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特開2024-83901フロック状態制御装置、汚泥処理設備、汚泥凝集設備、汚泥濃縮設備、フロック状態制御方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083901
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】フロック状態制御装置、汚泥処理設備、汚泥凝集設備、汚泥濃縮設備、フロック状態制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/30 20060101AFI20240617BHJP
   C02F 11/14 20190101ALI20240617BHJP
   C02F 1/52 20230101ALI20240617BHJP
【FI】
B01D21/30 A ZAB
C02F11/14
C02F1/52 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197981
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】504193837
【氏名又は名称】国立大学法人室蘭工業大学
(71)【出願人】
【識別番号】523183714
【氏名又は名称】月島JFEアクアソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 真也
(72)【発明者】
【氏名】深澤 淳基
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 伸弘
【テーマコード(参考)】
4D015
4D059
【Fターム(参考)】
4D015BA19
4D015BB09
4D015BB12
4D015CA11
4D015DA16
4D015DB01
4D015EA03
4D015EA07
4D015EA10
4D015EA35
4D059AA03
4D059AA04
4D059AA05
4D059BE02
4D059BE12
4D059BE26
4D059BE47
4D059BE55
4D059BE56
4D059BF02
4D059BJ02
4D059BJ14
4D059DA23
4D059DB11
4D059EA20
4D059EB20
(57)【要約】
【課題】季節変動などの影響を受けにくい特徴量に基づき撹拌機の回転数を適切に決定してフロックの状態をより精度高く制御することが可能なフロック状態制御装置、汚泥処理設備、汚泥凝集設備、汚泥濃縮設備、フロック状態制御方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】凝集混和槽にて凝集剤によって汚泥が凝集されたフロックを含む凝集汚泥を撮像した凝集汚泥画像を取得する凝集汚泥画像取得部と、前記取得された凝集汚泥画像に基づき、評価対象領域に存在する前記フロックの形状を解析する解析部と、前記フロックの形状の解析結果に基づき、前記汚泥を撹拌する撹拌機の回転数を制御する回転数制御部と、を備えるフロック状態制御装置。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集混和槽にて凝集剤によって汚泥が凝集されたフロックを含む凝集汚泥を撮像した凝集汚泥画像を取得する凝集汚泥画像取得部と、
前記取得された凝集汚泥画像に基づき、評価対象領域に存在する前記フロックの形状を解析する解析部と、
前記フロックの形状の解析結果に基づき、前記汚泥を撹拌する撹拌機の回転数を制御する回転数制御部と、
を備えるフロック状態制御装置。
【請求項2】
前記解析部は、前記凝集汚泥画像に対するテクスチャ解析によって得られる前記フロックの形状の特徴量を示す形状特徴量情報に基づき、前記回転数の適正を評価し、評価結果を前記フロックの形状の解析結果として出力する、
請求項1に記載のフロック状態制御装置。
【請求項3】
前記解析部は、前記凝集汚泥画像における画素間の濃度差が所定の値となる確率密度関数を前記形状特徴量情報として算出する、
請求項2に記載のフロック状態制御装置。
【請求項4】
前記解析部は、前記取得された凝集汚泥画像に基づき、前記評価対象領域に存在する複数の前記フロック間に生じている間隙の度合を解析し、
前記回転数制御部は、前記フロックの形状の解析結果と前記間隙の度合の解析結果とに基づき、前記撹拌機の回転数を制御する、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフロック状態制御装置。
【請求項5】
前記解析部は、前記間隙の度合に対する数値解析によって得られる前記間隙の特徴量を示す間隙特徴量情報に基づき、前記回転数の適正を評価し、評価結果を前記間隙の度合の解析結果として出力する、
請求項4に記載のフロック状態制御装置。
【請求項6】
前記解析部は、前記回転数の制御後に取得された前記凝集汚泥画像の評価対象領域に存在するフロックに基づき、制御後の前記回転数を評価する、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフロック状態制御装置。
【請求項7】
汚泥を撹拌する撹拌機における回転数を、前記汚泥の処理条件に応じた前記回転数を決定する決定方法によって決定する回転数決定部と、
決定された前記回転数で稼働する前記撹拌機にて撹拌された前記汚泥を凝集剤によって凝集したフロックの状態を適切な状態にするために、前記汚泥に添加される前記凝集剤の薬注率を制御する薬注率制御部と、
前記薬注率の制御後に前記回転数制御部による前記回転数の制御によって前記フロックの状態が適切な状態となった際の前記回転数に基づき、前記決定方法を補正する補正部と、
をさらに備える請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフロック状態制御装置。
【請求項8】
前記処理条件は、前記汚泥の処理量であり、
前記決定方法は、前記汚泥の処理量と前記回転数との関係を示す関係式を用いて前記回転数を決定する方法である、
請求項7に記載のフロック状態制御装置。
【請求項9】
前記回転数制御部は、前記薬注率の制御のみでは前記フロックの状態が適切な状態とならない場合に、前記薬注率を固定して前記回転数を制御する、
請求項7に記載のフロック状態制御装置。
【請求項10】
前記回転数制御部は、定期的に前記薬注率を固定して前記回転数を制御する、
請求項7に記載のフロック状態制御装置。
【請求項11】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフロック状態制御装置を備える汚泥処理設備。
【請求項12】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフロック状態制御装置を備える汚泥凝集設備。
【請求項13】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフロック状態制御装置を備える汚泥濃縮設備。
【請求項14】
凝集汚泥画像取得部が、凝集混和槽にて凝集剤によって汚泥が凝集されたフロックを含む凝集汚泥を撮像した凝集汚泥画像を取得する凝集汚泥画像取得過程と、
解析部が、前記取得された凝集汚泥画像に基づき、評価対象領域に存在する前記フロックの形状を解析する解析過程と、
回転数制御部が、前記フロックの形状の解析結果に基づき、前記汚泥を撹拌する撹拌機の回転数を制御する回転数制御過程と、
を含むフロック状態制御方法。
【請求項15】
コンピュータを、
凝集混和槽にて凝集剤によって汚泥が凝集されたフロックを含む凝集汚泥を撮像した凝集汚泥画像を取得する凝集汚泥画像取得手段と、
前記取得された凝集汚泥画像に基づき、評価対象領域に存在する前記フロックの形状を解析する解析手段と、
前記フロックの形状の解析結果に基づき、前記汚泥を撹拌する撹拌機の回転数を制御する回転数制御手段と、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロック状態制御装置、汚泥処理設備、汚泥凝集設備、汚泥濃縮設備、フロック状態制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
汚泥等の被処理物の濃縮あるいは脱水を目的として固液分離装置が水処理場等の施設において用いられている。このような固液分離装置としては、例えば、汚泥に凝集剤が添加された被処理物を円筒状の濾過スクリーン内に供給し、濾過スクリーン内に配置されたスクリューを回転駆動させ被処理物を濾過して濾液を排出する濃縮装置がある。
固液分離装置など被処理物に関する処理を行う装置では、その処理性能に被処理物の状態が大きく影響する。被処理物の状態は、例えば、凝集された汚泥(例えばフロック)の状態である。そこで、装置の処理性能を高めるために、被処理物の状態を適切に制御するための技術が各種提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、フロックを含む原液を凝集混和槽から脱水機へ供給する際に、供給管中のフロックの大きさを撮影し、撮影した画像に基づき算出したフロックの面積に応じて凝集剤の注入率を制御することで、フロックの状態を制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4238983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の技術のように、フロックに関する特定の特徴量のみに着目して制御する場合、当該特徴量が季節変動などの影響を受けて適切に特徴を抽出できない場合などに、制御の精度が低下する恐れがあった。
【0006】
上述の課題を鑑み、本発明の目的は、季節変動などの影響を受けにくい特徴量に基づき撹拌機の回転数を適切に決定してフロックの状態をより精度高く制御することが可能なフロック状態制御装置、汚泥処理設備、汚泥凝集設備、汚泥濃縮設備、フロック状態制御方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本発明の一態様に係るフロック状態制御装置は、凝集混和槽にて凝集剤によって汚泥が凝集されたフロックを含む凝集汚泥を撮像した凝集汚泥画像を取得する凝集汚泥画像取得部と、前記取得された凝集汚泥画像に基づき、評価対象領域に存在する前記フロックの形状を解析する解析部と、前記フロックの形状の解析結果に基づき、前記汚泥を撹拌する撹拌機の回転数を制御する回転数制御部と、を備える。
【0008】
本発明の一態様に係る汚泥処理設備は、フロック状態制御装置を備える。
【0009】
本発明の一態様に係る汚泥凝集設備は、フロック状態制御装置を備える。
【0010】
