(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083869
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】アフタクーラを搭載した圧縮機におけるアフタクーラドレンの自動凍結防止構造
(51)【国際特許分類】
F04B 49/10 20060101AFI20240617BHJP
【FI】
F04B49/10 331Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197931
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000241795
【氏名又は名称】北越工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】弁理士法人小倉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 桂介
【テーマコード(参考)】
3H145
【Fターム(参考)】
3H145BA47
3H145CA19
3H145CA21
3H145DA19
3H145EA16
3H145EA26
3H145EA42
(57)【要約】 (修正有)
【課題】アフタクーラを搭載した圧縮機において、比較的簡単な構成により自動でドレン回路を適切かつ効率的に加温してドレンの凍結防止を可能とするアフタクーラドレンの自動凍結防止構造を提供する。
【解決手段】アフタクーラドレンの自動凍結防止構造1は、圧縮機本体と、アフタクーラ20と、ドレンセパレータ30と、ドレン回路50とを備える圧縮機において、一端61を前記アフタクーラの一次側に、他端62を前記ドレン回路に連通されたバイパス回路60と、前記バイパス回路を開閉する電磁弁64と、前記ドレン回路内の温度を検出する温度センサ72と、前記温度センサの検出した温度が予め設定した設定温度以下になったときに前記電磁弁を開き、前記温度センサの検出した温度が前記設定温度を上回ったときに前記電磁弁を閉じる制御部70を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機本体から吐出された圧縮気体を導入し,該導入された圧縮気体を冷却して圧縮気体中の水蒸気を凝縮させてドレンを発生させるアフタクーラと,該アフタクーラで発生したドレンを分離し,捕集するドレンセパレータと,一端が前記ドレンセパレータのドレン捕集部に連通され,絞りを介して他端が大気に開放されたドレン回路とを備え,前記ドレンセパレータによりドレンが分離された圧縮気体を消費側に供給すると共に,前記ドレンセパレータにより圧縮気体から分離され前記ドレン捕集部に捕集されたドレンを前記ドレンセパレータ内の一部の圧縮気体との混合流体として前記ドレン回路を介して機外に排出する圧縮機において,
一端を前記アフタクーラの一次側に,他端を前記絞りの一次側の前記ドレン回路に連通されたバイパス回路と,
前記バイパス回路を開閉する電磁弁と,
前記ドレン回路内の温度を検出する温度センサと,
該温度センサの検出した温度が予め設定した設定温度以下になったときに前記電磁弁を開き,前記温度センサの検出した温度が前記設定温度を上回ったときに前記電磁弁を閉じる制御部を備えることを特徴とするアフタクーラドレンの自動凍結防止構造。
【請求項2】
前記温度センサを,前記絞りの二次側の前記ドレン回路に設けたことを特徴とする請求項1記載のアフタクーラドレンの自動凍結防止構造。
【請求項3】
前記バイパス回路内の温度を検出する第二の温度センサが,前記電磁弁の一次側のバイパス回路に追加して設けられ,
前記制御部は,前記第二の温度センサの検出した温度が予め設定した第二の設定温度以下になったときに前記電磁弁を閉じ,前記第二の温度センサの検出した温度が前記第二の設定温度を上回ったときに前記電磁弁を開くよう制御することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のアフタクーラドレンの自動凍結防止構造。
【請求項4】
