(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083905
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】排水作業支援システム
(51)【国際特許分類】
E03F 1/00 20060101AFI20240617BHJP
C02F 1/00 20230101ALI20240617BHJP
【FI】
E03F1/00 Z
C02F1/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197987
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 大也
(72)【発明者】
【氏名】田所 謙一郎
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063AA09
(57)【要約】
【課題】雨や工場排水により水位が急激に上昇して溢水するなど複雑に水位が変動する工場内排水路において、先んじて段階的に冠水対策を実施することにより、冠水対策を効率的に実施することができる排水作業支援システムを提供すること。
【解決手段】排水作業支援システムは、排水路の将来の水位を予測し、所定制御を行う排水作業支援システムであって、所定制御が、排水路の水位に関する報知を、予め設定された報知対象に対して行う報知制御を含み、報知制御が、予測される排水路の水位が第1閾値を超え、かつ第1閾値よりも大きい第2閾値を超えない場合に、第1端末を報知対象として報知を行う第1報知制御と、予測される排水路の水位が第2閾値を超える場合に、第1端末と、第1報知制御における報知対象ではない第2端末とを報知対象として報知を行う第2報知制御と、を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間ごとの降水予測量と、時間ごとの降水実測量と、監視対象となる排水路の水位とを含むデータに基づき、前記排水路の将来の水位を予測し、所定制御を行う排水作業支援システムであって、
前記所定制御は、前記排水路の水位に関する報知を、予め設定された報知対象に対して行う報知制御を含み、
前記報知制御は、
予測される前記排水路の水位が第1閾値を超え、かつ前記第1閾値よりも大きい第2閾値を超えない場合に、第1端末を前記報知対象として報知を行う第1報知制御と、
予測される前記排水路の水位が前記第2閾値を超える場合に、前記第1端末と、前記第1報知制御における前記報知対象ではない第2端末とを前記報知対象として報知を行う第2報知制御と、
を含む排水作業支援システム。
【請求項2】
前記第1報知制御は、予測される第1時間以内の前記排水路の水位が前記第1閾値を超え、かつ予測される第2時間以内の前記排水路の水位が第2閾値を超えない場合に実行され、
前記第2報知制御は、予測される第2時間以内の前記排水路の水位が前記第2閾値を超える場合に実行され、
前記第2時間は、前記第1時間よりも短い請求項1に記載の排水作業支援システム。
【請求項3】
前記所定制御は、前記第2報知制御が実行される条件が成立した場合に実行される水位調整制御を含み、
前記水位調整制御は、前記排水路の下流側に配置され、前記排水路を流れる水の浄化処理を行う排水処理設備の処理量を上昇させる制御である請求項1または請求項2に記載の排水作業支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水作業支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所等の大規模な事業所は、公共水域(河川、海域)に排水する排水路(排水溝)を有しており、操業に伴う排水を排水処理設備で浄化処理して排水している。その際、工場や設備における排水量の増加や降雨の影響等により、排水処理設備への流入水と排水処理設備の排水量とのバランスが崩れると、排水処理設備上流側の排水路から溢水し、各所の冠水に繋がる。冠水が起きた場合は、設備停止や操業への影響が生じたり、原料や製品の運搬経路が遮断したりする他、原料ストックヤードの冠水においては、高炉等への悪影響が生じる可能性がある。
【0003】
