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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083909
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】車両用ドアロック装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 81/36 20140101AFI20240617BHJP
   E05B 81/20 20140101ALI20240617BHJP
   E05B 79/08 20140101ALI20240617BHJP
   E05B 85/02 20140101ALI20240617BHJP
   B60J 5/10 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
E05B81/36
E05B81/20 B
E05B79/08
E05B85/02
B60J5/10 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197993
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片川 峰孝
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250JJ42
2E250LL01
2E250RR13
2E250RR44
2E250SS01
(57)【要約】
【課題】異なる適用対象に対して可及的に共用化可能な車両用ドアロック装置。
【解決手段】車両用ドアロック装置10は、ハーフラッチ状態からラッチピンを変位させることによりフルラッチ状態に移行する機構部である噛合部12と、出力軸48を中心として回転することによりラッチピン24bを側方から押圧して変位させる出力ピン18bを備えるアクチュエータ部14とを有し、アクチュエータ部14は、出力軸48と同軸でかつ一体的に回転する第1セクタギア46Aと、モータ38の回転を第1セクタギア46Aに伝達する中継ギア44と、第1セクタギア46Aと一体的に設けられるカム46dと、第1セクタギア46Aの回転に基づきカム46dによって操作されるスイッチ54とを備え、カム46dは、第1セクタギア46Aにおいて歯46aのない箇所で、歯幅の範囲内にあり、かつ歯46aよりも径方向に突出している。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストライカと噛合したハーフラッチ状態からラッチピンを変位させることによりフルラッチ状態に移行する機構部である噛合部と、
出力軸を中心として回転することにより前記ラッチピンを側方から押圧して変位させる出力ピンを備えるアクチュエータ部と、
を有し、
前記アクチュエータ部は、
モータと、
前記出力軸と同軸でかつ一体的に回転するセクタギアと、
前記モータの回転を前記セクタギアに伝達する中継ギアと、
前記セクタギアと一体的に設けられるカムと、
前記セクタギアの回転に基づき前記カムによって操作子が押圧操作されるスイッチと、
を備え、
前記カムは、前記セクタギアにおいて前記中継ギアと咬合する歯のない箇所で、前記歯の歯幅の範囲内にあり、かつ前記歯よりも径方向に突出して設けられている
ことを特徴とする車両用ドアロック装置。
【請求項2】
ストライカと噛合したハーフラッチ状態からラッチピンを変位させることによりフルラッチ状態に移行する機構部である噛合部と、
出力軸を中心として回転することにより前記ラッチピンを側方から押圧して変位させる出力ピンを備えるアクチュエータ部と、
を有し、
前記アクチュエータ部は、
モータと、
前記出力軸と同軸でかつ一体的に回転するセクタギアと、
前記モータの回転を前記セクタギアに伝達する中継ギアと、
前記セクタギアと一体的に設けられるカムと、
前記セクタギアの回転に基づき前記カムによって操作子が押圧操作されるスイッチと、
を備え、
前記アクチュエータ部は、前記ラッチピンを前記出力ピンで押圧して変位させる際に前記出力軸を第1方向に回転させる第1仕様と、逆の第2方向に回転させる第2仕様とに適用され、
前記セクタギアは、前記第1仕様では第1セクタギアが適用され、前記第2仕様では前記カムおよび歯形成部との位置関係が前記第1セクタギアと逆になっている第2セクタギアが適用される
ことを特徴とする車両用ドアロック装置。
【請求項3】
前記第1仕様における前記第1セクタギアの第1回動範囲と前記第2仕様における前記第2セクタギアの第2回動範囲とは、前記中継ギアおよび前記スイッチを基準として略対称範囲となっている
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項4】
前記出力ピンは、前記噛合部に対する前記ストライカの進入・離脱方向から見て前記ラッチピンの根元から先端までの範囲内において、前記第1仕様では前記噛合部から見て前記出力軸より近い側で変位し、前記第2仕様では前記噛合部から見て前記出力軸より遠い側で変位する
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項5】
前記中継ギア、前記出力軸および前記スイッチは、略同一直線上に配置されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項6】
前記出力ピンは、前記噛合部から見て前記出力軸より近い側で変位し、
前記噛合部の筐体と前記アクチュエータ部の筐体とは、前記ラッチピンの延在方向で一部が重なるように配置されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項7】
前記出力ピンは、前記噛合部から見て前記出力軸より遠い側で変位し、
前記噛合部の筐体と前記アクチュエータ部の筐体とは、前記ストライカの進入・離脱方向で一部が重なるように配置されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項8】
前記スイッチは、前記操作子が押圧操作されることにより内部の接点が切り替えられるスイッチボディを有し、
前記アクチュエータ部の外殻を形成するハウジングは、前記中継ギアおよび前記セクタギアを収納する収納室を形成し、
前記スイッチボディの少なくとも一部は前記収納室の外に配置されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項9】
前記出力ピンの動作範囲は、前記出力軸を通り前記ラッチピンと平行な基準線を跨ぐ範囲に設定されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項10】
前記噛合部と前記アクチュエータ部とを結合するとともに取付対象に固定する支持部材を有し、