本発明の一態様に係る汚泥濃縮設備は、フロック状態制御装置を備える。
【0011】
本発明の一態様に係るフロック状態制御方法は、凝集汚泥画像取得部が、凝集混和槽にて凝集剤によって汚泥が凝集されたフロックを含む凝集汚泥を撮像した凝集汚泥画像を取得する凝集汚泥画像取得過程と、解析部が、前記取得された凝集汚泥画像に基づき、評価対象領域に存在する前記フロックの形状を解析する解析過程と、回転数制御部が、前記フロックの形状の解析結果に基づき、前記汚泥を撹拌する撹拌機の回転数を制御する回転数制御過程と、を含む。
【0012】
本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータを、凝集混和槽にて凝集剤によって汚泥が凝集されたフロックを含む凝集汚泥を撮像した凝集汚泥画像を取得する凝集汚泥画像取得手段と、前記取得された凝集汚泥画像に基づき、評価対象領域に存在する前記フロックの形状を解析する解析手段と、前記フロックの形状の解析結果に基づき、前記汚泥を撹拌する撹拌機の回転数を制御する回転数制御手段と、として機能させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば季節変動などの影響を受けにくい特徴量に基づき撹拌機の回転数を適切に決定してフロックの状態をより精度高く制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る汚泥処理設備の構成の一例を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係るPCの機能構成の一例を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る凝集汚泥画像の一例を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る凝集汚泥画像の一例を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る凝集汚泥画像の一例を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る間隙特徴量情報を示すヒストグラムの一例を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係る間隙特徴量情報を示すヒストグラムの一例を示す図である。
図8】本発明の実施形態に係る間隙特徴量情報を示すヒストグラムの一例を示す図である。
図9】本発明の実施形態に係る回転数に応じた凝集汚泥画像の一例を示す図である。
図10】本発明の実施形態に係る回転数に応じた凝集汚泥画像の一例を示す図である。
図11】本発明の実施形態に係る回転数に応じた凝集汚泥画像の一例を示す図である。
図12】本発明の実施形態に係る形状特徴量情報を示すヒストグラムの一例を示す図である。
図13】本発明の実施形態に係る形状特徴量情報を示すヒストグラムの一例を示す図である。
図14】本発明の実施形態に係る形状特徴量情報を示すヒストグラムの一例を示す図である。
図15】本発明の実施形態に係る凝集剤の薬注率と間隙面積の関係の一例を示す図である。
図16】本発明の実施形態に係る間隙面積と加温効率の関係の一例を示す図である。
図17】本発明の実施形態に係るPCにおける処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図18】本発明の実施形態に係る間隙の度合の解析処理における詳細な処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図19】本発明の実施形態に係る特徴量情報の取得処理における詳細な処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図20】本発明の実施形態に係る具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0016】
<1.汚泥処理設備の構成>
まず、図1を参照して、本実施形態に係る汚泥処理設備の構成について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る汚泥処理設備の構成の一例を示す図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の汚泥処理設備は、例えば、凝集混和槽1、濃縮機2、脱水機3、カメラ10、PC(Personal Computer)20、及びPLC(Programmable Logic Controller)30を備える。汚泥処理設備には、汚泥凝集設備と汚泥濃縮設備が含まれている。汚泥凝集設備は、例えば、凝集混和槽1、カメラ10、PC20、及びPLC30を備える。汚泥濃縮設備は、例えば、凝集混和槽1、濃縮機2、カメラ10、PC20、及びPLC30を備える。
【0018】
(1)凝集混和槽1
凝集混和槽1は、例えば下水処理場から発生して供給された混合生汚泥等の下水汚泥のような汚泥Aに凝集剤Bを添加して凝集する設備である。
図1に示すように、凝集混和槽1には、高速ミキサ1A(汚泥を撹拌する撹拌機の一例)から汚泥Aが供給される。高速ミキサ1Aには、凝集剤B(例えば高分子凝集剤)がポンプ1Bによって供給されて汚泥Aに添加、混合される。高速ミキサ1Aには、高速ミキサ1Aの中心軸に沿った回転軸1aに撹拌羽根1bが取り付けられ、上部にモーター1cが設けられている。高速ミキサ1Aでは、モーター1cによって回転軸1a及び撹拌羽根1bが回転することにより汚泥Aと凝集剤Bが撹拌され、混合される。
凝集混和槽1は、凝集剤Bと混合された汚泥Aが底部から供給されて保持される縦方向に延びる中心軸を有する有底円筒状の凝集槽1Cを備えている。この凝集槽1Cには、凝集槽1Cの中心軸に沿った回転軸1dに撹拌羽根1eが取り付けられて、凝集槽1Cの上部に設けられたモーター1fによって回転軸1d及び撹拌羽根1eが回転することにより汚泥Aと凝集剤Bを撹拌、混合する撹拌手段1D(汚泥を撹拌する撹拌機の一例)が設けられている。この撹拌手段1Dによって凝集剤Bと撹拌、混合されて凝集したフロックを含む凝集汚泥Cは、凝集槽1Cの上部から抜き出されて濃縮機2に供給される。
【0019】
(2)濃縮機2
濃縮機2は、凝集混和槽1によって固形分がある程度凝集した凝集汚泥Cを濃縮する設備である。本実施形態における濃縮機2は縦型濾過濃縮機であって、凝集混和槽1から供給された凝集汚泥Cが保持される、凝集槽1Cと同様の縦方向に延びる中心軸を有する有底円筒状の濃縮槽2Aを備えており、凝集汚泥Cは濃縮槽2Aの上部から濃縮槽2A内に供給される。ただし、この濃縮槽2Aの胴部はウェッジワイヤーやパンチングメタル等によって形成された濃縮濾過スクリーン2aとされるとともに、この濃縮濾過スクリーン2aの外周はジャケット状の濾液室2bとされている。
【0020】
また、この濃縮槽2Aには、濃縮槽2Aの中心軸に沿った回転軸2cにスクリュー2dが取り付けられて、濃縮槽2Aの上部に設けられたモーター2eによって回転軸2c及びスクリュー2dが回転することにより凝集汚泥Cを搬送する搬送手段2Bが設けられている。濃縮槽2Aの上部から供給された凝集汚泥Cは、この搬送手段2Bによって下方に搬送されつつ、濃縮濾過スクリーン2aによって水分が分離されて濃縮され、濃縮槽2Aの底部から抜き出されて濃縮汚泥Dとして濃縮汚泥供給路4に供給される。
【0021】
なお、この濃縮槽2Aと上記凝集槽1Cの底部は、下方に向かうに従い縮径する円錐台状に形成されている。また、濃縮濾過スクリーン2aによって凝集汚泥Cから分離された水分は濾液室2bに収容され、返流水Eとして処理される。
【0022】
さらに、本実施形態では、上記濃縮機2に、50℃以上100℃未満の範囲の温度、望ましくは60℃以上90℃以下の範囲の温度の濃縮温水Fがポンプ2Cによって供給されて、凝集混和槽1から供給された凝集汚泥Cと混合される。濃縮機2には、例えば、図示されない濃縮温水供給手段によって濃縮温水Fが供給されてもよいし、脱水機3の排水管3Hから排出される排水Jが濃縮温水Fとして供給されてもよい。
【0023】
ここで、濃縮機2の搬送手段2Bの回転軸2cは中空の円筒状とされるとともに、この回転軸2cの円筒壁部には多数(複数)の貫通孔が形成されている。そして、濃縮温水Fは、回転軸2cの下端から回転軸2c内に供給されて上記貫通孔から噴出させられ、凝集混和槽1から濃縮槽2A内に供給されて保持された凝集汚泥Cに供給されて混合される。これにより、本実施形態では、この濃縮機2において凝集汚泥Cが加熱されて蛋白質が熱変性し、保水されていた水分が分離して濃縮温水Fとともに返流水Eとして排出され、濃縮汚泥Dが所定の濃度に濃縮される。
【0024】
こうして濃縮された濃縮汚泥Dが供給される濃縮汚泥供給路4には、濃縮汚泥Dを脱水機3に送り出すポンプ4Aが設けられているとともに、このポンプ4Aと脱水機3との間には高速ミキサ4Bが設けられている。この高速ミキサ4Bには、ポリ硫酸第二鉄(PFS)等の無機凝集剤や高分子凝集剤のような凝集剤Gがポンプ4Cによって供給されて濃縮汚泥Dに添加、混合される。
【0025】
(3)脱水機3
脱水機3は、濃縮機2によって濃縮され、凝集剤Gが添加、混合された濃縮汚泥Dを脱水する設備である。脱水機3においては、ケーシング3A内に濃縮汚泥Dを濾過する濾過スクリーン3Bが配置されており、この濾過スクリーン3Bによって分けられたケーシング3A内の複数の空間のうち、第1の空間3A1に濃縮汚泥Dが供給される。本実施形態における脱水機3は、縦型のスクリュープレスであって、しかもケーシング3Aと同軸の縦方向に延びる軸線を中心とした円筒状又は円錐状をなしてケーシング3A内に配設される第2の上記濾過スクリーン3Bとしての内濾過スクリーン3aを備えている。また、脱水機3は、内濾過スクリーン3aと同軸の円筒状又は円錐状をなして内濾過スクリーン3aの外側に間隔をあけてケーシング3A内に配設される外濾過スクリーン3bを備えている。また、脱水機3は、上記軸線回りに捩れる螺旋状をなして内濾過スクリーン3aと外濾過スクリーン3bとの間に収容され、モーター3cによって上記軸線を中心に内濾過スクリーン3a及び外濾過スクリーン3bに対して相対的に回転させられるリボンスクリュー3dを備えている。
【0026】
そして、これら内濾過スクリーン3aと外濾過スクリーン3bとの間の空間が上記第1の空間3A1とされて濃縮汚泥Dが供給されるとともに、内濾過スクリーン3aの内側の空間と外濾過スクリーン3bの外側のケーシング3A内の空間とが第2の空間3A2とされている。この第2の空間3A2には、図示されない脱水温水供給手段から、50℃以上100℃未満の範囲、望ましくは60℃以上90℃以下の範囲の温度の脱水温水Hがポンプ3Pにより供給される。なお、これら内濾過スクリーン3aと外濾過スクリーン3bも、ウェッジワイヤーやパンチングメタル等によって形成される。
