(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000839
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】撮像装置および画像処理方法
(51)【国際特許分類】
H04N 25/76 20230101AFI20231226BHJP
H04N 23/54 20230101ALI20231226BHJP
H04N 23/60 20230101ALI20231226BHJP
【FI】
H04N5/374
H04N5/225 300
H04N5/232 290
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099785
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島田 義尚
【テーマコード(参考)】
5C024
5C122
【Fターム(参考)】
5C024CX27
5C024CY17
5C024EX12
5C024EX15
5C024EX43
5C024HX17
5C024HX21
5C024HX28
5C122DA03
5C122DA04
5C122DA09
5C122DA26
5C122DA30
5C122EA28
5C122FB05
5C122FC06
5C122FC10
5C122FC11
5C122FC15
5C122FD07
5C122FF15
5C122FG11
5C122FH01
5C122FH23
5C122HA81
5C122HA86
5C122HB01
5C122HB06
5C122HB09
(57)【要約】
【課題】高速映像位相差読出モードで読み出される信号を画像処理して得られる観察画像の横スジをより目立たなくできる撮像装置等を提供する。
【解決手段】画素領域2aは、各画素2pが複数の光電変換素子PDを有し、遮光領域VOBと有効領域VReffとを備える。読出回路2bは、画素領域2aの、第1の行から複数の光電変換素子PDの信号を加算した画素信号を読み出し、第2の行から位相差情報を複数の信号を読み出す。横スジ補正回路3bは、有効領域VReffの第2の行から得られる画素信号に、遮光領域VOBから読み出した信号による第1のオフセット補正と、所定値による第2のオフセット補正との一方を行う。画像処理回路3は、パラメータに応じて画像データを処理する。横スジ補正回路3bは、パラメータに応じて、第1または第2のオフセット補正を選択する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つのマイクロレンズと、複数の光電変換素子と、をそれぞれ備える複数の画素が、行単位で2次元に配置され、遮光された複数の行を有する遮光領域と、光が到達する複数の行を有する有効領域と、を備える画素領域と、
前記遮光領域および前記有効領域の第1の行の各画素から前記複数の光電変換素子の信号を全て加算した画素信号を読み出し、前記遮光領域および前記有効領域の第2の行の各画素から位相差情報を含む複数の信号を読み出す読出回路と、
前記有効領域の前記第2の行から読み出した複数の信号から得られる画素信号に、前記遮光領域の前記第1の行から読み出した画素信号および前記遮光領域の前記第2の行から読み出した複数の信号に基づく第1のオフセット補正と、予め決められた値に基づく第2のオフセット補正と、の一方を行う横スジ補正回路と、
前記第1のオフセット補正または前記第2のオフセット補正が行われた画素信号、および前記有効領域の前記第1の行から読み出した画素信号に基づき構成された画像データを、パラメータに応じて画像処理する画像処理回路と、
を有し、
前記横スジ補正回路は、前記パラメータに応じて、前記第1のオフセット補正と、前記第2のオフセット補正との何れを行うかを選択する
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記画像処理回路は、前記画像データにノイズ低減処理を行うノイズ低減回路を備え、
前記パラメータは、前記ノイズ低減処理の強度を含むことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記横スジ補正回路は、前記強度が、所定の強度以下の場合は前記第1のオフセット補正を選択し、前記所定の強度よりも大きい場合は前記第2のオフセット補正を選択することを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記画像処理回路は、γ補正特性に基づき前記画像データを補正するγ補正回路をさらに備え、
前記横スジ補正回路は、ある入力画素値におけるγ補正特性の傾きが所定の傾きよりも大きい場合、前記強度に応じた選択を行うことを特徴とする請求項2または3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記横スジ補正回路は、前記傾きが前記所定の傾き以下の場合、前記強度に応じた選択を行わず、前記第1のオフセット補正と前記第2のオフセット補正との内の任意の一方を行うことを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
環境温度を測定する温度センサをさらに備え、
前記予め決められた値は、所定の温度において、遮光状態にした前記有効領域の、前記第1の行から読み出された画素信号、および前記第2の行から読み出された複数の信号に基づき生成され、
前記横スジ補正回路は、前記強度が前記所定の強度以下であり、かつ、前記環境温度が前記所定の温度を含む所定の温度範囲の外である場合、前記強度に応じて前記第1のオフセット補正を選択することを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記横スジ補正回路は、前記強度が前記所定の強度以下であり、かつ、前記環境温度が前記所定の温度範囲の内である場合、前記強度に応じた選択を行わず、前記第1のオフセット補正と前記第2のオフセット補正との内の任意の一方を行うことを特徴とする請求項6に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記画像処理回路は、前記有効領域の前記第1の行から読み出された画素信号、および前記第2の行から読み出された複数の信号を、設定した増幅率で増幅する増幅回路をさらに備え、
前記パラメータは、前記増幅率を含むことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記横スジ補正回路は、前記増幅率が、所定の増幅率以下の場合は前記第1のオフセット補正を選択し、前記所定の増幅率よりも大きい場合は前記第2のオフセット補正を選択することを特徴とする請求項8に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記画像処理回路は、γ補正特性に基づき前記画像データを補正するγ補正回路を備え、
前記横スジ補正回路は、ある入力画素値におけるγ補正特性の傾きが所定の傾きよりも大きい場合、前記増幅率に応じた選択を行うことを特徴とする請求項8または9に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記横スジ補正回路は、前記傾きが前記所定の傾き以下の場合、前記増幅率に応じた選択を行わず、前記第1のオフセット補正と前記第2のオフセット補正との内の任意の一方を行うことを特徴とする請求項10に記載の撮像装置。
【請求項12】
環境温度を測定する温度センサをさらに備え、
前記予め決められた値は、所定の温度において、遮光状態にした前記有効領域の、前記第1の行から読み出された画素信号、および前記第2の行から読み出された複数の信号に基づき生成され、
前記横スジ補正回路は、前記増幅率が前記所定の増幅率以下であり、かつ、前記環境温度が前記所定の温度を含む所定の温度範囲の外である場合、前記増幅率に応じて前記第1のオフセット補正を選択することを特徴とする請求項9に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記横スジ補正回路は、前記増幅率が前記所定の増幅率以下であり、かつ、前記環境温度が前記所定の温度範囲の内である場合、前記増幅率に応じた選択を行わず、前記第1のオフセット補正と前記第2のオフセット補正との内の任意の一方を行うことを特徴とする請求項12に記載の撮像装置。
【請求項14】
前記画素領域および前記読出回路を備えるイメージセンサをさらに備え、
前記イメージセンサは、前記読出回路により読み出された信号をセンサ増幅率で増幅するセンサ増幅回路をさらに備え、
前記横スジ補正回路は、前記第1のオフセット補正と前記第2のオフセット補正との選択を、前記増幅率と、前記センサ増幅率と、の両方に基づき行うことを特徴とする請求項8に記載の撮像装置。
【請求項15】
遮光状態にした前記画素領域から取得される複数フレームの画像それぞれの前記有効領域の前記第2の行から読み出した複数の信号から得られる画素信号に前記第1のオフセット補正を行った後の画素信号であって、前記第1のオフセット補正の結果に残留するオフセットに相当する画素信号の前記複数フレームに関する平均値を取得し、
非遮光状態で取得され前記有効領域の前記第2の行から読み出した複数の信号から得られる画素信号に対する前記第1のオフセット補正において、前記遮光領域の前記第1の行から読み出した画素信号および前記遮光領域の前記第2の行から読み出した複数の信号に基づき取得した補正値を、前記平均値に基づき補正した値を用いて、前記第1のオフセット補正を行うことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項16】
前記画像処理回路は、γ補正特性に基づき前記画像データを補正するγ補正回路と、前記画像データにノイズ低減処理を行うノイズ低減回路と、を備え、
前記パラメータは、ある入力画素値におけるγ補正特性の傾きと、前記ノイズ低減処理の強度と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項17】
前記画像処理回路は、γ補正特性に基づき前記画像データを補正するγ補正回路と、前記有効領域の前記第1の行から読み出された画素信号、および前記第2の行から読み出された複数の信号を、設定した増幅率で増幅する増幅回路と、を備え、
前記パラメータは、ある入力画素値におけるγ補正特性の傾きと、前記増幅率と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項18】
1つのマイクロレンズと、複数の光電変換素子と、をそれぞれ備える複数の画素が、行単位で2次元に配置され、遮光された複数の行を有する遮光領域と、光が到達する複数の行を有する有効領域と、を備える画素領域と、
前記遮光領域および前記有効領域の第1の行の各画素から前記複数の光電変換素子の信号を全て加算した画素信号を読み出し、前記遮光領域および前記有効領域の第2の行の各画素から位相差情報を含む複数の信号を読み出す読出回路と、
前記有効領域の前記第1の行から読み出した画素信号に、前記遮光領域の前記第1の行から読み出した画素信号および前記遮光領域の前記第2の行から読み出した複数の信号に基づく第1のオフセット補正と、予め決められた値に基づく第2のオフセット補正と、の一方を行う横スジ補正回路と、
前記第1のオフセット補正または前記第2のオフセット補正が行われた画素信号、および前記有効領域の前記第2の行から読み出した複数の信号から得られる画素信号に基づき構成された画像データを、パラメータに応じて画像処理する画像処理回路と、
を有し、
前記横スジ補正回路は、前記パラメータに応じて、前記第1のオフセット補正と、前記第2のオフセット補正との何れを行うかを選択する
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項19】
1つのマイクロレンズと、複数の光電変換素子と、をそれぞれ備える複数の画素が、行単位で2次元に配置され、遮光された複数の行を有する遮光領域と、光が到達する複数の行を有する有効領域と、を備える画素領域の、前記遮光領域および前記有効領域の第1の行の各画素から前記複数の光電変換素子の信号を全て加算した画素信号を読み出し、
前記遮光領域および前記有効領域の第2の行の各画素から位相差情報を含む複数の信号を読み出し、
前記有効領域の前記第2の行から読み出した複数の信号から得られる画素信号に、前記遮光領域の前記第1の行から読み出した画素信号および前記遮光領域の前記第2の行から読み出した複数の信号に基づく第1のオフセット補正と、予め決められた値に基づく第2のオフセット補正と、の一方を行い、
前記第1のオフセット補正または前記第2のオフセット補正が行われた画素信号、および前記有効領域の前記第1の行から読み出した画素信号に基づき構成された画像データを、パラメータに応じて画像処理し、
前記パラメータに応じて、前記第1のオフセット補正と、前記第2のオフセット補正との何れを行うかを選択する
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項20】
前記画像データにノイズ低減処理をさらに行い、
前記パラメータは、前記ノイズ低減処理の強度を含み、前記強度が、所定の強度以下の場合は前記第1のオフセット補正を選択し、前記所定の強度よりも大きい場合は前記第2のオフセット補正を選択することを特徴とする請求項19に記載の画像処理方法。
【請求項21】
前記有効領域の前記第1の行から読み出された画素信号、および前記第2の行から読み出された複数の信号を、設定した増幅率で増幅し、
前記パラメータは、前記増幅率を含み、前記増幅率が、所定の増幅率以下の場合は前記第1のオフセット補正を選択し、前記所定の増幅率よりも大きい場合は前記第2のオフセット補正を選択することを特徴とする請求項19に記載の画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つのマイクロレンズと複数の光電変換素子とを有する画素から位相差情報を含む複数の信号を読み出す撮像装置および画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、1つの画素内の光電変換素子(PD:Photodetector)が分割された構造を備えるPD分割方式の像面位相差イメージセンサ(PD分割方式センサ)が提案されている。PD分割方式センサは、PDへ入射する光線の一部を遮る遮光式の像面位相差イメージセンサと比べて、位相差検知するペア(例えば左右ペア、上下ペアなど)を1画素内で構成できるため、フォーカス検知精度が高い。さらに、PD分割方式センサは、ペアの位相差画素の値を加算することで、通常の1つの画素の画素値が得られ、画像を生成できる。
