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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083906
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】電気機器
(51)【国際特許分類】
   D06F 39/00 20240101AFI20240617BHJP
【FI】
D06F39/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197989
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】長山 智哉
(72)【発明者】
【氏名】西脇 雄樹
(72)【発明者】
【氏名】沖原 俊祐
(72)【発明者】
【氏名】井上 雅博
【テーマコード(参考)】
3B166
【Fターム(参考)】
3B166AA02
3B166AA04
3B166AE01
3B166AE05
3B166AE06
3B166BA28
3B166BA50
3B166BA82
3B166CA01
3B166CB01
3B166CB11
3B166CD03
3B166CD05
3B166DC43
3B166DC44
3B166DE01
3B166DE02
3B166DE06
3B166GA12
3B166GB03
3B166GB05
3B166HA01
3B166HA13
3B166HA16
3B166HA32
3B166HA45
(57)【要約】
【課題】簡素な構成で操作部のタッチ感度が高い電気機器を提供する。
【解決手段】洗濯機は、交流電源A1から電源プラグP1を介して印加される交流電圧を直流電圧に変換する整流回路21と、整流回路21から印加される直流電圧を昇圧又は降圧する電源回路24と、整流回路21の交流側に接続されるアース線23と、ユーザのタッチ操作を検知する静電容量式のタッチパネル4と、を備え、タッチパネル4は、タッチ電極25と、タッチ電極25の静電容量の変化に基づいて、タッチ操作を検知するタッチ検知回路26と、を有し、整流回路21の交流側でアース線23を介して接地される配線K2と、整流回路21の直流側でグランド電位に設定される配線K4と、に接続されるコンデンサ28をさらに備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から電源プラグを介して印加される交流電圧を直流電圧に変換する整流回路と、
前記整流回路から印加される直流電圧を昇圧又は降圧する電源回路と、
前記整流回路の交流側に接続されるアース線と、
ユーザのタッチ操作を検知する静電容量式の操作部と、を備え、
前記操作部は、電極と、前記電極の静電容量の変化に基づいて、前記タッチ操作を検知するタッチ検知回路と、を有し、
前記整流回路の交流側で前記アース線を介して接地される第1配線と、前記整流回路の直流側でグランド電位に設定される第2配線と、に接続されるコンデンサをさらに備える電気機器。
【請求項2】
前記コンデンサは、双極性コンデンサであり、前記交流電源の周波数の交流電流に対する遮断特性を有すること
を特徴とする請求項1に記載の電気機器。
【請求項3】
前記整流回路は、ダイオード回路と、第1コンデンサと、第2コンデンサと、を有する倍電圧整流回路であり、
前記第1コンデンサの負極と前記第2コンデンサの正極とが接続され、
前記ダイオード回路は、
前記電源プラグの一方のプラグ刃にアノードが接続され、前記第1コンデンサの正極にカソードが接続される第1ダイオードと、
前記電源プラグの前記一方のプラグ刃にカソードが接続され、前記第2コンデンサの負極にアノードが接続される第2ダイオードと、
前記電源プラグの他方のプラグ刃及び前記第1コンデンサの負極にアノードが接続され、前記第1ダイオードのカソード及び前記第1コンデンサの正極にカソードが接続される第3ダイオードと、
前記電源プラグの前記他方のプラグ刃及び前記第2コンデンサの正極にカソードが接続され、前記第2ダイオードのアノード及び前記第2コンデンサの負極にアノードが接続される第4ダイオードと、を有すること
を特徴とする請求項1に記載の電気機器。
【請求項4】
前記コンデンサは、双極性コンデンサであり、