前記電磁弁に代えて開度調整可能な電動弁を備え,前記制御部は,前記検出した温度が前記設定温度以下になったときに前記電動弁の開度を大きくし,前記検出した温度が前記設定温度を上回ったときに前記電動弁の開度を小さく又は閉じることを特徴とする請求項1~3いずれか1項記載のアフタクーラドレンの自動凍結防止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,アフタクーラを備えた圧縮機において,アフタクーラにより発生したドレン(アフタクーラドレン)を機外へ排出するドレン回路内で前記ドレンが凍結することを自動的に防止できるアフタクーラドレンの自動凍結防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機は,通常,圧縮機本体で被圧縮気体を圧縮して得た圧縮気体をアフタクーラに導入し,前記アフタクーラにおいて圧縮気体を冷却して圧縮気体中の水蒸気を凝縮させてドレンを発生させ,このドレンをドレンセパレータで分離・捕集した後,ドレン回路を介して機外に排出している。
【0003】
しかし,寒冷時に,前記ドレン回路内にてドレンが凍結し,これにより生じた氷がドレン回路内や回路出口を塞いでしまい,その結果,ドレンの排出ができず,あるいはドレンが圧縮気体と共に消費側に供給されてしまう問題があった。
【0004】
そこで,上述のドレン回路内にてドレンが凍結することを防止するドレン凍結防止構造を備えた圧縮機が提案されている。
【0005】
例えば,
図4に示すように,アフタクーラ120を備えた圧縮機100において,アフタクーラ120にて生じたドレンを分離・捕集した後,機外へ排出するドレン回路150にてドレンが凍結することを防止するドレン凍結防止構造がある(特許文献1)。
【0006】
なお,前記圧縮機100は,圧縮作用空間の潤滑,密封及び冷却に冷却油を使用する,所謂「油冷式」の圧縮機本体(図示せず)を備えると共に,前記圧縮機本体より冷却油と共に吐出された圧縮気体を導入しこれを冷却油と圧縮気体とに分離するセパレータレシーバタンク(図示せず)を備えている。
【0007】
図4は,その入口を前記セパレータレシーバタンクに連通されたオイルセパレータ110から空気作業機等に圧縮気体を供給するサービスバルブ140迄の回路構成を示したものであり,オイルセパレータ110の出口112には,アフタクーラ120の入口121が連通され,このアフタクーラ120の出口122には,ドレンセパレータ130の入口131が連通されてアフタクーラ120を通過した圧縮気体がドレンセパレータ130に導入されてアフタクーラ120による冷却により凝縮して発生したドレンがこのドレンセパレータ130により分離・捕集されるよう構成されている。
【0008】
そして,ドレンセパレータ130の出口132はサービスバルブ140に連通されており,ドレンセパレータ130で水蒸気の除去された乾燥した圧縮気体をサービスバルブ140より供給可能としている。
【0009】
前述のドレンセパレータ130は,その下部にドレン捕集部たる室133が形成されており,この室133内に圧縮気体より分離されたドレンが捕集されるよう構成されている。そして,前記室133内に捕集されたドレンは,ドレンセパレータ130内の一部の圧縮気体と共に,ドレンセパレータ130の底部に一端151を連結されたドレン回路150を介して排出される。
【0010】
また,前記ドレン回路150の他端152には消音器154が取り付けられ,この消音器154を介してドレン回路150に導入されたドレンと圧縮気体との混合流体が排出される。
【0011】
前記ドレン回路150は,その回路中に絞り153が設けられ,このドレン回路150を介してドレンと共に機外に排出される圧縮気体の流量が制御されている。
【0012】
また,一端161がオイルセパレータ110に連通され,他端162がドレン回路150に連通されたバイパス回路160が設けられ,このバイパス回路160によりアフタクーラ120を通過する前のオイルセパレータ110内の温かい圧縮気体をドレン回路150に導入可能となっている。
【0013】
以上のように構成されたドレン凍結防止構造によれば,ドレン回路150を介して機外に排出されるドレンと圧縮気体の混合流体に,アフタクーラ120に導入される前の温かい圧縮気体が前記バイパス回路160を介して合流されるので,アフタクーラ120で冷却された前記混合流体が温められて,ドレン回路150内や消音器154内でのドレン凍結を防止できる。
