(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024083918
(43)【公開日】2024-06-24
(54)【発明の名称】積層型コイルアレイ
(51)【国際特許分類】
H01F 30/10 20060101AFI20240617BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20240617BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20240617BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
H01F30/10 F
H01F30/10 D
H01F30/10 M
H01F17/00 D
H01F17/04 A
H01F27/29 P
H01F27/29 123
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198007
(22)【出願日】2022-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】坂野 好子
(72)【発明者】
【氏名】友廣 俊
(72)【発明者】
【氏名】大場 裕一
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA11
5E070AB01
5E070BA12
5E070BB03
5E070CB13
5E070CB18
5E070EA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】コイル間のインダクタンス値の差を低減させる積層型コイルアレイを提供する。
【解決手段】積層型コイルアレイは、磁性層を含む素体10と、第1コイル21及び第2コイル22と、第1外部電極31及び第2外部電極32と、第3外部電極33及び第4外部電極34と、第1引出導体41と第2引出導体42と、第3引出導体43と第4引出導体44と、を備える。第1コイル導体層51は、少なくとも第1引出導体41を含む2つ以上の引出導体を回避するために積層方向Tからの平面視で第1引出導体41の内側又は外側に配置される回避部60を含む。第2コイル導体層52は、第4引出導体44を回避するために積層方向からの平面視で第4引出導体44の内側又は外側に配置される回避部を含む。回避部を除いた部分の第2コイル導体層の幅は、回避部を除いた部分の第1コイル導体層の幅よりも広い。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性層を含む素体と、
前記素体の内部に設けられ、複数の第1コイル導体層を積層方向に含む第1コイルと、
前記積層方向において前記第1コイルよりも前記素体の底面から離れた位置で前記素体の内部に設けられ、複数の第2コイル導体層を前記積層方向に含む第2コイルと、
前記素体の底面に設けられ、前記第1コイルに電気的に接続された第1外部電極及び第2外部電極と、
前記素体の底面に設けられ、前記第2コイルに電気的に接続された第3外部電極及び第4外部電極と、
前記素体の内部に設けられ、前記第1コイルの端部のうち、前記第2コイルに最も近い前記第1コイル導体層の端部と前記第1外部電極とを接続する第1引出導体と、
前記素体の内部に設けられ、前記第1コイルの他方の端部と前記第2外部電極とを接続する第2引出導体と、
前記素体の内部に設けられ、前記第2コイルの端部のうち、前記第1コイルに最も近い前記第2コイル導体層の端部と前記第3外部電極とを接続する第3引出導体と、
前記素体の内部に設けられ、前記第2コイルの他方の端部と前記第4外部電極とを接続する第4引出導体と、を備え、
前記第1コイル導体層は、少なくとも前記第1引出導体を含む2つ以上の引出導体を回避するために前記積層方向からの平面視で前記第1引出導体の内側又は外側に配置される回避部を含み、
前記第2コイル導体層は、前記第4引出導体を回避するために前記積層方向からの平面視で前記第4引出導体の内側又は外側に配置される回避部を含み、
前記回避部を除いた部分の前記第2コイル導体層の幅は、前記回避部を除いた部分の前記第1コイル導体層の幅よりも広い、積層型コイルアレイ。
【請求項2】
前記回避部を除いた部分の前記第1コイル導体層の幅をA、前記回避部を除いた部分の前記第2コイル導体層の幅をBとしたとき、B/Aの比が1.04以上、1.69以下である、請求項1に記載の積層型コイルアレイ。
【請求項3】
B/Aの比が1.20以上、1.53以下である、請求項2に記載の積層型コイルアレイ。
【請求項4】
前記積層方向において、前記素体の底面から前記第1コイルまでの厚みは、前記素体の底面とは反対側の上面から前記第2コイルまでの厚みよりも大きい、請求項1に記載の積層型コイルアレイ。
【請求項5】
磁性層を含む素体と、
前記素体の内部に設けられ、複数の第1コイル導体層を積層方向に含む第1コイルと、
前記積層方向において前記第1コイルよりも前記素体の底面から離れた位置で前記素体の内部に設けられ、複数の第2コイル導体層を前記積層方向に含む第2コイルと、
前記素体の底面に設けられ、前記第1コイルに電気的に接続された第1外部電極及び第2外部電極と、
前記素体の底面に設けられ、前記第2コイルに電気的に接続された第3外部電極及び第4外部電極と、
前記素体の内部に設けられ、前記第1コイルの端部のうち、前記第2コイルに最も近い前記第1コイル導体層の端部と前記第1外部電極とを接続する第1引出導体と、