前記コンデンサの一方の極は、前記第3ダイオードのアノードに接続されるとともに、前記第4ダイオードのカソードに接続され、
前記コンデンサの他方の極は、前記第2ダイオード及び前記第4ダイオードのそれぞれのアノードに接続されること
を特徴とする請求項3に記載の電気機器。
【請求項5】
前記第1コンデンサの負極と前記第3ダイオードのアノードとを接続するとともに、前記第2コンデンサの正極と前記第4ダイオードのカソードとを接続する配線が、ジャンパ線若しくはジャンパ抵抗の取外しによって電気的に切断可能、所定の工具を用いて切断可能、又は、所定のスイッチを用いて電気的に切断可能であり、
前記配線が切断された場合、前記整流回路がブリッジ形の全波整流回路になること
を特徴とする請求項3に記載の電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
静電容量式のタッチパネルに関する技術として、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。すなわち、特許文献1には、「・・・接地線が接地されているかを判定する接地判定回路を有し、前記接地判定回路の判定結果により前記タッチ判定回路のタッチ判定の閾値を切り替える洗濯機の操作パネル」について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-168128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、接地判定回路を設ける分、構造の複雑化や製造コストの増加を招く。簡素な構成で操作パネル(操作部)のタッチ感度を高めることが望まれるが、そのような技術については特許文献1には記載されていない。
【0005】
そこで、本開示は、簡素な構成で操作部のタッチ感度が高い電気機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するために、本開示に係る電気機器は、交流電源から電源プラグを介して印加される交流電圧を直流電圧に変換する整流回路と、前記整流回路から印加される直流電圧を昇圧又は降圧する電源回路と、前記整流回路の交流側に接続されるアース線と、ユーザのタッチ操作を検知する静電容量式の操作部と、を備え、前記操作部は、電極と、前記電極の静電容量の変化に基づいて、前記タッチ操作を検知するタッチ検知回路と、を有し、前記整流回路の交流側で前記アース線を介して接地される第1配線と、前記整流回路の直流側でグランド電位に設定される第2配線と、に接続されるコンデンサをさらに備えることとした。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、簡素な構成で操作部のタッチ感度が高い電気機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る電気機器の一例である洗濯機の斜視図である。
図2】実施形態に係る電気機器の一例である洗濯機のタッチパネルの表示例である。
図3】実施形態に係る電気機器の一例である洗濯機のタッチパネルを含む断面図である。
図4】実施形態に係る電気機器の一例である洗濯機のタッチパネルの基板の回路図である。
図5】実施形態に係る電気機器の一例である洗濯機のタッチパネルの基板の回路図であり、整流回路の具体例を示している。
図6】実施形態に係る電気機器において、整流回路の構成を倍電圧整流回路からブリッジ形の全波整流回路に変更する際の切断箇所を示す回路図である。
図7】実施形態に係る電気機器において、図6の切断箇所で回路が切断された場合の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪実施形態≫
以下では、「電気機器」の一例である洗濯機100(図1参照)について簡単に説明した後、洗濯機100の基板20(図4参照)の回路構成について詳細に説明する。なお、実施形態が適用される「電気機器」は、洗濯機に限定されるものではなく、冷蔵庫や空気調和機の他、電子レンジやIH(Induction Heating)クッキングヒータ、掃除機といったさまざまな電気機器にも適用可能である。また、実施形態を適用可能な洗濯機は、次に説明するドラム式の洗濯機100(図1参照)に限定されるものではなく、例えば、縦型の洗濯機であってもよい。