【0014】
また,他の従来例としては,ドレンを排出するドレン回路を加熱する発熱体211を有するドレン凍結防止構造を備えた圧縮機200が提案されている(特許文献2)。
【0015】
前記圧縮機200は,
図5に示すように,吸込みフィルター203,吸込みパイプ204,吸込絞り弁202を介して管路220を通過して圧縮機本体201に吸込まれた空気を,前記圧縮機本体201内にて圧縮して吐出空気経路205に送り出した後,アフタクーラ206により冷却し,このときアフタクーラ206内で生じたドレンをドレンセパレータ207にて分離した後,前記圧縮気体は供給側へ送り,前記ドレンはドレン回路213を経て排出させるものである。
【0016】
なお,前記ドレン回路213は,ドレン自動排出弁208を有する経路と,ドレン自動排出弁208が故障した場合に備えてドレン手動排出弁209を有する経路を有している。
【0017】
そして,圧縮機200は,ドレン回路213とドレン自動排出弁208とドレン手動排出弁209を覆う発熱体211及び断熱材212と,ドレン自動排出弁208の温度を検出する温度センサ210と,検出した温度に基づいて前記発熱体211による加熱及び停止を制御する制御基板214を備えており,前記ドレン回路213やドレン自動排出弁208内のドレン凍結を自動で防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2003-176784号公報
【特許文献2】特開2014-15953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上掲の特許文献1に開示の圧縮機100は,常に,オイルセパレータ110内の温かい圧縮気体が前記バイパス回路160を介してドレン回路150に導入されるため,ドレン回路150内が氷点下を上回っている,すなわち,加温が不要なときにおいてもドレン回路150が加温されていることとなり,この間は加温に使用している圧縮気体が無駄に消費されることになるため,圧縮機の負荷運転時には供給圧縮気体の減少,さらに,無負荷運転時には燃費悪化が懸念される。
【0020】
なお,特許文献1に開示の圧縮機100は,
図4に示すように,バイパス回路160に開閉弁164を設けても良く,この場合,圧縮機100をドレン凍結の恐れがない環境において使用する場合には前記開閉弁164を閉じてバイパス回路160を閉塞し,ドレン回路150に対する加温用の圧縮流体の導入を行わず,消費側に供給される圧縮気体量の減少を防止することができる。
【0021】
しかしながら,作業者が前記開閉弁164を都度操作することは煩雑な作業を強いられ,開閉弁164の開放を失念したときのドレンの凍結及びドレン回路150の破損が懸念される。
【0022】
また,上掲の特許文献2に開示の圧縮機200では,
図5に示すように,温度センサ210が発熱体211に覆われるように設置される構造であるため,発熱体211が温度センサ210自体を加熱することになる。このため,発熱体211が作動すると温度センサ210の検出温度がすぐに上昇してしまい,ドレン回路213が十分に温まる前に前記検出温度に基づき前記制御基板214が前記発熱体211による加熱を停止してしまい,ドレン凍結を適切に防止することができない問題があった。
【0023】
また,特許文献2に開示の圧縮機200のようにドレンの凍結防止のために発熱体211を設けると,部品点数が増加して製造・組立が煩雑となり,製造コストが嵩む上,前記温度センサ210による温度検出を正確にするために装置構成が複雑となる問題があった。
【0024】
そこで,本発明は,上述の従来技術における欠点を解消するために開発されたもので,アフタクーラを搭載した圧縮機において,比較的簡単な構成により自動でドレン回路を適切かつ効率的に加温して,アフタクーラドレンの凍結防止を可能とするアフタクーラドレンの自動凍結防止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするためのものであり,言うまでもなく,本発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0026】
