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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083889
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】頭部装着具およびマスク
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20240617BHJP
   A41D 23/00 20060101ALI20240617BHJP
   H04R 1/10 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
A41D13/11 H
A41D23/00 A
A41D13/11 Z
H04R1/10 101B
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197967
(22)【出願日】2022-12-12
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】514222662
【氏名又は名称】馬場 直弘
(71)【出願人】
【識別番号】522483024
【氏名又は名称】馬場 直幸
(74)【代理人】
【識別番号】100089026
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 高明
(72)【発明者】
【氏名】馬場 直弘
(72)【発明者】
【氏名】馬場 直幸
【テーマコード(参考)】
5D005
【Fターム(参考)】
5D005BB00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】マスクを着用する作業の煩わしさが軽減され、イヤーパッドの圧迫による耳の痛みも回避可能な頭部装着具およびマスクを提供する。
【解決手段】頭部装着具は、ハウジング111と、ハウジングの内方周縁部111に取り付けられ、使用時にハウジングと使用者の側頭部との間に配置されて使用者の耳を包囲するイヤーパッドと、を夫々有する一対の耳被覆部11と、一対の耳被覆部をそれぞれのイヤーパッドが互いに向き合う状態で連結し、使用時に使用者の頭部に装着されてイヤーパッドを使用者の側頭部に弾性的に押し付けるヘッドバンド部とを備える。ハウジングの厚さ方向周面部111には、使用者が口を被覆した状態で装着するマスクの紐が着脱可能に係止されて一対のハウジングの間でマスクを保持する係止部113が設けられる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、前記ハウジングの内方周縁部に取り付けられ、使用時に前記ハウジングと使用者の側頭部との間に配置されて前記使用者の耳を包囲するイヤーパッドと、を夫々有する一対の耳被覆部と、
前記一対の耳被覆部をそれぞれの前記イヤーパッドが互いに向き合う状態で連結するとともに、使用時に使用者の頭部に装着されて前記イヤーパッドを前記使用者の側頭部に弾性的に押し付けるヘッドバンド部とを備え、
前記一対の耳被覆部に備わる前記ハウジングの厚さ方向周面部には、前記使用者が口を被覆した状態で装着するマスクの紐が着脱可能に係止されて当該一対のハウジングの間で前記マスクを保持する係止部が設けられていることを特徴とする頭部装着具。
【請求項2】
前記係止部は、前記使用者が装着した場合における前記厚さ方向周面部の前部または後部のいずれかに配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の頭部装着具。
【請求項3】
前記係止部は、前記厚さ方向周面部のうち、前記使用者が装着した場合における上下方向の離れた複数の部位に設けられていることを特徴とする、請求項2に記載の頭部装着具。
【請求項4】
前記係止部は、
前記厚さ方向周面部に固定された固定部と、
前記固定部に延設され、側面視円弧状部を有し、前記円弧状部が前記厚さ方向周面部から外方へ突出するように前記固定部により固定されるフック部材とにより構成され、
前記フック部材の先端と前記厚さ方向周面部との間で前記マスクの紐を出し入れ可能な空隙部を形成するように配置されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の頭部装着具。
【請求項5】
前記ハウジングは、前記厚さ方向周面部に形成された凹部を有し、
前記フック部材は、前記凹部に、前記マスクの紐を着脱可能な状態で埋設固定されていることを特徴とする、請求項4に記載の頭部装着具。
【請求項6】
前記フック部材は、前記厚さ方向周面部に対向する部位に、前記フック部材の長さ方向に沿って設けられ、前記マスクの紐を係止固定可能な複数の係止用凹部を有することを特徴とする、請求項4に記載の頭部装着具。
【請求項7】
前記フック部材の前記円弧状部は、前記厚さ方向周面部に沿って配置され、または、前記フック部材の前記円弧状部は、前記厚さ方向周面部に交差するように配置されていることを特徴とする、請求項4に記載の頭部装着具。
【請求項8】
前記ハウジングは、前記厚さ方向周面部にその周方向に沿って互いに間隔を空けて設けられ、前記固定部を着脱可能な複数の固定用凹部を有することを特徴とする、請求項5に記載の頭部装着具。
【請求項9】
ハウジングを夫々有する一対の耳被覆部と、前記一対の耳被覆部を互いに連結するヘッドバンド部とを備え、前記ハウジングにマスク装着用の係止部が設けられた頭部装着具に装着されるマスクであって、
前記頭部装着具を装着する使用者の口を被覆可能なマスク本体部と、
前記マスク本体部の正面両側縁に固定され、前記頭部装着具を装着した使用者の口に前記マスク本体部が配置された状態で前記係止部に係止可能な長さ寸法を有する左右一対の紐とを備えることを特徴とするマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクを装着して使用することのできる頭部装着具および頭部装着具に装着して使用するマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、感染症対策の一環として、マスクの着用が奨励されている。
【0003】
その一方で、音楽聴取等の目的でヘッドホンを利用する者も多い。また、交通機関に乗車した場合や、カフェ等で仕事をする場合に周囲の騒音から逃れるために、いわゆる防音イヤーマフ、消音ヘッドホンもしくはノイズキャンセリングヘッドホンと称する器具を使用する場合も多々ある。
【0004】
しかし、このようなヘッドホン等の頭部装着具を装着した状態でマスクを着用しようとすると、頭部装着具を一度外し、マスクを着用した後、再度頭部装着具を装着しなければならず、マスクを着用する際の作業が煩わしく、不便であった。
【0005】
他方で、マスクを着用した状態で頭部装着具を装着すると、マスクの紐がかかっている使用者の耳を頭部装着具のイヤーパッドが圧迫することで、耳が痛くなる場合があるという問題があった。
【0006】
特許文献1には、使用者の口を覆うことが可能なドーム状の本体部と、使用者の首の後ろ側で支持される支持部と、本体部の側縁と支持部との間に掛け渡された左右一対の掛け紐と、本体部の側縁と支持部との間に、掛け紐に対して並列に掛け渡された伸縮掛け紐と、支持部に連結され、使用者の首周りに装着可能なネックバンドを有するネックバンド型のイヤホンとを備えたイヤホンシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2022-096885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前掲文献1のイヤホンシステムは、掛け紐および伸縮掛け紐により支持部と連結される専用の本体部を使用するものであって、一般的なマスクの使用を前提としておらず、上記課題の解決に何ら寄与するものではない。
【0009】
このような実情に鑑み、本発明は、マスクを着用する際の作業の煩わしさが軽減されて便利に使用することができ、イヤーパッドの圧迫により生じる耳の痛みを回避することのできる頭部装着具およびそのような頭部装着具に装着して使用するマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明にあっては、ハウジングと、前記ハウジングの内方周縁部に取り付けられ、使用時に前記ハウジングと使用者の側頭部との間に配置されて前記使用者の耳を包囲するイヤーパッドと、を夫々有する一対の耳被覆部と、前記一対の耳被覆部をそれぞれの前記イヤーパッドが互いに向き合う状態で連結するとともに、使用時に使用者の頭部に装着されて前記イヤーパッドを前記使用者の側頭部に弾性的に押し付けるヘッドバンド部とを備える頭部装着具であって、前記一対の耳被覆部に備わる前記ハウジングの厚さ方向周面部には、前記使用者が口を被覆した状態で装着するマスクの紐が着脱可能に係止されて当該一対のハウジングの間で前記マスクを保持する係止部が設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明にあっては、前記係止部は、前記使用者が装着した場合における前記厚さ方向周面部の前部または後部のいずれかに配置されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明にあっては、前記係止部は、前記厚さ方向周面部のうち、前記使用者が装着した場合における上下方向の離れた複数の部位に設