【0003】
ただし、1つの画素がn個のPDに分割されたPD分割方式センサは、1画素に1つのPDが設けられた非像面位相差の通常のイメージセンサと比べて、画素数が同一であればPDの数がn倍になる。その結果、PD分割方式センサは、信号読出時間が通常のイメージセンサのn倍となって、撮像レートが1/nになる。
【0004】
信号読出時間の増加を抑制するため、例えば国際公開WO2021/192176号には、ある行について第1の読出モードで画素内の複数のPDの信号を全て加算した画素信号を読み出し、他の行について第2の読出モードで画素内の複数のPDから位相差情報を含む複数の信号を読み出す高速映像位相差読出モードが記載されている。高速映像位相差読出モードによれば、第1の読出モードを適用する行数と第2の読出モードを適用する行数とを調整することで、信号読出時間を例えば2倍未満に抑制できる。
【0005】
このとき、第1の読出モードで読み出した1画素の値(第1の画素値)と、第2の読出モードで読み出したペアの位相差画素から得た1画素の値(第2の画素値)とではOB(Optical Black)レベルに差がある。そこで、前記国際公開WO2021/192176号には、垂直OB領域から取得した第1の画素値と第2の画素値とに基づき、有効領域から取得した第2の画素値のOBレベルを第1の画素値のOBレベルに近付ける補正技術が、さらに記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開WO2021/192176号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、垂直OB領域から画素値として取得したOBレベルは、有効領域のOBレベルと完全に一致するわけではないため、上記補正技術を用いても、有効領域の第1の画素値のOBレベルと第2の画素値のOBレベルとには、微小な差が残ることになる。補正後に残るOBレベルの微小な差は、行方向の横スジ(残留横スジ)として表れる。こうした残留横スジが観察画像上で目立つかどうかは、撮像で得られた画像データにどのような画像処理を行うかに応じて異なる。しかし、画像処理に応じて目立つ場合がある残留横スジを目立たないようにすることについて、前記国際公開WO2021/192176号では考慮されていなかった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、高速映像位相差読出モードで読み出される信号を画像処理して得られる観察画像の横スジをより目立たなくできる撮像装置および画像処理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様による撮像装置は、1つのマイクロレンズと、複数の光電変換素子と、をそれぞれ備える複数の画素が、行単位で2次元に配置され、遮光された複数の行を有する遮光領域と、光が到達する複数の行を有する有効領域と、を備える画素領域と、前記遮光領域および前記有効領域の第1の行の各画素から前記複数の光電変換素子の信号を全て加算した画素信号を読み出し、前記遮光領域および前記有効領域の第2の行の各画素から位相差情報を含む複数の信号を読み出す読出回路と、前記有効領域の前記第2の行から読み出した複数の信号から得られる画素信号に、前記遮光領域の前記第1の行から読み出した画素信号および前記遮光領域の前記第2の行から読み出した複数の信号に基づく第1のオフセット補正と、予め決められた値に基づく第2のオフセット補正と、の一方を行う横スジ補正回路と、前記第1のオフセット補正または前記第2のオフセット補正が行われた画素信号、および前記有効領域の前記第1の行から読み出した画素信号に基づき構成された画像データを、パラメータに応じて画像処理する画像処理回路と、を有し、前記横スジ補正回路は、前記パラメータに応じて、前記第1のオフセット補正と、前記第2のオフセット補正との何れを行うかを選択する。
【0010】
本発明の一態様による撮像装置は、1つのマイクロレンズと、複数の光電変換素子と、をそれぞれ備える複数の画素が、行単位で2次元に配置され、遮光された複数の行を有する遮光領域と、光が到達する複数の行を有する有効領域と、を備える画素領域と、前記遮光領域および前記有効領域の第1の行の各画素から前記複数の光電変換素子の信号を全て加算した画素信号を読み出し、前記遮光領域および前記有効領域の第2の行の各画素から位相差情報を含む複数の信号を読み出す読出回路と、前記有効領域の前記第1の行から読み出した画素信号に、前記遮光領域の前記第1の行から読み出した画素信号および前記遮光領域の前記第2の行から読み出した複数の信号に基づく第1のオフセット補正と、予め決められた値に基づく第2のオフセット補正と、の一方を行う横スジ補正回路と、前記第1のオフセット補正または前記第2のオフセット補正が行われた画素信号、および前記有効領域の前記第2の行から読み出した複数の信号から得られる画素信号に基づき構成された画像データを、パラメータに応じて画像処理する画像処理回路と、を有し、前記横スジ補正回路は、前記パラメータに応じて、前記第1のオフセット補正と、前記第2のオフセット補正との何れを行うかを選択する。
【0011】
本発明の一態様による画像処理方法は、1つのマイクロレンズと、複数の光電変換素子と、をそれぞれ備える複数の画素が、行単位で2次元に配置され、遮光された複数の行を有する遮光領域と、光が到達する複数の行を有する有効領域と、を備える画素領域の、前記遮光領域および前記有効領域の第1の行の各画素から前記複数の光電変換素子の信号を全て加算した画素信号を読み出し、前記遮光領域および前記有効領域の第2の行の各画素から位相差情報を含む複数の信号を読み出し、前記有効領域の前記第2の行から読み出した複数の信号から得られる画素信号に、前記遮光領域の前記第1の行から読み出した画素信号および前記遮光領域の前記第2の行から読み出した複数の信号に基づく第1のオフセット補正と、予め決められた値に基づく第2のオフセット補正と、の一方を行い、前記第1のオフセット補正または前記第2のオフセット補正が行われた画素信号、および前記有効領域の前記第1の行から読み出した画素信号に基づき構成された画像データを、パラメータに応じて画像処理し、前記パラメータに応じて、前記第1のオフセット補正と、前記第2のオフセット補正との何れを行うかを選択する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の撮像装置および画像処理方法によれば、高速映像位相差読出モードで読み出される信号を画像処理して得られる観察画像の横スジをより目立たなくできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施形態における撮像装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】上記第1の実施形態のイメージセンサにおける、2分割および4分割の画素分割構成と読出回路との例を示す図表である。
【
図3】上記第1の実施形態のイメージセンサから、全位相差読出モードで読み出された信号の例を示す図である。
【
図4】上記第1の実施形態のイメージセンサから、全位相差読出モードで信号を読み出す例を示すタイミングチャートである。
【
図5】上記第1の実施形態のイメージセンサから、高速映像位相差読出モードで読み出された信号の例を示す図である。
【
図6】上記第1の実施形態のイメージセンサの構成と高速映像位相差読出モードにおける動作例を示す図である。
【
図7】上記第1の実施形態において、イメージセンサを遮光して撮像され、高速映像位相差読出モードで読み出された信号をベイヤー化して構成されたRAW画像データと、RAW画像データにおけるOBレベルのオフセットの例を示す図である。
【
図8】上記第1の実施形態において、イメージセンサを遮光して撮像され、高速映像位相差読出モードで読み出された信号からベイヤー化して構成されたRAW画像データに、横スジが発生している様子を示す図である。
【
図9】上記第1の実施形態において、イメージセンサを遮光して撮像された1フレームの画像の、2PD領域における各行毎のGr画素のOBレベルOB_(L+R)の平均値の分布を示す図である。
【
図10】上記第1の実施形態において、イメージセンサを遮光して撮像された1フレームの画像の、1PD領域における各行毎のGr画素のOBレベルOB_ALLの平均値の分布を示す図である。
【
図11】上記第1の実施形態において、VOB方式で横スジを補正してベイヤー化された画像の有効領域VReffに残留する横スジレベルの頻度を示すグラフである。
【
図12】上記第1の実施形態において、調整方式で横スジを補正してベイヤー化された画像の有効領域VReffに残留する横スジレベルの頻度を示すグラフである。
【
図13】上記第1の実施形態において、ISO感度を12800に設定して撮像し、VOB方式で横スジ補正したときのGr画素の残留横スジレベルの、環境温度に応じた変化の例を示すグラフである。
【
図14】上記第1の実施形態において、ISO感度を1600に設定して撮像し、VOB方式で横スジ補正したときのGr画素の残留横スジレベルの、環境温度に応じた変化の例を示すグラフである。
【
図15】上記第1の実施形態において、ISO感度を12800に設定して撮像し、調整方式で横スジ補正したときのGr画素の残留横スジレベルの、環境温度に応じた変化の例を示すグラフである。
【
図16】上記第1の実施形態において、ISO感度を1600に設定して撮像し、調整方式で横スジ補正したときのGr画素の残留横スジレベルの、環境温度に応じた変化の例を示すグラフである。
【
図17】上記第1の実施形態において、VOB方式と調整方式の、フレーム毎の繰り返しばらつきと温度変化への適応性と、の傾向を示す図表である。
【
図18】上記第1の実施形態において、明るさが異なる幾つかの画像における、画像処理後の残留横スジの見え方の一例を示す図表である。
【
図19】上記第1の実施形態において、VOB方式で補正し画像処理を行った画像において、残留横スジがどのように見えるかを、ISO感度に応じて示す図表である。
【
図20】上記第1の実施形態において、ISO感度を相対的に高くして、VOB方式と調整方式でそれぞれ取得し画像処理を行った画像における、残留横スジの見えの様子を対比して示す図表である。
【
図21】上記第1の実施形態において、VOB方式と調整方式の、ISO感度に応じた残留横スジレベルの絶対値の変化の一例を示すグラフである。
【
図22】上記第1の実施形態において、調整条件と異なる環境温度における、画像処理後の画像に対するVOB方式と調整方式の補正精度の相対的な高低を、ISO感度に応じて示す図表である。
【
図23】上記第1の実施形態において、調整条件の環境温度における、画像処理後の画像に対するVOB方式と調整方式の補正精度の相対的な高低を、ISO感度に応じて示す図表である。
【
図24】上記第1の実施形態において、ナチュラルγ補正特性とLogγ補正特性の例を示すグラフである。
【
図25】上記第1の実施形態において、Logγ補正特性とナチュラルγ補正特性とによりそれぞれ画像処理された画像における残留横スジの見え方の例を示す図表である。
【
図26】上記第1の実施形態において、ISO感度に応じたVOB方式と調整方式の残留横スジレベルの絶対値に対する、Logγ補正特性とナチュラルγ補正特性における許容スレッシュレベルを示すグラフである。
【
図27】上記第1の実施形態において、VOB方式と調整方式との何れか一方を選択する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図28】上記第1の実施形態において、イメージセンサから、位相差検知性能優先の高速映像位相差読出モードで読み出された信号の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。
[第1の実施形態]
【0015】
図1から
図28は本発明の第1の実施形態を示したものであり、
図1は撮像装置の構成を示すブロック図である。
【0016】
なお、
図1には撮像装置が例えばデジタルカメラとして構成されている例を示すが、デジタルカメラに限定されない。撮像装置は、例えば、デジタルビデオカメラ、撮影機能付き電話装置、電子内視鏡、撮影機能付き顕微鏡、撮影機能付き望遠鏡など、撮影機能を有する各種の装置の何れであっても構わない。
【0017】
撮像装置は、
図1に示すように、レンズ1と、イメージセンサ2と、画像処理回路3と、ディスプレイ4と、手振センサ6と、手振補正機構7と、フォーカス制御機構8と、カメラ操作デバイス9と、カメラコントローラ10と、温度センサ11と、を備えている。なお、
図1に記載されている記録用メモリ5は、撮像装置に着脱可能であってもよい。従って、記録用メモリ5は、撮像装置に固有の構成でなくても構わない。
【0018】
レンズ1は、被写体の光学像をイメージセンサ2に結像する撮像光学系である。本実施形態のレンズ1は、1枚以上のレンズと、絞りと、手振補正機能とを備える。1枚以上のレンズは、焦点位置(ピント位置)を調節してフォーカシングを行うためのフォーカスレンズを含む。絞りは、レンズ1を通過する光束の、通過範囲を制御する。手振補正機能は、イメージセンサ2に結像される被写体の光学像を安定化する。
【0019】
なお、例えばレンズ1とイメージセンサ2との間に、露光時間を制御するためのメカニカルシャッタをさらに備えていても構わない。メカニカルシャッタは、後述するキャリブレーションモードにおいてイメージセンサ2を遮光状態にするのに利用できる。
【0020】
レンズ1の撮影光軸の光路上に、イメージセンサ2が配置されている。イメージセンサ2は、後述するように、PD分割方式の像面位相差イメージセンサとして構成されている。イメージセンサ2は、画素領域2aと、読出回路2bと、第1の増幅回路2cと、OBクランプ回路2dと、を備える。