特許文献1では、このような冠水を防止する方法として、以下のような方法が提案されている。まず監視対象とすべき排水路に水位計を設けておき、当該排水路の水位計が示す水位が所定値を超えた場合に、当該排水路の水位が上限値を超えないように、排水路の水を貯留タンクに排水する。そして、貯留タンクの水位が所定値を超えた場合、当該貯留タンクの水位が上限値を超えないように、貯留タンクの水を、排水能力に余裕のある他の排水路に、水位が所定値になるまで排水する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で提案された方法では、水位が上昇し始めてから対応するしかなく、豪雨や長時間の設備トラブル等により全ての水路で流入水が排水可能量上限を超える事態になった場合、追加の対策が後手に回らざるを得なくなる。そのため、排水路の溢水を防ぐことができず、周辺設備の冠水に繋がるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、雨や工場排水により水位が急激に上昇して溢水するなど複雑に水位が変動する工場内排水路において、先んじて段階的に冠水対策を実施することにより、冠水対策を効率的に実施することができる排水作業支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る排水作業支援システムは、時間ごとの降水予測量と、時間ごとの降水実測量と、監視対象となる排水路の水位とを含むデータに基づき、前記排水路の将来の水位を予測し、所定制御を行う排水作業支援システムであって、前記所定制御が、前記排水路の水位に関する報知を、予め設定された報知対象に対して行う報知制御を含み、前記報知制御が、予測される前記排水路の水位が第1閾値を超え、かつ前記第1閾値よりも大きい第2閾値を超えない場合に、第1端末を前記報知対象として報知を行う第1報知制御と、予測される前記排水路の水位が前記第2閾値を超える場合に、前記第1端末と、前記第1報知制御における前記報知対象ではない第2端末とを前記報知対象として報知を行う第2報知制御と、を含む。
【0008】
また、本発明に係る排水作業支援システムは、上記発明において、前記第1報知制御が、予測される第1時間以内の前記排水路の水位が前記第1閾値を超え、かつ予測される第2時間以内の前記排水路の水位が第2閾値を超えない場合に実行され、前記第2報知制御が、予測される第2時間以内の前記排水路の水位が前記第2閾値を超える場合に実行され、前記第2時間が、前記第1時間よりも短い。
【0009】
また、本発明に係る排水作業支援システムは、上記発明において、前記所定制御が、前記第2報知制御が実行される条件が成立した場合に実行される水位調整制御を含み、前記水位調整制御が、前記排水路の下流側に配置され、前記排水路を流れる水の浄化処理を行う排水処理設備の処理量を上昇させる制御である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る排水作業支援システムによれば、水位予測値に基づく段階的な冠水対策が可能となり、より効率的な冠水対策を講じることができる。また、本発明に係る排水作業支援システムによれば、予測される冠水の規模に応じた対策を講じることが可能となり、過剰な対策によるコストを抑えることができ、対策不足による冠水被害も回避することができる。また、本発明に係る排水作業支援システムによれば、手に負えない規模の冠水が起きる場合に、人員の避難や通行止めを前もって講じることができる。
【0011】
また、本発明に係る排水作業支援システムによれば、既存の技術をより効率的に稼働させることが可能になり、更に長時間にわたって溢水を回避することができ、冠水の被害を縮小することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る排水作業支援システムが適用される事業所の敷地内における排水経路の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態1に係る排水作業支援システムの概略的な構成を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る排水作業支援システムの管理サーバの具体的な構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態1に係る排水作業支援システムが実行する排水作業支援方法の流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態2に係る排水作業支援システムの概略的な構成を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態2に係る排水作業支援システムが実行する排水作業支援方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態に係る排水作業支援システムについて、図面を参照しながら説明する。実施形態に係る排水作業支援システムは、排水処理設備により流れる水を全量処理して排水している工場内の排水路が、雨や工場排水の急激な上昇により溢水して起きる冠水の被害を縮小するための冠水対策方法に関するものである。実施形態に係る排水作業支援システムでは、水位予測AIを用いて水路の上昇を予知し、上昇する水位の値に応じて事前に排水溝の水位を下げるアクションを行う。
【0014】