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明にあっては、前記係止部は、前記厚さ方向周面部に固定された固定部と、前記固定部に延設され、側面視円弧状部を有し、前記円弧状部が前記厚さ方向周面部から外方へ突出するように前記固定部により固定されるフック部材とにより構成され、前記フック部材の先端と前記厚さ方向周面部との間で前記マスクの紐を出し入れ可能な空隙部を形成するように配置されていることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明にあっては、前記ハウジングは、前記厚さ方向周面部に形成された凹部を有し、前記フック部材は、前記凹部に、前記マスクの紐を着脱可能な状態で埋設固定されていることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明にあっては、前記フック部材は、前記厚さ方向周面部に対向する部位に、前記フック部材の長さ方向に沿って設けられ、前記マスクの紐を係止固定可能な複数の係止用凹部を有することを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の発明にあっては、前記フック部材の前記円弧状部は、前記厚さ方向周面部に沿って配置され、または、前記フック部材の前記円弧状部は、前記厚さ方向周面部に交差するように配置されていることを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載の発明にあっては、前記ハウジングは、前記厚さ方向周面部にその周方向に沿って互いに間隔を空けて設けられ、前記固定部を着脱可能な複数の固定用凹部を有することを特徴とする。
【0018】
請求項9に記載の発明にあっては、ハウジングを夫々有する一対の耳被覆部と、前記一対の耳被覆部を互いに連結するヘッドバンド部とを備え、前記ハウジングにマスク装着用の係止部が設けられた頭部装着具に装着されるマスクであって、前記頭部装着具を装着する使用者の口を被覆可能なマスク本体部と、前記マスク本体部の正面両側縁に固定され、前記頭部装着具を装着した使用者の口に前記マスク本体部が配置された状態で前記係止部に係止可能な長さ寸法を有する左右一対の紐とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の発明によれば、耳被覆部に備わるハウジングの厚さ方向周面部に、使用者が口を被覆した状態で装着するマスクの紐が係止されるマスク装着用の係止部が設けられることにより、マスクの紐を耳被覆部の外側から係止部に係止させ、マスクを着用することが可能となる。
従って、マスクを着用する際に頭部装着具を外す必要がなく、マスクを装着する際の作業の煩わしさが軽減され、頭部装着具を便利に使用することが可能となる。
【0020】
さらに、マスクの着用時に、マスクの紐がハウジングの厚さ方向周面部に、即ち、耳被覆部の外側に配置されるため、使用者の耳がマスクの紐がかかっている状態でイヤーパッドにより圧迫される事態を回避することが可能となる。
従って、頭部装着具を装着した際に生じる痛みが軽減され、マスクを着用しながら、頭部装着具を使用して快適に音楽等を楽しむことが可能となる。
【0021】
請求項2に記載の発明によれば、係止部がハウジングの厚さ方向周面部の前部または後部のいずれかに配置されることにより、マスクの紐の長さや使用者の頭部の大きさ等の個別事情に応じて紐を引っ掛ける際に使用する係止部を切り換え、多様な長さの紐を有するマスクを使用したり、等しい長さの紐を有するマスクであっても頭部の大きさが異なる使用者への適用に対応したりすることが可能となる。
【0022】
そして、厚さ方向周面部の前部に設けられた係止部を使用する場合は、子供用のマスク等、比較的紐が短いマスクを使用することが可能となり、厚さ方向周面部の後部に設けられた係止部を使用する場合は、大人用のマスク等、比較的紐が長いマスクを使用することが可能となる。
【0023】
請求項3に記載の発明によれば、係止部がハウジングの厚さ方向周面部のうち、上下方向に離れた複数の部位に設けられることで、マスクの紐をそれぞれの部位の係止部を跨ぐように引っ掛けて使用することが可能となる。
これにより、1つの部位の係止部のみに引っ掛ける場合と比較して、頭部装着具に対してマスクをより安定した状態で装着することができる。
【0024】
請求項4に記載の発明によれば、係止部が固定部とフック部材とにより構成され、フック部材に側面視円弧状部が設けられるとともに、フック部材の先端と厚さ方向周面部との間に空隙部が形成され、この空隙部を介してマスクの紐を出し入れし、フック部材に紐を係止可能であることにより、係止部を、一般的な部材であるフック部材を用いて構成したことから、簡易な構成によりコストを低減して係止部を形成することができ、かつ、フック部材により頭部装着具にマスクを容易に装着することが可能となる。
また、フック部材を用いることで、マスクの紐を係止部に簡単に係止させるとともに、係止させた紐を係止部から簡単に取り外すことが可能となり、頭部装着具に対するマスクの取り外しを迅速かつ簡単に行うことが可能となる。
【0025】
請求項5に記載の発明によれば、ハウジングの厚さ方向周面部に凹部が形成され、フック部材がこの凹部に埋設固定されることで、フック部材を凹部内に収めてハウジングの外形輪郭から外方へのフック部材の突出を回避し、頭部装着具の使用時や持ち運び等の運搬時に、フック部材が使用者の身体に触れたり、他の物品等に引っ掛かったりする事態を抑制することが可能となる。
【0026】
請求項6に記載の発明によれば、フック部材のうち、ハウジングの厚さ方向周面部に対向する部位に、フック部材の長さ方向に沿って複数の係止用凹部が形成されることにより、マスクの装着に使用する係止溝を、装着時におけるマスクの状態に応じて切り換えることが可能となる。
例えば、マスクを通常どおりに口を覆うように使用する場合と、飲み物を口にする際にマスクを顎に掛ける場合とで、使用する係止用凹部を細かく切り換え、それぞれの場合でマスクをより安定して着用することが可能となる。
従って、より状況に応じて、マスクを適切に頭部装着具のハウジングに係止させることが可能となる。
【0027】
請求項7に記載の発明によれば、フック部材の円弧状部が厚さ方向周面部に沿って配置されるか、厚さ方向周面部に交差するように配置され、即ち、フック部材が厚さ方向周面部の周方向に対して縦向きまたは横向きに配置されるために、空隙部を使用者の好みまたは使い勝手に応じた適宜の向きに配置し、マスクの取り外しをより簡単に行うことが可能となる。
【0028】
請求項8に記載の発明によれば、ハウジングの厚さ方向周面部にフック部材を着脱式に固定可能な複数の固定用凹部が形成されることにより、フック部材の取り付けに実際に使用する固定用凹部を適宜に選択し、変更することが可能となる。
これにより、マスクの使用状況や使用者各自の頭部の大きさ等の個別事情に対して、さらに細やかに対応することが可能となり、使い勝手の更なる向上を図ることができる。
【0029】
請求項9に記載の発明によれば、頭部装着具を装着する使用者の口を被覆可能なマスク本体部が設けられ、マスク本体部の正面両側縁に紐が固定され、この紐の長さ寸法がマスク本体部を使用者の口に配置した状態で係止部に紐が係止される長さ寸法であることにより、マスクを頭部装着具に適切に取り付け、マスクを着用しながら、頭部装着具を使用して音楽等を楽しむことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の第1実施形態に係る頭部装着具の一例であるヘッドホンの構成を示す正面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るヘッドホンに備わる耳被覆部の側面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るヘッドホンの使用時において、本発明の一実施の形態に係るマスクの装着状態を示す正面図である。
図4】本発明の第2実施形態に係るヘッドホンに備わる耳被覆部の側面図である。
図5】本発明の第3実施形態に係るヘッドホンに備わる耳被覆部を示し、(a)は側面図、(b)は正面図である。
図6】本発明の第4実施形態に係るヘッドホンに備わる耳被覆部を示し、(a)は側面図、(b)は係止部の拡大図である。
図7】本発明の第5実施形態に係るヘッドホンに備わる耳被覆部を示し、(a)及び(b)はその正面図である。
図8】本発明の第6実施形態に係るヘッドホンに備わる耳被覆部を示し、その側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に図面を参照して、頭部装着具の一例としてのヘッドホンを用いて、本発明の実施の形態について説明する。本発明は、外観上の形態において同様の構成を有する、いわゆる防音イヤーマフ、消音ヘッドホンもしくはノイズキャンセリングヘッドホンにおいても同様に適用される。
【0032】
図1は、本発明の第1実施形態に係る、頭部装着具としてのヘッドホン1の構成を示す正面図である。
【0033】
図2は、ヘッドホン1に備わる耳被覆部11の側面図である。図2(a)は、本実施形態の第1例に係る耳被覆部11を示し、図2(b)は、本実施形態の第2例である変形例に係る耳被覆部11を示す。図2(a)および図2(b)において、紙面に向かって右側は、ヘッドホン1を装着した状態における使用者の前方に相当し、上側は、上方に相当する。
【0034】
図3は、ヘッドホン1の使用時における装着状態を示す正面図である。
