(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083875
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】スラスト軸受装置
(51)【国際特許分類】
F16C 17/06 20060101AFI20240617BHJP
F16C 33/10 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
F16C17/06
F16C33/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197938
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂崎 広和
(72)【発明者】
【氏名】牧野 駿介
(72)【発明者】
【氏名】池田 和徳
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 忠利
(72)【発明者】
【氏名】吉水 謙司
【テーマコード(参考)】
3J011
【Fターム(参考)】
3J011AA04
3J011AA07
3J011BA14
3J011JA02
3J011KA03
3J011MA23
3J011PA03
3J011RA03
(57)【要約】
【課題】潤滑油からなる油膜の温度を効果的に低減可能であって、信頼性を十分に向上可能なスラスト軸受装置を提供する。
【解決手段】実施形態のスラスト軸受装置において、スクレーパは、回転方向に並ぶ複数のスラストパッドのそれぞれの間に介在するように、複数が油槽の内部に設置されている。回転シャフトが回転方向に回転したときに潤滑油がスラストカラーの下面とスクレーパの上面との間を回転方向の後方側から前方側に流れる際に、潤滑油の油圧が低下する部分を含むように、スクレーパの上面が構成されている。これと共に、回転方向において後方側に位置する入口から回転方向において前方側に位置する出口に潤滑油が流れる油路が、スクレーパに形成されている。油路の出口は、スクレーパの上面に形成されている。
【選択図】
図1D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に回転中心軸が沿っている回転シャフトにおいて前記鉛直方向に作用するスラスト荷重を支えるスラスト軸受装置であって、
前記回転シャフトの周りを囲うように設置され、潤滑油を内部に収容する油槽と、
前記油槽の内部において複数が前記回転シャフトの回転方向に間を隔てて並ぶように設置されており、前記回転シャフトに固定されたスラストカラーを介して前記スラスト荷重を受け止めるスラストパッドと、
前記回転方向に並ぶ前記複数のスラストパッドのそれぞれの間に介在するように、複数が前記油槽の内部に設置されているスクレーパと
を有し、
前記回転シャフトが前記回転方向に回転したときに前記潤滑油が前記スラストカラーの下面と前記スクレーパの上面との間を前記回転方向の後方側から前方側に流れる際に、前記潤滑油の油圧が低下する部分を含むように、前記スクレーパの上面が構成されていると共に、
前記回転方向において前記後方側に位置する入口から前記回転方向において前記前方側に位置する出口に前記潤滑油が流れる油路が前記スクレーパに形成されており、
前記油路の前記出口が前記スクレーパの上面に形成されている、
スラスト軸受装置。
【請求項2】
前記油路の前記入口は、前記スクレーパにおいて前記鉛直方向に沿った面に形成されており、
前記油路の前記出口は、前記回転シャフトが前記回転方向に回転したときに前記スラストカラーの下面と前記スクレーパの上面との間に介在する前記潤滑油の油圧が最も低くなる部分に形成されている、
請求項1に記載のスラスト軸受装置。
【請求項3】
前記スクレーパの上面は、
前記回転方向において前記後方側に位置する後方側上面部と、
前記回転方向において前記前方側に位置する前方側上面部と
を含み、
前記後方側上面部は、前記回転方向において前記後方側から前記前方側に向かうに伴って前記スラストカラーの下面との間に介在する隙間が狭くなるように、前記スラストカラーの下面に対して傾斜している傾斜面であり、
前記前方側上面部は、前記回転方向において前記後方側から前記前方側に向かうに伴って前記スラストカラーの下面との間に介在する隙間が広くなるように、前記スラストカラーの下面に対して傾斜している傾斜面である、
請求項2に記載のスラスト軸受装置。
【請求項4】
前記スクレーパの上面は、
前記回転方向において前記後方側に位置する後方側上面部と、
前記回転方向において前記前方側に位置する前方側上面部と
を含み、
前記後方側上面部と前記スラストカラーの下面との間に介在する隙間は、前記回転方向において一定な第1の幅であり、
前記前方側上面部と前記スラストカラーの下面との間に介在する隙間は、前記回転方向において一定な第2の幅であり、
前記第1の幅が前記第2の幅よりも狭い、
請求項2に記載のスラスト軸受装置。
【請求項5】
前記スクレーパにおいて前記鉛直方向に沿った面のうち前記油路の前記入口よりも下方に位置する部分に、凸部が設けられている、
請求項2に記載のスラスト軸受装置。
【請求項6】
前記スクレーパの上面は、
前記回転方向において前記後方側に位置する後方側上面部と、
前記回転方向において前記前方側に位置する前方側上面部と
を含み、
前記後方側上面部と前記スラストカラーの下面との間に介在する隙間は、前記回転方向において一定な第1の幅であり、
前記前方側上面部と前記スラストカラーの下面との間に介在する隙間は、前記回転方向において一定な第2の幅であり、
前記第1の幅が前記第2の幅よりも広く、
前記油路の前記入口は、前記後方側上面部に形成されており、
前記油路の前記出口は、前記前方側上面部に形成されている、
請求項1に記載のスラスト軸受装置。
【請求項7】
前記油路は、前記入口から前記出口へ向かうに伴って、流路断面積が狭くなるように構成されている、
請求項2に記載のスラスト軸受装置。
【請求項8】
前記油路は、前記回転シャフトの径方向において複数が間を隔てて並ぶように設けられており、
前記径方向に並ぶ複数の前記油路の前記出口は、前記径方向において内側から外側へ向かうに伴って、流路断面積が広くなるように構成されている、
請求項1に記載のスラスト軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、スラスト軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スラスト軸受装置は、回転シャフトの軸方向に作用するスラスト荷重を支えるように構成されている。スラスト軸受装置は、たとえば、回転シャフトの軸方向が鉛直方向に沿った立軸水車などの立軸型回転機器に設置されている。
【0003】
図7Aは、関連技術に係る立軸水車1の一例を示す図である。
【0004】
図7Aでは、鉛直面(xz面)に沿った断面の一部を示しており、縦方向が鉛直方向zであり、横方向が第1水平方向xであり、紙面に直交する方向が第2水平方向yである。
図7Aにおいては、立軸水車1のうち、スラスト軸受装置3が設置された部分を示している。なお、
図7Aでは、回転シャフト10の回転方向Rを太い実線の矢印で示している。
【0005】
[A]立軸水車1
図7Aに示すように、立軸水車1は、回転シャフト10とスラストカラー12とを含む回転体を備えている。
【0006】
[A-1]回転シャフト10
立軸水車1において、回転シャフト10は、回転中心軸AXが鉛直方向zに沿っている。回転シャフト10は、たとえば、下端側にランナ(図示省略)が連結されており、そのランナ(図示省略)の上方に軸受ブラケット2が設けられている。また、回転シャフト10の上端側には、たとえば、発電機(図示省略)の駆動軸が連結されている。回転シャフト10は、たとえば、発電運転を行うためにランナに水が供給されたときに、回転方向Rに回転する。