【0027】
ケーシング3Aは上記軸線を中心とした有底円筒状である。濃縮汚泥Dは、内濾過スクリーン3aと外濾過スクリーン3bの底部を連結する円環板状の連結板3eに接続された供給管3fを介して、上記第1の空間3A1にケーシング3Aの底部から供給される。供給された濃縮汚泥Dは、リボンスクリュー3dの相対的な回転によって上方に搬送されながら、内濾過スクリーン3aと外濾過スクリーン3bによって水分が分離される。
【0028】
また、ケーシング3A内の上部には、円環板状の基板3Cが配設されて、外濾過スクリーン3bは、この基板3Cの内周部に取り付けられて固定される。さらに、この基板3Cよりも上方のケーシング3Aの上部開口部には蓋体3Dが配設され、内濾過スクリーン3aは、この蓋体3Dに取り付けられて固定されるとともに、上記モーター3cは、この蓋体3D上に配置され、内濾過スクリーン3aの上部を覆う円筒状のスクリュー支持体を介してリボンスクリュー3dを回転させる。なお、本実施形態では、このように内濾過スクリーン3a及び外濾過スクリーン3bがケーシングに固定されて、リボンスクリュー3dがモーター3cにより回転されるが、逆にリボンスクリュー3dを固定して内濾過スクリーン3a及び外濾過スクリーン3bを回転させてもよく、リボンスクリュー3dと内濾過スクリーン3a及び外濾過スクリーン3bとを互いに逆方向に回転させるようにしてもよい。
【0029】
さらに、これら基板3Cと蓋体3Dの間のケーシング3A内における上部の空間は排出室3Eとされるとともに、この排出室3Eにおける第1の空間3A1の円環状の上部開口部は排出口3Fとされる。この排出口3Fには、外周側に向かうに従い上方に向かう上記軸線を中心とした円錐台状の外周面を有する圧搾リング3Gが配設されている。リボンスクリュー3dによって第1の空間3A1を上方に搬送されつつ水分が分離して濃縮汚泥Dから脱水された脱水汚泥Iは、排出口3Fから圧搾リング3Gにより圧搾されながら排出室3Eに流出して排出される。
【0030】
また、脱水温水Hも、本実施形態ではケーシング3A底部からケーシング3A内の第2の空間3A2に供給される。こうして第2の空間3A2に供給された脱水温水Hは、第1の空間3A1内の濃縮汚泥Dを加熱し、これによって濃縮汚泥Dの蛋白質が熱変性することにより保水されていた水分が分離し、内濾過スクリーン3aと外濾過スクリーン3bによって濾過されて、濃縮汚泥Dを加熱することにより冷却された脱水温水Hとともに、第2の空間3A2から立ち上げられた排水管3Hから排水Jとして排出される。
【0031】
(4)カメラ10
カメラ10は、凝集槽1Cにて凝集剤Bによって汚泥Aが凝集されたフロックを含む凝集汚泥Cを撮像した画像(静止画像又は動画像)を取得する。カメラ10は、PC20と通信可能に接続されており、撮像した凝集汚泥Cの画像(以下、「凝集汚泥画像」とも称される)をPC20へ送信する。
カメラ10が設けられる位置は、凝集汚泥Cを撮像可能であれば任意の位置であってよい。例えば、カメラ10は、図1に示すように凝集槽1Cの上部に凝集槽1Cの内部を撮像可能に設けられる。なお、カメラ10が設けられる位置は凝集槽1Cの上部に限定されない。また、カメラ10は、凝集槽1Cの内部を撮像可能であれば、凝集槽1Cの内側に設けられてもよいし、凝集槽1Cの外側に設けられてもよい。さらに、カメラ10は、凝集槽1Cに設けられた撹拌手段1Dの撹拌羽根1eが定点の位置にあるときを撮影タイミングとして凝集汚泥Cを撮像するようにしてもよい。この場合には、例えば、凝集槽1Cに設けられた撹拌手段1Dの撹拌羽根1eがカメラ10の撮影位置を通過した直後に撮影することにより、フロックが静止、あるいは、フロックの動きが緩慢である状態の画像を撮影しやすくなる。
【0032】
(5)PC20
PC20は、凝集混和槽1にて形成される凝集汚泥Cにおけるフロックの状態を制御する装置であり、フロック状態制御装置の一例である。フロック状態制御装置は、例えばサーバ装置であってもよい。
PC20は、カメラ10が撮像した凝集汚泥画像をカメラ10から受信する。本実施形態に係るPC20は、一例として、カメラ10から受信した凝集汚泥画像に基づき、フロックの状態を判定し、制御する。例えば、PC20は、凝集汚泥画像から評価対象領域に存在する複数のフロック間に生じている間隙の度合又は各フロックの形状を解析することで、フロックの状態を判定する。評価対象領域は、凝集汚泥画像において評価の対象となる領域であって、凝集汚泥画像が示す領域の全体であってもよいし、凝集汚泥画像が示す領域の一部であってもよい。間隙の度合は、評価対象領域に生じている間隙の程度を示す情報である。例えば、間隙の度合は、間隙の面積、間隙の径(直径又は半径)、間隙の長さ(幅)、間隙の数などである。フロックの形状は、例えば、フロックの表面形状、フロックの輪郭形状などである。
【0033】
PC20は、得られた凝集汚泥画像から間隙の度合を検出し、この間隙の度合に対して数値解析を行うことで、間隙の特徴量を示す情報(以下、「間隙特徴量情報」とも称される)を取得する。間隙特徴量情報は、例えば、間隙の平均面積、間隙の径分布、間隙の数に基づく算出値、間隙の度合を階級ごとに分類した情報(以下、「分類情報」とも称される)、分類情報をヒストグラムで示した画像(以下、「ヒストグラム画像」とも称される)などを示す。
間隙の平均面積は、検出された間隙の面積の平均を示す面積である。
間隙の径分布は、例えば、最頻径(モード径)、中央径(メディアン径)、平均径などである。最頻径は、検出された間隙の径(直径又は半径)のうち、一番出現頻度の高い径である。中央径は、検出された間隙の径(直径又は半径)の累積頻度が50%となる径である。平均径は、検出された間隙の径(直径又は半径)の平均を示す径である。
間隙の数に基づく算出値は、例えば、検出された間隙の数によって算出される値である。
分類情報は、数値解析によって間隙の度合を複数の階級に分け、各階級と各階級に対応する度数又は比率とを示す情報である。各階級に対応する度数は、例えば、各階級に分けられた特徴量の数である。また、各階級に対応する比率は、各階級に分けられた特徴量の数の比率である。
ヒストグラム画像は、数値解析によって間隙の度合を複数の階級に分け、各階級と各階級に対応する度数又は比率との関係を示すヒストグラムの画像である。
PC20は、算出した間隙の特徴量に基づき、間隙の度合の適正を判定し、フロックの状態を判定する。
【0034】
また、PC20は、得られた凝集汚泥画像に対する画像処理技術によってフロックの形状を解析し、フロックの形状の特徴量を示す情報(以下、「形状特徴量情報」とも称される)を取得する。画像処理技術は、例えば、フロックの表面形状を解析するための技術、フロックの輪郭形状を解析するための技術、画像全体の色合い(RGB値)からフロックの形状を解析するための技術などである。以下では、テクスチャ解析によってフロックの表面形状を解析する例を一例として、本実施形態について説明する。
テクスチャ解析は、例えば、濃度ヒストグラム法(GLHM)、空間濃度レベル依存法(SGLDM)、濃度レベル差分法(GLDM)、2次元フーリエ変換などによって行われる。以下では、濃度レベル差分法(GLDM)によってテクスチャ解析を行う例を一例として、本実施形態について説明する。濃度レベル差分法では、画像におけるある画素と、当該画素から角度θの方向に距離dだけ離れた画素との濃度差がkである確率P(k)を要素として、確率密度関数を構築し、各種統計量を算出する手法である。本実施形態では、濃度レベル差分法によって、各種統計量の算出まではせず、濃度差の確率分布を示す確率密度関数を導出し、当該確率密度関数をフロックの形状の特徴量として使用する。
【0035】
PC20は、PLC30と通信可能に接続されている。PC20は、フロックの状態を制御するための制御信号をPLC30へ送信する。本実施形態に係るPC20は、一例として、ポンプ1Bの回転数を制御する信号、又は、高速ミキサ1Aのモーター1cの回転数を制御する信号をPLC30へ送信する。
ポンプ1Bの回転数を制御することで、ポンプ1Bから高速ミキサ1Aへ供給される凝集剤Bの量を制御することができる。これにより、汚泥Aに添加される凝集剤Bの薬注率を制御することができる。なお、薬注率は、凝集剤の添加割合であり、汚泥の固形物重量に対する凝集剤の固形物重量である。
高速ミキサ1Aのモーター1cの回転数を制御することで、高速ミキサ1Aの回転軸1a及び撹拌羽根1bの回転を制御することができる。これにより、高速ミキサ1Aにおける汚泥Aと凝集剤Bの混合具合を制御することができる。
【0036】
なお、別の実施形態として、PC20は、撹拌手段1Dのモーター1fの回転数を制御する信号をPLC30へ送信するようにしてもよい。撹拌手段1Dのモーター1fの回転数を制御することで、撹拌手段1Dの回転軸1d及び撹拌羽根1eの回転を制御することができる。これにより撹拌手段1Dにおける汚泥Aと凝集剤Bの混合具合を制御することができる。
【0037】
(6)PLC30
PLC30は、制御対象の動作を制御する装置である。PLC30は、PC20から受信する制御信号に基づき、制御対象の動作を制御する。制御信号には、例えば、各制御対象の制御量を示す制御値が含まれる。制御対象は、例えば、ポンプ1Bと高速ミキサ1Aのモーター1cである。制御対象がポンプ1Bの場合、PLC30は、PC20から受信する制御信号に基づき、ポンプ1Bの回転数を制御する。また、制御対象が高速ミキサ1Aのモーター1cである場合、PLC30は、PC20から受信する制御信号に基づき、高速ミキサ1Aのモーター1cの回転数を制御する。
【0038】
<2.PCの機能構成>
以上、図1を参照して、汚泥処理設備の構成について説明した。続いて、図2から図16を参照して、PC20の機能構成について説明する。図2は、本発明の実施形態に係るPC20の機能構成の一例を示す図である。
図2に示すように、PC20は、入力部210、通信部220、記憶部230、出力部
240、及び制御部250を備える。
【0039】
(1)入力部210
入力部210は、ユーザによる入力を受け付ける機能を有する。入力部210は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力装置によって実現される。当該入力装置は、PC20がハードウェアとして予め備える装置であってもよいし、PC20に外部接続される装置であってもよい。
【0040】
(2)通信部220
通信部220は、各種情報の送受信を行う機能を有する。例えば、通信部220は、カメラ10から凝集汚泥画像を受信する。また、通信部220は、制御信号をPLC30へ送信する。
【0041】
(3)記憶部230
