は、絶縁電線を複数層に巻回して構成されており、それら電線の巻回層間の比較的小さい隙間に位置して前記絶縁油Mが流れる層間流路14が設けられている。この層間流路14も、巻回層間に円周方向に間欠的に複数個のダクトピース13を配置することにより形成される。同様に、前記外層コイル11についても、巻回層間にダクトピース13を配置することにより、巻回層間の比較的小さい隙間に位置して前記絶縁油Mが流れる層間流路15が設けられている。
【0017】
そして、前記メインギャップ12には、該メインギャップ12に流入する絶縁油Mの流れの障害となって流通状態を変化させるための流れ変更構造が設けられている。本実施形態では、流れ変更構造として、メインギャップ12の径方向中間部に位置して、絶縁油Mの流路を内外周に分けるスペーサ16を設けることにより構成される。このスペーサ16は、絶縁材料例えば木材やプラスチック、絶縁紙等から、メインギャップ12の中間部を軸方向全体に延びる大きさの薄肉の円筒状に構成され、メインギャップ12の径方向中間部に配置されている。
【0018】
これにて、メインギャップ12には、スペーサ16を挟んで、内層コイル10とスペーサ16との間の内周側ギャップ12aと、スペーサ16と外層コイル11との間の外周側ギャップ12bとに分けられる。スペーサ16がない場合と比較して、スペーサ16がメインギャップ12における絶縁油Mの流れの障害となり、絶縁油Mの流通状態が変化することになる。尚、図示はしないが、前記鉄心8の脚部8aと内層コイル10の内周部との間にも、絶縁油Mが流れる冷却用の流路が設けられている。
【0019】
次に、上記構成の変圧器1の作用、効果について述べる。本実施形態の変圧器1においては、上記のように、循環ポンプ7、7が駆動されると、図1に白抜きの矢印で示すように、低温の絶縁油Mが、冷却器4から供給配管5、5を通してタンク2内の前端部に送られる。その絶縁油Mは、タンク2内を後方に向けて流れ、巻線9の外面を通ると共に、巻線9の前端面の入口部からメインギャップ12内、層間流路14、15内等を通ることにより熱交換がなされ、変圧器本体3全体が冷却される。その後、絶縁油Mはタンク2の他端側から戻り流路6、6を通して冷却器4に戻され、冷却器4において冷却された絶縁油Mが、供給配管5、5からタンク2内に供給されるといった循環が行われる。
【0020】
このとき、前記メインギャップ12内に、流れ変更構造としてのスペーサ16が設けられていることにより、メインギャップ12における絶縁油Mの流通状態が変化される。具体的には、メインギャップ12は、スペーサ16を挟んで、径方向寸法のより狭い形態の内周側ギャップ12aと、外周側ギャップ12bとに分けられ、それらを夫々絶縁油Mが流通するようになる。これにより、メインギャップ12の径方向中央付近において、絶縁油Mが巻線9との熱交換にさほど寄与せずに流れることがなくなり、熱交換効率の低い部分を無くして、絶縁油Mよる熱交換効率を高めることができる。ひいては、絶縁油Mの流量に応じた十分に高い冷却効率が得られるようになる。
【0021】
この結果、本実施形態の変圧器1によれば、車両に平置き型に配置されるものにあって、冷却媒体としての絶縁油Mの流れを効率化することを可能とし、巻線9の冷却効果を高めることができるという優れた効果を得ることができる。またこのように、冷却効果を向上させたことに伴い、巻線9内外の絶縁油Mの流路の小型化、ひいてはタンク2の小型化或いは薄型化を図ることも期待できる。
【0022】
特に本実施形態では、流れ変更構造を、メインギャップ12の径方向中間部に配置されて絶縁油Mの流路を内外周に分けるスペーサ16から構成するようにした。これにより、メインギャップ12にスペーサ16を設けるだけの比較的簡単で安価な構成で済ませることができる。
【0023】
(2)第2の実施形態
図4は、第2の実施形態に係る巻線21の要部構成を示しており、上記第1の実施形態と異なるところは次の点にある。即ち、上記第1の実施形態では、メインギャップ12に流入する絶縁油Mの流れの障害となって流通状態を変化させるための流れ変更構造として、メインギャップ12の径方向中間部に絶縁油Mの流路を内外周に分けるスペーサ16を配置するようにした。
【0024】
これに対し、この第2の実施形態では、スペーサ16を設けることに代えて、流れ変更構造として、巻線21の軸方向端部のうち絶縁油Mの入口側端部(図で下端部)の、メインギャップ12の径方向中間部に配置された閉塞板22と、その閉塞板22から軸方向に延びて該メインギャップ12の径方向中間部に配置されて絶縁油Mの流路を内外周に分ける仕切板23、23とを含んでいる。前記閉塞板22は、絶縁材料例えば木材やプラスチック、絶縁紙等から、細幅のリング板状に構成され、仕切板23、23は、その閉塞板22の内周、外周に対応した直径の、薄肉の円筒状に構成されている。
【0025】