【0021】
画素領域2aは、レンズ1により結像された被写体の光学像を光電変換して、電気信号を生成する。読出回路2bは、画素領域2aにより生成された電気信号を読み出す。読出回路2bにより読み出された電気信号は、第1の増幅回路2c(センサ増幅回路)が、設定された増幅率(センサ増幅率)で増幅する。
【0022】
イメージセンサ2内には、図示しない列並列型A/D変換器(カラムADC)が設けられ、カラムADCは、画素領域2aにより生成されたアナログの電気信号をデジタル信号に変換する。OBクランプ回路2dは、OBレベルを所定の目標レベル(OBクランプレベル)(固定値)に設定する。イメージセンサ2は、撮像信号を出力する。
【0023】
画像処理回路3は、イメージセンサ2から出力される撮像信号を入力して、入力した撮像信号に基づき構成される画像データに、パラメータに応じた各種の画像処理を行う。画像処理回路3は、第2の増幅回路3aと、横スジ補正回路3bと、画像基礎処理回路3cと、を備えている。
【0024】
第2の増幅回路3aは、例えば撮像信号(または、幾つかの画像処理を行った信号)を、設定された増幅率(画像処理のパラメータ)で増幅する。第1の増幅回路2cおよび第2の増幅回路3aは、設定されたISO感度に応じた信号増幅も行う。なお、第1の増幅回路2cと第2の増幅回路3aは、一方だけを設けても構わない。
【0025】
横スジ補正回路3bは、後述する高速映像位相差読出モードでイメージセンサ2から出力される撮像信号に基づき構成される画像中に発生する横スジを補正する。
【0026】
画像基礎処理回路3cは、撮像信号から表示用もしくは記録用の画像信号を生成するための基礎的な各種の画像処理を行う。画像基礎処理回路3cは、γ補正回路3c1と、ノイズ低減回路3c2と、を含む。γ補正回路3c1は、画像信号の信号レベルを非線形に補正するγ補正(γ変換ともいう)を行う。
【0027】
ノイズ低減回路3c2は、設定されたノイズ低減処理の強度(画像処理のパラメータ)で、画像信号のノイズ低減処理を行う。例えば、ISO感度をより高く設定すると、第1の増幅回路2cおよび/または第2の増幅回路3aによる増幅率(ゲイン)(パラメータ)もより高くなる。
【0028】
ここで、第1の増幅回路2cおよび/または第2の増幅回路3aによる増幅率は、第1の増幅回路2cおよび第2の増幅回路3aが設けられているときは両方の増幅率に基づく増幅率(例えば両方の増幅率を乗算した増幅率)、第1の増幅回路2cが設けられ第2の増幅回路3aが設けられていないときは第1の増幅回路2cのセンサ増幅率、第1の増幅回路2cが設けられておらず第2の増幅回路3aが設けられているときは第2の増幅回路3aの増幅率である。増幅率が高くなると、ノイズも増幅されるため、ノイズ低減回路3c2は、より大きい強度でノイズ低減処理を行う。
【0029】
画像基礎処理回路3cは、その他、ベイヤー画像に対するデモザイク処理、ホワイトバランス処理、色マトリックス処理、およびエッジ処理等の画像処理も行う。
【0030】
ディスプレイ4は、画像処理回路3により表示用に画像処理された信号に基づき、画像を表示する表示デバイスである。ディスプレイ4は、ライブビュー表示、撮影後の静止画像のレックビュー表示、記録済みの静止画像の再生表示、動画録画中表示、記録済みの動画像の再生表示等を行い、撮像装置に係る各種の情報等も表示する。
【0031】
記録用メモリ5は、画像処理回路3により記録用に画像処理された信号(静止画像信号、動画像信号など)を保存する記録媒体である。記録用メモリ5は、例えば撮像装置に着脱可能なメモリカード、または撮像装置の内部に設けられている不揮発性メモリ等により構成されている。
【0032】
手振センサ6は、加速度センサや角速度センサ等を有して構成され、撮像装置の手振れを検出して手振情報をカメラコントローラ10へ出力するセンシングデバイスである。
【0033】
手振補正機構7は、カメラコントローラ10の制御に基づいて、手振れがあってもイメージセンサ2に結像される光学的な被写体像の位置が安定化するように、手振センサ6により検出された手振情報に基づき、レンズ1とイメージセンサ2との少なくとも一方をアクチュエータ等により移動する。
【0034】
フォーカス制御機構8は、カメラコントローラ10の制御に基づいて、イメージセンサ2に結像される被写体像が合焦するように、レンズ1に含まれるフォーカスレンズを駆動する。また、フォーカス制御機構8は、レンズ位置などのレンズ駆動情報を、カメラコントローラ10へ出力する。
【0035】
カメラ操作デバイス9は、撮像装置に対する各種の操作を行うための入力デバイスである。カメラ操作デバイス9には、例えば、撮像装置の電源をオン/オフするための電源スイッチ、静止画撮影または動画撮影などを指示入力するためのレリーズボタン、ISO感度を設定するためのISO感度設定ボタン、静止画撮影モード、動画撮影モード、ライブビューモード、静止画/動画再生モードなどを設定するためのモードボタン、記録するファイルの種類(JPEG画像ファイル、RAW画像ファイル、もしくはこれらの組み合わせ等)を設定するための操作ボタン、などの操作部材が含まれている。なお、モードボタンにより撮影モード等を選択すると、γ補正に用いるγ補正特性(γ曲線)が、撮影モードに応じて設定される。ただし、γ補正特性を手動で設定しても構わない。
【0036】
温度センサ11は、イメージセンサ2が配置された位置の環境温度を測定して、測定結果をカメラコントローラ10へ出力する。
【0037】
カメラコントローラ10は、画像処理回路3からの情報(後述するように、露光レベル、コントラスト、位相差、γ補正特性、ノイズ低減処理の強度などの情報を含む)、手振センサ6からの手振情報、フォーカス制御機構8からのレンズ駆動情報、カメラ操作デバイス9からの入力、温度センサ11により測定された環境温度などに基づいて、レンズ1、イメージセンサ2、画像処理回路3、記録用メモリ5、手振補正機構7、フォーカス制御機構8等を含む撮像装置の全体を制御する。
【0038】
例えば、カメラコントローラ10は、イメージセンサ2を制御して、イメージセンサ2に撮像を行わせる。また、カメラコントローラ10は、露光レベルの情報に基づいて、レンズ1の絞り、および、イメージセンサ2の露光時間(電子シャッタ)または上述したメカニカルシャッタを制御する。
【0039】
さらに、カメラコントローラ10は、フォーカス制御機構8を制御し、フォーカス制御機構8にレンズ1のフォーカスレンズを駆動させて、イメージセンサ2に結像される被写体像を合焦させる。フォーカス制御機構8の制御は、例えば、像面位相差イメージセンサとして構成されたイメージセンサ2から得られる位相差情報に基づき、位相差AFにより行われる。また、フォーカス制御機構8の制御は、イメージセンサ2から得られる画像のコントラストの情報に基づくコントラストAF(オートフォーカス)により行われても構わない。さらに、フォーカス制御機構8の制御を、位相差AFとコントラストAFとを併用して行っても構わない。
【0040】
なお、画像処理回路3およびカメラコントローラ10は、例えば、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)等を含むASIC(Application Specific Integrated Circuit:特定用途向け集積回路)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプロセッサが、メモリ等の記憶装置に記憶された処理プログラムを読み込んで実行することにより、各部の機能を果たすように構成されていてもよい。ただし、これに限定されず、例えば、各部の機能を果たす専用の電子回路として構成されていても構わない。
【0041】
図2は、イメージセンサ2における、2分割および4分割の画素分割構成と読出回路2bとの例を示す図表である。
【0042】
イメージセンサ2は、複数の画素2pが、行単位で2次元に配置された画素領域2aを備える。画素領域2aは、複数の画素2pが行方向および行方向に交差する方向に配列されている。行方向に交差する方向は、一例としては行方向に直交する方向(列方向)が挙げられる。ただし、これに限定されず、行方向に交差する方向は、行方向に斜交する方向(例えば、ハニカム構造の配置)などであっても構わない。
【0043】
nを2以上の整数とすると、イメージセンサ2に設けられた複数の画素2pは、それぞれ、1個のマイクロレンズMLと、n個の光電変換素子(フォトデテクタ:Photodetector)PDと、を備えている。なお、一般的な光学レンズは、光軸方向に沿って複数枚のレンズで構成されていることがある。従って、光軸方向に沿って複数枚のレンズで構成されたマイクロレンズMLの場合にも、1個のマイクロレンズMLと数えることにする。
【0044】
イメージセンサ2は、マイクロレンズMLからの光をn個の光電変換素子PDにより光電変換して生成されるn個の分割画素信号、に係る撮像信号を出力する。
【0045】
ここで、n個の分割画素信号に係る撮像信号は、n個の分割画素信号自体、n個の分割画素信号を構成可能な信号、n個の分割画素信号を加算して得られる画素信号などである。n個の分割画素信号自体およびn個の分割画素信号を構成可能な信号は、位相差情報を含む複数の信号である。イメージセンサ2が出力する位相差情報を含む複数の信号は、画素信号を構成可能である。
【0046】
具体的に、1画素がL(左)とR(右)に2分割されている場合を例に挙げれば、n個の分割画素信号自体は、分割画素信号Lおよび分割画素信号Rである(通常読み出し方式)。また、n個の分割画素信号を構成可能な信号は、画素信号(L+R)および分割画素信号L、または、画素信号(L+R)および分割画素信号Rである(加算読み出し方式)。さらに、n個の分割画素信号を加算して得られる画素信号は、後述する2PD領域からの画素信号(L+R)、および後述する1PD領域からの画素信号ALLである。
【0047】
イメージセンサ2は、複数のフィルタ色のカラーフィルタが所定の基本配列の繰り返しとして配置された、カラーイメージセンサとなっている。1つのフィルタ色は、1個のマイクロレンズMLに対応する。ただし、イメージセンサ2は、カラーイメージセンサに限定されず、モノクロイメージセンサであっても構わない。
【0048】
イメージセンサ2の所定の基本配列は、例えば2×2画素のベイヤー配列(原色ベイヤー配列、補色ベイヤー配列など)であり、以下では2×2画素の原色ベイヤー配列である場合を説明する。ただし、所定の基本配列は、2×2画素に限らず、ベイヤー配列にも限らない。
【0049】
こうして、イメージセンサ2は、画素2pが複数の分割画素に分割された、PD分割方式の像面位相差イメージセンサとなっている。
【0050】
原色ベイヤー配列は、縦2×横2画素を基本配列として、基本配列を行方向(横方向)および列方向(縦方向)に周期的に繰り返したものとなっている。原色ベイヤー配列の基本配列は、対角位置に緑色フィルタGr,Gbを配置し、緑色フィルタGrと同一行に赤色フィルタRrを、緑色フィルタGbと同一行に青色フィルタBbを、それぞれ配置したものである。
【0051】
ここで、緑色フィルタGrと緑色フィルタGbは分光特性が同一であるが、赤色フィルタRrと青色フィルタBbとの何れと同一行であるかに応じて区別している。なお、左(L)右(R)のRと区別するために、フィルタ色の赤をRrと記載しており、赤Rrの記載法に準じて青をBbと記載している。
【0052】
そして、1個の画素2pには、4つのフィルタ色Rr,Gr,Gb,Bbの内の何れか1つのフィルタ色のカラーフィルタと、1個のマイクロレンズMLと、が含まれている。ここで、非像面位相差のイメージセンサ(または、画素開口の一部を遮光する構造(遮光膜等)を設けることで位相差情報を取得する遮光式の像面位相差イメージセンサ)は、1個の画素に1個の光電変換素子PDが対応する。これに対し、本実施形態のイメージセンサ2は、1個の画素2pに、画素の分割数nに応じたn個の光電変換素子PDが含まれる。
【0053】
また、イメージセンサ2に設けられている複数の画素2pは、通常画素と、遮光画素であるOB(オプティカルブラック(Optical Black):光学黒)画素と、を含む。OB画素は、画素開口の全面に遮光膜等が形成され、遮光された画素である。OB画素は、マイクロレンズMLからの光が、画素2p内の複数の光電変換素子の何れへも到達しない。通常画素は、画素開口に遮光膜等が形成されておらず、遮光されていない画素である。通常画素は、マイクロレンズMLからの光が、画素2p内の複数の光電変換素子の全てに到達する。後で
図6を参照して説明するように、画素領域2aは、通常画素で構成される有効領域VReffと、OB画素で構成されるOB領域(垂直OB領域VOBおよび水平OB領域HOB)(遮光領域)と、を有する。
【0054】
図2の第1欄は1個の画素2pが右(R)左(L)に2分割された例を示している。なお、
図2において、表の横並びを上から下に向かって順に第1欄~第3欄と呼んでいる。
【0055】
ここで、1個のマイクロレンズMLに対するn個の光電変換素子PDの配置を、分割配置と呼ぶことにする。このとき、第1欄に示す分割配置は、左(L)および右(R)の2種類(n=2)である。RL分割配置は、横方向の位相差検知(いわゆる縦線検知)に適している。
【0056】
そして、各フィルタ色Rr,Gr,Gb,Bbの画素2pに対して、2つの分割配置の光電変換素子PD、すなわち、左側の光電変換素子PDL,右側の光電変換素子PDRがそれぞれ設けられている。各光電変換素子PDL,PDRは、例えばフォトダイオード(Photodiode)として構成され、入射光を光電変換して電荷を発生する。
【0057】
各光電変換素子PDL,PDRは、読出スイッチとして機能するトランジスタTrL,TrRをそれぞれ経由して、フローティングディフュージョンFDに接続されている。
【0058】
このような構成において、トランジスタTrL,TrRの1つ以上をオンすれば、オンにされたトランジスタTrに接続されている光電変換素子PDの電荷がフローティングディフュージョンFDへ転送される。
【0059】