【0010】
図1は、実施形態に係る電気機器の一例である洗濯機100の斜視図である。
図1に示す洗濯機100は、ドラム式の洗濯乾燥機であり、衣類の洗濯・すすぎ・脱水・乾燥等を行う機能を有している。洗濯機100は、主に、筐体1と、内槽2と、外槽3と、タッチパネル4(操作部)と、を備えている。筐体1は、内槽2や外槽3等の部材が設置される箱体である。筐体1の正面側には、洗濯物を出し入れするための投入口(符号は図示せず)が設けられている。また、開閉可能なドア5が投入口に設置されている。
【0011】
内槽2は、洗濯物が投入される有底円筒状の部材である。内槽2には、複数の脱水孔(図示せず)が設けられている。また、内槽2の底部中央には、攪拌翼(図示せず)が設置されている。そして、洗濯時やすすぎ時には、内槽2を静止させた状態で駆動装置(図示せず)によって、攪拌翼が回転するようになっている。また、脱水時や乾燥時には、駆動装置によって、内槽2及び攪拌翼が一体で回転するようになっている。
【0012】
外槽3は、内槽2を内包する有底円筒状の部材である。なお、内槽2と外槽3とは、その中心軸線が略一致している。外槽3は、コイルバネや弾性ゴムといった制振装置(図示せず)で支持されている。外槽3の底部には、洗濯水を排水するための排水口(図示せず)が設けられている。そして、排水弁(図示せず)が開かれた場合、排水口、排水弁、及び排水ホース(図示せず)を順次に介して、洗濯水が排水されるようになっている。
【0013】
筐体1の上面カバー1aの奥側は、吸水ホース接続口6と、給水ホース接続口7と、が設けられている。吸水ホース接続口6には、風呂の残り湯を導くためのホース(図示せず)が差し込まれる。給水ホース接続口7には、水道栓(図示せず)から水道水を導くホース(図示せず)が接続される。
【0014】
タッチパネル4は、ユーザのタッチ操作を検知する静電容量式の操作部である。なお、「タッチ操作」とは、ユーザが手指をタッチパネル4の表面に所定に接触又は近接させる操作である。このようなタッチパネル4は、洗濯機100の運転状態を表示したり、ユーザのタッチ操作を受け付けたりする液晶パネルとして構成されている。図1の例では、筐体1の上面カバー1aと前面カバー1bとの間で所定に傾斜しているガラス製のカバーパネル8の裏面にタッチパネル4が設置されている。
【0015】
図2は、洗濯機のタッチパネル4の表示例である(適宜、図1も参照)。
図2に示すように、洗濯機100の各種設定を行うボタンが所定のアイコンとしてタッチパネル4に表示される。そして、ユーザが所定のボタンにタッチすることで各種設定が行われる。図2の例では、洗濯アイコンN1、洗濯乾燥アイコンN2、及び乾燥アイコンN3が表示されている他、清潔アイコンN4やお気に入りアイコンN5、サポートアイコンN6、本体状態アイコンN7、設定アイコンN8が表示されている。
【0016】
洗濯アイコンN1は、ユーザが洗濯コースを選択する際に操作されるアイコンである。洗濯乾燥アイコンN2は洗濯乾燥コースに対応し、また、乾燥アイコンN3は乾燥コースに対応している。清潔アイコンN4は、洗濯機100の内部洗浄を行う清潔コースに対応している。お気に入りアイコンN5は、ユーザが頻繁に使うコースを予め登録するためのアイコンである。サポートアイコンN6は、洗濯機100の使用方法の説明等を表示させるためのアイコンである。
【0017】
本体状態アイコンN7は、洗濯機100の通信状態やドアロックの有無の他、槽内高温表示といった情報を表示させるためのアイコンである。設定アイコンN8は、洗濯機100の設定を変更する際に操作されるアイコンである。なお、タッチパネル4に表示されるアイコンの種類や配置は、図2の例に限定されるものではない。また、ユーザによる操作に基づいて、タッチパネル4の表示内容が所定に切り替えられるようになっている。
【0018】
また、図2には図示していないが、電源ボタン及びスタートボタンがタッチパネル4から分離して設けられている。電源ボタンは、洗濯機100の電源のオン・オフを切り替える際に押されるボタンである。スタートボタンは、タッチパネル4で設定された所定の運転を開始する際に押されるボタンである。このような電源ボタンやスタートボタンとして、例えば、機械式スイッチが用いられる。電源ボタンやスタートボタンがタッチパネル4から分離されているため、ユーザがタッチパネル4の操作中に電源ボタンやスタートボタンを意図せずに誤って操作してしまうといったことを防止できる。