前記素体の内部に設けられ、前記第1コイルの他方の端部と前記第2外部電極とを接続する第2引出導体と、
前記素体の内部に設けられ、前記第2コイルの端部のうち、前記第1コイルに最も近い前記第2コイル導体層の端部と前記第3外部電極とを接続する第3引出導体と、
前記素体の内部に設けられ、前記第2コイルの他方の端部と前記第4外部電極とを接続する第4引出導体と、を備え、
前記第1コイル導体層は、少なくとも前記第1引出導体を含む2つ以上の引出導体を回避するために前記積層方向からの平面視で前記第1引出導体の内側又は外側に配置される回避部を含み、
前記第2コイル導体層は、前記第4引出導体を回避するために前記積層方向からの平面視で前記第4引出導体の内側又は外側に配置される回避部を含み、
前記積層方向において、前記素体の底面から前記第1コイルまでの厚みは、前記素体の底面とは反対側の上面から前記第2コイルまでの厚みよりも大きい、積層型コイルアレイ。
【請求項6】
前記回避部を除いた部分の前記第1コイル導体層の幅は、前記回避部を除いた部分の前記第2コイル導体層の幅と同等である、請求項5に記載の積層型コイルアレイ。
【請求項7】
前記素体の底面から前記第1コイルまでの厚みをC、前記素体の底面とは反対側の上面から前記第2コイルまでの厚みをDとしたとき、D/Cの比が0.11以上、0.88以下である、請求項4~6のいずれか1項に記載の積層型コイルアレイ。
【請求項8】
D/Cの比が0.19以上、0.54以下である、請求項7に記載の積層型コイルアレイ。
【請求項9】
前記第1コイル導体層の厚みは、前記第2コイル導体層の厚みと同等である、請求項1、4又は5に記載の積層型コイルアレイ。
【請求項10】
前記第1コイル導体層の前記回避部は、前記第1引出導体、前記第3引出導体及び前記第4引出導体を回避するために前記積層方向からの平面視で前記第1引出導体、前記第3引出導体及び前記第4引出導体のそれぞれの内側又は外側に配置される、請求項1、4又は5に記載の積層型コイルアレイ。
【請求項11】
DC-DCコンバータに用いられる、請求項1、4又は5に記載の積層型コイルアレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型コイルアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、磁性粒子を含有する磁性層を含む素体と、上記素体に内蔵された第1コイル及び第2コイルと、上記素体の表面に設けられ、上記第1コイル及び上記第2コイルの端部のいずれか1つにそれぞれ電気的に接続された第1外部電極、第2外部電極、第3外部電極及び第4外部電極とを有してなるDC-DCコンバータ用積層型コイルアレイであって、上記第1コイルと上記第2コイルとの間に非磁性層が設けられており、上記第1コイル及び上記第2コイルはそれぞれ、複数のコイル導体が積層方向に連結されてなり、上記第1コイルの上記複数のコイル導体のうち上記第2コイルに最も近いコイル導体から引き出された端部が、上記第1外部電極に接続されるとともに、上記第1コイルの他方の端部は上記第2外部電極に接続され、上記第2コイルの上記複数のコイル導体のうち上記第1コイルに最も近いコイル導体から引き出された端部が、上記第3外部電極に接続されるとともに、上記第2コイルの他方の端部は上記第4外部電極に接続され、上記第1外部電極及び上記第3外部電極が、DC-DCコンバータのスイッチング素子の出力端子に接続される、DC-DCコンバータ用積層型コイルアレイが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の
図1Bに示されるように、第1コイル又は第2コイルの端部には、外部電極と接続するための引出導体が積層方向(
図1Bでは高さ方向T)に設けられている。このような引出導体を回避するために、第1コイル又は第2コイルを構成するコイル導体は、積層方向からの平面視で引出導体の内側に配置される必要がある。
【0005】
例えば、特許文献1の
図1Bでは、積層方向(T方向)の上側に配置されているコイル(第1コイル31)を構成するコイル導体は1つの引出導体を、積層方向(T方向)の下側に配置されるコイル(第2コイル32)を構成するコイル導体は2つ以上の引出導体を回避する必要がある。ここで、下側のコイルを構成するコイル導体の内径面積が上側のコイルを構成するコイル導体の内径面積に比べて小さくなると、下側のコイルのインダクタンス値が上側のコイルのインダクタンス値に比べて低下しやすくなるという問題が生じる。
【0006】
なお、上記の問題は、DC-DCコンバータ用積層型コイルアレイに限らず、積層型コイルアレイに共通する問題である。