【0007】
[A-2]スラストカラー12
立軸水車1において、スラストカラー12は、円筒部分を含み、回転シャフト10の外周面を囲うように回転シャフト10に対して同軸に設けられている。ここでは、スラストカラー12の内周面において、鉛直方向zの上方に位置する部分がリングキーK10を用いて回転シャフト10の外周面に固定されており、回転シャフト10と共にスラストカラー12が回転する。そして、スラストカラー12の内周面において回転シャフト10に連結する部分よりも下方に位置する部分は、回転シャフト10の外周面との間にギャップが介在している。
【0008】
[B]スラスト軸受装置3
スラスト軸受装置3は、スラストカラー12を介して回転シャフト10の軸方向(鉛直方向z)に作用するスラスト荷重を支えるように、軸受ブラケット2の上方に設けられている。ここでは、スラスト軸受装置3は、ティルティング静止板型であって、
図7Aに示すように、油槽30とガイドメタル31とスラスト軸受台32とコイルスプリング33とスラストパッド34とを有し、回転シャフト10を回転自在に支持している。スラスト軸受装置3を構成する各部について順次説明する。
【0009】
[B-1]油槽30
油槽30は、内筒部301と外筒部302とを有し、回転シャフト10の周りを囲うように設置され、潤滑油L30を内部に収容している。
【0010】
油槽30のうち、内筒部301は、円筒形状であって、回転シャフト10に対して同軸に設けられており、回転シャフト10の周りを囲っている。内筒部301は、スラストカラー12の内周面と回転シャフト10の外周面との間に挟まれる部分を含む。内筒部301の内周面と回転シャフト10の外周面との間、および、内筒部301の外周面とスラストカラー12の内周面との間のそれぞれには、ギャップが介在している。内筒部301は、下端部が軸受ブラケット2の上面に固定されている。
【0011】
油槽30のうち、外筒部302は、内筒部301と同様に、円筒形状であって、回転シャフト10に対して同軸に設置されており、内筒部301を介して、回転シャフト10の周りを囲っている。外筒部302は、回転シャフト10の径方向において、内筒部301及びスラストカラー12よりも外側の位置に設けられている。外筒部302は、下端部が軸受ブラケット2の上面に固定されている。
【0012】
上記のように、油槽30は、底板として軸受ブラケット2が用いられている。そして、油槽30では、内筒部301が、回転シャフト10の径方向において内側に位置する側板として設置され、外筒部302が、回転シャフト10の径方向において外側に位置する側板として設置されている。この他に、油槽30は、軸受ブラケット2の上方に、蓋部303が設置されている。油槽30は、軸受ブラケット2と共に、内筒部301と外筒部302と蓋部303とによって仕切られた内部空間に、潤滑油L30が注入されている。
【0013】
油槽30の内部空間においては、スラストカラー12の一部が潤滑油L30に浸漬された状態になっていると共に、ガイドメタル31とスラスト軸受台32とコイルスプリング33とスラストパッド34とが潤滑油L30に浸漬されている。
【0014】
[B-2]ガイドメタル31
ガイドメタル31は、油槽30の内部空間に設置されている。ここでは、ガイドメタル31は、回転シャフト10の径方向において、内筒部301およびスラストカラー12よりも外側であって、外筒部302よりも内側に位置している。ガイドメタル31は、外筒部302の内周面から径方向の内側へ突き出るように、外筒部302の内周面に固定されている。ガイドメタル31は、スラストカラー12の外周面に、内周面が対面している。
【0015】
図示を省略しているが、ガイドメタル31は、潤滑油L30を収容する油槽30の内部において、複数が回転シャフト10の回転方向Rに配置されている。複数のガイドメタル31は、ラジアル軸受であって、スラストカラー12の外周面を介して回転シャフト10の径方向に作用するラジアル荷重を受け止めることによって、回転シャフト10を回転自在に支持するように構成されている。
【0016】
[B-3]スラスト軸受台32
スラスト軸受台32は、油槽30の内部空間に設置されている。ここでは、スラスト軸受台32は、回転シャフト10の軸方向において、スラストカラー12の下面S12(摺動面)よりも下方に位置するように、軸受ブラケット2の上面に設置されている。
【0017】
[B-4]コイルスプリング33
コイルスプリング33は、油槽30の内部空間において、スラスト軸受台32の上面S32に設置されている。ここでは、複数のコイルスプリング33が設置されている。
【0018】
[B-5]スラストパッド34
スラストパッド34は、静止板であって、油槽30の内部空間において、コイルスプリング33を介して、スラスト軸受台32の上面S32に設置されている。つまり、スラストパッド34は、回転シャフト10の軸方向において、スラストカラー12の下面S12とスラスト軸受台32の上面S32との間に介在している。スラストパッド34は、スラストカラー12の下面S12を介して回転シャフト10の軸方向に作用するスラスト荷重を受け止めるために設置されている。
【0019】
[C]スラストパッド34の詳細
図7Bは、関連技術に係るスラスト軸受装置において、スラストパッド34を示す図である。
【0020】
図7Bでは、水平面(xy面)に沿った断面(
図7AのB-B部分)を示しており、縦方向が第2水平方向yであり、横方向が第1水平方向xであり、紙面に直交する方向が鉛直方向zである。
図7Bにおいては、立軸水車1(
図7A参照)の回転シャフト10と、スラストパッド34とを示している。
【0021】
図7Bに示すように、スラストパッド34は、水平面(xy面)に沿った断面が円弧状(扇形状)である。スラストパッド34は、複数が回転シャフト10の回転方向Rにおいて間を隔てて並ぶように設置されている。つまり、複数のスラストパッド34が水平面(xy面)において放射状に配置されている。
【0022】
図7Cは、関連技術に係るスラスト軸受装置において、回転シャフト10の回転方向Rに並ぶ複数のスラストパッド34の一部を示す図である。
【0023】
図7Cでは、鉛直面に沿った断面(
図7BのA-A部分)を示しており、縦方向が鉛直方向zであり、横方向が回転シャフト10の回転方向Rであり、紙面に直交する方向が回転シャフト10の径方向である。
図7Cでは、スラストカラー12の下面S12とスラスト軸受台32の上面S32との間において回転方向Rに隣接して並ぶ2つのスラストパッド34(34a,34b)を示している。また、
図7Cでは、スラストカラー12が回転シャフト10と共に回転方向Rに回転したときに、潤滑油L30が流れる流れF1,F1a,F2,F3を示している。
【0024】
スラストカラー12が回転シャフト10と共に回転方向Rに回転したとき、潤滑油L30は、回転方向Rにおいて後方側Bkから前方側Fwに進行する。これにより、スラストカラー12の下面S12(摺動面)とスラストパッド34の上面S34(摺動面)との間に潤滑油L30が流入し、潤滑油L30の油膜が形成される。スラストカラー12の下面S12とスラストパッド34の上面S34との間の隙間は、数10~数100μm程度である。そして、その隙間に潤滑油L30が高い速度(数10m/s)で流入することで、潤滑油L30の温度が上昇すると共に、潤滑油L30の圧力が増加する。このため、スラストカラー12の下面S12を介して回転シャフト10の軸方向に作用するスラスト荷重が、スラストパッド34による潤滑油L30の圧力増加によって支持される。