上記目的を達成するために,本発明のアフタクーラドレンの自動凍結防止構造1は,圧縮機本体から吐出された圧縮気体を導入し,該導入された圧縮気体を冷却して圧縮気体中の水蒸気を凝縮させてドレンを発生させるアフタクーラ20と,該アフタクーラ20で発生したドレンを分離し,捕集するドレンセパレータ30と,一端51が前記ドレンセパレータ30のドレン捕集部33に連通され,絞り53を介して他端52が大気に開放されたドレン回路50とを備え,前記ドレンセパレータ30によりドレンが分離された圧縮気体を消費側に供給すると共に,前記ドレンセパレータ30により圧縮気体から分離され前記ドレン捕集部33に捕集されたドレンを前記ドレンセパレータ30内の一部の圧縮気体との混合流体として前記ドレン回路50を介して機外に排出する圧縮機において,
一端61を前記アフタクーラ20の一次側に,他端62を前記絞り53の一次側の前記ドレン回路50に連通されたバイパス回路60と,
前記バイパス回路60を開閉する電磁弁64と,
前記ドレン回路50内の温度を検出する温度センサ72と,
この温度センサ72の検出した温度が予め設定した設定温度以下になったときに前記電磁弁64を開き,前記温度センサ72の検出した温度が前記設定温度を上回ったときに前記電磁弁64を閉じるように制御信号を発する制御部70を備えることを特徴とする(請求項1:
図1~3参照)。
【0027】
なお,前記温度センサ72は,好適には前記絞り53の二次側の前記ドレン回路50に設置される(請求項2:
図1~3参照)。
【0028】
また,前記バイパス回路60内の温度を検出する第二の温度センサ73が,前記電磁弁64の一次側のバイパス回路60に追加して設けられ,前記制御部70は,前記第二の温度センサ73の検出した温度が予め設定した第二の設定温度以下になったときに前記電磁弁64を閉じ,前記第二の温度センサ73の検出した温度が前記第二の設定温度を上回ったときに前記電磁弁64を開くよう制御することができる(請求項3:
図3参照)。
【0029】
また,本発明のアフタクーラドレンの自動凍結防止構造1は,前記電磁弁64に代えて,電気的に弁開度を調整可能な電動弁65を備え,前記制御部70は,前記検出した温度が前記設定温度以下になったときに前記電動弁65の開度を大きくし,前記検出した温度が前記設定温度を上回ったときに前記電動弁65の開度を小さく又は閉じるようにしても良い(請求項4:
図2参照)。
【発明の効果】
【0030】
以上で説明した本発明のアフタクーラドレンの自動凍結防止構造1によれば,温度センサ72によりドレン回路50内の温度が監視され,ドレン回路50内がドレン凍結温度に達する前に前記設定温度以下となったとき,前記電磁弁64が開き,バイパス回路60を通じてアフタクーラ20の一次側の高温の圧縮気体がドレン回路50に導入され,ドレン回路50を加温することができる。
【0031】
一方,温度センサ72による検出温度が前記設定温度を上回る場合,すなわちドレン凍結が懸念されずドレン回路50の加温が必要でない場合は,前記電磁弁64により前記バイパス回路60が閉じられドレン回路50に加温用の圧縮気体が導入されなくなるため,圧縮機の負荷運転時に消費側に供給される圧縮気体量の減少を抑えることができると共に,無負荷運転時においては前記加温用に圧縮気体を生成する必要がなくなり圧縮機本体の負荷が軽減されるため,燃費の向上が期待できる。
【0032】
また,本発明のアフタクーラドレンの自動凍結防止構造1は,前記温度センサ72及び前記制御部70により自動で前記電磁弁64を開閉できるため,作業者による手動操作の手間が無くなると共に,開き忘れによるドレン凍結及びドレン回路の破損リスクが無くなる。
【0033】
また,圧縮気体は前記絞り53を通過する際に,断熱膨張により温度が低下するが,本発明においては,前記絞り53の一次側にバイパス回路60が連通されているため,温度低下の恐れがある前記絞り53を通過する前に加温できると共に,前記絞り53により前記バイパス60から導入された加温用の圧縮気体の流量の制御も可能とする。
【0034】