【0007】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、コイル間のインダクタンス値の差を低減させることが可能な積層型コイルアレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の積層型コイルアレイは、磁性層を含む素体と、上記素体の内部に設けられ、複数の第1コイル導体層を積層方向に含む第1コイルと、上記積層方向において上記第1コイルよりも上記素体の底面から離れた位置で上記素体の内部に設けられ、複数の第2コイル導体層を上記積層方向に含む第2コイルと、上記素体の底面に設けられ、上記第1コイルに電気的に接続された第1外部電極及び第2外部電極と、上記素体の底面に設けられ、上記第2コイルに電気的に接続された第3外部電極及び第4外部電極と、上記素体の内部に設けられ、上記第1コイルの端部のうち、上記第2コイルに最も近い上記第1コイル導体層の端部と上記第1外部電極とを接続する第1引出導体と、上記素体の内部に設けられ、上記第1コイルの他方の端部と上記第2外部電極とを接続する第2引出導体と、上記素体の内部に設けられ、上記第2コイルの端部のうち、上記第1コイルに最も近い上記第2コイル導体層の端部と上記第3外部電極とを接続する第3引出導体と、上記素体の内部に設けられ、上記第2コイルの他方の端部と上記第4外部電極とを接続する第4引出導体と、を備える。上記第1コイル導体層は、少なくとも上記第1引出導体を含む2つ以上の引出導体を回避するために上記積層方向からの平面視で上記第1引出導体の内側又は外側に配置される回避部を含む。上記第2コイル導体層は、上記第4引出導体を回避するために上記積層方向からの平面視で上記第4引出導体の内側又は外側に配置される回避部を含む。
【0009】
第1の態様において、上記回避部を除いた部分の上記第2コイル導体層の幅は、上記回避部を除いた部分の上記第1コイル導体層の幅よりも広い。
【0010】
第2の態様において、上記積層方向において、上記素体の底面から上記第1コイルまでの厚みは、上記素体の底面とは反対側の上面から上記第2コイルまでの厚みよりも大きい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コイル間のインダクタンス値の差を低減させることが可能な積層型コイルアレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の積層型コイルアレイの一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す積層型コイルアレイの内部構造の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す内部構造から第1コイル、第1引出導体及び第2引出導体を抜き出した斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2に示す内部構造から第2コイル、第3引出導体及び第4引出導体を抜き出した斜視図である。
【
図5】
図5は、
図2に示す内部構造を素体の底面側から見た平面図である。
【
図6】
図6は、
図2に示す内部構造を素体の端面側から見た平面図である。
【
図7】
図7は、素体の底面から第1コイルまでの厚みをC、素体の底面とは反対側の上面から第2コイルまでの厚みをDとしたとき、D/Cの比とコイル間のインダクタンス値の差との関係を示すグラフである。
【
図8】
図8は、本発明の積層型コイルアレイの内部構造の第1変形例を模式的に示す平面図である。
【
図9】
図9は、本発明の積層型コイルアレイの内部構造の第2変形例を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の積層型コイルアレイについて説明する。なお、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更されてもよい。また、以下において記載する個々の好ましい構成を複数組み合わせたものもまた本発明である。
【0014】
本発明の積層型コイルアレイは、例えば、DC-DCコンバータに用いられる。本発明の積層型コイルアレイは、DC-DCコンバータ以外の用途にも適用可能である。
【0015】
本明細書中、要素間の関係性を示す用語(例えば、「平行」、「直交」等)及び要素の形状を示す用語は、文字通りの厳密な態様のみを意味するだけではなく、実質的に同等な範囲、例えば、数%程度の差異を含む範囲も意味する。
【0016】
以下に示す図面は模式図であり、その寸法、縦横比の縮尺等は実際の製品と異なる場合がある。
【0017】
図1は、本発明の積層型コイルアレイの一例を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1に示す積層型コイルアレイの内部構造の一例を模式的に示す斜視図である。なお、積層型コイルアレイ及び各構成要素の形状及び配置等は、図示する例に限定されない。
【0018】
図1及び
図2に示す積層型コイルアレイ1は、素体10と、第1コイル21と、第2コイル22と、第1外部電極31と、第2外部電極32と、第3外部電極33と、第4外部電極34と、第1引出導体41と、第2引出導体42と、第3引出導体43と、第4引出導体44と、を備える。
【0019】
素体10は、例えば、6面を有する直方体形状又は略直方体形状である。素体10は、角部及び稜線部に丸みが付けられていてもよい。角部は、素体10の3面が交わる部分であり、稜線部は、素体10の2面が交わる部分である。
【0020】
図1及び
図2には、積層型コイルアレイ1及び素体10における長さ方向、幅方向、高さ方向を、それぞれL方向、W方向、T方向として示している。長さ方向Lと幅方向Wと高さ方向Tとは互いに直交する。積層型コイルアレイ1の実装面は、例えば、長さ方向Lと幅方向Wに平行な面(LW面)である。
【0021】
図1に示す素体10は、高さ方向Tに相対する第1の主面11及び第2の主面12と、高さ方向Tに直交する長さ方向Lに相対する第1の端面13及び第2の端面14と、長さ方向L及び高さ方向Tに直交する幅方向Wに相対する第1の側面15及び第2の側面16とを有する。
図1に示す例では、素体10の第1の主面11が素体10の底面に相当する。
【0022】