記憶部230は、各種情報を記憶する機能を有する。記憶部230は、記憶媒体、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、NAS(Network Attached Storage)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)、又はこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。
【0042】
(4)出力部240
出力部240は、各種情報を出力する機能を有する。出力部240は、例えば、ディスプレイ等の表示装置などによって実現される。当該表示装置は、PC20がハードウェアとして予め備える装置であってもよいし、PC20に外部接続される装置であってもよい。
【0043】
(5)制御部250
制御部250は、PC20全般の動作を制御する機能を有する。制御部250は、例えば、PC20がハードウェアとして備えるCPU(Central Processing Unit)にプログラムを実行させることによって実現される。
図2に示すように、制御部250は、凝集汚泥画像取得部251、画像選定部252、領域判定部253、解析部254、薬注率制御部255、回転数決定部256、回転数制御部257、及び補正部258を備える。
【0044】
(5-1)凝集汚泥画像取得部251
凝集汚泥画像取得部251は、凝集汚泥画像を取得する機能を有する。例えば、凝集汚泥画像取得部251は、カメラ10が撮像してPC20へ送信し、PC20の通信部220が受信した凝集汚泥画像を取得する。
【0045】
ここで、図3から図5を参照して、フロックの状態と、フロック間に生じる間隙の度合又はフロックの表面形状との関係について説明する。図3から図5は、凝集汚泥画像の一例を示す図である。図3から図5には、一例として、間隙の度合が間隙の面積であり、間隙特徴量が間隙の平均面積である例が示されている。
【0046】
図3には、各間隙の面積の平均値が150である凝集汚泥画像40が示されている。凝集汚泥画像40に写る凝集汚泥に生じている間隙は、例えば、間隙41である。
図4には、各間隙の面積の平均値が600である凝集汚泥画像50が示されている。凝集汚泥画像50に写る凝集汚泥に生じている間隙は、例えば、間隙51である。
図5には、各間隙の面積の平均値が1000である凝集汚泥画像60が示されている。凝集汚泥画像60に写る凝集汚泥に生じている間隙は、例えば、間隙61である。
【0047】
図3から図5では、凝集汚泥画像40、凝集汚泥画像50、凝集汚泥画像60の順に、凝集剤の注入量が多くなっている。凝集汚泥画像40、凝集汚泥画像50、及び凝集汚泥画像60をそれぞれ比較すると、凝集剤の注入量を上げると、各間隙の面積の平均値が大きくなり、凝集剤の注入量を下げると各間隙の面積の平均値が小さくなっていることが分かる。これより、フロックの面積ではなく間隙の面積(以下、「間隙面積」とも称される)に基づき、フロックの状態の良し悪しを判定することができる。
また、図3から図5では、間隙の径については、凝集剤の注入量を上げると各間隙の径が大きくなり、凝集剤の注入量を下げると各間隙の径が小さくなっていることが分かる。間隙の数については、凝集剤の注入量を上げると間隙の数が少なくなり、凝集剤の注入量を下げると間隙の数が多くなっていることが分かる。これより、フロックの径や数ではなく間隙の径(以下、「間隙径」とも称される)又は間隙の数(以下、「間隙数」とも称される)に基づき、フロックの状態の良し悪しを判定することもできる。
フロックが他のフロックと重なっている場合には、フロックの度合(面積、径、数など)を正確に算出することができない。不正確なフロックの度合を用いると、フロックの状態を正確に把握することもできない。一方、間隙の度合はフロックの重なり等の影響を受けることがないため、1つ1つの間隙の度合を精度高く算出することができる。よって、フロックの度合ではなく間隙の度合を用いることで、フロックの状態の把握や制御をより精度高く行うことができる。
【0048】
(5-2)画像選定部252
画像選定部252は、凝集汚泥画像取得部251が取得した凝集汚泥画像から、フロックの状態の制御により適した画像を選定する機能を有する。例えば、画像選定部252は、凝集汚泥画像取得部251が取得した凝集汚泥画像に対して、オプティカルフロー(OF)を使用し、フロックの速度ベクトルを検出するための画像処理を行う。そして、画像選定部252は、オプティカルフローによるフロックの速度ベクトルの検出結果に応じて、凝集汚泥画像を選定する。
【0049】
具体的に、画像選定部252は、凝集汚泥画像取得部251が取得した凝集混和槽1内の凝集汚泥画像(複数の静止画像あるいは動画像)からオプティカルフローを使用しフロックの速度ベクトル(即ちフロックの動き)を検出し、検出したフロックの速度ベクトルのベクトル値が所定の閾値未満となった際の凝集汚泥画像を取得する。ベクトル値は、例えば、検出した複数の速度ベクトルのx成分又はy成分の合計値である。他にも、速度ベクトルの大きさ(絶対値)であってよく、また、速度ベクトルのx成分又はy成分の合計値だけでなく、平均値であってもよい。所定の閾値は、例えば、凝集混和槽1内におけるフロックが静止していると判定できる値、あるいは、フロックの動きが緩慢であると判定できる値であることが好ましい。
【0050】
かかる構成により、画像選定部252は、フロックが静止している時の凝集汚泥画像あるいはフロックの動きが緩慢である時の凝集汚泥画像を選定して取得することができる。即ち、画像選定部252は、凝集混和槽1における撹拌の影響により汚泥が流動的であり鮮明でない凝集汚泥画像を排除することができる。
これにより、PC20は、フロックの状態を制御するにあたり、フロックがより鮮明である凝集汚泥画像を用いることができるため、フロックが鮮明でない凝集汚泥画像を用いる場合と比較してフロックの状態の制御の精度を高めることができる。
【0051】
(5-3)領域判定部253
領域判定部253は、凝集汚泥画像に基づき、評価対象領域における間隙の領域と間隙以外の領域とを判定する機能を有する。例えば、領域判定部253は、領域判定モデルを用いて、画像選定部252によって取得された凝集汚泥画像の評価対象領域における間隙の領域と間隙以外の領域とを判定する。当該領域判定モデルは、凝集汚泥画像の評価対象領域における間隙の領域と間隙以外の領域との関係を機械学習した学習済みモデルである。
【0052】
領域判定部253が用いる領域判定モデルは、例えば、セマンティックセグメンテーション(SS)を用いて、入力された凝集汚泥画像の各画素が間隙の領域又は間隙以外の領域のいずれであるかを判定するように機械学習を行った学習済みモデルである。当該学習済みモデルは、例えば、予め人が「間隙の領域」と「間隙以外の領域」を別々の色で塗った画像を教師データとして用いる。当該モデルは、原画像から教師データと同じように「間隙の領域」と「間隙以外の領域」を分類できるニューラルネットワークモデルを機械学習の手法によって学習し、分類するための特徴量を自動抽出して作成する。
【0053】
領域判定部253は、セマンティックセグメンテーションを用いて機械学習を行った学習済みモデルに対して画像選定部252が取得した凝集汚泥画像を入力する。学習済みモデルは、入力された凝集汚泥画像の各画素を「間隙の領域」又は「間隙以外の領域」のいずれかに分類した結果を出力する。領域判定部253は、学習済みモデルが出力した結果を判定結果として取得する。
【0054】
なお、領域判定部253は、上述の学習済みモデルを用いず、2値化などの画像処理によって凝集汚泥画像の各画素を「間隙の領域」又は「間隙以外の領域」のいずれかに分類してもよい。また、領域判定部253は、凝集汚泥画像に対して、ガウシアンフィルタによる前処理を行ってもよい。
【0055】
(5-4)解析部254
解析部254は、凝集汚泥画像に基づき、薬注率又は回転数を評価する機能を有する。後述する回転数決定部256によって決定された回転数で汚泥が撹拌された後に薬注率を評価する場合、解析部254は、この回転数による汚泥の撹拌後に取得される凝集汚泥画像に基づき薬注率を評価する。後述する薬注率制御部255による薬注率の制御後に薬注率を評価する場合、解析部254は、薬注率の制御後に取得される凝集汚泥画像に基づき薬注率を評価する。後述する回転数制御部257による回転数の制御後に回転数を評価する場合、解析部254は、回転数の制御後に取得される凝集汚泥画像に基づき回転数を評価する。
【0056】
(薬注率を評価する場合)
解析部254は、凝集汚泥画像の評価対象領域に存在する複数のフロック間に生じている間隙の度合に基づき、薬注率を評価する。評価にあたり、解析部254は、凝集汚泥画像から間隙の度合を検出し、この間隙の度合の適正を判定する。間隙の度合が適正である場合はフロックの状態が適切な状態であるため、解析部254はその時の薬注率が適正であると評価する。一方、間隙の度合が適正でない場合はフロックの状態が適切な状態でないため、解析部254はその時の薬注率が適正でないと評価する。
【0057】
より具体的に、まず、解析部254は、凝集汚泥画像に基づき、間隙の度合を解析する。例えば、解析部254は、画像選定部252によって取得された凝集汚泥画像に基づき、評価対象領域に存在する複数のフロック間に生じている間隙の度合を解析する。具体的に、解析部254は、領域判定部253が取得した判定結果に基づき、凝集汚泥画像において間隙の領域と判定された領域における間隙の度合を解析する。一例として、解析部254は、間隙面積の大きさ、間隙径(直径又は半径)の大きさ、間隙数などを検出して解析する。
なお、解析部254は、複数の間隙が連続している場合、複数の間隙を1つの間隙とみなして、間隙の度合を検出する。
【0058】
解析部254は、検出した間隙の度合に基づき、間隙の特徴量を解析する。解析部254は、検出した間隙の度合に対する数値解析によって得られる間隙特徴量情報に基づき、間隙の度合の適正を判定し、判定結果を解析結果として出力する。例えば、解析部254は、間隙特徴量情報に基づき間隙の度合の適正を分類する分類モデルを用いて、間隙の度合が適正であるか否かを判定する。当該分類モデルは、例えば、間隙特徴量情報と間隙の度合の適正との関係を機械学習によって学習した学習済みモデルである。解析部254が用いる分類モデルは、例えば、サポートベクターマシン(SVM)やランダムフォレストなどによって機械学習を行ったモデルである。
解析部254は、当該分類モデルに対して間隙特徴量情報を入力することで出力される分類結果に基づき、間隙の度合が適正であるか否かを判定する。
【0059】
例えば、解析部254が間隙の平均面積を間隙特徴量情報として分類モデルへ入力したとする。この場合、分類モデルは、入力された間隙の平均面積に基づき、間隙の度合(この場合は面積)が適正であるか否かを示す判定結果を出力する。そして、解析部254は、分類モデルから出力された判定結果に基づき、間隙の度合が適正であるか否かを判定する。