前記支持部材は、前記ストライカの進入・離脱方向から見て前記出力軸の周りで前記出力ピンが変位する範囲を囲う開口部を形成し、
前記出力ピンは、前記支持部材の前記開口部から、前記ストライカの離脱方向へ突出している
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項11】
前記支持部材は、
前記噛合部に接続される第1支持部材と、
前記アクチュエータ部を支持する第2支持部材と、
を備え、
前記第1支持部材と前記第2支持部材とは中継ビスによって接続されている
ことを特徴とする請求項10に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項12】
前記噛合部は、オープンレバーを変位させることにより前記ストライカとの噛合を解除させるように構成され、
前記アクチュエータ部は前記出力軸を中心として回転することにより前記オープンレバーを押圧して変位させる押圧部を備え、
前記押圧部は、前記出力ピンと一体的に設けられる出力レバーの板厚の一部として形成され、前記ラッチピンを押圧変位させる方向と逆の方向に回転することにより前記オープンレバーを押圧変位させて前記ストライカとの噛合を解除させる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項13】
前記アクチュエータ部は、コネクタを介して制御部と接続されるハーネスと、前記コネクタを互いに反対向きとなる二方向に固定可能な固定突起とを有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項14】
前記カムは、前記セクタギアの歯幅方向の中心を基準として対称に設けられている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ドアロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストライカと噛合する機構部である噛合部と、噛合部のラッチピンを押圧変位させて操作する出力ピンを備えるアクチュエータ部とを有する車両用ドアロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両にはモータを含む車両用ドアロック装置が設けられている。車両用ドアロック装置としては、例えば特許文献1のような車両用ドアロック装置があげられる。特許文献1の車両用ドアロック装置はワンボックスカーなどのバックドアに設けられ、噛合機構を車体側のストライカに係合させることでバックドアをロックする。このような車両用ドアロック装置には電動のクローズ機構およびオープン機構が設けられ、例えば、ドアをハーフラッチ状態からフルラッチ状態へ移行させる。
【0003】
この車両用ドアロック装置は、ストライカと噛合したハーフラッチ状態からラッチピンを変位させることによりフルラッチ状態に移行する機構部である噛合部と、出力軸回りに回転することによりラッチピンを側方から押圧して変位させる出力ピンを備えるアクチュエータ部とを有している。噛合部にはストライカと係合するラッチが設けられ、該ラッチにはラッチレバーが設けられている。そしてアクチュエータ部の減速機構によって出力レバーが回転し、該出力レバーの出力ピンがラッチレバーのラッチピンを操作する。
【0004】
アクチュエータ部は、モータと、出力レバーと一体の出力軸を回転させるセクタギアと、モータの回転をセクタギアに伝達する中継ギアと、セクタギアと一体的に設けられるカムと、セクタギアの回転に基づきカムによって操作子が押圧操作される中立スイッチとを備えている。中立スイッチは、出力ピンが所定の中立位置にあることを制御部で検知するためのものである。特許文献1のカムおよび中立スイッチはセクタギアにおける歯の形成範囲と逆側で、セクタギアの歯幅の範囲外に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-195796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような車両用ドアロック装置はバックドア内の狭所に配置されるためスペース的な制約があり、しかも適用される車両によりそのスペース要件も異なる。そのため、噛合部とアクチュエータ部との相対的な位置を適用車両に応じて変更する必要が生じる場合があるが、コストを抑制するためにはそれぞれをなるべく共用化することが望ましい。
【0007】
特に噛合部はストライカを確実に保持するための強度部品であって、評価項目が多く開発費用が嵩むために共用化が求められるが、アクチュエータ部についても可及的に共用化されることが望ましい。
【0008】
アクチュエータ部については噛合部との相対的な高さ位置を変えられるようにするとレイアウトの自由度が増すが、アクチュエータ部の出力ピンと噛合部のラッチピンとの位置関係がずれてしまう。そのため、双方の相対位置に応じて出力ピンの回転方向を反転させることにより位置ずれを吸収することが考えられる。
【0009】
ところが出力ピンの回転方向を反転させるためには、セクタギアの回動範囲も変わることにより中立スイッチと干渉してしまう場合がある。カムおよび中立スイッチをセクタギアの歯の歯幅の範囲外に設ければ干渉は回避されるがその分厚みが大きくなり、狭所に配置するという目的に反する。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、異なる適用対象に対して可及的に共用化可能な車両用ドアロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる車両用ドアロック装置は、ストライカと噛合したハーフラッチ状態からラッチピンを変位させることによりフルラッチ状態に移行する機構部である噛合部と、出力軸を中心として回転することにより前記ラッチピンを側方から押圧して変位させる出力ピンを備えるアクチュエータ部と、を有し、前記アクチュエータ部は、モータと、前記出力軸と同軸でかつ一体的に回転するセクタギアと、前記モータの回転を前記セクタギアに伝達する中継ギアと、前記セクタギアと一体的に設けられるカムと、前記セクタギアの回転に基づき前記カムによって操作子が押圧操作されるスイッチと、を備え、前記カムは、前記セクタギアにおいて前記中継ギアと咬合する歯のない箇所で、前記歯の歯幅の範囲内にあり、かつ前記歯よりも径方向に突出して設けられていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる車両用ドアロック装置は、ストライカと噛合したハーフラッチ状態からラッチピンを変位させることによりフルラッチ状態に移行する機構部である噛合部と、出力軸を中心として回転することにより前記ラッチピンを側方から押圧して変位させる出力ピンを備えるアクチュエータ部と、を有し、前記アクチュエータ部は、モータと、前記出力軸と同軸でかつ一体的に回転するセクタギアと、前記モータの回転を前記セクタギアに伝達する中継ギアと、前記セクタギアと一体的に設けられるカムと、前記セクタギアの回転に基づき前記カムによって操作子が押圧操作されるスイッチと、を備え、前記アクチュエータ部は、前記ラッチピンを前記出力ピンで押圧して変位させる際に前記出力軸を第1方向に回転させる第1仕様と、逆の第2方向に回転させる第2仕様とに適用され、前記セクタギアは、前記第1仕様では第1セクタギアが適用され、前記第2仕様では前記カムおよび歯形成部との位置関係が前記第1セクタギアと逆になっている第2セクタギアが適用されることを特徴とする。