また,温度センサ72を前記絞り53の二次側のドレン回路50に設けることで,ドレン回路50内でより凍結リスクの高い場所の温度を監視できる。また,温度センサ72を前記絞り53の二次側に設けることで,温度センサ72は,前記絞り53の一次側のドレン回路50に連通された前記バイパス回路60の他端(圧縮気体の導入部)62から離れた位置に配置されることになる。これにより,ドレン回路50内が前記設定温度を上回る前に,温度センサ72がドレン回路50内に導入されたばかりの高温の圧縮気体の温度自体を検出して,前記制御部70が電磁弁64を閉じる恐れをなくすことができ,従って,ドレン回路50を前記設定温度に達するまで十分に加温することができる。
【0035】
また,前記第二の温度センサ73を追加して設け,バイパス回路60内の圧縮気体の温度を監視し,加温用圧縮気体の温度が前記第二の設定温度以下の場合には,前記電磁弁64を閉じる制御を備えることで,例えば寒冷地での始動時であってアフタクーラ20の一次側がドレン凍結温度以下又はこれに近い温度の場合において,前記電磁弁64を開いて圧縮空気をドレン回路50に導入しても十分な加温効果を得られなくなることを防止すると共に,低温で比較的水分の多い圧縮気体がバイパス回路60を介してドレン回路50に流入されることによるドレンの凍結リスクを抑えることができる。
【0036】
また,前記電磁弁64の代わりに電気的に弁開度を調整可能な電動弁65を使用する構成では,弁開度を無段階に調整できるため,加温に消費される圧縮気体量を必要最低限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の第1実施形態におけるアフタクーラドレンの自動凍結防止構造1を説明する図。
【
図2】第2実施形態におけるアフタクーラドレンの自動凍結防止構造1を説明する図。
【
図3】第3実施形態におけるアフタクーラドレンの自動凍結防止構造1を説明する図。
【
図4】従来の圧縮機100が備えるドレンの凍結防止構造を示す図。
【
図5】他の従来の圧縮機200が備えるドレンの凍結防止構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
つぎに,本発明の実施形態について添付図面を参照しながら以下説明する。なお,以下の実施形態にあっては,油冷式の圧縮機本体を使用した圧縮機に適用する例について説明するが,本発明が適用される圧縮機は,油冷式の圧縮機本体を使用するものの他,所謂「オイルフリースクリュ圧縮機」等の圧縮作用空間の密封・冷却に冷却油を使用しない圧縮機本体を使用したものにも適用することができ,また,その他アフタクーラ20を備える圧縮機であれば,例えばエンジン駆動型やモータ駆動型といった駆動方式等についても特に限定されるものでなく,各種の圧縮機に適用することができる。
【0039】
また,冷却油を使用しない型式の圧縮機に使用する場合にあっては,後述するオイルセパレータ10を介せずにレシーバタンク内の圧縮気体を直接アフタクーラ20に導入したり,圧縮機本体から吐出された圧縮気体を直接アフタクーラ20に導入したりしても良い。また,前述の油冷式の圧縮機においても,セパレータレシーバタンクにおける冷却油の分離性能,消費側で要求される圧縮気体中の油分許容量等によっては,セパレータレシーバタンク内の圧縮気体を直接アフタクーラ20に導入する構成としても良い。
【0040】
なお,本発明が適用される圧縮機において使用されるアフタクーラ20は,圧縮気体を冷却可能なものであればその型式を問わず,水冷式,空冷式,冷凍式の既知の各種のアフタクーラ20を使用することができる。
【0041】
以下,本発明の第1実施形態について説明する。
【0042】
図1は,油冷式の圧縮機本体(図示せず)と,該圧縮機本体より冷却油と共に吐出された圧縮気体を導入しこれを冷却油と圧縮気体とに分離するセパレータレシーバタンク(図示せず)とを備えた圧縮機におけるアフタクーラドレンの自動凍結防止構造1を説明するものであって,その入口を前記セパレータレシーバタンクに連通されたオイルセパレータ10から,空気作業機等に圧縮気体を供給するサービスバルブ40迄の回路構成を示している。
【0043】