また、解析部254が分類情報を間隙特徴量情報として分類モデルへ入力したとする。この場合、分類モデルは、入力された分類情報に基づき、間隙の度合の各階級と各階級に対応する度数又は比率との関係が適正であるか否かを示す判定結果を出力する。そして、解析部254は、分類モデルから出力された判定結果に基づき、間隙の度合が適正であるか否かを判定する。
また、解析部254がヒストグラム画像を間隙特徴量情報として分類モデルへ入力したとする。この場合、分類モデルは、入力されたヒストグラム画像が示すヒストグラムの形に基づき、間隙の度合の各階級と各階級に対応する度数又は比率との関係が適正であるか否かを示す判定結果を出力する。そして、解析部254は、分類モデルから出力された判定結果に基づき、間隙の度合が適正であるか否かを判定する。
【0060】
ここで、図6から図8を参照して、分類情報と間隙特徴量情報を示すヒストグラムの関係について説明する。図6から図8は、本発明の実施形態に係る間隙特徴量情報を示すヒストグラムの一例を示す図である。図6から図8に示すグラフ(ヒストグラム)の横軸は階級を示し、縦軸は度数を示している。図6から図8では、一例として、間隙の度合が間隙の半径であり、横軸の階級は間隙の半径の大きさによる階級を示し、縦軸の度数は各階級に分けられた半径の数(即ち間隙数)を示しているものとする。
【0061】
図6には、凝集汚泥画像の評価対象領域にて検出された間隙数が165個であり、平均半径が9.9であり、半径の大きさの上位3個が42.6、33.7、33.1である場合のヒストグラムが示されている。
図7には、凝集汚泥画像の評価対象領域にて検出された間隙数が71個であり、平均半径が10.3であり、半径の大きさの上位3個が37.0、34.5、33.6である場合のヒストグラムが示されている。
図8には、凝集汚泥画像の評価対象領域にて検出された間隙数が179個であり、平均半径が7.9であり、半径の大きさの上位3個が30.4、25.6、21.9である場合のヒストグラムが示されている。
【0062】
図6から図8に示すヒストグラムと分類モデルを用いて、間隙の度合が適正であるか否かの判定を実際に行った結果、図6のヒストグラムに関する間隙の度合は適正であり、図7及び図8のヒストグラムに関する間隙の度合は適正でないと判定された。
図7のヒストグラムでは間隙数が71個であり、間隙の度合が適正であると判定された図6のヒストグラムの間隙数165個と比較して明らかに少ない。
図8のヒストグラムでは平均半径が7.9であり、間隙の度合が適正であると判定された図6のヒストグラムの平均半径9.9と比較して明らかに小さい。上位3個の半径の大きさについても同様である。
以上より、分類モデルは、図6のヒストグラムに関する間隙の度合が適正であることを正とした場合、図7図8のヒストグラムに関する間隙の度合の適正判定を正しく行えている。
【0063】
(回転数を評価する場合)
解析部254は、凝集汚泥画像の評価対象領域に存在する複数のフロック間に生じている間隙の度合及び各フロックの形状に基づき、回転数を評価する。解析部254は、例えば、回転数を「遅い」、「適正」、「速い」のいずれかに評価する。評価にあたり、解析部254は、凝集汚泥画像に基づき、間隙の度合及びフロックの形状を解析し、解析結果から回転数を評価する。
まず、解析部254は、凝集汚泥画像に基づき、上述した薬注率を評価する場合と同様にして間隙の度合を解析し、間隙特徴量情報を取得する。
次いで、解析部254は、凝集汚泥画像に基づき、フロックの形状を解析する。例えば、解析部254は、間隙特徴量情報を取得した凝集汚泥画像に対するテクスチャ解析によって、評価対象領域に存在する各フロックの表面形状の特徴量を示す形状特徴量情報を取得する。当該テクスチャ解析において、解析部254は、凝集汚泥画像における所定の画素間の濃度差が所定の値となる確率密度関数を形状特徴量情報として算出する。
【0064】
ここで、図9から図11を参照して、撹拌機の回転数と、フロックの表面形状との関係について説明する。図9から図11は、回転数に応じた凝集汚泥画像の一例を示す図である。図9には、撹拌機の回転数が遅い場合の凝集汚泥画像70が示されている。図10には、撹拌機の回転数が適正である場合の凝集汚泥画像80が示されている。図11には、撹拌機の回転数が速い場合の凝集汚泥画像90が示されている。
【0065】
図9から図11では、凝集汚泥画像70、凝集汚泥画像80、凝集汚泥画像90の順に、撹拌機の回転数が速くなっている。凝集汚泥画像70、凝集汚泥画像80、及び凝集汚泥画像90をそれぞれ比較すると、撹拌機の回転数が遅いほどフロックの表面形状が滑らかな状態(即ち凹凸が少ない状態)となり、撹拌機の回転数が速いほどフロックの表面形状が粗い状態(即ち凹凸が多い状態)となっていることが分かる。これより、フロックの表面形状に基づき、フロックの状態の良し悪しを判定することもできる。
なお、撹拌機の回転数が遅い場合、汚泥とポリマーとが上手く混ざらないため、図9の凝集汚泥画像70に示すようにフロックの表面形状が滑らかな状態となる。一方、撹拌機の回転数が速い場合、生成されたフロックが粉砕されて細かいフロックとなってしまうため、図11の凝集汚泥画像90に示すようにフロックの表面形状が粗い状態となる。
【0066】
また、図12から図14を参照して、撹拌機の回転数と形状特徴量情報を示すヒストグラムとの関係について説明する。図12から図14は、本発明の実施形態に係る形状特徴量情報を示すヒストグラムの一例を示す図である。図12から図14に示すグラフ(ヒストグラム)の横軸は濃度差を示し、縦軸は確率を示している。
撹拌機の回転数が遅い場合、フロックの表面は、図9に示した凝集汚泥画像70のような状態となる。この状態は、どちらかといえば滑らかであり、凹凸感があまり目立たない状態といえる。このため、全体的に凹凸の差があまりないため、各画素の濃度差が小さくなる。よって、撹拌機の回転数が遅い場合のヒストグラムは、図12に示すように、濃度差が小さいほど確率が高くなり、濃度差が大きいほど確率が低い分布となる。
撹拌機の回転数が適正である場合、フロックの表面は、図10に示した凝集汚泥画像80のような状態となる。この状態は、どちらかといえば標準的な状態といえる。よって、撹拌機の回転数が適正である場合のヒストグラムは、図13に示すように、真ん中寄りの正規分布となる。
撹拌機の回転数が速い場合、フロックの表面は、図11に示した凝集汚泥画像90のような状態となる。この状態は、どちらかといえば滑らかではなく、凹凸感が目立つ状態といえる。このため、全体的に凹凸の差が大きいため、各画素の濃度差が大きくなる。よって、撹拌機の回転数が速い場合のヒストグラムは、図14に示すように、濃度差が小さいほど確率が低くなり、濃度差が大きいほど確率が高い分布となる。
なお、図9の凝集汚泥画像70に示すように濃度差が小さくなる場合について他の物体を例に説明すると、壁や机の表面のようにコントラストの変化がない場合には濃度差が小さくなるような傾向にある。一方、図11の凝集汚泥画像90に示すように濃度差が大きくなる場合について他の物体を例に説明すると、髪の毛のような細かい物体の集合体の場合には濃度差が大きくなるような傾向にある。
【0067】
解析部254は、得られた間隙特徴量情報と形状特徴量情報とに基づき、回転数を評価する。例えば、解析部254は、間隙特徴量情報と形状特徴量情報とに基づき、回転数の適正を評価する評価モデルを用いて、回転数が適正であるか否かを判定する。当該評価モデルは、例えば、間隙特徴量情報と、形状特徴量情報と、回転数との関係を機械学習によって学習した学習済みモデルである。解析部254が用いる評価モデルは、例えば、線形回帰、サポートベクターマシン(SVM)、ランダムフォレストなどによって機械学習を行ったモデルである。
評価モデルの学習は、例えば、間隙特徴量情報を示すヒストグラム画像と、形状特徴量情報を示すヒストグラム画像と、各ヒストグラム画像における回転数の評価を示す正解データとを用いて行われる。間隙特徴量情報を示すヒストグラム画像は、例えば図6から図8に示したヒストグラムの画像である。形状特徴量情報を示すヒストグラム画像は、例えば図12から図14に示したヒストグラムの画像である。
解析部254は、当該評価モデルに対して間隙特徴量情報及び形状特徴量情報を入力することで出力される評価結果(「遅い」、「適正」、「速い」のいずれか)に基づき、回転数が適正であるか否かを判定する。
【0068】
なお、解析部254は、間隙の度合のうち、度合の大きい順に少なくとも1つの度合(例えば最大値)又は度合の小さい順に少なくとも1つの度合(例えば最小値)を除いてから、間隙の度合に対する数値解析を行ってもよい。複数の間隙が連続している場合、解析部254は、複数の間隙を1つの間隙とみなした上で、間隙の度合の大きさに順位付けを行う。そして、解析部254は、順位付けした間隙の度合のうち上位にあるものと下位にあるものを除外して、間隙の度合に対する数値解析を行う。例えば、間隙の度合が間隙面積である場合、解析部254は、複数の間隙の各々の面積のうち、最大の面積と最小の面積を除外してから、間隙の平均面積を特徴量として算出する。
これにより、解析部254は、凝集汚泥を撮像した際のノイズ(例えば汚泥中のごみや泡など)や揺らぎ(例えば撹拌の影響など)に起因する判定の誤差を減らすことができる。
【0069】
また、解析部254は、分類モデルを用いずに、間隙の度合が適正であるか否かを判定してもよい。
例えば、解析部254は、間隙の度合が適正であるか否かを判定する基準となる閾値と間隙特徴量情報が示す値との比較によって、間隙の度合が適正であるか否かを判定してもよい。当該閾値は、例えば、汚泥処理設備の過去の運転実績に基づきユーザによって適正な値が設定される。間隙特徴量情報が示す値は撹拌速度や汚泥の濃度などにより変化する。これにより、適正な薬注量(薬注率)と各値との関係も変化する。そのため、ユーザは、各装置(槽の大きさ、撹拌装置の形状など)にて実際に運転(試運転など)を行うことで、薬注量が適正となる、適正な閾値の検討を行う。
また、解析部254は、画像認識処理によって、間隙の度合が適正であるか否かを判定してもよい。具体的に、解析部254は、回転数の制御後に得られた第1の凝集汚泥画像と、過去にフロックの状態が適切な状態であると判定された第2の凝集汚泥画像とを画像認識処理によって比較する。比較の結果、第1の凝集汚泥画像が示すフロックの状態が第2の凝集汚泥画像が示すフロックの状態に近い場合、解析部254は、第1の凝集汚泥画像が取得された際の回転数が適正であると評価する。
解析部254は、例えば、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて画像認識処理を行う。
【0070】