【0013】
このような車両用ドアロック装置では、カムを検出するスイッチを適切な共通位置に配置することができて、セクタギアの回動方向による2つの仕様で構成要素の多くが可及的に共用化可能となっている。
【0014】
前記第1仕様における前記第1セクタギアの第1回動範囲と前記第2仕様における前記第2セクタギアの第2回動範囲とは、前記中継ギアおよび前記スイッチを基準として略対称範囲となっていてもよい。これにより、第1回動範囲および第2回動範囲とも適切な動作範囲を確保することができる。
【0015】
前記出力ピンは、前記噛合部に対する前記ストライカの進入・離脱方向から見て前記ラッチピンの根元から先端までの範囲内において、前記第1仕様では前記噛合部から見て前記出力軸より近い側で変位し、前記第2仕様では前記噛合部から見て前記出力軸より遠い側で変位してもよい。これにより、出力ピンはラッチピンに対して確実に当接する。
【0016】
前記中継ギア、前記出力軸および前記スイッチは、略同一直線上に配置されていてもよい。これにより、2つの仕様とも適切な動作範囲を確保することができる。
【0017】
前記出力ピンは、前記噛合部から見て前記出力軸より近い側で変位し、前記噛合部の筐体と前記アクチュエータ部の筐体とは、前記ラッチピンの延在方向で一部が重なるように配置されていてもよい。これにより、車両用ドアロック装置の車両前後方向幅を抑制することができる。
【0018】
前記出力ピンは、前記噛合部から見て前記出力軸より遠い側で変位し、前記噛合部の筐体と前記アクチュエータ部の筐体とは、前記ストライカの進入・離脱方向で一部が重なるように配置されていてもよい。これにより、車両用ドアロック装置の高さを抑制することができる。
【0019】
前記スイッチは、前記操作子が押圧操作されることにより内部の接点が切り替えられるスイッチボディを有し、前記アクチュエータ部の外殻を形成するハウジングは、前記中継ギアおよび前記セクタギアを収納する収納室を形成し、前記スイッチボディの少なくとも一部は前記収納室の外に配置されていてもよい。これにより、スイッチの位置に多少変更が必要になった場合にもスイッチの位置を変えるだけで容易に対応可能である。
【0020】
前記出力ピンの動作範囲は、前記出力軸を通り前記ラッチピンと平行な基準線を跨ぐ範囲に設定されていてもよい。これにより、出力レバーの所定角度あたりの出力ピンの左右変位量を大きく確保することができる。また、出力ピンのラッチピンに対する摺動範囲が狭くなりストライカを引き込む力が安定する。
【0021】
前記噛合部と前記アクチュエータ部とを結合するとともに取付対象に固定する支持部材を有し、前記支持部材は、前記ストライカの進入・離脱方向から見て前記出力軸の周りで前記出力ピンが変位する範囲を囲う開口部を形成し、前記出力ピンは、前記支持部材の前記開口部から、前記ストライカの離脱方向へ突出していてもよい。これによりストライカの進入・離脱方向の寸法が小さくなりレイアウト性が高くなる。
【0022】
前記支持部材は、前記噛合部に接続される第1支持部材と、前記アクチュエータ部を支持する第2支持部材と、を備え、前記第1支持部材と前記第2支持部材とは中継ビスによって接続されていてもよい。これによりバランスが良く剛性が高くなる。
【0023】
前記噛合部は、オープンレバーを変位させることにより前記ストライカとの噛合を解除させるように構成され、前記アクチュエータ部は前記出力軸を中心として回転することにより前記オープンレバーを押圧して変位させる押圧部を備え、前記押圧部は、前記出力ピンと一体的に設けられる出力レバーの板厚の一部として形成され、前記ラッチピンを押圧変位させる方向と逆の方向に回転することにより前記オープンレバーを押圧変位させて前記ストライカとの噛合を解除させてもよい。出力レバーの板厚がピンに当接する設定により当たり方が安定し解除ストロークのばらつきが少なくなる。
【0024】
前記アクチュエータ部は、コネクタを介して制御部と接続されるハーネスと、前記コネクタを互いに反対向きとなる二方向に固定可能な固定突起とを有してもよい。これにより、制御部の位置などに応じてコネクタの開口向きを柔軟に変更させることができる。
【0025】
前記カムは、前記セクタギアの歯幅方向の中心を基準として対称に設けられていてもよい。これにより、表裏逆にすることでセクタギアについても第1仕様と第2仕様とに共用して適用することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明にかかる車両用ドアロック装置は、カムを検出するスイッチを適切な共通位置に配置することができる。したがって、異なる適用対象によってセクタギアの回動方向が違う2つの仕様で構成要素の多くが可及的に共用化可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明の第1実施形態にかかる車両用ドアロック装置を示す斜視図である。
図2図2は、第1実施形態にかかる車両用ドアロック装置の分解斜視図である。
図3図3は、第1実施形態にかかる車両用ドアロック装置の背面図である。
図4図4は、一部の部品を省略してオープンレバーを露呈させた状態の第1実施形態にかかる車両用ドアロック装置の一部拡大背面図である。
図5図5は、第1実施形態にかかる車両用ドアロック装置の平面図である。
図6図6は、噛合部の内部機構を示す平面図である。
図7図7は、アクチュエータ部の分解斜視図である。
図8図8は、ケースを取り外した状態の第1実施形態にかかるアクチュエータ部を示す図である。
図9図9は、第1セクタギアの動きを説明する図であり、(a)はフルラッチ動作時を示す図であり、(b)はオープン動作時を示す図である。
図10図10は、カバーを取り外した状態でのスイッチおよびその周辺部の斜視図である。
図11図11は、信号線ハーネスを外した状態の車両用ドアロック装置の一部を示す斜視図である。
図12図12は、アクチュエータ部と駆動線ハーネスとの分解斜視図である。
図13図13は、駆動線ハーネスおよび駆動線コネクタを異なる方向に取り付けた状態を示す図である。
図14図14は、第1実施形態にかかる車両用ドアロック装置の模式側面図である。
図15図15は、第2実施形態にかかる車両用ドアロック装置の背面図である。
図16図16は、第2実施形態にかかる車両用ドアロック装置の分解斜視図である。
図17図17は、一部の部品を省略してオープンレバーを露呈させた状態の第2実施形態にかかる車両用ドアロック装置の一部拡大背面図である。