【0035】
以下に、図2および図3を適宜に参照しながら、図1に基づき、本実施形態に係るヘッドホン1の構成について説明する。
【0036】
ヘッドホン1は、ヘッドバンド型またはオーバヘッド型のヘッドホンであり、一対の耳被覆部11と、ヘッドバンド部12と、スピーカーユニット13と、プラグ14とを備える。
【0037】
本実施の形態に係る一対の耳被覆部11は、主な構成要素として、側面円形状のハウジング111と、ハウジング111の内方周縁部に取り付けられたリング状のイヤーパッド112とを夫々備えている。
【0038】
ハウジング111は、スピーカーユニット13およびその周辺電気部品を収容する。ハウジング111は、薄型カップ状をなし、厚さ方向周面部111aと、厚さ方向端面部111bと、内方周縁部111cとを有する。スピーカーユニット13は、厚さ方向周面部111aにより画成される円筒状の内部空間に配置されている。
【0039】
ハウジング111は、内方周縁部111cが内方に向き、厚さ方向端面部111bが外方に向くように、厚さ方向周面部111aの中心軸が略水平となるようにして配置される。
【0040】
本実施の形態にあっては、厚さ方向周面部111aは、厚さ方向周面部111aの中心軸に対して垂直な断面において円形状をなして形成されている。なお、本実施の形態に限定されるものではなく、厚さ方向周面部111aの断面形状は、楕円形であってもよいし、四角形その他、適宜の形状であってもよい。
【0041】
イヤーパッド112は、ハウジング111の内方周縁部111cに取り付けられ、ヘッドホン1の使用時にハウジング111と使用者の側頭部との間に配置されて使用者の耳を包囲した状態で耳に圧接する。
【0042】
イヤーパッド112は、環状またはドーナッツ状をなす密閉型であり、使用者の耳をその全周に亘って包囲可能な空洞を形成する。
【0043】
ヘッドバンド部12は、一対の耳被覆部11をそれぞれのイヤーパッド112が互いに向き合う状態で連結するように構成されている。ヘッドバンド部12は、主な構成要素として、アーム部材121と、アジャスタ部材122と、バンド部材123とを備える。
アーム部材121は、ハウジング111の厚さ方向周面部111aにその一端が取り付けられている。
【0044】
アジャスタ部材122は、全体円筒状をなし、アーム部材121に対し、アーム部材121がアジャスタ部材122を径方向に貫通して摺動可能に取り付けられている。
【0045】
これにより、アジャスタ部材122は、アーム部材121上をアーム部材121に沿って移動可能であり、耳被覆部11とアジャスタ部材122との距離を調整することにより、頭部の大きさが異なる複数の使用者への装着に対応可能に形成されている。
【0046】
バンド部材123は、一定の幅寸法を有する円弧状に形成され、一対の耳被覆部11の間を長さ方向に掛け渡されて配置され、両端部は左右のアジャスタ部材122のそれぞれに結合固定されている。
バンド部材123は、弾性を有する適宜の材料により形成され、ヘッドホン1を装着した場合に、左右のアジャスタ部材122を介して、イヤーパッド112を使用者の頭部に弾性を以て押し付けるように構成されている。
【0047】
プラグ14は、一対のコード141を介して左右夫々の耳被覆部11に収容されたスピーカーユニット13およびその周辺電気部品と接続され、これらの部品に電力を供給するとともに、スピーカーユニット13に対し音源機器から出力される音声信号を提供する。
【0048】
本実施の形態にあっては、ハウジング111の厚さ方向周面部111aには、マスク201を着用する際にその紐212を係止させる係止部113が設けられている。
【0049】
図2(a)に示すように、係止部113は、固定部113aと、フック部材113bとにより構成される。
【0050】
本実施の形態にあっては、固定部113aは、固定片部113a-1と、フック部材の直線状部1132の基端部1132aと、固定片部113a-1を固定する固定ピン1133とにより形成されている。
【0051】
フック部材113bは、固定部113を介してハウジング111の厚さ方向周面部111aに対し、固定部113aにより厚さ方向周面部111aの外周面に固定され、厚さ方向周面部111aの外方へ突出するように取り付けられている。
本実施形態において、フック部材113bは、側面略J字状に形成され、円弧状部1131と、直線状部1132とを有している。
【0052】
直線状部1132の基端部1132aはハウジング111の厚さ方向周面部111aに固定され、さらに、固定片部113a-1が、フック部材113bの先端部の下方に設けられた固定ピン1133と直線状部1132との間に架設されて、フック部材113bを強固にハウジングの厚さ方向周面部111aに対して固定している。
本実施の形態にあっては、円弧状部1131は、厚さ方向周面部111aの周面方向に沿って配置されており、フック部材113bは、厚さ方向周面部111aに対し、ヘッドホン1の正面視において円弧状部113が側方視縦方向となるように取り付けられている。
【0053】
フック部材113bの先端と厚さ方向周面部111aとの間においては、空隙部113cが形成されている。本実施形態では、フック部材113bの円弧状部1131の先端部と固定片部113a-1との間に形成されている。
その結果、マスク201を着用する際に、空隙部113cを介してマスクの紐212を出し入れし、係止部113、特に円弧状部1131に引っ掛けることが可能である。
【0054】
係止部113は、使用者がヘッドホン1を装着した場合におけるハウジング11の厚さ方向周面部111aの前部または後部のいずれかに配置されることが可能である。
即ち、厚さ方向周面部111aの径方向中心に対してヘッドホン1を装着した状態における前方の半体部、つまり、厚さ方向周面部111aの前部111afに配置することも、後方の半体部、つまり、厚さ方向周面部111aの後部111arに配置することも可能である。
【0055】
図2(a)は、係止部113が厚さ方向周面部111aの前部111afに設けられる場合を、図2(b)は、係止部113が厚さ方向周面部111aの後部111arに設けられる場合を夫々示す。
なお、本実施の形態にあっては、図2(a)および図2(b)に示すように、同一構成の係止部113を、空隙部113cの開く方向をいずれも上方に向かうようにして取り付けているが、この形態には限定されない。
【0056】
ヘッドホン1を装着した状態でマスク201を着用する際に、使用者は、図3に示すように、マスク201の一方の紐212を片側の耳被覆部11に備わる係止部113に係止させ、他方の紐212をもう片側の耳被覆部11に備わる係止部113に係止させる。
このようにして、左右の耳被覆部11の間にマスク201を掛け渡した状態で、ガーゼまたは不織布等の各種素材からなるマスク本体部211を使用者の口およびその周辺に宛がい、口をマスク本体部211で覆うことが可能である。
【0057】
マスク201の紐212は、図3に示す正面視においてマスク本体部211の両側縁211a、211aに固定され、ヘッドホン1を装着した使用者の口およびその周辺にマスク本体部211が宛がわれた状態で係止部113に係止可能な長さ寸法を有する。
即ち、本実施の形態に係るマスクは、ヘッドホン1を装着する場合の専用マスクとして形成されており、耳被覆部11と干渉しないように、マスク本体部211は小型に形成されている。
また、図3に示す実施の形態に場合には、係止部113が厚さ方向周面部111aの前部111afに設けられる場合であることから、紐212は、通常のマスクの紐よりも短く、係止部113に係止できる長さ寸法に形成されている。
【0058】
本実施形態に係るヘッドホン1およびマスク201は、以上の構成を有する。本実施形態により得られる効果について、以下に説明する。
第1に、耳被覆部11に備わるハウジング111の厚さ方向周面部111aの前部111afに、使用者Uが口を被覆した状態で装着するマスク201の紐212が係止されるマスク装着用の係止部113が設けられていることから、マスクの紐212を耳被覆部11の外側から係止部113に係止させ、マスク201を着用することが可能となる。従って、マスク201を着用する際にヘッドホン1を外す必要がなく、マスク201を装着する際の作業の煩わしさが軽減され、ヘッドホン1を便利に使用することが可能となる。
【0059】
さらに、マスク201の着用時に、マスクの紐212がハウジング111の厚さ方向周面部111aに、即ち、耳被覆部11の外側に配置されるため、使用者Uの耳がマスクの紐212がかかっている状態でイヤーパッド112により圧迫される事態を回避することが可能となる。
従って、ヘッドホン1を装着した際に生じる痛みが軽減され、マスク201を着用しながら、ヘッドホン1を使用して快適に音楽等を楽しむことが可能となる。
【0060】
第2に、係止部113がハウジング111の厚さ方向周面部111aの前部111afまたは後部111arのいずれかに配置されることで、マスク201の紐212の長さや使用者Uの頭部の大きさ等の個別事情に応じて紐212を引っ掛ける際に使用する係止部113を切り換え、多様な長さの紐212を有するマスク201を使用したり、等しい長さの紐212を有するマスク201であっても頭部の大きさが異なる使用者Uへの適用に対応したりすることが可能となる。
【0061】