【0019】
図3は、洗濯機のタッチパネル4を含む断面図である。
なお、図3では、前後・上下方向に平行な所定平面でタッチパネル4を切断した場合の断面を示している。前記したように、ガラス製のカバーパネル8の表面は、筐体1の上面カバー1aと前面カバー1bとの間で所定に傾斜している。そして、カバーパネル8の裏面にタッチパネル4が接着剤等で貼り付けられている。タッチパネル4の下側には、基板ケース30が設置されている。基板ケース30の内部には、基板20が設置されている。基板20は、タッチパネル4に対するユーザのタッチ操作を検知するための回路が実装されたプリント基板である。基板ケース30の下側は、基板ケースカバー40で覆われている。
【0020】
図4は、洗濯機のタッチパネルの基板20の回路図である。
図4に示す電源プラグP1は、洗濯機100(図1参照)への給電に用いられる接続器であり、コンセントT1に差し込まれる一対のプラグ刃P11,P12を備えている。一方のプラグ刃P11は、配線K1に接続されている。また、他方のプラグ刃P12は、配線K2に接続されている。これらの配線K1,K2は、整流回路21の交流側(1次側)の一対の端子(図示せず)に接続されている。
【0021】
洗濯機100(図1参照)は、基板20に実装される回路として、整流回路21と、Yコンデンサ22と、アース線23と、電源回路24と、タッチ電極25(電極)と、タッチ検知回路26と、制御回路27と、コンデンサ28と、を備えている。
【0022】
整流回路21は、交流電源A1から電源プラグP1を介して印加される交流電圧を直流電圧に変換する回路である。整流回路21の交流側(1次側)は、一対の配線K1,K2及び電源プラグP1を順次に介して、交流電源A1に接続されている。また、整流回路21の直流側(2次側)は、一対の配線K3,K4を介して、電源回路24に接続されている。
【0023】
なお、図4では図示を省略しているが、交流電源A1と整流回路21との間の電気的な接続・遮断を切り替えるためのリレーが配線K1に設けられている。そして、洗濯機100の使用開始時に電源ボタン(図示せず)が押された場合にリレーが投入され、交流電源A1と整流回路21とが電気的に接続されるようになっている。
【0024】
Yコンデンサ22は、整流回路21の交流側(1次側)のノイズを抑制するための素子であり、一対のコンデンサ22a,22bを含んで構成されている。整流回路21と電源プラグP1とを接続する一対の配線K1,K2のうち、一方の配線K1はコンデンサ22aを介してアース線23に接続され、他方の配線K2は別のコンデンサ22bを介してアース線23に接続されている。
【0025】
アース線23は、整流回路21の交流側(1次側)を接地するための導線である。例えば、絶縁不良に伴う漏れ電流が洗濯機100(図1参照)で生じた場合、アース線23を介して、漏れ電流が大地に逃がされるようになっている。このようなアース線23は、地中の接地極(銅棒や銅板:図示せず)に電気的に接続されている。図4の例では、アース線23がYコンデンサ22を介して、整流回路21の交流側に接続されている。このように、整流回路21の交流側とアース線23との間にYコンデンサ22が介在するような構成も、アース線23が整流回路21の交流側に接続されるという事項に含まれる。
【0026】
電源回路24は、整流回路21から印加される直流電圧を昇圧又は降圧して、所定の直流電圧に変換する回路である。このような電源回路24として、例えば、スイッチングレギュレータやチョッパ回路、DC/DCコンバータといったものが用いられる。そして、電源回路24からタッチ検知回路26や制御回路27に所定の直流電圧が印加されるようになっている。
【0027】
図4の例では、整流回路21の直流側(2次側)と電源回路24とを接続する一対の配線K3,K4のうち、一方の配線K4(第2配線)がグランドGNDの電位(グランド電位)に設定されている。このようなグランドGNDの電位は、電源回路24やタッチ検知回路26、制御回路27といった各回路の基準電位として用いられる。
【0028】