図1は、実施形態に係る排水作業支援システムが適用される事業所の敷地内における排水路の一例を示している。同図の例では、特定の排水路に対して複数の工場A,Bや設備Cから水が排水される。また、排水路の下流側には、公共水域に水を排出するにあたり、排水路の水の浄化処理を行う排水処理設備50が設けられている。
【0015】
事業所の敷地内には、降水量計20が設置されており、当該敷地内の降水量がリアルタイムで測定される。また、排水路内には、水位計30が設置されており、当該排水路の水位がリアルタイムで測定される。なお、同図では、降水量計20および水位計30が一か所に設けられているが、敷地内に複数の排水路が存在する場合、降水量計20および水位計30はそれぞれの排水路ごとに設けられる。但し、降水量については、敷地内で大きな差異が存在しない場合もある。そのため、降水量計20については、水位計30よりも少ない数の設置でもよく、敷地内に一か所だけ設置されてもよい。
【0016】
[実施形態1]
(排水作業支援システム)
図2は、実施形態1に係る排水作業支援システムの概略的な構成を示している。排水作業支援システム1は、管理サーバ10と、降水量計20と、水位計30と、管理サーバ10と無線通信可能な複数の端末(端末A,B,C)40と、を有している。また、排水作業支援システム1は、敷地内に設置され、管理サーバ10に対して各種測定値を送信する各種センサを更に有していてもよい。また、排水作業支援システム1は、将来の時間ごとの降水予測量を算出する外部の天気予報サーバ(例えば気象庁等のサーバ)とネットワークを通じて接続されており、時間ごとの降水予測量を取得可能に構成されている。
【0017】
管理サーバ10は、敷地内または敷地外に設置され、例えばワークステーションやパソコン等の汎用コンピュータによって実現される。管理サーバ10は、例えば
図3に示すように、演算部11と、記憶部12と、入力部13と、出力部14と、を備えている。
【0018】
演算部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)等からなるプロセッサ(演算処理装置)と、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等からなるメモリ(主記憶部)とを備えている。そして、前記したプロセッサがコンピュータプログラムを実行して各構成部等を制御することにより、所定の目的に合致した機能を実現する。すなわち、演算部11は、前記したコンピュータプログラムの実行を通じて、データ取得部111、水位予測部112、報知部113および水位調整制御部114として機能する。
【0019】
なお、本実施形態に係る排水作業支援システム1は、演算部11の機能のうち、データ取得部111、水位予測部112および報知部113の機能により実現される。そのため、以下では、データ取得部111、水位予測部112および報知部113についてのみ説明し、水位調整制御部114については実施形態2で説明する。
【0020】
データ取得部111は、水位予測部112における処理に必要なデータを取得する。すなわち、データ取得部111は、降水量計20から、監視対象の排水路が含まれる地域の時間ごとの降水量を取得する。また、データ取得部111は、水位計30から、監視対象の排水路の現在の水位を取得する。また、データ取得部111は、外部の天気予報サーバから、監視対象の排水路が含まれる地域の時間ごとの降水予測量を取得する。
【0021】
水位予測部112は、データ取得部111が取得したデータを、予め作成した水位予測モデルに入力することにより、監視対象の排水路の任意の時刻における水位を予測する。この水位予測モデルは、例えば過去の実績データを機械学習して生成されたものである。水位予測モデルは、例えば過去の特定時間における降水量、過去の特定時間における水位、当該特定時間以降の時間ごとの降水予測量を説明変数(入力変数)とし、当該特定時間のN時間後の水位を目的変数(出力変数)として、機械学習によって生成される。水位予測モデルを構築する際の手法は特に限定されず、例えばニューラルネットワークを用いた深層学習、サポートベクターマシン、重回帰分析等の種々の手法を用いることができる。
【0022】
このように、水位予測部112では、現時点における降水量計20の値、水位計30の値、将来の時間ごとの降水予測量を水位予測モデルに入力することにより、任意の時刻における排水路の水位を予測することが可能である。なお、排水路が複数ある場合、排水路の幅、排水路の深さ、排水処理設備50の処理量等は、排水路ごとに異なる。そのため、複数の排水路を監視対象とする場合、排水路ごとに水位予測モデルを予め生成しておく。
【0023】
報知部113は、水位予測部112によって予測された排水路の水位に関する報知を、予め設定された報知対象に対して行う報知制御を行う。この報知制御には、第1報知制御と、第2報知制御とが含まれる。
【0024】