素体10は、磁性層を含む。
【0023】
素体10は、積層構造を有することが好ましい。具体的には、素体10は、複数の磁性層を積層方向(例えば高さ方向T)に含むことが好ましい。なお、素体10が有する積層構造の各層の境界は明瞭に現れていなくてもよい。
【0024】
素体10が積層構造を有すると、積層型コイルアレイ1の設計の自由度が高くなる。例えば、素体10の底面(第1の主面11)に第1外部電極31、第2外部電極32、第3外部電極33及び第4外部電極34を備える積層型コイルアレイ1を製造する場合、底面側への第1コイル21及び第2コイル22の引き出しが行いやすくなる。
【0025】
磁性層は、磁性材料で構成される磁性粒子を含む。磁性粒子は、Fe、Co、Ni及びこれらを少なくとも1種含む合金等の金属磁性材料の粒子(金属磁性粒子)又はフェライト粒子であってよい。磁性粒子は、好ましくはFe粒子又はFe合金粒子である。Fe合金としては、Fe-Si系合金、Fe-Si-Cr系合金、Fe-Si-Al系合金、Fe-Si-B-P-Cu-C系合金、Fe-Si-B-Nb-Cu系合金等が好ましい。
【0026】
上述の金属磁性材料からなる金属磁性粒子の表面は、絶縁被膜で覆われていることが好ましい。金属磁性粒子の表面が絶縁被膜で覆われていると、金属磁性粒子間の絶縁性を高くすることができる。金属磁性粒子の表面に絶縁被膜を形成する方法としては、ゾル-ゲル法、メカノケミカル法等を用いることができる。絶縁被膜を構成する材料は、P、Si等の酸化物が好ましい。また、絶縁被膜は金属磁性粒子の表面が酸化されることで形成された酸化膜であってもよい。絶縁被膜の厚みは、好ましくは1nm以上50nm以下、より好ましくは1nm以上30nm以下、さらに好ましくは1nm以上20nm以下である。例えば、積層型コイルアレイの試料を研磨することで得られた断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影し、得られたSEM写真から、金属磁性粒子の表面を覆う絶縁被膜の厚みを測定することができる。
【0027】
磁性層中の金属磁性粒子の平均粒径は、好ましくは1μm以上30μm以下、より好ましくは1μm以上20μm以下、さらに好ましくは1μm以上10μm以下である。磁性層中の金属磁性粒子の平均粒径は、以下に説明する手順で測定することができる。積層型コイルアレイの試料を切断して得られた断面について、複数箇所(例えば5箇所)の領域(例えば130μm×100μm)をSEMで撮影し、得られたSEM画像を画像解析ソフト(例えば、旭化成エンジニアリング株式会社製、A像くん(登録商標))を用いて解析し、金属磁性粒子の円相当径を求める。得られた円相当径の平均値を金属磁性粒子の平均値とする。
【0028】
素体10は、第1コイル21と第2コイル22との間に非磁性層を含んでもよい。第1コイル21と第2コイル22との間に非磁性層を設けることにより、第1コイル21と第2コイル22との間の絶縁性を高めることができ、両者の間で発生する短絡を抑制することができる。
【0029】
非磁性層は、非磁性材料として、ガラスセラミック材料及び非磁性フェライト材料等を含んでよい。非磁性層は、非磁性材料として非磁性フェライト材料を含むことが好ましい。非磁性フェライト材料としては、FeがFe2O3に換算して40mol%以上49.5mol%以下、CuがCuOに換算して6mol%以上12mol%以下、残部がZnOである組成を有する非磁性フェライト材料を用いることができる。非磁性材料は、必要に応じて添加物としてMn3O4、Co3O4、SnO2、Bi2O3及びSiO2等を含有していてもよく、微量な不可避不純物を含有していてもよい。非磁性層は、好ましくはZn-Cu系フェライトを含有する。
【0030】
非磁性層の厚みは、以下に説明する手順で測定することができる。積層型コイルアレイの試料を垂直になるように立てて、試料の周りを樹脂で固める。このときLT面が露出するようにする。研磨機で試料のW方向の約1/2の深さで研磨を終了し、LT面に平行な断面を露出させる。研磨による内部導体の垂れを除去するために、研磨終了後、イオンミリング(株式会社日立ハイテク社製イオンミリング装置IM4000)により研磨表面を加工する。研磨した試料における非磁性層の略中央部をSEMで撮影し、得られたSEM写真から非磁性層の略中央部の厚みを測定し、これを非磁性層の厚みと定義する。
【0031】
素体10は、第1コイル21を構成する複数の第1コイル導体層51の間、又は、第2コイル22を構成する複数の第2コイル導体層52の間に非磁性部を含んでもよい。その場合、非磁性部は、第1コイル導体層51及び第2コイル導体層52のうち、隣接するコイル導体層間の少なくとも1箇所に設けられる。隣接するコイル導体層間に非磁性部を設けることにより、磁束の漏れを防ぐことができる。
【0032】
非磁性層及び非磁性部は、同じ組成を有することが好ましい。例えば、非磁性層及び非磁性部は、Zn-Cu系フェライトで構成されることが好ましい。
【0033】
素体10の内部には、第1コイル21及び第2コイル22が設けられている。第1コイル21及び第2コイル22は磁気的に結合していることが好ましい。なお、素体10の内部には、第1コイル21及び第2コイル22のみを含む2つのコイルが設けられていてもよく、第1コイル21及び第2コイル22を含む3つ以上のコイルが設けられていてもよい。
【0034】