従って、トランジスタTrL,TrRの何れか1つだけをオンすれば、光電変換素子PDL,PDRの内の何れか1つだけの電荷がフローティングディフュージョンFDへ転送され、後述するように、分割画素信号Lまたは分割画素信号Rを読み出せる。
【0060】
また、トランジスタTrL,TrRの2つをオンすれば、光電変換素子PDL,PDRの電荷がフローティングディフュージョンFDへ転送され、つまり、2個の光電変換素子PDL,PDRの電荷が加算されて、通常(L+R)の画素信号を読み出せる。
【0061】
フローティングディフュージョンFDおよびトランジスタTrL,TrRは、リセットスイッチとして機能するトランジスタTrRESを経由して、電源電圧VDDに接続されている。トランジスタTrRESをオンすることで、フローティングディフュージョンFDがリセットされる。このときさらに、トランジスタTrL,TrRを同時にオンすれば、各光電変換素子PDL,PDRもリセットされる。
【0062】
フローティングディフュージョンFDは、トランジスタTrAMPとトランジスタTrSELとを経由して、垂直信号線VSLに接続されている。ここで、トランジスタTrAMPは、一端が電源電圧VDDに接続され、他端がトランジスタTrSELを経由して、図示しない定電流回路と接続されている。トランジスタTrAMPは、増幅回路として機能する。トランジスタTrSELは、選択スイッチとして機能する。
【0063】
トランジスタTrSELをオンすると、フローティングディフュージョンFDの電圧値がトランジスタTrAMPにより増幅されて、垂直信号線VSLから読み出される。
【0064】
次に、
図2の第2欄は1個の画素2pが上(U)下(D)に2分割された例を示している。
【0065】
第2欄に示す分割配置は、上(U)および下(D)の2種類(n=2)である。UD分割配置は、縦方向の位相差検知(いわゆる横線検知)に適している。
【0066】
そして、各フィルタ色Rr,Gr,Gb,Bbの画素2pに対して、2つの分割配置の光電変換素子PD、すなわち、上側の光電変換素子PDU,下側の光電変換素子PDDがそれぞれ設けられている。各光電変換素子PDU,PDDは、例えばフォトダイオードとして構成され、入射光を光電変換して電荷を発生する。
【0067】
なお、読出回路2bは、LRがUDになった点を除いて、RL2分割の場合と同様である。
【0068】
そして、トランジスタTrU,TrDの何れか1つだけをオンすれば、U分割画素信号またはD分割画素信号を読み出せる。
【0069】
一方、トランジスタTrU,TrDの2つをオンすれば、2個の光電変換素子PDU,PDDの電荷が加算されて、通常(U+D)の画素信号を読み出せる。
【0070】
続いて、
図2の第3欄は1個の画素2pが右(R)左(L)上(U)下(D)に4分割された例を示している。
【0071】
第3欄に示す分割配置は、左上(LU),右上(RU),左下(LD),右下(RD)の4種類(n=4)である。4分割配置は、横方向の位相差検知(いわゆる縦線検知)と、縦方向の位相差検知(いわゆる横線検知)と、の何れにも適している。
【0072】
そして、各フィルタ色Rr,Gr,Gb,Bbの画素2pに対して、4つの分割配置の光電変換素子PD、すなわち、左上側の光電変換素子PDLU,右上側の光電変換素子PDRU,左下側の光電変換素子PDLD,右下側の光電変換素子PDRDがそれぞれ設けられている。各光電変換素子PDLU,PDRU,PDLD,PDRDは、例えばフォトダイオードとして構成され、入射光を光電変換して電荷を発生する。
【0073】
各光電変換素子PDLU,PDRU,PDLD,PDRDは、読出スイッチとして機能するトランジスタTrLU,TrRU,TrLD,TrRDをそれぞれ経由して、フローティングディフュージョンFDに接続されている。
【0074】
このような構成において、トランジスタTrLU,TrRU,TrLD,TrRDの1つ以上をオンすれば、オンにされたトランジスタTrに接続されている光電変換素子PDの電荷がフローティングディフュージョンFDへ転送される。
【0075】
従って、トランジスタTrLU,TrRU,TrLD,TrRDの内の1つだけをオンすれば、光電変換素子PDLU,PDRU,PDLD,PDRDの内の1つだけの電荷がフローティングディフュージョンFDへ転送され、LU分割画素信号、RU分割画素信号、LD分割画素信号、またはRD分割画素信号として読み出せる。
【0076】
また、トランジスタTrLU,TrRU,TrLD,TrRDの内の2つ以上をオンすれば、光電変換素子PDLU,PDRU,PDLD,PDRDの内の2つ以上の電荷がフローティングディフュージョンFDへ転送され、つまり、2個以上の光電変換素子PDの電荷が加算されて読み出せる。
【0077】
従って、例えばUD加算を行うことで、L(LU+LD)分割画素信号、R(RU+RD)分割画素信号を読み出せる。この読み出し方法を採用する場合には、1個の画素2pがRLに2分割されている(n=2である)ものとして取り扱える。
【0078】
また例えばRL加算を行うことで、U(LU+RU)分割画素信号、D(LD+RD)分割画素信号を読み出せる。この読み出し方法を採用する場合には、1個の画素2pがUDに2分割されている(n=2である)ものとして取り扱える。
【0079】
さらに例えばRLUD加算を行うことで、通常(LU+RU+LD+RD)の画素信号を読み出せる。
【0080】
加えて、RLUD4分割の画素2pの内の3つを加算(具体的に、LU+RU+LD、LU+RU+RD、LU+LD+RD、RU+LD+RD)した分割画素信号を読み出すことも可能となっている。
【0081】
フローティングディフュージョンFDおよびトランジスタTrLU,TrRU,TrLD,TrRDは、リセットスイッチとして機能するトランジスタTrRESを経由して、電源電圧VDDに接続されている。トランジスタTrRESをオンすることで、フローティングディフュージョンFDがリセットされる。このときさらに、トランジスタTrLU,TrRU,TrLD,TrRDを同時にオンすれば、各光電変換素子PDLU,PDRU,PDLD,PDRDもリセットされる。
【0082】
フローティングディフュージョンFDは、トランジスタTrAMPとトランジスタTrSELとを経由して、垂直信号線VSLに接続されている。ここで、トランジスタTrAMPは、一端が電源電圧VDDに接続され、他端がトランジスタTrSELを経由して、図示しない定電流回路と接続されている。トランジスタTrAMPは、増幅回路として機能する。トランジスタTrSELは、選択スイッチとして機能する。
【0083】
トランジスタTrSELをオンすると、フローティングディフュージョンFDの電圧値がトランジスタTrAMPにより増幅されて、垂直信号線VSLから読み出される。
【0084】
なお、以下では、1個の画素2pがL(左)とR(右)に2分割される例を主に説明する。
【0085】
PD分割方式像面位相差のイメージセンサ2は、各画素2pの複数の光電変換素子PDの信号を全て加算した画素信号を読み出す第1の読出モードと、各画素2pの複数の光電変換素子PDから位相差情報を含む複数の信号を読み出す第2の読出モードと、で動作できる。
【0086】
画素領域2aの全ての行を第1の読出モードで読み出すことを、適宜、映像読出モードと呼ぶことにする。第1の読出モードでは、1個の画素2pが1個の光電変換素子PDのみで構成されている(つまり分割されていない)状態と同等の画素信号が出力される。映像読出モードは、画素分割されていない通常のイメージセンサから画素信号を読み出す場合と同様の読出時間で読み出せるが、位相差情報を得ることができない。
【0087】
また、画素領域2aの全ての行を第2の読出モードで読み出すことを、適宜、全位相差読出モードと呼ぶことにする。
図3は、イメージセンサ2から、全位相差読出モードで読み出された信号の例を示す図である。
図4は、イメージセンサ2から、全位相差読出モードで信号を読み出す例を示すタイミングチャートである。なお、
図3および後述する
図5~
図7、
図28の画素配列中に記した文字「F」は、画像が上下および/または左右に反転していないかどうかを示すための参考用である。
【0088】
上述したように、第2の読出モードにおいて、通常読み出し方式で分割画素信号Lおよび分割画素信号Rを読み出しても構わない。この場合は、位相差情報をそのまま得られるが、画素信号を生成するには信号を加算して(L+R)を求める必要がある。従って、通常読み出し方式は、位相差検出に有利な読み出し方(位相差検知性能優先)である。
【0089】
これに対し、
図3および
図4に示す例では、加算読み出し方式で画素信号(L+R)および分割画素信号Lを読み出している。この場合は、画素信号(L+R)をそのまま得られるが、位相差情報を生成するには信号を減算して{(L+R)-L}を求める必要がある。従って、加算読み出し方式は、画像生成に有利な読み出し方(画質優先)である。なお、画素信号(L+R)および分割画素信号Rを読み出す加算読み出し方式も、同様に、画像生成に有利な読み仕方である。
【0090】
図3および
図4に示す例では、画素領域2aにおけるRr画素およびGr画素が配列された1行目から、水平同期信号XHSに同期してまず分割画素信号Lを1-1行目として読み出し、次に1行目から水平同期信号XHSに同期して画素信号(L+R)を1-2行目として読み出す。同様に水平同期信号XHSに同期して、Gb画素およびBb画素が配列された2行目から分割画素信号Lを2-1行目として読み出し、次に2行目から画素信号(L+R)を2-2行目として読み出す。こうした処理を最終行目まで行う。また、1フレームの画像の読み出しは、垂直同期信号XVSに同期して行われる。
【0091】
全位相差読出モードは、分割画素を加算して画素信号を生成し読み出す場合に比べて、2分割の場合には約2倍の読出時間が、4分割の場合には約4倍の読出時間がかかるために、撮像レートが低下する。また、イメージセンサ2から1フレーム分の画素信号を全て読み出すために必要な消費エネルギーも大幅に増加する。
【0092】
さらに、本実施形態のイメージセンサ2は、行方向に配列された複数の画素2pで構成される行毎に、第1の読出モードまたは第2の読出モードで読み出すことが可能である。
図2に示す読出回路2bが、画素領域2aの、第1の行を第1の読出モードで読み出し、第2の行を第2の読出モードで読み出すこと(つまり、行に応じて、第1の読出モードと第2の読出モードとの何れか一方で読み出すこと)を、適宜、高速映像位相差読出モードと呼ぶことにする。
【0093】
高速映像位相差読出モードにおいては、読出回路2bが、垂直OB領域VOBおよび有効領域VReffの第1の行を第1の読出モードで読み出し、垂直OB領域VOBおよび有効領域VReffの第2の行を第2の読出モードで読み出す。以下では適宜、第1の読出モードが適用される第1の行で構成される領域を1PD領域、第2の読出モードが適用される第2の行で構成される領域を2PD領域と呼ぶことにする。
【0094】
高速映像位相差読出モードにおいて、画素領域2aにおける1PD領域と2PD領域との割合を調整することで、撮像レートの低下を抑制しながら、位相差情報も取得できる。例えば、画素領域2aの8割(50行中の40行など)を1PD領域、2割(50行中の10行など)を2PD領域とした場合、映像読出モードに比べて、1フレームの読み出し時間が2割程度増加するだけで済み、かつ高精度の位相差情報を取得できる。この高速映像位相差読出モードは、高いフレームレートが求められるライブビュー画像撮影、または動画撮影などにおいて、特に有効なモードとなる。また、1フレーム分の画素信号を全て読み出すための消費エネルギーも大幅に低減できる。
【0095】
なお、本実施形態のイメージセンサ2は、上述した映像読出モードおよび全位相差読出モードでも動作可能であるが、以下では、高速映像位相差読出モードで動作する場合について説明する。
【0096】
図5は、イメージセンサ2から、高速映像位相差読出モードで読み出された信号の例を示す図である。
【0097】
図5に示す例では、1~2行目および(p+2)~(p+3)行目が第1の読出モードで読み出される1PD領域、p~(p+1)行目および(最終-1)~最終行目が第2の読出モードで読み出される2PD領域である。なお、2PD領域の画素2pからn個の分割画素信号を加算して読み出した画素信号を(L+R)、1PD領域の画素2pからn個の分割画素信号を加算して読み出した画素信号をALLと記載して、区別している。
【0098】
図6は、イメージセンサ2の構成と高速映像位相差読出モードにおける動作例を示す図である。
図6において、水平方向が行方向、垂直方向が列方向である。
【0099】
画素領域2aは、上述したベイヤー配列などのカラーフィルタが全体に配置され、上から下に向かって順に、垂直OB領域VOBと、通常画素が配置された有効領域VReffと、ダミー領域VDMと、を備える。垂直OB領域VOBは、上から下に向かって順に、センサクランプ領域SVOBと、第1垂直OB領域VOB1と、第2垂直OB領域VOB2と、を備える。
【0100】
また、画素領域2aは、左から右に向かって順に、第1水平ダミー領域HDM1と、遮光されたOB画素が配置された水平OB領域HOBと、第2水平ダミー領域HDM2と、通常画素が配置された有効領域/実行領域HReffと、を備えている。
【0101】
イメージセンサ2が高速映像位相差読出モードで動作する場合には、垂直OB領域の一部、例えば第1垂直OB領域VOB1が第2の読出モードで読み出され(2PD領域)、垂直OB領域の他の一部、例えば第2垂直OB領域VOB2が第1の読出モードで読み出される(1PD領域)。ここで、垂直OB領域内における、第1垂直OB領域VOB1の開始行および終了行と、第2垂直OB領域VOB2の開始行および終了行と、は所望に設定できる。
【0102】
なお、OBレベルの検出は、第1垂直OB領域VOB1の全部を用いる必要はなく、第2垂直OB領域VOB2の全部を用いる必要もない。例えば、第1垂直OB領域VOB1内に設定した「2PD」を囲む四角領域内のデータ、および第2垂直OB領域VOB2内に設定した「1PD」を囲む四角領域内のデータを用いてOBレベルを検出するようにしてもよい。
【0103】
