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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083872
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】バッテリ容量キャリブレーション方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/374 20190101AFI20240617BHJP
   G01R 31/382 20190101ALI20240617BHJP
   G01R 31/385 20190101ALI20240617BHJP
   G01R 31/392 20190101ALI20240617BHJP
   G01R 31/3828 20190101ALI20240617BHJP
   G01R 31/387 20190101ALI20240617BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240617BHJP
   B60L 58/13 20190101ALI20240617BHJP
   B60L 58/15 20190101ALI20240617BHJP
   B60L 58/18 20190101ALI20240617BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
G01R31/374
G01R31/382
G01R31/385
G01R31/392
G01R31/3828
G01R31/387
B60L50/60
B60L58/13
B60L58/15
B60L58/18
H02J7/00 P
H02J7/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197934
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】521537852
【氏名又は名称】ダイムラー トラック エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100176946
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 智恵
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植竹 忠一
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
2G216AB01
2G216BA01
2G216BA02
2G216BA16
2G216BA18
2G216BA21
2G216BA61
2G216CA07
5G503AA07
5G503BA03
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA08
5G503CA11
5G503CC02
5G503DA04
5G503DA07
5G503EA05
5G503FA06
5G503GB06
5G503GD04
5G503GD06
5H125AA01
5H125AC12
5H125BC05
5H125BC08
5H125BC12
5H125BC14
5H125BC28
5H125EE27
5H125EE30
(57)【要約】
【課題】バッテリパックのキャリブレーションを行った直後の走行時でも回生ブレーキを使用することができるようにする。
【解決手段】複数のバッテリパック10A,10Bを備える車両駆動用バッテリ装置のバッテリ容量キャリブレーション方法であって、複数のバッテリパックのうちの一部のバッテリパック10Aを満充電まで充電し、かつ、他のバッテリパック10Bは、満充電となる前に充電を止めてから、一部のバッテリパック10Aの容量のキャリブレーションを行う第1工程(ステップS20~S140)と、他のバッテリパック10Bを満充電まで充電し、かつ、残りのバッテリパック10Aは、満充電となる前に充電を止めてから、他のバッテリパック10Bの容量のキャリブレーションを行う第2工程(ステップS150~S270)と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバッテリパックを備える車両駆動用バッテリ装置のバッテリ容量キャリブレーション方法であって、