図1に示すように,前記オイルセパレータ10の出口12には,アフタクーラ20の入口21が連通され,このアフタクーラ20の出口22には,ドレンセパレータ30の入口31が連通されてアフタクーラ20を通過した圧縮気体がドレンセパレータ30に導入されてアフタクーラ20による冷却により凝縮して発生したドレンがこのドレンセパレータ30により分離・捕集されるよう構成されている。
【0044】
そして,ドレンセパレータ30の出口32はサービスバルブ40に連通されており,ドレンセパレータ30で水蒸気の除去された乾燥した圧縮気体をサービスバルブ40より供給可能としている。
【0045】
前述のドレンセパレータ30は,その下部にドレン捕集部たる室(ドレン捕集部)33が形成されており,この室33内に圧縮気体より分離されたドレンが捕集されるよう構成されている。そして,ドレンセパレータ30の室33内に捕集されたドレンは,ドレンセパレータ30内の一部の圧縮気体と共に,ドレンセパレータ30の底部に一端51を連結されたドレン回路50を介して排出される。
【0046】
前記ドレン回路50の他端52には消音器54が取り付けられ,この消音器54を介してドレン回路50に導入されたドレンと圧縮気体との混合流体が排出されるよう構成されている。なお,前記ドレン回路50は,その回路中に絞り53が設けられ,ドレン回路50を介してドレンと共に機外に排出される圧縮気体の流量が制御されている。
【0047】
また,一端61が前記オイルセパレータ10に連通され,他端62が前記絞り53の一次側の前記ドレン回路50に連通されたバイパス回路60が設けられ,該バイパス回路60により,オイルセパレータ10内の圧縮気体すなわちアフタクーラ20を通過する前の高温の圧縮気体をドレン回路50に導入可能となるよう構成されている。
【0048】
なお,
図1に示す実施形態にあっては,前記バイパス回路60の一端61をオイルセパレータ10の出口に連通しているが,
図1の構成においてこのバイパス回路60は,オイルセパレータ10を通過した後,アフタクーラ20を通過する前(アフタクーラ20の出口22に至る前)の圧縮気体を導入可能とするものであれば,オイルセパレータ10とアフタクーラ20間の回路90の途中やアフタクーラ20の途中の位置に前記一端61を連通するものであっても良い。
【0049】
また,前記バイパス回路60には電磁弁64が設けられており,該電磁弁64の開閉によりバイパス回路60を開閉することができるよう構成されている。
【0050】
また,前記絞り53の二次側のドレン回路50には温度センサ72が設けられ,ドレン回路50内の温度を常時検出することができるよう構成されている。
【0051】
なお,ドレン回路50においては消音器54(ドレン回路50の他端52)側に近くなるほど回路内の温度が低下するものであるところ,本実施形態のように前記温度センサ72が前記絞り53の二次側に設けられていることで,ドレン回路50内でより凍結リスクの高い場所の温度を監視できるようになっている。また,温度センサ72が前記絞り53の二次側に設けられていることで,温度センサ72は,前記絞り53の一次側のドレン回路50に連通されたバイパス回路60の他端(圧縮気体の導入部)62から離れた位置に配置されることになる。これにより,ドレン回路50内が後述する設定温度(凍結リスクが無い温度)を上回る前に,温度センサ72がドレン回路50内に導入されたばかりの高温の圧縮気体の温度自体を検出し後述する制御部70が前記電磁弁64を閉じてしまう恐れをなくすことができ,従って,ドレン回路50が設定温度に達するまで十分に加温することができる。
【0052】
前記電磁弁64及び前記温度センサ72と制御信号や情報のやりとりを行うことが可能に電気的に接続され,前記温度センサ72からの例えば信号に応じ,前記電磁弁64に開閉制御信号を送信して電磁弁64の開閉を制御する制御部70が設けられている。なお,前記制御部70は,例えばMCU(マイクロコントローラ・ユニット)等を有する制御基板から構成されるものであるが,これに限定されるものではない。
【0053】
前記制御部70は,圧縮機の運転時において,温度センサ72により常時検出される温度を常に監視し,温度センサ72の検出温度つまりドレン回路50内の温度が予め設定した設定温度以下の時に前記電磁弁64を開け,前記設定温度を上回った時に前記電磁弁64を閉める制御を行う。
【0054】