図18図18は、ケースを取り外した状態の第2実施形態にかかるアクチュエータ部を示す図である。
図19図19は、第2セクタギアの動きを説明する図であり、(a)はフルラッチ動作時を示す図であり、(b)はオープン動作時を示す図である。
図20図20は、第2実施形態にかかる車両用ドアロック装置の模式側面図である。
図21図21は、変形例にかかる第3セクタギアとその周辺部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明にかかる車両用ドアロック装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0029】
以下では第1実施形態にかかる車両用ドアロック装置10Aおよび第2実施形態にかかる車両用ドアロック装置10Bについて説明する。車両用ドアロック装置10A,10Bは、例えばワンボックスカーなどの車両のバックドアに設けられ、車両本体のストライカS(図1図6参照)に対して係合および開放して、バックドアを開扉および閉扉するものである。車両用ドアロック装置10Aおよび車両用ドアロック装置10Bのいずれを用いるかは、適用対象となるバックドア内のスペース態様などに基づいて選択される。車両用ドアロック装置10A,10Bを代表的に車両用ドアロック装置10とも呼ぶ。
【0030】
車両用ドアロック装置10の説明では、取り付けられたバックドアが閉となっている状態を基準とする。したがって、ストライカSの進入・離脱方向が車両の前後方向に相当する。ストライカSの進入・離脱方向をX方向とし、離脱方向(前方)をX1方向、進入方向(後方)をX2方向とする。さらに上下方向をY方向、左右方向をZ方向とする。X,Y,Zの各方向は直交する。図面では方向を適宜、矢印で示している。まず、車両用ドアロック装置10Aについて説明する。
【0031】
[第1実施形態](第1仕様)
図1は、本発明の第1実施形態にかかる車両用ドアロック装置10Aを示す斜視図である。図2は、車両用ドアロック装置10Aの分解斜視図である。図3は、車両用ドアロック装置10Aの背面図である。図4は、一部の部品を省略してオープンレバー26を露呈させた状態の車両用ドアロック装置10Aの一部拡大背面図である。
図5は、車両用ドアロック装置10Aの平面図である。
【0032】
図1に示すように、ストライカSは車両用ドアロック装置10Aに対して相対的にX方向に移動する。したがって、図3の背面図は、X方向から見た図である。また、図5の平面図は、Z方向から見た図である。
【0033】
図1図2図3図4図5に示すように、車両用ドアロック装置10Aは噛合部12と、アクチュエータ部14とを備える。噛合部12はストライカSとの噛合および開放をする機構部である。アクチュエータ部14は噛合部12を駆動する機構部である。噛合部12とアクチュエータ部14とは第2ブラケット(第2支持部材)16を介して固定される。アクチュエータ部14は出力レバー18Aを介して噛合部12を駆動する。
【0034】
噛合部12は、ボディ20と、ベースブラケット21と、ラッチレバー24と、信号線ハーネス25と、オープンレバー26(図4参照)とを備える。ベースブラケット21の左右両端は上方に向けて屈曲し、一対の第1ブラケット(第1支持部材)22を形成している。第1ブラケット22を含むベースブラケット21、第2ブラケット16および出力レバー18Aは金属材である。第1ブラケット22は第2ブラケット16とともに支持部材27を形成している。噛合部12とアクチュエータ部14とは分解可能であって、支持部材27を介して接続されている。
【0035】
ボディ20には、ストライカSが進入するストライカ進入溝20aが形成されている。ボディ20は、ストライカSと係合するラッチ30(図6参照)と、該ラッチ30をハーフラッチ位置またはフルラッチ位置で保持するラチェット32(図6参照)とを備える。ボディ20にはラッチ30の回転位置を検出する複数のスイッチが設けられている。信号線ハーネス25にはこれらのスイッチと接続される電線が含まれており、先端には信号線コネクタ25aが設けられている。信号線コネクタ25aはBCM(ボディコントロールモジュール、制御部)と接続される。
【0036】
ボディ20の左右には、車両に対する取り付け部である取付片33が一体的に形成されている。ボディ20の外殻部および取付片33は金属材である。各取付片33には、1または2の取付孔33aが形成されている。取付孔33aは貫通孔である。支持部材27は、噛合部12とともに車両のバックドアに対して取付孔33aを挿通されるビス(図示略)がベースブラケット21および第1ブラケット22に形成されたネジ孔と螺合することによって共締めされ、これにより車両用ドアロック装置10Aが該バックドアに固定される。
【0037】
第1ブラケット22と第2ブラケット16とからなる支持部材27は、アクチュエータ部14を支持する部材であり、両端が噛合部12の取付片33とつながっている。また、換言すれば、第2ブラケット16は、第1ブラケット22を介して取付片33とつながっている。
【0038】
支持部材27のうち、第1ブラケット22は噛合部12の取付片33に接続され、第2ブラケット16はアクチュエータ部14を支持する。第2ブラケット16は半円形状部をベースとしており、該半円形状部は後述する円形突起部53の周囲に配置されている。第2ブラケット16が形成する半円の内径側部分には、前方に向かってやや突出するテーパ絞り部16a(図5参照)が形成されており、高強度となっている。第1ブラケット22と第2ブラケット16とは中継ビスB1によって接続されている。一部の中継ビスB1はアクチュエータ部14に対しても共締めされている。
【0039】
第1ブラケット22と第2ブラケット16とは中継ビスB1によって接続されていて分解可能であり、製造、組み立ておよびメンテナンスに好適である。なお、第1ブラケット22と第2ブラケット16とは一体構造であってもよい。第1ブラケット22と第2ブラケット16とによって構成される支持部材27は、ボディ20または取付片33と一体構造であってもよい。
【0040】
支持部材27は、X方向から見て出力軸48の周りで出力ピン18bが変位する範囲を囲う開口部35を形成している。支持部材27は、後方から見て円形突起部53に沿って延在している。出力ピン18bは開口部35からX1方向へ突出している。これによりX方向の寸法は小さくなりレイアウト性が高くなる。開口部35は第1ブラケット22と第2ブラケット16の連結で出力レバー18Aを囲うように形成されているためバランスが良く剛性が高くなる。
【0041】