タッチ電極25(電極)は、ユーザのタッチ操作を検知するための電極である。このようなタッチ電極25として、例えば、導電性及び透光性を兼ね備えた透明電極が用いられる。そして、ユーザのタッチ操作に伴って、タッチ電極25の静電容量が所定に変化するようになっている。なお、タッチ電極25の数は一つに限定されるものではなく、複数であってもよい。
【0029】
タッチ検知回路26は、タッチ電極25(電極)の静電容量の変化に基づいて、ユーザのタッチ操作を検知する回路である。図4に示すように、タッチ検知回路26は、電源回路24に接続されるとともに、タッチ電極25及び制御回路27に接続されている。なお、ユーザの手指がタッチ電極25に触れていない場合でのタッチ電極25の静電容量(グランドGNDの電位を基準とする静電容量)が、タッチ検知回路26に予め記憶されている。そして、ユーザの手指の接触に伴って、タッチ電極25の静電容量が所定に増加した場合、タッチ検知回路26から制御回路27に所定の検知信号が出力されるようになっている。図4に示すように、タッチ電極25(電極)やタッチ検知回路26は、タッチパネル4(操作部)に含まれている。
【0030】
制御回路27は、タッチ検知回路26の検知結果に基づいて、所定の制御を行う機能を有している。すなわち、制御回路27は、タッチ検知回路26からの検知信号に基づいて、洗濯機100の各機器(駆動装置や給水弁や排水弁等:図示せず)を所定に制御する。このような制御回路27は、例えば、マイクロコンピュータであり、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、CPU(Central Processing Unit)と、を含んで構成されている。そして、ROMに記憶されたプログラムを読み出してRAMに展開し、CPUが各種処理を実行するようになっている。なお、制御回路27やタッチ検知回路26は、電源回路24から印加される直流電圧で駆動する。
【0031】
コンデンサ28は、アース線23の電位とグランドGNDの電位(つまり、基板20の回路の基準電位)との差を小さくするための素子である。図4に示すように、整流回路21の交流側と直流側とがコンデンサ28を介して接続されている。具体的には、コンデンサ28は、整流回路21の交流側でアース線23を介して接地される配線K2(第1配線)と、整流回路21の直流側でグランド電位に設定される配線K4(第2配線)と、に接続されている。
【0032】
なお、コンデンサ28は、直流電流を遮断する特性を有する他、交流電源A1の周波数(例えば、50Hzや60Hz)の交流電流に対する遮断特性も有している。このようなコンデンサ28として、例えば、双極性コンデンサが用いられる。これによって、正・負の極性が周期的に交互に入れ替わる交流電圧がコンデンサ28に印加された場合でも、コンデンサ28に不具合が生じることを抑制できる。
【0033】
前記した「遮断特性」とは、交流電源A1の周波数の交流電流に対して、コンデンサ28の容量リアクタンスが比較的大きくなるような特性のことを意味している。したがって、コンデンサ28が「遮断特性」を有するという事項には、交流電源A1の周波数の交流電流が略完全に遮断される場合の他、当該交流電流のコンデンサ28を介した通電が抑制される場合も含まれる。ちなみに、電源投入時や電源遮断時といった過渡状態では、コンデンサ28に過渡的に電流が流れるものとする。
【0034】
前記したように、静電容量式のタッチパネル4では、ユーザの手指の接触に伴うタッチ電極25の静電容量の変化に基づいて、ユーザのタッチ操作が検知される。ここで、タッチ検知回路26が動作する際の基準電位はグランドGNDの電位であるが、タッチパネル4を操作するユーザの静電容量は大地の電位(アース)が基準になる。ユーザは通常、接地された状態になっているからである。
【0035】
図4に示すように、グランドGNDの電位の配線K4と、接地されたアース線23と、の間には整流回路21が介在している。整流回路21には、ダイオード(具体的には、図5に示す第4ダイオードD4)の電位差が存在する。また、交流電源A1では、交流電圧の正・負の極性が周期的に交互に入れ替わる。仮に、コンデンサ28が設けられない構成では、前記したダイオードの電位差や交流電圧の変化の影響で、アース線23とグランドGNDとの間の電位差が大きくなり、また、この電位差が時々刻々に変動する。その結果、ユーザの手指がタッチパネル4に触れたときのタッチ電極25の静電容量の変化をタッチ検知回路26が正確に読み取れず、タッチ感度が鈍くなる可能性がある。