前記複数のバッテリパックのうちの一部のバッテリパックを満充電まで充電し、かつ、他のバッテリパックは、満充電となる前に充電を止めてから、前記一部のバッテリパックの容量のキャリブレーションを行う第1工程と、
前記他のバッテリパックを満充電まで充電し、かつ、残りのバッテリパックは、満充電となる前に充電を止めてから、前記他のバッテリパックの容量のキャリブレーションを行う第2工程と、を備える
ことを特徴とするバッテリ容量キャリブレーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両駆動用バッテリのバッテリ容量をキャリブレーションするバッテリ容量キャリブレーション方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動車両に装備される駆動用バッテリ装置には、複数の駆動用バッテリを備えたものがある。
例えば、特許文献1には、複数の駆動用バッテリからなる駆動用バッテリ装置を備えた電気自動車の制御装置において、各駆動用バッテリの特性に応じて充電を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-257605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電気自動車において、バッテリの残存容量の状態(充電率、SOC; State Of Charge)を把握することは必要不可欠である。駆動用バッテリには、電圧状態と充電状態との関係が例えば比例するなど、充電状態の全域で一対一に対応する特性のものがある。この場合は、駆動用バッテリの電圧を検出すればSOCを求めることができる。
【0005】
しかし、駆動用バッテリの特性によっては、電圧状態と充電状態との関係が、充電状態の全域で一対一に対応しないものがある。この場合も、満充電状態の近傍や低充電状態などの一部の充電状態では、電圧状態と充電状態とが一対一に対応する。そこで、電圧状態と充電状態とが一対一に対応する領域を利用してSOCの推定値を構成するキャリブレーションを実施し、その後、放電電流や充電電流からバッテリの電力消費量や充電量を求めて、これらを積算することで、SOCを推定することが行われる。
【0006】
このキャリブレーションを実施するときには、低充電状態ではバッテリ切れに繋がり易いため、満充電状態で行う方がバッテリの管理上安全と言える。
しかし、満充電状態でキャリブレーションを実施すると、走行開始後、回生ブレーキを使用できないという課題が生じる。
【0007】
本件は係る課題に着目して創案されたもので、複数のバッテリパックを用いた車両駆動用バッテリ装置において、バッテリパックのキャリブレーションを行った直後の走行時でも回生ブレーキを使用することができるようにした、バッテリ容量キャリブレーション方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本件は上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現できる。
本適用例に係るバッテリ容量キャリブレーション方法は、複数のバッテリパックを備える車両駆動用バッテリ装置のバッテリ容量キャリブレーション方法であって、前記複数のバッテリパックのうちの一部のバッテリパックを満充電まで充電し、かつ、他のバッテリパックは、満充電となる前に充電を止めてから、前記一部のバッテリパックの容量のキャリブレーションを行う第1工程と、前記他のバッテリパックを満充電まで充電し、かつ、残りのバッテリパックは、満充電となる前に充電を止めてから、前記他のバッテリパックの容量のキャリブレーションを行う第2工程と、を備えることを特徴としている。
【0009】
本適用例によれば、第1工程では、一部のバッテリパックを満充電まで充電して容量のキャリブレーションを行うことができ、このとき、他のバッテリパックは、満充電となる前に充電を止めるので、その後、車両の回生ブレーキが可能となる。第2工程では、他のバッテリパックを満充電まで充電して容量のキャリブレーションを行うことができ、このとき、残りのバッテリパックは、満充電となる前に充電を止めるので、その後、車両の回生ブレーキが可能となる。こうして、第1工程及び第2工程を実施することで、キャリブレーション後に、車両の回生ブレーキを可能としながら、バッテリパックの容量のキャリブレーションを順次行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本件によれば、バッテリパックのキャリブレーションを行った直後の走行時でも回生ブレーキを使用することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るバッテリ容量キャリブレーション方法を実施する充電状態推定装置の構成を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る車両の駆動系統を示す模式的平面図である。