第1コイル21は、複数の第1コイル導体層51を積層方向(例えば高さ方向T)に含む。隣接する第1コイル導体層51同士は、ビア導体を介して接続されている。なお、第1コイル21は、2層の第1コイル導体層51を積層方向に含んでもよく、3層以上の第1コイル導体層51を積層方向に含んでもよい。
【0035】
第1コイル導体層51の厚みは、各々、同じであることが好ましい。また、第1コイル導体層51の厚みは、後述する第2コイル導体層52の厚みと同等であることが好ましい。
【0036】
第2コイル22は、第1コイル21よりも素体10の底面(第1の主面11)から離れた位置に設けられている。
【0037】
第2コイル22は、複数の第2コイル導体層52を積層方向(例えば高さ方向T)に含む。隣接する第2コイル導体層52同士は、ビア導体を介して接続されている。なお、第2コイル22は、2層の第2コイル導体層52を積層方向に含んでもよく、3層以上の第2コイル導体層52を積層方向に含んでもよい。第2コイル導体層52の積層数は、第1コイル導体層51の積層数と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0038】
第2コイル導体層52の厚みは、各々、同じであることが好ましい。
【0039】
第1外部電極31及び第2外部電極32は、素体10の底面(第1の主面11)に設けられ、第1コイル21に電気的に接続されている。第3外部電極33及び第4外部電極34は、素体10の底面(第1の主面11)に設けられ、第2コイル22に電気的に接続されている。積層型コイルアレイ1では、素体10の底面(第1の主面11)を実装面とすることができる。すなわち、積層型コイルアレイ1の底面での実装が可能となる。
【0040】
第1外部電極31は、素体10の第1の主面11のみに設けられていてもよいが、素体10の第1の主面11と、第1の端面13及び第1の側面15の少なくとも一方とに跨って設けられていてもよい。
【0041】
第2外部電極32は、素体10の第1の主面11のみに設けられていてもよいが、素体10の第1の主面11と、第2の端面14及び第1の側面15の少なくとも一方とに跨って設けられていてもよい。
【0042】
第3外部電極33は、素体10の第1の主面11のみに設けられていてもよいが、素体10の第1の主面11と、第1の端面13及び第2の側面16の少なくとも一方とに跨って設けられていてもよい。
【0043】
第4外部電極34は、素体10の第1の主面11のみに設けられていてもよいが、素体10の第1の主面11と、第2の端面14及び第2の側面16の少なくとも一方とに跨って設けられていてもよい。
【0044】
第1外部電極31、第2外部電極32、第3外部電極33及び第4外部電極34は、各々、Ag等の導電性材料から構成されてもよい。例えば、第1外部電極31、第2外部電極32、第3外部電極33及び第4外部電極34は、各々、Agを含む下地電極層と、下地電極層の上に設けられた1層以上のめっき層と、を含む。
【0045】
第1外部電極31、第2外部電極32、第3外部電極33及び第4外部電極34の厚みは、各々、5μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0046】
第1外部電極31等の外部電極の厚みは、以下に説明する手順で測定することができる。上述した方法と同様の方法で試料の研磨を行い、外部電極の部分をSEMで撮影する。得られたSEM写真において外部電極の略中央部を1箇所測定し、外部電極の厚みと定義する。
【0047】
第1引出導体41、第2引出導体42、第3引出導体43及び第4引出導体44は、素体10の内部に設けられている。
【0048】
第1引出導体41は、第1コイル21の端部のうち、第2コイル22に最も近い第1コイル導体層51の端部と第1外部電極31とを接続する。第1引出導体41は、積層方向(例えば高さ方向T)に沿って延びていることが好ましい。第1引出導体41は、積層構造を有してもよい。
【0049】
第2引出導体42は、第1コイル21の他方の端部と第2外部電極32とを接続する。第2引出導体42は、積層方向(例えば高さ方向T)に沿って延びていることが好ましい。第2引出導体42は、積層構造を有してもよい。
【0050】
第3引出導体43は、第2コイル22の端部のうち、第1コイル21に最も近い第2コイル導体層52の端部と第3外部電極33とを接続する。第3引出導体43は、積層方向(例えば高さ方向T)に沿って延びていることが好ましい。第3引出導体43は、積層構造を有してもよい。
【0051】
第4引出導体44は、第2コイル22の他方の端部と第4外部電極34とを接続する。第4引出導体44は、積層方向(例えば高さ方向T)に沿って延びていることが好ましい。第4引出導体44は、積層構造を有してもよい。
【0052】
図3は、
図2に示す内部構造から第1コイル、第1引出導体及び第2引出導体を抜き出した斜視図である。
【0053】
図3に示すように、第1コイル導体層51は、第1引出導体41、第3引出導体43及び第4引出導体44を回避するために積層方向(例えば高さ方向T)からの平面視で第1引出導体41、第3引出導体43及び第4引出導体44のそれぞれの内側に配置される回避部60を含む。例えば、第1コイル導体層51は、回避部60と、回避部60に接続される直線部65と、を含む。
【0054】
なお、第1コイル導体層51の回避部60は、少なくとも第1引出導体41を含む2つ以上の引出導体を回避するために積層方向(例えば高さ方向T)からの平面視で第1引出導体41の内側に配置されていればよい。すなわち、第1コイル導体層51は、少なくとも第1引出導体41を回避するための回避部60を含んでいれば、第3引出導体43及び第4引出導体44のうちのいずれか一方を回避するための回避部60を含んでいなくてもよい。