ラッチレバー24は、ラッチ30とともにラッチ軸24aを軸として回転する。ラッチレバー24は先端にラッチピン24bを備えている。ラッチピン24bはY方向(上方)に延在している。オープンレバー26はオープンレバー軸26aを軸として回転する。オープンレバー26は係合部となるオープンピン26bと、アーム26cとを備える。出力レバー18Aの軸孔18aにはアクチュエータ部14の出力軸48が嵌り、出力レバー18Aは該出力軸48とともに回転する。出力レバー18Aは、X1方向に突出する出力ピン18b、および押圧部18cを備える。押圧部18cは出力レバー18Aの板厚の一部として形成されている。出力レバー18Aの板厚がオープンピン26bに当接する設定により当たり方が安定し解除ストロークのばらつきが少なくなる。
【0042】
出力レバー18Aが図3における中立位置から反時計方向に回転すると出力ピン18bはラッチピン24bを側方から押圧して変位させ、ラッチレバー24が回転する。すなわちフルラッチ動作を行う。出力レバー18Aが図3における中立位置から時計方向に回転すると押圧部18cはオープンピン26bを押圧して変位させ、オープンレバー26が回転する。すなわち、オープン動作を行う。出力レバー18Aは小さく低コストの部品である。
【0043】
図6は、ラッチ30、ラチェット32およびボディ20の一部を示す図である。ラッチ30はストライカSが係合するストライカ係合溝30aと、ハーフラッチ係合部30bと、フルラッチ係合部30cと、カム30dとを備えており、ラッチ軸24aを軸として回転可能である。ラッチ30はスプリング30eによって反時計方向に付勢されている。ラッチ30の回動角度は、カム30dが図示しない複数のスイッチをオン・オフすることによりBCMに伝えられる。ラチェット32は、爪32aと、被押圧部32bとを備えており、ラチェット軸32cを軸として回転可能である。ラチェット32はスプリング32dによって図6の時計方向に付勢されている。被押圧部32bは、出力レバー18Aの回転に基づきアーム26cによって押圧される。
【0044】
ストライカSがストライカ進入溝20aに入り込むと、ラッチ30は時計方向に回転し、爪32aがハーフラッチ係合部30bに係合してハーフラッチ状態となる。ハーフラッチ状態となったことを検出したBCMはアクチュエータ部14および出力レバー18A(図3に示す中立位置から時計方向の回転)を介してラッチ30を時計方向にさらに回転させる。そうすると、爪32aがフルラッチ係合部30cに係合してフルラッチ状態となり、バックドアは閉扉する。なお、図6はフルラッチ状態を示している。
【0045】
バックドアを開扉する場合、BCMはアクチュエータ部14および出力レバー18Aを図3に示す中立位置から時計方向に回転させる。そうすると、押圧部18cがオープンピン26bを押圧してオープンレバー26が回転する(図4参照)。さらにオープンレバー26のアーム26cが被押圧部32bを押圧することにより、ラチェット32は図6の反時計方向に回転する。これにより爪32aが移動して、フルラッチ係合部30cは係合状態から解放され、ラッチ30が反時計方向に回転してストライカSがストライカ係合溝30aから離脱可能となる。すなわち、バックドアが開扉する。
【0046】
図7は、アクチュエータ部14の分解斜視図である。アクチュエータ部14では、ケース34およびカバー36が外殻としてのハウジングを構成している。ケース34およびカバー36は樹脂材である。カバー36はケース34よりも軟質材が用いられる。ケース34は、例えばPBT(polybutyleneterephtalate)であり、カバー36は、例えばPOM(polyacetal)である。
【0047】
ケース34とカバー36によって構成されるハウジングの内部には、モータ38と、ウォームホイール42と、中継ギア44と、第1セクタギア46Aと、出力軸48とが設けられている。ケース34とカバー36との間には防水シール50が設けられる。ケース34とカバー36とは複数のビスB2によって締結される。なお、ウォームホイール42、中継ギア44、第1セクタギア46Aおよび出力軸48は、図7においては視認されやすいようにカバー36とともに図示しているが、実際の組み立て時には、図8のようにケース34に配置される。
【0048】
アクチュエータ部14には、モータ38の端子38dと接続される駆動線ハーネス49が設けられている。駆動線ハーネス49の先端には駆動線コネクタ49aが設けられている。駆動線コネクタ49aはBCMと接続される。端子38dはアクチュエータ部14の上部で図7の右端にある。駆動線ハーネス49は端子38dの近傍部からX2側へ折り返し、アクチュエータ部14の上面に沿って左側に延在している。カバー36の上面には固定突起36aが形成されている。駆動線コネクタ49aは左方向に開口するように固定突起36aに固定されている(図3参照)。
【0049】
図8は、ケース34を取り外した状態のアクチュエータ部14を示す図である。図8では仮想線で出力ピン18bの概略位置を示している。ウォームホイール42はモータ38のウォームギア38aによって駆動される。モータ38は、円柱状の本体38bと、該本体38bから同軸上に突出する回転軸38cとを有し、ウォームギア38aは回転軸38cに設けられている。中継ギア44はウォームホイール42と同軸上にあり、該ウォームホイール42と一体的に回転する。第1セクタギア46Aは中継ギア44によって駆動される。換言すれば、中継ギア44はモータ38の回転がウォームホイール42を介して伝達され、さらにモータ38の回転を第1セクタギア46Aに伝達する。
【0050】
出力軸48は第1セクタギア46Aとセレーション結合されており、該第1セクタギア46Aと一体的に回転する。出力軸48は、モータ38の回転がウォームホイール42、中継ギア44および第1セクタギア46Aで減速されて伝達される。上記のとおり、出力軸48は出力レバー18A(図2参照)を公転的に回転させる。中継ギア44および第1セクタギア46Aは、モータ38の回転を減速して出力レバー18Aに伝達する減速機構51を構成する。減速機構51を構成するギア類はウォームギア38aを除いて樹脂材で形成されており軽量化が図られているが、それぞれ金属材で形成してもよい。
【0051】
モータ38の軸Jは、図8における左側の回転軸38cよりも右側の本体38bの方がやや上となるように、水平に対して角度θ1だけ傾いている。角度θ1は小さく、例えば10度程度である。軸Jが傾いていることにより、ウォームギア38aに塗付されるグリスが本体38bに向かって流れることが防止される。角度θ1は小さいことから、本体38bが上方に過度に突出することがない。
【0052】
中継ギア44の軸心44aと出力軸48の軸心48aとを結ぶ直線Lは、図8における左側の軸心42aよりも右側の軸心48aの方がやや下となるように、水平に対して角度θ2だけ傾いている。角度θ2は、例えば20度程度である。直線Lが傾いていることにより出力効率が良くなる。
【0053】
第1セクタギア46Aは出力軸48と同軸でかつ一体的に回転し、出力レバー18Aを回動させるものである。第1セクタギア46Aは、出力レバー18Aを回動させる角度範囲に応じて歯46aが形成された歯形成部46bと、該歯形成部46bの両側で歯46aのないストッパ部46cと、カム46dとを有する。第1セクタギア46Aではカム46dが歯形成部46bより時計方向側に設けられている。