図3】実施形態に係るバッテリの特性を示すグラフである。
図4図1に示す充電状態推定装置による車両の充電中における充電率(SOC)のキャリブレーション及び充電の制御を説明するフローチャートである。
図5図1に示す充電状態推定装置による車両の走行中の充電率(SOC)の推定を説明するフローチャートであり、(a)は第1のバッテリパックに関し、(b)は第2のバッテリパックに関する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照して、本件の実施形態について説明する。この実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0013】
[1.車両の駆動系統の構成]
図2に示すように、本実施形態に係る電動車両1は、複数(ここでは、2個)のバッテリパック10A,10B(両者を区別しない場合は、バッテリパック10という)からなるバッテリユニット2を備え、このバッテリユニット2の電力で駆動される例えばトラック等の車両である。本実施形態では、複数のバッテリパック10A,10Bは、車長方向D1に延び車幅方向D2に並んだ左右一対のサイドレール(フレーム)3に支持されて、車長方向D1に並んで配置されている。なお、図2中、FRは車両前方を示し、RHは車両の右側を示す。
【0014】
また、各バッテリパック10は、バッテリハウジング11と、バッテリハウジング11内に収容され複数のバッテリセルが直列に接続されてなるバッテリモジュール12と、バッテリモジュール12に充電された電力を取り出すためのコネクタ部13とを備えている。本実施形態では、複数のバッテリパック10はコネクタ部13を通じて接続ケーブル14で互いに直列接続されている。また、直列接続された複数のバッテリパック10の一端には、バッテリモジュール12を外部電力で充電するための充電器15が接続されている。
【0015】
電動車両1には、バッテリユニット2にインバータ4を介して接続された車両駆動用のモータ(走行用モータ、以下、単に「モータ」ともいう)5と、モータ5とディファレンシャル6を介して連結された駆動輪7とが備えられている。電動車両1は、バッテリユニット2の電力でモータ5を駆動し、これにより発生するモータ5の駆動力で駆動輪7を回転駆動して走行する。また、モータ5は発電機としても機能し、回生制動時には、駆動輪7の回転力でモータ5を発電作動し、車両の制動を実施すると共に、発電した電力でバッテリユニット2(バッテリパック10のバッテリモジュール12)を充電する。
【0016】
また、電動車両1には、インバータ4や充電器15等、電動車両1を総合的に制御したり管理したりするために、EVコントロールユニット(EV-ECU;Electric Vehicle-Electronic Control Unit)8が装備されている。なお、EVコントロールユニット8は、プロセッサ(例えば、CPU(Central Processing Unit),MPU(Micro Processing Unit)などのマイクロプロセッサ)やメモリ(例えば、ROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory)等)が搭載される。
【0017】
さらに、電動車両1には、バッテリユニット2の充電状態(充電率、SOC;State Of Charge)を推定する充電状態推定装置としてバッテリコントローラ(バッテリECU)9が装備されている。バッテリコントローラ9は、EVコントロールユニット8と同様に、プロセッサやメモリ等が搭載される。
【0018】
[2.充電状態推定装置の構成]
ここで、バッテリコントローラ9によるSOCの推定及び充電時の制御について説明する。バッテリコントローラ9は、バッテリユニット2に装備された電流センサ21及び各バッテリパック10に装備された電圧センサ22A,22Bと接続されており、これらの情報に基づいて、各バッテリパック10のSOCを推定する。
【0019】
本実施形態に係るバッテリコントローラ9は、図1に示すように、各バッテリパック10のSOCを推定するSOC推定部91と、各バッテリパック10の健全度(SOH;State of Health)を周知の技術を利用して推定するSOH推定部93と、各バッテリパック10の充電を制御する充電制御部94とを備えている。