なお,前記設定温度は,ドレン凍結を防ぐ温度であれば良く,また,温度センサの設置位置に応じて適宜変更しても良く,例えば,上述したドレン回路50においては消音器54(ドレン回路50の他端52)側に近くなるほど回路内の温度が低下することを考慮して,温度センサ72を消音器54の近くに設置する場合は0℃に設定し,温度センサ72を消音器54から離れて設置する場合は1~2℃に設定することができる。
【0055】
以上のように構成されたアフタクーラドレンの自動凍結防止構造1によれば,温度センサ72の検出温度が前記設定温度以下の時は,制御部70により自動で電磁弁64が開き,ドレン回路50を介して機外に排出されるドレンと圧縮気体の混合流体に,アフタクーラ20に導入される前の温かい圧縮気体がバイパス回路60を介して合流されることで,アフタクーラ20で冷却された前記混合流体が温められてドレン回路50内においてドレンが凍結せず,また,圧縮気体が消音器54の排出口で急激に膨張しても,消音器が氷点下まで冷却されることがなくなり消音器54内においてもドレンが凍結することがない。
【0056】
一方,温度センサ72の検出温度が前記設定温度を上回った時は,制御部70により自動で電磁弁64が閉じるため,オイルセパレータ10内の圧縮気体がバイパス回路60を介してドレン回路50に導入されることがない。
【0057】
上述のように,アフタクーラドレンの自動凍結防止構造1によれば,温度センサ72による検出温度に基づいて自動で電磁弁64が開閉するため,作業者がバイパス回路60のバルブの開閉を行う必要がなくなり,例えば,寒冷時にバルブの開き忘れによるドレン凍結のリスクがなくなる。
【0058】
さらに,オイルセパレータ10内の圧縮気体は,ドレン回路50の加温必要時にのみバイパス回路60を介してドレン回路50に導入されるため,圧縮機の負荷運転時には消費側に供給される圧縮気体量の減少が抑えられ,また,無負荷運転時には加温に消費される圧縮気体量の減少により圧縮機本体の負荷が軽減され,燃費改善が期待できる。
【0059】
次に,本発明の第2実施形態について説明する。
【0060】
なお,以下においては,本実施形態について,上述の第1実施形態と異なる点を中心に説明し,同様の箇所については説明を省略する。また,第1実施形態と対応する箇所には,同一の符号を付して説明する。
【0061】
本実施形態では,
図2に示すように,前記電磁弁64の代わりに弁開度を調整自在な電動弁65が設けられている。なお,前記電動弁65は,前記制御部70と制御信号や情報のやりとりを行うことが可能となるように電気的に接続されている。
【0062】
前記電動弁65は,電気的に弁開度を調整可能なものであって,例えば,弁体を駆動するアクチュエータとしてステッピングモータを備えたものであり,前記制御部70の指示(例えば信号)に応じて前記ステッピングモータが弁体の動きを制御して,弁体の開度を自由に調整できるように構成されている。
【0063】
第1実施形態のように電磁弁64を用いた場合は,弁開度が全開又は全閉しかないため,加温時には常時一定量の圧縮気体が消費されるのに対して,電動弁65を用いた本実施形態では弁開度を無段階に調整できるため,加温に消費される圧縮気体量を必要最低限に抑えることができる。
【0064】
さらに,本発明の第3実施形態について説明する。
【0065】
以下,本実施形態について,上述の第1実施形態と異なる点を中心に説明し,同様の箇所については説明を省略する。また,第1実施形態と対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0066】
本実施形態では,
図3に示すように,前記電磁弁64の一次側のバイパス回路60に第二の温度センサ73が追加して設けられ,前記電磁弁64の一次側のバイパス回路60内の温度を常時検出することができるよう構成されている。
【0067】
前記第二の温度センサ73は,前記制御部70と制御信号や情報のやりとりを行うよう電気的に接続されている。
【0068】
前記制御部70は,圧縮機の運転時において,第一実施形態と同様に温度センサ72の検出温度に基づき電磁弁64を開閉制御しつつ,第二の温度センサ73により常時検出される温度を常に監視し,第二の温度センサ73の検出温度すなわちバイパス回路60内の圧縮気体の温度が予め設定した第二の設定温度以下の時に電磁弁64を閉め,第二の温度センサ73の検出温度が前記第二の設定温度を上回った時に電磁弁64を開ける制御を行う。