回転数の評価を複数回行った結果、適正であると判定された回転数がなかった場合、解析部254は、制御の際に設定した複数の回転数の中からより適正な回転数を評価する。
例えば、解析部254は、回転数を複数回制御して得られた複数の凝集汚泥画像の各々が示す間隙の度合のうち、最大値を示す間隙の度合に対して所定の比率を掛けて算出される値が適正な間隙の度合であるとする。そして、解析部254は、適正であるとした間隙の度合となる回転数、即ち適正であるとした間隙の度合を示す凝集汚泥画像が取得された際の回転数が適正であると評価する。所定の比率は、過去に回転数を複数回制御した際の実績より、複数の凝集汚泥画像に基づき取得された複数の間隙の度合のうち、フロックの状態が適切な状態であると判定された間隙の度合を、最大値を示す間隙の度合で割って算出される値である。
なお、最大値の間隙の度合に対して所定の比率を掛けて算出した適正な間隙の度合を示す凝集汚泥画像が取得されていないとする。この場合、解析部254は、算出した適正な間隙の度合に最も近い間隙の度合を示す凝集汚泥画像を取得済みの凝集汚泥画像の中から選択する。そして、解析部254は、選択した凝集汚泥画像が取得された際の回転数が適正な回転数であると評価してもよい。または、解析部254は、最大値の間隙の度合を示す凝集汚泥画像が取得された際の回転数に対して所定の比率を掛けて算出される回転数を、適正な回転数であるとしてもよい。
【0071】
また、回転数の評価を複数回行った結果、適正であると判定された回転数がなかった場合、解析部254は、複数の凝集汚泥画像に対する画像認識処理によって、制御の際に設定した複数の回転数の中からより適正な回転数を評価してもよい。この場合、解析部254は、例えばCNNを用いて、回転数を複数回制御して得られた複数の第1の凝集汚泥画像と、過去にフロックの状態が適切な状態であると判定された第2の凝集汚泥画像とを画像認識処理によって比較する。比較の結果、解析部254は、第2の凝集汚泥画像が示すフロックの状態により近いフロックの状態を示す第1の凝集汚泥画像が取得された際の回転数が適正であると評価する。
【0072】
また、回転数の評価を複数回行った結果、適正であると判定された回転数がなかった場合、解析部254は、分類モデルを用いて、制御の際に設定した複数の回転数の中からより適正な回転数を評価してもよい。この場合、解析部254は、回転数を複数回制御して得られた複数の凝集汚泥画像の各々における間隙特徴量情報に基づき、各間隙の度合のうち最も適正である間隙の度合を判定し、最も適正である間隙の度合となる回転数が適正であると評価する。
【0073】
(5-5)薬注率制御部255
薬注率制御部255は、間隙の度合の解析結果に基づき、凝集剤の薬注率を制御する機能を有する。薬注率制御部255は、後述する回転数決定部256によって決定された回転数で稼働する撹拌機にて撹拌された汚泥を凝集剤によって凝集したフロックの状態を適切な状態にするために、汚泥に添加される凝集剤の薬注率を制御する。
例えば、薬注率制御部255は、解析部254によって間隙の度合が適正でないと判定された場合、間隙の度合が目標の度合となるように、凝集剤の薬注率を制御する。例えば、薬注率制御部255は、凝集剤の薬注率と間隙の度合の関係から、間隙の度合を目標の度合に近づけるためのポンプ1Bの回転数を決定する。そして、薬注率制御部255は、決定したポンプ1Bの回転数を示す制御信号を、通信部220からPLC30へ送信する。
【0074】
ここで、図15を参照して、凝集剤の薬注率と間隙の度合の関係について説明する。図15は、本発明の実施形態に係る凝集剤の薬注率と間隙面積の関係の一例を示す図である。図15では、一例として、間隙の度合が間隙面積である例が示されている。図15に示すグラフの横軸は凝集剤の薬注率(%)を示し、縦軸は間隙面積を示している。
図15に示すグラフより、薬注率が上昇するにつれて間隙面積も大きくなっていることが分かる。しかしながら、凝集剤の薬注率がある程度上昇すると、それ以上凝集剤の薬注率が上昇した場合には間隙面積が小さくなっていることが分かる。これは、過薬注によりフロックが分散してフロック径が小さくなったものと推測される。
【0075】
薬注率制御部255は、図15に示したような凝集剤の薬注率と間隙面積の関係に基づき、間隙面積が目標面積となるように、凝集剤の薬注率を制御する。例えば、図15に示すように、目標面積が1300に設定されているとする。間隙面積が1300よりも小さい場合、薬注率制御部255は、凝集剤の薬注率を上昇させることで間隙面積を目標面積に近づけることができる。一方、間隙面積が1300よりも大きい場合、薬注率制御部255は、凝集剤の薬注率を上昇させることで間隙面積を目標面積に近づけてもよいし、凝集剤の薬注率を低下させることで間隙面積を目標面積に近づけてもよい。
【0076】
ここで、目標の度合の設定について説明する。例えば、目標の度合は、凝集混和槽1の後段にある設備における運転効率を考慮して設定される。一例として、目標の度合は、運転効率が最大となるように設定される。
凝集混和槽1の後段の設備は、例えば図1に示す濃縮機2である。濃縮機2が一般的な濃縮機である場合、運転効率は濃縮機2における濃縮効率である。濃縮機2が加温濃縮機である場合、運転効率は濃縮機2における加温効率である。加温効率は、例えば、以下の(1)式によって算出される。
加温効率(%)=ΔTact/ΔTide×100 …(1)
上記(1)式において、
ΔTact=濃縮汚泥温度-原汚泥温度 …(2)
ΔTide=(T1×Q1+T2×Q2)/(Q1+Q2) …(3)
であり、上記(3)式において、T1は原汚泥温度(凝集汚泥温度)、T2は温水温度、Q1は濃縮汚泥流量、Q2は温水流量である。
【0077】
ここで、図16を参照して、間隙の度合と加温効率の関係について説明する。図16は、本発明の実施形態に係る間隙面積と加温効率の関係の一例を示す図である。図16では、一例として、間隙の度合が間隙面積である例が示されている。図16に示すグラフの横軸は間隙面積を示し、縦軸は加温効率(%)を示している。
図16に示す各グラフの傾向より、間隙面積が大きくなるにつれて加温効率が上昇する傾向にあることが分かる。しかしながら、間隙面積がある程度大きくなると、それ以上間隙面積が大きくなった場合には加温効率が低下する傾向にあることが分かる。これは即ち、フロックが大きすぎても加温効率が低下することがあるといえる。
【0078】
薬注率制御部255は、図16に示したような間隙の度合と加温効率の関係に基づき、間隙の度合が加温効率の最大となる度合となるように、凝集剤の薬注率を制御する。例えば、図16に示すグラフの例では、間隙面積が1250前後で加温効率が最大となる。即ち、目標面積が1250前後に設定される。そして、薬注率制御部255は、間隙面積が目標面積である1250前後に近づくように、図15の例の場合と同様にして凝集剤の薬注率を制御する。
【0079】
また、目標の度合は、汚泥の濃度に応じて設定されてもよい。例えば、薬注率制御部255は、汚泥の濃度に応じた目標の度合を設定し、間隙の度合が当該目標の度合に近づくように凝集剤の薬注率を制御する。これにより、フロックの状態を制御するために、汚泥の濃度を調整する必要がなくなる。即ち、汚泥を希釈したり新たな装置を追加したりして汚泥の濃度を調整することなく、フロックの状態を制御することができる。
【0080】
(5-6)回転数決定部256
回転数決定部256は、汚泥を撹拌する撹拌機における回転数を決定する機能を有する。回転数決定部256による回転数の決定対象である汚泥を撹拌する撹拌機は、例えば、高速ミキサ1Aである。この場合、回転数決定部256は、高速ミキサ1Aのモーター1cの回転数を決定する。
なお、かかる例に限定されず、回転数決定部256による回転数の決定対象である汚泥を撹拌する撹拌機が凝集混和槽1であり、回転数決定部256が撹拌手段1Dのモーター1fの回転数を決定してもよい。
【0081】
回転数決定部256は、汚泥の処理条件に応じた回転数を決定する決定方法によって、回転数を決定する。汚泥の処理条件は、例えば、汚泥の処理量、汚泥の混合比、汚泥の温度、汚泥の濃度などである。
決定方法は、汚泥の処理条件と回転数との関係を示す情報を用いて回転数を決定する方法である。汚泥の処理条件と回転数との関係を示す情報は、例えば、ユーザの経験または過去の運転実績などに基づき設定された関係式である。当該関係式は、例えば、以下の(4)式である。
Y=aX+b …(4)
上記(4)式において、Xは処理条件、Yは回転数、aは係数、bは定数項である。一例として、汚泥の処理条件が汚泥の処理量である場合、関係式は、汚泥の処理量(X)と回転数(Y)との関係を示す式である。
【0082】
関係式は、後述する補正部258によって補正される。例えば、関係式は、回転数の制御によってフロックの状態が適切な状態となった際の回転数に基づき、補正部258によって補正される。回転数決定部256は、補正部258によって関係式が補正された場合、補正後の関係式を用いて、汚泥を撹拌する撹拌機における回転数を決定する。補正後の関係式は、例えば、以下の(5)式である。
Y=aX+b+c …(5)
上記(5)式において、Xは処理条件、Yは回転数、aは係数、bは定数項、cは補正項である。即ち、後述する補正部258は、回転数の制御によってフロックの状態が適切な状態となった際の回転数に基づき、補正項cを求めて関係式を補正する。
【0083】
なお、関係式は、上記(4)式や(5)式のように1次関数による直線の式であってもよいし、2次関数や3次関数などによる曲線の式であってもよい。
また、汚泥の処理条件と回転数との関係を示す情報は関係式に限定されず、例えば、各情報の関係を示すテーブルなどであってもよい。
【0084】
(5-7)回転数制御部257
回転数制御部257は、回転数を制御する機能を有する。回転数制御部257は、間隙の度合の解析結果とフロックの形状の解析結果とに基づき、撹拌機の回転数を制御する。解析結果は、解析部254による回転数の評価結果である。例えば、回転数制御部257は、間隙の度合又はフロックの形状が目標の度合又は形状となるように、汚泥を撹拌する撹拌機の回転数を制御する。具体的に、回転数制御部257は、凝集混和槽1へ送る汚泥を撹拌する撹拌機の回転数又は凝集混和槽1にて凝集汚泥を撹拌する撹拌機である回転数のうち少なくとも一方の回転数を制御する。
【0085】
凝集混和槽1へ送る汚泥を撹拌する撹拌機が高速ミキサ1Aである場合、回転数制御部257は、間隙の度合又はフロックの形状が目標の度合又は形状となるように、高速ミキサ1Aのモーター1cの回転数を制御する。この場合、回転数制御部257は、モーター1cの回転数と間隙の度合又はフロックの形状との関係から、間隙の度合又はフロックの形状を目標の度合又は形状に近づけるためのモーター1cの回転数を決定する。そして、回転数制御部257は、決定したモーター1cの回転数を示す制御信号を、通信部220からPLC30へ送信する。