そして、厚さ方向周面部111aの前部111afに設けられた係止部113(図2(a))を使用する場合は、子供用のマスク等、比較的紐212が短いマスク201を良好に装着することができ、厚さ方向周面部111aの後部111arに設けられた係止部113(図2(b))を使用する場合は、一般に広く使用されている大人用のマスク等、比較的紐212が長いマスク201を良好に装着することができる。
【0062】
第3に、係止部113が固定部113aとフック部材113bとにより構成され、フック部材113bに円弧状部1131が設けられるとともに、フック部材113bの先端と厚さ方向周面部111aとの間に空隙部113cが形成され、この空隙部113cを介してマスク201の紐212を出し入れし、フック部材113bに紐212を係止可能であることから、フック部材113bを用いた比較的簡易な構成により係止部113を形成し、製造コストを低減した状態で、マスク201を装着できるヘッドホン1を提供することができる。
そして、側面視J字状のフック部材113bを用いることで、マスク201の紐212を係止部113に簡単に係止させるとともに、係止させた紐212を係止部113から簡単に取り外すことが可能となり、ヘッドホン1に対するマスク201の取り外しを迅速かつ簡単に行うことが可能となる。
【0063】
図4は、本発明の第2実施形態に係るヘッドホン1に備わる耳被覆部11の側面図である。図4において、紙面に向かって右側は、ヘッドホン1を装着した状態における使用者の前方に相当し、上側は上方に相当する。
本実施形態を含め、以下に示すそれぞれの実施形態に係るヘッドホン1は、係止部113およびその関連構成に特徴を有する。係止部113以外の構成は、先に述べた第1実施形態に係るヘッドホン1と同様である。
【0064】
本実施形態において、係止部113は、ハウジング111の厚さ方向周面部111aのうち、使用者がヘッドホン1を装着した状態における上下方向の離れた部位、具体的には、厚さ方向周面部111aの前部111afにおいて、厚さ方向周面部111aの中心軸よりも上方の第1部位と、下方の第2部位とのそれぞれに設けられている。
係止部113の構成自体は、第1実施形態と同様であり、係止部113は、厚さ方向周面部111aに固定され、固定部113aと、固定部113aに延設され、厚さ方向周面部113aから固定部113aを介して外方へ突出するフック部材113bとにより構成されている。
【0065】
このように、係止部113がハウジング111の厚さ方向周面部111aのうち、上下方向に離れた複数の部位に設けられることで、マスク201の紐212をそれぞれの部位の係止部113を跨ぐように引っ掛けて使用することが可能となる。これにより、1つの部位の係止部113のみに引っ掛ける場合と比較して、ヘッドホン1に対してマスク201をより安定した状態で装着することができる。
【0066】
図5は、本発明の第3実施形態に係るヘッドホン1に備わる耳被覆部11の(a)側面図および(b)正面図である。
図5(a)において、紙面に向かって右側は、ヘッドホン1を装着した状態における使用者の前方に相当し、上側は、上方に相当する。図5(b)において、紙面に向かって右側は、ヘッドホン1を装着した状態における使用者の右方に相当し、上側は、上方に相当する。
【0067】
本実施形態において、耳被覆部11は、ハウジング111の厚さ方向周面部111aの前部側111afにおいて、径方向中間部に凹部Hが設けられている。
係止部113は、凹部H内に収納固定されており、側面視J字状に形成されたフック部材からなる。
即ち、直線状部1132(埋設されている)と、直線状部1132の先端側に延設された円弧状部1131により形成されていることは前記実施の形態と同様であるが、本実施の形態にあっては、直線状部1132が直接にハウジング11に埋設固定されている。
凹部Hは、厚さ方向周面部111aの外周面方向に開口するとともに、厚さ方向端面部111bにも開口し、厚さ方向周面部111aの中心軸に対して径方向および軸方向の双方に開けた状態にある。
フック部材113bは、凹部Hの内部において、マスク201の紐212を円弧状部1131に係止可能な状態で埋設固定され、ハウジング111の外形輪郭の内側に収められている。
【0068】
このように、ハウジング111の厚さ方向周面部111aに凹部Hが形成され、フック部材113bがこの凹部Hに埋設固定されることで、フック部材113bを凹部H内に収め、ハウジング111の外形輪郭から外方へのフック部材113bの突出させず、ヘッドホン1の使用時や持ち運び等の運搬時に、フック部材113bが使用者の身体に触れたり、他の物品等に引っ掛かったりする事態を防止することが可能となる。
【0069】
図6は、本発明の第4実施形態に係る耳被覆部11の(a)側面図および(b)係止部113の拡大図である。図6(a)において、紙面に向かって右側は、ヘッドホン1を装着した状態における使用者の前方に相当し、上側は、上方に相当する。
【0070】
本実施形態において、係止部113は、厚さ方向周面部111aに固定され、係止部113を取り付ける際の基礎となる固定部113aと、固定部113aに延設され、厚さ方向周面部111aから固定部113aを介して外方へ突出するフック部材113bとにより構成されており、基本的構成は、図2に示す第1実施の形態と同様である。
【0071】
そして、図6(b)に示すように、フック部材113bの円弧状部1131のうち、ハウジング111の厚さ方向周面部111aと対向する部位、具体的には、円弧状部1131の内周部に、マスク201の紐212を係止固定可能な複数の係止用凹部C(C1、C2)が形成されている。
本実施形態において、係止用凹部Cは、円弧状部1131が描く円弧の径方向内方を向く底面を有する切欠きであり、内周部の周方向に間隔を空けた複数の箇所に設けられている。
具体的には、係止用凹部Cは、円弧の中心よりも上方の第1部位と、円弧の中心よりも下方の第2部位とに設けられ、第2部位の係止用凹部C2の方が第1部位の係止用凹部C1よりも中心から上下方向に離れた位置に設けられている。
【0072】
本実施の形態にあっては、フック部材113bのうち、ハウジング111の厚さ方向周面部111aに対向する部位に、フック部材113bの長さ方向に沿って複数の係止用凹部C(C1、C2)が形成されていることから、マスクの紐212に使用する係止用凹部Cを、装着時におけるマスク201の状態に応じて切り換えて使用することが可能となる。
例えば、マスク201を通常どおりに口を覆うように使用する場合と、飲み物を口にする際にマスク201を顎に掛ける場合とで使用する係止用凹部C1又はC2を切り換え、それぞれの場合でマスク201をより安定して着用することが可能となる。
例えば、マスク201を通常どおりに使用する場合は、第1部位の係止用凹部C1を使用する一方、顎に掛ける場合は、下方の第2部位の係止用凹部C2を使用する。
【0073】
図7は、本発明の第5実施形態に係るヘッドホン1に備わる耳被覆部11の正面図である。図7(a)は、本実施形態の第1例に係る耳被覆部11を示し、図7(b)は、本実施形態の第2例、即ち、変形例に係る耳被覆部11を示す。
図7(a)および図7(b)において、紙面に向かって右側は、ヘッドホン1を装着した状態における使用者の内方(左方)に相当し、上側は、上方に相当する。
【0074】
本実施形態において、係止部113は、厚さ方向周面部111aに固定され、係止部113を取り付ける際の基礎となる固定部113aと、固定部に延設されるフック部材113bとにより構成される。
【0075】
図7(a)に示すように、係止部113は、フック部材113bの先端側に円弧状部1131が形成され、円弧状部1131が厚さ方向周面部111aの周方向に沿って配置されている。即ち、フック部材113bは、円弧状部1131の描く円弧の長さ方向が厚さ方向周面部111aの外周面に対して周方向に沿うように、つまり、ヘッドホン1の正面視において縦置きにして配置されている。
【0076】
係止部113の配置ないし向きは、これに限定されるものではなく、図7(b)に示すように、フック部材113bの円弧状部1131が厚さ方向周面部111aの周方向に交差するように配置することも可能である。
即ち、フック部材113bは、円弧状部1131の描く円弧の長さ方向が厚さ方向周面部111aの外周面に対して周方向に直交するように、即ち、ヘッドホン1の正面視において横置きにして配置してもよい。
【0077】
このように、フック部材113bの円弧状部1131が厚さ方向周面部111aの周方向に沿って配置されるか、又は厚さ方向周面部111aの周方向に交差するように配置され、即ち、フック部材113bがヘッドホン1の正面視において縦置きまたは横置きにして配置されることにより、空隙部113cを使用者の好みまたは使い勝手に応じた適宜の向きに配置し、マスク201の取り外しをより簡単に行うことが可能となる。
【0078】
図8は、本発明の第6実施形態に係るヘッドホン1に備わる耳被覆部11の側面図である。図8において、紙面に向かって右側は、ヘッドホン1を装着した状態における使用者の前方に相当し、上側は上方に相当する。
【0079】
本実施形態において、ハウジング111は、厚さ方向周面部111aに、係止部113の固定部を形成する着脱可能に形成された複数の固定用凹部h1~h4を有する。
これらの複数の固定用凹部h1~h4は、厚さ方向周面部111aの周方向に互いに一定の間隔を空けて配置されている。
係止部113は、固定部113aおよびフック部材113bにより構成され、固定部113aの直線状部1132の基端部1132aを複数の固定用凹部h1~h4のいずれかに挿入固定することにより、厚さ方向周面部111aに固定される。