【0025】
スラストパッド34の上面S34は、潤滑油L30の流入および流出がスムーズに行われるように、回転方向Rにおいて後方側Bk(前縁部)および前方側Fw(後縁部)に面取り加工が施されている。
【0026】
具体的には、スラストパッド34の上面S34は、上面前縁部S341と上面中央部S342と上面後縁部S343とを含み、上面前縁部S341と上面中央部S342と上面後縁部S343とが回転方向Rに沿って順次並ぶように設けられている。スラストパッド34の上面S34は、スラストカラー12が回転したときに、上面前縁部S341とスラストカラー12の下面S12との間の隙間、および、上面中央部S342とスラストカラー12の下面S12との間の隙間が、回転方向Rに沿って減少するように構成されている。ここでは、上面前縁部S341とスラストカラー12の下面S12との間の隙間が回転方向Rに沿って減少する割合が、上面中央部S342とスラストカラー12の下面S12との間の隙間が回転方向Rに沿って減少する割合よりも大きくなっている。そして、スラストパッド34の上面S34は、スラストカラー12が回転したときに、上面後縁部S343とスラストカラー12の下面S12との間の隙間が、回転方向Rに沿って増加するように構成されている。
【0027】
[D]潤滑油L30の流れ
関連技術のスラスト軸受装置において、スラストカラー12が回転方向Rに回転したときに潤滑油L30が流れる流れF1,F1a,F2,F3に関して、
図7Cを用いて説明する。
【0028】
スラストカラー12の下面S12と一のスラストパッド34(34a)の上面との間から流出した高温な潤滑油L30の一部の流れF1は、一のスラストパッド34(34a)よりも回転方向Rの前方側Fwに位置する他のスラストパッド34(34b)において回転方向Rの後方側Bkに位置する側面に衝突する。その後、その高温な潤滑油L30の流れF1は、鉛直方向zの下方側Loへ向かう流れF2になり、温度が低い潤滑油L30と混ざる。これにより、潤滑油L30の冷却が実行され、その冷却された潤滑油L30の流れF3が、他のスラストパッド34(34b)の上面側へ向かう。
【0029】
これに対して、スラストカラー12の下面S12と一のスラストパッド34(34a)の上面S34との間から流出した高温な潤滑油L30のうち、一部の流れF1以外の流れF1aは、スラストカラー12の下面S12に付着した状態で進行する。そして、その流れF1aは、スラストカラー12の下面S12と他のスラストパッド34(34b)の上面との間に流入する。
【0030】
潤滑油L30の流れF1aの温度は、冷却によって温度が低下した潤滑油L30の流れF3の温度よりも高い。このため、スラストカラー12の下面S12とスラストパッド34(34b)の上面S34との間に、高温な潤滑油L30の流れF1aが高い割合で入ると、その間に介在する潤滑油L30からなる油膜の温度が上昇する。その結果、油膜の温度上昇に伴い、油膜を構成する潤滑油L30が劣化し、軸受性能が低下する可能性があるので、立軸水車1の運転を継続的に実行することが困難になる場合がある。
【0031】
スラストカラー12の下面S12とスラストパッド34の上面S34との間に介在する潤滑油L30からなる油膜の温度を低減するために、様々な技術が提案されている。例えば、ポンプ等の補機を用いて、温度が低い潤滑油をスラストカラー等に噴霧する「直接潤滑方式」等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】特開2017-160967号公報
【特許文献2】特開2020-112214号公報
【特許文献3】特開2021-014855号公報
【特許文献4】特開2021-055677号公報
【特許文献5】特開2021-060066号公報
【特許文献6】国際公開第2018/029834号
【特許文献7】国際公開第2019/142383号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
しかしながら、従来においては、潤滑油からなる油膜の温度を効果的に低減することが容易でなく、潤滑油の劣化を十分に抑制することが困難な場合がある。例えば、上記の「直接潤滑方式」では、ポンプ等の補機を用いるため、機器のコストが上昇すると共に、補機のメンテナンス等が必要になるために運転効率が低下する場合がある。その結果、油膜の温度を効果的に低減できずに、信頼性を十分に向上させることが容易でない。
【0034】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、潤滑油からなる油膜の温度を効果的に低減可能であって、信頼性を十分に向上可能なスラスト軸受装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0035】
実施形態のスラスト軸受装置は、油槽とスラストパッドとスクレーパとを有し、鉛直方向に回転中心軸が沿っている回転シャフトにおいて鉛直方向に作用するスラスト荷重を支える。油槽は、回転シャフトの周りを囲うように設置され、潤滑油を内部に収容する。スラストパッドは、油槽の内部において複数が回転シャフトの回転方向に間を隔てて並ぶように設置されており、回転シャフトに固定されたスラストカラーを介してスラスト荷重を受け止める。スクレーパは、回転方向に並ぶ複数のスラストパッドのそれぞれの間に介在するように、複数が油槽の内部に設置されている。回転シャフトが回転方向に回転したときに潤滑油がスラストカラーの下面とスクレーパの上面との間を回転方向の後方側から前方側に流れる際に、潤滑油の油圧が低下する部分を含むように、スクレーパの上面が構成されている。これと共に、回転方向において後方側に位置する入口から回転方向において前方側に位置する出口に潤滑油が流れる油路が、スクレーパに形成されている。油路の出口は、スクレーパの上面に形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1A】
図1Aは、第1実施形態に係るスラスト軸受装置の要部を示す図である。
【
図1B】
図1Bは、第1実施形態に係るスラスト軸受装置において、回転方向Rに並ぶスラストパッド34とスクレーパ35とを示す図である。
【
図1C】
図1Cは、第1実施形態に係るスラスト軸受装置において、回転方向Rに並ぶスラストパッド34とスクレーパ35とを示す図である。
【
図1D】
図1Dは、第1実施形態に係るスラスト軸受装置において、スクレーパ35の一部を拡大して示す図である。
【
図2A】
図2Aは、第2実施形態に係るスラスト軸受装置において、回転方向Rに並ぶスラストパッド34とスクレーパ35とを示す図である。
【
図2B】
図2Bは、第2実施形態に係るスラスト軸受装置において、スクレーパ35の一部を拡大して示す図である。
【
図3A】
図3Aは、第3実施形態に係るスラスト軸受装置において、回転方向Rに並ぶスラストパッド34とスクレーパ35とを示す図である。
【
図3B】
図3Bは、第3実施形態に係るスラスト軸受装置において、スクレーパ35の一部を拡大して示す図である。
【
図4A】
図4Aは、第4実施形態に係るスラスト軸受装置において、回転方向Rに並ぶスラストパッド34とスクレーパ35とを示す図である。
【
図4B】
図4Bは、第4実施形態に係るスラスト軸受装置において、スクレーパ35の一部を拡大して示す図である。
【
図5A】
図5Aは、第5実施形態に係るスラスト軸受装置において、回転方向Rに並ぶスラストパッド34とスクレーパ35とを示す図である。
【
図5B】
図5Bは、第5実施形態に係るスラスト軸受装置において、スクレーパ35の一部を拡大して示す図である。