【0020】
SOC推定部91は、SOH推定部93で推定したSOH及び電流センサ21で時々検出される放電電流(又は充電電流)iに基づいて、周知の技術、例えば、下記の式(1)の関係を用いて、各バッテリパック10のバッテリモジュール12のSOCを推定する。
また、SOC推定部91は、所定の条件下でSOCの値をキャリブレーションするキャリブレーション実施部92を備えており、SOCの値はキャリブレーション実施部92により適宜キャリブレーションされる。
【0021】
なお、式(1)において、SOC(t)は現時点tにおけるSOCの値であり、SOC(t0)はSOCのキャリブレーション後に推定を開始した時点t0のSOCの値であり、FCC0は、バッテリモジュール12の新品時のバッテリ容量であり、i(t)は現時点tにおける放電電流又は充電電流であり、電流センサ21で検出される。i(t)は放電時にはマイナス、充電時にはプラスとなる。
【0022】
【数1】

【0023】
ここで、SOCのキャリブレーションに関連する、各バッテリパック10のバッテリモジュール12の充電特性について説明する。
図3は、バッテリモジュール12について、横軸にSOCを、縦軸に電池のOCV(開放状態での端子電圧:電流をかけていない時の電圧)をプロットしたSOC-OCV曲線である。図3に示すように、バッテリモジュール12は、SOCの低い領域(この例では、30%以下の領域)及びSOCの高い領域(この例では、95%以上の領域)については、SOCの増大に応じてOCVが上昇し、SOCとOCVとは1対1対応するが、SOCがこれらの中間領域(この例では、30%~95%の領域)では、SOCとOCVとは1対1対応しない。
【0024】
したがって、充電器15を通じた充電時に、電圧センサ22A,22Bで検出される電圧(OCV)がSOCの低い領域(30%以下の領域)又はSOCの高い領域(95%以上の領域)においては、OCVに基づいてSOCの値をキャリブレーションできるが、これらの中間領域(30%~95%の領域)では、OCVに基づくSOCの値のキャリブレーションは行えない。
【0025】
上記の特性から、SOCのキャリブレーションは、OCVがSOCの低い領域又はSOCの高い領域に行うことになるが、当然ながら充電時には可能な限り満充電状態かそれに近い状態まで充電したいので、SOCの高い領域に行うことが有効である。
ただし、全てのバッテリモジュール12を満充電にしてしまうと回生制動を行うことができない。そこで、以下に説明するバッテリ容量キャリブレーション方法を実施する。
【0026】
[3.バッテリ容量キャリブレーション方法]
本実施形態のバッテリコントローラ9では、ある充電制御では、複数のバッテリパック10A,10Bのうちの一部のバッテリパック(例えば、第1のバッテリパック10A)を満充電まで充電し、かつ、他のバッテリパック(例えば、第2のバッテリパック10B)は、満充電となる前の所定のSOC状態に達した時点で充電を止めてから、一部のバッテリパック(バッテリパック10A)の容量SOCのキャリブレーションを行う第1工程を実施する。その次の充電制御では、他のバッテリパック(バッテリパック10B)を満充電まで充電し、かつ、残りのバッテリパック(バッテリパック10A)は、満充電となる前の所定のSOC状態に達した時点で充電を止めて、他のバッテリパック(バッテリパック10B)の容量SOCのキャリブレーションを行う第2工程を実施するようにしている。一部のバッテリパック10の充電を満充電となる前に停止するので、回生制動が許容される。
【0027】
なお、本実施形態では、充電時には、電圧センサ22Aによって検出されるバッテリパック10Aの電圧Va及び電圧センサ22Bによって検出されるバッテリパック10Bの電圧Vbを参照しながら、電圧Va,VbがSOCの高い領域(95%以上の領域)に対応する範囲内に達したら、SOCがキャリブレーション可能な状態になったとして充電の停止判定及びSOCのキャリブレーションを実施する。
【0028】
上記のように、電圧Va,VbがSOCの高い領域(95%以上の領域)では、SOCの増加に応じて電圧Va,Vbの値が増加し、SOCと電圧Va,Vbとは1対1対応する。また、SOCが95%の時のOCVはVsであり、SOCが100%の時のOCVはVfである(Vs<Vf)。
【0029】
したがって、SOCの高い領域における1対1対応領域に入ったことは、電圧Va,Vbの値が電圧Vsに達することから判定できる。また、SOCが100%(満充電)になったことは、電圧Va,Vbの値が電圧Vfに達することから判定できる。