固定部113aの基端部1132aを固定用凹部h1~h4に挿入固定した状態で、係止部113が固定され、フック部材113bが厚さ方向周面部111aから外方へ突出した配置され、マスク201の紐212を係止できるようになる。
【0080】
このように、ハウジング111の厚さ方向周面部111aにフック部材113bを着脱式に固定可能な複数の固定用凹部h1~h4が形成されることで、フック部材113bの取り付けに実際に使用する固定用凹部h1~h4を適宜に選択し、変更することが可能となる。これにより、マスク201の使用状況や使用者各自の頭部の大きさ等の個別事情に対してより細やかに対応することが可能となり、使い勝手の更なる向上を図ることができる。
【0081】
本発明に係る頭部装着具及びマスクの具体的構成に関しては、本願発明の要旨の範囲内において上記各実施の形態には限定されない。
【符号の説明】
【0082】
1…頭部装着具(ヘッドホン)
11…耳被覆部
12…ヘッドバンド部
111…ハウジング
111a…ハウジングの厚さ方向周面部
111b…ハウジングの厚さ方向端面部
111c…ハウジングの内方周縁部
111af…厚さ方向周面部の前部
111ar…厚さ方向周面部の後部
112…イヤーパッド
113…係止部
113a…固定部
113a-1…固定片部
113b…フック部材
113c…空隙部
1131…円弧状部
1132…直線状部
1132a…直線状部の基端部
1133…固定ピン
121…アーム部材
122…アジャスタ部材
123…バンド部材
13…スピーカーユニット
14…プラグ
201…マスク
211…マスク本体部
211a…マスク本体部の側縁
212…マスクの紐
C、C1、C2…係止用凹部
H…凹部
h1~h4…固定用凹部
U…使用者(頭部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-03-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、前記ハウジングの内方周縁部に取り付けられ、使用時に前記ハウジングと使用者の側頭部との間に配置されて前記使用者の耳を包囲するイヤーパッドと、を夫々有する一対の耳被覆部と、
前記一対の耳被覆部をそれぞれの前記イヤーパッドが互いに向き合う状態で連結するとともに、使用時に使用者の頭部に装着されて前記イヤーパッドを前記使用者の側頭部に弾性的に押し付けるヘッドバンド部とを備え、
前記一対の耳被覆部に備わる前記ハウジングの厚さ方向周面部には、前記使用者が口を被覆した状態で装着するマスクの紐が着脱可能に係止されて当該一対のハウジングの間で前記マスクを保持する係止部が設けられ、
前記係止部は、前記使用者が装着した場合における前記厚さ方向周面部の後部に配置され、
前記係止部は、
前記厚さ方向周面部に固定された固定部と、
前記固定部に延設され、側面視円弧状部を有し、前記円弧状部が前記厚さ方向周面部から外方へ突出するように前記固定部により固定されるフック部材とにより構成され、
前記フック部材の先端と前記厚さ方向周面部との間で前記マスクの紐を出し入れ可能な空隙部を形成するように配置されていることを特徴とする頭部装着具。
【請求項2】
ハウジングと、前記ハウジングの内方周縁部に取り付けられ、使用時に前記ハウジングと使用者の側頭部との間に配置されて前記使用者の耳を包囲するイヤーパッドと、を夫々有する一対の耳被覆部と、
前記一対の耳被覆部をそれぞれの前記イヤーパッドが互いに向き合う状態で連結するとともに、使用時に使用者の頭部に装着されて前記イヤーパッドを前記使用者の側頭部に弾性的に押し付けるヘッドバンド部とを備え、
前記一対の耳被覆部に備わる前記ハウジングの厚さ方向周面部には、前記使用者が口を被覆した状態で装着するマスクの紐が着脱可能に係止されて当該一対のハウジングの間で前記マスクを保持する係止部が設けられていることを特徴とする頭部装着具。
前記係止部は、
前記厚さ方向周面部に固定された固定部と、
前記固定部に延設され、側面視円弧状部を有し、前記円弧状部が前記厚さ方向周面部から外方へ突出するように前記固定部により固定されるフック部材とにより構成され、
前記フック部材の先端と前記厚さ方向周面部との間で前記マスクの紐を出し入れ可能な空隙部を形成するように配置され、
前記ハウジングは、前記厚さ方向周面部に形成された凹部を有し、
前記フック部材は、前記凹部に、前記マスクの紐を着脱可能な状態で埋設固定されていることを特徴とする頭部装着具。
【請求項3】
ハウジングと、前記ハウジングの内方周縁部に取り付けられ、使用時に前記ハウジングと使用者の側頭部との間に配置されて前記使用者の耳を包囲するイヤーパッドと、を夫々有する一対の耳被覆部と、
前記一対の耳被覆部をそれぞれの前記イヤーパッドが互いに向き合う状態で連結するとともに、使用時に使用者の頭部に装着されて前記イヤーパッドを前記使用者の側頭部に弾性的に押し付けるヘッドバンド部とを備え、
前記一対の耳被覆部に備わる前記ハウジングの厚さ方向周面部には、前記使用者が口を被覆した状態で装着するマスクの紐が着脱可能に係止されて当該一対のハウジングの間で前記マスクを保持する係止部が設けられ、
前記係止部は、
前記厚さ方向周面部に固定された固定部と、
前記固定部に延設され、側面視円弧状部を有し、前記円弧状部が前記厚さ方向周面部から外方へ突出するように前記固定部により固定されるフック部材とにより構成され、
前記フック部材の先端と前記厚さ方向周面部との間で前記マスクの紐を出し入れ可能な空隙部を形成するように配置され、
前記ハウジングは、前記厚さ方向周面部に形成された凹部を有し、
前記フック部材は、前記凹部に、前記マスクの紐を着脱可能な状態で埋設固定され、
前記ハウジングは、前記厚さ方向周面部にその周方向に沿って互いに間隔を空けて設けられ、前記固定部を着脱可能な複数の固定用凹部を有することを特徴とする頭部装着具。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクを装着して使用することのできる頭部装着具および頭部装着具に装着して使用するマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、感染症対策の一環として、マスクの着用が奨励されている。
【0003】
その一方で、音楽聴取等の目的でヘッドホンを利用する者も多い。また、交通機関に乗車した場合や、カフェ等で仕事をする場合に周囲の騒音から逃れるために、いわゆる防音イヤーマフ、消音ヘッドホンもしくはノイズキャンセリングヘッドホンと称する器具を使用する場合も多々ある。
【0004】
しかし、このようなヘッドホン等の頭部装着具を装着した状態でマスクを着用しようとすると、頭部装着具を一度外し、マスクを着用した後、再度頭部装着具を装着しなければならず、マスクを着用する際の作業が煩わしく、不便であった。
【0005】
他方で、マスクを着用した状態で頭部装着具を装着すると、マスクの紐がかかっている使用者の耳を頭部装着具のイヤーパッドが圧迫することで、耳が痛くなる場合があるという問題があった。
【0006】
特許文献1には、使用者の口を覆うことが可能なドーム状の本体部と、使用者の首の後ろ側で支持される支持部と、本体部の側縁と支持部との間に掛け渡された左右一対の掛け紐と、本体部の側縁と支持部との間に、掛け紐に対して並列に掛け渡された伸縮掛け紐と、支持部に連結され、使用者の首周りに装着可能なネックバンドを有するネックバンド型のイヤホンとを備えたイヤホンシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2022-096885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前掲文献1のイヤホンシステムは、掛け紐および伸縮掛け紐により支持部と連結される専用の本体部を使用するものであって、一般的なマスクの使用を前提としておらず、上記課題の解決に何ら寄与するものではない。
【0009】
このような実情に鑑み、本発明は、マスクを着用する際の作業の煩わしさが軽減されて便利に使用することができ、イヤーパッドの圧迫により生じる耳の痛みを回避することのできる頭部装着具およびそのような頭部装着具に装着して使用するマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明にあっては、 ハウジングと、前記ハウジングの内方周縁部に取り付けられ、使用時に前記ハウジングと使用者の側頭部との間に配置されて前記使用者の耳を包囲するイヤーパッドと、を夫々有する一対の耳被覆部と、前記一対の耳被覆部をそれぞれの前記イヤーパッドが互いに向き合う状態で連結するとともに、使用時に使用者の頭部に装着されて前記イヤーパッドを前記使用者の側頭部に弾性的に押し付けるヘッドバンド部とを備え、前記一対の耳被覆部に備わる前記ハウジングの厚さ方向周面部には、前記使用者が口を被覆した状態で装着するマスクの紐が着脱可能に係止されて当該一対のハウジングの間で前記マスクを保持する係止部が設けられ、前記係止部は、前記使用者が装着した場合における前記厚さ方向周面部の後部に配置され、前記係止部は、前記厚さ方向周面部に固定された固定部と、前記固定部に延設され、側面視円弧状部を有し、前記円弧状部が前記厚さ方向周面部から外方へ突出するように前記固定部により固定されるフック部材とにより構成され、前記フック部材の先端と前記厚さ方向周面部との間で前記マスクの紐を出し入れ可能な空隙部を形成するように配置されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明にあっては、ハウジングと、前記ハウジングの内方周縁部に取り付けられ、使用時に前記ハウジングと使用者の側頭部との間に配置されて前記使用者の耳を包囲するイヤーパッドと、を夫々有する一対の耳被覆部と、前記一対の耳被覆部をそれぞれの前記イヤーパッドが互いに向き合う状態で連結するとともに、使用時に使用者の頭部に装着されて前記イヤーパッドを前記使用者の側頭部に弾性的に押し付けるヘッドバンド部とを備え、前記一対の耳被覆部に備わる前記ハウジングの厚さ方向周面部には、前記使用者が口を被覆した状態で装着するマスクの紐が着脱可能に係止されて当該一対のハウジングの間で前記マスクを保持する係止部が設けられていることを特徴とする頭部装着具。