【
図6A】
図6Aは、第6実施形態に係るスラスト軸受装置において、回転方向Rに並ぶスラストパッド34とスクレーパ35とを示す図である。
【
図6B】
図6Bは、第6実施形態に係るスラスト軸受装置において、スクレーパ35の一部を拡大して示す図である。
【
図6C】
図6Cは、第6実施形態に係るスラスト軸受装置において、スクレーパ35の一部を拡大して示す図である。
【
図7A】
図7Aは、関連技術に係る立軸水車1の一例を示す図である。
【
図7B】
図7Bは、関連技術に係るスラスト軸受装置において、スラストパッド34を示す図である。
【
図7C】
図7Cは、関連技術に係るスラスト軸受装置において、回転シャフト10の回転方向Rに並ぶ複数のスラストパッド34の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
<第1実施形態>
[A]構成
図1Aは、第1実施形態に係るスラスト軸受装置の要部を示す図である。
【0038】
図1Aでは、
図7Bと同様に、水平面(xy面)に沿った断面(
図7AのB-B部分)を示しており、縦方向が第2水平方向yであり、横方向が第1水平方向xであり、紙面に直交する方向が鉛直方向zである。
【0039】
図1Aに示すように、本実施形態のスラスト軸受装置は、上記した関連技術の場合(
図7B参照)と同様に、複数のスラストパッド34が回転シャフト10の回転方向Rに並ぶように設置されている。この他に、本実施形態のスラスト軸受装置は、上記した関連技術の場合と異なり、複数のスクレーパ35を備える。この点、および、これに関連する点を除き、本実施形態は、上記した関連技術の場合と同様である。このため、重複する部分に関しては、適宜、説明を省略する。
【0040】
[A-1]スクレーパ35
本実施形態のスラスト軸受装置において、複数のスクレーパ35のそれぞれは、
図1Aに示すように、回転方向Rに並ぶ複数のスラストパッド34のそれぞれの間に介在している。スクレーパ35は、例えば、スラストパッド34において回転方向Rの前方側Fwに位置する部分よりも回転方向Rの後方側Bkに位置する部分に近くなるように設置されている。
【0041】
図1Bおよび
図1Cは、第1実施形態に係るスラスト軸受装置において、回転方向Rに並ぶスラストパッド34とスクレーパ35とを示す図である。
図1Dは、第1実施形態に係るスラスト軸受装置において、スクレーパ35の一部を拡大して示す図である。
【0042】
図1Bでは、
図7Cと同様に、鉛直面に沿った断面(
図1AのA-A部分)を示しており、縦方向が鉛直方向zであり、横方向が回転シャフト10の回転方向Rであり、紙面に直交する方向が回転シャフト10の径方向である。
図1Bでは、スラストカラー12の下面S12とスラスト軸受台32の上面S32との間において回転方向Rに隣接して並ぶ2つのスラストパッド34(34a,34b)を示している。また、
図1Bでは、スラストカラー12が回転シャフト10と共に回転方向Rに回転したときに、潤滑油L30が流れる流れF1a,F1b,F2,F21,F22を示している。
【0043】
図1Cでは、水平面に沿った面を示しており、縦方向が第2水平方向yであり、横方向が第1水平方向xであり、紙面に直交する方向が鉛直方向zである。
図1Cでは、スラストパッド34の上面とスクレーパ35の上面とを拡大して示している。
【0044】
図1Dでは、
図1Bと同様に、鉛直面に沿った断面を示しており、スクレーパ35の上端部分を拡大して示している。
図1Dには、スラストカラー12が回転シャフト10と共に回転方向Rに回転したときに、スラストカラー12の下面S12とスクレーパ35の上面S35との間に介在する潤滑油L30の圧力P(縦軸)と回転方向Rの位置(横軸)との関係を示す圧力分布を併せて示している。
【0045】
スクレーパ35は、
図1Bに示すように、スラストパッド34(34a,34b)と同様に、油槽30(
図7A参照)の内部空間において、スラストカラー12の下面S12とスラスト軸受台32の上面S32との間に設置されている。スクレーパ35は、潤滑油L30の流れを阻害するために設置されている。図示を省略しているが、スクレーパ35は、例えば、スラスト軸受台32の上面S32に直接的に固定されている。この他に、スクレーパ35は、スラストパッド34と同様に、コイルスプリング33を介して、スラスト軸受台32の上面S32に固定してもよい。
【0046】
スクレーパ35は、
図1Cに示すように、例えば、上面が矩形形状であって、上面の長手方向が径方向に沿うように設置されている。
【0047】
図1Dに示すように、スクレーパ35の上面S35とスラストカラー12の下面S12との間に隙間が介在している。例えば、スクレーパ35の上面S35とスラストカラー12の下面S12との間に介在する隙間の幅は、スラストパッド34の上面S34とスラストカラー12の下面S12との間に介在する隙間の幅と同程度である。
【0048】
スクレーパ35の上面S35は、
図1Dに示すように、回転シャフト10が回転方向Rに回転したときに潤滑油L30がスラストカラー12の下面S12とスクレーパ35の上面S35との間を回転方向Rの後方側Bkから前方側Fwに流れる際に、潤滑油L30の油圧が増加する部分、および、潤滑油L30の油圧が低下する部分を含むように構成されている。
【0049】
具体的には、
図1Dに示すように、スクレーパ35の上面S35は、後方側上面部S351と前方側上面部S352とを含み、後方側上面部S351と前方側上面部S352とが回転方向Rに沿って順次並ぶように設けられている。
【0050】
スクレーパ35の上面S35のうち、後方側上面部S351は、スラストカラー12が回転したときに、回転方向Rにおいて後方側Bk(下流側)から前方側Fw(上流側)に向かうに伴って、スラストカラー12の下面S12との間に介在する隙間が狭くなるように、スラストカラー12の下面S12に対して傾斜している傾斜面である。ここでは、スクレーパ35の上面S35は、後方側上面部S351とスラストカラー12の下面S12との間の隙間が、回転方向Rに沿って第1の幅W1から第2の幅W2へ減少するように構成されている。
【0051】
これに対して、スクレーパ35の上面S35のうち、前方側上面部S352は、スラストカラー12が回転したときに、回転方向Rにおいて後方側Bkから前方側Fwに向かうに伴ってスラストカラー12の下面S12との間に介在する隙間が広くなるように、スラストカラー12の下面S12に対して傾斜している傾斜面である。ここでは、スクレーパ35の上面S35は、スラストカラー12が回転したときに、前方側上面部S352とスラストカラー12の下面S12との間の隙間が、回転方向Rに沿って第2の幅W2から第3の幅W3へ増加するように構成されている。
【0052】
これにより、本実施形態では、
図1Dに示すように、スラストカラー12の下面S12とスクレーパ35の上面S35との間に介在する潤滑油L30の圧力は、後方側上面部S351において増加し、正圧になる。これと共に、スラストカラー12の下面S12とスクレーパ35の上面S35との間に介在する潤滑油L30の圧力は、前方側上面部S352において減少し、負圧になる。スラストカラー12の下面S12とスクレーパ35の上面S35との間に介在する潤滑油L30の圧力は、後方側上面部S351と前方側上面部S352との境界部分(頂点部分)で正圧から負圧に変わる。
【0053】
[A-2]油路H35
この他に、
図1Dに示すように、スクレーパ35には油路H35が形成されている。ここでは、油路H35は、入口H351がスクレーパ35において回転方向Rの後方側Bkに位置する部分に形成されており、出口H352がスクレーパ35において回転方向Rの前方側Fwに位置する部分に形成されている。油路H35は、L字状であって、入口H351から出口H352に潤滑油L30が流れる。