第1報知制御では、水位予測部112によって予測される排水路の水位が第1閾値を超え、かつ第1閾値よりも大きい第2閾値を超えない場合に、第1端末を報知対象として報知(第1報知)を行う。
【0025】
上記の「第1端末」は、複数の端末40のうち、監視対象の排水路に対して予め設定された端末40であり、例えば監視対象の排水路を担当する作業者が所有する端末40のことを示している。また、上記の「第1報知」とは、例えば電子メール等により、監視対象の排水路の水位(将来の水位)に関する報知を行うことを示しており、具体的には、監視対象の排水路の水位が第1閾値を超えると予測されることを示唆する報知を行うことを示している。
【0026】
なお、本実施形態では、例えば工場内の複数の排水路のうち、特定の排水路に対する制御について説明する。すなわち、ここでの「監視対象」とは特定の排水路を、「監視対象の排水路を担当する作業者」とは特定の排水路に対応付けられた端末40を所持する者を、「第1報知制御」とは特定の排水路の水位に基づく制御のことを意味している。
【0027】
なお、第1報知制御は、水位予測部112によって予測される第1時間以内の排水路の水位が、第1閾値を超え、かつ予測される第2時間以内の排水路の水位が第2閾値を超えない場合に実行されてもよい。この場合、第2時間は、第1時間よりも短く設定される。
【0028】
第2報知制御では、水位予測部112によって予測される排水路の水位が、第2閾値を超える場合に、第1端末と、第1報知制御における報知対象ではない第2端末とを報知対象として報知(第2報知)を行う。
【0029】
上記の「第2端末」は、複数の端末40のうち、監視対象の排水路以外の排水路を担当する作業者が所有する端末40、当該作業者を管理・監督する立場にある作業者が所有する端末40のことを示している。また、上記の「第2報知」とは、例えば電子メール等により、監視対象の排水路の水位(将来の水位)に関する報知を行うことを示しており、具体的には、監視対象の排水路の水位が第2閾値を超えると予測されることを示唆する報知を行うことを示している。このように、第2報知制御では、監視対象の排水路の担当者と、当該担当者以外で排水作業に関わる少なくとも一人以上の作業者に対して報知を行う。また、第2報知制御では、好ましくは、事業所の敷地内で排水作業に関わる関係者全員に対して報知を行う。
【0030】
なお、第2報知制御は、水位予測部112によって予測される第2時間以内の排水路の水位が、第2閾値を超える場合に実行されてもよい。
【0031】
記憶部12は、EPROM(Erasable Programmable ROM)、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)およびリムーバブルメディア等の記録媒体から構成される。リムーバブルメディアとしては、例えばUSB(Universal Serial Bus)メモリ、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)のようなディスク記録媒体が挙げられる。記憶部12には、オペレーティングシステム(Operating System:OS)、各種プログラム、各種テーブル、各種データベース等が格納可能である。また、記憶部12には、例えばデータ取得部111が取得した各種データ、水位予測部112で用いる水位予測モデル、水位予測部112における水位予測結果等が格納されてもよい。
【0032】
入力部13は、演算部11に対する入力手段であり、例えばキーボード、マウスポインタ、テンキー等の入力装置によって実現される。入力部13は、演算部11における各種処理に必要な情報を入力する。
【0033】
出力部14は、例えばLCDディスプレイ、CRTディスプレイ等の表示装置等によって実現される。出力部14は、演算部11から入力される表示信号をもとに、例えば水位予測部112における水位予測結果等を表示する。
【0034】
このように、本実施形態に係る排水作業支援システムでは、時間ごとの降水予測量と、時間ごとの降水実測量と、監視対象となる排水路の水位とを含むデータに基づき、排水路の将来の水位を予測し、所定制御(第1報知制御、第2報知制御)を行う。
【0035】
(排水作業支援方法)
本実施形態に係る排水作業支援システム1が実行する排水作業支援方法の一例について、
図4を参照しながら説明する。排水作業支援システム1は基本的に常時稼働しているが、例えば複数の排水路に設置された水位計30のうちの一つが、所定のシステム稼働水位を超えた場合に処理が開始されることとしてもよい。
【0036】
まず、データ取得部111は、各種データを取得する(ステップS1)。この各種データには、降水量計20から取得した降水量、各排水路に設置された水位計30から取得した水位、外部の天気予報サーバから将来の時間ごとの降水予測量が含まれる。
【0037】