前記係止部は、前記厚さ方向周面部に固定された固定部と、前記固定部に延設され、側面視円弧状部を有し、前記円弧状部が前記厚さ方向周面部から外方へ突出するように前記固定部により固定されるフック部材とにより構成され、前記フック部材の先端と前記厚さ方向周面部との間で前記マスクの紐を出し入れ可能な空隙部を形成するように配置され、
前記ハウジングは、前記厚さ方向周面部に形成された凹部を有し、前記フック部材は、前記凹部に、前記マスクの紐を着脱可能な状態で埋設固定されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明にあっては、ハウジングと、前記ハウジングの内方周縁部に取り付けられ、使用時に前記ハウジングと使用者の側頭部との間に配置されて前記使用者の耳を包囲するイヤーパッドと、を夫々有する一対の耳被覆部と、前記一対の耳被覆部をそれぞれの前記イヤーパッドが互いに向き合う状態で連結するとともに、使用時に使用者の頭部に装着されて前記イヤーパッドを前記使用者の側頭部に弾性的に押し付けるヘッドバンド部とを備え、前記一対の耳被覆部に備わる前記ハウジングの厚さ方向周面部には、前記使用者が口を被覆した状態で装着するマスクの紐が着脱可能に係止されて当該一対のハウジングの間で前記マスクを保持する係止部が設けられ、前記係止部は、前記厚さ方向周面部に固定された固定部と、前記固定部に延設され、側面視円弧状部を有し、前記円弧状部が前記厚さ方向周面部から外方へ突出するように前記固定部により固定されるフック部材とにより構成され、前記フック部材の先端と前記厚さ方向周面部との間で前記マスクの紐を出し入れ可能な空隙部を形成するように配置され、前記ハウジングは、前記厚さ方向周面部に形成された凹部を有し、前記フック部材は、前記凹部に、前記マスクの紐を着脱可能な状態で埋設固定され、前記ハウジングは、前記厚さ方向周面部にその周方向に沿って互いに間隔を空けて設けられ、前記固定部を着脱可能な複数の固定用凹部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、耳被覆部に備わるハウジングの厚さ方向周面部に、使用者が口を被覆した状態で装着するマスクの紐が係止されるマスク装着用の係止部が設けられることにより、マスクの紐を耳被覆部の外側から係止部に係止させ、マスクを着用することが可能となる。
【0014】
従って、マスクを着用する際に頭部装着具を外す必要がなく、マスクを装着する際の作業の煩わしさが軽減され、頭部装着具を便利に使用することが可能となる。
【0015】
さらに、マスクの着用時に、マスクの紐がハウジングの厚さ方向周面部に、即ち、耳被覆部の外側に配置されるため、使用者の耳がマスクの紐がかかっている状態でイヤーパッドにより圧迫される事態を回避することが可能となる。
【0016】
従って、頭部装着具を装着した際に生じる痛みが軽減され、マスクを着用しながら、頭部装着具を使用して快適に音楽等を楽しむことが可能となる。
【0017】
また、請求項1に記載の発明によれば、係止部がハウジングの厚さ方向周面部の後部に配置されることにより、大人用のマスク等、比較的紐が長いマスクを使用することが可能となる。
【0018】
また、係止部が固定部とフック部材とにより構成され、フック部材に側面視円弧状部が設けられるとともに、フック部材の先端と厚さ方向周面部との間に空隙部が形成され、この空隙部を介してマスクの紐を出し入れし、フック部材に紐を係止可能であることにより、係止部を、一般的な部材であるフック部材を用いて構成したことから、簡易な構成によりコストを低減して係止部を形成することができ、かつ、フック部材により頭部装着具にマスクを容易に装着することが可能となる。
【0019】
さらに、フック部材を用いることで、マスクの紐を係止部に簡単に係止させるとともに、係止させた紐を係止部から簡単に取り外すことが可能となり、頭部装着具に対するマスクの取り外しを迅速かつ簡単に行うことが可能となる。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、ハウジングの厚さ方向周面部に凹部が形成され、フック部材がこの凹部に埋設固定されることで、フック部材を凹部内に収めてハウジングの外形輪郭から外方へのフック部材の突出を回避し、頭部装着具の使用時や持ち運び等の運搬時に、フック部材が使用者の身体に触れたり、他の物品等に引っ掛かったりする事態を抑制することが可能となる。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、ハウジングの厚さ方向周面部にフック部材を着脱式に固定可能な複数の固定用凹部が形成されることにより、フック部材の取り付けに実際に使用する固定用凹部を適宜に選択し、変更することが可能となる。これにより、マスクの使用状況や使用者各自の頭部の大きさ等の個別事情に対して、さらに細やかに対応することが可能となり、使い勝手の更なる向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態に係る頭部装着具の一例であるヘッドホンの構成を示す正面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るヘッドホンに備わる耳被覆部の側面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るヘッドホンの使用時において、本発明の一実施の形態に係るマスクの装着状態を示す正面図である。
図4】本発明の第2実施形態に係るヘッドホンに備わる耳被覆部の側面図である。
図5】本発明の第3実施形態に係るヘッドホンに備わる耳被覆部を示し、(a)は側面図、(b)は正面図である。
図6】本発明の第4実施形態に係るヘッドホンに備わる耳被覆部を示し、(a)は側面図、(b)は係止部の拡大図である。
図7】本発明の第5実施形態に係るヘッドホンに備わる耳被覆部を示し、(a)及び(b)はその正面図である。
図8】本発明の第6実施形態に係るヘッドホンに備わる耳被覆部を示し、その側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に図面を参照して、頭部装着具の一例としてのヘッドホンを用いて、本発明の実施の形態について説明する。本発明は、外観上の形態において同様の構成を有する、いわゆる防音イヤーマフ、消音ヘッドホンもしくはノイズキャンセリングヘッドホンにおいても同様に適用される。
【0024】
図1は、本発明の第1実施形態に係る、頭部装着具としてのヘッドホン1の構成を示す正面図である。
【0025】
図2は、ヘッドホン1に備わる耳被覆部11の側面図である。図2(a)は、本実施形態の第1例に係る耳被覆部11を示し、図2(b)は、本実施形態の第2例である変形例に係る耳被覆部11を示す。図2(a)および図2(b)において、紙面に向かって右側は、ヘッドホン1を装着した状態における使用者の前方に相当し、上側は、上方に相当する。
【0026】
図3は、ヘッドホン1の使用時における装着状態を示す正面図である。
【0027】
以下に、図2および図3を適宜に参照しながら、図1に基づき、本実施形態に係るヘッドホン1の構成について説明する。
【0028】
ヘッドホン1は、ヘッドバンド型またはオーバヘッド型のヘッドホンであり、一対の耳被覆部11と、ヘッドバンド部12と、スピーカーユニット13と、プラグ14とを備える。
【0029】
本実施の形態に係る一対の耳被覆部11は、主な構成要素として、側面円形状のハウジング111と、ハウジング111の内方周縁部に取り付けられたリング状のイヤーパッド112とを夫々備えている。
【0030】
ハウジング111は、スピーカーユニット13およびその周辺電気部品を収容する。ハウジング111は、薄型カップ状をなし、厚さ方向周面部111aと、厚さ方向端面部111bと、内方周縁部111cとを有する。スピーカーユニット13は、厚さ方向周面部111aにより画成される円筒状の内部空間に配置されている。
【0031】
ハウジング111は、内方周縁部111cが内方に向き、厚さ方向端面部111bが外方に向くように、厚さ方向周面部111aの中心軸が略水平となるようにして配置される。
【0032】
本実施の形態にあっては、厚さ方向周面部111aは、厚さ方向周面部111aの中心軸に対して垂直な断面において円形状をなして形成されている。なお、本実施の形態に限定されるものではなく、厚さ方向周面部111aの断面形状は、楕円形であってもよいし、四角形その他、適宜の形状であってもよい。
【0033】
イヤーパッド112は、ハウジング111の内方周縁部111cに取り付けられ、ヘッドホン1の使用時にハウジング111と使用者の側頭部との間に配置されて使用者の耳を包囲した状態で耳に圧接する。
【0034】
イヤーパッド112は、環状またはドーナッツ状をなす密閉型であり、使用者の耳をその全周に亘って包囲可能な空洞を形成する。