【0054】
図1Dに示すように、本実施形態では、油路H35の入口H351は、スクレーパ35において鉛直方向zに沿った面に形成されている。そして、油路H35の出口H352は、スクレーパ35の上面S35のうち前方側上面部S352に形成されている。ここでは、油路H35の出口H352は、回転シャフト10が回転方向Rに回転したときにスラストカラー12の下面S12とスクレーパ35の上面S35との間に介在する潤滑油L30の油圧が最も低くなる部分に形成されている。
【0055】
図1Cに示すように、本実施形態では、油路H35は、回転シャフト10の径方向において複数が間を隔てて並ぶように設けられている。ここでは、径方向に並ぶ複数の油路H35の出口H352のそれぞれは、流路断面積が同じになるように構成されている。
【0056】
[B]作用
本実施形態のスラスト軸受装置において、スラストカラー12が回転シャフト10と共に回転方向Rに回転したときに潤滑油L30が流れる流れF1a,F1b,F2,F21,F22に関して、
図1Bおよび
図1Dを用いて説明する。
【0057】
図1Bに示すように、本実施形態においても関連技術の場合(
図7C参照)と同様に、スラストカラー12の下面S12と一のスラストパッド34(34a)の上面との間から流出した高温な潤滑油L30の流れF1aは、スラストカラー12の下面S12に付着した状態で進行する。そして、その潤滑油L30の流れF1aのうち一部の流れF1bが、スラストカラー12の下面S12とスクレーパ35の後方側上面部S351との間に流入する。
【0058】
しかし、本実施形態では、
図1Dに示したように、スラストカラー12の下面S12とスクレーパ35の後方側上面部S351との間は、潤滑油L30が流れる流路が回転方向Rに沿って狭くなる。このため、スラストカラー12の下面S12とスクレーパ35の後方側上面部S351との間に介在する潤滑油L30は、正圧になる。その結果、スラストカラー12の下面S12とスクレーパ35の後方側上面部S351との間に介在する正圧の潤滑油L30によって、潤滑油L30の流れF1bが阻害される。
【0059】
また、
図1Bでは図示を省略しているが、スラストカラー12の下面S12と一のスラストパッド34(34a)の上面との間から流出した高温な潤滑油L30の一部の流れF1(
図7C参照)は、一のスラストパッド34(34a)よりも回転方向Rの前方側Fwに位置する他のスラストパッド34(34b)において回転方向Rの後方側Bkに位置する側面に衝突する。その後、その高温な潤滑油L30の流れF1は、鉛直方向zの下方側Loへ向かう流れF2になり、温度が低い潤滑油L30と混ざる(
図1B参照)。
【0060】
上記のように冷却された潤滑油L30の流れF2のうち、一部の流れF21は、本実施形態では、
図1Bに示すように、油路H35に流入する。そして、油路H35に流入した潤滑油L30は、流れF22として油路H35から流出する。油路H35から流出した潤滑油L30の流れF22は、他のスラストパッド34(34b)の上面側へ向かう。
【0061】
図1Dに示したように、油路H35の出口H352は、スクレーパ35の前方側上面部S352に形成されている。油路H35の出口H352は、回転シャフト10が回転方向Rに回転したときにスラストカラー12の下面S12とスクレーパ35の前方側上面部S352との間に介在する潤滑油L30の油圧が最も低くなる負圧部分に位置している。このため、本実施形態の油路H35においては、入口H351と出口H352との間の差圧が大きくなるので、潤滑油L30は、
図1Bに示したように、油路H35の出口H352から自動的に噴射される。これにより、本実施形態では、スクレーパ35の上面S35において、後方側上面部S351から前方側上面部S352に進行する潤滑油L30の流れが、油路H35の出口H352から噴射された潤滑油L30によって阻害される。
【0062】
[C]まとめ
以上のように、本実施形態では、スラストカラー12の下面S12と一のスラストパッド34(34a)の上面との間から流出した高温な潤滑油L30の流れF1bが、後方側上面部S351の作用によって阻害される。これと共に、本実施形態では、油路H35の出口H352からは、温度が低い潤滑油L30が自動的に噴射されるので、スクレーパ35の上面S35において後方側上面部S351から前方側上面部S352に進行する潤滑油L30の流れが阻害される。また、本実施形態では、温度が低い潤滑油L30の流れF22が、スクレーパ35の油路H35を介して、スラストカラー12の下面S12と他のスラストパッド34(34b)の上面との間に流入する。その結果、本実施形態では、高温な潤滑油L30の流れF1bが、スラストカラー12の下面S12と他のスラストパッド34(34b)の上面との間に流入しにくくなり、温度が低い潤滑油L30と混合されやすくなる(
図1B参照)。
【0063】
したがって、本実施形態では、温度の上昇によって潤滑油L30が劣化することを抑制し、軸受性能が低下することを効果的に抑制可能である。
【0064】
<第2実施形態>
[A]構成
図2Aは、第2実施形態に係るスラスト軸受装置において、回転方向Rに並ぶスラストパッド34とスクレーパ35とを示す図である。
図2Bは、第2実施形態に係るスラスト軸受装置において、スクレーパ35の一部を拡大して示す図である。
【0065】
図2Aでは、
図1Bと同様に、鉛直面に沿った断面(
図1AのA-A部分)を示しており、縦方向が鉛直方向zであり、横方向が回転シャフト10の回転方向Rであり、紙面に直交する方向が回転シャフト10の径方向である。
図2Bでは、
図1Dと同様に、鉛直面に沿った断面を示しており、スクレーパ35の上端部分を拡大して示している。
【0066】
図2Aおよび
図2Bに示すように、本実施形態のスラスト軸受装置は、上記した第1実施形態の場合(
図1Bから
図1D参照)と同様に、複数のスクレーパ35を備える。しかし、本実施形態のスラスト軸受装置は、第1実施形態の場合に対して、スクレーパ35の構成が異なる。この点、および、これに関連する点を除き、本実施形態は、第1実施形態の場合と同様である。このため、重複する部分に関しては、適宜、説明を省略する。
【0067】
[A-1]スクレーパ35
本実施形態において、スクレーパ35は、
図2Aに示すように、第1実施形態の場合(
図1B参照)と同様に、スラストカラー12の下面S12とスラスト軸受台32の上面S32との間に設置されている。
【0068】
スクレーパ35の上面S35は、
図2Bに示すように、回転シャフト10が回転方向Rに回転したときに潤滑油L30がスラストカラー12の下面S12とスクレーパ35の上面S35との間を回転方向Rの後方側Bkから前方側Fwに流れる際に、潤滑油L30の油圧が低下する部分を含むように構成されている。スクレーパ35の上面S35は、後方側上面部S351と前方側上面部S352とを含み、後方側上面部S351と前方側上面部S352とが回転方向Rに沿って順次並ぶように設けられている。
【0069】
本実施形態では、スクレーパ35の上面S35は、
図2Bに示すように、第1実施形態の場合(
図1B参照)と異なり、後方側上面部S351とスラストカラー12の下面S12との間に介在する隙間が回転方向Rにおいて一定な第1の幅W1になるように構成されている。また、スクレーパ35の上面S35は、前方側上面部S352とスラストカラー12の下面S12との間に介在する隙間が回転方向Rにおいて一定な第2の幅W2になるように構成されている。ここでは、第1の幅W1が第2の幅W2よりも狭くなっている。
【0070】