また、上記の「満充電となる前の所定のSOC状態」とは、例えば「SOCが95%の状態」としてもいいが、本実施形態では、SOCと電圧Va,Vbとの1対1対応がより明確な「SOCが96%の状態」としており、電圧Va,Vbの値がSOC96%に対応する電圧Vjに達したら、所定のSOC状態になったと判定する。
【0030】
ここで、図4のフローチャートを参照して、バッテリコントローラ9による充電制御及びSOCのキャリブレーションについて説明する。
図4に示す制御は、充電器15を通じた充電が開始されたらスタートする。図4において、「F1」は、第1工程を実施する場合1となり、第2工程を実施する場合0となる制御フラグである。「Fa」は、バッテリパック10Aの充電実施時に1となり、充電終了後に0となる制御フラグである。「Fb」は、バッテリパック10Bの充電実施時に1となり、充電終了後に0となる制御フラグである。フラグF1は、充電制御ごとに0又は1に変更され、フラグFa,Fbは、充電制御開始時は1とされる。
【0031】
充電器15を通じた充電が開始されたら、図4に示すフローが開始され、その後充電終了まで所定周期で続行される。制御開始時には、まず、制御フラグF1が1か否かを判定し(ステップS10)、制御フラグF1が1であれば、制御フラグFaが1か否かを判定する(ステップS20)。ここで、制御フラグFaが1であれば、バッテリパック10Aの充電を実施する(ステップS30)。そして、その時点で電圧センサ22Aにより検出された電圧Vaを読み込み(ステップS40)、この電圧Vaが判定閾値Vf(SOC100%に対応)以上になったか否かを判定する(ステップS50)。
【0032】
電圧Vaが判定閾値Vf(SOC100%に対応)以上でなければ、ステップS90に進み、制御フラグFbが1か否かを判定する。ここで、制御フラグFbが1であれば、バッテリパック10Bの充電を実施する(ステップS100)。そして、その時点で電圧センサ22Bにより検出された電圧Vbを読み込み(ステップS110)、この電圧Vbが判定閾値Vj(SOC96%に対応)以上になったか否かを判定する(ステップS120)。
【0033】
充電を続行していくと、電圧Va,Vbが上昇し、SOCが95%の時のOCV電圧Vsに達し、さらに、SOCが96%の時のOCV電圧Vjに達する。これによって、電圧VbがVjに達したら、ステップS120で、電圧Vbが判定閾値Vj(SOC96%に対応)以上になったと判定され、バッテリパック10Bの充電を停止し(ステップS130)、制御フラグFbを0とする(ステップS140)。
【0034】
また、電圧VaがVf(SOC100%に対応)に達したら、ステップS50で、電圧Vaが判定閾値Vf以上になったと判定され、バッテリパック10Aの充電を停止し(ステップS60)、バッテリパックAのSOC_aを100(%)にキャリブレーションし(ステップS70)、制御フラグFaを0とする(ステップS80)。
こうして、制御フラグFa及びFbがいずれも0になると、ステップS280によってこれが判定され、ステップS290でフラグF1が0に変更されて今回の充電制御を終了する。
以上説明したステップS20~S140の処理が本実施形態の第1工程に相当する。
【0035】
このようにフラグF1が0にセットされると、次の充電制御開始時には、ステップS150に進んで、制御フラグFbが1か否かを判定する。ここで、制御フラグFbが1であれば、バッテリパック10Bの充電を実施する(ステップS160)。そして、その時点で電圧センサ22Bにより検出された電圧Vbを読み込み(ステップS170)、この電圧Vbが判定閾値Vf(SOC100%に対応)以上になったか否かを判定する。
【0036】
電圧Vbが判定閾値Vf(SOC100%に対応)以上でなければ、ステップS220に進み、制御フラグFaが1か否かを判定する。ここで、制御フラグFaが1であれば、バッテリパック10Aの充電を実施する(ステップS230)。そして、その時点で電圧センサ22Aにより検出された電圧Vaを読み込み(ステップS240)、この電圧Vaが判定閾値Vj(SOC96%に対応)以上になったか否かを判定する(ステップS250)。
【0037】
充電を続行していくと、電圧Va,Vbが上昇し、SOCが95%の時のOCV電圧Vsに達し、さらに、SOCが96%の時のOCV電圧Vjに達する。これによって、電圧VaがVjに達したら、ステップS250で、電圧Vaが判定閾値Vj(SOC96%に対応)以上になったと判定され、バッテリパック10Aの充電を停止し(ステップS260)、制御フラグFaを0とする(ステップS270)。
【0038】