【0036】
これに対して本実施形態では、整流回路21の交流側と直流側との間にコンデンサ28が接続されているため、アース線23とタッチ検知回路26のグランドGNDとの間の電位差が小さい状態で維持される。これによって、タッチ検知回路26がユーザのタッチ操作を検知する際の精度が高められる。その結果、タッチパネル4におけるタッチ感度が高められる他、タッチ検知回路26の誤動作を抑制できる。
【0037】
なお、仮に、グランドGNDの電位の配線K4がコンデンサ28を介さずにアース線23に接続された場合、静電気や雷サージといったノイズの発生時にアース電位が激しく変動するため、結果的に回路の不具合を招く可能性がある。これに対して本実施形態では、静電気や雷サージといったノイズが発生した場合でも、アース線23とグランドGNDとの間の電位差が小さい状態が維持されるため、ユーザのタッチ操作をタッチ検知回路26によって高感度で検知できる。
【0038】
図5は、タッチパネルの基板の回路図であり、整流回路21の具体例を示している。
整流回路21として、例えば、図5に示すような倍電圧整流回路が用いられてもよい。倍電圧整流回路は、入力電圧の最大値の約2倍の直流電圧が得られるように構成された整流回路である。倍電圧整流回路として構成された整流回路21は、ダイオード回路21aと、第1コンデンサC1と、第2コンデンサC2と、を備えている。
【0039】
ダイオード回路21aは、第1ダイオードD1と、第2ダイオードD2と、第3ダイオードD3と、第4ダイオードD4と、を含んで構成されている。第1ダイオードD1は、交流電源A1の電圧の極性が正の場合に、交流電源A1から第1コンデンサC1に向かう電流の流れを許容し、逆向きの電流の流れを遮断する素子である。図5に示すように、第1ダイオードD1は、配線K1を介して電源プラグP1の一方のプラグ刃P11にアノードが接続され、第1コンデンサC1の正極にカソードが接続されている。
【0040】
第2ダイオードD2は、交流電源A1の電圧の極性が負の場合に、第2コンデンサC2を介した電流の流れを許容し、逆向きの電流の流れを遮断する素子である。図5に示すように、第2ダイオードD2は、配線K1を介して電源プラグP1の一方のプラグ刃P11にカソードが接続され、第2コンデンサC2の負極にアノードが接続されている。
【0041】
第3ダイオードD3及び第4ダイオードD4は、図5に示す配線K5が所定の工具で切断された場合に(図6の切断箇所X1も参照)、整流回路21を全波整流のブリッジ回路として機能させるために設けられている。図5に示すように、第3ダイオードD3は、電源プラグP1の他方のプラグ刃P12及び第1コンデンサC1の負極にアノードが接続され、第1ダイオードD1のカソード及び第1コンデンサC1の正極にカソードが接続されている。
【0042】
また、第4ダイオードD4は、電源プラグP1の他方のプラグ刃P12及び第2コンデンサC2の正極にカソードが接続され、第2ダイオードD2のアノード及び第2コンデンサC2の負極にアノードが接続されている。
【0043】
第1コンデンサC1や第2コンデンサC2は、ダイオード回路21aで整流された電圧(脈流を含む直流電圧)を平滑化するためのコンデンサであり、互いに直列接続されている。具体的には、第1コンデンサC1の負極と第2コンデンサC2の正極とが接続されている。また、電源回路24の入力側の一対の端子(図示せず)のうち、一方側の端子に配線K3を介して第1コンデンサC1の正極が接続され、他方側の端子に配線K4を介して第2コンデンサC2の負極が接続されている。
【0044】
また、第1コンデンサC1は、第3ダイオードD3に並列接続されている。より詳しく説明すると、第1コンデンサC1は、その正極が第3ダイオードD3のカソードに接続され、負極が第3ダイオードD3のアノードに接続されている。
また、第2コンデンサC2は、第4ダイオードD4に並列接続されている。より詳しく説明すると、第2コンデンサC2は、その正極が第4ダイオードD4のカソードに接続され、負極が第4ダイオードD4のアノードに接続されている。このように、整流回路21の構成を倍電圧整流回路にすることで、電源回路24の入力側に十分な大きさの直流電圧を印加させることができる。
【0045】