これにより、本実施形態では、
図2Bに示すように、スラストカラー12の下面S12とスクレーパ35の上面S35との間に介在する潤滑油L30の圧力は、後方側上面部S351において一定である。これに対して、スラストカラー12の下面S12とスクレーパ35の上面S35との間に介在する潤滑油L30の圧力は、前方側上面部S352において減少し、負圧が発生する。スラストカラー12の下面S12とスクレーパ35の上面S35との間に介在する潤滑油L30の圧力は、後方側上面部S351と前方側上面部S352との境界部分(段差部分)で減少し始めて、負圧に変わる。スラストカラー12の下面S12とスクレーパ35の上面S35との間の流路は、後方側上面部S351よりも前方側上面部S352の方が広くなるので、潤滑油L30の圧力低下が生ずる。
【0071】
[A-2]油路H35
この他に、
図2Bに示すように、スクレーパ35には油路H35が形成されている。油路H35は、第1実施形態の場合(
図1B参照)と同様に、入口H351がスクレーパ35において回転方向Rの後方側Bkに位置する部分に形成されており、出口H352がスクレーパ35において回転方向Rの前方側Fwに位置する部分に形成されている。
【0072】
つまり、油路H35の入口H351は、スクレーパ35において鉛直方向zに沿った面に形成されている。そして、油路H35の出口H352は、スクレーパ35の上面S35に形成されている。ここでは、油路H35の出口H352は、回転シャフト10が回転方向Rに回転したときにスラストカラー12の下面S12とスクレーパ35の上面S35との間に介在する潤滑油L30の油圧が最も低くなる部分に形成されている。
【0073】
[B]作用
本実施形態のスラスト軸受装置において、スラストカラー12が回転シャフト10と共に回転方向Rに回転したときに潤滑油L30が流れる流れF1a,F1b,F2,F21,F22に関して、
図2Aおよび
図2Bを用いて説明する。
【0074】
図2Aに示すように、スラストカラー12の下面S12と一のスラストパッド34(34a)の上面との間から流出した高温な潤滑油L30の流れF1aは、スラストカラー12の下面S12に付着した状態で進行する。そして、その潤滑油L30の流れF1aのうち一部の流れF1bが、スラストカラー12の下面S12とスクレーパ35の後方側上面部S351との間に流入する。
【0075】
しかし、
図2Aに示すように、本実施形態においても、温度が低下した潤滑油L30の流れF2のうち、一部の流れF21が、油路H35に流入する。そして、油路H35に流入した潤滑油L30は、流れF21として油路H35から流出する。油路H35から流出した潤滑油L30の流れF22は、他のスラストパッド34(34b)の上面側へ向かう。
【0076】
図2Bに示したように、油路H35の出口H352は、スクレーパ35の前方側上面部S352に形成されている。油路H35の出口H352は、回転シャフト10が回転方向Rに回転したときにスラストカラー12の下面S12とスクレーパ35の前方側上面部S352との間に介在する潤滑油L30の油圧が最も低くなる負圧部分に位置している。このため、本実施形態の油路H35においても、入口H351と出口H352との間の差圧が大きくなっているので、潤滑油L30は、油路H35の出口H352から自動的に噴射される。これにより、スクレーパ35の上面S35において、後方側上面部S351から前方側上面部S352に進行する潤滑油L30の流れが、油路H35の出口H352から噴射された潤滑油L30によって阻害される。
【0077】
[C]まとめ
以上のように、本実施形態では、第1実施形態の場合と同様に、スクレーパ35に形成された油路H35の出口H352から、温度が低い潤滑油L30が自動的に噴射されるので、スクレーパ35の上面S35において後方側上面部S351から前方側上面部S352に進行する潤滑油L30の流れが阻害される。そして、本実施形態では、温度が低い潤滑油L30の流れF22が、スクレーパ35の油路H35を介して、スラストカラー12の下面S12と他のスラストパッド34(34b)の上面との間に流入する。その結果、高温な潤滑油L30の流れF1bが、スラストカラー12の下面S12と他のスラストパッド34(34b)の上面との間に流入しにくくなり、温度が低い潤滑油L30と混合されやすくなる(
図2A参照)。
【0078】
したがって、本実施形態においても、温度の上昇によって潤滑油L30が劣化することを抑制し、軸受性能が低下することを効果的に抑制可能である。
【0079】
また、本実施形態のスクレーパ35は、簡便な加工によって作製可能であるので、加工コストを低減可能である。
【0080】
<第3実施形態>
[A]構成
図3Aは、第3実施形態に係るスラスト軸受装置において、回転方向Rに並ぶスラストパッド34とスクレーパ35とを示す図である。
図3Bは、第3実施形態に係るスラスト軸受装置において、スクレーパ35の一部を拡大して示す図である。
【0081】
図3Aでは、
図1Bと同様に、鉛直面に沿った断面(
図1AのA-A部分)を示しており、縦方向が鉛直方向zであり、横方向が回転シャフト10の回転方向Rであり、紙面に直交する方向が回転シャフト10の径方向である。
図3Bでは、
図1Dと同様に、鉛直面に沿った断面を示しており、スクレーパ35の上端部分を拡大して示している。
【0082】
図3Aおよび
図3Bに示すように、本実施形態のスラスト軸受装置は、上記した第1実施形態の場合(
図1Bから
図1D参照)と同様に、複数のスクレーパ35を備える。しかし、本実施形態のスラスト軸受装置は、第1実施形態の場合と異なり、スクレーパ35に凸部351が設けられている。この点、および、これに関連する点を除き、本実施形態は、第1実施形態の場合と同様である。このため、重複する部分に関しては、適宜、説明を省略する。
【0083】
本実施形態では、凸部351は、
図3Aおよび
図3Bに示すように、スクレーパ35において鉛直方向zに沿った面であって回転方向Rの後方側Bkに位置する側面のうち、油路H35の入口H351よりも下方に位置する部分に設けられている。
【0084】
[B]作用
本実施形態のスラスト軸受装置において、スラストカラー12が回転シャフト10と共に回転方向Rに回転したときに潤滑油L30が流れる流れF1a,F1b,F2,F21,F22に関して、
図3Aおよび
図3Bを用いて説明する。
【0085】
図3Aに示すように、本実施形態においても、温度が低下した潤滑油L30の流れF2のうち、一部の流れF21が、油路H35に流入する。そして、油路H35に流入した潤滑油L30は、流れF21として油路H35から流出する。油路H35から流出した潤滑油L30の流れF22は、他のスラストパッド34(34b)の上面側へ向かう。
【0086】
本実施形態では、
図3Aおよび
図3Bに示すように、油路H35の入口H351よりも下方に位置する部分に凸部351が設けられている。このため、温度が低下した潤滑油L30の流れF2は、凸部351によって阻害され、堰き止められる。これにより、油路H35の入口H351に流入する潤滑油L30の流れF2の圧力が低下し、油路H35においては、入口H351と出口H352との間の差圧が更に大きくなる。その結果、本実施形態では、油路H35の出口H352から噴射される潤滑油L30の流速が、第1実施形態の場合よりも高くなる。
【0087】
[C]まとめ
以上のように、本実施形態では、油路H35の出口H352から噴射される潤滑油L30の流速が、第1実施形態の場合よりも高くなるので、スクレーパ35の上面S35において後方側上面部S351から前方側上面部S352に進行する潤滑油L30の流れをより効果的に阻害可能である。その結果、高温な潤滑油L30の流れF1bが、スラストカラー12の下面S12と他のスラストパッド34(34b)の上面との間に流入しにくくなり、温度が低い潤滑油L30と混合されやすくなる(