【0054】
歯46aは中継ギア44と咬合する。図8に示すようにセクタギア46Aが中立位置に対応しているときには、歯形成部46bのほとんどは出力軸48よりも上方に配置されている。ストッパ部46cは歯46aが形成されていないことから中継ギア44と咬合不能であり、第1セクタギア46Aの回転を制限する。カム46dは、第1セクタギア46Aにおいて歯46aのない箇所で、かつ歯46aよりも径方向に突出して設けられている。
【0055】
アクチュエータ部14にはスイッチ54が設けられている。スイッチ54は第1セクタギア46Aと一体的に回転運動する出力ピン18bが中立位置にあることを検出するものである。スイッチ54は、いわゆるマイクロスイッチであり、内部に接点を備える箱形のスイッチボディ54aと、該スイッチボディ54aに対して出没する操作子54bとを有する。スイッチ54は、操作子54bがカム46dで押圧操作されることにより内部の接点が切り替えられる。カム46dは、出力ピン18bが中立位置にあるときに操作子54bを押圧操作するように配置されている。スイッチ54の操作子54bはほぼ直線Lの線上にある。換言すれば、中継ギア44、出力軸48およびスイッチ54は、略同一直線上に配置されている。
【0056】
ケース34は、出力軸48と同軸上に形成されてX1方向に向かって突出する円形突起部53(図2参照)を備える。円形突起部53は第1セクタギア46Aを覆っている。ケース34およびカバー36は、モータ38、ウォームホイール42、中継ギア44および第1セクタギア46Aを収納する収納室56を形成している。収納室56で第1セクタギア46Aを収納する部分は円形であって、該第1セクタギア46Aが回転可能であるとともに後述する第2セクタギア46Bをも収納可能となっている。
【0057】
図9は、第1セクタギア46Aの動きを説明する図であり、(a)はフルラッチ動作時を示す図であり、(b)はオープン動作時を示す図である。図9では仮想線で出力ピン18bの概略位置を示し、さらに(a)では基準位置におけるラッチピン24bの概略位置を示している。フルラッチ動作時には、第1セクタギア46Aは中立位置(図8参照)から反時計方向(第1方向)に回動する。このとき、歯形成部46bのほとんどは出力軸48よりも下方に配置される。
【0058】
また、このとき出力ピン18bは太矢印の軌跡T1のように略8時の位置から略4時の位置に回動するようになっており、噛合部12から見て出力軸48より近い側で変位する(図14も参照)。したがって、出力軸48と噛合部12との間には出力ピン18bの動作を許容するスペースが必要であり、その分噛合部12とアクチュエータ部14とは相対的にY方向にやや離間させることになる。
【0059】
また、この場合の出力ピン18bの動作範囲は、出力軸48を通るY方向の基準線Vを跨ぐ範囲に設定されている。したがって、所定角度あたりのZ方向変位量を大きく確保することができ、第1セクタギア46Aの回転角を小さくすることができるとともに、出力ピン18bによってラッチピン24bを押圧しやすくなる。また、出力ピン18bのY方向の変位量が少なくなることでラッチピン24bに対する摺動範囲が狭くなりストライカSを引き込む力が安定する。
【0060】
オープン動作時には、第1セクタギア46Aは中立位置(図8参照)から時計方向(第2方向)に小さい角度(例えば10度程度)だけ回動する。第1セクタギア46Aの回動範囲(第1回動範囲)A1は、図9(a)~(b)において歯形成部46bの移動範囲となる。
【0061】
スイッチ54の操作子54bは、回動範囲A1以外の箇所に配置されている。操作子54bは、基本的には歯46aよりも径方向の外側にあってこれらに干渉することはないが、仮に操作子54bの突出量がある程度大きい場合であっても、回動範囲A1以外にあることから干渉はない。なお、出力レバー18Aにおける出力ピン18bの位置を変えると、第1セクタギア46Aに対する相対的角度が変わり、設計条件により回動範囲A1をシフトさせることも可能である。
【0062】
図10は、カバー36を取り外した状態でのスイッチ54およびその周辺部の斜視図である。図11は、信号線ハーネス25を外した状態の車両用ドアロック装置10Aの一部を示す斜視図である。
【0063】
ケース34には側方に開口するスイッチ孔34aが形成されている。ケース34には、スイッチ孔34aを外側から覆う角筒34bが形成されいてる。スイッチ54は信号線ハーネス25に対してホルダ60を介して取り付けられており、さらに角筒34bによって固定されている。スイッチ54とホルダ60とはサブアッシーを構成している。スイッチ54は、操作子54bについてはスイッチ孔34aから収納室56の中に突出しているが、スイッチボディ54aの少なくとも一部(本実施例では全部)は収納室56の外に配置されている。セクタギア46Aの向きに応じてスイッチ54の位置に多少変更が必要になった場合にもスイッチ孔34aの位置を変えるだけで容易に対応可能である。これに対して、仮に収納室56内部にスイッチ54を設定した場合は導電のためのターミナル等の形状変更も必要となりコストが増大する。
【0064】
なお、図10に示すように、カム46dは、歯46aの歯幅Wgの範囲内に形成されている。具体的には、カム46dは厚みが歯幅Wgの略半分であって、X1側については歯46aと同一面を形成している。
【0065】
図12は、アクチュエータ部14と駆動線ハーネス49との分解斜視図である。図13は、駆動線ハーネス49および駆動線コネクタ49aを異なる方向に取り付けた状態を示す図である。
【0066】
図12に示すように、駆動線コネクタ49aの下部には係合部49aaが設けられている。係合部49aaには、駆動線コネクタ49aと相手側コネクタとの着脱方向に延在して一方に開口する溝が形成されている。カバー36の固定突起36aは左右対称で一対の係合片36aaを有している。係合片36aaはいずれか一方が係合部49aaの溝に挿入されて係合するようになっている。図1で示した例では、右側の固定突起36aが係合部49aaに係合して、駆動線コネクタ49aは左方向に開口する。
【0067】
一方、左側の係合片36aaを係合部49aaの溝に挿入して係合させると、図13に示すように、駆動線コネクタ49aを右方向に開口させることができる。また、この場合、駆動線ハーネス49は端子38dの近傍部からX2側へ折り返し、アクチュエータ部14のX2側の面に沿って左側に延在し、さらにアクチュエータ部14の上面を右側に延在するように配策するとよい。このように、アクチュエータ部14には駆動線コネクタ49aを互いに反対向きとなる二方向に固定可能な固定突起36aを有していることから、BCMの位置などに応じて駆動線コネクタ49aの開口向きを柔軟に変更させることができる。
【0068】