【0086】
凝集混和槽1にて凝集汚泥を撹拌する撹拌機が撹拌手段1Dである場合、回転数制御部257は、間隙の度合又はフロックの形状が目標の度合又は形状となるように、撹拌手段1Dのモーター1fの回転数を制御する。この場合、回転数制御部257は、モーター1fの回転数と間隙の度合又はフロックの形状との関係から、間隙の度合又はフロックの形状を目標の度合又は形状に近づけるためのモーター1fの回転数を決定する。そして、回転数制御部257は、決定したモーター1fの回転数を示す制御信号を、通信部220からPLC30へ送信する。
【0087】
なお、本実施形態では、間隙の度合又はフロックの形状を目標の度合又は形状に近づけるために、回転数制御部257による制御よりも薬注率制御部255による制御を優先的に行う。これは、薬注率を先に制御する方が時間的な効率が良く、フロック状態を変化させやすいためである。薬注率制御部255による制御のみで間隙の度合又はフロックの形状を目標の度合又は形状に近づけることができた場合、回転数制御部257は、制御を行わなくてもよい。一方、薬注率制御部255による制御のみで間隙の度合又はフロックの形状を目標の度合又は形状に近づけることができない場合、回転数制御部257は、回転数を制御する。
【0088】
回転数制御部257は、フロックの状態を適切な状態にするために、薬注率制御部255による薬注率の制御後に回転数を制御する。例えば、回転数制御部257は、薬注率制御部255による薬注率の制御のみではフロックの状態が適切な状態とならない場合に、薬注率を固定して回転数を制御する。この時、回転数制御部257は、回転数を増減させて複数の回転数を試すことで、複数の回転数の中からより最適な回転数を決定できるようにする。
なお、回転数制御部257は、薬注率制御部255による薬注率の制御のみでフロックの状態が適切な状態となっている場合であっても、定期的に薬注率を固定して回転数を制御してもよい。例えば、回転数制御部257は、1日、1週間、1カ月など所定の期間が経過したタイミングや、季節の変わり目のタイミングなど、あらかじめ設定されたタイミングで回転数を制御する。
【0089】
(5-8)補正部258
補正部258は、回転数の制御によってフロックの状態が適切な状態となった際の回転数に基づき、決定方法を補正する機能を有する。例えば、決定方法が関係式を用いる方法である場合、補正部258は、補正項を算出し、この補正項を用いて関係式を補正する。
【0090】
一例として、処理量がX1の汚泥を処理するための回転数が、係数がa1で定数項がb1である(4)式より、回転数Y1と算出されたとする。この回転数Y1で高速ミキサ1Aを稼働した結果、薬注率制御部255による薬注率の制御のみではフロックの状態が適切な状態とならなかったため、回転数制御部257によって回転数が制御されたとする。回転数制御部257による回転数の制御の結果、回転数がY2の時にフロックの状態が適切な状態になったとする。この場合、補正部258は、上述した(5)式に基づき、補正項を算出する。具体的に、補正部258は、既知である係数a1と定数項b1と処理量X1と、制御の結果得られた回転数Y2とを(5)式に対して代入し、補正項c1を算出する。そして、補正部258は、算出した補正項c1で(4)式を補正し、補正後の関係式を得る。
【0091】
<3.処理の流れ>
以上、図2から図16を参照して、PC20の機能構成について説明した。続いて、図17から図19を参照して、PC20における処理の流れについて説明する。
【0092】
(1)PC20における処理の流れ
図17は、本発明の実施形態に係るPC20における処理の流れの一例を示すフローチャートである。図17では、一例として、回転数制御部257が高速ミキサ1Aのモーター1cの回転数を制御し、回転数の決定方法が関係式を用いる方法であり、処理条件が汚泥の処理量であるものとする。
【0093】
図17に示すように、まず、PC20の回転数決定部256は、高速ミキサ1Aのモーター1cについて、関係式を用いて汚泥の処理量に応じた回転数を決定する(ステップS101)。
次いで、PC20の解析部254は、間隙の度合の解析処理を行う(ステップS102)。間隙の度合の解析処理の詳細については後述する。解析部254は、間隙の度合の解析処理によって、間隙の度合の適正の判定結果を取得する。
【0094】
次いで、解析部254は、薬注率の評価を行う(ステップS103)。具体的に、解析部254は、間隙の度合の適正の判定結果より、間隙の度合が適正である場合は薬注率が適正であると評価し、間隙の度合が適正でない場合は薬注率が適正でないと評価する。
【0095】
薬注率が適正である場合(ステップS104/YES)、フロックの状態が適切であるため薬注率を制御する必要はない。そのため、PC20は、処理をステップS102へ戻し、次に取得される凝集汚泥画像について処理を繰り返す。一方、薬注率が適正でない場合(ステップS104/NO)、フロックの状態が適切でないため薬注率を制御する必要がある。そのため、PC20は、処理をステップS105へ進める。
【0096】
処理がステップS105へ進んだ場合、PC20の薬注率制御部255は、凝集剤の薬注率を制御する(ステップS105)。具体的に、薬注率制御部255は、間隙の度合が目標の度合となるように、凝集剤の薬注率を制御する。
【0097】
薬注率の制御後、解析部254は、間隙の度合の変化量を確認する(ステップS106)。解析部254は、間隙の度合の変化量から、薬注率の制御を継続することがフロックの状態の制御に有効であるか否かを判定する。この判定のため、解析部254は、薬注率の制御後の間隙の度合を直近数回分取得し、薬注率の制御前の間隙の度合と薬注率の制御後の間隙の度合との差分を間隙の度合の変化量として複数算出する。解析部254は、算出した複数の変化量を比較し、薬注率の制御による間隙の度合の変化が小さくなっているか否かを判定する。間隙の度合の変化が小さくなっているか否かの判定は、例えば、算出した変化量と閾値との比較や分散の算出などによって行われる。
間隙の度合の変化が小さくなっている場合(ステップS106/YES)、薬注率の制御がフロックの状態の制御に有効ではなくなっており、回転数の制御によるフロックの状態の制御が必要である。そのため、PC20は、処理をステップS107へ進める。また、S107に進む前に薬注率は所定の値で固定する。固定する薬注率は、直前の薬注率の値でも過去の実績で最適であった薬注率の値でも人による手動入力値でもよい。
一方、間隙の度合の変化が小さくなっていない場合(ステップS106/NO)、薬注率の制御がフロックの状態の制御に有効である。そのため、回転数のPC20は、処理をステップS102へ戻し、次に取得される凝集汚泥画像について処理を繰り返す。
【0098】
処理がステップS107へ進んだ場合、回転数制御部257は、高速ミキサ1Aのモーター1cの回転数を制御する(ステップS107)。例えば、回転数制御部257は、現在の回転数から任意の回転数だけ増加又は減少させる。
次いで、解析部254は、特徴量情報の取得処理を行う(ステップS108)。特徴量情報の取得処理の詳細については後述する。解析部254は、特徴量情報の取得処理によって、間隙特徴量情報と形状特徴量情報を取得する。
【0099】
次いで、解析部254は、回転数の評価を行う(ステップS109)。具体的に、解析部254は、取得した間隙特徴量情報と形状特徴量情報を評価モデルに入力することで出力される評価結果に基づき、回転数が適正であるか否かを判定する。解析部254は、評価モデルから「適正」を示す評価結果が出力された場合は回転数が適正であると評価し、評価モデルから「遅い」又は「速い」を示す評価結果が出力された場合は回転数が適正でないと評価する。
【0100】
回転数が適正である場合(ステップS110/YES)、フロックの状態が適切であるため回転数を制御する必要はない。そのため、PC20は、処理をステップS111へ進める。一方、回転数が適正でない場合(ステップS110/NO)、フロックの状態が適切でないため回転数を制御する必要がある。そのため、PC20は、処理をステップS107へ戻し、回転数の制御と評価を繰り返す。
【0101】
処理がステップS111へ進んだ場合、PC20の補正部258は、回転数の決定方法を補正する(ステップS111)。例えば、補正部258は、ステップS110にて適正であると判定された回転数に基づき、関係式の補正項を算出し、この補正項を用いて関係式を補正する。補正後、PC20は処理をステップS101から繰り返す。
補正後のステップS101では、補正後の関係式を用いて回転数が決定される。これにより、汚泥の処理量(処理条件)が変わったとしても、ユーザが自ら関係式を補正することなく、変更後の処理量に応じた適切な回転数を決定することができる。
【0102】
(2)間隙の度合の解析処理における詳細な処理の流れ
図18は、本発明の実施形態に係る間隙の度合の解析処理における詳細な処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0103】
図18に示すように、まず、PC20の凝集汚泥画像取得部251は、カメラ10が撮像してPC20へ送信し、PC20の通信部220が受信した凝集汚泥画像を取得する(ステップS201)。
【0104】
次いで、PC20の画像選定部252は、凝集汚泥画像取得部251が取得した凝集汚泥画像に対して、オプティカルフローを使用しフロックの速度ベクトルを検出するための画像処理を行う(ステップS202)。
フロックの速度ベクトルの検出後、画像選定部252は、フロックの速度ベクトルの検出結果に応じて、凝集汚泥画像を選定する(ステップS203)。
【0105】
次いで、PC20の領域判定部253は、領域判定モデルを用いて、画像選定部252が取得した凝集汚泥画像における間隙の領域と間隙以外の領域を判定する(ステップS204)。
【0106】
次いで、PC20の解析部254は、間隙の度合の解析を行う(ステップS205)。具体的に、解析部254は、領域判定部253による判定結果に基づき、凝集汚泥画像において間隙の領域と判定された領域における間隙の度合を検出する。
【0107】
次いで、解析部254は、間隙の特徴量の解析を行う(ステップS206)。具体的に、解析部254は、解析によって検出した間隙の度合に対する数値解析によって、間隙の特徴量を示す間隙特徴量情報を取得する。
【0108】
次いで、解析部254は、間隙の度合の適正判定を行う(ステップS207)。例えば、解析部254は、解析によって得られた間隙特徴量情報を分類モデルへ入力し、分類モデルから出力される判定結果から間隙の度合が適正であるか否かを判定する。
そして、PC20は、間隙の度合の解析処理を終了する。
【0109】