図3A参照)。
【0088】
したがって、本実施形態では、温度の上昇によって潤滑油L30が劣化することを効果的に抑制可能である。
【0089】
<第4実施形態>
[A]構成
図4Aは、第4実施形態に係るスラスト軸受装置において、回転方向Rに並ぶスラストパッド34とスクレーパ35とを示す図である。
図4Bは、第4実施形態に係るスラスト軸受装置において、スクレーパ35の一部を拡大して示す図である。
【0090】
図4Aでは、
図1Bと同様に、鉛直面に沿った断面(
図1AのA-A部分)を示しており、縦方向が鉛直方向zであり、横方向が回転シャフト10の回転方向Rであり、紙面に直交する方向が回転シャフト10の径方向である。
図4Bでは、
図1Dと同様に、鉛直面に沿った断面を示しており、スクレーパ35の上端部分を拡大して示している。
【0091】
図4Aおよび
図4Bに示すように、本実施形態のスラスト軸受装置は、上記した第1実施形態の場合(
図1Bから
図1D参照)と同様に、複数のスクレーパ35を備える。しかし、本実施形態のスラスト軸受装置は、第1実施形態の場合に対して、スクレーパ35の構成が異なる。この点、および、これに関連する点を除き、本実施形態は、第1実施形態の場合と同様である。このため、重複する部分に関しては、適宜、説明を省略する。
【0092】
[A-1]スクレーパ35
本実施形態において、スクレーパ35は、
図4Aに示すように、第1実施形態の場合(
図1B参照)と同様に、スラストカラー12の下面S12とスラスト軸受台32の上面S32との間に設置されている。
【0093】
スクレーパ35の上面S35は、
図4Bに示すように、回転シャフト10が回転方向Rに回転したときに潤滑油L30がスラストカラー12の下面S12とスクレーパ35の上面S35との間を回転方向Rの後方側Bkから前方側Fwに流れる際に、潤滑油L30の油圧が増加する部分、および、潤滑油L30の油圧が低下する部分を含むように構成されている。スクレーパ35の上面S35は、後方側上面部S351と前方側上面部S352とを含み、後方側上面部S351と前方側上面部S352とが回転方向Rに沿って順次並ぶように設けられている。
【0094】
しかし、本実施形態では、スクレーパ35の上面S35は、
図4Bに示すように、第1実施形態の場合(
図1B参照)と異なり、後方側上面部S351とスラストカラー12の下面S12との間に介在する隙間が回転方向Rにおいて一定な第1の幅W1になるように構成されている。また、スクレーパ35の上面S35は、前方側上面部S352とスラストカラー12の下面S12との間に介在する隙間が回転方向Rにおいて一定な第2の幅W2になるように構成されている。ここでは、第1の幅W1が第2の幅W2よりも広くなっている。
【0095】
これにより、本実施形態では、
図4Bに示すように、スラストカラー12の下面S12とスクレーパ35の上面S35との間に介在する潤滑油L30の圧力は、後方側上面部S351において増加する。そして、スラストカラー12の下面S12とスクレーパ35の上面S35との間に介在する潤滑油L30の圧力は、前方側上面部S352において減少する。
【0096】
[A-2]油路H35
この他に、
図4Bに示すように、スクレーパ35には油路H35が形成されている。油路H35は、入口H351がスクレーパ35において回転方向Rの後方側Bkに位置する部分に形成されており、出口H352がスクレーパ35において回転方向Rの前方側Fwに位置する部分に形成されている。
【0097】
本実施形態では、油路H35は、第1実施形態の場合(
図1B参照)と異なり、U字状であって、入口H351から出口H352に潤滑油L30が流れる。ここでは、油路H35の入口H351は、後方側上面部S351に形成されている。そして、油路H35の出口H352は、前方側上面部S352に形成されている。
【0098】
[B]作用
本実施形態のスラスト軸受装置において、スラストカラー12が回転シャフト10と共に回転方向Rに回転したときに潤滑油L30が流れる流れF1a,F1b,F2,F21,F22に関して、
図4Aおよび
図4Bを用いて説明する。
【0099】
図4Aに示すように、スラストカラー12の下面S12と一のスラストパッド34(34a)の上面との間から流出した高温な潤滑油L30の流れF1aは、スラストカラー12の下面S12に付着した状態で進行する。そして、その潤滑油L30の流れF1aのうち一部の流れF1bが、スラストカラー12の下面S12とスクレーパ35の後方側上面部S351との間に流入する。
【0100】
図4Aに示すように、本実施形態においても、温度が低下した潤滑油L30の流れF2のうち、一部の流れF21が、油路H35に流入する。そして、油路H35に流入した潤滑油L30は、流れF21として油路H35から流出する。油路H35から流出した潤滑油L30の流れF22は、他のスラストパッド34(34b)の上面側へ向かう。
【0101】
しかし、
図4Bに示したように、スラストカラー12の下面S12とスクレーパ35の後方側上面部S351との間に介在する潤滑油L30は、正圧になる。このため、本実施形態においても、スラストカラー12の下面S12とスクレーパ35の後方側上面部S351との間に介在する正圧の潤滑油L30によって、潤滑油L30の流れF1bが阻害される。
【0102】
本実施形態においても、
図4Aに示したように、冷却された潤滑油L30の流れF2のうち、一部の流れF21が、油路H35に流入する。そして、油路H35に流入した潤滑油L30は、流れF22として油路H35から流出する。油路H35から流出した潤滑油L30の流れF22は、他のスラストパッド34(34b)の上面側へ向かう。
【0103】
図4Bに示したように、スラストカラー12の下面S12とスクレーパ35の上面S35との間に介在する潤滑油L30の圧力は、後方側上面部S351において増加し、正圧になる。そして、スラストカラー12の下面S12とスクレーパ35の上面S35との間に介在する潤滑油L30の圧力は、前方側上面部S352において減少する。このため、本実施形態の油路H35においては、入口H351と出口H352との間の差圧が大きくなっているので、潤滑油L30は、
図4Aに示したように、油路H35の出口H352から自動的に噴射される。これにより、本実施形態では、スクレーパ35の上面S35において、後方側上面部S351から前方側上面部S352に進行する潤滑油L30の流れが、油路H35の出口H352から噴射された潤滑油L30によって阻害される。
【0104】
[C]まとめ
以上のように、本実施形態では、スラストカラー12の下面S12と一のスラストパッド34(34a)の上面との間から流出した高温な潤滑油L30の流れF1bが、スクレーパ35の作用によって阻害される。これと共に、本実施形態では、スクレーパ35に形成された油路H35の出口H352から、温度が低い潤滑油L30が自動的に噴射されるので、スクレーパ35の上面S35において後方側上面部S351から前方側上面部S352に進行する潤滑油L30の流れが阻害される。そして、本実施形態では、温度が低い潤滑油L30の流れF22が、スクレーパ35の油路H35を介して、スラストカラー12の下面S12と他のスラストパッド34(34b)の上面との間に流入する。その結果、本実施形態では、高温な潤滑油L30の流れF1bが、スラストカラー12の下面S12と他のスラストパッド34(34b)の上面との間に流入しにくくなり、温度が低い潤滑油L30と混合されやすくなる(
図4A参照)。
【0105】