また、整流回路21は、双極性のコンデンサ28に対して、次のように接続されている。すなわち、コンデンサ28の一方の極28aは、第3ダイオードD3のアノードに接続されるとともに、第4ダイオードD4のカソードに接続されている。また、コンデンサ28の他方の極28bは、第2ダイオードD2及び第4ダイオードD4のそれぞれのアノードに接続されている。
【0046】
図6は、整流回路21の構成を倍電圧整流回路からブリッジ形の全波整流回路に変更する際の切断箇所X1を示す回路図である。
なお、図6では、切断箇所X1を図示している以外は、図5と同様の回路構成を示している。また、第1コンデンサC1の負極と第3ダイオードD3のアノードとを接続するとともに、第2コンデンサC2の正極と第4ダイオードD4のカソードとを接続する配線K5(図5参照)には、例えば、ジャンパ線やジャンパ抵抗が設けられる。ここで、「ジャンパ線」とは、ジャンプワイヤとも呼ばれる配線であり、両端にコネクタ又はピンが設けられ、基板20から取外し可能になっている。また、「ジャンパ抵抗」とは、ゼロΩ抵抗とも呼ばれる抵抗器であり、基板20から取外し可能になっている。つまり、配線K5(図5参照)が、ジャンパ線若しくはジャンパ抵抗の取外しによって電気的に切断可能になっている。ちなみに、ジャンパ抵抗の実際の抵抗値をゼロΩにする必要は特になく、例えば、0.01Ω以下といった非常に小さな抵抗値であってもよい。
また、配線K5(図5参照)が所定の工具を用いて切断可能に構成されていてもよい。このような工具として、例えば、ケーブルカッターやペンチやハサミが用いられる。
【0047】
例えば、交流電源A1の電圧は、100Vや200Vといったように設置環境で異なる値になることがある。例えば、整流回路21が倍電圧整流回路であるとして、交流電源A1の電圧が100Vの場合に比べると、交流電源A1の電圧が200Vの場合には、約2倍の直流電圧が電源回路24に印加される。そうすると、場合によっては、入力側に印加される電圧に対応した仕様の電源回路24を用意したほうがよいこともある。
【0048】
そこで、本実施形態では、交流電源A1の電圧が比較的高い場合(例えば、200Vの場合)には、図6に示す切断箇所X1に設けられたジャンパ線やジャンパ抵抗を作業員が取り外すようにしている。例えば、交流電源A1の電圧が100Vの場合には、配線K5(図5参照)にジャンパ線又はジャンパ抵抗が設けられる。また、交流電源A1の電圧が200Vの場合には、配線K5(図5参照)からジャンパ線又はジャンパ抵抗が取り外される。そして、切断箇所X1の配線K5(図5参照)が電気的に切断された場合、整流回路21の構成が、倍電圧整流回路からブリッジ形の全波整流回路に変更されるようになっている(図7も参照)。なお、前記したように、切断箇所X1を所定の工具で作業員が切断することも可能である。
【0049】
例えば、100Vの交流電圧を倍電圧整流した場合に電源回路24に印加される直流電圧と、200Vの交流電圧を全波整流(等倍の全波整流)した場合に電源回路24に印加される直流電圧とは、その大きさがほとんど変わらない。したがって、交流電源A1の電圧が異なる場合でも電源回路24を共用化できるため、基板20の製造コストを削減できる。
【0050】
図7は、図6の切断箇所で回路が切断された場合の構成を示す回路図である。
前記したように、配線K5(図5参照)が電気的に切断される前は倍電圧整流回路であったものが、ジャンパ線やジャンパ抵抗の取外しによって配線K5が電気的に切断されると(図6参照)、ダイオード回路21bの構成がブリッジ形の全波整流回路になる。これによって、交流電源A1の電圧が比較的高い場合でも、電源回路24として別仕様のものを用意する必要が特にないため、基板20の製造コストを削減できる。
【0051】
<効果>
本実施形態によれば、整流回路21の交流側と直流側との間にコンデンサ28が接続されているため、アース線23とグランドGNDとの間の電位差が小さい状態を維持できる。したがって、タッチパネル4におけるユーザのタッチ操作をタッチ検知回路26が高感度で検知できる。また、基板20に複雑な回路を設ける必要が特になく、コンデンサ28を設ければよいため、基板20の回路構造の簡素化を図れる他、製造コストを削減できる。このように本実施形態によれば、簡素な構成でタッチパネル4のタッチ感度が高い洗濯機100を提供できる。