【0035】
ヘッドバンド部12は、一対の耳被覆部11をそれぞれのイヤーパッド112が互いに向き合う状態で連結するように構成されている。ヘッドバンド部12は、主な構成要素として、アーム部材121と、アジャスタ部材122と、バンド部材123とを備える。
アーム部材121は、ハウジング111の厚さ方向周面部111aにその一端が取り付けられている。
【0036】
アジャスタ部材122は、全体円筒状をなし、アーム部材121に対し、アーム部材121がアジャスタ部材122を径方向に貫通して摺動可能に取り付けられている。
【0037】
これにより、アジャスタ部材122は、アーム部材121上をアーム部材121に沿って移動可能であり、耳被覆部11とアジャスタ部材122との距離を調整することにより、頭部の大きさが異なる複数の使用者への装着に対応可能に形成されている。
【0038】
バンド部材123は、一定の幅寸法を有する円弧状に形成され、一対の耳被覆部11の間を長さ方向に掛け渡されて配置され、両端部は左右のアジャスタ部材122のそれぞれに結合固定されている。
【0039】
バンド部材123は、弾性を有する適宜の材料により形成され、ヘッドホン1を装着した場合に、左右のアジャスタ部材122を介して、イヤーパッド112を使用者の頭部に弾性を以て押し付けるように構成されている。
【0040】
プラグ14は、一対のコード141を介して左右夫々の耳被覆部11に収容されたスピーカーユニット13およびその周辺電気部品と接続され、これらの部品に電力を供給するとともに、スピーカーユニット13に対し音源機器から出力される音声信号を提供する。
【0041】
本実施の形態にあっては、ハウジング111の厚さ方向周面部111aには、マスク201を着用する際にその紐212を係止させる係止部113が設けられている。
【0042】
図2(a)に示すように、係止部113は、固定部113aと、フック部材113bとにより構成される。
【0043】
本実施の形態にあっては、固定部113aは、固定片部113a-1と、フック部材の直線状部1132の基端部1132aと、固定片部113a-1を固定する固定ピン1133とにより形成されている。
【0044】
フック部材113bは、固定部113を介してハウジング111の厚さ方向周面部111aに対し、固定部113aにより厚さ方向周面部111aの外周面に固定され、厚さ方向周面部111aの外方へ突出するように取り付けられている。
本実施形態において、フック部材113bは、側面略J字状に形成され、円弧状部1131と、直線状部1132とを有している。
【0045】
直線状部1132の基端部1132aはハウジング111の厚さ方向周面部111aに固定され、さらに、固定片部113a-1が、フック部材113bの先端部の下方に設けられた固定ピン1133と直線状部1132との間に架設されて、フック部材113bを強固にハウジングの厚さ方向周面部111aに対して固定している。
【0046】
本実施の形態にあっては、円弧状部1131は、厚さ方向周面部111aの周面方向に沿って配置されており、フック部材113bは、厚さ方向周面部111aに対し、ヘッドホン1の正面視において円弧状部113が側方視縦方向となるように取り付けられている。
【0047】
フック部材113bの先端と厚さ方向周面部111aとの間においては、空隙部113cが形成されている。本実施形態では、フック部材113bの円弧状部1131の先端部と固定片部113a-1との間に形成されている。
【0048】
その結果、マスク201を着用する際に、空隙部113cを介してマスクの紐212を出し入れし、係止部113、特に円弧状部1131に引っ掛けることが可能である。
【0049】
係止部113は、使用者がヘッドホン1を装着した場合におけるハウジング11の厚さ方向周面部111aの前部または後部のいずれかに配置されることが可能である。
【0050】
即ち、厚さ方向周面部111aの径方向中心に対してヘッドホン1を装着した状態における前方の半体部、つまり、厚さ方向周面部111aの前部111afに配置することも、後方の半体部、つまり、厚さ方向周面部111aの後部111arに配置することも可能である。
【0051】
図2(a)は、係止部113が厚さ方向周面部111aの前部111afに設けられる場合を、図2(b)は、係止部113が厚さ方向周面部111aの後部111arに設けられる場合を夫々示す。
【0052】
なお、本実施の形態にあっては、図2(a)および図2(b)に示すように、同一構成の係止部113を、空隙部113cの開く方向をいずれも上方に向かうようにして取り付けているが、この形態には限定されない。
【0053】
ヘッドホン1を装着した状態でマスク201を着用する際に、使用者は、図3に示すように、マスク201の一方の紐212を片側の耳被覆部11に備わる係止部113に係止させ、他方の紐212をもう片側の耳被覆部11に備わる係止部113に係止させる。
【0054】
このようにして、左右の耳被覆部11の間にマスク201を掛け渡した状態で、ガーゼまたは不織布等の各種素材からなるマスク本体部211を使用者の口およびその周辺に宛がい、口をマスク本体部211で覆うことが可能である。
【0055】
マスク201の紐212は、図3に示す正面視においてマスク本体部211の両側縁211a、211aに固定され、ヘッドホン1を装着した使用者の口およびその周辺にマスク本体部211が宛がわれた状態で係止部113に係止可能な長さ寸法を有する。
【0056】
即ち、本実施の形態に係るマスクは、ヘッドホン1を装着する場合の専用マスクとして形成されており、耳被覆部11と干渉しないように、マスク本体部211は小型に形成されている。
【0057】
また、図3に示す実施の形態に場合には、係止部113が厚さ方向周面部111aの前部111afに設けられる場合であることから、紐212は、通常のマスクの紐よりも短く、係止部113に係止できる長さ寸法に形成されている。
【0058】
本実施形態に係るヘッドホン1およびマスク201は、以上の構成を有する。本実施形態により得られる効果について、以下に説明する。
【0059】
第1に、耳被覆部11に備わるハウジング111の厚さ方向周面部111aの前部111afに、使用者Uが口を被覆した状態で装着するマスク201の紐212が係止されるマスク装着用の係止部113が設けられていることから、マスクの紐212を耳被覆部11の外側から係止部113に係止させ、マスク201を着用することが可能となる。従って、マスク201を着用する際にヘッドホン1を外す必要がなく、マスク201を装着する際の作業の煩わしさが軽減され、ヘッドホン1を便利に使用することが可能となる。
【0060】
さらに、マスク201の着用時に、マスクの紐212がハウジング111の厚さ方向周面部111aに、即ち、耳被覆部11の外側に配置されるため、使用者Uの耳がマスクの紐212がかかっている状態でイヤーパッド112により圧迫される事態を回避することが可能となる。
従って、ヘッドホン1を装着した際に生じる痛みが軽減され、マスク201を着用しながら、ヘッドホン1を使用して快適に音楽等を楽しむことが可能となる。
【0061】
第2に、係止部113がハウジング111の厚さ方向周面部111aの前部111afまたは後部111arのいずれかに配置されることで、マスク201の紐212の長さや使用者Uの頭部の大きさ等の個別事情に応じて紐212を引っ掛ける際に使用する係止部113を切り換え、多様な長さの紐212を有するマスク201を使用したり、等しい長さの紐212を有するマスク201であっても頭部の大きさが異なる使用者Uへの適用に対応したりすることが可能となる。
【0062】
そして、厚さ方向周面部111aの前部111afに設けられた係止部113(図2(a))を使用する場合は、子供用のマスク等、比較的紐212が短いマスク201を良好に装着することができ、厚さ方向周面部111aの後部111arに設けられた係止部113(図2(b))を使用する場合は、一般に広く使用されている大人用のマスク等、比較的紐212が長いマスク201を良好に装着することができる。
【0063】
第3に、係止部113が固定部113aとフック部材113bとにより構成され、フック部材113bに円弧状部1131が設けられるとともに、フック部材113bの先端と厚さ方向周面部111aとの間に空隙部113cが形成され、この空隙部113cを介してマスク201の紐212を出し入れし、フック部材113bに紐212を係止可能であることから、フック部材113bを用いた比較的簡易な構成により係止部113を形成し、製造コストを低減した状態で、マスク201を装着できるヘッドホン1を提供することができる。
そして、側面視J字状のフック部材113bを用いることで、マスク201の紐212を係止部113に簡単に係止させるとともに、係止させた紐212を係止部113から簡単に取り外すことが可能となり、ヘッドホン1に対するマスク201の取り外しを迅速かつ簡単に行うことが可能となる。
【0064】
図4は、本発明の第2実施形態に係るヘッドホン1に備わる耳被覆部11の側面図である。図4において、紙面に向かって右側は、ヘッドホン1を装着した状態における使用者の前方に相当し、上側は上方に相当する。
本実施形態を含め、以下に示すそれぞれの実施形態に係るヘッドホン1は、係止部113およびその関連構成に特徴を有する。係止部113以外の構成は、先に述べた第1実施形態に係るヘッドホン1と同様である。
【0065】