続いて、水位予測部112は、排水路ごとの水位予測モデルに対して、ステップS1で取得したデータを入力し、各排水路におけるN時間内の時間ごとの水位を予測する(ステップS2)。ステップS2において、何時間先までの水位を予測するか(すなわちNの値)は任意であるが、高精度に予測するために、12時間以内程度とすることが望ましい。
【0038】
続いて、報知部113は、各排水路において、N1時間(第1時間)以内の水位が、排水路ごとに定められた第1閾値を超えるか否かを判定する(ステップS3)。この「第1閾値」は、例えば即座に溢水する危険はないが、排水作業を開始することが望ましい水位が設定される。なお、排水路が複数ある場合、排水路の幅、排水路の深さ、排水処理設備50の処理量等は、排水路ごとに異なる。そのため、第1閾値は、排水路ごとに設定される。また、N1としては、任意の時間を設定可能であり、例えば排水作業の準備等に要する時間に余裕時間を加えた時間等に設定される。
【0039】
ステップS3において、報知部113は、特定の排水路(ある排水路)でN1時間以内の水位が第1閾値を超えると判定した場合はステップS4に進み、第1閾値を超えないと判定した場合はステップS1に戻る。
【0040】
ステップS4において、報知部113は、ステップS3で第1閾値を超えると判定された排水路において、N2時間(第2時間)以内の水位が、排水路ごとに定められた第2閾値を超えるか否かを判定する(ステップS4)。この第2閾値は、例えば溢水する危険が高く、緊急に排水作業を開始することが望ましい水位が設定される。また、N2としては、任意の時間を設定可能である。N2は、N1と同じ時間であってもよいが、当該N1よりも短時間とすることが望ましい。その理由については後述する。
【0041】
ステップS4において、報知部113は、特定の排水路でN2時間以内の水位が第2閾値を超えないと判定した場合はステップS5に進み、第2閾値を超えると判定した場合はステップS6に進む。
【0042】
ステップS5において、報知部113は、例えば特定の排水路に対して予め設定された端末A(当該特定の排水路を担当する作業者Xが所有する端末40)に対して報知(第1報知)を行う(ステップS5)。ステップS5では、例えば電子メール等により当該特定の排水路の水位に関する報知、具体的には当該特定の排水路が第1閾値を超えると予測されることを示唆する報知を行う。この報知を受信した作業者Xは、例えば排水ポンプ車を当該特定の排水路まで配車し、排水ホースの接続や、排水ポンプを排水路に設置する等の作業を行い、当該特定の排水路から排水処理を行うことが可能となる。
【0043】
一方、ステップS6において、報知部113は、特定の排水路に対して予め設定された端末Aの他に、第1報知の対象外の端末B,Cに対して報知(第2報知)を行う(ステップS6)。ステップS6では、例えば電子メール等により当該特定の排水路の水位に関する報知、具体的には当該特定の排水路が第2閾値を超えると予測されることを示唆する報知を行う。
【0044】
ここで、通信端末Bは、例えば作業者Xとは異なる排水路を担当する作業者Yが所有する端末40である。また、通信端末Cは、例えば作業者X,Yを監督・管理する立場にある作業者Zが所有する端末である。このように、ステップS6では、事業所の敷地内で排水作業に関わる関係者全員またはその一部に対して報知を行う。この報知を受信した作業者X,Y,Zは、排水ポンプ車の配車が完了していればこれに加えて、あるいは排水ポンプ車の配車が完了していなければ排水ポンプ車の手配に加えて、例えば排水処理設備50において排水処理能力(排水処理量)を上昇させる操作を行う。このように、排水処理設備50の排水処理量を上昇させることにより、当該排水処理設備50の上流側の排水路における水位を下げ、溢水を好適に防ぐことが可能となる。
【0045】
ステップS5,S6の後は、ステップS1に戻り、各ステップを繰り返す。なお、同一の報知が繰り返し行われることを防ぐため、同一の報知を一定期間行わないこととしてもよい。あるいは、報知対象となった特定の排水路の水位が第1閾値未満となるまで、同一の報知は行わないこととしてもよい。ここでいう同一の報知とは、第1報知の後、再度第1報知が行われること、および第2報知の後に再度第2報知が行われることを指し、第1報知の後に、第2報知が行われることも当然含まれる。一方、第2報知が行われた後に、第1報知を行う意味は乏しいため、第2報知が行われた後に、第1報知を行うことについては、同一の報知に準ずるものとして扱っても構わない。
【0046】
ここで、N2をN1よりも短時間とすることが望ましい理由について説明する。上記のように、排水作業としては、排水路の水位の第1閾値超えが予測された場合に、一次的には排水ポンプ車を手配し、それでも水位の上昇が抑えられず第1閾値超えが予測された場合に排水処理設備50の処理量を上昇させている。これは、排水処理設備50の処理量を上昇させると、汚泥等が排水処理設備50のポンプ等に固着し、ポンプ等が故障する可能性があるため、排水処理設備50の処理量の上昇を極力控えるためである。