(3)特徴量情報の取得処理における詳細な処理の流れ
図19は、本発明の実施形態に係る特徴量情報の取得処理における詳細な処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0110】
図19に示すステップS301からステップS306までの処理は、図18に示すステップS201からステップS206までの処理と同様であるため、その説明を省略する。
ステップS306にて間隙特徴量情報を取得後、解析部254は、フロックの形状の特徴量の解析を行う(ステップS307)。具体的に、解析部254は、画像選定部252が取得した凝集汚泥画像に対するテクスチャ解析によって、フロックの形状の特徴量を示す形状特徴量情報を取得する。
そして、PC20は、特徴量情報の取得処理を終了する。
【0111】
<4.具体例>
以上、図17から図19を参照して、PC20における処理の流れについて説明した。続いて、図20を参照して、具体例について説明する。図20は、本発明の実施形態に係る具体例を示す図である。図20では、一例として、間隙の度合が間隙面積である例が示されている。
【0112】
図20には、間隙面積が目標面積となるように薬注率を制御した際の、間隙面積と薬注率の時系列変化と、当該時系列変化に対応する加温効率の時系列変化の実測値が示されている。目標面積は、1250±100と設定されている。
図20に示すように、間隙面積が1250±100となるように薬注率を制御した結果、14:50~15:50までの結果が示すように、薬注率は0.40%~0.41%の範囲となり、加温効率は平均113%と高い水準を維持した。
また、薬注率の制御を行わず濃度変動により薬注率が0.37%まで低下したことを想定した実験も行った結果、15:55~16:20までの結果が示すように、間隙面積は800程度まで落ち込み、加温効率は100%を下回った。
以上より、薬注率の制御によって間隙面積を適正に保つことで、加温効率を高く保つことができるといえる。また、間隙面積を適正に保つことで、薬注量を最適化することが可能となり、濃縮機2の安全運転を行うことができ、かつ、薬注量の低減(コストの低減)を図ることもできる。
【0113】
また、撹拌機の回転数を遅い、適正、速いにそれぞれ設定した際の凝集汚泥画像を用意し、評価モデルがランダムに選ばれた凝集汚泥画像に対して適切に回転数を評価できるかを検証した結果についても説明する。
同じ時期(即ち季節が同じ)の凝集汚泥画像を学習データとテストデータとして用意して検証した場合、評価モデルの正解率は、間隙特徴量情報のみの場合は94.7%、形状特徴量情報のみを用いた場合は83.6%、両方の特徴量情報を用いた場合は95.2%であった。
これに対して、異なる時期(即ち季節が異なる)の凝集汚泥画像を学習データとテストデータとして用意して検証した場合、評価モデルの正解率は、間隙特徴量情報のみの場合は64.6%、形状特徴量情報のみを用いた場合は98.0%、両方の特徴量情報を用いた場合は98.3%であった。
以上より、異なる時期の凝集汚泥画像を用いた場合には、間隙特徴量情報のみを用いた場合の正解率は大きく低下してしまったが、形状特徴量情報のみを用いた場合の正解率は高い正解率であった。これより、間隙特徴量情報は季節変動の影響を受けやすいが、形状特徴量情報は季節変動の影響を受けにくいといえる。また、いずれの検証においても、両方の特徴量情報を用いた場合が最も正解率が高かった。
よって、少なくとも形状特徴量情報を用いることで、撹拌機の回転数を評価する制度を向上することができる。
【0114】
以上説明したように、本実施形態のPC20(フロック状態制御装置)は、凝集混和槽1にて凝集剤によって汚泥が凝集されたフロックを含む凝集汚泥を撮像した凝集汚泥画像を取得し、当該凝集汚泥画像に基づき、評価対象領域に存在するフロックの形状を解析し、フロックの形状の解析結果に基づき、汚泥を撹拌する撹拌機の回転数を制御する。
かかる構成により、PC20は、季節変動の影響を受けにくい特徴量であるフロックの形状に基づき、撹拌機の回転数が適正であるか否かを評価して制御することができる。
よって、本実施形態に係るPC20は、季節変動などの影響を受けにくい特徴量に基づき撹拌機の回転数を適切に決定してフロックの状態をより精度高く制御することを可能とする。
【0115】
<5.変形例>
以上、本発明の実施形態について説明した。続いて、本発明の実施形態の変形例について説明する。なお、以下に説明する各変形例は、単独で本発明の実施形態に適用されてもよいし、組み合わせで本発明の実施形態に適用されてもよい。また、各変形例は、本発明の実施形態で説明した構成に代えて適用されてもよいし、本発明の実施形態で説明した構成に対して追加的に適用されてもよい。
【0116】
上述の実施形態では、間隙特徴量情報と形状特徴量情報の両方を用いて回転数の評価を行う例について説明したが、かかる例に限定されない。例えば、回転数の評価は、形状特徴量情報のみを用いて行われてもよい。
この場合、解析部254は、特徴量情報取得処理にて間隙特徴量情報を取得せずに形状特徴量情報のみを取得し、当該形状特徴量情報のみに基づき、回転数の適正を評価し、評価結果をフロックの形状の解析結果として出力する。そして、回転数制御部257は、当該フロックの形状の解析結果に応じて、撹拌機の回転数を制御する。
形状特徴量情報は、間隙特徴量情報よりも季節変動を受けにくい特徴量に関する情報である。このため、形状特徴量情報のみを用いる場合、間隙特徴量情報のみを用いる場合と比較してより精度高く回転数を評価できるため、フロックの状態もより精度高く制御することができる。
【0117】
以上、本発明の実施形態について説明した。
なお、上述した実施形態におけるPC20の一部又は全部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0118】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0119】
(付記1)
凝集混和槽にて凝集剤によって汚泥が凝集されたフロックを含む凝集汚泥を撮像した凝集汚泥画像を取得する凝集汚泥画像取得部と、
前記取得された凝集汚泥画像に基づき、評価対象領域に存在する前記フロックの形状を解析する解析部と、
前記フロックの形状の解析結果に基づき、前記汚泥を撹拌する撹拌機の回転数を制御する回転数制御部と、
を備えるフロック状態制御装置。
【0120】
(付記2)
前記解析部は、前記凝集汚泥画像に対するテクスチャ解析によって得られる前記フロックの形状の特徴量を示す形状特徴量情報に基づき、前記回転数の適正を評価し、評価結果を前記フロックの形状の解析結果として出力する、
付記1に記載のフロック状態制御装置。
【0121】
(付記3)
前記解析部は、前記凝集汚泥画像における画素間の濃度差が所定の値となる確率密度関数を前記形状特徴量情報として算出する、
付記2に記載のフロック状態制御装置。
【0122】
(付記4)
前記解析部は、前記取得された凝集汚泥画像に基づき、前記評価対象領域に存在する複数の前記フロック間に生じている間隙の度合を解析し、
前記回転数制御部は、前記フロックの形状の解析結果と前記間隙の度合の解析結果とに基づき、前記撹拌機の回転数を制御する、
付記1から付記3のいずれか1つに記載のフロック状態制御装置。
【0123】
(付記5)
前記解析部は、前記間隙の度合に対する数値解析によって得られる前記間隙の特徴量を示す間隙特徴量情報に基づき、前記回転数の適正を評価し、評価結果を前記間隙の度合の解析結果として出力する、
付記4に記載のフロック状態制御装置。
【0124】
(付記6)
前記解析部は、前記回転数の制御後に取得された前記凝集汚泥画像の評価対象領域に存在するフロックに基づき、制御後の前記回転数を評価する、
付記1から付記5のいずれか1つに記載のフロック状態制御装置。
【0125】
(付記7)
汚泥を撹拌する撹拌機における回転数を、前記汚泥の処理条件に応じた前記回転数を決定する決定方法によって決定する回転数決定部と、
決定された前記回転数で稼働する前記撹拌機にて撹拌された前記汚泥を凝集剤によって凝集したフロックの状態を適切な状態にするために、前記汚泥に添加される前記凝集剤の薬注率を制御する薬注率制御部と、
前記薬注率の制御後に前記回転数制御部による前記回転数の制御によって前記フロックの状態が適切な状態となった際の前記回転数に基づき、前記決定方法を補正する補正部と、
をさらに備える付記1から付記6のいずれか1つに記載のフロック状態制御装置。
【0126】
(付記8)
前記処理条件は、前記汚泥の処理量であり、
前記決定方法は、前記汚泥の処理量と前記回転数との関係を示す関係式を用いて前記回転数を決定する方法である、
付記7に記載のフロック状態制御装置。
【0127】
(付記9)
前記回転数制御部は、前記薬注率の制御のみでは前記フロックの状態が適切な状態とならない場合に、前記薬注率を固定して前記回転数を制御する、
付記7又は付記8に記載のフロック状態制御装置。
【0128】
(付記10)
前記回転数制御部は、定期的に前記薬注率を固定して前記回転数を制御する、
付記7又は付記8に記載のフロック状態制御装置。
【0129】
(付記11)
付記1から付記10のいずれか1つに記載のフロック状態制御装置を備える汚泥処理設備。
【0130】
(付記12)
付記1から付記10のいずれか1つに記載のフロック状態制御装置を備える汚泥凝集設備。
【0131】
(付記13)
付記1から付記10のいずれか1つに記載のフロック状態制御装置を備える汚泥濃縮設備。
【符号の説明】
【0132】
1…凝集混和槽、1a…回転軸、1A…高速ミキサ、1b…撹拌羽根、1B…ポンプ、1c…モーター、1C…凝集槽、1d…回転軸、1D…撹拌手段、1e…撹拌羽根、1f…モーター、2…濃縮機、2a…濃縮濾過スクリーン、2A…濃縮槽、2b…濾液室、2B…搬送手段、2c…回転軸、2C…ポンプ、2d…スクリュー、2e…モーター、3…脱水機、3a…内濾過スクリーン、3A…ケーシング、3A1…第1の空間、3A2…第2の空間、3b…外濾過スクリーン、3B…濾過スクリーン、3c…モーター、3C…基板、3d…リボンスクリュー、3D…蓋体、3e…連結板、3E…排出室、3f…供給管、3F…排出口、3G…圧搾リング、3H…排水管、3P…ポンプ、4…濃縮汚泥供給路、4A…ポンプ、4B…高速ミキサ、4C…ポンプ、10…カメラ、40…凝集汚泥画像、41…間隙、50…凝集汚泥画像、51…間隙、60…凝集汚泥画像、61…間隙、210…入力部、220…通信部、230…記憶部、240…出力部、250…制御部、251…凝集汚泥画像取得部、252…画像選定部、253…領域判定部、254…解析部、255…薬注率制御部、256…回転数決定部、257…回転数制御部、258…補正部
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