【0055】
図4は、
図2に示す内部構造から第2コイル、第3引出導体及び第4引出導体を抜き出した斜視図である。
【0056】
図4に示すように、第2コイル導体層52は、第4引出導体44を回避するために積層方向(例えば高さ方向T)からの平面視で第4引出導体44の内側に配置される回避部60を含む。例えば、第2コイル導体層52は、回避部60と、回避部60に接続される直線部65と、を含む。
【0057】
本明細書において、回避部60とは、第1引出導体41等の引出導体に最も近い第1コイル導体層51又は第2コイル導体層52の辺を意味する。回避部60に位置する辺は、直線状であってもよく、曲線状であってもよい。また、回避部60は、2つ以上の線分により構成されていてもよい。
【0058】
図5は、
図2に示す内部構造を素体の底面側から見た平面図である。
【0059】
図5に示す例では、回避部60を除いた部分の第2コイル導体層52の幅(
図5中、Bで示す長さ)は、回避部60を除いた部分の第1コイル導体層51の幅(
図5中、Aで示す長さ)よりも広くなっている。
【0060】
図5に示すように、第1コイル導体層51が回避部60及び直線部65を含み、第2コイル導体層52が回避部60及び直線部65を含む場合、直線部65に位置する第2コイル導体層52の幅が、直線部65に位置する第1コイル導体層51の幅よりも広くなっている。
【0061】
上述のとおり、特許文献1の
図1Bに記載されている内部構造を有する積層型コイルアレイでは、下側のコイルを構成するコイル導体の内径面積が上側のコイルを構成するコイル導体の内径面積に比べて小さくなると、下側のコイルのインダクタンス値が上側のコイルのインダクタンス値に比べて低下しやすくなるという問題が生じる。
【0062】
これに対して、積層型コイルアレイ1では、上側の第2コイル22を構成する第2コイル導体層52の幅を広くしてインダクタンス値を下げることで、第1コイル21と第2コイル22との間のインダクタンス値の差を低減させることができる。なお、第2コイル導体層52の幅を広くすると、第1コイル21の磁路の関係で第1コイル21のインダクタンス値への影響も存在する。しかしながら、その影響は第2コイル22へのインダクタンス値の変化と比べるとわずかであり、後述する表1の通り、インダクタンス値の差を低減させることができる。
【0063】
また、特許文献1の
図1Bに記載されている内部構造を有する積層型コイルアレイでは、上側のコイルに設けられている引出導体が下側のコイルに設けられている引出導体よりも長くなることで、直流抵抗(Rdc)が増大するという問題が生じる。
【0064】
これに対して、積層型コイルアレイ1では、上側の第2コイル22を構成する第2コイル導体層52の幅を広くすることで、直流抵抗の増大を抑制することができる。
【0065】
なお、回避部60に位置する第1コイル導体層51の幅は、直線部65に位置する第1コイル導体層51の幅と同じであってもよく、直線部65に位置する第1コイル導体層51の幅に比べて狭くなっていてもよい。同様に、回避部60に位置する第2コイル導体層52の幅は、直線部65に位置する第2コイル導体層52の幅と同じであってもよく、直線部65に位置する第2コイル導体層52の幅に比べて狭くなっていてもよい。
【0066】
第1コイル導体層51が回避部60及び直線部65を含む場合、直線部65の幅は測定位置によって一定でなくてもよい。その場合、直線部65のもっとも狭い位置を測定対象とする。第2コイル導体層52が回避部60及び直線部65を含む場合も同様に、直線部65の幅は測定位置によって一定でなくてもよい。その場合、直線部65のもっとも狭い位置を測定対象とする。
【0067】
図6は、
図2に示す内部構造を素体の端面側から見た平面図である。
【0068】
図6に示す例では、積層方向(例えば高さ方向T)において、素体10の底面(第1の主面11)から第1コイル21までの厚み(
図6中、Cで示す長さ)は、素体10の底面とは反対側の上面(第2の主面12)から第2コイル22までの厚み(
図6中、Dで示す長さ)よりも大きくなっている。
【0069】
第1コイル21よりも下部に位置する素体10の厚みを大きくすることでインダクタンス値が上がるとともに、第2コイル22よりも上部に位置する素体10の厚みを小さくすることでインダクタンス値が下がる。これにより、第1コイル21と第2コイル22との間のインダクタンス値の差を低減させることができる。なお、第1コイル21よりも下部に位置する素体10の厚みを大きくすると、第2コイル22の磁路の関係で第2コイル22のインダクタンス値への影響も存在する。しかしながら、その影響は第1コイル21へのインダクタンス値の変化と比べるとわずかであり、後述する
図7の通り、インダクタンス値の差を低減させることができる。
【0070】
特に、回避部60を除いた部分の第2コイル導体層52の幅が、回避部60を除いた部分の第1コイル導体層51の幅よりも広く、かつ、積層方向において、素体10の底面から第1コイル21までの厚みが、素体10の底面とは反対側の上面から第2コイル22までの厚みよりも大きいことが好ましい。この場合、第1コイル21と第2コイル22との間のインダクタンス値の差だけでなく、第1コイル21の引出導体が長くなるので直流抵抗の差も低減させることができる。
【0071】