図14は、車両用ドアロック装置10Aの模式側面図である。車両用ドアロック装置10Aはバックドア内の狭いスペースαに配置される。車両用ドアロック装置10Aでは、出力ピン18bは、X方向から見てラッチピン24bの根元から先端までの高さHp(図9(a)も参照)の範囲内で変位するようになっており、ラッチピン24bに対して確実に当接する。
【0069】
また、上記のとおり、出力ピン18bが噛合部12から見て出力軸48より近い側で変位することから、噛合部12とアクチュエータ部14とは相対的にY方向にやや離間させており、アクチュエータ部14のすぐ下方にスペースαの壁αaがあっても干渉を回避することができる。また、噛合部12の筐体とアクチュエータ部14の筐体とは、Y方向で一部が重なるように配置することでX方向の幅Wを抑制することができる。すなわち、車両用ドアロック装置10Aは取り付けスペースのX方向の幅が狭くまたは壁αaがあるようなバックドアのスペースαに対して好適に適用可能である。
【0070】
[第2実施形態](第2仕様)
次に、第2実施形態にかかる車両用ドアロック装置10Bについて説明する。車両用ドアロック装置10Bについて上記の車両用ドアロック装置10Aと同様の構成要素については同符号を付してその詳細な説明を省略する。車両用ドアロック装置10Bは、車両用ドアロック装置10Aとは異なるスペース要件のバックドアに適用されるものである。
【0071】
図15は、第2実施形態にかかる車両用ドアロック装置10Bの背面図である。図16は、車両用ドアロック装置10Bの分解斜視図である。図17は、一部の部品を省略してオープンレバー26を露呈させた状態の車両用ドアロック装置10Bの一部拡大背面図である。図18は、ケース34を取り外した状態の第2実施形態にかかるアクチュエータ部14を示す図である。
【0072】
車両用ドアロック装置10Bにおける噛合部12は上記の車両用ドアロック装置10Aにおけるものと共通であり開発費および製品コストが抑制されている。
【0073】
車両用ドアロック装置10Bは出力レバー18Bを有する。出力レバー18Bは上記の出力レバー18Aに代わるものであり、軸孔18aを中心として出力軸48により回転する。出力レバー18Bは出力レバー18Aと同様に小さく低コストである。出力レバー18Bは出力レバー18Aとは逆方向に回動するようにアクチュエータ部14で駆動される。つまり、フルラッチ動作時には時計方向に回動し、オープン動作時には反時計方向に回動する。回動の方向はBCMにより制御可能である。出力レバー18Bは出力レバー18Aと同様に出力ピン18bおよび押圧部18cを有しているが、操作対象との相対的な位置が整合するように出力レバー18Aにおける位置とは異なって設定されている。
【0074】
車両用ドアロック装置10Bのアクチュエータ部14は第2セクタギア46Bを有する。第2セクタギア46Bは上記の第1セクタギア46Aに代わるものであり、中継ギア44によって駆動され出力軸48を回転させる。ただし、BCMの制御下に第1セクタギア46Aとは逆方向に回転するようになっている。第2セクタギア46Bは、第1セクタギア46Aと同様に歯46a、歯形成部46b、ストッパ部46cおよびカム46dを有しているが、第1セクタギア46Aとは略上下逆の構成となっている。第2セクタギア46Bではカム46dが歯形成部46bより反時計方向側に設けられている。つまり、第1セクタギア46Aと第2セクタギア46Bとでは、カム46dと歯形成部46bとの位置関係が逆になっている。
【0075】
車両用ドアロック装置10Bは、第1ブラケット62、第2ブラケット64からなる支持部材66を有している。第1ブラケット62、第2ブラケット64および支持部材66は、上記の第1ブラケット22、第2ブラケット16および支持部材27に代わるものであるが、噛合部12とアクチュエータ部14との相対的な位置が変更されている。具体的には、上記の支持部材27では噛合部12とアクチュエータ部14の出力軸48とはY方向にやや離れた位置に設定しているが、支持部材66では噛合部12とアクチュエータ部14の出力軸48とをY方向にやや近い位置に設定している。支持部材27,66はそれぞれ廉価な部品であり、変更しまたは両方を在庫として準備するのに要するコストは小さい。
【0076】
図19は、第2セクタギア46Bの動きを説明する図であり、(a)はフルラッチ動作時を示す図であり、(b)はオープン動作時を示す図である。図19では仮想線で出力ピン18bの概略位置を示し、さらに(a)では基準位置におけるラッチピン24bの概略位置を示している。フルラッチ動作時には、第2セクタギア46Bは中立位置(図18参照)から時計方向(第2方向)に回動する。このとき、歯形成部46bのほとんどは出力軸48よりも上方に配置されている。
【0077】
また、このとき出力ピン18bは太矢印の軌跡T2のように略10時の位置から略2時の位置に回動するようになっており、噛合部12から見て出力軸48より遠い側で変位する(図20も参照)。したがって、出力軸48と噛合部12との間には出力ピン18bの動作を許容するスペースが不要あり、その分噛合部12とアクチュエータ部14とは相対的にY方向にやや近い位置に配置されている。
【0078】
また、この場合の出力ピン18bの動作範囲は、出力軸48を通るY方向の基準線Vを跨ぐ範囲に設定されている。したがって、所定角度あたりのZ方向変位量を大きく確保することができ、第2セクタギア46Bの回転角を小さくすることができるとともに、出力ピン18bによってラッチピン24bを押圧しやすくなる。また、出力ピン18bのY方向の変位量が少なくなることでラッチピン24bに対する摺動範囲が狭くなりストライカSを引き込む力が安定する。
【0079】
また、オープン動作時には、第2セクタギア46Bは中立位置(図18参照)から反時計方向(第1方向)に小さい角度(例えば10度程度)だけ回動する。そして出力レバー18Bを示す中立位置から反時計方向に回転させる。そうすると、押圧部18cがオープンピン26bを押圧してオープンレバー26が回転する(図17参照)。第2セクタギア46Bの回動範囲(第2回動範囲)A2は、図19(a)~(b)において歯形成部46bの移動範囲となる。
【0080】
スイッチ54の操作子54bは、回動範囲A2以外の箇所に配置されている。操作子54bは、基本的には歯46aよりも径方向の外側にあってこれらに干渉することはないが、仮に操作子54bの突出量がある程度大きい場合であっても、回動範囲A2以外にあることから干渉はない。なお、出力レバー18Bにおける出力ピン18bの位置を変えると、第2セクタギア46Bに対する相対的角度が変わり、設計条件により回動範囲A2をシフトさせることも可能である。
【0081】
図20は、第2実施形態にかかる車両用ドアロック装置10Bの模式側面図である。車両用ドアロック装置10Bはバックドア内の狭いスペースβに配置される。車両用ドアロック装置10Bでは、出力ピン18bはX方向から見てラッチピン24bの根元から先端までの高さHp(図19(a)も参照)の範囲内で変位するようになっており、ラッチピン24bに対して確実に当接する。