このような第2の実施形態によっても、上記第1の実施形態と同様に、閉塞板22及び仕切板23、23により、絶縁油Mがメインギャップ12の中央付近を流れることが阻害され、メインギャップ12を流通する絶縁油Mは、閉塞板22及び仕切板23、23によって狭められた内外周部分を流れるようになる。これにより、メインギャップ12の中央付近を、絶縁油Mが巻線21との熱交換にさほど寄与せずに流れることがなくなり、絶縁油Mよる熱交換効率を高めることができる。ひいては、絶縁油Mの流量に応じた十分に高い冷却効率が得られるようになる。
【0026】
この結果、車両に平置き型に配置されるものにあって、冷却媒体としての絶縁油Mの流れを効率化することを可能とし、巻線21の冷却効果を高めることができるという優れた効果を得ることができる。尚、スペーサ16を設ける場合と同様に、閉塞板22及び仕切板23、23を設けるだけの比較的簡単な構成で済ませることができ、また、スペーサ16と比べて、中空状として材料を省略したことによる軽量化なども図ることができる。
【0027】
(3)第3の実施形態
図4及び図5は、第3の実施形態に係る巻線31の要部構成を示しており、上記第1、第2の実施形態とは、以下の点が異なっている。即ち、この第3の実施形態においても、巻線31は、内周側に配置された内層コイル10と、外周側に配置された外層コイル11との間に、円周方向に複数個のダクトピース32を間欠的に配置することにより、冷却媒体としての絶縁油Mが流れるメインギャップ12が設けられる。内層コイル10及び外層コイル11には、層間流路14及び15が夫々設けられている。
【0028】
そして、メインギャップ12に流入する冷却媒体としての絶縁油Mの流れの障害となって流通状態を変化させるための流れ変更構造が設けられるのであるが、本実施形態では、流れ変更構造として、メインギャップ12内の絶縁油Mの流路を、蛇行状の入り組んだ形態とするための、メインギャップ12内に複数枚の仕切板33、34を設けて構成されている。この場合、仕切板33、34は、隣合ったダクトピース32間に掛け渡されて設けられ、複数枚が軸方向に所定間隔で並ぶように交互に設けられている。
【0029】
このとき、仕切板33は、メインギャップ12の内周側を開口させる形態で設けられ、仕切板34は、メインギャップ12の外周側を開口させる形態で設けられている。これにて、図4図5に白抜きの矢印で示すように、仕切板33、34によって、メイギャップ12内部が区切られ、巻線31の絶縁油Mの入口側端部(図で下端部)から出口側(図で上方)に向けて、径方向に交互に折返されるような蛇行状の流路が形成される。
【0030】
上記構成によれば、流れ変更構造としての仕切板33、34を設けたことにより、メインギャップ12における絶縁油Mの流れの障害となって流通状態を変化させることができる。具体的には、メインギャップ12内の絶縁油Mの流路が、複数枚の仕切板33、34により蛇行状の入り組んだ形態とされるので、メインギャップ12における冷却媒体の圧力損失が大きくなる。そのため、メインギャップ12における絶縁油Mの流速が低下して、別の流路、つまり層間流路14、15等に多くの絶縁油Mを流すことができる。
【0031】
従って、この第3の実施形態によれば、メインギャップ12と各層間流路14、15とにおける絶縁油Mの流れ度合い、ひいては冷却性能のバランスが調整されるようになる。この結果、車両に平置き型に配置されるものにあって、冷却媒体としての絶縁油Mの流れを効率化することを可能とし、巻線31の冷却効果を高めることができるという優れた効果を得ることができる。
【0032】
(4)第4の実施形態
図6図8は、第4の実施形態に係る巻線41の要部構成を示しており、上記第3の実施形態と異なる点について述べる。即ち、この第4の実施形態においても、巻線41は、内周側に配置された内層コイル10と、外周側に配置された外層コイル11との間に、円周方向に複数個のダクトピース42を間欠的に配置することにより、冷却媒体としての絶縁油Mが流れるメインギャップ12が設けられる。内層コイル10及び外層コイル11には、層間流路14及び15が夫々設けられている。
【0033】
そして、メインギャップ12内には、絶縁油Mの流れの障害となって流通状態を変化させるための流れ変更構造として、複数枚の仕切板43、44を設けることにより、絶縁油Mの流路が蛇行状の入り組んだ形態とされる。この場合、図7及び図8に示すように、仕切板43、44は、隣合ったダクトピース42間に掛け渡されて設けられ、複数枚が軸方向に所定間隔で並ぶように交互に設けられている。
【0034】
このとき、仕切板43は、メインギャップ12の円周方向一端側(図7で左側)を開口させる形態で設けられ、仕切板44は、メインギャップ12の円周方向の他端側(図7で右側)を開口させる形態で設けられている。これにて、図7図8に白抜きの矢印で示すように、仕切板43、44によって、メイギャップ12内部が区切られ、巻線41の絶縁油Mの入口側端部(図で下端部)から出口側(図で上方)に向けて、隣合ったダクトピース42間で円周方向に交互に折返されるような蛇行状の流路が形成される。
【0035】