本実施形態において、係止部113は、ハウジング111の厚さ方向周面部111aのうち、使用者がヘッドホン1を装着した状態における上下方向の離れた部位、具体的には、厚さ方向周面部111aの前部111afにおいて、厚さ方向周面部111aの中心軸よりも上方の第1部位と、下方の第2部位とのそれぞれに設けられている。
係止部113の構成自体は、第1実施形態と同様であり、係止部113は、厚さ方向周面部111aに固定され、固定部113aと、固定部113aに延設され、厚さ方向周面部113aから固定部113aを介して外方へ突出するフック部材113bとにより構成されている。
【0066】
このように、係止部113がハウジング111の厚さ方向周面部111aのうち、上下方向に離れた複数の部位に設けられることで、マスク201の紐212をそれぞれの部位の係止部113を跨ぐように引っ掛けて使用することが可能となる。これにより、1つの部位の係止部113のみに引っ掛ける場合と比較して、ヘッドホン1に対してマスク201をより安定した状態で装着することができる。
【0067】
図5は、本発明の第3実施形態に係るヘッドホン1に備わる耳被覆部11の(a)側面図および(b)正面図である。
図5(a)において、紙面に向かって右側は、ヘッドホン1を装着した状態における使用者の前方に相当し、上側は、上方に相当する。図5(b)において、紙面に向かって右側は、ヘッドホン1を装着した状態における使用者の右方に相当し、上側は、上方に相当する。
【0068】
本実施形態において、耳被覆部11は、ハウジング111の厚さ方向周面部111aの前部側111afにおいて、径方向中間部に凹部Hが設けられている。
係止部113は、凹部H内に収納固定されており、側面視J字状に形成されたフック部材からなる。
即ち、直線状部1132(埋設されている)と、直線状部1132の先端側に延設された円弧状部1131により形成されていることは前記実施の形態と同様であるが、本実施の形態にあっては、直線状部1132が直接にハウジング11に埋設固定されている。
凹部Hは、厚さ方向周面部111aの外周面方向に開口するとともに、厚さ方向端面部111bにも開口し、厚さ方向周面部111aの中心軸に対して径方向および軸方向の双方に開けた状態にある。
フック部材113bは、凹部Hの内部において、マスク201の紐212を円弧状部1131に係止可能な状態で埋設固定され、ハウジング111の外形輪郭の内側に収められている。
【0069】
このように、ハウジング111の厚さ方向周面部111aに凹部Hが形成され、フック部材113bがこの凹部Hに埋設固定されることで、フック部材113bを凹部H内に収め、ハウジング111の外形輪郭から外方へのフック部材113bの突出させず、ヘッドホン1の使用時や持ち運び等の運搬時に、フック部材113bが使用者の身体に触れたり、他の物品等に引っ掛かったりする事態を防止することが可能となる。
【0070】
図6は、本発明の第4実施形態に係る耳被覆部11の(a)側面図および(b)係止部113の拡大図である。図6(a)において、紙面に向かって右側は、ヘッドホン1を装着した状態における使用者の前方に相当し、上側は、上方に相当する。
【0071】
本実施形態において、係止部113は、厚さ方向周面部111aに固定され、係止部113を取り付ける際の基礎となる固定部113aと、固定部113aに延設され、厚さ方向周面部111aから固定部113aを介して外方へ突出するフック部材113bとにより構成されており、基本的構成は、図2に示す第1実施の形態と同様である。
【0072】
そして、図6(b)に示すように、フック部材113bの円弧状部1131のうち、ハウジング111の厚さ方向周面部111aと対向する部位、具体的には、円弧状部1131の内周部に、マスク201の紐212を係止固定可能な複数の係止用凹部C(C1、C2)が形成されている。
本実施形態において、係止用凹部Cは、円弧状部1131が描く円弧の径方向内方を向く底面を有する切欠きであり、内周部の周方向に間隔を空けた複数の箇所に設けられている。
具体的には、係止用凹部Cは、円弧の中心よりも上方の第1部位と、円弧の中心よりも下方の第2部位とに設けられ、第2部位の係止用凹部C2の方が第1部位の係止用凹部C1よりも中心から上下方向に離れた位置に設けられている。
【0073】
本実施の形態にあっては、フック部材113bのうち、ハウジング111の厚さ方向周面部111aに対向する部位に、フック部材113bの長さ方向に沿って複数の係止用凹部C(C1、C2)が形成されていることから、マスクの紐212に使用する係止用凹部Cを、装着時におけるマスク201の状態に応じて切り換えて使用することが可能となる。
例えば、マスク201を通常どおりに口を覆うように使用する場合と、飲み物を口にする際にマスク201を顎に掛ける場合とで使用する係止用凹部C1又はC2を切り換え、それぞれの場合でマスク201をより安定して着用することが可能となる。
例えば、マスク201を通常どおりに使用する場合は、第1部位の係止用凹部C1を使用する一方、顎に掛ける場合は、下方の第2部位の係止用凹部C2を使用する。
【0074】
図7は、本発明の第5実施形態に係るヘッドホン1に備わる耳被覆部11の正面図である。図7(a)は、本実施形態の第1例に係る耳被覆部11を示し、図7(b)は、本実施形態の第2例、即ち、変形例に係る耳被覆部11を示す。
図7(a)および図7(b)において、紙面に向かって右側は、ヘッドホン1を装着した状態における使用者の内方(左方)に相当し、上側は、上方に相当する。
【0075】
本実施形態において、係止部113は、厚さ方向周面部111aに固定され、係止部113を取り付ける際の基礎となる固定部113aと、固定部に延設されるフック部材113bとにより構成される。
【0076】
図7(a)に示すように、係止部113は、フック部材113bの先端側に円弧状部1131が形成され、円弧状部1131が厚さ方向周面部111aの周方向に沿って配置されている。即ち、フック部材113bは、円弧状部1131の描く円弧の長さ方向が厚さ方向周面部111aの外周面に対して周方向に沿うように、つまり、ヘッドホン1の正面視において縦置きにして配置されている。
【0077】
係止部113の配置ないし向きは、これに限定されるものではなく、図7(b)に示すように、フック部材113bの円弧状部1131が厚さ方向周面部111aの周方向に交差するように配置することも可能である。
即ち、フック部材113bは、円弧状部1131の描く円弧の長さ方向が厚さ方向周面部111aの外周面に対して周方向に直交するように、即ち、ヘッドホン1の正面視において横置きにして配置してもよい。
【0078】
このように、フック部材113bの円弧状部1131が厚さ方向周面部111aの周方向に沿って配置されるか、又は厚さ方向周面部111aの周方向に交差するように配置され、即ち、フック部材113bがヘッドホン1の正面視において縦置きまたは横置きにして配置されることにより、空隙部113cを使用者の好みまたは使い勝手に応じた適宜の向きに配置し、マスク201の取り外しをより簡単に行うことが可能となる。
【0079】
図8は、本発明の第6実施形態に係るヘッドホン1に備わる耳被覆部11の側面図である。図8において、紙面に向かって右側は、ヘッドホン1を装着した状態における使用者の前方に相当し、上側は上方に相当する。
【0080】
本実施形態において、ハウジング111は、厚さ方向周面部111aに、係止部113の固定部を形成する着脱可能に形成された複数の固定用凹部h1~h4を有する。
これらの複数の固定用凹部h1~h4は、厚さ方向周面部111aの周方向に互いに一定の間隔を空けて配置されている。
係止部113は、固定部113aおよびフック部材113bにより構成され、固定部113aの直線状部1132の基端部1132aを複数の固定用凹部h1~h4のいずれかに挿入固定することにより、厚さ方向周面部111aに固定される。
固定部113aの基端部1132aを固定用凹部h1~h4に挿入固定した状態で、係止部113が固定され、フック部材113bが厚さ方向周面部111aから外方へ突出した配置され、マスク201の紐212を係止できるようになる。
【0081】
このように、ハウジング111の厚さ方向周面部111aにフック部材113bを着脱式に固定可能な複数の固定用凹部h1~h4が形成されることで、フック部材113bの取り付けに実際に使用する固定用凹部h1~h4を適宜に選択し、変更することが可能となる。これにより、マスク201の使用状況や使用者各自の頭部の大きさ等の個別事情に対してより細やかに対応することが可能となり、使い勝手の更なる向上を図ることができる。
【0082】
本発明に係る頭部装着具及びマスクの具体的構成に関しては、本願発明の要旨の範囲内において上記各実施の形態には限定されない。
【符号の説明】
【0083】
1…頭部装着具(ヘッドホン)
11…耳被覆部
12…ヘッドバンド部
111…ハウジング
111a…ハウジングの厚さ方向周面部
111b…ハウジングの厚さ方向端面部
111c…ハウジングの内方周縁部
111af…厚さ方向周面部の前部
111ar…厚さ方向周面部の後部
112…イヤーパッド
113…係止部
113a…固定部
113a-1…固定片部
113b…フック部材
113c…空隙部
1131…円弧状部
1132…直線状部
1132a…直線状部の基端部
1133…固定ピン
121…アーム部材
122…アジャスタ部材
123…バンド部材
13…スピーカーユニット
14…プラグ
201…マスク
211…マスク本体部
211a…マスク本体部の側縁
212…マスクの紐
C、C1、C2…係止用凹部
H…凹部
h1~h4…固定用凹部
U…使用者(頭部)