なお、積層方向において、素体10の底面から第1コイル21までの厚みが、素体10の底面とは反対側の上面から第2コイル22までの厚みよりも大きい場合、回避部60を除いた部分の第1コイル導体層51の幅が、回避部60を除いた部分の第2コイル導体層52の幅と同等であってもよい。
【0072】
表1は、回避部を除いた部分の第1コイル導体層の幅をA、回避部を除いた部分の第2コイル導体層の幅をBとしたとき、B/Aの比とコイル間のインダクタンス値(L)の差との関係を示すグラフである。このとき、後述のD/Cの比は0.5である。
【0073】
【0074】
表1には、
図2、
図5及び
図6と同じ内部構造を有する積層型コイルアレイのシミュレーション結果を示している。なお、表1に記載されていないB/Aの比とインダクタンス値の差との関係は、表1をもとに、最小二乗法による1次の近似式から導くことができる。
【0075】
表1より、B/Aの比が1.04以上、1.69以下であると、第1コイルと第2コイルとの間のインダクタンス値の差が約20%以下となり、B/Aの比が1.20以上、1.53以下であると、第1コイルと第2コイルとの間のインダクタンス値の差が約10%以下となる。今回はAを0.230mmとして、Bを0.230mmから0.361mmまで変化させシミュレーションを行ったが、本開示におけるA及びBの値は特に限定されない。例えば、Aの値は0.150mm以上、0.250mm以下であってもよい。
【0076】
図7は、素体の底面から第1コイルまでの厚みをC、素体の底面とは反対側の上面から第2コイルまでの厚みをDとしたとき、D/Cの比とコイル間のインダクタンス値(L)の差との関係を示すグラフである。このとき、前述のB/Aの比は1.2である。
【0077】
図7には、
図2、
図5及び
図6と同じ内部構造を有する積層型コイルアレイのシミュレーション結果を示している。なお、
図7に示すグラフは、表2に示すデータから作成されている。
【0078】
【0079】
図7より、D/Cの比が0.11以上、0.88以下であると、第1コイルと第2コイルとの間のインダクタンス値の差が約20%以下となり、D/Cの比が0.19以上、0.54以下であると、第1コイルと第2コイルとの間のインダクタンス値の差が約10%以下となる。なお、表2に記載されていないD/Cの比とインダクタンス値の差との関係は、表2をもとに、最小二乗法による4次の近似式から導くことができる。今回はC+D=0.300mm(一定)として、Cを0.150mmから0.290mmまで、Dを0.150mmから0.010mmまで変化させシミュレーションを行ったが、本開示におけるC及びDの値は特に限定されない。例えば、Cの値は0.180mm以上、0.200mm以下であってもよい。
【0080】
本発明の積層型コイルアレイは、上記実施形態に限定されるものではなく、積層型コイルアレイの構成、製造条件等に関し、本発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【0081】
図8は、本発明の積層型コイルアレイの内部構造の第1変形例を模式的に示す平面図である。
【0082】
図8に示すように、積層方向(例えば高さ方向T)からの平面視で、第1引出導体41、第2引出導体42、第3引出導体43及び第4引出導体44のうち少なくとも1つの引出導体が、第1コイル導体層51の直線部65及び第2コイル導体層52の直線部65よりも素体10の外縁側に位置してもよい。この場合、積層方向(例えば高さ方向T)からの平面視で、第1引出導体41、第2引出導体42、第3引出導体43及び第4引出導体44の全てが、第1コイル導体層51の直線部65及び第2コイル導体層52の直線部65よりも素体10の外縁側に位置することが好ましい。
【0083】
第1引出導体41等の引出導体を直線部65よりも素体10の外縁側に配置することで、第1コイル導体層51及び第2コイル導体層52の内径面積の低減を抑えられるため、インダクタンス値の低減を抑制することができる。
【0084】
図9は、本発明の積層型コイルアレイの内部構造の第2変形例を模式的に示す平面図である。
【0085】
図9に示すように、第1コイル導体層51の回避部60は、少なくとも第1引出導体41を含む2つ以上の引出導体を回避するために積層方向からの平面視で第1引出導体41の外側に配置され、第2コイル導体層52の回避部60は、第4引出導体44を回避するために積層方向からの平面視で第4引出導体44の外側に配置されてもよい。この場合、第1コイル導体層51の回避部60は、第1引出導体41、第3引出導体43及び第4引出導体44を回避するために積層方向からの平面視で第1引出導体41、第3引出導体43及び第4引出導体44のそれぞれの外側に配置されてもよい。
【0086】
第1コイル導体層51又は第2コイル導体層52の回避部60を第1引出導体41等の引出導体の外側に配置することで、第1コイル導体層51及び第2コイル導体層52の内径面積を確保することができる。そのため、インダクタンス値の低減を抑制することができる。
【0087】
本明細書には、以下の内容が開示されている。
【0088】
<1>
磁性層を含む素体と、
上記素体の内部に設けられ、複数の第1コイル導体層を積層方向に含む第1コイルと、
上記積層方向において上記第1コイルよりも上記素体の底面から離れた位置で上記素体の内部に設けられ、複数の第2コイル導体層を上記積層方向に含む第2コイルと、
上記素体の底面に設けられ、上記第1コイルに電気的に接続された第1外部電極及び第2外部電極と、