したがって、本実施形態では、温度の上昇によって潤滑油L30が劣化することを抑制し、軸受性能が低下することを効果的に抑制可能である。
【0106】
また、本実施形態のスクレーパ35は、簡便な加工によって作製可能であるので、加工コストを低減可能である。
【0107】
<第5実施形態>
[A]構成
図5Aは、第5実施形態に係るスラスト軸受装置において、回転方向Rに並ぶスラストパッド34とスクレーパ35とを示す図である。
図5Bは、第5実施形態に係るスラスト軸受装置において、スクレーパ35の一部を拡大して示す図である。
【0108】
図5Aでは、
図1Bと同様に、鉛直面に沿った断面(
図1AのA-A部分)を示しており、縦方向が鉛直方向zであり、横方向が回転シャフト10の回転方向Rであり、紙面に直交する方向が回転シャフト10の径方向である。
図5Bでは、
図1Dと同様に、鉛直面に沿った断面を示しており、スクレーパ35の上端部分を拡大して示している。
【0109】
図5Aおよび
図5Bに示すように、本実施形態のスラスト軸受装置は、上記した第1実施形態の場合(
図1Bから
図1D参照)と同様に、複数のスクレーパ35を備える。しかし、本実施形態のスラスト軸受装置は、スクレーパ35に形成された油路H35の構成が、1実施形態の場合と異なる。この点、および、これに関連する点を除き、本実施形態は、第1実施形態の場合と同様である。このため、重複する部分に関しては、適宜、説明を省略する。
【0110】
本実施形態では、油路H35は、
図5Aおよび
図5Bに示すように、入口H351から出口H352へ向かうに伴って、流路断面積が狭くなるように構成されている。
【0111】
[B]作用
本実施形態のスラスト軸受装置において、スラストカラー12が回転シャフト10と共に回転方向Rに回転したときに潤滑油L30が流れる流れF1a,F1b,F2,F21,F22に関して、
図5Aおよび
図5Bを用いて説明する。
【0112】
図5Aに示すように、本実施形態においても、温度が低下した潤滑油L30の流れF2のうち、一部の流れF21が、油路H35に流入する。そして、油路H35に流入した潤滑油L30は、流れF21として油路H35から流出する。油路H35から流出した潤滑油L30の流れF22は、他のスラストパッド34(34b)の上面側へ向かう。
【0113】
本実施形態では、
図5Aおよび
図5Bに示すように、油路H35の流路断面積は、入口H351から出口H352へ向かうに伴って狭くなっている。このため、本実施形態では、温度が低下した潤滑油L30の流れF2の速度が第1実施形態の場合よりも高くなる。
【0114】
[C]まとめ
以上のように、本実施形態では、油路H35の出口H352から噴射される潤滑油L30の流速が、第1実施形態の場合よりも高くなるので、スクレーパ35の上面S35において後方側上面部S351から前方側上面部S352に進行する潤滑油L30の流れをより効果的に阻害可能である。その結果、高温な潤滑油L30の流れF1bが、スラストカラー12の下面S12と他のスラストパッド34(34b)の上面との間に流入しにくくなり、温度が低い潤滑油L30と混合されやすくなる(
図3A参照)。
【0115】
したがって、本実施形態では、温度の上昇によって潤滑油L30が劣化することを効果的に抑制可能である。
【0116】
<第6実施形態>
[A]構成
図6Aは、第6実施形態に係るスラスト軸受装置において、回転方向Rに並ぶスラストパッド34とスクレーパ35とを示す図である。
図6Bおよび
図6Cは、第6実施形態に係るスラスト軸受装置において、スクレーパ35の一部を拡大して示す図である。
【0117】
図6Aでは、
図1Cと同様に、水平面に沿った面を示しており、縦方向が第2水平方向yであり、横方向が第1水平方向xであり、紙面に直交する方向が鉛直方向zである。
図6Aでは、スラストパッド34の上面とスクレーパ35の上面とを拡大して示している。
【0118】
図6Bおよび
図6Cでは、
図1Dと同様に、鉛直面に沿った断面を示しており、スクレーパ35の上端部分を拡大して示している。
図6Bは、スクレーパ35において径方向の内側INに位置する部分(
図6AのX1-X1部分)を示している。これに対して、
図6Cは、スクレーパ35において径方向の外側OUTに位置する部分(
図6AのX2-X2部分)を示している。
【0119】
図6A、
図6B、および、
図6Cに示すように、本実施形態のスラスト軸受装置は、上記した第1実施形態の場合(
図1C参照)と同様に、径方向において複数の油路H35が間を隔てて並ぶようにスクレーパ35に設けられている。しかし、本実施形態のスラスト軸受装置は、油路H35の構成の一部が第1実施形態の場合と異なる。この点、および、これに関連する点を除き、本実施形態は、第1実施形態の場合と同様である。このため、重複する部分に関しては、適宜、説明を省略する。
【0120】
図6A、
図6B、および、
図6Cに示すように、本実施形態では、第1実施形態の場合(
図1C参照)と異なり、径方向に並ぶ複数の油路H35のそれぞれは、径方向において内側INから外側OUTへ向かうに伴って、出口H352の流路断面積が順次広くなるように構成されている。
【0121】
具体的には、
図6Bに示すように、径方向に並ぶ複数の油路H35のうち最も内側INに位置する油路H35の出口H352は、直径がr1である。これに対して、
図6Cに示すように、径方向に並ぶ複数の油路H35のうち最も外側OUTに位置する油路H35の出口H352は、直径がr1よりも大きいr2である。
【0122】
[B]作用
本実施形態のスラスト軸受装置の作用に関して説明する。
【0123】
スラストカラー12が回転方向Rに回転したとき、潤滑油L30の流れは、径方向において内側INよりも外側OUTの方が速くなる。つまり、径方向に並ぶ複数の油路H35において、入口H351に流入する潤滑油L30の速度は、径方向において内側INよりも外側OUTの方が高い。このため、潤滑油L30からなる油膜の温度も、径方向において異なる。
【0124】
上記したように、本実施形態では、径方向に並ぶ複数の油路H35のそれぞれは、径方向において内側INから外側OUTへ向かうに伴って、出口H352の流路断面積が順次広くなっている。このため、本実施形態では、第1実施形態の場合(
図1C参照)よりも、径方向に並ぶ複数の油路H35の出口H352から噴射される潤滑油L30の流速を、径方向において均一化することができる。つまり、本実施形態では、立軸水車1(
図7A参照)の運転によって、径方向に発生する油膜温度分布に応じて、径方向に並ぶ複数の油路H35のそれぞれから、温度低減に必要な量の潤滑油L30を噴射可能である。
【0125】
[C]まとめ
したがって、本実施形態では、温度の上昇によって潤滑油L30が劣化することを抑制し、軸受性能が低下することを効果的に抑制可能である。
【0126】
<その他>
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0127】
1:立軸水車、2:軸受ブラケット、3:スラスト軸受装置、10:回転シャフト、12:スラストカラー、30:油槽、31:ガイドメタル、32:スラスト軸受台、33:コイルスプリング、34:スラストパッド、34a:スラストパッド、34b:スラストパッド、35:スクレーパ、301:内筒部、302:外筒部、303:蓋部、351:凸部、AX:回転中心軸、Bk:後方側、Fw:前方側、H35:油路、H351:入口、H352:出口、K10:リングキー、L30:潤滑油、Lo:下方側、OUT:外側、R:回転方向、S12:下面、S32:上面、S34:上面、S341:上面前縁部、S342:上面中央部、S343:上面後縁部、
S35:上面、S351:後方側上面部、S352:前方側上面部