このような第4の実施形態によれば、上記第3の実施形態と同様に、メインギャップ12内の絶縁油Mの流路が、複数枚の仕切板43、44により蛇行状の入り組んだ形態とされるので、メインギャップ12における冷却媒体の圧力損失が大きくなる。そのため、メインギャップ12における絶縁油Mの流速が低下して、別の流路、つまり層間流路14、15等に多くの絶縁油Mを流すことができる。
【0036】
従って、メインギャップ12と各層間流路14、15とにおける絶縁油Mの流れ度合い、ひいては冷却性能のバランスが調整されるようになる。この結果、車両に平置き型に配置されるものにあって、冷却媒体としての絶縁油Mの流れを効率化することを可能とし、巻線41の冷却効果を高めることができるという優れた効果を得ることができる。
【0037】
(5)第5の実施形態、その他の実施形態
図9及び図10は、第5の実施形態に係る巻線51を示すものであり、以下、上記各実施形態と異なる点について述べる。即ち、この実施形態では、巻線51は、内周側に配置された内層コイル10と、外周側に配置された外層コイル11との間に、円周方向に複数個のダクトピース52を間欠的に配置することにより、冷却媒体としての絶縁油Mが流れるメインギャップ12が設けられる。内層コイル10及び外層コイル11には、層間流路14及び15が夫々設けられている。
【0038】
そして、本実施形態では、巻線51の軸方向端部のうち冷却媒体としての絶縁油Mの入口側端部(図9で下端部)に位置して閉塞板53を設けることにより、流れ変更構造を構成している。この閉塞板53は、例えばプラスチック等の絶縁材料から、巻線51の内径及び外径に対応したリング板状をなすと共に、その板面には、メインギャップ12及び層間流路14、15に対する冷却媒体としての絶縁油Mの流量バランスを調整するための複数個の入口開口部53a~53dが形成されている。
【0039】
具体的には、閉塞板53には、内周側から順に、層間流路14に対応した第1の入口開口部53aが設けられ、メインギャップ12の内周部に対応した第2の入口開口部53bが設けられ、メインギャップ12の外周部に対応した第3の入口開口部53cが設けられ、層間流路15に対応した第4の入口開口部53dが設けられている。そのうち、第1の入口開口部53aは、径方向の開口寸法が比較的小さく、つまり幅狭に形成され、第4の入口開口部53dは、径方向の開口寸法が比較的大きく、つまり幅広に形成されている。第2及び第3の入口開口部53b及び53cについては、第4の入口開口部53dと同様の幅寸法で形成されている。
【0040】
このとき、例えば、使用時の巻線51の各部における温度上昇の度合の分布を、予め、実験的或いは理論的に求めておき、それに応じて、より高温となる部分については、開口部の大きさを大きくして絶縁油Mをより多く流し、冷却能力を高めるというように、入口開口部53a~53dの開口度合いを予め設定することができる。これにより、入口開口部53a~53dの開口度合いによって、メインギャップ12と、各層間流路14、15に対して流れ込む絶縁油Mの流量バランスを調整することが可能となる。
【0041】
従って、この第5の実施形態によれば、流れ変更構造を、巻線51の入口側端部に位置して閉塞板53を設け、該閉塞板53に、メインギャップ12及び層間流路14、15に対する絶縁油Mの流量バランスを調整するための入口開口部53a~53dを形成することにより構成した。この結果、メインギャップ12と各層間流路14、15とにおける冷却性能のバランスが調整されるようになり、ひいては、絶縁油Mの流れを効率化することを可能とし、巻線51の冷却効果を高めることができる。
【0042】
尚、上記各実施形態では、本発明を車載用変圧器に適用したが、それ以外にも、リアクトルなど車載用の静止誘導機器全般に適用することができる。また、上記各実施形態では、冷却媒体として、絶縁油Mを例にあげたが、液体シリコーン等であっても良く、絶縁ガス等であっても良い。層間流路については、内層コイル、外層コイルの夫々について複数設けられていても良い。更には、複数の実施形態を流れ変更構造を組合せた形態で実施することもできる。その他、冷却器の構成や、変圧器のタンクの形状、変圧器本体の構成などの具体的な構成としても、様々な変更が可能である。
【0043】
以上のように、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
図面中、1は車載用変圧器(車載用静止誘導機器)、2はタンク、3は変圧器本体(誘導機器本体)、8は鉄心、8aは脚部、9、21、31、41、51は巻線、10は内層コイル、11は外層コイル、12はメインギャップ、13、32、42、52はダクトピース、14、15は層間流路、16はスペーサ、22は閉塞板、23は仕切板、33、34は仕切板、43、44は仕切板、53は閉塞板、53a~53dは入口開口部、Mは絶縁油(冷却媒体)を示す。
図1
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図10