また、電圧VbがVf(SOC100%に対応)に達したら、ステップS180で、電圧Vbが判定閾値Vf以上になったと判定され、バッテリパック10Bの充電を停止し(ステップS190)、バッテリパックBのSOC_bを100(%)にキャリブレーションし(ステップS200)、制御フラグFbを0とする(ステップS210)。
こうして、制御フラグFa及びFbがいずれも0になると、ステップS300によってこれが判定され、ステップS310でフラグF1が1に変更されて今回の充電制御を終了する。
以上説明したステップS150~S270の処理が本実施形態の第2工程に相当する。
【0039】
次に、図5のフローチャートを参照して、バッテリコントローラ9によるSOCの推定について説明する。
図5(a)はバッテリパック10AのSOCの推定方法を示し、図5(b)はバッテリパック10BのSOCの推定方法を示す。
【0040】
図5(a)において、「F2a」はバッテリパック10AのSOCのキャリブレーションが行われたら1となる制御フラグであり、SOC(t0)_aは、バッテリパック10Aのキャリブレーション後に最初にバッテリパック10Aの充放電を開始時点t0におけるSOCである。図5(a)のフローは電動車両1のキースイッチがオンになったら開始し、所定の制御周期で実行される。
【0041】
図5(a)に示すように、まず、フラフF2aが1か否かが判定される(ステップA10)。電動車両1のキースイッチがオンになる直近で、バッテリパック10AのSOCのキャリブレーションが行われたら1となっており、この場合は、SOCの初期値SOC(t0)_aを100(%)にセットする(ステップA20)。そして、フラフF2aを0にリセットする(ステップA30)。
【0042】
次に、その時点tに電流センサ21で検出された電流値i(t)を読み込んで(ステップA40)、次式(2)によって電流値i(t)の積算値から、その時点tのバッテリパック10AのSOC値であるSOC(t)_aを算出する(ステップA50)。
【0043】
【数2】
【0044】
なお、SOC(t0)_aは積算演算の開始時のSOCであり、キャリブレーション値100(%)であり、FCC0aはのバッテリパック10Aのバッテリモジュール12の新品時のバッテリ容量であり、であり、SOHaはその時点tのバッテリパック10AのSOHである。
バッテリパック10AのSOCのキャリブレーションが行われない限りは、ステップA40,A50によるSOC(t)の算出を続行する。
【0045】
同様に、図5(b)において、「F2b」はバッテリパック10BのSOCのキャリブレーションが行われたら1となる制御フラグであり、SOC(t0)_bは、バッテリパック10Bのキャリブレーション後に最初にバッテリパック10Bの充放電を開始時点t0におけるSOCである。図5(b)のフローは電動車両1のキースイッチがオンになったら開始し、所定の制御周期で実行される。
【0046】
図5(b)に示すように、まず、フラフF2bが1か否かが判定される(ステップB10)。電動車両1のキースイッチがオンになる直近で、バッテリパック10BのSOCのキャリブレーションが行われたら1となっており、この場合は、SOCの初期値SOC(t0)_bを100(%)にセットする(ステップB20)。そして、フラフF2bを0にリセットする(ステップB30)。
【0047】
次に、その時点tに電流センサ21で検出された電流値i(t)を読み込んで(ステップB40)、次式(3)によって電流値i(t)の積算値から、その時点tのバッテリパック10BのSOC値であるSOC(t)_bを算出する(ステップB50)。
【0048】
【数3】
【0049】
なお、SOC(t0)_bは積算演算の開始時のSOCであり、キャリブレーション値100(%)であり、FCC0bはバッテリパック10Bのバッテリモジュール12の新品時のバッテリ容量であり、であり、SOHbはその時点tのバッテリパック10BのSOHである。
バッテリパック10BのSOCのキャリブレーションが行われない限りは、ステップB40,A50によるSOC(t)の算出を続行する。
【0050】
[4.作用及び効果]
本実施形態に係るバッテリ容量キャリブレーション方法は、上記のように構成されており、第1工程では、バッテリパック10Aを満充電まで充電して容量のキャリブレーションを行うことができ、このとき、バッテリパック10Bは、満充電となる前に充電を止めるので、その後、車両1の回生ブレーキが可能となる。第2工程では、バッテリパック10Bを満充電まで充電して容量のキャリブレーションを行うことができ、このとき、バッテリパック10Aは、満充電となる前に充電を止めるので、その後、車両の回生ブレーキが可能となる。