【0082】
また、上記のとおり、出力ピン18bが噛合部12から見て出力軸48より遠い側で変位することから、噛合部12とアクチュエータ部14とは相対的にY方向にやや接近しており、噛合部12の筐体とアクチュエータ部14の筐体とは、X方向で一部が重なるように配置してY方向の高さHを抑制することができる。これにより、アクチュエータ部14のすぐ上方にスペースβの壁βaがあっても干渉を回避することができる。すなわち、車両用ドアロック装置10Bは取り付けスペースのY方向の高さが低くまたはβaがあるようなバックドアのスペースβに対して好適に適用可能である。
【0083】
このように、本実施形態にかかる車両用ドアロック装置10A,10Bは、出力ピン18bの回転方向を反転させることにより噛合部12とアクチュエータ部14との位置ずれを吸収することができる。すなわち、出力ピン18bの回転方向を反転させることでラッチピン24bの移動量を変えずにアクチュエータ部14の位置を移動することができる。ラッチピン24bに関してはX,Y,Z方向の位置および移動量が変わらないため、開発、評価費用が嵩む噛合部12を共用化することができ、コストを増大させず様々なバックドア内スペースのレイアウトに対応することができる。
【0084】
車両用ドアロック装置10A,10Bにおけるアクチュエータ部14は、基本的に第1セクタギア46Aと第2セクタギア46Bとを入れ替えることによりその他の部分を共用化することができてコストを抑制することができる。セクタギア46A,46Bは動作範囲が異なるが、カム46dは歯46aのない箇所に設けられていることから動作範囲に影響がない。また、カム46dは歯46aよりも径方向に突出して設けていることから、カム46dを検出するスイッチ54も径方向外側に配置されることになり歯46aと干渉がない。さらに、カム46dは歯幅Wgの範囲内にあってZ方向の厚みを抑制することができるとともに、セクタギア46A,46Bの回転によってウォームホイール42との干渉を防止することができる。
【0085】
こような第1セクタギア46A、第2セクタギア46Bをアクチュエータ部14に適用すると、カム46dを検出するスイッチ54を適切な共通位置に配置することが可能となって、セクタギア46A,46B以外の箇所の共用化が可能となりコストを抑制することができる。ただし、車両用ドアロック装置10A,10Bにおけるアクチュエータ部14は、セクタギア46A,46Bや、出力レバー18A,18B以外の箇所を完全互換のある共通仕様としなくてもよい。
【0086】
すなわち、取付対象となるバックドアのスペース態様やその他の取り付け条件によってはケース34やカバー36の細部(例えば収納室56の一部の形状)を変更する必要が生じる場合がある。このような場合であっても、変更した細部以外は共通であることから、設計データや評価データのほとんどを利用することが可能であって開発・評価が容易となる。また、ケース34やカバー36を製造する金型についてもほとんどを共用化し一部を修正して利用することも可能である。金型については、ベースとなる駒型は同じで中身の一部のコアだけを変えるカセット式金型を用いてもよい。このように、本実施の形態にかかる車両用ドアロック装置10A,10Bはアクチュエータ部14が可及的に共用化可能となっている。
【0087】
また、中継ギア44、出力軸48およびスイッチ54は、略同一直線上に配置されており、第1セクタギア46Aの歯46aの実効的な回動範囲A1と第2セクタギア46Bの実効的な回動範囲A2とを略対称に配置することができ、車両用ドアロック装置10A,10Bでスイッチ54の位置は変えずにセクタギア46A,46B以外のアクチュエータ部14を共用化することができる。
【0088】
なお、セクタギア46A,46Bに咬合して駆動する中継ギア44はそれぞれの回動範囲A1,A2に対応しそれらの合わさった範囲の略中央に配置されている。そして、スイッチ54は歯形成部46bとは異なる位置のカム46dを検出するのであるから、回動範囲A1,A2の合わさった範囲以外に配置されることになる。そうすると、スイッチ54と中継ギア44とは出力軸48を中心として略反対側に配置することが合理的であり、上記のとおりスイッチ54、中継ギア44および出力軸48は略同一直線上となっている。また、回動範囲A1と回動範囲A2とは直線L(図9図19参照)を中心として略対称範囲となっている。
【0089】
セクタギア46A,46Bは軽量化のために円弧形状となっているが、回動範囲A1,A2を形成するように歯形成部46bが円弧状に形成されていればよく、見かけ上で円盤形状であってもよい。車両用ドアロック装置10は、上記の例と左右対称に構成されていてもよい。その場合、セクタギア46A,46Bや出力レバー18A,18Bの回動方向は逆転する。
【0090】
図21は、変形例にかかる第3セクタギア46Cとその周辺部の斜視図である。図21ではハウジング等を省略している。上記の第1セクタギア46Aは第1仕様に適用されるものであり、第2セクタギア46Bは第2仕様に適用されるものであるが、第3セクタギア46Cは第1仕様および第2仕様に共用可能となっている。すなわち、仮想線で示すように第1セクタギア46Aにおけるカム46dはX方向について一方に寄っているが、第3セクタギア46Cにおけるカム46Cdは歯幅Wgと同幅に形成されていることから第1仕様と第2仕様とで同じものを表裏逆としてもスイッチ54の操作が可能となる。第3セクタギア46Cにおけるカム46Cd以外の箇所はセクタギア46A,46Bと同じである。カム46Cdは、第3セクタギア24Cにおける歯幅方向(X方向)の中心68を基準として対称形状となっていれば第1仕様および第2仕様に共通に適用可能となる。
【0091】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0092】
10,10A,10B 車両用ドアロック装置
12 噛合部
14 アクチュエータ部
16,64 第2ブラケット
18A,18B 出力レバー
18b 出力ピン
18c 押圧部
22,62 第1ブラケット
24 ラッチレバー
24b ラッチピン
26 オープンレバー
27,66 支持部材
34 ケース(ハウジング)
34a スイッチ孔
35 開口部
36 カバー(ハウジング)
38 モータ
38a ウォームギア
42 ウォームホイール
44 中継ギア
46A 第1セクタギア
46B 第2セクタギア
46C 第3セクタギア
46a 歯
46b 歯形成部
46d カム
48 出力軸
49 駆動線ハーネス
49a 駆動線コネクタ
51 減速機構
54 スイッチ
54a スイッチボディ
54a 操作子
56 収納室
60 ホルダ
A1,A2 回動範囲
L 直線
Wg 歯幅
図1
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