さらに、イメージセンサ2が高速映像位相差読出モードで動作する場合には、有効領域VReff内に、位相差検知領域VRPが設定される。ここで、有効領域VReff内における、位相差検知領域VRPの開始行および終了行は、所望に設定できる。また、有効領域VReff内に、複数の位相差検知領域VRPを設定するようにしても構わない。従って、被写体に応じて設定されたAFエリアに対して、適切な位相差検知領域VRPを設定することで、フレーム画像の読み出し時間を有効に短縮できる。
【0104】
そして、有効領域VReff内における位相差検知領域VRP以外の領域は第1の読出モードで読み出され(1PD領域)、位相差検知領域VRP内は画素行毎に第1の読出モードまたは第2の読出モードで読み出される。従って、位相差検知領域VRP内では、上下方向に、2PD領域と1PD領域とが交互にある。
【0105】
図7は、イメージセンサ2を遮光して撮像され、高速映像位相差読出モードで読み出された信号をベイヤー化して構成されたRAW画像データと、RAW画像データにおけるOBレベルのオフセットの例を示す図である。
図7および後述する
図8は、横スジ補正回路3bによる横スジ補正を行っていない状態のRAW画像データを示している。
【0106】
なお、ベイヤー化は、第1の読出モードで第1の行から読み出した画素信号ALLと、第2の読出モードで第2の行から読み出した複数の信号から得られる画素信号(L+R)と、でRAW画像データを構成することを指す。
【0107】
イメージセンサ2のOBクランプ回路2dは、遮光された領域であるセンサクランプ領域SVOBで検出した遮光画素の信号レベルが、デジタル値として固定の値(12ビットADCの場合、例えば256(LSB)等に設定されることが多い)になるように、OBレベルの処理(OBクランプ処理)を行う。
【0108】
ところで、1PD領域から画素信号ALLを読み出すときは、フローティングディフュージョンFDをリセットして相関二重サンプリング(CDS)のためのリセット信号を読み出す。その後、光電変換素子PDRおよび光電変換素子PDLの電荷を同時にフローティングディフュージョンFDへ転送して読み出す。
【0109】
一方、2PD領域から画素信号(L+R)を読み出すときは、フローティングディフュージョンFDをリセットして相関二重サンプリング(CDS)のためのリセット信号を読み出してから、例えば光電変換素子PDLの電荷をフローティングディフュージョンFDへ転送して読み出す。さらにその後に、フローティングディフュージョンFDをリセットすることなく光電変換素子PDRの電荷をフローティングディフュージョンFDへ転送して、光電変換素子PDLの電荷と加算し読み出す。
【0110】
このため、フローティングディフュージョンFDをリセットしてから1PD領域の画素信号ALLを読み出すまでの第1の時間間隔と、フローティングディフュージョンFDをリセットしてから2PD領域の画素信号(L+R)を読み出すまでの第2の時間間隔とは、時間長さが異なる。
【0111】
すると、2PD領域から読み出した画素信号(L+R)の、暗電流等に起因するOBレベルOB_(L+R)と、1PD領域から読み出した画素信号ALLの、暗電流に起因するOBレベルOB_ALLとには、差が生じる。ここで述べている暗電流は、フローティングディフュージョンFDで発生する暗電流を指す。また、画素信号ALLを読み出すまでの第1の時間間隔と、画素信号(L+R)を読み出すまでの第2の時間間隔と、の違いに現れている読み出しのタイミングの違いは、画素信号ALLと画素信号(L+R)とに電源変動から受ける影響の差をもたらす。この電源変動から受ける影響の差が、OBレベルOB_(L+R)とOB_ALLとに差を生じる大きな要因の1つとなっている。
【0112】
図7の右側に示すグラフは、OBレベルOB_(L+R)とOBレベルOB_ALLとの差を示している。このOBレベルの差は、画像において横スジとして見える原因となる。
【0113】
図8は、イメージセンサ2を遮光して撮像され、高速映像位相差読出モードで読み出された信号からベイヤー化して構成されたRAW画像データに、横スジが発生している様子を示す図である。
【0114】
垂直OB領域VOBおよび有効領域VReffを含む画素領域2aにおいて、1行以上の1PD領域と1行以上の2PD領域が交互に設定されているため、遮光状態にして撮像し取得されたRAW画像データには、
図8に示すようなOBレベルの相違による横スジが発生する。
【0115】
そこで、横スジ補正回路3bは、高速映像位相差読出モードで取得されたRAW画像データ中の横スジを、次の(A1)~(A3)に示すような処理を行い補正する。
【0116】
(A1) 垂直OB領域VOBの信号からのOBレベルの算出処理
横スジ補正回路3bは、第1垂直OB領域VOB1内に設定した四角領域(2PD領域)内の各画素2pの光電変換素子PDLからそれぞれ読み出された信号の平均値を算出してOBレベルOB_Lを得る。また、横スジ補正回路3bは、第1垂直OB領域VOB1内に設定した四角領域(2PD領域)内の各画素2pの光電変換素子PDLおよび光電変換素子PDRの信号を加算して読み出された信号の平均値を算出してOBレベルOB_(L+R)を得る。さらに、横スジ補正回路3bは、第2垂直OB領域VOB2内に設定した四角領域(1PD領域)内の各画素2pの光電変換素子PDLおよび光電変換素子PDRの信号を加算して読み出された信号の平均値を算出してOBレベルOB_ALLを得る。上述したように、2PD領域からのOBレベルOB_(L+R)と、1PD領域からのOBレベルOB_ALLとは、区別されている。なお、OBレベルOB_(L+R)、およびOBレベルOB_ALLの算出は、フィルタ色毎にそれぞれ行う。
【0117】
(A2) 垂直OB領域VOBの左右分割画素信号の加算処理
画素信号(L+R)および分割画素信号Lを読み出す加算読み出し方式では、2PD領域の光電変換素子PDLおよび光電変換素子PDRの信号を加算する処理がイメージセンサ2内で行われる。このため、横スジ補正回路3bは、ベイヤーのRAW画像データを生成するための加算処理を行う必要がなく、垂直OB領域VOBの2PD領域から出力される左右加算されたOBレベルOB_(L+R)を選択すればよい。
【0118】
(A3) 有効領域VReffの左右分割画素信号の加算処理
横スジ補正回路3bは、有効領域VReffに設定された位相差検知領域VRP内の2PD領域の各画素2pに対して(式1)の演算を行い、演算結果Sumを得る。
Sum={(L+R)-OB_(L+R)}+OB_ALL …(式1)
【0119】
ここで、(L+R)は、有効領域VReffの第2の行から読み出した複数の信号から得られる画素信号である。OB_ALLは、遮光領域(ここでは、垂直OB領域VOB)の第1の行から読み出した画素信号である。OB_(L+R)は、遮光領域の第2の行から読み出した複数の信号の内の1つである。
【0120】
(式1)は、次の処理を行うことを意味する。すなわち、第2の読出モードの加算読み出し方式で、通常画素から読み出される通常画素信号(L+R)を抽出し、OB画素から読み出されるOB画素信号OB_(L+R)を抽出する。そして、通常画素信号(L+R)からOB画素信号OB_(L+R)を減算して、暫定OB減算画素信号{(L+R)-OB_(L+R)}を生成する。さらに、第1の読出モードでOB画素から読み出されるOB画素信号OB_ALLを、暫定OB減算画素信号{(L+R)-OB_(L+R)}に加算して、画素データとしての演算結果Sumを生成する。
【0121】
こうして、2PD領域の通常画素信号(L+R)に含まれるOBレベルを、1PD領域の通常画素信号ALLのOBレベルに合わせる処理を行っている。これにより、横スジ補正回路3bは、OBレベルの相違による横スジの発生を抑制している。
【0122】
なお、(式1)では、有効領域VReffの第2の行から読み出した複数の信号から得られる画素信号(L+R)に対して補正処理を実施したが、これに代えて、有効領域VReffの第1の行から読み出した画素信号ALLに対して補正処理を実施してもよい。この場合の(式1)に対応する式は以下の(式1′)になり、画素データの演算結果をSumの代わりにSalとして示す。
Sal={(ALL)-OB_ALL}+OB_(L+R) …(式1′)
【0123】
(式1′)は、1PD領域の通常画素信号ALLに含まれるOBレベルを、2PD領域の通常画素信号(L+R)のOBレベルに合わせることを示す。横スジ補正回路3bは、(式1)に代えて(式1′)の処理を行うことにより、OBレベルの相違による横スジの発生を抑制してもよい。
【0124】
このような垂直OB領域VOBのOBレベルを用いて、フレーム毎に横スジをダイナミックに補正する第1のオフセット補正方式を、以下では、VOB方式という。
【0125】
なお、OBレベルは、一般に、ベイヤーの色(Rr、Gr、Gb、Bb)毎に、値が僅かに異なる。ベイヤーの色はカラーフィルタにより生じるために、色が異なっても実際の画素回路やOBクランプ回路2d自体に相違はない。しかし、色が異なると画素回路やOBクランプ回路2dが配置されている場所が異なり、画素回路までの配線ルート(配線場所や配線長など)や上述の各回路への電源供給の配線ルートも異なるために、これらの相違に起因して、OBレベルの相違が生じる。
【0126】
このために、横スジ補正回路3bは、上述したようなOBレベルを整合させる補正処理を、フィルタ色を区別して、画素2pのフィルタ色毎にそれぞれ行う(ただし、フィルタ色によるOBレベルの相違を無視してもよい場合には、この限りでない)。
【0127】
また、横スジ補正回路3bによる横スジ補正は、高速映像位相差読出モードにより
図5に示すように読み出される画像データから、
図7に示すようなベイヤーのRAW画像データを生成する処理と、同時的に実施される。
【0128】
図9は、イメージセンサ2を遮光して撮像された1フレームの画像の、2PD領域における各行毎のGr画素のOBレベルOB_(L+R)の平均値の分布を示す図である。なお、
図9および後述する
図10では、画像における行番号を横軸、レベル(1行(例えば2000列分)の画素信号レベルの平均値)を縦軸として、値をプロットしている。
【0129】
また、
図9および
図10では、四角領域(2PD領域)を設定する第1垂直OB領域VOB1に、Rr画素およびGr画素が配列された行が2行、Gb画素およびBb画素が配列された行が2行設けられ、同様に、四角領域(1PD領域)を設定する第2垂直OB領域VOB2に、Rr画素およびGr画素が配列された行が2行、Gb画素およびBb画素が配列された行が2行設けられた場合のデータを示している。そして、
図9および
図10では、一例として、フィルタ色Grに係るGr画素のOBレベルOB_(L+R)を図示している。
【0130】
図9に示す1フレームの画像全体のOBレベルOB_(L+R)の平均値は、概略、253.75(LSB)程度である。これに対して、1行単位のOBレベルOB_(L+R)の平均値は、行毎にばらついている。
【0131】
図9において丸印を付した部分にある2つの点が、第1垂直OB領域VOB1内に設定した四角領域(2PD領域)内における1行単位のOBレベルOB_(L+R)の平均値の2行分をそれぞれ示しており、252(LSB)程度である。従って、252(LSB)は、画像全体の平均値253.75(LSB)よりも1.75(LSB)程度低い値となっている。そして、垂直OB領域VOBから取得されるOBレベルOB_(L+R)が画像全体の平均OBレベルに対してどの程度ばらつくかは、フレーム毎(つまり、1回撮像する毎)に異なる。
【0132】
図10は、イメージセンサ2を遮光して撮像された1フレームの画像の、1PD領域における各行毎のGr画素のOBレベルOB_ALLの平均値の分布を示す図である。
【0133】
図10に示す1フレームの画像全体のOBレベルOB_ALLの平均値は、概略、247.75(LSB)程度である。これに対して、1行単位のOBレベルOB_ALLの平均値は、行毎にばらついている。
【0134】
図10において丸印を付した部分にある2つの点が、第2垂直OB領域VOB2内に設定した四角領域(1PD領域)内の1行単位のOBレベルOB_ALLの平均値の2行分をそれぞれ示しており、248.4(LSB)程度である。従って、248.4(LSB)は、画像全体の平均値247.75(LSB)よりも0.65(LSB)程度高い値となっている。そして、垂直OB領域VOBから取得されるOBレベルOB_ALLが画像全体の平均OBレベルに対してどの程度ばらつくかは、フレーム毎に異なる。
【0135】
上述したように、垂直OB領域VOBから取得されるOBレベルOB_(L+R),OB_ALLは、画像全体のOBレベルの平均値に対してばらつきがある。しかも、このばらつきは、フレーム毎に異なる。こうしたばらつきがあるOBレベルOB_(L+R),OB_ALLに基づき横スジ補正回路3bが有効領域VReffの横スジ補正を行うと、補正後の結果にもフレーム毎のばらつきが生じることになる。こうしたフレーム毎のばらつきを、以下では適宜、繰り返しばらつきと呼ぶ。
【0136】
図9および
図10に示した例では、画像全体の平均値OBレベルOB_(L+R)は253.75(LSB)、画像全体の平均値OBレベルOB_ALLは247.75(LSB)であるから、(式1)により(L+R)を本来補正すべき量は{OB_(L+R)-OB_ALL}=253.75-247.75=6.0(LSB)となる。
【0137】
一方、第1垂直OB領域VOB1から得られるOBレベルOB_(L+R)は252(LSB)、第2垂直OB領域VOB2から得られるOBレベルOB_ALLは248.4(LSB)である。すると、(式1)による(L+R)の補正量は{OB_(L+R)-OB_ALL}=252-248.4=3.6(LSB)となる。
【0138】
つまり、
図9および
図10に示した例でVOB方式の補正を行うと、補正し足りない結果となり、横筋が残る。しかも、垂直OB領域VOBから得られる補正量{OB_(L+R)-OB_ALL}が、フレーム毎にばらつくことになる。
【0139】
図11は、VOB方式で横スジを補正してベイヤー化された画像の有効領域VReffに残留する横スジレベルの頻度を示すグラフである。
図11には、イメージセンサ2を遮光して取得された368フレーム分の画像の有効領域VReffにおいて、VOB方式で横スジを補正した後のOBレベルOB_ALLとOBレベルOB_(L+R)のオフセット値(残留する横スジレベル)の頻度を示している。なお、