【0052】
また、本実施形態によれば、ダイオード回路21aの配線K5(図5参照)を電気的に切断することで、倍電圧整流回路からブリッジ形の全波整流回路に変更できる。これによって、交流電源A1の電圧が高い場合でも低い場合でも、電源回路24として共通の仕様のものを用いることができる。
【0053】
≪変形例≫
以上、本開示に係る電気機器の一例である洗濯機100について実施形態で説明したが、これらの記載に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、実施形態では、整流回路21の交流側・直流側を接続するように1つのコンデンサ28が設けられる場合について説明したが、これに限らない。すなわち、直列接続又は並列接続された複数のコンデンサ(図示せず)を介して、整流回路21の交流側・直流側が接続されるようにしてもよい。また、例えば、抵抗器(図示せず)及びリアクトル(図示せず)の少なくとも一方がコンデンサ28に直列接続されるようにしてもよい。
【0054】
また、図5の例では、整流回路21が倍電圧整流回路である場合について説明したが、他の種類の整流回路であってもよい。また、図5の整流回路21から第3ダイオードD3及び第4ダイオードD4が適宜に省略されてもよい。この場合でも倍電圧整流の動作に支障が生ずることは特にない。
また、実施形態では、配線K5(図5参照)にジャンパ線やジャンパ抵抗が設けられる場合について説明したが、これに限らない。すなわち、配線K5における電気的接続が所定のスイッチ(図示せず)を用いて電気的に切断可能な構成にしてもよい。このようなスイッチとして、例えば、機械式のスイッチが用いられる。
【0055】
また、洗濯機100の基板20(図4図5参照)の回路構成は一例であり、適宜に変更可能である。また、タッチパネル4で用いられる検知の方式は、自己容量方式であってもよく、また、相互容量方式であってもよい。
また、実施形態では、整流回路21が第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2を1つずつ備える構成について説明したが、これに限らない。例えば、第1コンデンサC1として、直列又は並列に接続された複数のコンデンサ(図示せず)が用いられてもよい。また、第2コンデンサC2についても同様のことがいえる。
【0056】
また、タッチ検知回路26が所定のマイコン(図示せず)を備えるようにしてもよい。この場合において、制御回路27からの所定の信号に基づいて、前記したマイコンがタッチパネル4の表示制御を行うようにしてもよい。
【0057】
また、実施形態では、アース線23が設けられる場合について説明したが、コンセントT1において、プラグ刃P11,P12に対応する一対の差込口のうちの一方が接地されている場合に、当該一方の差込口(接地されている側)にプラグ刃P12を差し込むように取扱説明書等で説明されているときには、アース線23を省略することが可能である。このような場合も、コンデンサ28がアース線に接続されているという事項に含まれる。
【0058】
また、実施形態は本開示を分かりやすく説明するために詳細に記載したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、前記した機構や構成は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての機構や構成を示しているとは限らない。
【符号の説明】
【0059】
4 タッチパネル(操作部)
20 基板
21 整流回路
21a ダイオード回路
22 Yコンデンサ
23 アース線
24 電源回路
25 タッチ電極(電極)
26 タッチ検知回路
27 制御回路
28 コンデンサ
28a 極(一方の極)
28b 極(他方の極)
100 洗濯機(家電機器)
A1 交流電源
C1 第1コンデンサ
C2 第2コンデンサ
D1 第1ダイオード
D2 第2ダイオード
D3 第3ダイオード
D4 第4ダイオード
GND グランド
P1 電源プラグ
P11 プラグ刃(一方のプラグ刃)
P12 プラグ刃(他方のプラグ刃)
K2 配線(第1配線)
K4 配線(第2配線)
K5 配線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7