【0051】
こうして、第1工程及び第2工程を実施することで、キャリブレーション後に、車両の回生ブレーキを可能としながら、バッテリパックの容量のキャリブレーションを順次行うことができる。
【0052】
[5.その他]
上記の実施形態では、SOCの推定例を説明していますが、これは一例でありSOCの推定には種々の手法が採用可能である。
また、上記の実施形態では、2つのバッテリパック10A,10Bを備える場合を説明したが、バッテリパックの数はこれに限らない。
【0053】
例えば、バッテリパックがA,B,Cと3つある場合、以下のような態様が考えられる。
第1の態様としては、第1工程では、複数(3つ)のバッテリパックのうちの一部のバッテリパック(バッテリパックA,B)を満充電まで充電し、かつ、他のバッテリパック(バッテリパックC)は、満充電となる前に充電を止めてから、一部のバッテリパック(バッテリパックA,B)の容量のキャリブレーションを行い、第2工程では、他のバッテリパック(バッテリパックC)を満充電まで充電し、かつ、残りのバッテリパック(バッテリパックA,B)は、満充電となる前に充電を止めてから、他のバッテリパック(バッテリパックC)の容量のキャリブレーションを行う。
【0054】
第2の態様としては、第1工程では、複数(3つ)のバッテリパックのうちの一部のバッテリパック(バッテリパックA,B)を満充電まで充電し、かつ、他のバッテリパック(バッテリパックC)は、満充電となる前に充電を止めてから、一部のバッテリパック(バッテリパックA,B)の容量のキャリブレーションを行い、第2工程では、他のバッテリパック(バッテリパックC)と第1工程で満充電したものの一部(例えば、バッテリパックA)を満充電まで充電し、かつ、残りのバッテリパック(バッテリパックB)は、満充電となる前に充電を止めてから、他のバッテリパック(バッテリパックC,A)の容量のキャリブレーションを行う。
【0055】
第3の態様としては、第1工程では、複数(3つ)のバッテリパックのうちの一部のバッテリパック(バッテリパックA)を満充電まで充電し、かつ、他のバッテリパック(バッテリパックB,C)は、満充電となる前に充電を止めてから、一部のバッテリパック(バッテリパックA)の容量のキャリブレーションを行い、第2工程では、他のバッテリパックの一部(バッテリパックB)を満充電まで充電し、かつ、残りのバッテリパック(バッテリパックA,C)は、満充電となる前に充電を止めてから、他のバッテリパックの一部(バッテリパックB)の容量のキャリブレーションを行う。この場合、第3工程として、他のバッテリパックの残り(バッテリパックC)を満充電まで充電し、かつ、残りのバッテリパック(バッテリパックA,B)は、満充電となる前に充電を止めてから、満充電したバッテリパック(バッテリパックC)の容量のキャリブレーションを行う。
【0056】
以上の態様例は一例であり、本件の発明は、複数のバッテリパックの一部だけを満充電して容量のキャリブレーションを行い、他のバッテリパックは満充電まで充電せずに、回生制動ができる充電余裕を残しておき、次の充電時には、別の(或いは別の組み合わせの)バッテリパックを満充電して容量のキャリブレーションを行い、他のバッテリパックは満充電まで充電せずに、回生制動ができる充電余裕を残しておくことで、回生制動を可能にしながら、順次バッテリパックの容量のキャリブレーションを行う点が必須である。
【0057】
なお、上記実施形態では、満充電したバッテリパックのみ容量のキャリブレーションを行っているが、例えば満充電の手前のSOC96%で充電停止した場合、電圧とSOCとが1対1で対応するので、満充電の手前のSOC96%で充電停止したバッテリパックについて、SOCを96%とするようにキャリブレーションを行うことも考えられる。
【符号の説明】
【0058】
1 電動車両
2 バッテリユニット
3 サイドレール(フレーム)
4 インバータ
5 車両駆動用のモータ(走行用モータ、モータ)
6 ディファレンシャル
7 駆動輪
8 EVコントロールユニット(EV-ECU)
9 バッテリコントローラ(バッテリECU)
10A,10 第1のバッテリパック
10B,10 第2のバッテリパック
11 バッテリハウジング
12 バッテリモジュール
13 コネクタ部
14 接続ケーブル
15 充電器
21 電流センサ
22A,22B 電圧センサ
91 SOC推定部
92 キャリブレーション実施部
93 SOH推定部
94 充電制御部
D1 車長方向
D2 車幅方向
図1
図2
図3
図4
図5