図11および
図12には、実測値として得られた頻度を、正規分布にフィッティングした結果を示す。
【0140】
垂直OB領域VOBから例えば2行分の平均値として取得されるOBレベルOB_(L+R),OB_ALLは、フレーム毎にばらつくために、残留横スジのレベルもフレーム毎にばらつくことになる。
図11に示す例では、368フレーム分の画像において残留する横スジレベルは、平均値μ=0.65(LSB)、標準偏差σ=0.71(LSB)となる。なお、平均値μおよび標準偏差σは、おおよそ信号の増幅率に比例して値が変化する。
【0141】
垂直OB領域VOBから取得されるOBレベルOB_(L+R),OB_ALLのフレーム毎のばらつき(ランダムな変動)を小さくするには、垂直OB領域VOBの行数を多くすればよい(例えば、OBレベルのばらつきを1(LSB)以下にするには、行数を数行程度よりも相当多くすればよい)。しかしこの場合、イメージセンサ2のチップサイズが大きくなって、センサ単価が上昇する。また、行数が増えた分だけ、撮像レートが低下し、1フレーム分のデータを全て読み出すために必要な消費エネルギーも増加する。
【0142】
また、イメージセンサ2から、同一色の複数の画素信号を混合して読み出すミックス読み出しが行われる場合がある。ミックス読み出しは、例えば、記録用の画像よりも画素数が少なくてよいライブビュー画像撮影などに用いられる。ミックス読み出しで、列方向に隣接する同一色の複数の画素信号を混合すると、全画素を読み出す場合よりも、読み出される行数が低下する。こうした行数が低下するミックス読み出しに対応して、OBレベルOB_(L+R),OB_ALLのフレーム毎のばらつきを小さくするには、垂直OB領域VOBに設ける行数をさらに多くする必要がある。
【0143】
そこで、本実施形態の横スジ補正回路3bは、垂直OB領域VOBから取得したOBレベルに基づく横スジの第1のオフセット補正方式(VOB方式)だけでなく、予め決められた値に基づく第2のオフセット補正方式(以下、調整方式という)を用いることが可能となっている。横スジ補正回路3bは、画像処理回路3が行う画像処理のパラメータ(パラメータの具体例は後述する)に応じて、VOB方式と調整方式との何れか一方を横スジ補正方式として選択し、横スジを補正する。
【0144】
調整方式では、調整工程(例えば、製品出荷時の工場における調整工程、または出荷後にユーザがキャリブレーションモードに設定して行う調整工程など)において、イメージセンサ2の環境温度を所定の温度にする。そして、イメージセンサ2を遮光状態にして1以上のフレーム画像を取得し、取得した画像の有効領域VReffの信号を用いて、フィルタ色毎に、OBレベルComp_(L+R)_ALL_Offset(予め決められた値)を求める。
【0145】
具体的に、調整工程において、有効領域VReffの2PD領域の各画素2pの光電変換素子PDLおよび光電変換素子PDRの信号を加算して読み出された信号の平均値を算出してOBレベルComp_(L+R)を得る。
【0146】
さらに、調整工程において、有効領域VReffの1PD領域の各画素2pの光電変換素子PDLおよび光電変換素子PDRの信号を加算して読み出された信号の平均値を算出してOBレベルComp_ALLを得る。
【0147】
そして、調整工程において、(式2)により、調整方式で用いるOBレベルComp_(L+R)_ALL_Offsetを求める。
Comp_(L+R)_ALL_Offset
=Comp_(L+R)-Comp_ALL …(式2)
【0148】
有効領域VReffは、垂直OB領域VOBに比べて行数が多いため、算出されたOBレベルComp_(L+R)_ALL_Offsetは、フレーム毎のばらつきが極めて小さくなる。
【0149】
横スジ補正回路3bは、こうして求めたOBレベルComp_(L+R)_ALL_Offsetを用いて、調整方式において(式3)の演算を行い、演算結果Sumを得る。
Sum=(L+R-Comp_(L+R)_ALL_Offset) …(式3)
【0150】
なお、(式3)では、有効領域VReffの第2の行から読み出した複数の信号から得られる画素信号(L+R)に対して補正処理を実施するが、VOB方式の補正で説明したように、これに代えて、有効領域VReffの第1の行から読み出した画素信号ALLに対して補正処理を実施してもよい。この場合の(式3)に対応する式は以下の(式3′)になり、画素データの演算結果をSumの代わりにSalとして示す。
Sal=(ALL+Comp_(L+R)_ALL_Offset) …(式3′)
【0151】
なお、調整方式に用いるOBレベルComp_(L+R)_ALL_Offsetの算出は、有効領域VReffの全ての行を用いる必要はなく、垂直OB領域VOBよりも多い適宜の行数だけ用いても構わない。算出に用いる適切な行数は、イメージセンサ2の画素数、2PD領域と1PD領域が何行毎に繰り返されるかの周期、等にも依存するため一概には言えないが、一例を挙げれば100行分である。例えば100行分のデータを使用してOBレベルComp_(L+R)_ALL_Offsetを精度良く求めることで、繰り返しばらつきの標準偏差σを小さくした例を、
図12に示す。
【0152】
図12は、調整方式で横スジを補正してベイヤー化された画像の有効領域VReffに残留する横スジレベルの頻度を示すグラフである。
図12には、
図11と同数の368フレーム分の画像の有効領域VReffにおいて、調整方式で横スジを補正した後のOBレベルOB_ALLとOBレベルOB_(L+R)のオフセット値(残留する横スジレベル)の頻度を示している。
【0153】
調整方式で用いるOBレベルComp_(L+R)_ALL_Offsetは、画像全体の平均OBレベルとほぼ一致する。このため、368フレーム分の画像において残留する横スジレベルは、平均値μ=0(LSB)となる。また、VOB方式のようなフレーム毎の垂直OB領域VOBのOBレベルのばらつきがないため、横スジの補正が安定して行われ、標準偏差σ=0.1(LSB)となる。従って、
図12に示す調整方式の残留横スジレベルは、
図11に示すVOB方式の残留横スジレベルと比べて小さく、精度の高い横スジ補正がなされていることが分かる。
【0154】
ただし、調整方式は調整工程で取得された固定値を用いるため、環境温度の変化によるOBレベルの変化に対応できない。これに対し、VOB方式はフレーム毎にダイナミックに補正する方式であるため、環境温度の変化によるOBレベルの変化にも対応できる。
【0155】
図13は、ISO感度を12800に設定して撮像し、VOB方式で横スジ補正したときのGr画素の残留横スジレベルの、環境温度に応じた変化の例を示すグラフである。なお、
図13~
図16の横軸に示す環境温度は、「℃」を単位としている。また、
図13~
図16に示す残留横スジレベルは、複数フレームの平均値(
図11、
図12に示した平均値μ)を示している。さらに、
図13~
図16では図面が複雑になるのを避けるためにGr画素の例を示すが、多少の値の差はあるものの、Gb画素、Rr画素、Bb画素についてもGr画素と類似した傾向を示す。
【0156】
ISO感度12800におけるVOB方式では、1(LSB)程度の残留横スジがあり、環境温度が増加するとわずかに残留横スジのレベルが下がる傾向があるが、全般にレベルが安定している。-20℃における残留横スジのレベルは1.2(LSB)程度、50℃における残留横スジのレベルは0.9(LSB)程度である。このため、
図13に示す環境温度範囲内における残留横スジのレベル変化は、0.3(LSB)程度となる。
【0157】
図14は、ISO感度を1600に設定して撮像し、VOB方式で横スジ補正したときのGr画素の残留横スジレベルの、環境温度に応じた変化の例を示すグラフである。
【0158】
ISO感度1600におけるVOB方式では、残留横スジのレベルは0.2(LSB)程度に小さくなり、かつ環境温度の変化に応じてわずかに残留横スジのレベルが変化するが、全般にレベルが安定している。30℃における残留横スジのレベルは0.18(LSB)程度、50℃における残留横スジのレベルは0.22(LSB)程度である。このため、
図14に示す環境温度範囲内における残留横スジのレベル変化は、0.04(LSB)程度となる。
【0159】
図15は、ISO感度を12800に設定して撮像し、調整方式で横スジ補正したときのGr画素の残留横スジレベルの、環境温度に応じた変化の例を示すグラフである。なお、
図15および
図16における矢印は、調整工程において設定した環境温度(調整条件)を示し、47℃程度である。47℃程度は、撮像装置の電源をオンにしてからある程度以上の時間が経過したときの、イメージセンサ2の環境温度の典型値である。
【0160】
ISO感度12800における調整方式では、残留横スジのレベルは、-12℃から20℃程度までは減少する傾向を示し、20℃よりも温度が高くなると温度に応じて増加する傾向を示す。20℃における残留横スジのレベルは-0.3(LSB)程度、68℃における残留横スジのレベルは0.6(LSB)程度であるため、残留横スジのレベル変化は0.9(LSB)となる。
【0161】
従って、
図15に示す調整方式は、
図13に示すVOB方式(レベル変化:0.3(LSB))よりも環境温度の変化に対する残留横スジレベルの安定性が低い。そして、
図15に示す調整方式は、
図13に示すVOB方式と比べて、残留横スジレベルが不規則に変動する傾向を示す。
【0162】
なお、
図15および
図16に関して、調整条件の環境温度である47℃において、残留横筋レベルが理想的な0.0(LSB)から少しずれている。このずれは、
図15および
図16のデータを取得する際に、実際の調整工程と異なる条件において測定したことに起因して生じている。
【0163】
つまり、実際の調整工程では、工程の室内空調により決まる温度と、イメージセンサ2を駆動することに伴う自己発熱による周囲の温度上昇と、によって環境温度が決まってくる。これに対して、
図15および
図16のデータを取得する際には、恒温槽内において環境温度を制御している。従って、
図15および
図16のデータは、イメージセンサ2を駆動することに伴う自己発熱が環境温度にあまり影響しない条件で測定されている。この環境温度の管理の仕方の違いからこのような差が生じている。従って、47℃における0.0(LSB)からのずれは、調整方式が環境温度等に如何に敏感に依存するかを示している。
【0164】
図16は、ISO感度を1600に設定して撮像し、調整方式で横スジ補正したときのGr画素の残留横スジレベルの、環境温度に応じた変化の例を示すグラフである。
【0165】
ISO感度1600における調整方式では、残留横スジのレベルは、-12℃から20℃程度までは減少する傾向を示し、20℃よりも温度が高くなると温度に応じて増加する傾向を示す。20℃における残留横スジのレベルは0.18(LSB)程度、65℃における残留横スジのレベルは0.29(LSB)程度であるため、残留横スジのレベル変化は0.11(LSB)となる。従って、
図16に示す調整方式は、
図15に示すISO感度12800における調整方式よりも安定度が高いが、
図14に示す同一のISO感度1600におけるVOB方式(レベル変化:0.04(LSB))よりも環境温度の変化に対する安定性が低い。そして、
図16に示す調整方式は、
図14に示すVOB方式と比べて、残留横スジレベルが不規則に変動する傾向を示す。
【0166】
図17は、VOB方式と調整方式の、フレーム毎の繰り返しばらつきと温度変化への適応性と、の傾向を示す図表である。
【0167】
上述したように、VOB方式は、行平均のOBレベルがランダムに変動する影響を受けて、横スジ補正に用いるオフセット値{OB_(L+R)-OB_ALL}に誤差がある。このため、
図11に示したVOB方式は、
図12に示した調整方式と比べて、フレーム毎の繰り返しばらつきが大きい。従って、繰り返しばらつきの観点からは、VOB方式が不利であり、調整方式が有利となる。
【0168】
また、
図13および
図14に示したダイナミックに補正するVOB方式は、
図15および
図16に示した調整方式と比べて、環境温度の変化の影響をほとんど受けず安定性が高い。これに対し、調整方式は、調整条件と同じ環境温度では比較的、残留横スジレベルが低いが、調整条件と異なる環境温度では、1(LSB)以下で不規則に変動する傾向を示す。従って、温度依存の観点からは、VOB方式が有利であり、調整方式が不利となる。
【0169】
上述では主に、RAW画像に残留する横スジのレベルを説明した。次に、RAW画像を画像処理してディスプレイ4に表示したときに、残留する横スジがどのように見えるかについて説明をする。
【0170】
図18は、明るさが異なる幾つかの画像における、画像処理後の残留横スジの見え方の一例を示す図表である。ここで紙面での表現上、撮影シーン(被写体)の明るさは表現しておらず、残留横スジの見映えのおおまかなイメージのみを表現している。
図19、
図20、および
図25も同様である。
【0171】
図18のA欄はイメージセンサ2を遮光して取得され画像処理された画像の例を示す。遮光レベルの画像は、黒を引き締める画像処理(黒レベル抑圧処理)が行われるため、RAW画像において残留横スジが存在しても、画像処理後の観察画像において残留横スジは見えなくなる。
【0172】
図18のB欄は、中間レベルのRAW画像として取得され画像処理された画像の例を示す。ここで、中間レベルとは、12ビットフルスケールのRAW画像における、約5~20(LSB)のレベルである。中間レベルの画像は、約5~20(LSB)のRAW画像が撮像されるような均一な光を、画素領域2aに照射して取得される。中間レベルでは、RAW画像において存在する残留横スジが、観察画像においても見える。
【0173】
図18のC欄は、B欄よりも高い中間レベルのRAW画像として取得され画像処理された画像の例を示す。ここで、B欄よりも高い中間レベルとは、12ビットフルスケールのRAW画像における、約25(LSB)以上のレベルである。この画像は、約25(LSB)以上のRAW画像が撮像されるような均一な光を、画素領域2aに照射して取得される。
【0174】