【0069】
例えば寒冷地において,圧縮機の始動時にオイルセパレータ10内(アフタクーラ20の一次側)がドレン凍結温度以下又はこれに近い温度の場合には,前記電磁弁64を開いてオイルセパレータ10内の低温の圧縮気体をドレン回路50に導入しても十分な加温効果を得られず,また,このような状態でオイルセパレータ10内の低温で比較的水分の多い圧縮気体をドレン回路50に流入させるとドレン凍結リスクを高め得る恐れがある。これに対し,上述の本実施形態の構成により,前記第二の温度センサ73によってバイパス回路60内の圧縮気体の温度を監視し,該圧縮気体の温度が前記第二の設定温度以下の場合は電磁弁64を開かないよう制御することで,前述のドレン凍結リスクを抑えることができる。
【0070】
なお,前記第二の設定温度は,ドレン凍結を防ぐ温度であれば適宜温度に設定でき,例えば,前記第二の設定温度を0℃に設定しても良い。
【0071】
また,本実施形態における前記制御部70による前記電磁弁64の開閉制御について,前記制御部70は,前記第二の温度センサ73の検出温度が前記第二の設定温度以下の時は,前記温度センサ72の検出温度が前記設定温度以下であっても優先的に前記電磁弁64を閉めるよう制御し,また,前記温度センサ72の検出温度が前記設定温度を上回った時は,前記第二の温度センサ73の検出温度が前記第二の設定温度を上回っていても優先的に前記電磁弁64を閉じるよう制御するようにしても良い。
【0072】
これにより,バイパス回路60内の温度(加温用の圧縮気体の温度)が前記第二の設定温度以下の場合は,ドレン回路50内が前記設定温度以下であっても電磁弁64によりバイパス回路60を閉じて,バイパス回路60を介してドレン回路50に低温でかつドレンを含む圧縮空気が導入されることを阻止して上述のドレン凍結のリスクを抑え,また,ドレン回路50内が前記設定温度を上回った場合は,バイパス回路60内の温度(加温用の圧縮気体の温度)が前記第二の設定温度を上回っていても電磁弁64によりバイパス回路60を閉じて,バイパス回路60を介して圧縮空気が導入されることを阻止して,ドレン回路50の加温に消費される圧縮空気量を抑えることができる。
【0073】
また,本実施形態では電磁弁64を用いたものについて説明したが,第二実施形態のように電磁弁64の代わりに電動弁65を使用しても良い。
【符号の説明】
【0074】
1 凍結防止構造
10 オイルセパレータ
12 出口(オイルセパレータの)
20 アフタクーラ
21 入口(アフタクーラの)
22 出口(アフタクーラの)
30 ドレンセパレータ
31 入口(ドレンセパレータの)
32 出口(ドレンセパレータの)
33 室(ドレン捕集部)
40 サービスバルブ
50 ドレン回路
51 一端(ドレン回路の)
52 他端(ドレン回路の)
53 絞り
54 消音器
60 バイパス回路
61 一端(バイパス回路の)
62 他端(バイパス回路の)
64 電磁弁
65 電動弁
70 制御部
72 温度センサ
73 第二の温度センサ
90 回路(オイルセパレータ-アフタクーラ間の)
100 圧縮機
110 オイルセパレータ
112 出口(オイルセパレータの)
120 アフタクーラ
121 入口(アフタクーラの)
122 出口(アフタクーラの)
130 ドレンセパレータ
131 入口(ドレンセパレータの)
132 出口(ドレンセパレータの)
133 室(ドレン捕集部)
140 サービスバルブ
150 ドレン回路
151 一端(ドレン回路の)
152 他端(ドレン回路の)
153 絞り
154 消音器
160 バイパス回路
161 一端(バイパス回路の)
162 他端(バイパス回路の)
164 開閉弁
200 圧縮機
201 圧縮機本体
202 吸込絞り弁
203 吸込みフィルター
204 吸込みパイプ
205 吐出空気経路
206 アフタクーラ
207 ドレンセパレータ
208 ドレン自動排出弁
209 ドレン手動排出弁
210 温度センサ
211 発熱体
212 断熱体
213 ドレン回路
214 制御基板
220 管路