上記素体の底面に設けられ、上記第2コイルに電気的に接続された第3外部電極及び第4外部電極と、
上記素体の内部に設けられ、上記第1コイルの端部のうち、上記第2コイルに最も近い上記第1コイル導体層の端部と上記第1外部電極とを接続する第1引出導体と、
上記素体の内部に設けられ、上記第1コイルの他方の端部と上記第2外部電極とを接続する第2引出導体と、
上記素体の内部に設けられ、上記第2コイルの端部のうち、上記第1コイルに最も近い上記第2コイル導体層の端部と上記第3外部電極とを接続する第3引出導体と、
上記素体の内部に設けられ、上記第2コイルの他方の端部と上記第4外部電極とを接続する第4引出導体と、を備え、
上記第1コイル導体層は、少なくとも上記第1引出導体を含む2つ以上の引出導体を回避するために上記積層方向からの平面視で上記第1引出導体の内側又は外側に配置される回避部を含み、
上記第2コイル導体層は、上記第4引出導体を回避するために上記積層方向からの平面視で上記第4引出導体の内側又は外側に配置される回避部を含み、
上記回避部を除いた部分の上記第2コイル導体層の幅は、上記回避部を除いた部分の上記第1コイル導体層の幅よりも広い、積層型コイルアレイ。
【0089】
<2>
上記回避部を除いた部分の上記第1コイル導体層の幅をA、上記回避部を除いた部分の上記第2コイル導体層の幅をBとしたとき、B/Aの比が1.04以上、1.69以下である、<1>に記載の積層型コイルアレイ。
【0090】
<3>
B/Aの比が1.20以上、1.53以下である、<2>に記載の積層型コイルアレイ。
【0091】
<4>
上記積層方向において、上記素体の底面から上記第1コイルまでの厚みは、上記素体の底面とは反対側の上面から上記第2コイルまでの厚みよりも大きい、<1>~<3>のいずれか1つに記載の積層型コイルアレイ。
【0092】
<5>
磁性層を含む素体と、
上記素体の内部に設けられ、複数の第1コイル導体層を積層方向に含む第1コイルと、
上記積層方向において上記第1コイルよりも上記素体の底面から離れた位置で上記素体の内部に設けられ、複数の第2コイル導体層を上記積層方向に含む第2コイルと、
上記素体の底面に設けられ、上記第1コイルに電気的に接続された第1外部電極及び第2外部電極と、
上記素体の底面に設けられ、上記第2コイルに電気的に接続された第3外部電極及び第4外部電極と、
上記素体の内部に設けられ、上記第1コイルの端部のうち、上記第2コイルに最も近い上記第1コイル導体層の端部と上記第1外部電極とを接続する第1引出導体と、
上記素体の内部に設けられ、上記第1コイルの他方の端部と上記第2外部電極とを接続する第2引出導体と、
上記素体の内部に設けられ、上記第2コイルの端部のうち、上記第1コイルに最も近い上記第2コイル導体層の端部と上記第3外部電極とを接続する第3引出導体と、
上記素体の内部に設けられ、上記第2コイルの他方の端部と上記第4外部電極とを接続する第4引出導体と、を備え、
上記第1コイル導体層は、少なくとも上記第1引出導体を含む2つ以上の引出導体を回避するために上記積層方向からの平面視で上記第1引出導体の内側又は外側に配置される回避部を含み、
上記第2コイル導体層は、上記第4引出導体を回避するために上記積層方向からの平面視で上記第4引出導体の内側又は外側に配置される回避部を含み、
上記積層方向において、上記素体の底面から上記第1コイルまでの厚みは、上記素体の底面とは反対側の上面から上記第2コイルまでの厚みよりも大きい、積層型コイルアレイ。
【0093】
<6>
上記回避部を除いた部分の上記第1コイル導体層の幅は、上記回避部を除いた部分の上記第2コイル導体層の幅と同等である、<5>に記載の積層型コイルアレイ。
【0094】
<7>
上記素体の底面から上記第1コイルまでの厚みをC、上記素体の底面とは反対側の上面から上記第2コイルまでの厚みをDとしたとき、D/Cの比が0.11以上、0.88以下である、<4>~<6>のいずれか1つに記載の積層型コイルアレイ。
【0095】
<8>
D/Cの比が0.19以上、0.54以下である、<7>に記載の積層型コイルアレイ。
【0096】
<9>
上記第1コイル導体層の厚みは、上記第2コイル導体層の厚みと同等である、<1>~<8>のいずれか1つに記載の積層型コイルアレイ。
【0097】
<10>
上記第1コイル導体層の上記回避部は、上記第1引出導体、上記第3引出導体及び上記第4引出導体を回避するために上記積層方向からの平面視で上記第1引出導体、上記第3引出導体及び上記第4引出導体のそれぞれの内側又は外側に配置される、<1>~<9>のいずれか1つに記載の積層型コイルアレイ。
【0098】
<11>
DC-DCコンバータに用いられる、<1>~<10>のいずれか1つに記載の積層型コイルアレイ。
【符号の説明】
【0099】
1 積層型コイルアレイ
10 素体
11 第1の主面(底面)
12 第2の主面
13 第1の端面
14 第2の端面
15 第1の側面
16 第2の側面
21 第1コイル
22 第2コイル
31 第1外部電極
32 第2外部電極
33 第3外部電極
34 第4外部電極
41 第1引出導体
42 第2引出導体
43 第3引出導体
44 第4引出導体
51 第1コイル導体層
52 第2コイル導体層
60 回避部
65 直線部
A 回避部を除いた部分の第1コイル導体層の幅
B 回避部を除いた部分の第2コイル導体層の幅
C 素体の底面から第1コイルまでの厚み
D 素体の底面とは反対側の上面から第2コイルまでの厚み
L 長さ方向
T 高さ方向
W 幅方向