B欄よりもレベルが高いC欄の中間レベルでは、RAW画像において存在する残留横スジが、観察画像においては見えなくなる。B欄の中間レベルで見えた残留横スジが、C欄のより高い中間レベルのRAW画像において見えなくなるのは、主に、光ショットノイズにより残留横スジがかき消されることが原因である。さらに、画像処理におけるγ補正により、残留横スジが抑制されることも作用する。
【0175】
このように、画像処理した画像において残留横スジが見えるかどうか(さらに、どのように見えるか)は、画像処理に係る様々な要因が絡み合って複雑である。
【0176】
図19は、VOB方式で補正し画像処理を行った画像において、残留横スジがどのように見えるかを、ISO感度に応じて示す図表である。
【0177】
図19のB欄は、A欄よりもISO感度が相対的に高くなる画像処理が行われている。ISO感度を変化させると、第1の増幅回路2cおよび/または第2の増幅回路3aによる増幅率が変化し、ノイズ低減回路3c2によるノイズ低減処理の強度が変化する。一般に、ISO感度が高くなると増幅率が増大し、ノイズ低減処理の強度が大きくなる。
【0178】
ISO感度が高くなると、増幅率に比例して残留横スジが増幅される。また、ISO感度が高くなると、強度の大きいノイズ低減処理が行われ、画像全体のランダムノイズが低減される。ランダムノイズが低減されることで、B欄に示すISO感度が相対的に高い観察画像は、A欄に示すISO感度が相対的に低い観察画像よりも、残留横スジが目立ち易くなる。
【0179】
図20は、ISO感度を相対的に高くして、VOB方式と調整方式でそれぞれ取得し画像処理を行った画像における、残留横スジの見えの様子を対比して示す図表である。
【0180】
図20のA欄は、ISO感度を相対的に高くしてVOB方式で取得した画像を示す。
図20のB欄は、
図20のA欄と同一のISO感度において、調整方式で取得した画像を示す。
【0181】
上述したように、VOB方式は、残留横スジがISO感度(具体的には、増幅率)に比例(ゲインに比例)して増え、ISO感度が高いとノイズ低減処理の影響で残留横スジが目立ち易くなる。
【0182】
一方、調整方式は、
図15および
図16に示したように、残留横スジのレベルが環境温度に依存して不規則に変動する。ただし、変動の振幅は、ISO感度12800の場合を示す
図15とISO感度1600の場合を示す
図16とで大差がなく、ISO感度に比例しない。つまり、ISO感度の変化に対する、残留横スジのレベルの変化は小さい。
【0183】
こうして、
図20のB欄に示す調整方式は、A欄に示すVOB方式と比べて、ISO感度が高い場合に、画像処理後の観察画像における残留横スジが目立ち難い。
【0184】
図21は、VOB方式と調整方式の、ISO感度に応じた残留横スジレベルの絶対値の変化の一例を示すグラフである。なお、
図21では、縦軸に残留横スジレベルの絶対値を示し、横軸にISO感度を対数スケールで示している。
【0185】
図21において、fvはVOB方式の残留横スジレベルの絶対値を示し、faは調整方式の残留横スジレベルの絶対値を示す。
【0186】
図示のように、ISO感度が、3200でVOB方式の残留横スジレベルの絶対値fvと調整方式の残留横スジレベルの絶対値faがほぼ一致し、3200未満でVOB方式の残留横スジレベルの絶対値fvは調整方式の残留横スジレベルの絶対値faよりも小さく、3200以上でVOB方式の残留横スジレベルの絶対値fvは調整方式の残留横スジレベルの絶対値faよりも大きくなる。上記の
図20で述べたVOB方式が調整方式よりも残留横スジが目立ち易い相対的に高いISO感度は、
図21から読み取れるような6400,12800等の、3200以下よりも相対的に高いISO感度を指す。
【0187】
従って、ISO感度が、3200未満の場合にVOB方式が有利となり、3200以上の場合に調整方式が有利となる傾向が、
図21に示す一例から読み取れる。
【0188】
図22は、調整条件と異なる環境温度における、画像処理後の画像に対するVOB方式と調整方式の補正精度の相対的な高低を、ISO感度に応じて示す図表である。
【0189】
ISO感度が低い場合には、VOB方式の補正精度は、調整方式の補正精度よりも相対的に高い。ISO感度が高い場合には、VOB方式の補正精度は、調整方式の補正精度よりも相対的に低い。
【0190】
ただし、
図22に示したのは、調整条件と異なる環境温度(調整条件よりも低温または高温)における補正精度である。
【0191】
図23は、調整条件の環境温度における、画像処理後の画像に対するVOB方式と調整方式の補正精度の相対的な高低を、ISO感度に応じて示す図表である。
【0192】
調整条件の環境温度(調整条件の所定の温度を含む所定の温度範囲:
図23では常温と記載している)では、ISO感度が低い場合にも、調整方式は高い補正精度を示す。
【0193】
ところで、観察画像において残留横スジがどの程度見えるかは、画像処理において行われるγ補正の特性に応じて大きく異なる。ここで、γ補正は、人が明るさと色を知覚する際の非線形性を利用し、さらに絵作りの観点も踏まえて、ビット割り当ての最適化、および画像伝送の帯域幅の最適化を行う符号化処理の変換特性を指す。
【0194】
γ補正は、実際の処理として、単純な数式により変換される場合よりも、絵作りの観点に基づいた最適化を行うためにテーブルを用いて変換される場合の方が多い。
【0195】
また、カメラは、通常、複数の画質モードを搭載する。複数の画質モードのそれぞれに応じた最適なγ補正を行えるように、1つのカメラが、複数のγ補正特性を備えていることが一般的である。さらに、γ補正特性は、カメラを開発する各社毎に異なり、多様である。
【0196】
近年の動画撮影では、映像表現として、ダイナミックレンジがより広い映像が求められている。この求めに応じるγ補正の規格として、ハイブリットログガンマ(HLG:Hybrid Log Gamma)規格が規定され、導入が進んでいる。HLGは、HDR(ハイダイナミックレンジ)放送用に規定された標準規格である。HLGは、表示モニタの特性に合わせて規定されている。HLGによりγ補正された映像は、通常の標準ダイナミックレンジディスプレイにおいて正常に表示でき、HLG互換ディスプレイにおいてはより広いダイナミックレンジで表示される。
【0197】
さらに、近年、映画製作などの高品質な動画撮影に用いられるハイエンドのデジタルビデオカメラやデジタルカメラでは、Log撮影などと呼ばれる機能が搭載されるようになっている。
【0198】
Log撮影では、撮影した映像にカラーグレーディングを行うことを前提として、シャドウ部やハイライト部の情報をより多く残す広いダイナミックレンジ映像を撮影する。
【0199】
このために、Log撮影では、対数曲線に類似したγ補正特性(Logγ補正特性)に基づき画像データを補正する。Log撮影と呼ばれるのは、Logγ補正特性を用いているためである。Logγ補正特性も、上述のγ補正特性と同様に、カメラを開発する各社毎に異なり、多様である。
【0200】
なお、Log撮影により得られた映像は、そのまま鑑賞することを前提としていないため、カラーグレーディングを行わずに表示すると、彩度の低い画像に見えることが多い。
【0201】
図24は、ナチュラルγ補正特性とLogγ補正特性の例を示すグラフである。
図24は、12ビットのRAW画像を入力信号として、8ビットの出力信号にγ変換する際の変換特性を示している。
【0202】
図24において、γLはLogγ補正特性を示し、γnは従来のγ補正特性(ナチュラル:Natural)を示す。12ビットのRAW画像において注目すべき約5~20(LSB)における傾きの数値例を以下に示す。傾きを、8ビット変換出力(LSB)/12ビットRAW入力(LSB)として定義する。
【0203】
12ビットRAW入力が5(LSB)のとき、γLの傾きは9/5、γnの傾きは3/5となり、γLの傾きはγnの傾きの3倍である。また、12ビットRAW入力が20(LSB)のとき、γLの傾きは32/20、γnの傾きは12/20となり、γLの傾きはγnの傾きの2.7倍である。
【0204】
このように、γLは、γnに対して、低照度側で2~3倍程度の大きい傾きをもって立ち上がる特性をもつ。ここで、低照度側のある入力画素値における、γLの傾きと、γnの傾きとの中間の傾きを、所定の傾きとする。
【0205】
このとき、低照度側のある入力画素値におけるγ補正特性の傾き(パラメータ)が、所定の傾きよりも大きい場合はγL、所定の傾き以下の場合はγnとして区分できる。
【0206】
所定の傾きを、12ビットRAW入力が5(LSB)の場合、例えば6/5とし、12ビットRAW入力が20(LSB)の場合、例えば22/20としてもよい。なお、上述のHLG規格のγ補正特性は、Logγ補正特性と詳細は異なるが類似しており、低照度側のある入力画素値におけるγ補正特性の傾きは所定の傾きより大きい。
【0207】
図25は、Logγ補正特性とナチュラルγ補正特性とによりそれぞれ画像処理された画像における残留横スジの見え方の例を示す図表である。
【0208】
図25の、A欄はLogγ補正特性により変換された画像を、B欄はナチュラルγ補正特性により変換された画像を、それぞれ示す。A欄に示すLogγ補正特性により変換された画像に比べると、B欄に示すナチュラルγ補正特性により変換された画像は、残留横スジの見え方が顕著に小さくなる(見えないレベルである)。
【0209】
図26は、ISO感度に応じたVOB方式と調整方式の残留横スジレベルの絶対値に対する、Logγ補正特性とナチュラルγ補正特性における許容スレッシュレベルを示すグラフである。なお、
図26では、縦軸に残留横スジレベルの絶対値を示し、横軸にISO感度を対数スケールで示している。
【0210】
図21と同様に、fvはVOB方式の残留横スジレベルの絶対値を示し、faは調整方式の残留横スジレベルの絶対値を示す。ISO感度に応じた残留横スジレベルの絶対値fvと残留横スジレベルの絶対値faの大小関係は、
図21で説明した通りである。
【0211】
また、TLはLogγ補正特性による画像処理を行ったときの許容スレッシュレベルを示し、Tnはナチュラルγ補正特性による画像処理を行ったときの許容スレッシュレベルを示す。なお、許容スレッシュレベルTL,Tnは、それぞれの傾きでISO感度に比例しているが、横軸が対数スケールであるので下に凸のカーブとなっている。
【0212】
許容スレッシュレベルTnに対して、残留横スジレベルの絶対値fvおよび残留横スジレベルの絶対値faは、ISO感度が400~12800の範囲の全てにおいて小さい。つまり、ナチュラルγ補正特性は、残留横スジの許容範囲が広く、
図26に示す例ではVOB方式と調整方式の何れを用いても、画像処理後の残留横スジの見え方は変わらない(つまり、残留横スジが見えない)。
【0213】
一方、許容スレッシュレベルTLに対しては、次の傾向がある。
【0214】
残留横スジレベルの絶対値faは、ISO感度が1600以下になると許容スレッシュレベルTL以上となり、ISO感度が1600より高いと許容スレッシュレベルTLより小さくなる。
【0215】
また、残留横スジレベルの絶対値fvは、ISO感度が6400以下で許容スレッシュレベルTL以下となり、ISO感度が6400より高いと許容スレッシュレベルTLより大きくなる。
【0216】
つまり、Logγ補正特性は、ナチュラルγ補正特性よりも残留横スジの許容範囲が狭く、VOB方式と調整方式とで画像処理後の残留横スジの見え方に差が生じる。
【0217】
図26に示す例のように、許容スレッシュレベルTLと残留横スジレベルの絶対値fv,faの関係が複雑な場合、VOB方式と調整方式を切り替えるポイントとして、幾つかのポイントを設定できる。
【0218】
例えば、ISO感度が6400のポイント(1)でVOB方式と調整方式とを切り替えてもよい。この場合、残留横スジレベルの絶対値fvが許容スレッシュレベルTL以下の範囲(ISO感度が6400以下の範囲)ではVOB方式を用い、残留横スジレベルの絶対値fvが許容スレッシュレベルTLを超えた範囲(ISO感度が6400よりも高い範囲)で調整方式に切り替えればよい。
【0219】
また、ISO感度が3200のポイント(2)でVOB方式と調整方式とを切り替えてもよい。この場合、残留横スジレベルの絶対値fvと残留横スジレベルの絶対値faとの内の、レベルが大きくない方(レベルが異なる場合には、小さい方)に切り替えればよい。具体的に、ISO感度が3200以下の範囲ではVOB方式を用い、ISO感度が3200よりも高い範囲で調整方式に切り替えればよい。
【0220】
このように、横スジ補正方式の精度と画像処理の特性との関係が複雑な場合、画像処理の特性の内の、γ補正特性に注目して横スジ補正方式をVOB方式と調整方式で切り替える場合と、ノイズ低減処理の強度に注目して横スジ補正方式をVOB方式と調整方式を切り替える場合と、がある。
【0221】
一般的に、カメラが自動的にISO感度を制御する場合(AutoISOの場合)は、VOB方式と調整方式とがあまり頻繁に切り替わらないことが、カメラの動作上好ましい。従ってこの観点からは、切り替わりが発生する頻度が低いポイント(1)の方が、ポイント(2)よりも好ましい。
【0222】
上述したように、RAW画像において、VOB方式と調整方式では、横スジ補正した後に残留する横スジレベルの、繰り返しばらつきや温度依存の特性が異なる(
図17参照)。
【0223】
さらに、RAW画像に、画像処理(γ補正、ISO感度に応じた信号増幅およびノイズ低減処理など)を行った後の、残留横スジのレベルは、環境温度やISO感度に応じて、
図22および
図23に示すような補正精度の相違がある。
【0224】
こうした特性や補正精度に応じて、例えば
図27に示すようなVOB方式と調整方式を切り替える選択処理を行うことで、画像処理後の残留横スジレベルを最小化し、または許容レベル以下にして、残留横スジの見え方を最適化できる。
【0225】
図27は、VOB方式と調整方式との何れか一方を選択する処理の一例を示すフローチャートである。
図27の処理は、横スジ補正回路3bが行ってもよい。また、カメラコントローラ10が
図27の処理を行って、処理により選択した結果を横スジ補正回路3bに設定しても構わない。ここでは例えば、カメラコントローラ10が
図27の処理を行うものとして説明する。