【0047】
従って、排水作業としては、排水ポンプ車の手配の後に、排水処理設備50の処理量を上昇させることになるが、排水ポンプ車の手配は、上記のように、排水ポンプ車の移動、排水ホースの接続、排水ポンプの設置等、排水作業を行うための準備に一定の時間を要してしまう。そして、その準備をしている間に排水路の水位が上昇してしまい、排水処理設備50の処理量を上昇せざるを得なくなることが考えられる。
【0048】
そこで、本実施形態では、第2報知の際に行われる排水処理設備50の処理量の上昇を極力控えつつも、第1報知で行われる排水作業の準備時間を確保すべく、この準備時間を考慮して、早い段階で第1報知を担当者に行うべく、「N1>N2」に設定している。N1とN2との差は、1時間以上であることが望ましく、2時間以上であることがより望ましい。
【0049】
[実施形態2]
(排水作業支援システム)
図5は、実施形態2に係る排水作業支援システムの概略的な構成を示している。排水作業支援システム1Aは、管理サーバ10と、降水量計20と、水位計30と、管理サーバ10と無線通信可能な複数の端末(端末A,B,C)40と、排水処理設備50と、を有している。
【0050】
実施形態2を実現するために、排水処理設備50は、管理サーバ10、各端末40と無線通信可能に構成される。なお、排水処理設備50は、管理サーバ10および各端末40の両方と無線通信可能であってもよく、いずれか一方と無線通信可能であってもよい。但し、何れか一方とする場合、排水処理設備50の処理量を上昇させるタイミングの最終決定は作業者X,Y,Zが行うことが望ましく、各端末と無線通信可能に構成することが望ましい。
【0051】
実施形態2に係る排水作業支援システム1Aは、
図3に示した演算部11の機能のうち、データ取得部111、水位予測部112、報知部113および水位調整制御部114の機能により実現される。データ取得部111、水位予測部112および報知部113は、実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0052】
水位調整制御部114は、第2報知制御が実行される条件が成立した場合に実行される水位調整制御を行う。この水位調整制御は、排水路の下流側に配置され、排水路を流れる水の浄化処理を行う排水処理設備50の処理量を上昇させる制御である。
【0053】
(排水作業支援方法)
本実施形態に係る排水作業支援システム1Aが実行する排水作業支援方法の一例について、
図6を参照しながら説明する。同図において、ステップS11~S16の処理は、実施形態1のステップS1~S6(
図4参照)と同様であるため、説明を省略する。
【0054】
ステップS17において、水位調整制御部114は、排水処理設備50の水位調整制御を行う(ステップS17)。すなわち、実施形態1では、ステップS6で第2報知を行った場合、作業者X,Y,Zが排水処理設備50の処理量を上昇させる操作を行ったが(
図4参照)、本実施形態では管理サーバ10または各作業者が所有する端末40から排水処理設備50に対して処理量上昇指令が行われ、当該指令を受信した排水処理設備50が処理量を上昇させる。これにより、作業者X,Y,Zが現地にいない場合でも、即座に排水処理量を上昇させることができ、排水路の溢水を迅速に防ぐことができる。
【0055】
以上説明した実施形態に係る排水作業支援システムによれば、水位予測値に基づく段階的な冠水対策が可能となり、より効率的な冠水対策を講じることができる。また、実施形態に係る排水作業支援システムによれば、冠水の規模に応じた対策を講じることが可能となり、過剰な対策によるコストを抑えることができ、対策不足による冠水被害も回避することができる。また、実施形態に係る排水作業支援システムによれば、手に負えない規模の冠水が起きる場合に、人員の避難や通行止めを前もって講じることができる。
【0056】
また、実施形態に係る排水作業支援システムによれば、既存の技術をより効率的に稼働させることが可能になり、更に長時間にわたって溢水を回避することができ、冠水の被害を縮小することが可能となる。
【0057】
以上、本発明に係る排水作業支援システムについて、発明を実施するための形態および実施例により具体的に説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。また、これらの記載に基づいて種々変更、改変等したものも本発明の趣旨に含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0058】
1,1A 排水作業支援システム
10 管理サーバ
11 演算部
111 データ取得部
112 水位予測部
113 報知部
114 水位調整制御部
12 記憶部
13 入力部
14 出力部
20 降水量計
30 水位計
40 端末
50 排水処理設備