【0226】
カメラにおける図示しないメイン処理からこの選択処理に入ると、カメラコントローラ10は、画質モードなどに応じて設定されているγ補正特性が、ナチュラルγ補正特性とLogγ補正特性の何れであるかを判定する(ステップS1)。
【0227】
ここで、ナチュラルγ補正特性であると判定した場合は、
図26を参照して説明したように、残留横スジレベルの絶対値fvと残留横スジレベルの絶対値faは何れも、設定可能な任意のISO感度において、許容スレッシュレベルTnより小さい。そこで、カメラコントローラ10は、調整方式とVOB方式の任意の一方を選択する(ステップS2)。具体的に、カメラコントローラ10は、それまでに使用されている方式を変えることなく維持すればよい。従って、それまでにVOB方式が使用されていればそのままVOB方式を使用し、それまでに調整方式が使用されていればそのまま調整方式を使用する。
【0228】
ステップS1において、Logγ補正特性であると判定した場合、カメラコントローラ10は、さらにISO感度が所定値よりも大きいか否かを判定する(ステップS3)。
図26で説明した例では、所定値は、ポイント(1)の6400、またはポイント(2)の3200である。
【0229】
ここで、所定値よりも大きいと判定した場合、カメラコントローラ10は、調整方式を選択して、横スジ補正回路3bに設定する(ステップS4)。
【0230】
一方、ステップS3において所定値以下であると判定した場合、カメラコントローラ10は、さらに温度センサ11により測定された環境温度が所定の温度範囲外であるか否かを判定する(ステップS5)。ここで、所定の温度範囲は、調整条件の環境温度(所定の温度)を含む一定範囲(
図23の図表が適用される範囲)である。
【0231】
ステップS4において、調整条件の環境温度を含む所定の温度範囲内であると判定した場合、
図23に示したように、ISO感度が低ければ、VOB方式と調整方式との何れも補正精度が高い。そこで、カメラコントローラ10は、ステップS2へ行って、それまでに使用されている方式を変えることなく維持する。
【0232】
また、ステップS5において、所定の温度範囲外であると判定した場合、カメラコントローラ10は、VOB方式を選択して、横スジ補正回路3bに設定する(ステップS6)。こうして、環境温度は、横スジ補正回路3bが選択に用いる他のパラメータとなっている。
【0233】
こうして、ステップS2、S4、またはS6により横スジ補正方式の選択が行われたら、この処理を終了して図示しないメイン処理にリターンする。
【0234】
なお、
図27に示した処理では、γ補正特性と、ISO感度と、環境温度と、の3つの要因に応じて横スジ補正方式を選択したが、選択に用いる要因は1つ以上であればよく、3つの要因の全てを用いる必要はない。
【0235】
例えば、環境温度に基づく横スジ補正方式の選択を省略して、γ補正特性およびISO感度に基づき横スジ補正方式を選択してもよい。この場合、撮像装置に温度センサ11を設けなくても構わない。そして、
図27の処理において、ステップS1でナチュラルγ補正特性であると判定した場合はステップS2へ行き、ステップS3でISO感度が所定値よりも大きいと判定した場合はステップS4へ行き、ISO感度が所定値以下であると判定した場合はステップS6へ行けばよい。
【0236】
また、例えば、γ補正特性のみに基づき、横スジ補正方式を選択しても構わない。具体的に、γ補正特性が、ナチュラルγ補正特性である場合はVOB方式を選択し、Logγ補正特性である場合は調整方式を選択しても構わない(
図26および
図26の説明も参照)。
【0237】
さらに、例えば、ISO感度のみに基づき、横スジ補正方式を選択しても構わない。具体的に、
図27のステップS3において、ポイント(1)またはポイント(2)以下のISO感度でVOB方式を選択(ステップS6)し、ポイント(1)またはポイント(2)よりも大きいISO感度で調整方式を選択(ステップS4)しても構わない。この場合、
図27の処理において、ステップS1,S2,S5の処理を省略すればよい。
【0238】
なお、ISO感度の変化は、上述したように、増幅率の変化、およびノイズ低減処理の強度の変化に関連している。そこで、ISO感度に基づく横スジ補正方式の選択を行う代わりに、増幅率に基づく横スジ補正方式の選択、およびノイズ低減処理の強度に基づく横スジ補正方式の選択をそれぞれ行っても構わない。
【0239】
例えば、横スジ補正回路3bは、増幅率が、所定の増幅率以下の場合は第1のオフセット補正方式(VOB方式)を選択し、所定の増幅率よりも大きい場合は第2のオフセット補正方式(調整方式)を選択してもよい。また、横スジ補正回路3bは、ノイズ低減処理の強度が、所定の強度以下の場合は第1のオフセット補正方式(VOB方式)を選択し、所定の強度よりも大きい場合は第2のオフセット補正方式(調整方式)を選択しても構わない。
【0240】
さらに、上述した、γ補正特性、ISO感度、環境温度、増幅率、ノイズ低減処理の強度だけでなく、画像処理や絵作りに関連するその他の要因にさらに基づき、横スジ補正方式を選択しても構わない。
【0241】
このように、高速映像位相差読出モードにおいて、画像処理のパラメータを考慮して横スジ補正方式を最適化することで、横スジ補正し画像処理した後の残留横スジレベルを最適化(最小化、または許容レベル以下に)できる。
【0242】
なお、
図5では、画質優先の高速映像位相差読出モードにより、2PD領域から画素信号(L+R)および分割画素信号Lを読み出す例を示した。これに対し、上述した位相差検知性能優先の高速映像位相差読出モードにより、2PD領域から分割画素信号Lおよび分割画素信号Rを読み出すこともできる。
【0243】
図28は、イメージセンサ2から、位相差検知性能優先の高速映像位相差読出モードで読み出された信号の例を示す図である。
【0244】
位相差検知性能優先の高速映像位相差読出モードの場合、横スジ補正回路3bは、VOB方式において、RAW画像データ中の横スジを、次の(B1)~(B3)に示すような処理を行い補正する。
【0245】
(B1) 垂直OB領域の信号からのOBレベルの算出処理
横スジ補正回路3bは、第1垂直OB領域VOB1内に設定した四角領域(2PD領域)内の各画素2pの光電変換素子PDLからそれぞれ読み出された信号の平均値を算出してOBレベルOB_Lを得る。また、横スジ補正回路3bは、第1垂直OB領域VOB1内に設定した四角領域(2PD領域)内の光電変換素子PDRからそれぞれ読み出された信号の平均値を算出してOBレベルOB_Rを得る。さらに、横スジ補正回路3bは、第2垂直OB領域VOB2内に設定した四角領域(1PD領域)内の各画素2pの光電変換素子PDLおよび光電変換素子PDRの信号を加算して読み出された信号の平均値を算出してOBレベルOB_ALLを得る。
【0246】
(B2) 垂直OB領域の左右分割画素信号の加算処理
横スジ補正回路3bは、垂直OB領域の2PD領域から読み出された左右の分割画素信号の平均値を加算して、(式4)により加算値SumOBを算出する。
SumOB=OB_L+OB_R …(式4)
【0247】
(B3) 有効領域VReffの左右分割画素信号の加算処理
横スジ補正回路3bは、有効領域VReffに設定された位相差検知領域VRP内の2PD領域の各画素2pに対して(式5)の演算を行い、演算結果Sumを得る。
Sum=(L+R)-SumOB+OB_ALL
=(L-OB_L)+(R-OB_R)+OB_ALL …(式5)
【0248】
(式5)は、次の処理を行うことを意味する。すなわち、2PD領域の通常画素から読み出される分割画素信号L,Rを加算して加算通常画素信号(L+R)を生成する。そして、2PD領域のOB画素から読み出されるOBレベルOB_L,OB_Rを加算通常画素信号(L+R)から減算して、暫定OB減算画素信号{(L-OB_L)+(R-OB_R)}を生成する。さらに、1PD領域のOB画素から読み出される平均OB画素信号OB_ALLを暫定OB減算画素信号{(L-OB_L)+(R-OB_R)}に加算して、画素データとしての演算結果Sumを生成する。
【0249】
次に、横スジ補正回路3bは、位相差検知性能優先の高速映像位相差読出モードにおいて、調整方式で用いるOBレベルComp_(L+R)_ALL_Offset(予め決められた値)を、調整工程において以下のように求める。ここで、OBレベルComp_(L+R)_ALL_Offsetの算出に用いるのは、イメージセンサ2を遮光状態にして取得した1以上のフレーム画像の有効領域VReffの信号である。
【0250】
具体的に、有効領域VReffの2PD領域の各画素2pの光電変換素子PDLからそれぞれ読み出された信号の平均値を算出してOBレベルComp_Lを得る。また、有効領域VReffの2PD領域の複数の光電変換素子PDRからそれぞれ読み出された信号の平均値を算出してOBレベルComp_Rを得る。
【0251】
さらに、有効領域VReffの1PD領域の各画素2pの光電変換素子PDLおよび光電変換素子PDRの信号を加算して読み出された信号の平均値を算出してOBレベルComp_ALLを得る。
【0252】
そして、(式6)により、調整方式で用いるOBレベルComp_(L+R)_ALL_Offsetを求める。
Comp_(L+R)_ALL_Offset
=Comp_L+Comp_R-Comp_ALL …(式6)
【0253】
(式6)により求めたOBレベルComp_(L+R)_ALL_Offsetを用いた、調整方式により横スジ補正は、上述した(式3)により行う。
【0254】
このように、横スジ補正回路3bによる調整方式とVOB方式との選択は、画質優先の高速映像位相差読出モードだけでなく、位相差検知性能優先の高速映像位相差読出モードにおいても同様に行える。
【0255】
なお、VOB方式では、
図11に示したような繰り返しばらつき変動(標準偏差σを指標とした変動)が、垂直OB領域VOBから得られるOBレベルのフレーム毎の変動によって生じる。また、垂直OB領域VOBのOBレベルと有効領域VReffのOBレベルには平均的な差があるため、VOB方式では、
図11に示したように、補正量の平均的なずれ(残留横スジレベルの平均値μ≠0)が生じる。そこで、VOB方式の特性をより改善するために、この平均的なずれを補正するとよい。
【0256】
調整方式と類似した手法を用い、調整工程において、遮光状態にしたイメージセンサ2から複数フレームの画像を取得し、複数フレームの画像それぞれの有効領域VReffの第2の行から読み出した複数の信号から得られる画素信号に第1のオフセット補正を行った後の画素信号の平均値を算出する。ここで算出した平均値は、2PD領域と1PD領域とのOBレベルの段差{OB_(L+R)-OB_ALL}の、垂直OB領域VOBと有効領域VReffとの平均的な差分を表し、
図11の平均値μに該当する。算出された平均値μは、カメラコントローラ10内のメモリに保存しておく。
【0257】
そして非遮光状態で取得された画像にVOB方式の補正を行う際に、フレーム毎に取得した垂直OB領域VOBの信号から算出した{OB_(L+R)-OB_ALL}を、カメラコントローラ10内のメモリから取得した平均値μによりさらに補正してから、補正を行う。
【0258】
こうして、VOB方式を、調整工程で取得した平均値μを用いてさらに補正することで、横スジを補正する性能が向上する。また、VOB方式の性能が向上することで、ISO感度に応じた切り替えポイント(例えば、
図26に示したポイント(1)、(2)など)を、より高いISO感度へ変更できる。これにより、VOB方式と調整方式が切り替わる頻度を小さくできる。
【0259】
このような第1の実施形態によれば、高速映像位相差読出モードで読み出される信号を画像処理して得られる観察画像の横スジをより目立たなくできる。
【0260】
なお、上述では本発明が撮像装置である場合を主として説明したが、これに限定されるものではなく、本発明は、撮像装置と同様の処理を行う画像処理方法であってもよいし、コンピュータに撮像装置と同様の処理を行わせるためのコンピュータプログラム、前記コンピュータプログラムを記憶するコンピュータにより読み取り可能な一時的でない記憶媒体、等であっても構わない。
【0261】
ここで、コンピュータプログラム製品を記憶する記憶媒体の幾つかの例は、フレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disc Read only memory)、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬記憶媒体、またはハードディスク等の記憶媒体などである。記憶媒体に記憶されるのは、コンピュータプログラムの全部に限らず、一部であっても構わない。また、コンピュータプログラムの全体もしくは一部を、通信ネットワークを経由して流通または提供してもよい。利用者は、記憶媒体からコンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることで、または通信ネットワークを経由してコンピュータプログラムをダウンロードしコンピュータにインストールすることで、コンピュータプログラムがコンピュータにより読み取られて、動作の全部もしくは一部が実行され、上述した撮像装置の動作を実行できる。
【0262】
さらに、本発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明の態様を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。このように、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0263】
1…レンズ
2…イメージセンサ
2a…画素領域
2b…読出回路
2c…第1の増幅回路
2d…OBクランプ回路
2p…画素
3…画像処理回路
3a…第2の増幅回路
3b…横スジ補正回路
3c…画像基礎処理回路
3c1…γ補正回路
3c2…ノイズ低減回路
4…ディスプレイ
5…記録用メモリ
6…手振センサ
7…手振補正機構
8…フォーカス制御機構
9…カメラ操作デバイス
10…カメラコントローラ
11…温度センサ
VReff…有効領域
VOB…垂直OB領域